5ちゃんねる ★スマホ版★ ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50  

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

葉鍵ロワイアル!#8

1 :名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 18:25
基本ルール 、設定等は前スレ熟読のこと。

・書き手のマナー
キャラの死を扱う際は最大限の注意をしましょう。
誰にでも納得いくものを目指して下さい。
また過去ログを精読し、NGを出さないように勤めてください。
なお、同人作品からの引用はキャラ、ネタにかかわらず
全面的に禁止します。

・読み手のマナー
自分の贔屓しているキャラが死んだ場合は、
あまりにもぞんざいな扱いだった場合だけ、理性的に意見してください。
頻繁にNGを唱えてはいけません。
また苛烈な書き手叩きは控えましょう。

前スレ
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=991580312&ls=50
感想スレ
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=992962217&ls=50
感想、突っ込んだ議論、NG処理、アナザー没ネタ等にお願いします。
そして、絶対にNG議論は本スレで行わないように。

その他のリンクは>>2-5に。

2 :名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 18:27
>>274
それはない。

3 :名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 18:27
#3
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=990070115
#4
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=990388662
#5
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=990550630
#6
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=990948487

ストーリー編集(いつもありがとうございます)
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Spade/1168/index.htm
データ編集(現在停止中)
http://members.tripod.co.jp/hakagitac/
アナザー(外部)
http://green.jbbs.net/movie/bbs/read.cgi?BBS=568&KEY=993054328

4 :名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 18:37
>>2
なんて迷惑な誤爆だ…

5 :名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 18:41
リンクが>>2限定じゃなくてよかったよね。

6 :111:2001/06/21(木) 18:41
祝新スレ。
物語もそろそろ佳境。
読み手、書き手、新しい方も古い方も皆様頑張って行きましょう。m(__)m

7 :名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 18:42
過去の感想スレ
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=991842052&ls=50

関連スレ
「みんなダンディとゲッツしない?」
http://cheese.2ch.net/leaf/kako/989/989108228.html

8 :名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 18:52
何か不恰好になってしまいましたが、
気にせずいきましょう。

9 :日常との決別(1/4):2001/06/21(木) 19:24
ジャキッ……
いつでも引き金を引けるようにしながら崩れかけたドアを機関銃で開く。
「やはり…誰もいませんね……」

崩れかけた喫茶店、いや、喫茶店であったもの。
先のにぎやかな雰囲気を知っている者にとってはただの廃墟と感じられる。
「ここにいるわけがないですね」
篠塚弥生(047)はそんな言葉とは裏腹に意外そうな顔で店内を眺めた。
水瀬秋子はここにはもういない。
戦闘態勢を解かないままに店内を一通り調べまわす。
やはり、人影はない。

――私はここから動く意志は残念ながら無いのよ。

かつての秋子の言葉。だが、ここにはもういない。

あの時喫茶店にいた面子はもう秋子を除いて死んでしまった。
ならばここに敵が押し入ったのか…?そして皆殺しにした――
(そんなわけありませんね)
死体どころか血痕のひとつもないここで戦闘が行われたとは考えにくい。
――ちなみに一体、男の死体が奥の部屋に安置されているが、それは弥生も知っていることだ――
つまり、ここを秋子達が移動するまでは少なくとも戦闘は行われていない…ということになる。

(ならば、どうして秋子さんは動いたのか……)
カウンターの奥へと入り、コーヒーをドリップする。約3人分のコーヒーを。
もはや喫茶店とはとても呼べない寂れた店内に、香ばしい匂いが漂った。
動きやすいように荷物を整理しながら思案を巡らせるが、すぐにそれを断ち切った。
(根拠のない憶測など並べても意味がありませんね)

10 :日常との決別(2/4):2001/06/21(木) 19:24
今の弥生が知りたいことは実はあまり多くない。
危険人物。
誰が闘いなれているのか、誰がゲームに乗っているのか。
そして誰が生き残っているのか。
それらを相手にする時が、一番危険だからだ。
弥生が最後まで生き残った場合、それらと交戦する可能性が一番高い。
最後まで残っている者が戦闘もロクにできない烏合の衆と考える方が愚かなものだ。

「そういえばもう一人ここにいましたね…確か国崎往人さん…でしたね」
弥生とほぼ入れ違いに出て行った青年の名と、顔を思い浮かべた。
秋子以外に、生き残ってる喫茶店にいた者。
まだ名前は呼ばれていない。彼が今何をしているかは知らないが、お互い生きていれば必ず会えるはずだ。
恐らくは殺し合いの中で。

11 :日常との決別(3/4):2001/06/21(木) 19:27
あまり派手に動くべきではない。
確実に、仕留められるときにだけ動けばいい。
それが生き残るために弥生が選んだ道だった。
現在複数で群れて行動している人間は決して少なくはないだろう。
喫茶店での秋子達がそうであったように、
森の中で闘った、女性とは思えない程力強いお下げの少女達がそうであったように。
闇討ちで倒したカップルがそうであったように、
毒を受けた少女と、その少女を守ろうと爆死した悲しい二人がそうであったように、
マナと、そして炎の中で息絶えた少女がそうであったように、
弥生と、守りたかった二人が…そうであったように。
多人数相手となると、真正面から闘えば分が悪い。
(負けるわけにはいかないのですから)
それでも、弥生はここ、喫茶店へと足を運んでいた。

誰も知りえることはなかったが、本当の敵にも宣戦布告を果たした。
あとは進むだけだ。ただ、最後の決心がまだ足りない。
弥生の心はまだ冬弥、由綺と共にあったから。
危険を承知で喫茶店へとやってきた理由はそこにあった。

12 :日常との決別(4/4):2001/06/21(木) 19:28
出来上がったコーヒーをそれぞれ3つカップに注ぐ。
一つは弥生の分、一つは由綺の分、そして最後に冬弥の分。
そしてわざわざカウンターの表側へと回りこんでから席へと座る。
「恐れ入ります」
まるでそこに喫茶店のマスターがいるかのように頭を軽く垂れる。

周りから見れば滑稽であったかもしれない。
だが、それでも弥生は日常を演じる。確かに存在したその日常を。
ささやかな日常の幸せが、今弥生の中に去来する。
今はただ一つの形見となってしまった彼女のニードルガンと、冬弥の特殊警棒を取り出した。
(私なりの…けじめですわ)
手のつけられていないコーヒーカップの前へと、それぞれ一つづつ置いて。
「そろそろ時間ですね……」
残ったコーヒーを喉へと流し込む。それはいつもよりとても苦い。
「――さようなら」
軽く会釈。直動的な動作で踵を返すとそのまま喫茶店の扉をくぐった。
もう壊れてしまった喫茶店に、冬弥と由綺、そして弥生が望んだ、還らない日常を置き去りにして。

後には空のカップ、そして未だ湯気が立ち昇る二つのカップの前に寄り添うように置かれたニードルガンと特殊警棒だけが残されていた。


篠塚弥生【ニードルガン、特殊警棒放置】

13 :弔い - 1:2001/06/21(木) 20:07
がちっ。
冷たい鉄の音。
結局、なつみの頭を銃弾が貫く事は無かった。
僅かに遅れて、風の如く駆け付けた晴香の蹴りが飛ぶ。
正確に腕を狙ったそれは、なつみの銃を教会の壁に吹き飛ばす。
衝撃に持っていかれた腕が、なつみの身体を床に転ばせた。
「―――」
なつみの顔は、呆然としたものだった。
何が起こったか分からない、という顔ではない。
何故、どうして、といった顔か。
死ねる筈だった。
復讐を果たし、今、まさに、「自分の居場所」をまた取り戻す筈だった。
しかし。
「弾切れ、ね――まぁ、随分良いタイミングじゃない?」
皮肉げな晴香の声。無反応。
「自殺なんて止めろって、お告げなんじゃないの?誰だか知らないけど、まぁ、良い店長さんよね」
「わ、私は――」
「うるさいわね」
辛うじて開いた口を、晴香が閉ざす。
その目に浮かぶのは怒り。侮蔑。
「あんたも、あいつも、ぐだぐだぐだぐだ殺せだの何だの勝手な事ばっか言って……。
 いい加減、反吐が出るわ」

14 :弔い - 2:2001/06/21(木) 20:08
なつみの顎を掴む。
長椅子の横から引きずり出すと、晴香はそれを無理矢理立たせた。
……が、すぐ崩れ落ちる。ちっ、という舌打ちの音。
「復讐とか何だか知らないけど、折角残った命を大切にしようって気があるの?
 死にたくない人達だって一杯死んでるのに?
 ふざけんじゃないわよっ!」
教会中に響き渡る、怒号。
晴香の前にへたり込んだなつみが、ようやく、びくりと身を震わせた。
「誰かのお陰で生き残ったなら――生き残ってほしかった人がいたなら。
 その人の分まで、生きてやる。それが礼儀でしょ。
 それを、殺して、奪って――挙げ句には放棄。店長さんが泣いてるわ」
「――だったら、どうしろって言うの?」
立ち上がる。
睨み付ける。
火花が散った――ように見えた。
「『居場所』も無い。生きる意味も無くなったのに。それなのに、生きろって言うの?」
「無いなら、探せばいいじゃない」
「……ありっこ無いわよ!」
「探そうともしないで、無いだなんてよく分かるわね。あんた、不可視の力でも使えるの?
 それが、放棄してるって言ってんのよ。分かってないのね」

15 :弔い - 3:2001/06/21(木) 20:08
「――っ!」
激昂。
右手を、血が滲む程に握ると晴香の胸ぐらを掴み上げた――
もはや、相手の手に握られた刀の存在すら、忘れていた。

だが、結局。
その拳が放たれる事も無く。
なつみは、再び、その場にへたり込んだ。

右手の内から、うっすらと、血の線が引かれた。

16 :第七回定時放送 そして一つの疑問:2001/06/21(木) 20:49
「おはよう、諸君。これから定時放送を行う。
 011大庭詠美 014折原浩平 017柏木梓 020柏木千鶴 031霧島佳乃
 061月宮あゆ 066名倉由依 078保科智子 082マルチ
 以上。
 残りわずかとなってきたことなので、生存者発表も行う。

 001相沢祐一 003天沢郁未 005天野美汐 009江藤結花 019柏木耕一
 021柏木初音 022鹿沼葉子 023神尾晴子 024神尾観鈴 029北川潤
 033国崎往人 037来栖川芹香 040坂神蝉丸 043里村茜 046椎名繭
 047篠塚弥生 048少年 050スフィー 064長瀬祐介 068七瀬彰
 069七瀬留美 079牧部なつみ 083三井寺月代 088観月マナ 089御堂
 090水瀬秋子 092巳間晴香 094宮内レミィ 099柚木詩子

 それでは、健闘を祈る」


御堂と詠美は、思わず顔を見合わせる。
呼ばれるはずのない名前。
「どうして、お前が死んでいる?」
この時点ではまだ、二人は気付いていなかった。
先程詠美が嘔吐した際に、爆弾が吐き出されていたことに。
その爆弾が、実は発信機代わりとなっていたことに。

17 :断罪。:2001/06/21(木) 20:57
わたしは、それでもやはり怖かった。
頼るべき人はいた。自分をずっと護っていてくれた、――
けれど、他にもたくさんいた、頼れる、信じられる人から、逃げてきたのはどうして?
――そう。自分は怖かったんだ。
大切な人を傷つけるのが。きっと自分の中の、エルクゥが、
きっと。きっと、きっと傷つける。
だから逃げてきたのに。
彰お兄ちゃんを傷つけたくない。傷つけたくない。
わたしの為に、彰お兄ちゃんを傷つけるなんて、信じられる人を傷つけるなんて。
それが、すごく怖い。
傷つけて、彰お兄ちゃんに、皆に嫌われるのが怖いんじゃない。
傷つけて、殺してしまって、皆を失ってしまうのが、怖い。

でも、一人は嫌だ。
寂しい。怖い。怖い。怖い。
一人は嫌だよ。
前に向かって歩かなくちゃいけない。生きて帰りたい。
先に入った放送では、爆弾は既に解除された、という事らしい。
――でも、逃げられない。どうやって逃げれば良いんだろう?
どうやったら、誰も傷つかずに、帰れるんだろう?
前向きに行きたい。でも、皆が死ななくちゃ、自分は帰れないんだとしたら?
嫌だよ。皆が死ぬのも、自分が死ぬのも、嫌だよ。
日常に、そう、あの楽しかった日常に、帰りたいよ――
けれど、皆、もう傷ついている。日常は粉々のガラス片になっている。

その瞬間、楓お姉ちゃんの顔を思い出して、わたしは泣きそうになる。
もう逢えない、大好きなお姉ちゃん。
あれだけ泣いたのに、まだ涙が出る。
日常がだんだん壊されていく。帰れたとしても、もう、お姉ちゃんはいないんだ。

もう、わたしには、日常がない。

18 :断罪。:2001/06/21(木) 20:57
帰れたとしても、もう、何処にもあの楽しかった日々がないんだから、
生きていたってしょうがないかも知れない。
――ずっと死んでしまう方法を考えていて浮かばなかった。
でも、死のうと思えば簡単に死ねる。
舌を噛みきってしまえば、すごく、すごく苦しいだろうけど、
きっと終わりになる。
涙を拭いて、わたしは、小さく溜息を吐いて。
顎に力を入れて、それで、楽になれる筈だったのに。
――そこで、見てしまわなければ良かった。

「彰、お兄ちゃん……?」
わたしの顔を見て、驚愕の表情を浮かべて、そして、倒れた。

少しだけ、微笑っているように見えた。

「彰お兄ちゃんっ!」
わたしは思わず駆け出していた。

――君が傍に行けば、大切な彰お兄ちゃんは傷つくかも知れないよ?――

わたしの中から、そんな声が――聞こえた。
もう一人のわたしが、わたしを止めようとする。
けれど、わたしはそれを――強引に突っぱねた。
「わたしは、絶対に傷つけない! わたしは絶対に守るんだ!」
だから、あなたは邪魔なの!
出てこないで! わたしは柏木初音! エルクゥじゃない!

