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葉鍵ロワイアル!#8

1 :名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 18:25
基本ルール 、設定等は前スレ熟読のこと。

・書き手のマナー
キャラの死を扱う際は最大限の注意をしましょう。
誰にでも納得いくものを目指して下さい。
また過去ログを精読し、NGを出さないように勤めてください。
なお、同人作品からの引用はキャラ、ネタにかかわらず
全面的に禁止します。

・読み手のマナー
自分の贔屓しているキャラが死んだ場合は、
あまりにもぞんざいな扱いだった場合だけ、理性的に意見してください。
頻繁にNGを唱えてはいけません。
また苛烈な書き手叩きは控えましょう。

前スレ
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=991580312&ls=50
感想スレ
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=992962217&ls=50
感想、突っ込んだ議論、NG処理、アナザー没ネタ等にお願いします。
そして、絶対にNG議論は本スレで行わないように。

その他のリンクは>>2-5に。

2 :名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 18:27
>>274
それはない。

3 :名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 18:27
#3
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=990070115
#4
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=990388662
#5
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=990550630
#6
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=990948487

ストーリー編集(いつもありがとうございます)
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Spade/1168/index.htm
データ編集(現在停止中)
http://members.tripod.co.jp/hakagitac/
アナザー(外部)
http://green.jbbs.net/movie/bbs/read.cgi?BBS=568&KEY=993054328

4 :名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 18:37
>>2
なんて迷惑な誤爆だ…

5 :名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 18:41
リンクが>>2限定じゃなくてよかったよね。

6 :111:2001/06/21(木) 18:41
祝新スレ。
物語もそろそろ佳境。
読み手、書き手、新しい方も古い方も皆様頑張って行きましょう。m(__)m

7 :名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 18:42
過去の感想スレ
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=991842052&ls=50

関連スレ
「みんなダンディとゲッツしない?」
http://cheese.2ch.net/leaf/kako/989/989108228.html

8 :名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 18:52
何か不恰好になってしまいましたが、
気にせずいきましょう。

9 :日常との決別(1/4):2001/06/21(木) 19:24
ジャキッ……
いつでも引き金を引けるようにしながら崩れかけたドアを機関銃で開く。
「やはり…誰もいませんね……」

崩れかけた喫茶店、いや、喫茶店であったもの。
先のにぎやかな雰囲気を知っている者にとってはただの廃墟と感じられる。
「ここにいるわけがないですね」
篠塚弥生(047)はそんな言葉とは裏腹に意外そうな顔で店内を眺めた。
水瀬秋子はここにはもういない。
戦闘態勢を解かないままに店内を一通り調べまわす。
やはり、人影はない。

――私はここから動く意志は残念ながら無いのよ。

かつての秋子の言葉。だが、ここにはもういない。

あの時喫茶店にいた面子はもう秋子を除いて死んでしまった。
ならばここに敵が押し入ったのか…?そして皆殺しにした――
(そんなわけありませんね)
死体どころか血痕のひとつもないここで戦闘が行われたとは考えにくい。
――ちなみに一体、男の死体が奥の部屋に安置されているが、それは弥生も知っていることだ――
つまり、ここを秋子達が移動するまでは少なくとも戦闘は行われていない…ということになる。

(ならば、どうして秋子さんは動いたのか……)
カウンターの奥へと入り、コーヒーをドリップする。約3人分のコーヒーを。
もはや喫茶店とはとても呼べない寂れた店内に、香ばしい匂いが漂った。
動きやすいように荷物を整理しながら思案を巡らせるが、すぐにそれを断ち切った。
(根拠のない憶測など並べても意味がありませんね)

10 :日常との決別(2/4):2001/06/21(木) 19:24
今の弥生が知りたいことは実はあまり多くない。
危険人物。
誰が闘いなれているのか、誰がゲームに乗っているのか。
そして誰が生き残っているのか。
それらを相手にする時が、一番危険だからだ。
弥生が最後まで生き残った場合、それらと交戦する可能性が一番高い。
最後まで残っている者が戦闘もロクにできない烏合の衆と考える方が愚かなものだ。

「そういえばもう一人ここにいましたね…確か国崎往人さん…でしたね」
弥生とほぼ入れ違いに出て行った青年の名と、顔を思い浮かべた。
秋子以外に、生き残ってる喫茶店にいた者。
まだ名前は呼ばれていない。彼が今何をしているかは知らないが、お互い生きていれば必ず会えるはずだ。
恐らくは殺し合いの中で。

11 :日常との決別(3/4):2001/06/21(木) 19:27
あまり派手に動くべきではない。
確実に、仕留められるときにだけ動けばいい。
それが生き残るために弥生が選んだ道だった。
現在複数で群れて行動している人間は決して少なくはないだろう。
喫茶店での秋子達がそうであったように、
森の中で闘った、女性とは思えない程力強いお下げの少女達がそうであったように。
闇討ちで倒したカップルがそうであったように、
毒を受けた少女と、その少女を守ろうと爆死した悲しい二人がそうであったように、
マナと、そして炎の中で息絶えた少女がそうであったように、
弥生と、守りたかった二人が…そうであったように。
多人数相手となると、真正面から闘えば分が悪い。
(負けるわけにはいかないのですから)
それでも、弥生はここ、喫茶店へと足を運んでいた。

誰も知りえることはなかったが、本当の敵にも宣戦布告を果たした。
あとは進むだけだ。ただ、最後の決心がまだ足りない。
弥生の心はまだ冬弥、由綺と共にあったから。
危険を承知で喫茶店へとやってきた理由はそこにあった。

12 :日常との決別(4/4):2001/06/21(木) 19:28
出来上がったコーヒーをそれぞれ3つカップに注ぐ。
一つは弥生の分、一つは由綺の分、そして最後に冬弥の分。
そしてわざわざカウンターの表側へと回りこんでから席へと座る。
「恐れ入ります」
まるでそこに喫茶店のマスターがいるかのように頭を軽く垂れる。

周りから見れば滑稽であったかもしれない。
だが、それでも弥生は日常を演じる。確かに存在したその日常を。
ささやかな日常の幸せが、今弥生の中に去来する。
今はただ一つの形見となってしまった彼女のニードルガンと、冬弥の特殊警棒を取り出した。
(私なりの…けじめですわ)
手のつけられていないコーヒーカップの前へと、それぞれ一つづつ置いて。
「そろそろ時間ですね……」
残ったコーヒーを喉へと流し込む。それはいつもよりとても苦い。
「――さようなら」
軽く会釈。直動的な動作で踵を返すとそのまま喫茶店の扉をくぐった。
もう壊れてしまった喫茶店に、冬弥と由綺、そして弥生が望んだ、還らない日常を置き去りにして。

後には空のカップ、そして未だ湯気が立ち昇る二つのカップの前に寄り添うように置かれたニードルガンと特殊警棒だけが残されていた。


篠塚弥生【ニードルガン、特殊警棒放置】

13 :弔い - 1:2001/06/21(木) 20:07
がちっ。
冷たい鉄の音。
結局、なつみの頭を銃弾が貫く事は無かった。
僅かに遅れて、風の如く駆け付けた晴香の蹴りが飛ぶ。
正確に腕を狙ったそれは、なつみの銃を教会の壁に吹き飛ばす。
衝撃に持っていかれた腕が、なつみの身体を床に転ばせた。
「―――」
なつみの顔は、呆然としたものだった。
何が起こったか分からない、という顔ではない。
何故、どうして、といった顔か。
死ねる筈だった。
復讐を果たし、今、まさに、「自分の居場所」をまた取り戻す筈だった。
しかし。
「弾切れ、ね――まぁ、随分良いタイミングじゃない?」
皮肉げな晴香の声。無反応。
「自殺なんて止めろって、お告げなんじゃないの?誰だか知らないけど、まぁ、良い店長さんよね」
「わ、私は――」
「うるさいわね」
辛うじて開いた口を、晴香が閉ざす。
その目に浮かぶのは怒り。侮蔑。
「あんたも、あいつも、ぐだぐだぐだぐだ殺せだの何だの勝手な事ばっか言って……。
 いい加減、反吐が出るわ」

14 :弔い - 2:2001/06/21(木) 20:08
なつみの顎を掴む。
長椅子の横から引きずり出すと、晴香はそれを無理矢理立たせた。
……が、すぐ崩れ落ちる。ちっ、という舌打ちの音。
「復讐とか何だか知らないけど、折角残った命を大切にしようって気があるの?
 死にたくない人達だって一杯死んでるのに?
 ふざけんじゃないわよっ!」
教会中に響き渡る、怒号。
晴香の前にへたり込んだなつみが、ようやく、びくりと身を震わせた。
「誰かのお陰で生き残ったなら――生き残ってほしかった人がいたなら。
 その人の分まで、生きてやる。それが礼儀でしょ。
 それを、殺して、奪って――挙げ句には放棄。店長さんが泣いてるわ」
「――だったら、どうしろって言うの?」
立ち上がる。
睨み付ける。
火花が散った――ように見えた。
「『居場所』も無い。生きる意味も無くなったのに。それなのに、生きろって言うの?」
「無いなら、探せばいいじゃない」
「……ありっこ無いわよ!」
「探そうともしないで、無いだなんてよく分かるわね。あんた、不可視の力でも使えるの?
 それが、放棄してるって言ってんのよ。分かってないのね」

