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葉鍵ロワイアル!#9

1 :名無しさんだよもん:2001/06/30(土) 03:22
基本ルール 、設定等は前スレ熟読のこと。

・書き手のマナー
キャラの死を扱う際は最大限の注意をしましょう。
誰にでも納得いくものを目指して下さい。
また過去ログを精読し、NGを出さないように勤めてください。
なお、同人作品からの引用はキャラ、ネタにかかわらず
全面的に禁止します。

・読み手のマナー
自分の贔屓しているキャラが死んだ場合は、
あまりにもぞんざいな扱いだった場合だけ、理性的に意見してください。
頻繁にNGを唱えてはいけません。
また苛烈な書き手叩きは控えましょう。

前スレ
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=993115533
感想スレ
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=993479275
感想、突っ込んだ議論、NG処理、アナザー没ネタ等にお願いします。
そして、絶対にNG議論は本スレで行わないように。

その他のリンクは>>2-5に。

2 :名無しさんだよもん:2001/06/30(土) 03:25
キサマら時間を持て余しているなら自治スレへ来い!
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=993581620

3 :名無しさんだよもん:2001/06/30(土) 03:26
ストーリー編集(いつもありがとうございます)
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Spade/1168/index.htm
データ編集(現在停止中)
http://members.tripod.co.jp/hakagitac/
アナザー(外部 ありがとうございます)
http://green.jbbs.net/movie/bbs/read.cgi?BBS=568&KEY=993054328
最新アイテムリスト(外部 ありがとうございます)
http://green.jbbs.net/movie/bbs/read.cgi?BBS=568&KEY=991237851&START=987&END=990&NOFIRST=TRUE

4 :名無しさんだよもん:2001/06/30(土) 03:26
キサマら時間を持て余しているなら自治スレへ来い!
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=993581620  

5 :名無しさんだよもん:2001/06/30(土) 03:26
キサマら時間を持て余しているなら自治スレへ来い!
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=993581620    

6 :さらに辿る1:2001/06/30(土) 05:37
幾分かすると道は開けた。
そこは……死体が放置されていた。
しかもまだ新しい。
そして、
僕……いや、僕たちはこの顔に見覚えがあった。

「……高槻」

そう、そこには高槻が惨憺たる姿で死んでいた。
しかも複数体。

「どういう……こと?」
「……分からない」

……分からないが、これではっきりしたことがある。
連中は人間をクローンする技術すらも保有していたことだ。
高槻ではない、FARGOにそんなものは無い。
このゲームの黒幕だ……。

――このときの僕はまだ、長瀬の存在を知らない。

「この顔が目の前に何個も並ぶのを想像すると、反吐が出るわね……」
いつになく毒舌な彼女。
……だが、奴を知っているものにとっては無理も無い反応なのかもしれない。
死して尚罵倒される男……この男もまた哀れだった。

顔は……粉々に粉砕されかけている。
マシンガンの掃射を喰らったようだ。
はっきりいって……見ていて気持ち悪いものだ。
よく郁未はこれを見ていられると――。

……そうでもないようだ。
もう吐く寸前の苦しい表情……。

7 :さらに辿る1:2001/06/30(土) 05:39
幾分かすると道は開けた。
そこは……死体が放置されていた。
しかもまだ新しい。
そして、
僕……いや、僕たちはこの顔に見覚えがあった。

「……高槻」

そう、そこには高槻が惨憺たる姿で死んでいた。
しかも複数体。

「どういう……こと?」
「……分からない」

……分からないが、これではっきりしたことがある。
連中は人間をクローンする技術すらも保有していたことだ。
高槻ではない、FARGOにそんなものは無い。
このゲームの黒幕だ……。

――このときの僕はまだ、長瀬の存在を知らない。

「この顔が目の前に何個も並ぶのを想像すると、反吐が出るわね……」
いつになく毒舌な彼女。
……だが、奴を知っているものにとっては無理も無い反応なのかもしれない。
死して尚罵倒される男……この男もまた哀れだった。

顔は……粉々に粉砕されかけている。
マシンガンの掃射を喰らったようだ。
はっきりいって……見ていて気持ち悪いものだ。
よく郁未はこれを見ていられると――。

……そうでもないようだ。
もう吐く寸前の苦しい表情……。

8 :さらに辿る2:2001/06/30(土) 05:41
「郁未」
郁未はつらそうな表情でこっちを向いた。
「もう、ここいる必要は無い。……行こう」
彼女を促す。
……死体など見ていて気持ち良いわけが無い。

僕たちは、そこから少しばかり先に進んだ。

「……ねえ」
「なんだい?」

郁未が、歩きながら僕に話し掛けてきた。

「……目的、無くなっちゃったね」
「……」

僕は、それにすぐ返事をすることが出来なかった。
クローンがいるなんていうことは予想を越えた出来事だった。
こんなことでは後何体高槻がいるんだか知れたものじゃない。

だが。

「……いいさ」

高槻は殺されていた。
僕たちと同じように考える人が、確実にいることが分かった。
ならば、それでいい。
もしこの先高槻と会うことがあったなら――。

「後は、生きている人間を集めてこの島を脱出すればいい」

――その時改めて殺し直せばいい。

9 :さらに辿る3:2001/06/30(土) 05:42
「……そうだね」
「ああ」

郁未は何かいいたげな……ああ分かってる。
彼女はまだ自分がやることがある。
でも、それをあえて忘れた振りをしている。
……僕と、同じように。

だが、僕たちはまだ知らない。
高槻を死んで、管理者を失ったと思い込んでいた殺人ゲーム。
それがまだ続いていることを。
黒幕は、もうずいぶんと側で動いていることを。

そして。


――僕の限界も、もうすぐそこまで来ていたことも。

【郁未+少年:さらに西へ】

10 :111@ヘタレ:2001/06/30(土) 05:44
……かちゅーしゃがバグって二重カキコしてしまいました。
すまそ。m(__)m

11 :Re-Birth(1):2001/06/30(土) 05:44
「や、やっと、着いたぁ」
外傷よりも疲労が濃い耕一は息も絶え絶えに言った。よくここまで歩いてこれたのかが不思議なくらいだ。
「っていうか、あんたが勝手に抜け出さなければこんなにボロボロにならなかったでしょうが」
置いてきぼりにされた留美が、すかさず突っ込む。
「いや、男にはやらなきゃいけないことがあるんだ。たとえ苦難の道でもな」
「なにを馬鹿なことを」
留美はそう言って、耕一と彰を見やる。
(男なんて、みんな馬鹿で勝手だ。でも……)

殺人ロボットと源三郎との戦いで消耗してしまった一行は基地を目の前に戦略的撤退を余儀なくされ、葉子とマナが待つ市街地へと戻った。
彼らを出迎えたマナはさらに大所帯になったことに驚くと共に、誰一人欠けることなく戻ってきたことに安堵した。
だが、無事である、という言葉からは程遠い。
特に、
「うわ、この人、まだ生きてるの?」
彰の容態は特にひどかった。
根拠地にしていた町にたどり着いたとき、緊張の糸が切れたのか、彰は倒れた。
「お兄ちゃん! 彰お兄ちゃん!!」
あわててすがりついた初音の肩を蝉丸がつかむ。
「動かさない方がいい、傷に障る」
ビクッと震えるように初音は彰から手を離す。
「彼をとりあえずベッドに寝かせたい。それで傷の具合を見たいので服を脱がせる。あと、ハサミを貸してくれないか?」
「……こっち。救急箱もその部屋よ」
蝉丸の言葉にマナは奥の部屋を指し示す。
「うむ、すまない」
脱がせる、という言葉に思わず顔を赤らめるマナを後目に、蝉丸は彰を抱えて運んでいった。
「手伝いがいる。申し訳ないが何人か来てほしい」
体力を消耗しきってさっそく寝込んだ耕一と葉子がこの家で休んでいると知らされた晴香以外はその後についていった。

12 :Re-Birth(2):2001/06/30(土) 05:47

蝉丸は血が付着をし無理に剥がすことができないところは布の周りをハサミで切りとり、
そして一枚ずつ服を脱がしていった。
彰は誇張ではなく満身創痍であった。
(これだけの傷を受けながら、よくも……)
改めてその体を確認して蝉丸は内心舌を巻いた。
右太股に銃創があるだけではなく甲も半分以上無くなっている。頭に巻いた包帯は赤くなり、腹には大きな青あざが二つあった。
その他、小さな傷やヤケドは数える気にもなれなかった。
なにより、血が付いて茶色く変色した右足と既に用をなしていない後頭部の包帯がかなりの血を失い消耗していることを物語る。
(彰お兄ちゃんが大変なことになっている。なのに、私は何もできない)
初音は痛々しい彰を見守りながら、自分の無力さを歯がみしていた。
「すまないが体を拭くのに湯か、無ければきれいな水が欲しい」
「それじゃあ、私が!」
蝉丸の言葉にはじかれたように、初音は台所に走っていった。自分も怪我をしているにもかかわらず。

しばらくして、初音はやかんいっぱいにお湯を入れて部屋に戻ってきた。
「お湯、持ってきました」
「すまない、そこに頼む」
蝉丸は先ほどマナが探してきた洗面器を指し示した。初音はそれにお湯を注ぐ。
「これぐらいの熱さでいいですか?」
洗面器にうっすらと湯気がのぼる。蝉丸は指を少し入れてちょうどいい温度なことを確認し、うなずいた。
お湯を注いでいる間、改めて傷の酷さを見て、初音は胸が締め付けられる思いがした。
こんなになるまで戦っていたのか、そう思うと目の辺りにこみ上げる物が来た。
(お兄ちゃん……)
初音はまばたきをして、それを抑えようとした。だが、
カンカラカン
「えっ?」
初音は、ふと我に返る。
音がした方を見ると、手に持っていたはずのやかんが床に転がっていた。
「ご、ごめんなさい……」
何回も頭を下げる初音に蝉丸は言った。
「疲れているようだな、早く休むがいい」
「……」
そして、蝉丸は留美と月代に添え木になりそうな物を探してくるようにと伝えた。

13 :Re-Birth(3):2001/06/30(土) 05:49

(私は何もできない)
真っ暗な部屋に初音は膝を抱えて座っていた。
(彰お兄ちゃんを助けることも。ううん、もしかしたら足を引っ張っているだけなのかもしれない)
誰もいない部屋、一人でいると気が滅入ってくる。
(お兄ちゃんは私を守ってくれた。お兄ちゃんは私を励ましてくれた。お兄ちゃんは私に希望をくれた、なのに、なのに……)
初音は小さい体をさらに縮ませる。
(私にできること、私にできること、私にできること……)
焦燥感と自己嫌悪で初音の心が満たされたとき、どこからか声が聞こえた。
(あ……よ)
初音は辺りを見回すが誰も見つけることができない。
(ある……よ)
「だ、誰?」
(あるよ……リネ……ト)