それで、わたしの中の声は――完全に途切れた。

わたしは、やっと柏木初音に戻った。

19 :補足説明:2001/06/21(木) 20:57
この放送は午前6時のものです。
教会組は話の最中にかかったのか、一段落ついてからかかったのかは次まかせ。
誰が放送をかけたのかも任せます。

例によって、放送以前の話書く場合は【放送以前】と注意書き入れたほうが親切です。

20 :断罪。:2001/06/21(木) 20:58
――俯せに倒れた彰の身体を起こす。額から流れる血は、ぽたぽた、と、わたしの服を汚す。
倒れてもまだなお離さない右手のサブマシンガン、そして、傷つき過ぎるほど傷ついた身体。
活力の息吹からは程遠い、乱れた息。あの優しかった微笑みを作る事すらままならぬ、そんな身体。
「彰お兄ちゃん! しっかりして」
「眠い、眠い」
「彰お兄ちゃんっ!」
何とか、何とかしなくちゃ!
大切な人をこれ以上、失いたくない!
街に、街には薬なんかがあるかも知れない。
ここからそれ程離れているわけではない。
わたしは、自分よりずっと大きな身体をした彰お兄ちゃんを担ぐ。――まだ、サブマシンガンを離さない。
わたしの身体も、疲れていないと言うわけではない。
けれど、漸くわたしは、自分の意志で、行動を行っているのだから。
それ程、苦ではなかった。
吐息が温かい。――まだ、彰お兄ちゃんは生きている。絶対に死なせたくない。
街までは1キロも無いはずだ。わたしは大きく深呼吸をすると、森の中、最短距離で動き出した。

――その時、――七回目の、放送が流れた。
わたしは、がぁん、と――頭を打ったような、そんな衝撃を受けた。

「おはよう、諸君。これから定時放送を行う。 ――017柏木梓 020柏木千鶴――」

21 :恒星。:2001/06/21(木) 21:00
初音を追って走った二人――七瀬留美と柏木耕一が、その放送を聞いた瞬間に感じた事。
初音が森の中に行くのを追うのも忘れて、その放送に耳を奪われた。
へたり込み、何やら言葉を呟いて、――そして、心底、死んだような眼で、朝露で濡れた草地を、見つめる。
二人が二人とも、そんな様子だった。
ちづるさん。あずさ。かえでちゃん。
そう、聞こえた。
今まで積み上げてきたものすべてが壊れてしまったかのように。
特に、青年――柏木耕一は、握りしめた拳を何処に振り下ろせばいいか迷うほど、
いっそ、自分を殴ってしまいたい、殺してしまいたい、と思うほど、
そんな絶望的な衝撃を受けていた。
七瀬も、短い付き合いだったとはいえ、それなりに楽しく過ごした友達が三人、ここで凶刃に倒れたのだと言う事を知り、
どうしようもない、そんな顔をした。
「ちくしょぅ」
なんて、泣き出しそうな顔をするのだ。
「オレは、一体、何のために」
守れなかった。
命に代えても守るのだと、そう思っていた事が。
失われた。それも、同時に、二人。
「畜生! 畜生、畜生っ! 千鶴さんっ! 梓っ! 楓ちゃん!」
笑顔を思い出す。
淑やかで、優しい笑みをいつも見せてくれて、自分の心を救ってくれた、大切な人。
活発で、いつも明るい笑い声を聞かせて、自分の心を励ましてくれた、大切な人。
少し哀しげな、けれど、誰よりも深い笑みを見せて、自分の心を癒してくれた、大切な人。
「千鶴さんっ――、梓っ――、楓、ちゃんっ――!」
何で。
何で自分は、三人を失わなければならない?

22 :恒星。:2001/06/21(木) 21:01

「耕一さんっ!」
声が聞こえた。今は放っておいてくれよ、留美ちゃん。うんざりだよ。
なんでこんなところで、オレ達は命の削りあいをしてるんだよ?
もう嫌だ、全部、皆殺しにでも――
「今、そこに、高槻がいてっ――初音ちゃんの行った方にっ」
――それで、耕一は我に返った。
「――本当かっ!」
これ以上失って溜まるかっ!
悲しみに耽るのは、もう少し後にしなけりゃいけない。
千鶴さん、梓、楓ちゃん。――必ず、必ず初音ちゃんだけは、守るから。
オレが、守るから。
三人について泣くのは、それからもう少し後で良いだろう?

「行こうっ! 必ず奴らを止めてみせるっ!」
「うんっ! これ以上殺させはしないわっ!」
すぐ傍の森に入る。ここに初音は消えた筈だ――
戦場は、森。
走り、走り、初音の姿を捜す。
何処だ、初音ちゃんっ――

そこで、銃声を聞いた。
自分のすぐ、耳の裏で。

「あぐっ!」
七瀬が苦痛の表情を見せる。どうも脹ら脛の裏を打たれたようだ。
「大丈夫か、留美ちゃんっ!」
「な、なんとかっ」
襲撃者は誰だ、この糞忙しい時にっ!
――耕一は、襲撃者の姿を見て、目を丸くした。

振り返り、そこに立っているのは――初音を追っているはずの、高槻だった。

23 :衛視。:2001/06/21(木) 21:02
お姉ちゃん達が死んだ。――みんな、死んだ。

――絶望に打ち拉がれ、へたり込んだ初音を、それでも突き動かそうとしたのは、
自分が今ここで泣いていては、背中に背負う大切な人を、失ってしまうと分かっていたから。
「――泣くのは、もう少し後でも良いよね、お姉ちゃん」
涙を拭いて、初音はまた立ち上がった。

――パァン。

驚いて振り向く。
耳に残響するその音色は、確かに今、自分の傍で鳴った。
そこに、立っていたのは。
「ううん、全く、こんな子供がここまで生き残るとは、心外だったぁ!」
――にたり、と嫌な顔で笑うのは、――高槻だった。

――初音は、がたがたと、震え始めた――
「まったく、こんな子供も殺せないような、そんなヘタレばっかりだったのかあ!」
言って、高槻は、わはははは、と、そんな笑い声を出した。
向けられた拳銃。
そして、何も武器を持たない初音。
明白だった。
結局、自分は、誰も守れなかった。
ずっと、守って貰ってきた。
そして、たくさんのものを失った。

大切なものを守れなかった。

がたがたと、歯が噛み合わない。
怖い。
腰が抜けて、動けない。
背中では、彰が息を乱して、初音に身体を預けている。
自分が死んだら、守れない。

24 :衛視。:2001/06/21(木) 21:03
「よおし、オレだって別に鬼じゃなあい!」

――ふと、高槻は、そう云った。

「一分間だけ待ってやるぅ! その間にここから逃げればいいっ!」
そう云うと、また、高らかに笑った。
遊ばれている。強者の余裕だ。
だが、他にどんな選択があろうか?
震える身体を抑え付ける。震えるな、今はここからっ――
彰を担ぎ、きっと高槻を睨むと、初音は駆け出そうとした――
「ちょっと待てえ!」
「その背中に担いだ美青年はそこに置いていけぇ!」

高槻は、そんな事を大声で叫び、初音を呼び止めた。
馬鹿な。そんな条件など呑めないっ――自分は、最早生き残りたいんじゃない。
大切な人を、守りたいだけなんだ!
だが、初音の考えているような事ではなく、
「別に他意はなあい! 重いだろう!」
――条件ではなく、忠告だったようだ。
「重くない!」
ムキになって言うと、
「……まあ、好きにすればいいっ! 一分後には、その可愛い顔が弾け飛ぶだけだぁ!」
初音は今度こそ駆け出した。

スピードが出ない。一分間というのは短すぎる。
息が乱れる。身体は疲れていない。――心が、疲れているのだ。
精神に圧迫がかかる。
もっと速く走らないと、彰が。彰が、殺される。
――もう、多分、一分経った。
だが、まるで追いかけてくる様子がないのは、何故だろう?
そう思って、少し息を吐いて、足を止めた時、

パァン。

25 :衛視。:2001/06/21(木) 21:04
思いも寄らぬ所から、拳銃の音が聞こえた。
初音が右を見た瞬間、
――その弾丸は、彰の横腹に命中した。
ぐらり、と身体が揺れる。
彰は呻き声一つ上げなかったが、身体が横凪に倒れる。
そして、同時に初音もバランスを崩し、泥に顔を埋めた。
そして、その衝撃で、彰を離してしまう。

自分の背を離れ、ごろごろと、数メートル先まで転がっていってしまう。
拳銃で撃たれた。
これ以上怪我をしたら、彰が危ない!
いや、呻き声すら上げなかった、彰は、もう――
嫌だ、嫌だ、死なせたくない!

汚れた顔を顧みず、初音は倒れた彰に縋ろうとした。
だが――

「それじゃあ、可愛らしい顔が、台無しだぁ!」

――いつのまに、そこまで来ていたのだろう?
――高槻は、拳銃を構えたまま、そこで、あの嫌らしい笑いを見せていた。

ここで死ぬんだ、と思うと、初音は、涙も出なかった。
騙された。あいつは初めから待つつもりなんて無くて、自分を、なぶり殺しにしたんだ。
こんなところで死にたくなかったし、
彰を、死なせたくなかった。
「本当に可愛い少女だあ! オレの趣味にぴったりだぁ!」
悔しそうに見つめる初音を見て、高槻は、そう笑った。

26 :衛視。:2001/06/21(木) 21:07
――最悪の事を、今、この目の前の男は口走った。

「別に今すぐ殺す必要はあるまいっ! 少しくらいお楽しみだぁ!」
恐怖で歪む。死ぬより怖い事を、今から自分は――
心臓の音。嫌だ、嫌だ、嫌だ――
「いやっ! 来ないで! いやっ!」
「呼んでも誰も来ないぞっ! お前はオレに犯されるのだぁ!」
絶望。嫌だ。汚されたくない、こんな、嫌だ、嫌だ、嫌だ!
高槻の乱暴な腕が、初音を強引に押さえ込もうとした時、

「――誰かは、来ますよ」

――そんな、声が聞こえた。
その瞬間、びくりと高槻は振り返った。
自分に掛けられた力は緩む。
そして、初音もその顔を見た。

金色の髪、そして、美しい大きな瞳。

右手には拳銃。
それは、ベレッタという名前の銃。
片割れの高槻が――持っていたもの。

鹿沼葉子は、心底不愉快そうな眼で、高槻を見つめた。

27 :包有。:2001/06/21(木) 21:08

「どうだ? ん? 鹿沼葉子」
たくさん殺しているかあ? 汚らしい顔を見せて、その男はそう言った。
高槻が、その悪意と共に尾行しているのに気付いたから、鹿沼葉子はすぐに、その男と対峙した。
空腹を抱えて歩いているのに、何だ? この男は。腹立たしい。
自分は一応ジョーカーの役割をやっている筈だ。こいつに尾行される筋合いはない。
「なんたってお前はジョーカーだもんなあ! 不可視の力も、制限されているとはいえ、それでも常人よりは、ずっとずっと強いもんなあ!」
「ええ、まったく」

「だが、これまでだわ」
かちゃり、と銃口を向ける。
「知っての通り、オレもこのくだらねえ殺し合いに巻き込まれたあ! だから、お前らみんな皆殺しにしなくちゃいかん!」
色々動いて貰ったが、結局これだ! 死んでくれ!
――手元には、折れた槍。ぐっと、それを握る。――
「この森はオレのクローンが包囲しているぅ! 森にいる数人を、殺す為だあ!」
――葉子は、それを聞いて、小さな溜息を吐く。

「わはははは! そんな槍ではオレは殺せなああ」

早かった。気付くと、葉子は高槻の横に立ち、
高槻が言い終わる前に、その首元を、短くなった槍で、とん、と叩いた。
それで、高槻は倒れた。
とどめを刺す前に、やる事があった。

銃を拾い、葉子は駆けた。――何処の誰かは知らないが、これ以上人を死なせるわけにはいかない。

「わたしはジョーカーです、ただし、あなた達にとっての」

そして、――同じ顔をした、高槻と――葉子は、対峙したのである。


【柏木耕一 七瀬留美 初音を捜して森に入るも高槻と遭遇】
【柏木初音 七瀬彰 高槻と遭遇も、そこに――】
【鹿沼葉子 ベレッタ高槻を倒し次の高槻と対峙】

28 :補足説明:2001/06/21(木) 21:15
本編に割り込んだので、もう一度。
この放送は午前6時のものです。
教会組は話の最中にかかったのか、一段落ついてからかかったのかは次まかせ。
誰が放送をかけたのかも任せます。