15 :弔い - 3:2001/06/21(木) 20:08
「――っ!」
激昂。
右手を、血が滲む程に握ると晴香の胸ぐらを掴み上げた――
もはや、相手の手に握られた刀の存在すら、忘れていた。

だが、結局。
その拳が放たれる事も無く。
なつみは、再び、その場にへたり込んだ。

右手の内から、うっすらと、血の線が引かれた。

16 :第七回定時放送 そして一つの疑問:2001/06/21(木) 20:49
「おはよう、諸君。これから定時放送を行う。
 011大庭詠美 014折原浩平 017柏木梓 020柏木千鶴 031霧島佳乃
 061月宮あゆ 066名倉由依 078保科智子 082マルチ
 以上。
 残りわずかとなってきたことなので、生存者発表も行う。

 001相沢祐一 003天沢郁未 005天野美汐 009江藤結花 019柏木耕一
 021柏木初音 022鹿沼葉子 023神尾晴子 024神尾観鈴 029北川潤
 033国崎往人 037来栖川芹香 040坂神蝉丸 043里村茜 046椎名繭
 047篠塚弥生 048少年 050スフィー 064長瀬祐介 068七瀬彰
 069七瀬留美 079牧部なつみ 083三井寺月代 088観月マナ 089御堂
 090水瀬秋子 092巳間晴香 094宮内レミィ 099柚木詩子

 それでは、健闘を祈る」


御堂と詠美は、思わず顔を見合わせる。
呼ばれるはずのない名前。
「どうして、お前が死んでいる?」
この時点ではまだ、二人は気付いていなかった。
先程詠美が嘔吐した際に、爆弾が吐き出されていたことに。
その爆弾が、実は発信機代わりとなっていたことに。

17 :断罪。:2001/06/21(木) 20:57
わたしは、それでもやはり怖かった。
頼るべき人はいた。自分をずっと護っていてくれた、――
けれど、他にもたくさんいた、頼れる、信じられる人から、逃げてきたのはどうして?
――そう。自分は怖かったんだ。
大切な人を傷つけるのが。きっと自分の中の、エルクゥが、
きっと。きっと、きっと傷つける。
だから逃げてきたのに。
彰お兄ちゃんを傷つけたくない。傷つけたくない。
わたしの為に、彰お兄ちゃんを傷つけるなんて、信じられる人を傷つけるなんて。
それが、すごく怖い。
傷つけて、彰お兄ちゃんに、皆に嫌われるのが怖いんじゃない。
傷つけて、殺してしまって、皆を失ってしまうのが、怖い。

でも、一人は嫌だ。
寂しい。怖い。怖い。怖い。
一人は嫌だよ。
前に向かって歩かなくちゃいけない。生きて帰りたい。
先に入った放送では、爆弾は既に解除された、という事らしい。
――でも、逃げられない。どうやって逃げれば良いんだろう?
どうやったら、誰も傷つかずに、帰れるんだろう?
前向きに行きたい。でも、皆が死ななくちゃ、自分は帰れないんだとしたら?
嫌だよ。皆が死ぬのも、自分が死ぬのも、嫌だよ。
日常に、そう、あの楽しかった日常に、帰りたいよ――
けれど、皆、もう傷ついている。日常は粉々のガラス片になっている。

その瞬間、楓お姉ちゃんの顔を思い出して、わたしは泣きそうになる。
もう逢えない、大好きなお姉ちゃん。
あれだけ泣いたのに、まだ涙が出る。
日常がだんだん壊されていく。帰れたとしても、もう、お姉ちゃんはいないんだ。

もう、わたしには、日常がない。

18 :断罪。:2001/06/21(木) 20:57
帰れたとしても、もう、何処にもあの楽しかった日々がないんだから、
生きていたってしょうがないかも知れない。
――ずっと死んでしまう方法を考えていて浮かばなかった。
でも、死のうと思えば簡単に死ねる。
舌を噛みきってしまえば、すごく、すごく苦しいだろうけど、
きっと終わりになる。
涙を拭いて、わたしは、小さく溜息を吐いて。
顎に力を入れて、それで、楽になれる筈だったのに。
――そこで、見てしまわなければ良かった。

「彰、お兄ちゃん……?」
わたしの顔を見て、驚愕の表情を浮かべて、そして、倒れた。

少しだけ、微笑っているように見えた。

「彰お兄ちゃんっ!」
わたしは思わず駆け出していた。

――君が傍に行けば、大切な彰お兄ちゃんは傷つくかも知れないよ?――

わたしの中から、そんな声が――聞こえた。
もう一人のわたしが、わたしを止めようとする。
けれど、わたしはそれを――強引に突っぱねた。
「わたしは、絶対に傷つけない! わたしは絶対に守るんだ!」
だから、あなたは邪魔なの!
出てこないで! わたしは柏木初音! エルクゥじゃない!

それで、わたしの中の声は――完全に途切れた。

わたしは、やっと柏木初音に戻った。

19 :補足説明:2001/06/21(木) 20:57
この放送は午前6時のものです。
教会組は話の最中にかかったのか、一段落ついてからかかったのかは次まかせ。
誰が放送をかけたのかも任せます。

例によって、放送以前の話書く場合は【放送以前】と注意書き入れたほうが親切です。

20 :断罪。:2001/06/21(木) 20:58
――俯せに倒れた彰の身体を起こす。額から流れる血は、ぽたぽた、と、わたしの服を汚す。
倒れてもまだなお離さない右手のサブマシンガン、そして、傷つき過ぎるほど傷ついた身体。
活力の息吹からは程遠い、乱れた息。あの優しかった微笑みを作る事すらままならぬ、そんな身体。
「彰お兄ちゃん! しっかりして」
「眠い、眠い」
「彰お兄ちゃんっ!」
何とか、何とかしなくちゃ!
大切な人をこれ以上、失いたくない!
街に、街には薬なんかがあるかも知れない。
ここからそれ程離れているわけではない。
わたしは、自分よりずっと大きな身体をした彰お兄ちゃんを担ぐ。――まだ、サブマシンガンを離さない。
わたしの身体も、疲れていないと言うわけではない。
けれど、漸くわたしは、自分の意志で、行動を行っているのだから。
それ程、苦ではなかった。
吐息が温かい。――まだ、彰お兄ちゃんは生きている。絶対に死なせたくない。
街までは1キロも無いはずだ。わたしは大きく深呼吸をすると、森の中、最短距離で動き出した。

――その時、――七回目の、放送が流れた。
わたしは、がぁん、と――頭を打ったような、そんな衝撃を受けた。

「おはよう、諸君。これから定時放送を行う。 ――017柏木梓 020柏木千鶴――」

21 :恒星。:2001/06/21(木) 21:00
初音を追って走った二人――七瀬留美と柏木耕一が、その放送を聞いた瞬間に感じた事。
初音が森の中に行くのを追うのも忘れて、その放送に耳を奪われた。
へたり込み、何やら言葉を呟いて、――そして、心底、死んだような眼で、朝露で濡れた草地を、見つめる。
二人が二人とも、そんな様子だった。
ちづるさん。あずさ。かえでちゃん。
そう、聞こえた。
今まで積み上げてきたものすべてが壊れてしまったかのように。
特に、青年――柏木耕一は、握りしめた拳を何処に振り下ろせばいいか迷うほど、
いっそ、自分を殴ってしまいたい、殺してしまいたい、と思うほど、
そんな絶望的な衝撃を受けていた。
七瀬も、短い付き合いだったとはいえ、それなりに楽しく過ごした友達が三人、ここで凶刃に倒れたのだと言う事を知り、
どうしようもない、そんな顔をした。
「ちくしょぅ」
なんて、泣き出しそうな顔をするのだ。
「オレは、一体、何のために」
守れなかった。
命に代えても守るのだと、そう思っていた事が。
失われた。それも、同時に、二人。
「畜生! 畜生、畜生っ! 千鶴さんっ! 梓っ! 楓ちゃん!」
笑顔を思い出す。
淑やかで、優しい笑みをいつも見せてくれて、自分の心を救ってくれた、大切な人。
活発で、いつも明るい笑い声を聞かせて、自分の心を励ましてくれた、大切な人。
少し哀しげな、けれど、誰よりも深い笑みを見せて、自分の心を癒してくれた、大切な人。
「千鶴さんっ――、梓っ――、楓、ちゃんっ――!」
何で。
何で自分は、三人を失わなければならない?

22 :恒星。:2001/06/21(木) 21:01

「耕一さんっ!」
声が聞こえた。今は放っておいてくれよ、留美ちゃん。うんざりだよ。
なんでこんなところで、オレ達は命の削りあいをしてるんだよ?
もう嫌だ、全部、皆殺しにでも――
「今、そこに、高槻がいてっ――初音ちゃんの行った方にっ」
――それで、耕一は我に返った。
「――本当かっ!」
これ以上失って溜まるかっ!
悲しみに耽るのは、もう少し後にしなけりゃいけない。
千鶴さん、梓、楓ちゃん。――必ず、必ず初音ちゃんだけは、守るから。
オレが、守るから。
三人について泣くのは、それからもう少し後で良いだろう?