彰の手当は終わり、その部屋には誰もいなかった。
初音は静かにドアを開けると音も立てずに中に入っていく。遮光され、暗い部屋だったが不自由なく、彰の方へ近づく。
彰の体の半分以上を新しい包帯を巻かれていた。蝉丸の適切な応急手当は結果だが、失血は補いようがなく、不規則な呼吸が未だ彼が死線をさまよっていることを表していた。
(お兄ちゃん……)
初音は苦しげな彰の寝顔を見て、
(くるしいよね、いたいよね、おにいちゃん……)
枕元にあった救急箱からハサミを取り出し、
(でも、もうだいじょうぶだよ……)
自分の腕に突き刺した。
そして、滴る血が、
彰の口の中に入っていった。

14 :Re-Birth作者:2001/06/30(土) 06:00
彰パワーアップ計画(?)です。次郎右衛門が助かったあの方法です。
この後、本物の鬼になるか、結界の効果で効き目がないか、暴走するかは次の方次第。

彰はこのまま失血死させるのはあまりにも惜しい人材なので……

謎の言葉は残留思念か転生途中のあの人。だって、ライバルが一人減るから(w

あと、マナって実際医療知識ってどれぐらいでしょうかね。
はかりかねたんでセミーを医者役にしましたが。

15 :捧げるもの(1):2001/06/30(土) 06:05
乾ききった礫沙漠のように荒涼とした丘の上で。
揺らぐことなく林立する大岩の下で。
あたしたちは移動の準備をしていた。

「それじゃ、行こうか」
びゅうびゅう、と騒ぎ立てながら隙間を抜けて行く風音にのせて、誰かが
そう言うのを、あたしはぼんやり聞いていた。

「…こいつ、どうするの?」
長瀬源三郎とかいうオヤジが岩陰で倒れている。
死んではいないのだろうが、話に聞く痙攣すら治まり、激しかった呼吸音も既にない。
隣でささやかに咲く野草が、いかにも不似合いだった。

「なんなら…あたしがやっても、いいよ」
自らの吐瀉物に顔を埋めて動かなくなった男の傍らに立ち、刀を携えて尋ねる。

「放っておいても、いいんじゃないかな…。
 いろいろ聞きたかったんだけど、その様子じゃ…無理だと思うし」
彰とか言う少年が答える。
傍らに小さな女の子を侍らせて、それでようやく立っている満身創痍の彼に
言われると、あえて殺すのも気がひける。

(でも、甘いね-----)
あたしは…目的のために、殺せる。
尋問…いや、拷問みたいな汚れ仕事だって、やれる。
自分の鋭利な決意を、世間の倫理に鈍らせるようなことはしない。
(名もなき兵士達を。
 たくさん、たくさん-----殺したから、ね)
で。

16 :捧げるもの(2):2001/06/30(土) 06:06

ねえ良祐、あんたは、こんな風に死んだの?
智子、あかり、それにマルチ。
あんた達は、こいつを許せる?
由依、あたし、どうすればいい?

天を仰いで皆に尋ねる。
-----答えは、ない。

死人は帰ってこない。
応えてくれるのは、唸りをあげる風だけだ。
眼を、口を、強く閉じて、ゆっくりと息を吐く。

「そ」
たっぷり時間をかけて息を吐き、あたしはさんざん迷った挙句、短い答えをよこした。
(みんな、これでいいかい?)


一行がぞろぞろと歩き始める。

あたしも群れの片隅に身を置くように、遅れて歩き出そうとしたところで、大事なことを
思い出す。
(ああ、あたしとしたことが、忘れるところだったね)
そのまま、かちん、と刀を引き抜き風を切るように草を薙ぐ。
風にのって流れる花を拾い上げ、軽く束ねると、群れから逆行するように歩く。

戦闘用HM-12。
(マルチ、あんたの-----妹だよね)
あまり原型はとどめていないけれど、解る範囲で整えてやる。
幸い腕はだいたい残っていたので、胸の辺りで手を組ませ、花を持たせてやった。
(妹のオイタは、止めておいたからさ。
 だから-----のんびり寝てていいよ)
右手に刀を持ったまま、左手で軽く拝む。

(-----さよなら、マルチ)

17 :捧げるもの(3):2001/06/30(土) 06:06


大きく遅れたあたしを待つように、一人遠くで立つ影があった。
「晴香」
「…ああ七瀬。ごめん」
髪を切ったせいで、一瞬それと解らなかった。

しばらく二人で黙って歩いていたが、やはり聞いてみる。
「…ねえ」
「ん?」
視線を交えもせず、お互い遠くを見ながら会話する。
「もしも、あたしが死んだらさ。
 …ああして、花でも添えてくれるかな?」
微笑を浮かべて、言ってみる。

七瀬はちょっと驚いた顔をしたけれど、すぐに真顔になって答えてくれた。
「…そうね。
 花くらいは、探してあげるわ」
そしてニッと歯を見せて笑い、言葉を続ける。

「もう髪に、余裕はないからね」


あははは、と。
二人笑う声が、風に乗って。
遠く遠く、視線の遥か先へと、流れていった。


【戦闘用HM-12 起動不可(死亡)】
【長瀬源三郎 瀕死(意識不明)のまま放置】
 

18 :名無したちの挽歌:2001/06/30(土) 06:09
「捧げるもの」です。
街まで戻る一行の、補完の追加という恐ろしい話なので、もっと小ネタに
収めたかったんですが…そのうえageてしまいますたスマソ。

マルチ関連以下の小ネタと、最後のHM-12の【括弧】文は是非書いて
おきたかったのですですです。

19 :名無したちの挽歌:2001/06/30(土) 06:29
今読み直して、発見したんですが…
>>15の最後にある「で。」は不要です。

どっから来たんだコレ…(汗

20 :名無しさんだよもん:2001/06/30(土) 06:35
(・∀・)イイ!

21 :Re-Birth作者:2001/06/30(土) 11:32
えっと、すいません。最後に【七瀬彰(068)鬼の血を摂取】を入れていただきたいです。
どうかよろしくお願いします。

22 :人でなくなるということ(1/3)By林檎:2001/07/01(日) 01:09
ドックン…

 なにかが聞こえる。
 僕の耳に振動が伝わってくる…。
「初音ちゃん!! なにを!」
 僕の近くに人がいる。複数。
「だって…。このままじゃ彰お兄ちゃん死んじゃうよ!」


 耕一は血を流す初音の腕をつかみ、自分の方に引き寄せる。
「なんてバカなことを!!」
 耕一も知っていた。次郎衛門の話。自分の前世の話だ。
 瀕死の次郎衛門を助けるエルクゥ。その方法。
「バカじゃないもん! 私は彰お兄ちゃんを助けるの!
 今まで助けてもらってばっかり…。私はいつも役立たず…。
 そんなのもう嫌なの!」
 初音はもがいて耕一の手を振り切ろうとする。
「離してよ! 離してくれないんだったら耕一お兄ちゃんなんてキラ」

パシィッ…

 初音の頬を耕一が…叩いた。初音の体が床に転がる。
「え…ぐ…」
 泣き顔でふりかえる初音。しかし口から出かけた言葉はそこで失われた。
 耕一の…苦虫をかみつぶしたような表情。
「彰君は男だ…」
 その言葉に初音の表情が変わる。
「あ…」
「もしも鬼の力を得て…。そして制御できなかったら」
 怯えへと…。

23 :人でなくなるということ(2/3)By林檎:2001/07/01(日) 01:09

「初音ちゃん。俺はね。この島で一度、鬼に変身なったんだ…」
「えっ?」
 力は封じられているはずなんじゃ?
 その問いは表情にでた。
「俺は死にかけたとき、初音ちゃん達4人を守る力が欲しいと強く思った。
 鬼の血の力。ひたすら力を求めたんだ」
 初音はなにも言わない。言えない。
「結界とやらは『人間の操る人外の力』は封印できているみたいだが…」
 彰に視線を移す。
「『鬼の操る人外の力』はそうはいかないのかもしれない。もし彰君が鬼に目覚めたら…」
(血…吐かせる…か?)
 今からでも間に合うかもしれない。
 彰を前に耕一は思案する。
 しかし鬼の血でもないことには、死ぬ可能性が高いことは誰の目にも明らか。

24 :人でなくなるということ(3/3)By林檎:2001/07/01(日) 01:10


「その時は…」
 立ちあがった初音が、胸の前で拳を握っている。何かを決意したように。
「初音…ちゃん?」
「鬼になる前に私が…」
 彰の方を向く。

 あなたを殺します……。そして私も。
 それはエゴ。なんで人で無くしてまで生き残らせたと怒られるかもしれない。
 それでも私は…。彰お兄ちゃんにこのまま死んで欲しくない!



ドックン…

 僕の中に何かが生まれる。
 しかしそれはまだ、硬い檻に閉じ込められている。
 そう。硬く、そして時にはもろい『理性』という名の檻の中に…。

25 :林檎:2001/07/01(日) 01:20
わ、誤植
2/3の3行目
「初音ちゃん。俺はね。この島で一度、鬼に変身なったんだ…」は
「初音ちゃん。俺はね。この島で一度、鬼に変身したんだ…」です。恥ずかしい〜

26 :名無しさんだよもん:2001/07/01(日) 01:53
('∀`)<俺はね、鬼に変身なったんだ
('∀`)<あなたを、犯人です

27 :おじさんへ(1):2001/07/01(日) 09:15
ええっと、あゆだよ。
おじさん、元気でがんばってるかな?

ボクは、元気だよ。
梓さん、千鶴さんと一緒にがんばってるよ。
も、もう…お荷物じゃないよっ!ほんとだよっ!


…ねえ、おじさん?
ボクね。千鶴さんが戻ってきて、みんなで学校出てからね。ずっと、考えてたんだ。

秋子さんって…おじさんは知らないだろうけど…秋子さんってひとがいるの。
強くて。怖くて。ボクを…連れて行こうとしていたんだよ。
それで梓さんも、千鶴さんも、あゆのために戦ってくれたんだ。
でもね。
そのときボクは…何もできなかった。だって、怖かったんだよ。
だれかに殺されるのも。だれかを…ころす…のも、ね。

おじさんも、戦うよね。怖くは、ないの?
あゆは…怖いよ。秋子さんの叫び声、一生…忘れないよ…。

……うぐぅ。


それあと、色々あって。
ボク、死んだことになってるよね。心配してくれてたら、ごめんね。

みんなで学校を出て、最初にお墓のところに行ったんだよ。
遠くにいたけど、煙がもくもくし始めたから誰かいるもしれないと思って、みんなで走ったんだよ。
そしたら、墓地だったんだ。誰も、いなかったけどね。
あちこちから煙が出ていてね。地下室の大きいやつ?みたいのが、ここにあったんじゃないかって。
あゆも、そう思ったよっ!かくれんぼと一緒だよね。

そのあと、森に入ったのかな。
そこで、お爺さんに会ったんだよ。おじさんよりも、お年寄りだったよ。

28 :おじさんへ(2):2001/07/01(日) 09:16


「千鶴姉…誰か、いるよ」
最初に気が付いたのは梓だった。
気配は、ひとつ。木の下でもたれかかるように、ぐったりと座り込んでいる。

大柄な男。耕一さんよりも、更に大きい。
そのひとは知人だったが、参加者ではなかった。
「!?…あなた、お屋敷の執事さん…?」
その声に老人は片目を開ける。
「む…あんた…鶴木屋の、お嬢さんか…」
鶴木屋のある敷地から、いくらか離れた所にある、別荘地最大の”お屋敷”の執事。
地元代表のひとりとして、千鶴は老人と面識があったのだ。