例によって、放送以前の話書く場合は【放送以前】と注意書き入れたほうが親切です。

29 :名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 21:36
http://green.jbbs.net/movie/bbs/read.cgi?BBS=568&KEY=991237851&START=973&END=977&NOFIRST=TRUE

現在までのキャラ別所持アイテム一覧。
(本編が)いくつか間違いあるので、これを参考に正確にお願いします。
混乱を避けるために。

30 :安堵&焦燥(1/3):2001/06/21(木) 22:43
――おはよう、諸君。これから定時放送を行う――

学校内まで流れてきた死亡者放送。
本来なら悲しむべきもの。
実際、何人もの人間が亡くなっているのだ。
心の底から喜ぶことなんてできやしない。
それでも…いや、悲しいからこそ、出来る限り全身で喜びを表現した。
「やったよ!私らの死亡放送流れたよ!」
「うっ、うぐぅ!?」
むりやりあゆを引き寄せて喜びをぶつける。
パシパシ…グッグッ…!!
「うぐぅ……手がひりひりする……」
「そう言うなって、千鶴姉の勘は当たってたってわけだ」

――残りわずかとなってきたことなので、生存者発表も行う――

その声と重なって、今度は生き残りの参加者の名前が呼び出された。
三人の知り合いの名前も読み上げられる。
本来なら喜ぶべきこと。
だが…
「いけない…」
千鶴の顔に安堵の表情が浮かんでいたのもつかの間。
「耕一さん達は…私達が生きてることなんて知りません……!!」
その事実は、あゆと、梓の顔を曇らせるには充分だった。

31 :安堵&焦燥(2/3):2001/06/21(木) 22:43
「すぐに伝えに行かなきゃ…」
耕一や、初音の悲しむ顔が手にとるように分かる。もしも自分達が耕一の立場なら同じように思うはずだ。
楓を失った悲劇……それを再び味あわせてしまったこと。
「どうして忘れてたんだ、私達はっ!」
たとえ偽りの放送であっても、何も知らない耕一達の事を思うと強く胸が痛んだ。

「私が行きます。これは、提案した私の責任だから……」
千鶴が、スクッと立ち上がる。
初音の居場所は分からない、だが、耕一達は未だ怪我で小屋に寝ているはずだ。
「ちょっ……千鶴姉!?」
「もしかしたらまだ耕一さん達はあそこにいるかもしれません
 ですが今の放送を聞いたら…たとえどんな怪我を負っていても動くはずです。
 耕一さんは……そんな人ですから」
「だったらみんなで行けばいいだろ?」
「……私達は死んでいます、体面上では。見つかるわけにはいかないでしょう?
 私一人の方が安全です」
「だけど…千鶴姉!」
「あゆちゃんもいるのに?…危険を犯すのは私だけで充分だから」
「千鶴ね――」
「すぐに帰ってくるから。できれば耕一さん達も連れて…ね?
 その後すぐに初音も探さないとね。
 ……でも、もしも私が2時間経っても戻って来なかったら…
 梓、その時は自分の思う通りに行動して」

そして、梓に有無を言わせず千鶴は教室を飛び出していった。

32 :安堵&焦燥(3/3):2001/06/21(木) 22:44
「バカだよ…千鶴姉……」
梓が呟く。
「いつもいつも…自分だけ責任を背負って……バカッ……」
すぐに追いたかったが…梓には出来なかった。
確かに、全員で動くのはあまり得策じゃない。
ただ耕一達に会いに行くだけなのだから……理論では。

それでも…
「外には殺人鬼がいるかもしれないんだぜ…どうして自分だけ……」
感情はそうはいかなかった。
「うぐぅ…たぶんボクのせいだよね…ボクが足出まといだから……」
「あゆのせいじゃないよ…」
梓があゆの頭を優しく撫でてやる。
「うぐ…」
くすぐったそうにあゆが目を細めた。
(絶対に帰って来てくれよ、千鶴姉っ!!)
2時間経っても戻って来なかったら……あってはならないことを強く祈りながら、撫で続けた。


千鶴は駆ける。影から影へ。
(どうして私はこんなことに気付かなかったのかしら…ごめんね、初音…耕一さん)
後悔してもしきれない。
しかも、初音に限ってはどこにいるのかも分からないままだ。
早く安心させたい、早く伝えてあげたい。
(私は…私達は…生きてますっ!!)
見つからないように、かつ全速力で木々の間を駆ける。耕一や七瀬と別れた小屋へ。

もちろん千鶴はまだ知らない、そこに浩平の死体があること、
そして放送が流れるずっと前から耕一達がそこにいないということに。


【柏木千鶴 小屋へ移動開始】
【柏木梓、月宮あゆ 学校で待機 残り2時間】 

33 :最悪の遭遇(1):2001/06/21(木) 23:54
二人は小躍りするように先行していった。
呆れて物も言えない。
柏木初音、鹿沼葉子というエサに釣られて、立てた作戦さえ忘れて
駆け出していった。
爺どもに馬鹿にされるのもやむなし、と思うほど愚かしい。
(…最悪、だな)


まあ聞いてくれ…元々の作戦は、こうだ。
ベレッタが囮として、相手の視界に姿を見せる。
そちらに注目した相手の死角から、俺がボウガンで狙撃する。
ステアーはレーダーで位置を確認しながら随時情報を提供し、
もしもの時はAUGで二人を援護する。
基本は多勢で少数を罠にかけ、互いに援護するということだ。
この作戦は既に巳間晴香と名倉由依の二人に試して、ほぼ
成功している(誤差はあったが、安全性の高さは証明された)。


ところが、だ。
要のステアーが先行するという事は、援護もなく、情報もなく
ただ三人がそこに居るだけなのだ。
(…烏合の衆って奴だ)
溜息をついて、一人残ったマスターモールドはボルトのケースを
取り出す。
ステアーの情報をアテにして、矢は装填していなかったのだが、
今ではそうもいかない。

注意深く、毒矢を取り出そうとした、その時。
最悪の相手が走ってくるのを発見してしまった。

34 :最悪の遭遇(2):2001/06/21(木) 23:56


(か…柏木耕一だと!?復活しているのか!)
鬼の雄体。
結界の束縛さえ引きちぎり、凄まじいまでの強さを見せつけたという
恐怖の鬼が駆け込んでくる。

マスターモールドは慌てて懐の拳銃-----ニューナンブM60、こんな
名前で呼ばれたくなかったので黙っていた-----を取り出す。
そのまま震える手で発砲した。

パン、パン!

「あぐっ!」
恐怖のために弾は逸れ、女に当たる。
あの女は誰だろうか?いや、問題になるのは柏木耕一だ。
女は後でゆっくり始末すればいい。

急いで藪の中を移動しようとしたそのとき。
僅かな隙間から、偶然目が合ってしまった。
鬼が叫ぶ。
「た-----高槻!?
 あそこだ!敵は高槻だ!」
「なんですって!?」

ふん、キサマに驚かれる筋合いはないぞ、と若干落ち着きを取り戻し
発砲する。今度こそ、外しはしない。

パン、パン!

35 :最悪の遭遇(3):2001/06/21(木) 23:58

鬼の素早い移動に一発目は外れ、なんとか二発目を命中させる。
肩から掛けたシーツの中央付近に穴が開く。鬼がうめく。
「ぐっ!」
膝をつく。
(よし!)
手応えに勇気を得て、更に撃ちこむ。
「死ぬがいいッ!」

パン、-----

何がおきたか、解らなかった。
一発、発砲したものの外れた。
手を強打され狙いを外し、銃を取り落としていた。

いつのまにか、女が鉄パイプをひっさげて突進していたのだ。
こんな女が参加していたか?
こんな凶暴そうな女が-----いたか?

「女!キサマ何者だあッ!」
ナイフを引き抜いて応戦しようとしたが、これも叩き落される。
即座に拾おうとしたそれを、慣れた仕草で蹴り飛ばす。


「なめないでよ?七瀬なのよ、あたし」

ああ、そう言えば。
やたら凶暴な女子高生が参加していると、聞いた事があったな。
追い詰められながら、マスターモールドは思った。
(…最悪、だな)

36 :名無したちの挽歌:2001/06/22(金) 00:00
…書いてて高槻が不憫になってきたw

耕一は”防弾服”を…ええ、着ていますとも。

37 :戦友との再会 〜御堂〜:2001/06/22(金) 00:22
「―――それでは、健闘を祈る…ブツッ」
放送終了。

御堂と詠美は顔を見合わせる。
「お前、生きてるよな?」
「あたし、死んでないよね?どうして呼ばれてるの?」
詠美はきょとんとした表情で聞いた。
「知るか。お前、何か恨まれるようなことでもしたんじゃないのか?」
冗談半分で御堂が言う。
「し、知らないわよぉ!きっとこれは何かの間違いなのよっ!そうよ!そうだわ!ホント勘違いにも程があるわよっ!」
「いや、放送は確実だ。間違いなんかねぇよ」
「むっかぁ〜〜〜!!あたしの推理にケチつける気!?じゃあ何であたしは生きてんのよっ!!」
自分の推理を一蹴されてしまったエセ探偵・詠美ちゃん様のブーイングの嵐が吹き荒れる。
「知るか、俺もそれが不思議でならん。だいたい生死の判断をどうやってしているかも分かんねぇからな」
キュピーン!
詠美ちゃん様の頭脳がフル回転!一瞬で答えを弾き出した!
「そんなのかぁ〜んたんよっ!誰かがあたし達を見張ってんのよっ!」
「そんな奴らの気配はしねぇな」
ガクーン…
今日の詠美ちゃん様の頭脳は不調らしい(いつも不調だが)
「だいたい見張るも何も、見失っちまえばそれでお終いだろうが。発信機か何かありゃあ話は別だが…発信機?そうか!」
御堂は急に立ち止まった。

38 :戦友との再会 〜御堂〜:2001/06/22(金) 00:24
彼の背中に追突する詠美。鼻を押さえながら抗議する。
「ちょっ、ちょっとぉ〜〜〜!急に止まんないでよぉ〜!!鼻ぶつけちゃったじゃない…」
「…お前、あそこで吐いたとき、腹の中のモン全部吐き出しちまったのか?」
詠美は(いきなり何言ってんのよ、バカじゃないの?)と、言おうと思ったが、御堂の眼がマジだったので正直に答えることにした。
「え?あ、うん。ぜんぶ吐いちゃったわよ?それがどうしたの?」
「ゲロん中に金属が無かったか?よく思い出してみろ」
詠美はよく思い出した。サケ、サバの味噌煮…胃液、そして丸い球体。
「金属?ああ、あったわよ、銀色の丸い…」
「なるほどな、やっぱりか…体内爆弾の起爆装置、解除されてたのか。しかしうかつだったな。
 発信機と生死判定装置もセットだったか。だが、こりゃあひょっとするとひょっとするかもな」
一人で納得している御堂を見て、何となくちょおむかつく詠美ちゃん様。
「ちょっとぉ!あたしにも教えなさいよぉ!!」
「いいだろう、教えてやる。まず、俺達がこの島に連れてこられた時に、管理側の奴らが参加者全員の胃袋の中に、
 『爆弾・発信機・生死判定装置』が一体化したシロモノを入れやがったんだ。
 もし、奴らに逆らったり、装置を吐き出そうとしたら、ドカンだ」
「え?あたし…それ、吐いちゃったよ?なんで爆発しなかったの?」
「そう、そこがミソだ。高槻って奴が主催から降ろされた時、ゲームを面白くするために奴らは爆弾の起爆装置を切りやがったんだ。
 つまり吐き出しても爆発しないわけだ。ここが落とし穴だ。奴らすっかり発信機と生死判定装置の存在を忘れてやがった。
 おかげでお前は水瀬名雪の傍らで死亡扱いになっている、ってなわけだ、どうだ?わかったか?」
「え?さっぱり。もう一回お願い」
「…だからな――――」

39 :戦友との再会 〜御堂〜:2001/06/22(金) 00:25
「…と、いうわけだ。…分かった…よな?」
御堂はゼーハー言いながら4回目の説明を終えた。
「なるほどね☆謎はぜんぶとけた!!」
詠美はくるりと一回転し、ビシィ!!と指差し、
「つまり、あたしは奴らの目をかれーにあざむいたルパン的そんざいなわけねっ!真っ赤なぁ〜♪バラはぁ〜♪…」
「(さっきから何を聞いていたんだお前は…俺の苦労を1行にまとめやがって…)」
御堂の肩にどっと疲れがのしかかった。
その時だった!
茂みから何者かが転がり落ちてきた。
ガサガサッ!バキバキバキィ!!ドカッ!!
茂みから現れたのは2人の男女だった。
「お前は…!!」
御堂は2人の…異様な姿に驚愕した。
「ね、ねぇ、この人達…アンタの知り合い…なの?」
謎の男と詠美の目が合う。男は彼女に軽く会釈した。
「あぁ、知ってるぜ。もう…五十年以上も前からな」