「行こうっ! 必ず奴らを止めてみせるっ!」
「うんっ! これ以上殺させはしないわっ!」
すぐ傍の森に入る。ここに初音は消えた筈だ――
戦場は、森。
走り、走り、初音の姿を捜す。
何処だ、初音ちゃんっ――

そこで、銃声を聞いた。
自分のすぐ、耳の裏で。

「あぐっ!」
七瀬が苦痛の表情を見せる。どうも脹ら脛の裏を打たれたようだ。
「大丈夫か、留美ちゃんっ!」
「な、なんとかっ」
襲撃者は誰だ、この糞忙しい時にっ!
――耕一は、襲撃者の姿を見て、目を丸くした。

振り返り、そこに立っているのは――初音を追っているはずの、高槻だった。

23 :衛視。:2001/06/21(木) 21:02
お姉ちゃん達が死んだ。――みんな、死んだ。

――絶望に打ち拉がれ、へたり込んだ初音を、それでも突き動かそうとしたのは、
自分が今ここで泣いていては、背中に背負う大切な人を、失ってしまうと分かっていたから。
「――泣くのは、もう少し後でも良いよね、お姉ちゃん」
涙を拭いて、初音はまた立ち上がった。

――パァン。

驚いて振り向く。
耳に残響するその音色は、確かに今、自分の傍で鳴った。
そこに、立っていたのは。
「ううん、全く、こんな子供がここまで生き残るとは、心外だったぁ!」
――にたり、と嫌な顔で笑うのは、――高槻だった。

――初音は、がたがたと、震え始めた――
「まったく、こんな子供も殺せないような、そんなヘタレばっかりだったのかあ!」
言って、高槻は、わはははは、と、そんな笑い声を出した。
向けられた拳銃。
そして、何も武器を持たない初音。
明白だった。
結局、自分は、誰も守れなかった。
ずっと、守って貰ってきた。
そして、たくさんのものを失った。

大切なものを守れなかった。

がたがたと、歯が噛み合わない。
怖い。
腰が抜けて、動けない。
背中では、彰が息を乱して、初音に身体を預けている。
自分が死んだら、守れない。

24 :衛視。:2001/06/21(木) 21:03
「よおし、オレだって別に鬼じゃなあい!」

――ふと、高槻は、そう云った。

「一分間だけ待ってやるぅ! その間にここから逃げればいいっ!」
そう云うと、また、高らかに笑った。
遊ばれている。強者の余裕だ。
だが、他にどんな選択があろうか?
震える身体を抑え付ける。震えるな、今はここからっ――
彰を担ぎ、きっと高槻を睨むと、初音は駆け出そうとした――
「ちょっと待てえ!」
「その背中に担いだ美青年はそこに置いていけぇ!」

高槻は、そんな事を大声で叫び、初音を呼び止めた。
馬鹿な。そんな条件など呑めないっ――自分は、最早生き残りたいんじゃない。
大切な人を、守りたいだけなんだ!
だが、初音の考えているような事ではなく、
「別に他意はなあい! 重いだろう!」
――条件ではなく、忠告だったようだ。
「重くない!」
ムキになって言うと、
「……まあ、好きにすればいいっ! 一分後には、その可愛い顔が弾け飛ぶだけだぁ!」
初音は今度こそ駆け出した。

スピードが出ない。一分間というのは短すぎる。
息が乱れる。身体は疲れていない。――心が、疲れているのだ。
精神に圧迫がかかる。
もっと速く走らないと、彰が。彰が、殺される。
――もう、多分、一分経った。
だが、まるで追いかけてくる様子がないのは、何故だろう?
そう思って、少し息を吐いて、足を止めた時、

パァン。

25 :衛視。:2001/06/21(木) 21:04
思いも寄らぬ所から、拳銃の音が聞こえた。
初音が右を見た瞬間、
――その弾丸は、彰の横腹に命中した。
ぐらり、と身体が揺れる。
彰は呻き声一つ上げなかったが、身体が横凪に倒れる。
そして、同時に初音もバランスを崩し、泥に顔を埋めた。
そして、その衝撃で、彰を離してしまう。

自分の背を離れ、ごろごろと、数メートル先まで転がっていってしまう。
拳銃で撃たれた。
これ以上怪我をしたら、彰が危ない!
いや、呻き声すら上げなかった、彰は、もう――
嫌だ、嫌だ、死なせたくない!

汚れた顔を顧みず、初音は倒れた彰に縋ろうとした。
だが――

「それじゃあ、可愛らしい顔が、台無しだぁ!」

――いつのまに、そこまで来ていたのだろう?
――高槻は、拳銃を構えたまま、そこで、あの嫌らしい笑いを見せていた。

ここで死ぬんだ、と思うと、初音は、涙も出なかった。
騙された。あいつは初めから待つつもりなんて無くて、自分を、なぶり殺しにしたんだ。
こんなところで死にたくなかったし、
彰を、死なせたくなかった。
「本当に可愛い少女だあ! オレの趣味にぴったりだぁ!」
悔しそうに見つめる初音を見て、高槻は、そう笑った。

26 :衛視。:2001/06/21(木) 21:07
――最悪の事を、今、この目の前の男は口走った。

「別に今すぐ殺す必要はあるまいっ! 少しくらいお楽しみだぁ!」
恐怖で歪む。死ぬより怖い事を、今から自分は――
心臓の音。嫌だ、嫌だ、嫌だ――
「いやっ! 来ないで! いやっ!」
「呼んでも誰も来ないぞっ! お前はオレに犯されるのだぁ!」
絶望。嫌だ。汚されたくない、こんな、嫌だ、嫌だ、嫌だ!
高槻の乱暴な腕が、初音を強引に押さえ込もうとした時、

「――誰かは、来ますよ」

――そんな、声が聞こえた。
その瞬間、びくりと高槻は振り返った。
自分に掛けられた力は緩む。
そして、初音もその顔を見た。

金色の髪、そして、美しい大きな瞳。

右手には拳銃。
それは、ベレッタという名前の銃。
片割れの高槻が――持っていたもの。

鹿沼葉子は、心底不愉快そうな眼で、高槻を見つめた。

27 :包有。:2001/06/21(木) 21:08

「どうだ? ん? 鹿沼葉子」
たくさん殺しているかあ? 汚らしい顔を見せて、その男はそう言った。
高槻が、その悪意と共に尾行しているのに気付いたから、鹿沼葉子はすぐに、その男と対峙した。
空腹を抱えて歩いているのに、何だ? この男は。腹立たしい。
自分は一応ジョーカーの役割をやっている筈だ。こいつに尾行される筋合いはない。
「なんたってお前はジョーカーだもんなあ! 不可視の力も、制限されているとはいえ、それでも常人よりは、ずっとずっと強いもんなあ!」
「ええ、まったく」

「だが、これまでだわ」
かちゃり、と銃口を向ける。
「知っての通り、オレもこのくだらねえ殺し合いに巻き込まれたあ! だから、お前らみんな皆殺しにしなくちゃいかん!」
色々動いて貰ったが、結局これだ! 死んでくれ!
――手元には、折れた槍。ぐっと、それを握る。――
「この森はオレのクローンが包囲しているぅ! 森にいる数人を、殺す為だあ!」
――葉子は、それを聞いて、小さな溜息を吐く。

「わはははは! そんな槍ではオレは殺せなああ」

早かった。気付くと、葉子は高槻の横に立ち、
高槻が言い終わる前に、その首元を、短くなった槍で、とん、と叩いた。
それで、高槻は倒れた。
とどめを刺す前に、やる事があった。

銃を拾い、葉子は駆けた。――何処の誰かは知らないが、これ以上人を死なせるわけにはいかない。

「わたしはジョーカーです、ただし、あなた達にとっての」

そして、――同じ顔をした、高槻と――葉子は、対峙したのである。


【柏木耕一 七瀬留美 初音を捜して森に入るも高槻と遭遇】
【柏木初音 七瀬彰 高槻と遭遇も、そこに――】
【鹿沼葉子 ベレッタ高槻を倒し次の高槻と対峙】

28 :補足説明:2001/06/21(木) 21:15
本編に割り込んだので、もう一度。
この放送は午前6時のものです。
教会組は話の最中にかかったのか、一段落ついてからかかったのかは次まかせ。
誰が放送をかけたのかも任せます。

例によって、放送以前の話書く場合は【放送以前】と注意書き入れたほうが親切です。

29 :名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 21:36
http://green.jbbs.net/movie/bbs/read.cgi?BBS=568&KEY=991237851&START=973&END=977&NOFIRST=TRUE