「耄碌、したものだよ…」
がはっ、と咳をする。もはや吐血か喀血か判断すら出来ない。胴体は、血塗れだった。
いくつもの穴が穿たれ、これでよく生きているな、と思うほどの血が流れている。
呼気は血の湿り気を帯び、どう見ても耄碌とかいう問題ではない。
「一体、誰に!?」
千鶴は老人に手を貸して、気道を確保する。
「なあに…哀れむことはない。
 この下らぬ戯事を仕組んだ者どうし、仲間割れしたに過ぎんのだ」
自嘲をこめて語る老人に、梓が表情を固くして、腕を組んだまま尋ねる。
「どういう、こと?」
高槻の更に上に存在する長瀬の存在。その所業。
老人の口から語られる、彼らの絶望的な狂気の沙汰に、千鶴達は言葉を失った。
最後に彼自身の戦い、そして敗北が語られた。

29 :おじさんへ(3):2001/07/01(日) 09:16

「長瀬源三郎、ですか…」
千鶴が思い出すように、老人を撃った男の名を呟く。
「…腐れ縁、かしらね」
自宅の戸口に、飄々と、しかし貼り付くように立っていた地味な男の姿が目に浮かぶ。
「なあ、鶴来屋のお嬢さん」
千鶴を現実に引き戻すように、源四郎が声をかける。
「わたしを長瀬ではなく、来栖川の執事と呼ぶのなら…心残りは芹香お嬢様だけだ。
 この老いぼれを哀れんで、源三郎を追うのは、やめた方がいい。
 妙な薬を使っていて…あれは、獣と変わらぬ」

「執事さん、あたし達のこと、知っているんだろう?」
横合いから梓が遮るように尋ね、そして宣言する。

「獣が怖くて…鬼はやってらんないよ」


…そして娘達は去っていった。
わたしの最期が近いことを、知ってはいたのだろう。
しかし、わたしが求めるものは孤独な死である事も理解していたのだ。
「本当に、いいのかい?」
そう言って一度だけ確認すると、鶴木屋の娘達は、振り向くこともなく去っていった。

小さな娘だけは、いつまでも悲しそうにこちらを見ていたが。
…それすらも、慰めになった。

「…お屋敷の、執事さん…か」
ははは、と低く笑おうとしたが、代わりにごぼ、と血がせり上がってくる。
脳にまわる酸素が希薄になってきているのだろうか、思考も視界も薄れていく。
「来栖川の人間として、最期を迎えることができるとは…」
そして無音の世界に包まれる。

「…わたしは、果報者だな…」
そのまま平衡を失い、どさりと横に倒れる。
言葉は、自分に言い聞かせるようなものであったが。
源四郎は満ち足りていた。

30 :おじさんへ(4):2001/07/01(日) 09:19


ねえ…おじさんは、怖くない?
あのお爺さんみたいに、一人で、誰もいないところで、どこか解らないところへ旅立つなんて。
そんなこと、ボクにできるのかな?

今はみんなと一緒にいるけれど。
いつか、一人になる日が来るのかな?

ほんのちょっと前までは。
いつまでも、今のままだなんて信じていられたのにね。
世界は、ボクを押し流しながら変わっていくんだね。
だから、ボクも変わらなきゃいけないんだよね。

…ねえ、おじさん?
あゆ、がんばるよっ!


そうやって、あゆが思考を締めくくった、まさにその瞬間。

源四郎の情報を元に、岩場にある施設を捜す千鶴達の目前に立ちはだかっていた岩が、
ゆっくりと浮き上がるように持ち上がり、三体のロボットが姿を現した。
「「「只今ヨリ作戦ヲ実行シ、排除シマス」」」

31 :おじさんへ(5):2001/07/01(日) 09:23

慌てて岩陰に隠れていた三人は、素早く死角に回り込む。
「あゆ、頭引っ込めろ!」
「うぐぅ」
ロボット達は、そのまま千鶴達に気付く事もなく、足早に駆けて行く。
「…物騒なこと言ってたね」
「始末しましょう…わたしが右に回って、梓が左からね。
 あゆちゃんは…撃てる?」
「無理しなくていいよ?
 アレの場合、”殺す”わけじゃなくて、”壊す”だから気は楽だと思うけどね」

突然自分に話を振られて、あゆは少なからず動揺した。
しかし見た目には、それほどの時間を要することもなく。
彼女は銃を構えて言った。

「う、うんっ!
 ボク…がんばるよっ!」


【長瀬源四郎(セバスチャン) 死亡】

源五郎が蝉丸達へ放った、三体の通常HMと戦闘する直前までの補完です。
また、誰も宣言していなかった源四郎の死亡も抑えておきました。

32 :名無したちの挽歌:2001/07/01(日) 09:26
えー「おじさんへ」です。

行動をつらつら書き上げるのは美しくないのですが、あゆなら最適だと
思いました…いかがでしょうか。
別荘地のお屋敷と、鶴木屋の関係に関してはオマケRPGからの半創作
であります。

33 :言霊 - 1:2001/07/01(日) 17:02
手が震えていた。
左手のみだ。
いつの間にか握られていた右手は、何とか震えは起きないでいる。
郁未に気付かれる事も無い。
無論、冷え性というわけではない。
緊張しているわけでもない。
いや、むしろそんな理由であった方が良かったかもしれない。

――崩壊が始まっていた。

少年の内には、不可視の力が宿っている。
不可視の力の始祖としての、強大なる力。
これに比べれば、郁未の力も模造品と言っても差し支えない。
故に、障害が生じるのだが。
結界。
これによって封じられた力は、確かに少年の内に在る。
だが、それをいつまでも封じていられるわけにはいかないのだ――。
暴走を始めつつある力は。
時に血の衝動を引き起こし。
限界を超えた力を無理矢理引き出す。
抑える事は出来た。
――己の身体を削る事で。
そう、外に溢れ出さんとする力が、己の身体を傷つけているのだ。
少年は、汗を掻いていた。
それは、実に、実に珍しい光景であった。

34 :言霊 - 2:2001/07/01(日) 17:03
「――郁未」
声を掛けた。
何となしに空を見回していた郁未が、顔を向ける。
「何?」
「もし、僕が死んだらどうするつもりだい?」
あまりにも唐突な問い。
少年にも、何故そんな事を訊いたのか良く分かっていなかった。
微かに潜む、死への恐怖がそうさせたのかもしれなかったが。
郁未は、若干虚を突かれたような顔を見せた――
すぐにそれは、少し怒ったような顔になった。
「あまりそういう事は言わない方が良いわ」
「どうして」
「言霊っていうのがあるでしょ」
右手を放される。
郁未は腕を組んで少年を睨んだが、少年は密かに安堵した。
身の震えを気付かれる事が無くなったから。
「死ぬとか殺すとか、そういう事ばっかり言ってると本当にそうなるの」
それから、郁未は。
少し哀しげに目を伏せる。
「私は――あなたに、死んでほしくないから」
心持ち暗い声で、そう言った。
それを聞いて。
少年は、拳を握り、手の震えを打ち消した。
改めて思ったのだ。
僕は、まだ死ぬわけにはいかない、と。
「――そう、だね」
呟くと、いつも通りの笑顔を見せた。
それはまさしく、いつもの少年の笑顔。
郁未も、ようやっと笑顔を返した。

35 :言霊 - 3:2001/07/01(日) 17:03

――そこで耳に届く、悲鳴。

郁未の顔が強張る。
少年は、冷ややかな顔を森の奥へ向けた。
「――近いね。気を付けた方がいい」
警告。
郁未は、無言で頷いて返す。
その手には、既に包丁が握られている。
少年は、その手に何も握ってはいなかった。
だが。
辺りに、微かに漂う何か。
不可視の力――。
行き場を失った強大な力を、ほんの僅かに引きずり出す。
濃艶な血の気配が漂った。
それは、これから起こる何かを思わせる。
やがて、草を踏み鳴らす音。
誰かが、近付いてきている。
誰か。
足音は、軽く、妙に安定さが欠けていた。
女。それも錯乱している。
恐らくはマーダーではなかろう。

――少年の察知は見事的中した。
少しして、草木の中から飛び出してきたのは、少女。

少女の名は、天野美汐――



【003天沢郁未、048少年 005天野美汐と遭遇】
【064長瀬祐介 接近中】

36 :彗夜:2001/07/01(日) 17:04
書きました。ネタ考えてから早15時間……ふぅ。

37 :名無しさんだよもん:2001/07/01(日) 17:37
へぇ…早いね凄いね

38 :名無しさんだよもん:2001/07/01(日) 17:41
>>37
 皮肉?
 早15時間って、『うお? もう15時間も経っちまったのか!?』
 ってことですよ?

39 :名無しさんだよもん:2001/07/01(日) 21:30
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=993988253
新スレです

40 :名無しさんだよもん :2001/07/01(日) 21:41
>>39は議論&討論スレの新スレな。

41 :記憶の彼方へ1:2001/07/01(日) 23:23
――君、朝、あの空き地で、何をしてたんだ?
――…………
――こんな雨の中で、ラジオ体操でもしてたわけじゃないだろ。
――ラジオ体操です。

確か、それが彼女との出会い。いや、正確にはクラスメートだったわけだから…厳密には違うんだが。

それからの一年は、確かに楽しかった日々。
俺と、茜と、詩子と。
本当に、楽しかった。心からそう思う。

気がつけば、雨の似合う少女、里村茜のことを本当に好きになっていた。
それは、初恋というわけじゃなかったけど。
『初恋は実らない』とよく言われているから、それはそれでいいのかもしれない。

俺が、彼女と雨を巡り合わせたくなくなったのはいつだったのだろうか。
あれは、いつかの雨の日。

――待っている人がいるんです。
――あいつ、傘持っていなかったから。
――濡れると風邪をひくかもしれないから…それだけです。

それでも時だけは巡って。
留まっていたかった時間も流れていって。
後悔を残したまま、俺は旅立った。

そして、またここで、忌まわしき死の島で、俺は彼女と出会った。

42 :記憶の彼方へ2:2001/07/01(日) 23:24
――ごめんなさい……生きて償っていけなく…て。
――ごめんな…さいっ――!!