40 :ツミビト - 1:2001/06/22(金) 00:27
オモチャのような銃。
しかしその実体は、濃硫酸を相手に振り掛ける残虐な兵器。
その銃口の先で、今、晴香が、なつみの銃を蹴り飛ばしていた。
――それどころじゃない。そうだ、茜だ。
振り向くと、白い床の上で茜が悶えている姿が見えた。
床が、紅い。
「茜ッ!」
駆ける。
床の上に跳ねた血が、ステンドグラスから差し込む光を浴びて禍々しい輝きを見せている。
――鮮血だ。
祐一が側に駆け付けると、茜が左肩を押さえているのが分かった。
既にどす黒い色に染まっていた肩口を、鮮血の紅がさらに新しい色を上から付け加える。
血に勢いが強い。早く、早く治療をしなければ。
――包帯……くそっ、そんなもの、あるわけ無い!
水鉄砲を放り捨てる。無いのなら、作ればいい。幸い、祐一の制服の袖は長い。それを切りさえすれば!
咄嗟に、茜の腰に差された短刀を取り出そうとして――
それを、茜の、血みどろの右手が払った。
弱々しく。
「ほっ……ほっといて、下さい」
絞り出すような、声。
拒絶の意志。
「何言ってんだ……?無視したら、死んじまうだろっ!」
「……いいんです、死んでも」
脂汗の浮いた顔が、ふっ、と静まった。
痛みが治まったわけではあるまい。右手が抑え続けている左肩の傷は、未だ血を吹き出し続けている。
「――色んな人を、殺して、きたんです。ただ、生き残ろうとしてた、だけの、人を」
「………」
「それに、私は――詩子を、撃ったんです。無二の、親友を……撃ったんです……!」
唇を、噛む。弱った力は、噛み切る事も無い。
倒れた茜からは、倒れ伏した詩子の姿が見えない――見えない事を、酷く、辛く感じた。
泣きそうだった。
「………。私は、償うべきです……みんなに。詩子に。それに……貴方に」
「それが……それで、死んでもいいって言うのかっ……?」
「――はい」
事も無げに、答えた。

41 :戦友との再会 〜蝉丸〜:2001/06/22(金) 00:27
「月代、大丈夫か?」
蝉丸は心配そうに月代の顔をのぞきこんだ。
「(;´Д`)ん…蝉丸たん…ハァハァ」
月代は異常なほど息が荒かった…
「(まさか、仙命樹の催淫効果か!?)」
とも蝉丸は考えたが、よくよく考えてみれば、自分の血など月代には一滴もついていない。
「月代、どうしたのだ?熱でもあるのか?」
月代の首筋に触れてみる、脈は正常だ。熱もない。…あえて言うなら言動が異常だった。
「(;´Д`)ハァハァ…蝉丸たんが私のウナジを…も、萌えーーーー!!」
「モエ?」
意味不明なことを口走りながら月代はすっくと立ち上がった。
「(もしや、この仮面が月代を操っているのか?だとしたら何とかせねば…)」
蝉丸は月代…いや、仮面に詰め寄った。
「仮面、いますぐ月代を操るのをやめろ!」
月代の肩を抱き、蝉丸は言い放った。凡人ならすくみ上がってしまうほどの迫力だ。
「(;´Д`)何を言ってるの?私は月代だよ?このお面は私の正直な欲望をさらけだしてるだけなんだよ。
 それにしても、怒る蝉丸も、も、萌えーーーー!!」
「む」
手の打ちようが無かった。月代は操られてなどいない…そればかりか、己の欲望…つまり正直な気持ちを出しているだけだったのだ。
「(;´Д`)ここから無事に出れたら蝉丸たんと結婚…したい…結婚…ハァハァ」
「………」
「(;´Д`)結婚したら…新婚旅行…どこに行こうかな…ハァハァ」
「………」
「(;´Д`)子供は何人がいいかな?2人?3人?…蝉丸たんて、ヤパーリ激しいのかな?ハァハァ」

42 :ツミビト - 2:2001/06/22(金) 00:27
がすっ。
何かが、固い何かに刺さる音。
振り返ると、ちょうど祐一の隣に一本の刀が刺さっていた。
「――人の話くらい聞いてなさいよ。相も変わらず、泣き言ばっかり抜かして……!」
刀の先。
へたり込んだ少女の前に立った晴香が――全身に怒りを漲らせて、立っていた。
足取りも荒く近づくと、茜を挟んだ祐一の反対側に立つ。見下ろすような視線。込められた、侮蔑。
「そこのヘタレ男――それで袖でも切って、こいつの肩でも縛っておくのね。
 ……私は、こいつに、話があるわ」
軽く、蹴り上げる。傷に響いたか、茜が、苦悶の声を上げた。
「何しやがっ……!」
「うるさいッ!!」
一喝。
ステンドグラスを叩き割らんばかりの怒号が、祐一の抗議の声を掻き消した。
一瞬の間。息を吐き出した。
「……あんた、死にたいのね?」
唐突な問い。
「……はい」
額に脂汗を浮かべつつ、やはり事も無げに茜は答えた。
その潔さに、晴香はさらに顔をしかめる――片膝を付くと、茜の頭を持ち上げ、顔に近づけた。
こう言った。
「なら、あんたのやる事は一つね――生きるのよ」

43 :戦友との再会 〜蝉丸〜:2001/06/22(金) 00:28
遠くから足音が聞こえた。足音の数は…2人。
「…月代、誰か来るぞ」
「(;´Д`)え?」
ガサガサッ!
月代を抱えた蝉丸はすぐさま近くの茂みに隠れた。
しばらくすると何かをしゃべりながら男女が歩いてきた。一人は見覚えのある顔だった。
「(ついに来たか、奴とは出会いたくなかったが…何とも奇怪ないでたちだな…)」
――――――御堂!(と、猫と毛玉と白ヘビと鳥類)
もう一人は分からない。17〜8歳ほどの若い女だ。
「(あの女…御堂に殺されずにここまで…一体何者だ)」
二人の会話が聞こえる。
「高槻…ろされた…、ゲーム…楽し…爆弾は爆発し…だ…吐き…ても…爆発しない…敵は…発信機と生死判…置…忘れ…バカだ…。
 あいつら…勘違いで…死んだこ…思いこんで…いる…吐き出せ…死んだこ…なる…場所も…分か…なる。ったっ…分かった…な?」
「(よく聞こえんが、爆弾…体内の爆弾は…吐き出しても…?)」
「つま…あた…の目をかれーに…いたルパン…ざい…ねっ!真っ赤なぁ〜♪バラはぁ〜♪…」
「(るぱん?何だそれは?外国人の名か?)」
ルパンのテーマソングに反応したのか、後ろの月代も歌い出した。
「(;´Д`) あいつのぉ〜♪くちびるぅ〜♪やさしくぅ〜♪抱きしめて〜♪くれとぉ〜♪ね〜だる♪蝉丸たん!抱きしめてっ!」
月代は蝉丸の雄大な背中にタックルをかまし、そのままぎゅうっと、抱きしめた。
「月代!?よせ!御堂に見つかるっ!!」
時既に遅し。蝉丸はバランスを崩し、月代と共に…
ガサガサッ!バキバキバキィ!!ドカッ!!
御堂達の前へ転がり込んだ。
「お前は…!!」
くんずほぐれつの二人を見て当然驚く御堂…不思議と蝉丸の頬が赤くなる。
「ね、ねぇ、この人達…アンタの知り合い…なの?」
名も知らぬ少女はこちらを警戒している。目が合ったので蝉丸は会釈で返す。
「あぁ、知ってるぜ。もう…五十年以上も前からな」
何故か御堂の表情は『敵意』ではなく、『なつかしさ』があらわれていた。

44 :彗夜:2001/06/22(金) 00:31
混じりました……申し訳ございません<「ツミビト」

45 :罪滅ぼし - 1:2001/06/22(金) 00:34
「人を殺した罪は、消えないのよ。過去の過ちは、ずっと後になっても、永遠に自分を苛み続ける。
 確かに、死ぬってことが罪滅ぼしになるかもしれない――
 だけど、そんなの、逃げ。自分がやった罪から、逃げようとしてるだけ。
 ――無責任なのよ、あんたは」
「―――」
「あんたも、そこのヘタレも、あいつも。命を、軽く見てる。最低だわ。
 人を殺したとか、そんなの関係無い――あんた達、最低よ。
 沢山人が死んだ中で、自分だけ生き残ったくせに、それを大事にもしないで。使い捨てだと思ってんじゃないの?
 うざったい――反吐が出るわ」
祐一が、袖を裂く音。
布がきつく縛られ、ぎゅっ、という音を立てる。その度に、茜の顔は苦悶の表情を見せた。無理もない。
――その中で、晴香の声は、淡々と響いていた。無論、後ろのなつみにも聞こえている事であろう。
「あの、詩子とかいう子だけじゃない。みんなそう。
 生き残ろうとして、頑張ってきた。何かしようとして、頑張ってきた。
 その上達に、あたし達はいるのよ――無駄に死ぬなんて、それこそ死者への冒涜だわ。
 あんた、死んでまでして罪を重ねる気なの?」

46 :罪滅ぼし - 2:2001/06/22(金) 00:35

――由衣。
自分を守る為に、死んだ仲間。
いや、由衣だけじゃない。
一緒に戦ってきた、仲間の死があって――今、私が此処にいる。
だから、無駄死にだけはさせない。
その誰かが、どれだけ辛くても。
その誰かの為に死んだ、他の誰かに、報いる為にも。

「………」
茜は――今度は、事も無げに答えなかった。逃れるように、目を逸らす。
「少しでも、償う気があるのなら――がむしゃらに、生きなさい。
 精一杯、戦って。それで、死になさい。
 そしたら、私も褒めてやるわ――地獄でね」
「――生きて、いいんですか?」
か細い声。
精一杯の問い掛け。
祐一も、その問いに顔を上げた。
「誰も許可なんてしないわ」
さらりと流す。
二人は、やや、驚いた顔を見せた。
晴香は続ける。
「生きる権利なんて、誰にもあるのよ。あんたなりに、生き残りなさい。
 ――それが、あんたの殺した人への、せめてもの罪滅ぼしよ」
「………」
布が縛られる音。
完全にとはいかなくても、きつく縛られた布が、血の流出を止めた。

生きる権利は、渡された。

47 :名無しさんだよもん:2001/06/22(金) 00:37
久々にギャグとシリアスの狭間でたのしんだーよ。

48 :運の尽き(1):2001/06/22(金) 00:40

喫茶店を出た後、弥生は山道に差しかかっていた。
次の獲物を捕らえるため、そして隠れ場所を探すため。

しかし上り坂にかかると、鞄の紐が肩に食い込む。
さっき荷物を整理したばかりなのに、やけに荷物が重い。
「何か入っているんでしょうか」
鞄の一つをまさぐると、分厚い本が見つかった。
「これ…、ですね」
弥生はそれを引っぱり出すと、足下に放った。
「それに鞄が多すぎます。私って…、欲張りなのかしら」
鞄は2つだけ残すことにして、その鞄に武器を放り込む。
銃は手持ちの機関銃を含めて6丁。
さっき置いていったニードルガンの代わりに、その中から2丁をベルトに差した。

「これで、しばらくは大丈夫でしょう」
弥生はおもむろに立ち上がり、再び歩き出した。

--

東の空からゆっくりと朝日が目の前の道を照らす。
その中を、スフィー達は黙々と山道を行く。
相変わらず神社は見つからない。無論、往人にも出会ってない。

そんな時だった。
山道を曲がった先、2,30メートルの所に人影を見た。
女性のようだ。
服は血に染まり、鬼気迫る表情。手には機関銃を持ち、さらに服のベルトには別の銃身がのぞいている。
先頭を歩いていた結花は、とりあえず後ろの二人を手で制した。
その時いきなり銃声が響くと、結花たちの頭上を弾道が通り抜けていった。

49 :運の尽き(2):2001/06/22(金) 00:41

曲がり角から結花達が出てきた時、弥生も少なからず動揺していた。
今まではこちらが待ち伏せするなどして、絶対的に有利な状況を作り出していた。
出会い頭に相手に遭遇するのは、多分初めてだろう。

それでも弥生は、すかさず機関銃を構え引き金を引く。
しかし運の悪いことは重なるもの、機関銃は数発発射されただけで、あとは空撃ちの音を響かせるだけだった。
やむなく弥生は機関銃を放り投げ、ベルトから別の銃を抜いた。
銃を構えた時、弥生にはまだ一呼吸出来るほどの余裕があった。
そして、引き金を引く。「タタタタッ」と発射音が響く。
しかしその直後、弥生は右脚に激しい痛みを覚え、引き金を引いたまま地面に突っ伏した。
何が起こったのか、すぐには理解できなかった。
上目遣いに相手を見ると、痛がってはいるものの出血している様子はない。
弥生は、手元に転がる弾を見て激しく後悔した。
そう、彼女が手にした銃はエアガンだったのだ。

50 :運の尽き(3):2001/06/22(金) 00:41

飛んでくる弾の痛みに耐えつつ、やっとの思いで取り出した銃から放った銃弾が相手の脚に命中したのを見て、
結花はようやく自分の体を見た。
弾が当たった腹部は痛むものの、どうやら大事にはなっていないようだ。
「大丈夫?」
「こっちは大丈夫」
スフィーの返事を聞くと、結花は銃を構えたままゆっくり前に進む。
向こうはさっきの銃を捨て、新しい銃を構え直そうとしていた。
「もう撃つのはやめて!」
説得するかのように、結花が叫ぶ。


初めての屈辱。
相手の銃弾に屈した弥生は、それでも反撃の機会をうかがっていた。
ベルトに差したもう1丁の銃―グロッグ17を取り出そうと、ゆっくり手を伸ばす。
相手は少しずつこちらに近づいてくる。「もう撃つのはやめて!」と叫びながら。