現在までのキャラ別所持アイテム一覧。
(本編が)いくつか間違いあるので、これを参考に正確にお願いします。
混乱を避けるために。

30 :安堵&焦燥(1/3):2001/06/21(木) 22:43
――おはよう、諸君。これから定時放送を行う――

学校内まで流れてきた死亡者放送。
本来なら悲しむべきもの。
実際、何人もの人間が亡くなっているのだ。
心の底から喜ぶことなんてできやしない。
それでも…いや、悲しいからこそ、出来る限り全身で喜びを表現した。
「やったよ!私らの死亡放送流れたよ!」
「うっ、うぐぅ!?」
むりやりあゆを引き寄せて喜びをぶつける。
パシパシ…グッグッ…!!
「うぐぅ……手がひりひりする……」
「そう言うなって、千鶴姉の勘は当たってたってわけだ」

――残りわずかとなってきたことなので、生存者発表も行う――

その声と重なって、今度は生き残りの参加者の名前が呼び出された。
三人の知り合いの名前も読み上げられる。
本来なら喜ぶべきこと。
だが…
「いけない…」
千鶴の顔に安堵の表情が浮かんでいたのもつかの間。
「耕一さん達は…私達が生きてることなんて知りません……!!」
その事実は、あゆと、梓の顔を曇らせるには充分だった。

31 :安堵&焦燥(2/3):2001/06/21(木) 22:43
「すぐに伝えに行かなきゃ…」
耕一や、初音の悲しむ顔が手にとるように分かる。もしも自分達が耕一の立場なら同じように思うはずだ。
楓を失った悲劇……それを再び味あわせてしまったこと。
「どうして忘れてたんだ、私達はっ!」
たとえ偽りの放送であっても、何も知らない耕一達の事を思うと強く胸が痛んだ。

「私が行きます。これは、提案した私の責任だから……」
千鶴が、スクッと立ち上がる。
初音の居場所は分からない、だが、耕一達は未だ怪我で小屋に寝ているはずだ。
「ちょっ……千鶴姉!?」
「もしかしたらまだ耕一さん達はあそこにいるかもしれません
 ですが今の放送を聞いたら…たとえどんな怪我を負っていても動くはずです。
 耕一さんは……そんな人ですから」
「だったらみんなで行けばいいだろ?」
「……私達は死んでいます、体面上では。見つかるわけにはいかないでしょう?
 私一人の方が安全です」
「だけど…千鶴姉!」
「あゆちゃんもいるのに?…危険を犯すのは私だけで充分だから」
「千鶴ね――」
「すぐに帰ってくるから。できれば耕一さん達も連れて…ね?
 その後すぐに初音も探さないとね。
 ……でも、もしも私が2時間経っても戻って来なかったら…
 梓、その時は自分の思う通りに行動して」

そして、梓に有無を言わせず千鶴は教室を飛び出していった。

32 :安堵&焦燥(3/3):2001/06/21(木) 22:44
「バカだよ…千鶴姉……」
梓が呟く。
「いつもいつも…自分だけ責任を背負って……バカッ……」
すぐに追いたかったが…梓には出来なかった。
確かに、全員で動くのはあまり得策じゃない。
ただ耕一達に会いに行くだけなのだから……理論では。

それでも…
「外には殺人鬼がいるかもしれないんだぜ…どうして自分だけ……」
感情はそうはいかなかった。
「うぐぅ…たぶんボクのせいだよね…ボクが足出まといだから……」
「あゆのせいじゃないよ…」
梓があゆの頭を優しく撫でてやる。
「うぐ…」
くすぐったそうにあゆが目を細めた。
(絶対に帰って来てくれよ、千鶴姉っ!!)
2時間経っても戻って来なかったら……あってはならないことを強く祈りながら、撫で続けた。


千鶴は駆ける。影から影へ。
(どうして私はこんなことに気付かなかったのかしら…ごめんね、初音…耕一さん)
後悔してもしきれない。
しかも、初音に限ってはどこにいるのかも分からないままだ。
早く安心させたい、早く伝えてあげたい。
(私は…私達は…生きてますっ!!)
見つからないように、かつ全速力で木々の間を駆ける。耕一や七瀬と別れた小屋へ。

もちろん千鶴はまだ知らない、そこに浩平の死体があること、
そして放送が流れるずっと前から耕一達がそこにいないということに。


【柏木千鶴 小屋へ移動開始】
【柏木梓、月宮あゆ 学校で待機 残り2時間】 

33 :最悪の遭遇(1):2001/06/21(木) 23:54
二人は小躍りするように先行していった。
呆れて物も言えない。
柏木初音、鹿沼葉子というエサに釣られて、立てた作戦さえ忘れて
駆け出していった。
爺どもに馬鹿にされるのもやむなし、と思うほど愚かしい。
(…最悪、だな)


まあ聞いてくれ…元々の作戦は、こうだ。
ベレッタが囮として、相手の視界に姿を見せる。
そちらに注目した相手の死角から、俺がボウガンで狙撃する。
ステアーはレーダーで位置を確認しながら随時情報を提供し、
もしもの時はAUGで二人を援護する。
基本は多勢で少数を罠にかけ、互いに援護するということだ。
この作戦は既に巳間晴香と名倉由依の二人に試して、ほぼ
成功している(誤差はあったが、安全性の高さは証明された)。


ところが、だ。
要のステアーが先行するという事は、援護もなく、情報もなく
ただ三人がそこに居るだけなのだ。
(…烏合の衆って奴だ)
溜息をついて、一人残ったマスターモールドはボルトのケースを
取り出す。
ステアーの情報をアテにして、矢は装填していなかったのだが、
今ではそうもいかない。

注意深く、毒矢を取り出そうとした、その時。
最悪の相手が走ってくるのを発見してしまった。

34 :最悪の遭遇(2):2001/06/21(木) 23:56


(か…柏木耕一だと!?復活しているのか!)
鬼の雄体。
結界の束縛さえ引きちぎり、凄まじいまでの強さを見せつけたという
恐怖の鬼が駆け込んでくる。

マスターモールドは慌てて懐の拳銃-----ニューナンブM60、こんな
名前で呼ばれたくなかったので黙っていた-----を取り出す。
そのまま震える手で発砲した。

パン、パン!

「あぐっ!」
恐怖のために弾は逸れ、女に当たる。
あの女は誰だろうか?いや、問題になるのは柏木耕一だ。
女は後でゆっくり始末すればいい。

急いで藪の中を移動しようとしたそのとき。
僅かな隙間から、偶然目が合ってしまった。
鬼が叫ぶ。
「た-----高槻!?
 あそこだ!敵は高槻だ!」
「なんですって!?」

ふん、キサマに驚かれる筋合いはないぞ、と若干落ち着きを取り戻し
発砲する。今度こそ、外しはしない。

パン、パン!

35 :最悪の遭遇(3):2001/06/21(木) 23:58

鬼の素早い移動に一発目は外れ、なんとか二発目を命中させる。
肩から掛けたシーツの中央付近に穴が開く。鬼がうめく。
「ぐっ!」
膝をつく。
(よし!)
手応えに勇気を得て、更に撃ちこむ。
「死ぬがいいッ!」

パン、-----

何がおきたか、解らなかった。
一発、発砲したものの外れた。
手を強打され狙いを外し、銃を取り落としていた。

いつのまにか、女が鉄パイプをひっさげて突進していたのだ。
こんな女が参加していたか?
こんな凶暴そうな女が-----いたか?

「女!キサマ何者だあッ!」
ナイフを引き抜いて応戦しようとしたが、これも叩き落される。
即座に拾おうとしたそれを、慣れた仕草で蹴り飛ばす。


「なめないでよ?七瀬なのよ、あたし」

ああ、そう言えば。
やたら凶暴な女子高生が参加していると、聞いた事があったな。
追い詰められながら、マスターモールドは思った。
(…最悪、だな)

36 :名無したちの挽歌:2001/06/22(金) 00:00
…書いてて高槻が不憫になってきたw

耕一は”防弾服”を…ええ、着ていますとも。

37 :戦友との再会 〜御堂〜:2001/06/22(金) 00:22
「―――それでは、健闘を祈る…ブツッ」
放送終了。

御堂と詠美は顔を見合わせる。
「お前、生きてるよな?」
「あたし、死んでないよね?どうして呼ばれてるの?」
詠美はきょとんとした表情で聞いた。
「知るか。お前、何か恨まれるようなことでもしたんじゃないのか?」
冗談半分で御堂が言う。
「し、知らないわよぉ!きっとこれは何かの間違いなのよっ!そうよ!そうだわ!ホント勘違いにも程があるわよっ!」
「いや、放送は確実だ。間違いなんかねぇよ」
「むっかぁ〜〜〜!!あたしの推理にケチつける気!?じゃあ何であたしは生きてんのよっ!!」
自分の推理を一蹴されてしまったエセ探偵・詠美ちゃん様のブーイングの嵐が吹き荒れる。
「知るか、俺もそれが不思議でならん。だいたい生死の判断をどうやってしているかも分かんねぇからな」
キュピーン!
詠美ちゃん様の頭脳がフル回転!一瞬で答えを弾き出した!
「そんなのかぁ〜んたんよっ!誰かがあたし達を見張ってんのよっ!」
「そんな奴らの気配はしねぇな」
ガクーン…
今日の詠美ちゃん様の頭脳は不調らしい(いつも不調だが)
「だいたい見張るも何も、見失っちまえばそれでお終いだろうが。発信機か何かありゃあ話は別だが…発信機?そうか!」
御堂は急に立ち止まった。