それが、最期の言葉。
償う…?それは俺だ。
茜が、茜だけが、罪を背負う必要なんかない。
多分、俺が、茜を追い詰めた。あとは、あいつ…だな。
俺は、そいつは一体何をするべきなんだろう。

大切な人達が――俺の前から消えて…
大好きだった人が――俺の前から消えて…

俺は、一体何をすればいいんだろうか。

――……私が待たなければ、誰が彼を待つというのでしょう。
――……私が、待ち続けなければ、今までの私は、何だったのでしょう。

確かに、そう言った。
すべてを失って、今俺が一番やりたいこと。
ああ、俺は、そいつに会いたいのか。
俺は、茜がずっと待っていた、あいつに会いたいのか。

そうだな、俺が、代わりにずっと待っててやるよ、あの空き地で。…必ず、生きて帰ってな。

生き残ったら武器のテイクアウトは可能なんだろうか?それだと楽でいいな。
帰ってきたそいつに、真っ先に鉛玉をぶち込んでやりたいんだからな。

俺がやりたいことを成すべきに、生きて帰るのが大前提。
俺が、今まで考えたこともなかったこと。
ゲームに、乗るか反るか。
生きて帰れるなら、どちらでもいい。
茜も…あゆも、名雪も……みんなみんな…いなくなったんだから。
他にやりたいことなんて、なくなっちまったんだからな。

43 :記憶の彼方へ3:2001/07/01(日) 23:24
「ぐ…ぅ…」
目が覚めれば、見知らぬ天井。湿って腐りかけているかに見える、木の天井。
(ここは…どこだ…?)
どうやら、小さな古びた小屋…のような殺風景な部屋だ。
また、寝ていたらしい。いつこの小屋に辿り着いたかなんて、分からない。
(ひどく…つらい夢を見ていた気がする……)
未だズキズキと痛む頭を触ろうとした…が……
「て、手が動かない……」
ギリギリ…何かが締め付けられる音。
(縛られてる?)
後ろ手に縛られている。
(………)
一体、何が起こったのだろうか。

「あ、目が覚めた…良かったぁ…」
気の抜けたような声。
寝転がったままの祐一に見えたのは、ピョコンと立ったアンテナのようなピンクの寝ぐせ。
「二人ともっ、相沢さんの目が覚めたよ!」
「……」
状況よく分からない。

44 :記憶の彼方へ4:2001/07/01(日) 23:25
「あ、ほんとだ。……生きてる?」
「死んでるように見えるか?」
「まあ、そりゃあ、見えないけど」
生意気そうな茶髪のショートカットの女が話しかけてくる。
「………これは、どういうことだ?」
よく、状況がつかめない。一体自分が何をしていたのか。
覚えてもいない夢と、現実とをごっちゃにして、ミキサーにかけられたような感覚。
(要するに、頭が悪い、だ)
違う。
(気分が悪い、だ)
「いきなりそんな格好にして悪いけど、まだあんたのこと信用できないから悪く思わないでね。
 あんたの武器も預かってるから。
 分かるでしょ?殺人ゲームなんだから。
 あらかじめ言っておくけど、私たちにやる気はないから」
早口でまくしたてる。
「殺人…ゲーム…?」
ようやく、頭の中でその単語の意味を理解する。
そうだった。北川と言い合いになって、天野に会って…謎の男に襲われて…
そして…大切な人達が死んだ…などと信じられずに走ってきたんだった。
「俺も…殺す気かっ!?…くそっ!くそっ!」
悔しさと、恐ろしさで、みじめな位足が震えた。
「だから〜…物覚えが悪い人ね…本当になんでこんなのが生きてるんだか…」
生意気な、女だ。
(もしも俺が殺人犯なら、真っ先に殺すタイプだ)
「ふざけるなっ!なんで俺がこんな扱い受けなきゃならないんだ!」
「…信用できるまで」
「……」

45 :記憶の彼方へ5:2001/07/01(日) 23:26
「まあまあ、結花…とりあえず自己紹介しようよ。信用も何も…そんな態度じゃ私達が先に信用失っちゃうよ」
信用…できるかどうかは置いといて、今までのやりとりで祐一の胸の中の恐怖心はいつの間にか薄れていた。
「むう〜…私こういう男嫌いなのよね…」
(俺だってお前みたいなガサツな女嫌いだ……)
結花、と呼ばれた生意気な少女をとりなしたアンテナ少女が改めてクルリと祐一に体を向けた。
「私の名前は、スフィー=リム=アトワリア=クリエールよ。簡単にスフィーでいいわ」
髪の毛の色とぴょこぴょこ動くアンテナが気にはなるが…ガサツ女と比べれば幾分可愛らしい仕草でそう答える。
「――――………」
そして、今まで二人の後ろで沈黙を守っていた女性が来栖川芹香、と短く名乗った。
その雰囲気はどこか神秘的に感じられる。
「んで、私は江藤結花。堅苦しいのは嫌いだから結花でいいわよ」
ガサツな奴が最後にそう告げた。
「んで、ガサツ女…」
「結・花・よ!」
とりあえず、この中でガサツ女と呼ばれたら自分、程度の自覚はあるらしい。
「まずこの縄をほどけ」
「ほどけ?」
「…ほどいてくれ」
「イヤ」
(このアマ…)
「あんたなんか信用できないもの…とりあえずあんたのことが聞きたいわ」
「俺か…俺は相沢……ってそういえばなんでお前ら俺の名前知ってた?さっき俺の名前を――」
「ああ、これに載ってたから。写りの悪い顔写真付きでね…いや、写真のほうが写りいいかも…」
失礼な事を口走りながら、俺の顔写真のついた本を見せつける。
「とりあえずほどいてくれ…俺にはやらなきゃならないことがあるんだ」

46 :記憶の彼方へ6:2001/07/01(日) 23:27
「やらなきゃならないこと?」
「人を探している。大切な人達だ」
「……あなたの言ってることは嘘かも知れないでしょ?」
「……殺人ゲームなんてふざけるなよ?…俺は信じない」
「あんたバカ?三日間もこの島にいて…せめて現実は見なさいよ!」
そんなこと言われても覚えてないんだから仕方が無い。頭がまた痛む。
美汐に出会った時に思い出された感覚…血の海に浮かぶ真琴の姿が思い出される。
祐一は激しく首を横に振った。
「殺人ゲームが…というより、俺は大事な人達を失ったとは信じたくないだけだ。
 いや、絶対に生きている」
あゆも、名雪も、栞も舞も、そしてみんなも……真琴だって、俺の創りあげた偶像に違いない。
祐一は、強くそう信じる。
「それって、逃げてるだけよ…」
「見たことも聞いたこともない…信じてくれなくても構わないが、俺はここ何日かの記憶が飛んでしまってる。
 そんな状況でそんなこと…信じられるかっ!」
「だったらなおさら逃げじゃない…つらいことから逃げて…私達だって信じたいわよ!できることならって…
 でも、その為に忘れるなんて最低のことだわ。絶対に」
「……」
北川と似たような台詞。それが、祐一の勘にさわる。
「お前に俺の何が分かるんだ!」
売り言葉に買い言葉。
なんで記憶を失ってしまったかなんて祐一にも分からないが…信じる為に忘れたなんて思いたくもない。
「あんたのことなんて知らないし知りたくもないわ!
 私達だって…口には出さないけどずっと辛いのよ!…ごめんスフィー、私もう我慢できないっ!」
「結花……」

47 :記憶の彼方へ7:2001/07/01(日) 23:27
「私は大切な幼馴染を失って…スフィー達は大切な妹を失って…それでもずっと悲しみを心の奥にしまって…
 口には出さないだけで、ずっと、ずっと我慢してるのよ!?」
「結花!」
「私達だって…ずっと、辛かったんだからっ……!!」
「結花…」
泣き崩れる結花をなだめながら…
「ありがと…私も、芹香さんも、おんなじきもちだよ?もう泣かないで」
芹香と、そしてそう言ったスフィーの目にもまた大粒の涙。
「ごめん…ね…言わないように…泣かないようにって…思ってたのに…ごめんね…」
「……」
芹香がそっと、結花の頭を撫で続ける。
「私も…結花とおんなじ意見。忘れちゃ駄目だと思う。絶対に。思い出さなきゃ前になんて進めない。
 進んだと思っても、それは横に走ってるだけだよ」
スフィーが結花の代わりと言わんばかりに、祐一と向かい合う。
「だけど…うん……。信じることは大切だって思うよ。
 私も、心のどこかでけんたろや、リアン、綾香さんや舞さんや佐祐理さん…みんなみんな生きてるって…
 そう信じるだけで強くなれる気がするもの」
今まで、そのやり取りを、黙って聞いていた祐一の顔色が変わる。
「舞!?舞って…まさか…川澄舞!?」
祐一の顔色が真っ青になる。そこで、舞の、佐祐理の名前が出たその意味を。
「えっ…そ、そうだけど……」
「嘘だろ!?舞が…佐祐理さんが…そんな…嘘だ…」
「……」
芹香が、唇を噛み締めるように言った。
――舞さんと佐祐理さんは、敵に襲われて…私たちと離れ離れになって…

48 :記憶の彼方へ8(ラスト):2001/07/01(日) 23:28
「なんだよ…それ…くそっ…俺は…こんなところで何してんだよ…畜生っ…」
「……」
「悪いけど…少しだけ一人にしてくれないか?」
「……」
芹香が、まだ嗚咽を漏らしつづけている結花を肩に抱きながら、ゆっくりと小屋の外へ出る。
そして、スフィーがそれに続く。
スフィーが扉に手をかけながら、言った。
「信じることは大事だって思う。だけど」
一度だけ、祐一を見て。
「信じてるだけじゃ前には進めないんだよ」
ガチャッ…扉がゆっくりと閉められた。
(真琴…舞…佐祐理さん…)

実感が湧かない。当然だ。何も知らないのだから。
(俺だって…思い出したい…俺は…何をしてたのか…何をしたかったのか…)
だけど、あゆ達…いや、真琴達だって絶対に生きてる…と信じることだけはやめたくなかった。

【相沢祐一 捕虜となる】
【江藤結花 サイレンサー付きの銃 一時(?)入手】

※祐一は後ろ手に縛られたままです。
※今の祐一にとって、祐介はただの謎の男です。
※まだ彼は記憶喪失です。

49 :記憶の彼方へ 修正:2001/07/01(日) 23:31
>>44の最後から2行目
×「…信用できるまで」
○「…信用できないから」
です。

50 :七瀬のないしょ(1):2001/07/02(月) 00:49
 どれくらい眠っていただろうか?
 目がさめたときには周りに誰もいなかった。
 ただ、喉が渇き、体が餓えていた。
 何かをたまらないくらいに欲していた…
 そのとき、部屋のドアが開き初音ちゃんが入ってきた。
 僕の体がビクンと反応した。

「あ、彰お兄ちゃん!目を覚ましたんだ!?それとも私が起こしちゃったかな?」
 心配そうな顔で僕のほうを見る初音ちゃん。
 僕はただ首をゆっくりと横に振るだけだった。
「よかった♪」
 そして、初音ちゃんは僕の側で血で真っ赤な包帯を片付けたり、
 僕の額の上にある濡れたタオルをかえてくれたりした。
「彰お兄ちゃん、具合はどう?気分とか悪くない?痛いところとかない?」
 初音ちゃんが真剣に僕の目を見ながら聞いてくる。
 僕は大丈夫とゆっくり呟いた。
 それと同時に僕の心の中の何かが動く。
『ドクンッ』

「ねぇ、彰お兄ちゃん。喉渇いてない?お水持ってこようか?」
 と言って初音ちゃんは僕のほうを優しく見つめる。
 僕は頷き、初音ちゃんがうんと言って、水を取りにいこうとした。
 しかし、初音ちゃんはガクッと何かに引っ張られた様に静止する。
 初音ちゃんは不思議そうに僕のほうを見つめる。
 それもそのはず、初音ちゃんを静止させたのは他の誰でもなく僕自身だったからだ。
 そして、初音ちゃんの体をぐいっと引き寄せると、
 初音ちゃんがどうしたの?と言おうとしていたその唇をふさいだ。