…私には、こうするしか生きる術がないんです。

ようやくグロッグを掴んだ右手を結花に向け、引き金に指をかけた。
だが、発射しようとした瞬間、脚の痛みが再び弥生を苦しめる。
グロッグから発せられた銃弾は結花の横をそれ、後方にいたスフィーの前で砂煙を上げた。
「ス、スフィーになんて事するのよ!」
もう一度、結花のデザートイーグルが火を噴いた。

51 :運の尽き(4):2001/06/22(金) 00:42

再び飛んできた銃弾は、弥生の右肩に突き刺さった。
右手の力が抜ける。目の前に血の流れが見える。
左手で銃を持ち替えようとするものの、手が言う事を聞かない。
「終わり…ですね」
弥生は、絞り出すような声でつぶやいた。

…どこで、歯車が狂いだしたんでしょう。

一瞬脳裏に浮かんだのは、昨晩男女二人を撲殺した現場。
あのとき持っていった鞄の中に、エアガンも入っていたなんて。

「もうやめて!」
結花が、弥生の左腕を掴む。
「どうして、どうして人を殺そうとするんですか!」
「…そうすることしか、私には残されていないからです」
弥生は、静かに語りだした。

「…私の知っている人は、もう死んでしまいました。私には、守るべき人も、守りたい人もいません」
「……」
「だから、私は決めたんです。最後の一人になって、生きてこの島を出ようと。…今となっては、もう無理ですけど」
弥生は前方を見遣りつつ、
「スフィーさん…でしたか。あなたには、守るべき人がいるじゃないですか」
「そうだけど…」

52 :運の尽き(5):2001/06/22(金) 00:43

その時、二人のやりとりを遮るかのように、放送の声が辺りに響いた。
『おはよう、諸君。これから定時放送を行う。』
死んだ者の名前、生存者の名前。
次々と読み上げられる名前を、みんな黙って聞いていた。

「あの中に、私が殺した人の名前もありました」
弥生が口を開く。
「いったい何人殺したんですか?」
「忘れました…。ただ、私はここまで無闇に人を殺し過ぎました。今は、その報いかもしれませんね」

薄れ行く意識の中で、弥生の脳裏にあの二人の顔が浮かぶ。

…由綺さん、藤井さん。こんなに早く、そちらへ行けるとは思いませんでした。

「だから、あなたこそ…生きてください。それが、死んだ人達の願いでも…あるはずです…」
そう言い残し、弥生は事切れた。
後には、結花の嗚咽の声だけが響いていた。

53 :運の尽き(6):2001/06/22(金) 00:44

「私…、殺してしまった…」
泣いている結花の元へ、スフィーと芹香が歩み寄る。
「……」
芹香のささやかな慰めの言葉に、結花はようやく泣き止む。
「この人、マネージャーさんだって」
参加者名簿を見たのか、スフィーが告げた。
「普通の人なのに、ここまで変われるんだ…」
「私、わたし、どうすればいいの? この人みたいに、最後の一人になるまで殺し合いするの?」
「落ち着いて!」
「……」
「…ごめん」

「そう、弥生さんが言ってた。あなたには守るべき人がいるじゃないかって」
「それって、私たち?」
結花は小さく頷いた。
「私たち、何があっても一緒にいよう。リアンや綾香さんだってそう願ってるんじゃないかな」
「……」
「うん」
「じゃ、指切りしよう」
そういって指を出そうとした時、
「でも、3人同時に指切りできないよ」
スフィーの言葉に、結花は思わず吹き出した。
「あっ、そうだね」
結花はスフィーと、その後に芹香と指切りをして、3人の絆を誓い合った。

54 :運の尽き(7/7):2001/06/22(金) 00:45

しばらくして、結花が歩き出そうとした時、
「……」
芹香が結花の裾を引っ張る。
「?」
「……」
「武器? もういいわ。あまりたくさん持ってても仕方ないし」
「……(ふるふる)」
芹香の懸念は、このまま武器を残しておくと誰かに使われる、という事だった。
「…そうね」
結花は、弥生の手元に落ちていたグロッグ17を拾い上げ、
「スフィー、これ持ってなさい」
と手渡した。
残りの武器は鞄にまとめて、そばの茂みに穴を掘って埋めた。
他の誰にも見つからないように。

そして、3人は歩き出した。結界の待つ神社に向かって。

========
【047 篠塚弥生 死亡。残り32人】

スフィー【グロッグ17(←弥生)を入手】

※グロッグ以外の弥生の武器は、道端に埋められています。
※ちなみに、文中に出てくる「エアガン」は、元は大庭詠美の支給武器。
 弥生が千堂和樹・柏木楓を殺した時に和樹から奪っています。

55 :運の尽き作者様へ:2001/06/22(金) 01:23
速やかに、感想スレ迄お越し下さい。

56 :名無しさんだよもん:2001/06/22(金) 01:31
教えて、運の尽きた人!!

57 :名無しさんだよもん:2001/06/22(金) 02:06
運の尽きは感想スレで決着がつく
もしくは作者から明確な説明があるまで採用を保留にしてください
これはほとんどの読み手の共通の意見です

注)NGじゃなくてあくまで「保留」です

58 :『運の尽き』注意事項:2001/06/22(金) 02:09
age

59 :分かたれたココロ:2001/06/22(金) 02:10
“う〜ん、ここは?私は…”
誰もいない海岸で人にはみえぬ少女は1日ぶりに目覚めた。

自らが気絶する前の記憶を辿っていくと

「3分で戻ります。もし戻らなければ私達2人を見捨ててここから待避してくださいね」
……
「芹香姉さん大丈夫?」
………
「舞!!!!」


”そうだ・・闇の人格が邪魔な自分が私を追い出してここに飛ばされたんだ。”
”思考の整理がついた少女は辺りを見まわしたが誰もいない。”
”憑依を出来そうな人がいればいいが自分の弱い霊力では生きている人には”
”とても無理だ。”

”私のまた別のココロは、未だ行方知れず、”
”見つけられれば闇の人格を止めることもできるがどうすれば良いのだろう?”


思い悩む中何処からか声が聞こえる。

「な……」
……
「んぐっ!? ぐっっっ……」
………

“ああ・・ 私がこうしてる間にも、誰かが傷つけあっている、”
もう傷付け合うのは止めて!!!”

祈るように叫んだ少女の体から小さな光が解き放たれた次の時、
少女の足元にあった潜水艦ELPODはドッグから姿を消し島の近くで漂っていた。

60 :揚陸艦隊1:2001/06/22(金) 02:23
揚陸艦隊は慌ただしい雰囲気に満ちていた。、

「ELPODより救援要請が出ている、支援を急げ!!」

揚陸艦隊は突然の出動要請にも、動揺することなく、
無事救出したのだが、、

「突然、救援要請を出すほどの何があったんだ?」

揚陸艦隊長兼外部監視責任者、郁田は、ELPOD艦内の生き残った兵士に問いただした。

「………」
生き残った兵士は、答えようとはしない。

答えないなら答えないでいい。強い奴が来たという事だろう。
しかし何故、あれだけの損害をもたらす奴に襲撃されて、
何故、無事に脱出できたんだ??

61 :揚陸艦隊2:2001/06/22(金) 02:26
郁田は、それが疑問であった。それを解き明かしてくれる者達からの連絡は
予定時刻を過ぎてもなく安否を心配していた。

「結界装置監視部隊からの定期連絡はまだか。予定より大分遅れているが」
郁田は問う、
「はあ…彼らが使用していた放送施設が破壊されていますので、生存していたとしても連絡が来るかどうか・・。」
オペレーターは困った顔で答えた時、

「!監視部隊からの連絡来ました」

“申し訳ありません!、放送施設が破壊されまして予備の施設への・・。”

「御託はいいから、結界装置周辺の状況はどうなっているんだ?」


“本来結界があった地域ですが、最早近づくこともままなりません。”
“近寄る者を区別なく攻撃しているようで、我が隊にも犠牲者がでました。“


「やはりあの時の閃光は…、それ以外に何か?
前回の連絡から、他にはどういう変化が起きている」


“これは先程、起きた事なのですが”
“ELPODが修理を受けていたドッグの真上で、数分の間ですが弱い結界反応が”
“見え、反応が消える間際に、一瞬強力な力を発して消えました、”
“現在消えた反応を捜索中です。”
“ただこちらに見られた反応は、どこか怯えたような物でしたね。”

「そうか、それでか。ELPODが犠牲者を出したとはいえ
無事だったのは、誰だか知らぬが感謝せねばな。」

62 :揚陸艦隊3:2001/06/22(金) 02:27

“それとこちらから聞きたいのですが先ほどの放送で、生きている者が死者として”
“放送されているのは、どういうことです?放送中に死者として発表されていた者が”
“動き回っていたのを目撃したのですが?”

郁田は、(何故島の監視者がそんなヘマをするのだ?)と疑問に思いつつも

「うむ、爆弾のことに勘付いた奴が何人かいるようだな。
こちらで対策は考える、そちらは調査を続行してくれ。」

無事保護したELPODをサポートしつつ、揚陸艦隊は再び島の沖へと
離れていく。。


【ELPOD   島を脱出、揚陸艦隊に合流】
【揚陸艦隊 島の近くから離れる】

63 :天使の微笑み:2001/06/22(金) 02:48
 ずっと張りつめていた緊張の糸が途切れ、今までの体と心の疲れが出たのだろう。
 茜はそのまま、意識を失った。
「……う……い、ち……?」
 詩子が呼び掛ける。
「詩子、どうした?」
 自分でも不思議なくらい穏やかな声が出る。
 この少女はもう虫の息なのに、もうすぐ死んでしまうのに。
 だから、最期には、泣き声なんかじゃなく、穏やかな声で。
 そう思った。涙は、後に取っておけばいい。
「……あ……か……ね。
 だい、じょう……ぶ?」
「おかげさまでな」
 手をとる。既に冷たくなりつつあった。
「あかねを……」
「茜を、どうした?」
「……てを……にぎら、せ……て……?」
「あぁ、わかった」
 気を失っている茜の手を取り、詩子に握らせる。
 詩子は瞳を閉じて、笑っていた。
 ただ、笑っていた。
 満面の笑顔。それはまるで、天使のようで。
 かえって、これから訪れる悲しみを、より大きくしているようだった。
「……あはは。あり、がとう……。
 あかね……あかね……」
 最期に何かをつぶやく。
 その声は小さく、晴香やなつみには届いていなかった。
 祐一には、聞こえた。
 思う、茜にも届いていて欲しいと。
「詩子……」
 涙が溢れ出る。
 最期まで、最期まで、我慢していられた。
 笑顔でいられた。

64 :天使の微笑み:2001/06/22(金) 02:49

「……詩子……」
 眠っている茜が、呟く。
 その頬にも、涙が一筋流れていた。
 どんな夢を見ているのだろう。
 せめて今だけは、幸せな夢を見させてあげて下さい。
 たとえ目覚めが残酷でも、せめて、今だけは。

 祭壇の十字架に、祈る。
 神様の祝福は訪れるのだろうか。
 それは誰にも、わからない。

【柚木詩子 死亡】

65 :名剣らっちー:2001/06/22(金) 02:55
とりあえず、おさまってきたんで一度アップしときますね。
念の為アドレス付き。

http://www.geocities.co.jp/Playtown-Spade/1168/index.htm

66 :名剣らっちー:2001/06/22(金) 02:55
あ、本スレに書いちゃった…ごめんなさい。

67 :血塗られた微笑み:2001/06/22(金) 03:27
「……強い子ね」
 沈黙を破ったのは晴香の一言だった。
 床に刺した剣を抜き、言った。
「あなたも見習いなさい?」
「あぁ、そうするよ……」
 晴香は決して祐一に顔を見せようとはしなかった。
(泣いてる……まさかな?)
 続いて床に捨てた硫酸銃を拾い、いまだ呆然としているなつみに向かい言った。
「悪いけど、茜は絶対に殺させない。絶対にだ」
 それは、決意。
 自分に、茜に、そして――詩子に。
 強くなる。茜を守り、そして生き抜くくらいに。
「ようやくまともなことも言えるようになったじゃないの。
 あなたは、どうするの?」
 晴香がなつみに問う。
「……私は……」
 なつみが何かを言いかけた――その瞬間だった。

68 :血塗られた微笑み:2001/06/22(金) 03:28

 放送が、聞こえた。
 死んだ人間の名前を読み上げる、あの放送だ。
 詩子の名前はなかった。だがそれよりも――

「……あゆ?」
 確かにあった。月宮あゆ、と。
 何人も、祐一の知り合いは死んでいった。
 名雪も、美坂姉妹も、舞も佐祐理さんも。
 真琴にいたっては、自分の目の前で死んだのだ。
 そして今、まっすぐに自分の想いを貫き、死んでいった親友がいる。
 その上更に、現実は重くのしかかろうとしているのか。
 目の前が真っ暗になりそうだった。
 今に沈んでいきそうだった。
「!?」
 それを結果的に救ったのは、突如教会に溢れた気配。
 おおよそ、教会という場所には似つかわしくない空気。