38 :戦友との再会 〜御堂〜:2001/06/22(金) 00:24
彼の背中に追突する詠美。鼻を押さえながら抗議する。
「ちょっ、ちょっとぉ〜〜〜!急に止まんないでよぉ〜!!鼻ぶつけちゃったじゃない…」
「…お前、あそこで吐いたとき、腹の中のモン全部吐き出しちまったのか?」
詠美は(いきなり何言ってんのよ、バカじゃないの?)と、言おうと思ったが、御堂の眼がマジだったので正直に答えることにした。
「え?あ、うん。ぜんぶ吐いちゃったわよ?それがどうしたの?」
「ゲロん中に金属が無かったか?よく思い出してみろ」
詠美はよく思い出した。サケ、サバの味噌煮…胃液、そして丸い球体。
「金属?ああ、あったわよ、銀色の丸い…」
「なるほどな、やっぱりか…体内爆弾の起爆装置、解除されてたのか。しかしうかつだったな。
 発信機と生死判定装置もセットだったか。だが、こりゃあひょっとするとひょっとするかもな」
一人で納得している御堂を見て、何となくちょおむかつく詠美ちゃん様。
「ちょっとぉ!あたしにも教えなさいよぉ!!」
「いいだろう、教えてやる。まず、俺達がこの島に連れてこられた時に、管理側の奴らが参加者全員の胃袋の中に、
 『爆弾・発信機・生死判定装置』が一体化したシロモノを入れやがったんだ。
 もし、奴らに逆らったり、装置を吐き出そうとしたら、ドカンだ」
「え?あたし…それ、吐いちゃったよ?なんで爆発しなかったの?」
「そう、そこがミソだ。高槻って奴が主催から降ろされた時、ゲームを面白くするために奴らは爆弾の起爆装置を切りやがったんだ。
 つまり吐き出しても爆発しないわけだ。ここが落とし穴だ。奴らすっかり発信機と生死判定装置の存在を忘れてやがった。
 おかげでお前は水瀬名雪の傍らで死亡扱いになっている、ってなわけだ、どうだ?わかったか?」
「え?さっぱり。もう一回お願い」
「…だからな――――」

39 :戦友との再会 〜御堂〜:2001/06/22(金) 00:25
「…と、いうわけだ。…分かった…よな?」
御堂はゼーハー言いながら4回目の説明を終えた。
「なるほどね☆謎はぜんぶとけた!!」
詠美はくるりと一回転し、ビシィ!!と指差し、
「つまり、あたしは奴らの目をかれーにあざむいたルパン的そんざいなわけねっ!真っ赤なぁ〜♪バラはぁ〜♪…」
「(さっきから何を聞いていたんだお前は…俺の苦労を1行にまとめやがって…)」
御堂の肩にどっと疲れがのしかかった。
その時だった!
茂みから何者かが転がり落ちてきた。
ガサガサッ!バキバキバキィ!!ドカッ!!
茂みから現れたのは2人の男女だった。
「お前は…!!」
御堂は2人の…異様な姿に驚愕した。
「ね、ねぇ、この人達…アンタの知り合い…なの?」
謎の男と詠美の目が合う。男は彼女に軽く会釈した。
「あぁ、知ってるぜ。もう…五十年以上も前からな」

40 :ツミビト - 1:2001/06/22(金) 00:27
オモチャのような銃。
しかしその実体は、濃硫酸を相手に振り掛ける残虐な兵器。
その銃口の先で、今、晴香が、なつみの銃を蹴り飛ばしていた。
――それどころじゃない。そうだ、茜だ。
振り向くと、白い床の上で茜が悶えている姿が見えた。
床が、紅い。
「茜ッ!」
駆ける。
床の上に跳ねた血が、ステンドグラスから差し込む光を浴びて禍々しい輝きを見せている。
――鮮血だ。
祐一が側に駆け付けると、茜が左肩を押さえているのが分かった。
既にどす黒い色に染まっていた肩口を、鮮血の紅がさらに新しい色を上から付け加える。
血に勢いが強い。早く、早く治療をしなければ。
――包帯……くそっ、そんなもの、あるわけ無い!
水鉄砲を放り捨てる。無いのなら、作ればいい。幸い、祐一の制服の袖は長い。それを切りさえすれば!
咄嗟に、茜の腰に差された短刀を取り出そうとして――
それを、茜の、血みどろの右手が払った。
弱々しく。
「ほっ……ほっといて、下さい」
絞り出すような、声。
拒絶の意志。
「何言ってんだ……?無視したら、死んじまうだろっ!」
「……いいんです、死んでも」
脂汗の浮いた顔が、ふっ、と静まった。
痛みが治まったわけではあるまい。右手が抑え続けている左肩の傷は、未だ血を吹き出し続けている。
「――色んな人を、殺して、きたんです。ただ、生き残ろうとしてた、だけの、人を」
「………」
「それに、私は――詩子を、撃ったんです。無二の、親友を……撃ったんです……!」
唇を、噛む。弱った力は、噛み切る事も無い。
倒れた茜からは、倒れ伏した詩子の姿が見えない――見えない事を、酷く、辛く感じた。
泣きそうだった。
「………。私は、償うべきです……みんなに。詩子に。それに……貴方に」
「それが……それで、死んでもいいって言うのかっ……?」
「――はい」
事も無げに、答えた。

41 :戦友との再会 〜蝉丸〜:2001/06/22(金) 00:27
「月代、大丈夫か?」
蝉丸は心配そうに月代の顔をのぞきこんだ。
「(;´Д`)ん…蝉丸たん…ハァハァ」
月代は異常なほど息が荒かった…
「(まさか、仙命樹の催淫効果か!?)」
とも蝉丸は考えたが、よくよく考えてみれば、自分の血など月代には一滴もついていない。
「月代、どうしたのだ?熱でもあるのか?」
月代の首筋に触れてみる、脈は正常だ。熱もない。…あえて言うなら言動が異常だった。
「(;´Д`)ハァハァ…蝉丸たんが私のウナジを…も、萌えーーーー!!」
「モエ?」
意味不明なことを口走りながら月代はすっくと立ち上がった。
「(もしや、この仮面が月代を操っているのか?だとしたら何とかせねば…)」
蝉丸は月代…いや、仮面に詰め寄った。
「仮面、いますぐ月代を操るのをやめろ!」
月代の肩を抱き、蝉丸は言い放った。凡人ならすくみ上がってしまうほどの迫力だ。
「(;´Д`)何を言ってるの?私は月代だよ?このお面は私の正直な欲望をさらけだしてるだけなんだよ。
 それにしても、怒る蝉丸も、も、萌えーーーー!!」
「む」
手の打ちようが無かった。月代は操られてなどいない…そればかりか、己の欲望…つまり正直な気持ちを出しているだけだったのだ。
「(;´Д`)ここから無事に出れたら蝉丸たんと結婚…したい…結婚…ハァハァ」
「………」
「(;´Д`)結婚したら…新婚旅行…どこに行こうかな…ハァハァ」
「………」
「(;´Д`)子供は何人がいいかな?2人?3人?…蝉丸たんて、ヤパーリ激しいのかな?ハァハァ」

42 :ツミビト - 2:2001/06/22(金) 00:27
がすっ。
何かが、固い何かに刺さる音。
振り返ると、ちょうど祐一の隣に一本の刀が刺さっていた。
「――人の話くらい聞いてなさいよ。相も変わらず、泣き言ばっかり抜かして……!」
刀の先。
へたり込んだ少女の前に立った晴香が――全身に怒りを漲らせて、立っていた。
足取りも荒く近づくと、茜を挟んだ祐一の反対側に立つ。見下ろすような視線。込められた、侮蔑。
「そこのヘタレ男――それで袖でも切って、こいつの肩でも縛っておくのね。
 ……私は、こいつに、話があるわ」
軽く、蹴り上げる。傷に響いたか、茜が、苦悶の声を上げた。
「何しやがっ……!」
「うるさいッ!!」
一喝。
ステンドグラスを叩き割らんばかりの怒号が、祐一の抗議の声を掻き消した。
一瞬の間。息を吐き出した。
「……あんた、死にたいのね?」
唐突な問い。
「……はい」
額に脂汗を浮かべつつ、やはり事も無げに茜は答えた。
その潔さに、晴香はさらに顔をしかめる――片膝を付くと、茜の頭を持ち上げ、顔に近づけた。
こう言った。
「なら、あんたのやる事は一つね――生きるのよ」