51 :七瀬のないしょ(2):2001/07/02(月) 00:50
 初音ちゃんの口内を乱暴に舌で犯す。
 ぴちゅ、くちゅといった卑猥な音が部屋に響く。
 ぷはっと息が漏れ、その唇を離す。
 僕ははっと我に返る。
 僕は今何をした?
 初音ちゃんの純真でやわらかい唇を汚い欲望だけで犯したというのか?
 そんな!?こんなことするつもりなかったのに!!
「あ、彰お兄ちゃん?」
 初音ちゃんが顔を赤くしながらうつむき加減に僕を見る。
「そ、その、いいよ。彰お兄ちゃん我慢できないんでしょ?
 それは多分私のせいだと思うから…」
 初音ちゃんが髪の毛をかきあげながら僕の胸に寄り添う。

 初音ちゃんが何を言ってるのかわからない。
 僕が無理やりキスしたことを怒ってないんだろうか?
 そんなことより、いいってなにが?
 何をしていいんだ?誰のせいだって?
 そんなことを考えていたつもりだったが、僕はいつのまにか初音ちゃんを押し倒している。
 まるで違う誰かが僕の体を操っているかのように…
「んっ!」
 僕はまた初音ちゃんの唇を吸っている。
 初音ちゃんの唾液で自分の渇きを潤すかのように…

52 :七瀬のないしょ(3):2001/07/02(月) 00:50
「あ、あの、彰お兄ちゃん」
 僕は初音ちゃんの上着をたくし上げる。
「そ、その、痛くしないでね…」
 初音ちゃんの声は聞こえているのだが体がいうことを聞かない。
 僕は乱暴にそのまだ発育が不完全な胸の先にある桜色に色づく小さな突起物にむしゃぶりついた。
「ひゃ、んん…」
 初音ちゃんは耐えているような声色でうめく。
 右の胸を舌先で弄びながら、左の胸を指先で弄くる。
 そうするうちに小さいながらもその存在を主張する。
「ふあ、あ、あきらおにいちゃぁん」
 初音ちゃんが艶かしい声をあげる。
 ふと顔を見やると初音ちゃんは目に涙を浮かべている。
 いじらしいその表情がたまらなく自分の心を締め付ける。
 何故、俺はこんなことをしているのだろうか?
 まだこんなに幼く、あどけなさの残る少女に対して…
 しかし、そんな心とは裏腹に自分の男性たる象徴は今か今かと主張を続けている。

 そして、初音ちゃんのスカートに手をかける。
 それをするりと脱がすと白い下着が顔をのぞかせる。
「あ、あんまり見ないで…」
 初音ちゃんが恥ずかしそうに手で顔を隠しながら呟く。
 僕はその下着の上からスリットにあわせて指を動かす。
 初音ちゃんの体がビクッと跳ねる。
 そのかわいらしい反応を見てもう少し優しくしてあげたかったが、
 相変わらず僕の体は言うことを聞いてくれず、その指の動きは激しさを増すだけであった。
「ん、んんっ!んあっ!」
 初音ちゃんは声を押し殺しているようだ。
 そうだな、外には誰かいるかもしれない。
 いつ誰が入ってきてもおかしくはないだろうに、僕は何をやっているのだろう?

53 :七瀬のないしょ(4):2001/07/02(月) 00:51
 しっとりとしたものが指に確認できる。
 初音ちゃんのものなんだろう…
 初音ちゃんはハァハァと息を切らしている。
 かわいらしい胸が上下している。
 ついに僕は最後の一枚に手をかけた。
 腰を持ち上げ、それをつかみ一気に引き下げる。
 まだ、誰の目にも触れたことのないだろうその体が今僕の目の前にある。
「あ、ああ…」
 初音ちゃんは恥ずかしさのあまりか声も出ないみたいだ。
 僕は両足を持ち上げその部分が露になるようにする。
 そして、顔を近づける。
 何をされるか理解したのだろうか、
「あ、だ、だめ!汚いよぉ!もうずっとお風呂入ってないし…」
 と言い、僕の頭を押さえる。
 初音ちゃんに汚いところなんてないよ。と思ったが、それが音声に変換されることはなく、
 僕はその手を引き剥がし、その部分にくちづけをする。
 汗のせいだろうか?少ししょっぱい味がしたような気がする。
 そんなことも気にせず僕はその部分を丹念に舐る。
 初音ちゃんは声を出さないように自分の口に手を当て我慢している。
 とてもいじらしく感じた。

 だが僕にはどうしようもない…体が言うことを聞いてくれない。
 本当にそうなんだろうか?
 これは僕の願っていたことではないんだろうか?
 僕の中のどす黒い欲望が今体現されているだけなのではないか?
 初音ちゃんを一度もそういう対象として見なかったと言い切れるだろうか?
 自分がいやになってくる。
 今ここで自分を殺して止めてやりたい。
 しかし、そんな考えとは別のところで僕の体は動いている。
 いつのまにか、僕は今まで自分の目の前にあったものに自分自身のそれをあてがっていた。
 初音ちゃんは涙を流している。
 俺は何をしているんだ?
 そう思った瞬間、僕は初音ちゃんの中に入っていた。

54 :七瀬のないしょ(5):2001/07/02(月) 00:52
「ん、んあ、や、やあ…」
 初音ちゃんの声が僕の心に響く。
「いた、い。痛いよぉ…」
 初音ちゃんの声が僕の心を蝕む。
 僕は今、この世で一番純真なものを汚している。
 結合している部分からは純潔の証が下のシーツを赤く染めていた。
「あ、彰お兄ちゃん。ごめんね、ごめんね」
 初音ちゃんが僕に対して謝る。
 何故!?僕は今は常ちゃんを犯しているというのに…
 謝らなければならないのは僕のほうではないか!!
「私のせいでこんなこと…」
 やめてくれ!
 初音ちゃんのせいな訳が無い!
 自分の弱い心がこんなことをしてるんだ!
 僕は自分が許せない!
「私、彰お兄ちゃんのこと好きだよ」
 その言葉を聞いたとき、自分の中で何かが高まっていくのがわかった。

 そして、僕は初音ちゃんの中で白い欲望を吐き出し果てた。
「僕も初音ちゃんのことが大好きだよ」
 その最後の言葉だけははっきりと口に出すことができた。
 僕は初音ちゃんの頬に触れた。
 そのとき自分の体の自由がもどっていることに気付いた。
 それと同時に気が遠くなっていくのを感じた。
「ごめんなさい、彰お兄ちゃん…」
 最後に見たのは涙を流しながらそう呟く初音ちゃんの姿だった。


【七瀬彰 鬼の暴走はとりあえず無し】
【柏木初音 処女喪失】(w

55 :七瀬のないしょの人:2001/07/02(月) 01:15
らっち―さんへ

題名なんですけど[七瀬のないしょ]
では無くて、[彰のないしょ]
に変更しておいてください。
七瀬留美と勘違いしたら困るんで(w

56 :会談(その1):2001/07/02(月) 01:58
『さて、貴様ら。この島のことををどう思う?』
『それはどういう意味だ?』
『何かおかしいとは思わないか?』
『そうね、明らかに以前に人が住んでいた気配が感じられないわ。
 恐らくこの殺人ゲームの為に用意されたと考えるべきね』
『馬鹿な!そんな馬鹿げた話があるか!』
『いや、俺もそう考えていた。このゲームには間違いなく裏に何かある』
『一体この馬鹿げたゲームに何が隠されていると言うんだ?』
『それは俺にもまだ分からない。何しろ情報が無さすぎる』

「ぴこ、ぴこぴこ。ぴっこぴこ?」
「にゃ〜にゃ〜?」
「シュウ、シュウ。シュウ」
「カァーッ!カァー!」
「ぴいこ、ぴこぴっこり。ぴこぴこぴこ」
「にゃ〜うにゃ〜にゃ〜」
「ぴっこぴっこ。ぴこぴっこり」

57 :会談(その2):2001/07/02(月) 01:58
「ったく、うるせぇ獣どもだぜ」
「ねえ、したぼく」
「げぼく」

「わたし、思うんだけど」
「げぼくだ」

「うるさいわねっ!」
「いい加減覚えやがれっ!」

「ふみゅーん・・・げぼくぅ」
「下僕じゃねえっ!」

「どっちなのよっ!」
「うるせえ殺すぞアマ!」



「………バカばっかり」

58 :生徒手帳を捧げて(1):2001/07/02(月) 03:23
「ご、ごめんなさい……」
「ちっ、別にいいけどな」
 強化兵である御堂にとって、いくらふいをつかれたとは言え、目の前の少女の一撃など効きはしなかった。
 とは言うものの、出会い頭に殴られていい気のするものではない。
 殴られた原因が自分の顔にあるとも知らず、御堂は舌打ちをした。
「で、早速だがお前は誰だ? どうしてこんなところで居眠りこいてた?」
「答えてもいいけど……」
 繭はそこで、一旦言葉を切った。
「あなた迂闊じゃない? 初対面の相手に武器も構えないで。
 もし私が銃でも隠し持ってたら、あなたおしまいよ?」
 繭が警告を投げかける。
 だが御堂は、軽く受け流すだけだった。
「甘いな。俺はお前が動くのを見てからでも充分対処できる。
 その気になれば……」
 御堂の手が動く。
 次の瞬間にはその手にはデザートイーグルが握られており、その銃口は繭に向けられていた。
「わかったか?」
「そう。わかったわ」
 顔色一つ変えずに言う。
 本当にやる気になっている人間ならば、繭は気絶している間に殺されているはずだったからだ。
 相手の迂闊さを警告したのだが、どうやらその必要はなかったらしい。
「ならもう一度だ。お前は誰で、こんな所で何をしていた?」

 それから、繭はひとしきりのことを言った。
 自分の名前。誰を探しているのか。どういう信念で動いているのか。
 そして、教会での出来事、崖での出来事も。自分の知る限り、全部。

59 :生徒手帳を捧げて(2):2001/07/02(月) 03:25
「はぁ、そんなことになってたのかよ」
 開口一番、おもわずそんな言葉が漏れた。
「そんなことって、何か心当たりでもあるの?」
「水瀬名雪と名乗るイカレた女に会ってな。
 連れの提案でそいつの後を追ってたんだが、なるほどねぇ」
「そうだったの……」
「おまけにそいつに止めを刺したのが祐一って野郎で、そいつはどこぞの女と一緒に崖から落ちたと」
 あいつが知ったらなんて思うだろうか、と、御堂は心の中で口に出した。
「じゃ、もうお前に用はねぇ。とっととどっか行っちまいな」
 冷たく言い捨てる。
「はぁ!? 人に訊くだけ訊いておいて、自分のことは何も言わないっての!?
 最低ね、オッサン!」
 繭が怒るのも無理はない。
「オッサンじゃねぇ、俺は御堂だ、覚えておけ!」
「うるさいわよ、オッサン」
「っ! このチビガキ……!
 まぁいい、俺はもう行くぞ」
 そう言って、御堂は歩き出した。