 ――殺気だった。

「許さない……。
 あの二人まで……許さない!!」
 殺気の主――晴香が叫ぶ。
 祐一もなつみもその空気に完全に飲まれ、一言も声を出せずにいた。
 保科智子、マルチ、そして神岸あかり。
 僅かな時間しか共にいなかったが、それでも彼女達は友人だった。
 いや、親友だった。
 高槻との会話を思い出す。
 結局何もできなかったのだ。何も。
 刀をきつく握りしめる。
 噛み締めた唇から血が滴る。
 地獄の底まで、高槻を追い詰める。
 この世の全ての苦しみを、奴達に味あわせる。
 そうと決まれば、こんな所にいつまでもいる場合ではない。
 ドアに向かって、走る。
 祐一の声が背に聞こえるが、晴香には届かなかった。

69 :血塗られた微笑み:2001/06/22(金) 03:30

 ドアが開く。
 開けたのは晴香ではなかった。
 現れた女の異様な目の輝きを捕らえ、思わず晴香は足を止めてしまった。
 それだけの狂気が、その瞳にはあった。

「祐一〜、ようやく見つけたよ〜」

 女が、言った。
 明るい声で、血に汚れきった姿で。
「なゆ……き?」
 祐一は呆然とつぶやく。
 何かが間違っていた。
 あんなに背が高かっただろうか? あんな髪型だっただろうか?
「うん、そうだよ〜」

 何かが、間違っていた。
 目の前の光景がうまく認識できなかった。
 天使の去った教会に、血塗られた微笑みが舞い降りた。

70 :戦乙女 - 1:2001/06/22(金) 18:06
激痛。
痛みで、崩れ落ちそうになる――しかし、それ以上の闘志が彼女を、七瀬留美を奮い立たせていた。
長森瑞佳――。
折原浩平――。
仲間達は、次々と殺されていった。
失った痛み。それに比べれば――この程度。
鉄パイプを、握り直す。
目の前の"高槻"は、冷や汗を浮かべている。少女の思わぬ反撃に、驚愕し、畏れを抱いていた。
もはや彼女の念頭に、「乙女らしく」という概念は消え失せようとしていた。
いや、たった一つだけ「乙女」があるのかもしれない。
それは。

71 :戦乙女 - 2:2001/06/22(金) 18:06

――ガキのくせに、生意気な……!
マスターホールドは、全身を襲う寒気と格闘していた。
ボウガンを握ろうとする手が、おぼつかない。
……そこで気が付いた。毒矢を挿入していない――これでは、鈍器にしかならない。
つくづく、自分のタイミングの悪さに苛つくばかりであった。
――恐れている?鬼ではなく、ただの女を……?くそったれ、なめやがって。殺してやる。
威勢のみだ。
実際の所、マスターホールドには全く武器が無い――ナイフは、遠くに蹴りやられた。拳銃もだ。
頼みの綱のボウガンも、矢の挿入に時間が掛かってしょうがない。多分、その間に、頭を砕かれる。
じりじりと後退していく――ますます、武器が離れていく。
しかしそこで。
視界の内に、ゆっくりと身を起こす鬼の姿が見えた――
――馬鹿な!?確かに当たった筈……!
その一瞬の狼狽を、七瀬は見逃さなかった。間合いを詰め、素早く頭部への打撃を繰り出す。
女子供の一撃だ――。たった一撃では死なない。だが、鉄パイプだ。身を屈め、やり過ごす。
そこに目に入る、相手の足の怪我。
マスターホールドの口端が――にぃ、と笑みの形を象った。
無理矢理な体制からの蹴り。それは、的確に七瀬の傷口を抉った。
「あぐぁっ!」
これには、七瀬も崩れ落ちた。
――チャンス。今なら、脇を通り抜ける事が出来る。
鬼の声。女の脇を通り抜けた――銃までどれくらいだ?そう遠くまでは飛んでいない筈……。
拳銃。己の希望。
それを掴むべく、マスターホールドは走った。
だが。

72 :戦乙女 - 3:2001/06/22(金) 18:07

次の瞬間。耳に届く、怒号。
そして、空を切る音。

がすっ!
自分の頭が叩かれる音――マスターホールドは、何故か、それが遠くから聞こえてくるような錯覚に囚われた。


「あぐぁっ!」
思わず、声が出た。撃たれた傷が、衝撃で、血を吹き出す。今度こそ崩れ落ちた。
前を睨み付ける。"高槻"が、笑っている――。
それは、七瀬の、底知れぬ怒りと闘志を燃え上がらせた。
――弱点狙って叩くなんて……
「こんの……っ、ゲスがぁぁぁっ!」
およそ乙女とは似つかわしくない台詞。
それと同時に、立ち上がりつつ、身体の捻りを加えた鉄パイプの一撃を"高槻"の後頭部にお見舞いした。
丁度裏拳に似た感じだ――が、その威力は数倍。鉄パイプは、その一瞬だけ恐るべき「凶器」と化した。
がすっ!
クリーンヒット。衝撃に、"高槻"の身体が顔面から叩き付けられた――流石に起きあがってはこなかった。
ひょっとしたら、もう起きる事もないかもしれないかもしれない。
反動を利用し、立ち上がる。脛の裏の傷は、未だに痛みの協奏曲を奏でている。
しかし彼女は立った。立っていた。
その後ろに在る、輝く太陽の光を浴びて。

――それを、どんな「乙女」に当てはめる?


即ち、「戦乙女」。

73 :彗夜:2001/06/22(金) 18:46

訂正です。
マスターホールドではなくマスターモールドでした……(汗)

74 :血染めの少年1:2001/06/22(金) 19:27
見張り……警備は五分の刻みで交代された。
とは言ったものの、それは通路に配置された二人組みのシフトに過ぎなかったが。
そして、静かに終焉を迎えた二人の下に、別の担当だった者たちがたどり着く。

うっすらと香る血の匂い。
ありえないはずのそれを感じた二人は、
本能的に自分が戦いを求めているのだろうと自己完結させる。

しかしそれが現実のものであることを彼らはすぐに知ることになる。

彼らは、二人の死に様を目撃することができた。
なぜなら、惨状はそのままに放置されていたから――。

「これは――」
息を呑む。
だが慌てふためくような愚行はしない。
久しぶりの血の匂いが、ただそこに在るだけ。
二人の傭兵は、全く同じ思想の下にあった。

一つは、床に膝をつくような形で絶命している死体。
目を、いや瞳孔を開いたまま、口は半開きでよだれを垂れ流し、
そして失禁している様子が見て取れる。
居たたまれなくなった傭兵の片割れはそのまぶたを閉じると、
やや乱暴に蹴りつけてその死体を横たえた。

75 :血染めの少年2:2001/06/22(金) 19:28

もう一人のほうはさらに凄惨だった。
その死体は直立不動だった。
もう絶命している……、首を落とされているというのに、
そこに立っている。
かつて頭のあった部分からは、ぴゅっぴゅっと血が断続的に吹き出すだけでなく、
その他に体を伝って地面に流れている。
言うまでも無くその体は、自らの血に紅く染まっていた。
そしてそのすぐ側に転がっている球状の物体。
――首だ。
自分が死んだことにも気付いていないかのようにカッと目を見開いたまま、
自分のものであった肉体を凝視している――ように見える。
凄惨、凄絶にして残酷。
戦場にいるのではない、
これではまるで猟奇殺人の現場に居合わせたかのようだ――。
さすがに”それ”に触れるのは躊躇われた。
よって二人はそれを黙殺せざるを得なかった……。

だがこのときにおける最も重要な事柄も、目の前の二人の死ではなかった。
仲間ではない、強いて言うならば単なる同業者。
そんなものよりも重要なもの――即ち、敵。
それも飛びきり上等な敵の存在を、傭兵の嗅覚は確実に捉えていた。

「……どうする?」
「……より勝算の高い方をとる、それが戦術と言うものだろう?」

二人は頷くと、そのまま背中を合わせてじりじりと後退する。
……すでに二人ともサブマシンガンを構えていた。
単体で二人を殺害したと言うならそれは恐るべき戦力であり、そして速さである。
仮にも傭兵を――戦闘のプロフェッショナルを、声をあげる暇すらなく殺しているのだ。
むしろ、相手も同じような人種であると考えた方がいい――。

周囲の空気には敵対者の匂いを感じられない。
鼻をつく鮮血の香りがそれをかき消したとでも言うのか。
ともかく、今のところは襲われそうな気はしない。

76 :血染めの少年3:2001/06/22(金) 19:35
一歩、……二歩。

油断なく構える二人の傭兵は、着実に歩みを後ろへ進める。
ドッグにまで後退できれば、ほぼ敵の勝ちの見込みは無い。
ここが辛抱時だった。

――ずいぶんと長い一時。
一瞬が、永遠に感じられるような――。

分岐口の手前まで二人が移動してきた時、とうとう動きがあった。
カランッカランカンッ!
「!!」
ダダン! ダダン! ダダダン!!
即時反応し、マシンガンを連打する。

「……どうだ?」
「……確認できん……な」

マシンガンはまだ下ろさずに、二人は音の発生源について話した。
白い煙が立って少し煙たいが、そんなことに文句をいう余裕すらなかった。
死と隣り合わせになっている今、たとえどれほど経験を積んでいようと、
――いやそれだからこそ彼らは常に臆病だった。
彼らにとって生き延びる為の要素は、常にそこから出づるものだった。
そもそも暗闇に等しいそこは視界がひどく悪い。
硝煙が晴れても、あまり彼らに恩恵は無かった。
「……ちくしょう! 何もいないのかよ!?」
悔しそうにその片割れは言った。
「油断するな、どこに潜んでいるか分からんぞ!?」
そういった矢先――。
ガッ!!
岩壁を蹴る音が聞こえた。
反響が小さいせいでどこからの音であったかをはっきり二人は聞き取ることが出来た。
――上だ。

77 :血染めの少年4:2001/06/22(金) 19:36

「くっ!?」
すかさず向き直ってマシンガンを向ける、だがその行動はほんの少しだけ遅かった。
バシィィィッッッ!
「ガッ……」
延髄を強打され、そのまま岩盤で頭部を強打した傭兵の一人はそのまま崩れ落ちた。
「おのれぇっ!」
接近されてマシンガンが思うように放てなくなったもう一人は、
そのままそれを剣として使って殴りつけた。
ゴスッ!
鈍い音がする。
その一撃は後ろから肩に入っていた。
おそらく骨にまで響いていたのではないか?
だが、その動きは止まらない。
そのまま、右手にしていた分厚い書を、遠心力に任せて振り回す。
ガンッ!
見た目どおり、いやそれ以上の重さを持ったそれが、もう一人の傭兵の顔にめり込んだ。
うめくことすら出来ずに、その男もまた崩れ落ちた。

「……はぁ、はぁ、はぁ」
荒い息。
異様に鼓動の早い心臓。
もはや感覚も無い肩の傷。

ドクン。

そして、もう一度大きく刻まれる鼓動。

「……よーし、そこまでだ」
明かりが差し込んでくる方向から、そんな声が響いた。
「これほど派手にやって気付かれんとでも思ったか?
 4人を殺ったその技量は賞賛に値するが、それもここでお終いだ」
傭兵の隊長はそう高らかに言った。
別地点、そして艦の担当になっていた全員、総勢六名が集まって、
一列に、マシンガンを構えている。

78 :血染めの少年5:2001/06/22(金) 19:37

闇に光る金色の目、それはひどく冷たくこちらを見つめている。

「撃て」

マシンガンの第1射と、敵が何かを放り投げたのは、ほぼ同時のことだった。

バッ!

視界をふさぐ”何か”。
一瞬だけ動きが硬直する。
「紙か、小賢しい目くらましだ! それごと撃ち殺してやれ」

ダダダダダダダダ!

だが銃弾はそれを通しきれない。
あらぬ方向へと方向へとずらしそして――それを返してきた。

キィンキィイン!!

来るはずの無い銃弾が、丁度両サイドに並んでいた傭兵に的中する。
一人は脚を、もう一人は頭部に――即死だった――。

「反射兵器だと!?
 くっ、銃撃をやめて一次後退しろ! このままだと同士討ちになる」

満足に体が動く連中はその命令に従って後退する。
だがそれを待ち望んでいたかのように突進してくる敵。
その動きは隊長格の男――指示を出していた――へと向かっていた。

79 :血染めの少年6:2001/06/22(金) 19:38
「何ィッ!」
飛び込んできたそれともつれながら隊長は転がった。
周りの連中も誤射を恐れて発砲することが出来ない。
何度も言うが、これほどの接近戦ではマシンガンは役立たずに過ぎなかった。

――この威圧感、只者ではない。こんな人間が参加者に混じっていようとは……。
ニヤニヤしながら話す、在りし日の高槻の顔が過ぎる。
……そう、黒い悪魔だ……。
――こいつなのか!?

がすっ。

「ぐぁ……」
こめかみを強打され、男の意識は闇に落ちた。
その男の首根っこを掴んだまま、残った傭兵の方に気を向ける。
――あと3人、だが、ずいぶんと離れてしまった。
連中が戦闘の勝者に気付く――マシンガンを向ける。
撃たれれば――当然だが――死ぬ。

ぶん、と男を連中の方へ放り投げる。
それは”盾”となって銃弾の嵐を遮った。
その一瞬にマシンガンを拾う。
そして腰溜めに構えて放つ――。

ダダダダダダダダダダダダダ……!