43 :戦友との再会 〜蝉丸〜:2001/06/22(金) 00:28
遠くから足音が聞こえた。足音の数は…2人。
「…月代、誰か来るぞ」
「(;´Д`)え?」
ガサガサッ!
月代を抱えた蝉丸はすぐさま近くの茂みに隠れた。
しばらくすると何かをしゃべりながら男女が歩いてきた。一人は見覚えのある顔だった。
「(ついに来たか、奴とは出会いたくなかったが…何とも奇怪ないでたちだな…)」
――――――御堂!(と、猫と毛玉と白ヘビと鳥類)
もう一人は分からない。17〜8歳ほどの若い女だ。
「(あの女…御堂に殺されずにここまで…一体何者だ)」
二人の会話が聞こえる。
「高槻…ろされた…、ゲーム…楽し…爆弾は爆発し…だ…吐き…ても…爆発しない…敵は…発信機と生死判…置…忘れ…バカだ…。
 あいつら…勘違いで…死んだこ…思いこんで…いる…吐き出せ…死んだこ…なる…場所も…分か…なる。ったっ…分かった…な?」
「(よく聞こえんが、爆弾…体内の爆弾は…吐き出しても…?)」
「つま…あた…の目をかれーに…いたルパン…ざい…ねっ!真っ赤なぁ〜♪バラはぁ〜♪…」
「(るぱん?何だそれは?外国人の名か?)」
ルパンのテーマソングに反応したのか、後ろの月代も歌い出した。
「(;´Д`) あいつのぉ〜♪くちびるぅ〜♪やさしくぅ〜♪抱きしめて〜♪くれとぉ〜♪ね〜だる♪蝉丸たん!抱きしめてっ!」
月代は蝉丸の雄大な背中にタックルをかまし、そのままぎゅうっと、抱きしめた。
「月代!?よせ!御堂に見つかるっ!!」
時既に遅し。蝉丸はバランスを崩し、月代と共に…
ガサガサッ!バキバキバキィ!!ドカッ!!
御堂達の前へ転がり込んだ。
「お前は…!!」
くんずほぐれつの二人を見て当然驚く御堂…不思議と蝉丸の頬が赤くなる。
「ね、ねぇ、この人達…アンタの知り合い…なの?」
名も知らぬ少女はこちらを警戒している。目が合ったので蝉丸は会釈で返す。
「あぁ、知ってるぜ。もう…五十年以上も前からな」
何故か御堂の表情は『敵意』ではなく、『なつかしさ』があらわれていた。

44 :彗夜:2001/06/22(金) 00:31
混じりました……申し訳ございません<「ツミビト」

45 :罪滅ぼし - 1:2001/06/22(金) 00:34
「人を殺した罪は、消えないのよ。過去の過ちは、ずっと後になっても、永遠に自分を苛み続ける。
 確かに、死ぬってことが罪滅ぼしになるかもしれない――
 だけど、そんなの、逃げ。自分がやった罪から、逃げようとしてるだけ。
 ――無責任なのよ、あんたは」
「―――」
「あんたも、そこのヘタレも、あいつも。命を、軽く見てる。最低だわ。
 人を殺したとか、そんなの関係無い――あんた達、最低よ。
 沢山人が死んだ中で、自分だけ生き残ったくせに、それを大事にもしないで。使い捨てだと思ってんじゃないの?
 うざったい――反吐が出るわ」
祐一が、袖を裂く音。
布がきつく縛られ、ぎゅっ、という音を立てる。その度に、茜の顔は苦悶の表情を見せた。無理もない。
――その中で、晴香の声は、淡々と響いていた。無論、後ろのなつみにも聞こえている事であろう。
「あの、詩子とかいう子だけじゃない。みんなそう。
 生き残ろうとして、頑張ってきた。何かしようとして、頑張ってきた。
 その上達に、あたし達はいるのよ――無駄に死ぬなんて、それこそ死者への冒涜だわ。
 あんた、死んでまでして罪を重ねる気なの?」

46 :罪滅ぼし - 2:2001/06/22(金) 00:35

――由衣。
自分を守る為に、死んだ仲間。
いや、由衣だけじゃない。
一緒に戦ってきた、仲間の死があって――今、私が此処にいる。
だから、無駄死にだけはさせない。
その誰かが、どれだけ辛くても。
その誰かの為に死んだ、他の誰かに、報いる為にも。

「………」
茜は――今度は、事も無げに答えなかった。逃れるように、目を逸らす。
「少しでも、償う気があるのなら――がむしゃらに、生きなさい。
 精一杯、戦って。それで、死になさい。
 そしたら、私も褒めてやるわ――地獄でね」
「――生きて、いいんですか?」
か細い声。
精一杯の問い掛け。
祐一も、その問いに顔を上げた。
「誰も許可なんてしないわ」
さらりと流す。
二人は、やや、驚いた顔を見せた。
晴香は続ける。
「生きる権利なんて、誰にもあるのよ。あんたなりに、生き残りなさい。
 ――それが、あんたの殺した人への、せめてもの罪滅ぼしよ」
「………」
布が縛られる音。
完全にとはいかなくても、きつく縛られた布が、血の流出を止めた。

生きる権利は、渡された。

47 :名無しさんだよもん:2001/06/22(金) 00:37
久々にギャグとシリアスの狭間でたのしんだーよ。

48 :運の尽き(1):2001/06/22(金) 00:40

喫茶店を出た後、弥生は山道に差しかかっていた。
次の獲物を捕らえるため、そして隠れ場所を探すため。

しかし上り坂にかかると、鞄の紐が肩に食い込む。
さっき荷物を整理したばかりなのに、やけに荷物が重い。
「何か入っているんでしょうか」
鞄の一つをまさぐると、分厚い本が見つかった。
「これ…、ですね」
弥生はそれを引っぱり出すと、足下に放った。
「それに鞄が多すぎます。私って…、欲張りなのかしら」
鞄は2つだけ残すことにして、その鞄に武器を放り込む。
銃は手持ちの機関銃を含めて6丁。
さっき置いていったニードルガンの代わりに、その中から2丁をベルトに差した。

「これで、しばらくは大丈夫でしょう」
弥生はおもむろに立ち上がり、再び歩き出した。

--

東の空からゆっくりと朝日が目の前の道を照らす。
その中を、スフィー達は黙々と山道を行く。
相変わらず神社は見つからない。無論、往人にも出会ってない。

そんな時だった。
山道を曲がった先、2,30メートルの所に人影を見た。
女性のようだ。
服は血に染まり、鬼気迫る表情。手には機関銃を持ち、さらに服のベルトには別の銃身がのぞいている。
先頭を歩いていた結花は、とりあえず後ろの二人を手で制した。
その時いきなり銃声が響くと、結花たちの頭上を弾道が通り抜けていった。

49 :運の尽き(2):2001/06/22(金) 00:41

曲がり角から結花達が出てきた時、弥生も少なからず動揺していた。
今まではこちらが待ち伏せするなどして、絶対的に有利な状況を作り出していた。
出会い頭に相手に遭遇するのは、多分初めてだろう。

それでも弥生は、すかさず機関銃を構え引き金を引く。
しかし運の悪いことは重なるもの、機関銃は数発発射されただけで、あとは空撃ちの音を響かせるだけだった。
やむなく弥生は機関銃を放り投げ、ベルトから別の銃を抜いた。
銃を構えた時、弥生にはまだ一呼吸出来るほどの余裕があった。
そして、引き金を引く。「タタタタッ」と発射音が響く。
しかしその直後、弥生は右脚に激しい痛みを覚え、引き金を引いたまま地面に突っ伏した。
何が起こったのか、すぐには理解できなかった。
上目遣いに相手を見ると、痛がってはいるものの出血している様子はない。
弥生は、手元に転がる弾を見て激しく後悔した。
そう、彼女が手にした銃はエアガンだったのだ。

50 :運の尽き(3):2001/06/22(金) 00:41

飛んでくる弾の痛みに耐えつつ、やっとの思いで取り出した銃から放った銃弾が相手の脚に命中したのを見て、
結花はようやく自分の体を見た。
弾が当たった腹部は痛むものの、どうやら大事にはなっていないようだ。
「大丈夫?」
「こっちは大丈夫」
スフィーの返事を聞くと、結花は銃を構えたままゆっくり前に進む。
向こうはさっきの銃を捨て、新しい銃を構え直そうとしていた。
「もう撃つのはやめて!」
説得するかのように、結花が叫ぶ。


初めての屈辱。
相手の銃弾に屈した弥生は、それでも反撃の機会をうかがっていた。
ベルトに差したもう1丁の銃―グロッグ17を取り出そうと、ゆっくり手を伸ばす。
相手は少しずつこちらに近づいてくる。「もう撃つのはやめて!」と叫びながら。

…私には、こうするしか生きる術がないんです。

ようやくグロッグを掴んだ右手を結花に向け、引き金に指をかけた。
だが、発射しようとした瞬間、脚の痛みが再び弥生を苦しめる。
グロッグから発せられた銃弾は結花の横をそれ、後方にいたスフィーの前で砂煙を上げた。
「ス、スフィーになんて事するのよ!」
もう一度、結花のデザートイーグルが火を噴いた。

51 :運の尽き(4):2001/06/22(金) 00:42

再び飛んできた銃弾は、弥生の右肩に突き刺さった。
右手の力が抜ける。目の前に血の流れが見える。
左手で銃を持ち替えようとするものの、手が言う事を聞かない。
「終わり…ですね」
弥生は、絞り出すような声でつぶやいた。