「なんでついてくる?」
 後ろを歩く繭に、そう問いかける。
「偶然でしょ。私は教会に向かって歩いてるの。
 誰もオッサンの後なんか追ってないわよ」
「さっきからオッサンオッサン……いい加減にしねぇとブチ殺すぞ!」
「あぁ、そう。じゃ、やればいいじゃない?」

60 :生徒手帳を捧げて(3):2001/07/02(月) 03:27

 カチャッ。
 無言で銃を構える。
 視線が交錯する。
 その二人の間を、風が通り抜けていった。
 木々の葉がそれに合わせて静かに謳う。

 無言の対峙の中で、先に動いたのは御堂だった。
「ちっ……」
 銃を下ろして、再び歩き出す。
 ここに来てからの自分は、どうしてこうも甘くなってしまったのだろうか。
 間違いなく、一人の少女の影響だった。
 もっともそのことを、御堂は自覚していなかったのだが。

 教会に着いた。
 御堂はドアを開けようとして、何かを思い付いたように振り向く。
「チビガキ。一つ頼みがある」
「チビガキ言ううちは、きいてあげないわよ」
 御堂は無視して続けた。
「あ前から聞いた話を連れに話す。
 だが祐一って奴があの女を刺したことは、伏せておいてくれ」
「何よそれ」
 しばしの沈黙の後、言う。
「人間に夢見てるお年頃なんだよ」
「……」
「いいな?」
 繭は答えずに、こう返した。
「何があるのか知らないけど。
 あんた、顔に似合わず優しいのね」

 優しい?
 馬鹿馬鹿しい。
 土気が下がるのを避けたいだけだ。

61 :生徒手帳を捧げて(4):2001/07/02(月) 03:28

 教会のドアを開ける。
「おっそーーーい! この、したぼく!」
 けたたましい声が鳴り響いた。

 互いに自己紹介をし、繭は教会での一件を詠美に話した。
 無論、祐一が秋子を刺したことは、伏せたままで。
 全ての話が終わり、詠美はつぶやいた。
「そう。結局死んじゃったんだ……」
 生徒手帳を取り出して、しみじみと見つめる。
「これは、やっぱりここに置いていった方がいいみたい……」
 てくてくと外に歩き、秋子の墓へ。
 生徒手帳を捧げて、静かに祈る。
 戻って来たとき、詠美は、元気だった。
 いつもの笑顔に、ほんの少しだけの涙をたたえて。

「で、お前は何をしに来たんだ?」
「忘れ物を取りに来たの」
 詩子と秋子の荷物を回収する。
 その際に御堂は詠美に何故拾っておかなかったのかとツッコミを入れた。
 詠美はふみゅーんと言うだけだったが。
「これでよしと。って、何これ?」
 繭は詩子の荷物に入っていたCDを取り出す。
「あ……」
 それを見た詠美も自分の荷物からCDを取り出し、見せた。
「……」
「……」
「……」
「これも何かの縁っ!」
 詠美が言う。
 御堂はただただ、頭を抱えるだけだった。

【繭、御堂・詠美と合流 一緒に行動】
【詩子、秋子の荷物は繭が回収】
【生徒手帳は墓に放置】

62 :書き手:2001/07/02(月) 03:56
(3)に誤字発見
>あ前から聞いた話を連れに話す。

お前から〜ですな。
なんてミスだよ。

63 :Voicelass Screaming1:2001/07/02(月) 03:59
手、というのは、まああれだね。
人間っていう奴が人間であると言う証明と言うか、
もしくは理性の証明と言うものなんだと思う。
どうしてかって?
うーん……。
一口には説明しにくいんだけどね。
たとえば、何で”手”なのだろうね。
簡単さ、
”前足”じゃないからだよ。
え?
同じ様なものじゃないかって?
いやいや、そんなことはない。
前足では道具を造れない。
前足ではドアノブを握れない。
前足では倒れた人にさしのべることは出来ない。
前足では……彼女の手を握れない。

千切れた右手――。
それはまた一つの崩壊の形。
僕らを形づくるもの、その円環の亀裂。
須らく、人間と言うものはもろく弱いもので出来ているのだ――。


「……どうか、したかな」
少年は笑いかけた。
傷ついたものをさらに傷つけるようなことは、あまり好きじゃなかったから――。

「……」
その少女は何も応えない。
ただ、何かにおびえて、自分の体を抱きしめるような形で震えている。
……だが、その姿勢は心持ち左に傾いた、不自然なものであった。
その一点が、妙に――気になった。

64 :Voicelass Screaming2:2001/07/02(月) 04:04

「……」
荒い息。
恐らく叫び声の主は彼女だったのだろう。
なにか……彼女の心を襲う脅威が、森の奥であったに違いない。
だが、この言いようのない不安はなんだろう。
ここ数日の僕なら、真っ先に手を差し伸べていたようなものだ。
なのに……今はそれが出来ない。
どうしたと言うんだ?

「……」
おびえた瞳。
それは最初にここに現れたときに僕らを捕らえてから、
一度として一点に留まらない。
まるで、止まっていることそれ自体を恐れるように――。

「……」
郁未もまた動かない。
いや、どちらかと言うと僕よりさらに警戒の色が強い。
それは……、彼女の行動によるものだろう。
まだ彼女があらわれて少ししか立っていないが……、
彼女はまだほんの一瞬すらも”両手”を見せていない。
それが心配だった。
もし彼女が持っているのが拳銃や炸薬だったら……。
それを考えると油断は出来ない。
久しぶりの再会に、緊張が抜けていたと言うのか。
そう……、
本来この島で信頼できるものなど指折り数えるほどしかなく、
そしてそれですらも危ぶんでなお当然なのが今の状況なのだ。

65 :Voicelass Screaming3:2001/07/02(月) 04:05
「……」
彼女は……。
もしかしたら、ただおびえているだけかも知れない。
だが、僕はそれを殺すことになるのかもしれない。
紛散する不可視の力……。
血の衝動は、いつ、どの瞬間に僕に襲いくるのか分からない――。


だが――。

ピチョン……。

状況は――。

「!?」

いつも――。

「……血?」

僕の意志と無関係に動く――。


「いやああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
そのフレーズが合図のように、彼女は叫びだした。
必死に隠していたものが、とうとう見える。
見たくなかった現実。
認めたくなかった事実。

彼女の右手は、その腕の先が無かった――。

66 :Voicelass Screaming4:2001/07/02(月) 04:05
ひゅん。

風を薙いで、なにかがひっかかる。
これは――。

「……ピアノ線!?」
僕の腕を掠めたそれの標的は……郁未!?

「……え?」
郁未の体を一瞬で巻く。
そしてそれが彼女を――。

プツン。

「……!?」
その男は、ほんの少し驚愕した様子で後ろずさった。
……叫び声に飲まれた一瞬を見計らって、この男は襲ってきた。
まるで……暗殺者のように。

「くっ!」
郁未は向き直って包丁を構える。
……そう、偶然にも包丁の刃が内側から糸を断ち切ってくれたのだ。
そして、僕も同じように本を一ページ、切り取って構えた。

「……だろ」

男……、いや少年が何かを呟いた。

「殺そうとしたんだろ? 彼女を」
くすんだ光を灯す瞳に、乾いた笑みを浮かべる口元。
その表情は……正常であったと果たして言えたのか?

67 :Voicelass Screaming5:2001/07/02(月) 04:06

「分かってるんだよ……君たちも一緒なんだろ。
 その包丁でで……ああるいは二人ががかりででで……。
 ダメメメメメだよよぉ? さ、ささせないよぉぉぉ?
 ぼ、ぼ、ぼぼぼ僕がいるるるrうちは。そんなことははは?
 僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が
 僕が僕が僕が僕が僕が彼女彼女彼女彼女彼女彼女彼女彼女
 彼女彼女彼女彼女彼女彼女彼女彼女彼女彼女彼女彼女彼女
 彼女彼女彼女彼女彼女彼女彼女彼女彼女彼女彼女彼女彼女
 ののののののののことことことはははははは守る守る守る
 るるるるるまもるまもるるまもるんだだだだからだからだ
 からららら……」

――頭が痛い。
……何かが浸食してくる。
脳が……チリつく。
ナンダ……コレハ?
不可視の力じゃない。
だが、何かそれに似ている……。
苦しい……いや、これは――。

狂気は、伝染する――。

狂う。
そうだ。
まるで、
あの時の僕のように――。

ドクン!!

鼓動。
再び、脈打つ。
来る。
狂気が来る。
この程度の電波など歯牙に掛けない、
内面からの脅威が――。

68 :Voicelass Screaming6:2001/07/02(月) 04:07
ドクン!!

血が、騒ぐ。
血が、うねる。
血が、沸く。

横目に映るあの子。
郁未。
同じように、彼女も苦しそうな顔をしている。
そうだ、ならば楽にしてあげなくちゃ。
速く痛みから開放してあげよう。
つまらない”意思”に喰われてもがくなど彼女に似合わない。
僕が――。


                                   ・


――そんなことが、容認できるか。


                                   ・


目の前を望む。
頭の中の狂気ではない、
目の前に迫る現実の狂気。
紅い色を映す鋼線を引いて、彼は僕に迫っていた。

69 :Voicelass Screaming7:2001/07/02(月) 04:07
銀色の輪は、思ったよりも俊敏な動きをする。
これに囚われたなら、あっという間に体が輪切りにされていくだろう。
だから……。

ギィィィィィンンン!!!

軋んだ厭な金属音。
彼は糸を、僕は紙を振るった。
そして、糸は断ち切られ、紙の断面は使いようにならないほどボロボロになった。

「ぐぅぅぅぅっっ」
低く彼はうなる。
僕はすかさず新しい紙を切った。
そして彼もまた武器を補充する。
胸から何かを取り出した。
黒い小さなもの……、
……拳銃!?
彼は寸瞬に撃鉄を起こし、迷わず僕に向ける。

「!?」
だが、それは思い通りにならなかった。
郁未が、飛びついた。

「くぅぅぅぅぅぅっっ!」
「ううううぅぅぅぅぅ……」
彼の後ろから組み付く形で両手を抑えている。
ますい、これでは……。
僕は駆け出した。
間に合うか……!?


「ぐぅぅっ!」
「あうっ!?」
彼の肘打ちが、郁未の薄い胸板を強打した。
あえなく郁未は倒れる。
そして彼は郁未に銃を向けた!

70 :Voicelass Screaming8:2001/07/02(月) 04:08
パァァァァァアアアアン!!

「んぐがぁぁぁぁぁあああああ!!?」
「……え?」

呻き声が漏れる。
低くうなる叫び声が。
――それは、彼からの叫びだった。

カシャっっ。

着弾のショックで、彼は拳銃を取り落とした。

「逃げろ、郁未!!」

郁未は慌ててそこを離れた。
――僕がとっさに投げた”本”。
それは完全にその弾道を遮断し、そして完璧に銃弾を跳ね返した。
……反射した銃弾は、まごうことなく彼自身を標的とした。

「うおおおおおおおおおおお!!」

ガッッッッ!!

僕は全体重を乗せた蹴りを見舞った。

「ガァァアアあっ!?」
吹き飛ばされる彼、だが、まだ甘い!