だが、銃撃の効果も未確認のうちに連中は艦の内部に入り込んだ。

「しゅ、修理はまだかっ!?」
「いま少し時間がっ……」
「早くしろっ、化け物が迫っているんだぞ」
「無茶です! まだ自律修復モードにも入ってないんですよ!?」
「じゃあ早くそれにしろ!!」
負傷したものもいるのか、艦内に血の匂いが漂う。
だが、それを超える恐慌でそこは埋め尽くされていく。

80 :血染めの少年7:2001/06/22(金) 19:39

「んぐっ……、 ぐっっっ……」
「どうした、早くしろぉ!!」


――その時、何かがパッと輝いた。


ぼうっとドッグを見つめる。
そこにはさっきまであったはずの潜水艦の姿がなくなっていた。
一瞬のうちに、消えてしまった――。

「……うっ……がっ……あっ……あああああああ!」

突然胸をかきむしりながらもがく。
その右腕や額からは、破裂した欠血管が血を流している。

どくん!

もう一度大きく鼓動する。
そして、意識が途絶える――。


気が付いてみれば、もう朝日も昇る頃で。
目の前にあった、累々たる死体の数々も消えていて。
でも紅く血にまみれた全身が、それを偽りで無いと言って。

すぐ近くには、いつのまに現われたのか、安らかそうに寝息を立てる郁美がいて。

――僕は笑うしかなかった。

81 :向夏。:2001/06/22(金) 19:50
「鹿沼葉子ぉ」
初音から離れた高槻は、その筆舌にし難い美少女、天使とでも表現するのが適当か?
その少女を睨みながら、ゆらり、と立ち上がった。
「久しぶりだぁ」
上着を破かれかけ、嗚咽を漏らす幼い少女――初音を尻目に、
「ええ、まったく。それにしても、貴方にそんな趣味があるとは思いませんでした」
そう、心底つまらなそうな眼で、葉子は吐き捨てると、高槻に銃口を向けた。

だが、多分、こんな銃で殺せるほど、彼が脆弱な装備をしていない事くらい想像は付く。
防弾チョッキくらいは着ているだろう。だからこそ彼は、あんなに余裕綽々で笑っているのだ。
まだ距離がある――確実に奴の顔面を貫けるかどうかは怪しい。
それに、運動能力に差があると云っても、装備に於いて言えば、こちらは圧倒的に不利だ。
こちらが近付く前に高槻の持つアレを放たれたら、自分は多分、終わりだ。
慎重に間合いを取る必要がある。そして、そのような場合、拳銃があまり用を為さない事は判っている。
銃では殺せないかも知れないが、逆にこのような原始的な兵器ならば――
片手に持った槍をくるくると回す。そして、矛先を、十数メートル離れた高槻に向けた。
慣れない遠距離武器を持っていると考えるから、動きが鈍るのだ。
銃をスカートのポケットに仕舞う。
――十メートルそこそこなど、私にとって、あいつが銃を引くまでの時間に足らない。
「そこの女の子。こいつは私が殺しますから、その男の人を抱えて逃げると良いです」
声を掛けるが、まるで動く様子はない。腰が抜けてしまったのだろうか。――ムリもないが。
だが、じりじりと後ずさりはしている。高槻も、別にそれに注目しようとはしない。
「余裕だなあっ、鹿沼葉子っ」
かちゃり、と銃を向けて、高槻は笑った。
「貴方こそ。その娘を人質にでもすれば、少しは有利だったでしょうに」
言うと、――高槻は、高く高く笑って、

「鹿沼葉子。お前にはオレは殺せないっ!」

82 :向夏。:2001/06/22(金) 19:50
そんな事を言った。
その声に――ある種の確信のようなものがあったから、葉子は不快げにその目を睨む。
「何故? 不可視の力が制限されているとはいえ、貴方一人殺すくらい、訳もないです」
力が制限されていなければ、今の一睨みで、高槻の頭は粉々になっていただろうが、
だが、数瞬後には、結局同じようになるわけだ。この槍で串刺しになっている筈だ。
「もう貴方と話すのも、つまらないです。終わりにしてあげます――!」

言って、葉子が駆けようとした瞬間、

高槻が、何かを懐から出した。

それは、一体、何だったのだろう?
――身体に走るのは、重み。
これは、何だ?
懐かしい重さ。
そう、不可視の力を手に入れる前の、自分の姿。のろまで、力の弱い、ただの女。
「――力がっ」
息を吐く。重い。
高槻の手に持っているのは、
あれは、何だ? 何かの、機械?

完全に制限した。これでお前はただの少女だ。

高槻は、言って――大きく笑った。
そして、今度こそ銃を葉子に向けて、
「グッバイだ、鹿沼葉子ぉぉ!」

――まだっ!
葉子は横に走る。焦点を合わされたら、終いだっ――
のろまな身体。十メートルを走るのにどれくらいの時間がかかる?
少しずつあいつに近付かなくちゃいけない、
槍なんて、今では役に立たないっ――!
拳銃を再び手に取りながら、葉子は息を切らせて走った。

83 :向夏。:2001/06/22(金) 19:54

パララララッ!

足下で音がした。
痛みはない、当たっていない!
「そらそらそらぁ! 早く逃げろぉ、鹿沼葉子ぉ!」
心臓の音。
こんなにも心臓が、重い――

パララララッ!

そして、次の音が聞こえた時、
くぁっ――
痛い、痛い、痛い――っ
足の甲を、貫かれた――
木々のブラインドがあるにも関わらず、高槻は異常に優秀な腕で、葉子を狙ってくる。
――動けない。
これ以上動けない、そんな弱音を吐きそうになる。

――まだ、生きている! 戦わなければ、この殺し合いを終わりにするために。
葉子は、きっ、と、その憎たらしい顔を睨んだ。
「足が止まっているぞぉ」
くそっ! まだ、まだだ! 葉子は痛む足を引きずりながら、それでもまた走り始めた。

――奴を殺すには、何処を狙えばいい?
今の自分は、視力さえもずっと落ちている。拳銃など扱った事も殆どないから、狙いが正確に、とまでは行くまい。
だが、狙うは、当然顔面だ。あそこだけは無防備だ。
だが――
「おっと、窮鼠猫を噛む、と言うしなあ!」
――高槻は、背中に担いだ鞄から、大きなヘルメットを取り出し、被った。
これで、何処を狙えばいいか、も判らなくなった。
――ここまで、か。
足に走る激痛も、もう、自分に囁いている。動かなくて良い、結局殺されるんだから、と。
自分はなんて無力なのだ。こんなところで、死ぬのか。

84 :向夏。:2001/06/22(金) 19:59
郁未にも逢えなかった。――この殺し合いを止める事も、出来なかった。

不可視の力。それがなければ、生き残る事も出来ないほど、自分は弱かったのだ。
だが、それでも――先の女の子と、青年は、逃げられただろう。もうだいぶ、離れたところに来たから。

「ようし、観念したか、鹿沼葉子ぉ!」
高槻は、高く、高く笑った。そして、言った。
「武器を捨てろぉ! そして、服を脱げっ! ストリップだ!」
「ふ、ふざけないでください! そんな事」
そんな事は出来る限りしたくなかった――尊厳を捨てたくはない。
しかし、案外あっさりと、高槻は引き下がった。だが、状況が好転するわけでもない。
「――まあ、良い。どうせお前は無力だ。強引に犯して殺すのも一興だ。さ、武器を捨てろっ」
捨てなければ撃つぞ? ――そう、言った。
どうすれば、良い? 決まってる。武器を捨てて降伏するんだ。
それで、もしかしたら、生き残らせてくれるかもしれないだろう?

一つだけ、閃いた。完全武装かと思われた、その高槻に、一つ、無防備なところがあった。

その為に、どうすれば良いかな?
決まってる――
銃を遠くに放る。それを見て、高槻は、いやらしそうな笑みを浮かべた。
「そうか! やっとオレのモノをしゃぶる気になったか!」

「嫌です。死んでも、貴方に汚されるのだけは嫌です」
くわえたら、噛み切ります。
頑として、言った。槍を強く握りしめて。
――よし、息は戻った。これで、少しは走れる。
「殺せ。私の顔面を打ち抜け」
だが、今の私の運動能力で、使いこなせるか?

85 :向夏。:2001/06/22(金) 20:00
不可視の力を持った、あの少年で、漸く使いこなせたのだろう?

「――ちっ、醒めた、醒めちまったっ!」
もう良いわ、殺すわ、お前。
「まあ、その綺麗な顔は傷つけないで置いてやるよ。ぶっ殺した後で犯してやるから」
死姦でも充分だあ! お前は綺麗だからなあ!
五メートル。――
――そう云って、高槻は銃口を、自分の心臓に向けて、
あっさりと、引き金を引いた。

そして、その数瞬前に――葉子は、腹に入れておいた、――少年から譲られたモノ。
それを心臓の前にかかげた――

これの耐久性がどれ程かは知らぬ。だが、賭けるしかない。
高槻は、それが何だったか判るのだろうか?
引き金を引くのを止められなかった。彼は、小銃を引いてしまった。

それが、反射兵器。常識では考えられないような、兵器だったのだ。

銃弾の衝撃が、その薄っぺらいものに集中する。
そして、それが不思議な音を立てて、何処か別の方向に弾かれていくのも。
限界だ、これは多分もう、使い物にならない!
一発か二発、それを貫通した音が聞こえた。
肩口に銃弾が当たる。だが、それは左肩だ!

86 :向夏。:2001/06/22(金) 20:00

「なっ――!」
数発が、高槻の方に返っていくのが見えた。
跳ね返ったそれが、都合良く当たる、というわけにはいかなかった。
だが、それでも充分だ。
五メートル。槍を強く握り、葉子は駆けた。
これが最後のチャンスだから。
高槻のクローンは他にもいる、だが、こいつだけでも、殺すっ――!

狼狽した高槻は、――銃を取り落とした。
葉子は、その手に握りしめた槍を、――ヘルメットと、防弾チョッキの間。
首元に、差し込んだ。
ここだけが、唯一の急所だ。

肉が弾けるような音がした。
真っ赤なモノが、降りかかる。
「――っ、くそぉぉぉ!」
高槻の咆吼。
あるいはそれは――断末魔か?
空気が漏れるような音。
それは、血の流れる音だ。

多量の噴水を見せてくれた後、その高槻は果てた。

「――はぁっ」

葉子は、息を吐いた。
弱いままの姿でも、私は勝てた。
不可視の力無しで、――予想だにしない武器を使ってとはいえ、勝った。
小銃もある。
なんとかなるかも知れない。
自分がすべき事、ここから帰るという目的は、為されるかも知れない。
不可視の力無しでここまで戦えたのだから。

87 :共生。:2001/06/22(金) 20:03

――そういえば。
倒れた高槻に歩み寄る。
「私の力を制限した、装置は――」

油断しなければ良かった、と心から思う。

ガァンッ!

――腹を貫かれたっ!
「はぁっ――!」
まさか、もう次のクローンがっ――
振り返り、そこに立っていたのは。

「さっきはよくも人の銃奪いやがってっ――」

先程、自分が打ちのめしたクローンらしい。
それとも、これがオリジナルなのか?
右手には銃。そう、先程自分が放った銃だ。しまったなあ。
意識が飛びそうになる。

くそ……

その時だった。

「お姉さんっ!」

少女が、拳銃を持って一人駆けてくるのが見えた。
馬鹿だな、あれだけ逃げろっていったのに。
哀しげな表情を浮かべると、その少女は、一瞬躊躇した顔をした。
高槻は、また、あのいやらしそうな眼で、言った。
「おお、なんて可愛らしい少女だ!」

88 :共生。:2001/06/22(金) 20:04
そして、その汚れた目のまま、拳銃を向けると、
その足下を、ガァン、と撃った。

――それで、その少女は、倒れた。
「わはははは、なんて無謀な」
高槻は葉子から、小銃を奪い取った。
保険、だろうか。どのみち無理だ。わたしはこれ以上戦えない。
早く、殺せ。
――だが、高槻は、葉子の耳元で、こんな事を呟いた。
「鹿沼葉子。お前は後回しだ。あの可愛い子を犯してから、お前犯してやる」

なん、だとっ――
葉子は――目を見開いて、その悪魔を、見た。

――柏木初音は、二人が離れていくのを見て、漸く立ち上がる事が出来た。
今は、あの女の人の好意に甘えるべきだ。
何より、大切な人が、刻一刻と悪い状況に陥っているのだ。
銃も持っていた。だから、きっと、大丈夫だと。

けれど、目に入ってしまった。
明らかに身のこなしが鈍くなったのが。
そして、目に浮かんでしまった。
打ちのめされてしまうだろう姿が。

彰も大切だ。
間違いなく、もう、危険な状態なのだ。
自分には武器だってない、ないじゃないか――

89 :共生。:2001/06/22(金) 20:05

そこで、漸く初音は思い出す。
武器は、持っていたじゃないか。
人づてに自分の所に来た、拳銃が。
撃てるかは判らない、けれど。
彰の事も気にかかったが――だが、初音には、見殺しには出来なかった。

案の定、先の少女は倒れている。――腹から、血を流して。
そして、多分、とどめを刺そうと、近寄っている。
だから、初音は大声を上げた。少しでもこちらに注意を引きつけるため。
彰を背中から降ろす。そして。
「お姉さんっ!」
こちらを見た、傷ついた少女は、――哀しそうな顔をした。