…どこで、歯車が狂いだしたんでしょう。

一瞬脳裏に浮かんだのは、昨晩男女二人を撲殺した現場。
あのとき持っていった鞄の中に、エアガンも入っていたなんて。

「もうやめて!」
結花が、弥生の左腕を掴む。
「どうして、どうして人を殺そうとするんですか!」
「…そうすることしか、私には残されていないからです」
弥生は、静かに語りだした。

「…私の知っている人は、もう死んでしまいました。私には、守るべき人も、守りたい人もいません」
「……」
「だから、私は決めたんです。最後の一人になって、生きてこの島を出ようと。…今となっては、もう無理ですけど」
弥生は前方を見遣りつつ、
「スフィーさん…でしたか。あなたには、守るべき人がいるじゃないですか」
「そうだけど…」

52 :運の尽き(5):2001/06/22(金) 00:43

その時、二人のやりとりを遮るかのように、放送の声が辺りに響いた。
『おはよう、諸君。これから定時放送を行う。』
死んだ者の名前、生存者の名前。
次々と読み上げられる名前を、みんな黙って聞いていた。

「あの中に、私が殺した人の名前もありました」
弥生が口を開く。
「いったい何人殺したんですか?」
「忘れました…。ただ、私はここまで無闇に人を殺し過ぎました。今は、その報いかもしれませんね」

薄れ行く意識の中で、弥生の脳裏にあの二人の顔が浮かぶ。

…由綺さん、藤井さん。こんなに早く、そちらへ行けるとは思いませんでした。

「だから、あなたこそ…生きてください。それが、死んだ人達の願いでも…あるはずです…」
そう言い残し、弥生は事切れた。
後には、結花の嗚咽の声だけが響いていた。

53 :運の尽き(6):2001/06/22(金) 00:44

「私…、殺してしまった…」
泣いている結花の元へ、スフィーと芹香が歩み寄る。
「……」
芹香のささやかな慰めの言葉に、結花はようやく泣き止む。
「この人、マネージャーさんだって」
参加者名簿を見たのか、スフィーが告げた。
「普通の人なのに、ここまで変われるんだ…」
「私、わたし、どうすればいいの? この人みたいに、最後の一人になるまで殺し合いするの?」
「落ち着いて!」
「……」
「…ごめん」

「そう、弥生さんが言ってた。あなたには守るべき人がいるじゃないかって」
「それって、私たち?」
結花は小さく頷いた。
「私たち、何があっても一緒にいよう。リアンや綾香さんだってそう願ってるんじゃないかな」
「……」
「うん」
「じゃ、指切りしよう」
そういって指を出そうとした時、
「でも、3人同時に指切りできないよ」
スフィーの言葉に、結花は思わず吹き出した。
「あっ、そうだね」
結花はスフィーと、その後に芹香と指切りをして、3人の絆を誓い合った。

54 :運の尽き(7/7):2001/06/22(金) 00:45

しばらくして、結花が歩き出そうとした時、
「……」
芹香が結花の裾を引っ張る。
「?」
「……」
「武器? もういいわ。あまりたくさん持ってても仕方ないし」
「……(ふるふる)」
芹香の懸念は、このまま武器を残しておくと誰かに使われる、という事だった。
「…そうね」
結花は、弥生の手元に落ちていたグロッグ17を拾い上げ、
「スフィー、これ持ってなさい」
と手渡した。
残りの武器は鞄にまとめて、そばの茂みに穴を掘って埋めた。
他の誰にも見つからないように。

そして、3人は歩き出した。結界の待つ神社に向かって。

========
【047 篠塚弥生 死亡。残り32人】

スフィー【グロッグ17(←弥生)を入手】

※グロッグ以外の弥生の武器は、道端に埋められています。
※ちなみに、文中に出てくる「エアガン」は、元は大庭詠美の支給武器。
 弥生が千堂和樹・柏木楓を殺した時に和樹から奪っています。

55 :運の尽き作者様へ:2001/06/22(金) 01:23
速やかに、感想スレ迄お越し下さい。

56 :名無しさんだよもん:2001/06/22(金) 01:31
教えて、運の尽きた人!!

57 :名無しさんだよもん:2001/06/22(金) 02:06
運の尽きは感想スレで決着がつく
もしくは作者から明確な説明があるまで採用を保留にしてください
これはほとんどの読み手の共通の意見です

注)NGじゃなくてあくまで「保留」です

58 :『運の尽き』注意事項:2001/06/22(金) 02:09
age

59 :分かたれたココロ:2001/06/22(金) 02:10
“う〜ん、ここは?私は…”
誰もいない海岸で人にはみえぬ少女は1日ぶりに目覚めた。

自らが気絶する前の記憶を辿っていくと

「3分で戻ります。もし戻らなければ私達2人を見捨ててここから待避してくださいね」
……
「芹香姉さん大丈夫?」
………
「舞!!!!」


”そうだ・・闇の人格が邪魔な自分が私を追い出してここに飛ばされたんだ。”
”思考の整理がついた少女は辺りを見まわしたが誰もいない。”
”憑依を出来そうな人がいればいいが自分の弱い霊力では生きている人には”
”とても無理だ。”

”私のまた別のココロは、未だ行方知れず、”
”見つけられれば闇の人格を止めることもできるがどうすれば良いのだろう?”


思い悩む中何処からか声が聞こえる。

「な……」
……
「んぐっ!? ぐっっっ……」
………

“ああ・・ 私がこうしてる間にも、誰かが傷つけあっている、”
もう傷付け合うのは止めて!!!”

祈るように叫んだ少女の体から小さな光が解き放たれた次の時、
少女の足元にあった潜水艦ELPODはドッグから姿を消し島の近くで漂っていた。

60 :揚陸艦隊1:2001/06/22(金) 02:23
揚陸艦隊は慌ただしい雰囲気に満ちていた。、

「ELPODより救援要請が出ている、支援を急げ!!」

揚陸艦隊は突然の出動要請にも、動揺することなく、
無事救出したのだが、、

「突然、救援要請を出すほどの何があったんだ?」

揚陸艦隊長兼外部監視責任者、郁田は、ELPOD艦内の生き残った兵士に問いただした。

「………」
生き残った兵士は、答えようとはしない。

答えないなら答えないでいい。強い奴が来たという事だろう。
しかし何故、あれだけの損害をもたらす奴に襲撃されて、
何故、無事に脱出できたんだ??

61 :揚陸艦隊2:2001/06/22(金) 02:26
郁田は、それが疑問であった。それを解き明かしてくれる者達からの連絡は
予定時刻を過ぎてもなく安否を心配していた。

「結界装置監視部隊からの定期連絡はまだか。予定より大分遅れているが」
郁田は問う、
「はあ…彼らが使用していた放送施設が破壊されていますので、生存していたとしても連絡が来るかどうか・・。」
オペレーターは困った顔で答えた時、

「!監視部隊からの連絡来ました」

“申し訳ありません!、放送施設が破壊されまして予備の施設への・・。”

「御託はいいから、結界装置周辺の状況はどうなっているんだ?」


“本来結界があった地域ですが、最早近づくこともままなりません。”
“近寄る者を区別なく攻撃しているようで、我が隊にも犠牲者がでました。“


「やはりあの時の閃光は…、それ以外に何か?
前回の連絡から、他にはどういう変化が起きている」


“これは先程、起きた事なのですが”
“ELPODが修理を受けていたドッグの真上で、数分の間ですが弱い結界反応が”
“見え、反応が消える間際に、一瞬強力な力を発して消えました、”
“現在消えた反応を捜索中です。”
“ただこちらに見られた反応は、どこか怯えたような物でしたね。”

「そうか、それでか。ELPODが犠牲者を出したとはいえ
無事だったのは、誰だか知らぬが感謝せねばな。」

62 :揚陸艦隊3:2001/06/22(金) 02:27

“それとこちらから聞きたいのですが先ほどの放送で、生きている者が死者として”
“放送されているのは、どういうことです?放送中に死者として発表されていた者が”
“動き回っていたのを目撃したのですが?”