「くっ!!」
その瞬間に、彼の顔面を拳で殴りつけた。

ごすっ。

鈍い音がして、そのまま彼は崩れ落ちた。

71 :Voicelass Screaming9:2001/07/02(月) 04:08

「はあ……はあ……はあ……」
なんとか……なった。
僕は安心して息をついた。
一瞬、だけどずいぶんと精神をけずるきつい時間だった。
僕らの精神を蝕んでいた気は、いつのまにかどこかへ消えていた。
僕は……郁未のほうを向いた。

「……」
すこし気持ち悪そうではあるが、彼女もまた健在だった。
さしたる怪我も無いようだ。
口の端を軽く吊り上げて、笑う。


――失念していたことが、二つあった。


「!?」
郁未の顔が歪む。
これは……。

振り返る。
そこにあったのは――。

「――君は」
右腕を失ったままの少女が、左手に拳銃を構えて立っていた。

彼を蹴り飛ばした時に一緒に跳んでいった拳銃、
まさかそれを拾われるとは……。

「……」
彼女はにこりともしない。
そしてその視線は僕たちに向いていない。

72 :Voicelass Screaming10:2001/07/02(月) 04:09
「……祐介さん」
そのまま、ゆっくりと歩みを進める。
倒れた彼のところまで。

そしてあるところまでいって、止まった。

「……」
少女は、無言でにっこりと微笑んだ。
僕たちの前で見せる、初めての笑顔……。

――もう、いいですよ。

だぁん!

彼女は発砲した。
銃弾は、彼女のももの辺りを貫いた。
銃弾の反射で捻じ曲がった銃口と、彼女の低い握力を以ってすれば、
それは当然の結果だった。

彼女は、そのまま倒れた。
そして、示し合わせたかのように、彼が起き上がった。

倒れている彼女を見ても、彼は何も言わなかった。
その片方しか無い手から拳銃を構えると、
まっすぐ僕らに向かって構えた。

――にぃっ、と彼は笑った。

バァァァアンン!!

そして、
今度は銃弾が放たれるまでも無く、
それを中心に爆発を起こした。

73 :Voicelass Screaming11:2001/07/02(月) 04:09
彼は、そのままどさっ、と倒れこんだ。
そして、二度と起き上がってくることは無かった。

捻じ曲がった銃口、果たして彼はそのことを気付いていなかったのか?
それとも――。


安らかに、眠る。
まるで、さっきまでの血で血を洗う戦いが、
全て無かったかのように安らかに。

煙る硝煙、
破損した拳銃、
断ち切られた糸。
弾痕のついた本、
放置された包丁、
横たわる二つ、
立ち尽くす二つ、
何ものも何も語らない。
少年と郁未は、ただその一瞬の出来事に流されるだけ――。

……ゲームは、既に佳境へと映っていた。


                             ・


――ごめん、天野さん。


                             ・


【005天野美汐 064長瀬祐介 死亡】
【ピアノ線は断裂、コルトガバメントは爆砕、本はハードカバーに弾痕、”右手”はこの付近のどこか、包丁は特に損傷はなし】
【少年、郁未:その場に留まる】

74 :111:2001/07/02(月) 04:12
いきなり誤字を発見…。
>>73
真ん中下の一文;……ゲームは、既に佳境へと映っていた。
                              移っていた。

下が正解ですね。
よろしくお願いします。

75 :名無しさんだよもん:2001/07/02(月) 07:24
dat逝き防止あげ
ついでに感想スレ貼り付け
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=993988253

常にマターリの精神で。

76 :111:2001/07/02(月) 17:34
>>62−73
Voiceless Screamingが正しい。

77 :束の間の夢。:2001/07/02(月) 17:58
びくり、と、――長瀬祐介の身体が動くのを見て――
まだ、死んでいなかったのか、と――少年は、心底不可思議そうな顔をした。
赤く汚れた身体で、
泥にまみれ、這い蹲って――
――少女。
天野美汐の元へ。
彼は死んでいないのだろうか?
あれ程の傷を受け。
――その、芋虫のような様子を、二人は――止める事が出来なかった。

たぶん、僕、長瀬祐介は。

もう、死んでいたのだと思う。

意志はなかったから。

意味もなく、

守りたかった人の手を。

握りたいと思ったから。

守れなかった人。

けれど、せめて。

そして、漸く、君の横に辿り着いた。

目を閉じて、眠る君をみて、

どうしようもなくなって。

だから、手を握った。

78 :束の間の夢。:2001/07/02(月) 17:58
――私、天野美汐は、激痛と共に目を覚ました。

確かに、私は殺された筈だった。

ずきり、とお腹の辺りが痛む。
だが、痛むだけだ。
私は生きている。
だが、何故だろう?

そもそも、ここは――何処だ?
辺りを見回すと、――ドアががちゃりと開いて――喜びに震えた、声が聞こえた。
「――天野さんっ!」
それは、長瀬祐介の声だった。
「長瀬、さん?」
「うん、うん――僕だっ――良かった、目を、覚ましてくれた――」
そう云って――泣きじゃくる。あの素敵な笑みを浮かべながら、涙を流す。
「あの、ここは、何処ですか?」
まさか、と、私は、思った。
「そうだよ。――僕たち、生き残れたんだ!」

あれから――自分たちが殺されたと思った時、すぐ、七瀬彰達が駆けつけ、あの少年達を殺したのだという。
瀕死だった自分達は、それでも辛うじて息はあり、すぐに手当をされたのだ。
そして、――私が眠っている間に。
脱出の手段が見つかり、そして――意外あっさりと、帰って来れたのだという。

すべてが、あの戦いのすべてが――夢だったのだ、という、訳ではなかった。
それが一番望むべき形。
自分の右手首は、確かに、ない。
真琴も、いない。

けれど――

79 :束の間の夢。:2001/07/02(月) 17:58
「それで、あの」
ここは、何処だろう?
「――僕の、部屋だよ」
そう云って――祐介は、笑った。

「あれから、皆散り散りになった。大切な人を失って、皆、きっと大変だと思う。
 殺人ゲームが明らかになって、皆、色々苦労してる。天野さんのところにも、
 色々、色々来ると思う。きっと、好奇心で、傷つける人が」
少し緊張した顔をする。
そして意を決したかのように、祐介は云った――。
「だから、一緒に、――暮らそう」
「え?」
「僕は学校を辞めて――というか、辞めたくなくても、行きようもないからね。
 だから、働くつもりだ」
何を云っているのだろう。
「君を傷つける人から、僕は、君を守りたいと思うんだ」
――この人は。
「私は――」
「本音を言えば、ずっと、君と一緒にいたい。君の事が本気で好きみたいだから」
「私も、大好きです、だけど――」
「真琴さん、の、事?」
――そう。
私の脳裏によぎったのは、その名前。
二度と会えない、トモダチ。
「彰兄ちゃんが云っていた事を鵜呑みにするつもりはない。日常なんて何処にでもあるから、
 すぐに見つけられるなんて。昔、確かに日常はあった。変わるはずのない日常が」
僕にだってあったから。寂しそうに、そう笑う。
「忘れちゃいけない。大切だった人の事、そして――大切だった、変わらないはずのカタチを。
 だからこそ、僕は、君と一緒に暮らしたい、と思う」
誰より、君の悲しさを知ってるから、失った悲しみを知ってるから。
そして、君も、僕の悲しさを、きっと誰より知っていてくれるはずだから。
「だから、暮らそう?」

――私の返事は、決まっていた。

80 :束の間の夢。:2001/07/02(月) 17:59
私達の暮らしは、順風満帆という訳にはいかなかったが――それでも、
それなりに、何かを守りながら、見つけながら。

――あっという間に時は過ぎ、季節は冬になっていた。
雪がちろちろと降り出すのを見て、

やはり――真琴の事を思い出す。

「――どうしたの、天野さん?」
「いえ――少し、思い出しただけです」
雑踏を歩きながら、私達は手を繋いで歩く。
「――そっか。冬、か」
早いね、と云って、祐介は笑った。
私には右手がないけれど、祐介は、私の左手を、誰より強く握ってくれていた。

「真琴の事を、少しだけ、思い出しました」
「――そっか」
祐介は、何も云わずに私の手を牽く。
それにしても、寒いね、と、祐介は呟いて――
「肉まん、食べようか?」
そう云って、笑った。
そして、強く、手を牽いて――

その手が、何より温かかったからこそ――

私は、初めて、そこに――日常を感じた。
思い出よりも強い、何かを。

81 :束の間の夢。:2001/07/02(月) 18:00
「祐介さん」
「何? 天野さん」
「天野さん、って呼ぶのは今日でお終いです」
「はぁ?」
「美汐、って呼んでください」
「て、照れくさいな……」
「呼んでくれないとキスしてあげません」
クリスマスにキスもしないカップルなんて馬鹿みたいでしょ?
私は、悪戯っ子のように笑う。
久し振りに、心から、笑った。
「――分かったよ。み、美汐ちゃ」
照れくさそうにそう云う祐介の唇を――私は塞いだ。すべて云わせる前に。

ジングルベル、ジングルベル、鈴が鳴る。
そんな唄が聞こえて――

長い、長い抱擁。
通行客がひゅーひゅーと冷やかすが、そんなの関係ない。
柔らかな、暖かな祐介の唇に――もっと、触れていたかったから。

「こ、こんな人通りの多いところで」
ぷはぁ、と云う音と共に、祐介は顔を真っ赤にして不満を言う。
「別に私は構いませんよ。恥ずかしかったですか? 私とキスするの」
「べ、別にそう云う事云ってるんじゃないよっ、天野さんがっ――」
「美汐、です」
――私は、もう一度笑った。

新たな日常を、見つけられた事を祝って。

82 :束の間の夢。:2001/07/02(月) 18:01
――天野さんが、少し、笑ったのが、見えた。

死に至る眠りの中で、笑った。

僕の、少しだけの、弱い電波が、きっと――

彼女に――束の間の、素敵な空想を、

見せる事が、出来たのだろう。

生きていたなら、守れたなら、確かに生まれたはずの、日常。

今度こそ、僕の意識は途絶える。

暖かな手。

好きだった人。

守りたかった――美汐ちゃん。

畜生。

なんて、無様。

僕は、空を見ようとして。

結局、それを見る事も出来ず――

終わった。

――漸く。

83 :束の間の夢。:2001/07/02(月) 18:07
【005天野美汐 064長瀬祐介 死亡】
【少年、郁未 その場に留まるが、それから後の行動は不明】

84 :111:2001/07/02(月) 18:12
>>73
ラスの報告から死亡報告を削除。

85 :名無しさんだよもん:2001/07/02(月) 21:19
>>63-73の『Voicelass Screaming』はアナザー扱いとなりました。
書き手の皆様、編集サイトの方はご注意下さい。

86 :名無しさんだよもん:2001/07/02(月) 21:25
>>85
なってないでしょ?