――次の瞬間に、初音の足は、打ち抜かれた。

「あうっ!」
痛いっ――! ――信じられないほどの激痛が、初音の太股を襲った。
それまでに自分の身体を支配していた、目の前の人を死なせたくない、という意志は、一瞬で途切れる。
痛い、痛い、痛い! 死ぬのはこれよりずっと、痛いのか?
怖い、怖い、怖い! 止めておけば良かった、逃げれば、良かったっ――
見ると、高槻は先程の美しい少女に近付いている。
そして、少女の片手に握られていた小銃を奪い取り、
「抵抗できないよう、な」
言って、高槻はまた笑う。
そして、こちらを見た。
「可愛らしい少女だ、まったく、健気だあ!」
――初音は、怯えた表情で、それを見た。
先程、自分がされかかった事を思い出す。
じりじり、と近付いてくる高槻に対して初音が出来る抵抗は、
ただ、悲鳴を上げるだけ。
右手の拳銃を奪われる――初音は、無抵抗の姿になってしまった。

90 :共生。:2001/06/22(金) 20:16
「いやぁぁ! 助けてぇっ――!」

葉子は、悔しそうに、高槻を睨んだ。
ヘルメットを被っていて、今度も、首だけが、無防備だ。
だが、今の自分には、これ以上動く事は出来ない。銃も奪われ、もう、手も足も出ない。
目の前の少女が犯されるのを見なければならない。

目を閉じる。
目の前の少女がさらされる、その悲劇を見たくなかった。
だが、耳は閉じる事が出来ないから。

「いやだよ、助けてよ、助けてよ、いやだ、いやだよっ」

絶望。それは、あまりにも深い。
くそっ――何で、私はっ――!
目を見開いた。
少女を――救わなければ、這ってでも、止めなければ、
と――

そこで、葉子が見たモノは、何だったのだろうか?
何だったか確認する前に、意識は途切れた。

その未発達な身体を嬲り始める。殆どないに等しいような乳房を、服の上から撫でる。
「やめてぇっ!」
強引に服を破り、その薄い胸を露わにする。真っ白な胸が、視界に眩しい。
「わははは、なんて可愛いんだ」
そして、それをいじくり始める。

91 :共生。:2001/06/22(金) 20:17

「嫌だ、嫌だ、やめて、やめてぇ」
下半身にも手を伸ばす。スカートの上からそれをなぞる。
そして、内部に指を侵入させた。柔らかな身体を触る。白い肌を舐め回すように見る。
「嫌だよ、やめてよ、やめてよぉ……」
羞恥で、あるいは絶望で、顔を悲哀の相に充ち満ちさせて、その少女は泣いた。
良い。こういう何も知らない娘を犯すのは、何より楽しい!

もう、高槻は我慢ならなかった。
幼女愛好者と呼ばれようが、穴さえあれば関係がない!
大体、ただでさえここ数日、女と触れあう機会すらなかったわけだからな!
――鹿沼葉子より、この少女を先に犯そうと考えたのは、自分に多少そのケがあるからか?
くすくすと笑いながら、まあ、それでも良いだろう、と、そう呟いた。
既に屹立した自分のそれを、未だ濡れさえしていないそこに、強引に突き立てようとした、

その瞬間。

――自らの首元に、衝撃を感じた。
血の痛み。
何で痛みが走るのだ。
誰も、この周りにはいない筈だ。

振り返ろうとしたその瞬間、
――ヘルメットを強引に脱がされた。

92 :共生。:2001/06/22(金) 20:17
「――死ね」

真っ赤な額。――それは、人のものには見えなかった。
真っ黒な髪が、その顔の半分以上を覆い隠している。
光るのは、あまりに落ちくぼんだ瞳。そして、その奥に見える、漆黒の影。
サブマシンガンの銃口を口の中に突っ込まれる。
「ひゃめろっ――」
――この青年は、自分の下にいた少女に、傷一つ追わせることなく、
自分の首を、あのサブマシンガンで、正確に打ち抜いたのか?

その顔が誰だか判った時、既にすべては遅かった。

ぱらららら。

喉が弾けるような痛み。そもそも、首元からも夥しい血。
死にたくない、と考える前に、きっと、高槻は死んでいる。
――皮膚が弾け飛び、顔が半分消し飛び、そして、遂には、意識も途切れた。

「――彰、お兄ちゃん」

そんな声が、聞こえたような気がしたが、高槻にはそれを聞いても、何の感慨も湧かなかった。

――立ち上がった筈の彰は、だが、すぐに倒れた。
初音が呼ぶ声が聞こえた。助けを呼ぶ声が。
だから、一瞬、目が覚めたのだろうか?

そして彰はまた、深い闇の中に落ちていく。
初音の呼ぶ声が聞こえる。
けれど返事は出来ない。少し寝かせろ。


【高槻 ステアー・ベレッタ 共に死亡。共にロリコン】
【七瀬彰 柏木初音 彰は初音のピンチに起きあがるも、またすぐに気を失う。
             初音は犯されかかるも、足に怪我を負ったのみ。服は破けたが……】
【鹿沼葉子 ステアーを殺すも、腹を打ち抜かれて重傷。気絶。反射兵器は瓦解。】

93 :名無しさんだよもん:2001/06/22(金) 21:10
シリアスな展開を楽しませてもらったよ、彰パートの人。
そして、補足のところでも笑わせてもらった。共にロリコン。

94 :疾駆 - 1:2001/06/22(金) 23:25
「………」
耕一は。
大きなシーツに穴を開け、片膝を付きつつ。
目の前の光景に呆然としていた。
"高槻"が、後頭部から血を噴出して倒れていた。
顔面から地面に叩き付けられ、僅かに跳ね、そして動かなくなる。
七瀬は、撃たれた足すらものともせず、静かに、陽光を浴びて、立っていた。
その姿。何と、恐ろしくも――美しい。
(――おいおい。冗談だろ……)
そこには、確かに戦士が居た。
耕一の出番が無い程、である。


――パァァン……
―――っ!


そこに響く、銃声。
続く悲鳴。
耕一の耳が、森の奥から届いたそれを、確かに捉えた。

95 :疾駆 - 2:2001/06/22(金) 23:26
あの声は、間違いなく――
「――初音ちゃん!?」
まずい。確か、"高槻"は二人居た。
その内の片方が、初音に襲いかかったとするならば。
――くそっ、こんな所でのんびりしてる場合じゃない!
「留美ちゃんっ!」
振り向けば、七瀬は、草むらに落ちたナイフを拾い上げていた。
顔を見合わせる――頷く。
「そいつを頼んだ。俺は――初音ちゃんを」
「……でも、こいつ、どうすんの?」
――見れば、"高槻"が草の中に顔を沈めて、痙攣を起こしていた。
どうしたものか?
「……好きにしてくれ」
それだけ言って、駆けだした。

――後ろで七瀬がどうしたか僅かばかりに気になったが、振り向く暇は無かった。

96 :The Little Sister_1:2001/06/22(金) 23:34
 初音は、一瞬、自分を助けようとしてくれた金髪の女性に目をやったが、それより
も優先すべき事項のために考えを切り替えた。
 地に伏した彰に駆け寄り、その体を抱きかかえるようにして草むらまで動す。
 背負ったときには気が付かなかったが、華奢な見た目からは想像できないほどに、
彰は重かった。しかし、初音にとってはそんなことはどうでも良かった。
 そして、初音は彰の顔を見つめながら叫んだ。
「彰お兄ちゃん、死なないで! お兄ちゃんが死んじゃったら、あたし、もう……。
 お姉ちゃん達はみんな死んじゃった。あたし、ひとりぼっちになっちゃったよ!」
 流れ落ちる初音の涙が、彰の顔を叩いた。
 彰がゆっくりと何回か瞬きをした。
「お兄ちゃん!!」
 初音はうれしさのあまり、彰の顔をぎゅっと強く抱きしめた。
「は、初音ちゃん、苦しいよ……」
 今度は慌てて体を離す初音。
「彰お兄ちゃん……」
 彰が意識を取り戻したことで、初音は一瞬だけ安心した表情になった。
 しかし、それもすぐに曇った。
 姉たちの死を思いだしたのだろう。
 彰はゆっくりと息をしながら初音に言った。
「初音ちゃん……。君はまだ一人じゃない。君の大好きな耕一さんも、生きている
 はずだ。君はひとりぼっちじゃない……」
「でも! もうお姉ちゃん達はみんな死んじゃったんだから。もう、あのころには
 戻れないんだから。千鶴お姉ちゃんにも謝ってなかったのに、梓お姉ちゃんも、
 もう、私の相手をしてくれない。楓お姉ちゃんだって、みんな……。もう、みんな
 死んじゃったよ。私、もう、どうすればいいのか……。どうやったって私……。
 これからうまく生きてなんかいけない。あのころに帰りたいよう……」
 初音ちゃんは声を殺すこともせずに泣き出した。

97 :The Little Sister_2:2001/06/22(金) 23:37
 彰はしゃべるだけでも既に辛くなってきていたが、あえて体を動かし、初音の頭を
撫でるようにしながら言葉を紡いだ。
「こうして初音ちゃんはまだ生きてる。ならばこれからも生きていけるはずなんだ。
 僕の友人達もみんな死んでしまった。僕の大切な人だった美咲さんも死んでしまった。
 だから僕も、僕の日常はもう何処にもなくなってしまったと勘違いしかけていた……」
 初音の頭を撫でる手は止めずに、呼吸を整える彰。
 初音は彰の次の言葉を待っている。
 彰は美汐達に語った自分の言葉を思い出しながら、ゆっくりとそれを口に出す。
「けど、僕は思うんだ。確かに今まで僕らが思い描いてきた日常はもう手に入らない。
 そう、だけどね、初音ちゃん。……日常は、そこを日常なのだと思えば、きっと、
 そこが日常なんだよ。過去を切り捨てろなんて言わない。でも、未来を思って生きて
 いくことはそんなに悪い事じゃないんじゃないだろうか……。繰り返すことになる
 けど、初音ちゃんには耕一さんもいる。彼も初音ちゃんを心配していたよ……。
 まずは彼を安心させてあげるのも、良いかもしれない……。そして、今度彼を見つけたら、
 もう離れてはいけない……。これ以上、喪失の悲しみを味わうことの無いように……」
 彰はどこかで見聞きした覚えのあるフレーズを思い浮かべた。
 『愛し合う二人はいつも一緒、そいつが一番だ』
 そして、自らの思い浮かべたそのフレーズを契機に、彰の思考は別の方向に走りだした。
――嗚呼、僕も美咲さんともっと一緒にいたかった。冬弥と由綺は最後まで一緒だったん
 だろうか。初音ちゃんと、耕一さんはもう一度出会えるんだろうか。祐介と美汐さんは、
 無事生き残ることができるだろうか。僕の代わりに、ゲームに終止符を打ってくれる人は
 いるのだろうか。それから、それから、それから……――
 彰は意識を保っているのが辛くなってきた。
 思考も真っ当に働かなくなって、とりとめが無くなってきている。

98 :The Little Sister_3:2001/06/22(金) 23:38
「ごめん、初音ちゃん……。本当は一緒に耕一さんを探しに行きたいんだけど……。僕は、
 もう……。少しだけ、眠らせてくれないかい……?」
 すうっと、彰は目を閉じた。
 その彰の表情は、人を安心させるあの独特の笑顔にも似ていて、けれども、どこか寂しげ
でもあった。いろいろと心残りがあるせいかもしれなかった。
「お兄ちゃんッ! 彰お兄ちゃーんッ!!」
 初音の絶叫があたりに響き渡った。

【彰の生死はあえて不明とするが眠れば回復するかも
 →防弾チョッキを着ているから今回のが致命傷になることはない。
  しかし、これまでの累積ダメージは結構なモノ】

99 :名無しさんだよもん:2001/06/23(土) 01:34
【注意】

只今、本スレの『揚陸部隊』がNG審議中です。

しばらく『揚陸部隊』の続きを書くのはお控えください。

ご迷惑をおかけして誠に申し訳ございません。

100 :最強タッグ誕生(1/2)By林檎:2001/06/23(土) 03:00
「久しぶりだな」
 御堂の表情に敵意が無いのを確認して、蝉丸はあたりさわりのない挨拶を投げかけた。
「ふん。さっさと起きあがれ。俺がお前を殺す気だったらどうする」
 月代と絡み合ってる見下ろしながら御堂が答えた。御堂の表情はあきれ顔。
「お前の表情を見れば敵意の無いことくらい分かる」
 そこで蝉丸は視線を詠美に移し、
「良い仲間を見つけたようだな」
 御堂と詠美は「へ?」という表情。
 蝉丸はしごく真面目な表情。
 月代は(;´д`)
「な! なにをわけわかんねーこと言ってやがる!!」
「こいつはあたしの下僕よ!!」
「(;´д`)蝉丸た〜ん、ハァハァ」
 蝉丸は立ち上がり、ぱっぱっと土を払う。
まだ御堂と詠美がぎゃぎゃーわめいているが意に介していないようだ。
「まぁなんだ。御堂」
「ああ!?」
 ゼーハーゼーハー…。御堂の息は荒い。
「その様子だと、お前達も主催者側と戦っているんだろう? お前がいれば心強い」
 その言葉と同時に右手を差し出す。

425 KB
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

★スマホ版★ 掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50

read.cgi ver 05.04.02 2018/11/22 Walang Kapalit ★
FOX ★ DSO(Dynamic Shared Object)