87 :名無しさんだよもん:2001/07/02(月) 21:33
85は煽りです。無視お願いします。

88 :Take Out作者:2001/07/02(月) 21:46
>>85>>87
NGは僕のミス作品について出された物です。『Voiceless〜』にではありません。(タイトル訂正あり)

89 :歪曲 - 1:2001/07/02(月) 22:41
パァァアン――

そんな音が、聞こえてくる。
もはや聞き慣れた音。この島で、幾度と無く聞いた音。
その音に、往人は歩む足を止めた。
「――近いな」
呟く。
3つ、重なって聞こえていた足音は全て止まっていた。
無論、往人に聞こえる以上は近くに居る者には全員聞こえている。
晴子も。
そして観鈴も、その音に足を止めていた。
「――また」
観鈴が、口を開く。
「また、誰か、撃たれたのかな……」
沈痛な面持ちで。
暗く、沈んだ声で、そう呟いた。
もう、死は見飽きた。
その島のあちこちに転がる死骸――。
目の前で、腕が飛ぶ光景すら見ているのだ。
だからこそ、辛いのに違いない。
「……けったくそ悪いわ」
隣に立った晴子が、ぼやく。忌々しげに。

―――ァァアアあっ――

続けて、響く奇声。

90 :歪曲 - 2:2001/07/02(月) 22:42
晴子は、さらに顔を顰めた。
「行こか――気分悪なるで」
そう言って、観鈴の肩に、優しく手を置く。彼女なりの配慮。
――観鈴は、俯いたまま、答えない。
「観鈴?」
往人が声を掛ける。
それと同時に、観鈴は、きっ、と顔を上げた。
使命感を帯びた――そんな顔。
二人に、嫌な予感が走る。
「わたし、行ってくるっ――」
――悪い予感とは何故そうも当たるものか。
森の奥に向かって、二人に、顔を見ずにそれだけ言った。
「ちょ、観鈴っ――!?」
晴子が咄嗟に出した手を、避ける。
そのまま、その手にシグ・ザウエルショート9mmを握り、駆け出した。
「観鈴っ!」
返事は無い。
振り返りもせずに、そのまま奥へと消えて行く。
――無論、少し遅れて二人も駆け出した。
「何やってんだあいつは……」
走りつつ、ベネリM3ショットガンに弾を入れる。
念のためだ。
「……ホンマや、捕まえたら一発殴らなあかんわ」
そう言って、傷を抑えていた左手で拳を握った。
その両手には、何も握られてはいない。

91 :歪曲 - 3:2001/07/02(月) 22:43



―――。
どうして走っているのか。
二人を置いて、何故突然走り出したのだろう?
足は震えている。
勢いだけで飛び出したわけだが、銃を握る手も震えている。
恐らく、撃つ事など到底、無理だ。
だが。
足は止まらない。
止める気も無い。
――嫌だった。
このゲームが。
殺し合いが行われる事が――
自分を護る為に、往人が誰かを殺そうとする事が――
そして、自分の為に、母親が傷付いた事が――。
どうして、こうならなければならない?
何故、殺し合いなどする。
―――。
分かってる。
そんな事は、誰にでも分かる。
恐怖。
恨み。
そして、生き残るという欲望。
それらが、血の惨劇を引き起こしている。
自分は、殺せない。
だが、殺す事が出来ないからこそ、何か出来る事があるのではないか?
そう思った。
だからこそ、走る。
手遅れになる前に。

92 :歪曲 - 4:2001/07/02(月) 22:43

……無論、それだけではない筈だ。
走りながら、思う。
――もう、足手まといになるのはこりごりだ、と。
銃を握る。
確かな重みを持ったそれが、僅かに勇気を与えてくれるような気がした。
そして木々の間を抜けていく。



「―――」
「―――」
無言。
最後の繋がりを求めて、堅く手を握った二つの死体。
少年は、悲壮な顔を。
もはや光を灯さぬ瞳を、遠い空へ向けて――泣いていた。
それでも、少女は、微かに笑っていた。
死の直前に何を見たというのだろう?
無論、彼らには知る由も無い。
「――この島に居る以上は」
少年の声。
「殺さなくては、生きる事が出来ない。他の誰かの命を奪って、自分だけが生き残る」
拳を握る――
腕が震えているのは、崩壊によるものだけではあるまい。
その一見静かな表情の内に潜むのは――怒り。
「ふざけた話さ――」
締めくくる。
郁未は、返さない。

93 :歪曲 - 5:2001/07/02(月) 22:44
――二人は、もはや目の前で死んだ彼をただのマーダーとは思っていなかった。
否。この島に居る全てのマーダーもそうだ。
彼らは、この島の被害者。
狂った島の中で。
何かの理由の為に、他の誰かの命を奪っていく。
悲しみを巻き起こし。
そして最後に、己もその中で死ぬ。
彼は。
きっと、本当に、彼女を――
「――埋める?」
提案。
ぽつりと呟かれた郁未の言葉に、少年は無言で頷いた。

本で穴が掘れるわけがない。
無論、包丁でもだ。
適当に、大きめの枝を包丁で叩き折る。
郁未はそれを少年に投げ渡した。
「傷、大丈夫かい?」
――郁未の服には、あちこちに切れ目が作られていた。
ピアノ線。
切れた事で助かったものの、あれで無事でいられる筈も無い。
服の切れ目から、微かに血が滲んでいるのが見えた。
「大丈夫――舐めれば治るわ」
かつ、と枝を叩く音。
「その時は、手伝ってもらうわよ?」
「――やれやれ。良い趣味してるよ」
苦笑気味の、溜息。
それは、暗い、暗い雰囲気を吹き飛ばそうとするようで。
――そして、随分と儚いものだった。
かつ、と枝を叩く音。あと少し。
かつ。
――ばきん。

94 :歪曲 - 6:2001/07/02(月) 22:45

「……っ」

人の声。
咄嗟に、振り向く。
――少女が居た。
その手に、銃を握り。
左手で、口を抑え。
そして、愕然と、その目が見るのは。
二つの死体。
――違う。
違うんだ!
二人は、そう叫ぼうとして。
だが、それよりも早く。
さらに二人の人物が、森の影から現れる。
「観鈴っ――」
男と、女。
見た事の無い顔。
その二人は。
少女の様子に気付いたようで。
彼女の見ていたそれに、目を見開いた。
――ああ。
どうせなら、蝉丸さんだったら良かったのに――。
何でこうなってしまうのか、といった顔で。
少年は、そんな事を思った。



【003天沢郁未、048少年 023神尾晴子、024神尾観鈴、033国崎往人と接触】

95 :彗夜:2001/07/02(月) 22:46
書きました。

96 :彗夜:2001/07/02(月) 23:16
訂正です……
少年と往人はずっと前にNo.20にて面識がありました。


男と、女。
見た事の無い顔。
その二人は。
少女の様子に気付いたようで。
彼女の見ていたそれに、目を見開いた。



現れたのは、男と、女。
――あれは。
ずっと前に――このゲームが始まった頃に、少しだけ言葉を交わした人物。
確か、国崎往人という名前だった筈だ。
共に連れている女は、知らない顔。
国崎は、少年の顔を見て、僅かに眉を寄せ。
それから、少女の様子に気付いたようで。
少女の見ていたそれに、目を見開いた――。


といった感じで修正お願いします。
どさくさに紛れてあちこち改変してますが気にしないで下さい(逝)

97 :男二人。史上最大の作戦(1/3)By林檎:2001/07/03(火) 00:22
「外から見た感じだと施設はこれぐらいの大きさだと思うのだが」
 蝉丸さんがペンで基地のだいたいの形を描いてみる。
「まぁ地下がどうなっているかは分かりませんけど、確かに…」
トン……トン…トン…
 俺がその施設の外周三箇所を指でたたく。
「ここが俺達の見つけた入り口。裏のこことここ辺りに脱出口がありそうな雰囲気ですね」
 自分なりの推理。的確なポイントだと我ながら思う。蝉丸さんの表情が驚嘆のそれになる。
「君は一般人だろう? なかなかの推理力だ。私が考えていたのと変わらん」
「はは…。臆病なだけですよ」
 リビングルームに男二人。作戦会議は続いていた。
 ん?
 そう言えば…。
「蝉丸さん。晴香さんは今何してるか知ってます?」
 一人だけ、自分が行動を把握していない人物がいるのに気づいた。
「彼女なら、ドラム缶見つけたからドラム缶風呂をする。とか言って外で準備していたぞ」
 は?

98 :男二人。史上最大の作戦(2/3)By林檎:2001/07/03(火) 00:23
「ド…ドラム缶風呂っすか!?」
「うむ。少々危険だとは思うのだがな。やはり婦女子は気になるらしい」
 確かに最近皆風呂に入っていない。常に活動しているので汗はだだっかきだ。
婦女子と言わず、男の俺でもそろそろ気になる。
「ふむ…そうだな。施設うんぬんよりそっちの方を決めるのが先決かもしれないな。
 男としてやらぬわけにはいくまい」
 蝉丸さんはもう一枚紙を取り出し、この家のだいたいの形を絵にする。
「耕一君。君ならどうする?」
 え? そんなこと言われてもなぁ…。真面目な顔で言われても…。
 確かにマナちゃんや初音ちゃんはともかく、晴香さんあたりは覗いてみたい気はするな〜。
 ぐっ…。いかんぞ男耕一。そんな情けない行為を初音ちゃんにでも見られてみろ。
 「お兄ちゃんのエッチ〜!!」ばしっ!
ぐらいは食らうかもしれん…。しかしこっちには戦闘・隠密のプロ。蝉丸さんがいるわけだし、
ちょ〜っと俺の好奇心もムラムラ〜と…。
「そうですね。こことここ辺りが最適なんじゃないかと…」
 自分なりの推理。的確なポイントだと我ながら思う。しかし蝉丸さんの表情が落胆のそれに変わる。
「残念だ耕一君。そこでは遠すぎる。確かに視界は確保できているが、部屋の中からというのは決定的にまずい」
 え? だってそれ以上近いと、確かに楽しいけど見つかる可能性が…。

99 :男二人。史上最大の作戦(3/3)By林檎:2001/07/03(火) 00:23
「特に最重要警戒地点のこの繁みから彼女らが襲われた場合。対処に大きく時間がかかってしまう。
 他の参加者が長距離射程武器を持っていないとも限らんしな。
 耕一君は攻めは得意でも、警護には向いていないのかな?」
 え?
 …。
 ……。
 ………。
 しまったーーーーーーーーーー!!
 一人だけで不謹慎な想像していたのかぁぁぁ!!
 先生…すっごく恥ずかしいじゃないかーーーー!
 不謹慎な僕を許しておくれよ初音ちゃん…。

カタン

 俺の魂を現実に連れ戻した、廊下からの物音。
 出てきたのはマナちゃんと月代ちゃん。
「あ、彰くんの様子はどうだった?」
 当然の問いにビクッと体を硬直させるマナちゃん。
「ああ、あ、げ…元気。元気なんじゃないかなぁ…?
 あはは、あはははははは…」
「ふむそうか、なら良かった。だがもう少し休ませて体力を回復させておきたいな」
「体力を回復…ねぇ……、余ってんじゃないかしら(ボソッ」
 ??
 さっぱり要領を得ない。
 しかし俺にはもうひとつ疑問がある。
 月代ちゃんの仮面ってなんなんだ?
(;´д`)

【083三井寺月代 再び(;´д`)】
【092巳間晴香  ドラム缶風呂準備中】

100 :名無しさんだよもん:2001/07/03(火) 04:08
新感想&討論スレ
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=994090959

ちょっと荒れてます。

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