郁田は、(何故島の監視者がそんなヘマをするのだ?)と疑問に思いつつも

「うむ、爆弾のことに勘付いた奴が何人かいるようだな。
こちらで対策は考える、そちらは調査を続行してくれ。」

無事保護したELPODをサポートしつつ、揚陸艦隊は再び島の沖へと
離れていく。。


【ELPOD   島を脱出、揚陸艦隊に合流】
【揚陸艦隊 島の近くから離れる】

63 :天使の微笑み:2001/06/22(金) 02:48
 ずっと張りつめていた緊張の糸が途切れ、今までの体と心の疲れが出たのだろう。
 茜はそのまま、意識を失った。
「……う……い、ち……?」
 詩子が呼び掛ける。
「詩子、どうした?」
 自分でも不思議なくらい穏やかな声が出る。
 この少女はもう虫の息なのに、もうすぐ死んでしまうのに。
 だから、最期には、泣き声なんかじゃなく、穏やかな声で。
 そう思った。涙は、後に取っておけばいい。
「……あ……か……ね。
 だい、じょう……ぶ?」
「おかげさまでな」
 手をとる。既に冷たくなりつつあった。
「あかねを……」
「茜を、どうした?」
「……てを……にぎら、せ……て……?」
「あぁ、わかった」
 気を失っている茜の手を取り、詩子に握らせる。
 詩子は瞳を閉じて、笑っていた。
 ただ、笑っていた。
 満面の笑顔。それはまるで、天使のようで。
 かえって、これから訪れる悲しみを、より大きくしているようだった。
「……あはは。あり、がとう……。
 あかね……あかね……」
 最期に何かをつぶやく。
 その声は小さく、晴香やなつみには届いていなかった。
 祐一には、聞こえた。
 思う、茜にも届いていて欲しいと。
「詩子……」
 涙が溢れ出る。
 最期まで、最期まで、我慢していられた。
 笑顔でいられた。

64 :天使の微笑み:2001/06/22(金) 02:49

「……詩子……」
 眠っている茜が、呟く。
 その頬にも、涙が一筋流れていた。
 どんな夢を見ているのだろう。
 せめて今だけは、幸せな夢を見させてあげて下さい。
 たとえ目覚めが残酷でも、せめて、今だけは。

 祭壇の十字架に、祈る。
 神様の祝福は訪れるのだろうか。
 それは誰にも、わからない。

【柚木詩子 死亡】

65 :名剣らっちー:2001/06/22(金) 02:55
とりあえず、おさまってきたんで一度アップしときますね。
念の為アドレス付き。

http://www.geocities.co.jp/Playtown-Spade/1168/index.htm

66 :名剣らっちー:2001/06/22(金) 02:55
あ、本スレに書いちゃった…ごめんなさい。

67 :血塗られた微笑み:2001/06/22(金) 03:27
「……強い子ね」
 沈黙を破ったのは晴香の一言だった。
 床に刺した剣を抜き、言った。
「あなたも見習いなさい?」
「あぁ、そうするよ……」
 晴香は決して祐一に顔を見せようとはしなかった。
(泣いてる……まさかな?)
 続いて床に捨てた硫酸銃を拾い、いまだ呆然としているなつみに向かい言った。
「悪いけど、茜は絶対に殺させない。絶対にだ」
 それは、決意。
 自分に、茜に、そして――詩子に。
 強くなる。茜を守り、そして生き抜くくらいに。
「ようやくまともなことも言えるようになったじゃないの。
 あなたは、どうするの?」
 晴香がなつみに問う。
「……私は……」
 なつみが何かを言いかけた――その瞬間だった。

68 :血塗られた微笑み:2001/06/22(金) 03:28

 放送が、聞こえた。
 死んだ人間の名前を読み上げる、あの放送だ。
 詩子の名前はなかった。だがそれよりも――

「……あゆ?」
 確かにあった。月宮あゆ、と。
 何人も、祐一の知り合いは死んでいった。
 名雪も、美坂姉妹も、舞も佐祐理さんも。
 真琴にいたっては、自分の目の前で死んだのだ。
 そして今、まっすぐに自分の想いを貫き、死んでいった親友がいる。
 その上更に、現実は重くのしかかろうとしているのか。
 目の前が真っ暗になりそうだった。
 今に沈んでいきそうだった。
「!?」
 それを結果的に救ったのは、突如教会に溢れた気配。
 おおよそ、教会という場所には似つかわしくない空気。

 ――殺気だった。

「許さない……。
 あの二人まで……許さない!!」
 殺気の主――晴香が叫ぶ。
 祐一もなつみもその空気に完全に飲まれ、一言も声を出せずにいた。
 保科智子、マルチ、そして神岸あかり。
 僅かな時間しか共にいなかったが、それでも彼女達は友人だった。
 いや、親友だった。
 高槻との会話を思い出す。
 結局何もできなかったのだ。何も。
 刀をきつく握りしめる。
 噛み締めた唇から血が滴る。
 地獄の底まで、高槻を追い詰める。
 この世の全ての苦しみを、奴達に味あわせる。
 そうと決まれば、こんな所にいつまでもいる場合ではない。
 ドアに向かって、走る。
 祐一の声が背に聞こえるが、晴香には届かなかった。

69 :血塗られた微笑み:2001/06/22(金) 03:30

 ドアが開く。
 開けたのは晴香ではなかった。
 現れた女の異様な目の輝きを捕らえ、思わず晴香は足を止めてしまった。
 それだけの狂気が、その瞳にはあった。

「祐一〜、ようやく見つけたよ〜」

 女が、言った。
 明るい声で、血に汚れきった姿で。
「なゆ……き?」
 祐一は呆然とつぶやく。
 何かが間違っていた。
 あんなに背が高かっただろうか? あんな髪型だっただろうか?
「うん、そうだよ〜」

 何かが、間違っていた。
 目の前の光景がうまく認識できなかった。
 天使の去った教会に、血塗られた微笑みが舞い降りた。

70 :戦乙女 - 1:2001/06/22(金) 18:06
激痛。
痛みで、崩れ落ちそうになる――しかし、それ以上の闘志が彼女を、七瀬留美を奮い立たせていた。
長森瑞佳――。
折原浩平――。
仲間達は、次々と殺されていった。
失った痛み。それに比べれば――この程度。
鉄パイプを、握り直す。
目の前の"高槻"は、冷や汗を浮かべている。少女の思わぬ反撃に、驚愕し、畏れを抱いていた。
もはや彼女の念頭に、「乙女らしく」という概念は消え失せようとしていた。
いや、たった一つだけ「乙女」があるのかもしれない。
それは。

71 :戦乙女 - 2:2001/06/22(金) 18:06

――ガキのくせに、生意気な……!
マスターホールドは、全身を襲う寒気と格闘していた。
ボウガンを握ろうとする手が、おぼつかない。
……そこで気が付いた。毒矢を挿入していない――これでは、鈍器にしかならない。
つくづく、自分のタイミングの悪さに苛つくばかりであった。
――恐れている?鬼ではなく、ただの女を……?くそったれ、なめやがって。殺してやる。
威勢のみだ。
実際の所、マスターホールドには全く武器が無い――ナイフは、遠くに蹴りやられた。拳銃もだ。
頼みの綱のボウガンも、矢の挿入に時間が掛かってしょうがない。多分、その間に、頭を砕かれる。
じりじりと後退していく――ますます、武器が離れていく。
しかしそこで。
視界の内に、ゆっくりと身を起こす鬼の姿が見えた――
――馬鹿な!?確かに当たった筈……!
その一瞬の狼狽を、七瀬は見逃さなかった。間合いを詰め、素早く頭部への打撃を繰り出す。
女子供の一撃だ――。たった一撃では死なない。だが、鉄パイプだ。身を屈め、やり過ごす。
そこに目に入る、相手の足の怪我。
マスターホールドの口端が――にぃ、と笑みの形を象った。
無理矢理な体制からの蹴り。それは、的確に七瀬の傷口を抉った。
「あぐぁっ!」
これには、七瀬も崩れ落ちた。
――チャンス。今なら、脇を通り抜ける事が出来る。
鬼の声。女の脇を通り抜けた――銃までどれくらいだ?そう遠くまでは飛んでいない筈……。
拳銃。己の希望。
それを掴むべく、マスターホールドは走った。
だが。

72 :戦乙女 - 3:2001/06/22(金) 18:07

次の瞬間。耳に届く、怒号。
そして、空を切る音。

がすっ!
自分の頭が叩かれる音――マスターホールドは、何故か、それが遠くから聞こえてくるような錯覚に囚われた。


「あぐぁっ!」
思わず、声が出た。撃たれた傷が、衝撃で、血を吹き出す。今度こそ崩れ落ちた。
前を睨み付ける。"高槻"が、笑っている――。
それは、七瀬の、底知れぬ怒りと闘志を燃え上がらせた。
――弱点狙って叩くなんて……
「こんの……っ、ゲスがぁぁぁっ!」
およそ乙女とは似つかわしくない台詞。
それと同時に、立ち上がりつつ、身体の捻りを加えた鉄パイプの一撃を"高槻"の後頭部にお見舞いした。
丁度裏拳に似た感じだ――が、その威力は数倍。鉄パイプは、その一瞬だけ恐るべき「凶器」と化した。
がすっ!
クリーンヒット。衝撃に、"高槻"の身体が顔面から叩き付けられた――流石に起きあがってはこなかった。
ひょっとしたら、もう起きる事もないかもしれないかもしれない。
反動を利用し、立ち上がる。脛の裏の傷は、未だに痛みの協奏曲を奏でている。
しかし彼女は立った。立っていた。
その後ろに在る、輝く太陽の光を浴びて。

――それを、どんな「乙女」に当てはめる?


即ち、「戦乙女」。

73 :彗夜:2001/06/22(金) 18:46

訂正です。
マスターホールドではなくマスターモールドでした……(汗)

74 :血染めの少年1:2001/06/22(金) 19:27
見張り……警備は五分の刻みで交代された。
とは言ったものの、それは通路に配置された二人組みのシフトに過ぎなかったが。
そして、静かに終焉を迎えた二人の下に、別の担当だった者たちがたどり着く。

うっすらと香る血の匂い。
ありえないはずのそれを感じた二人は、
本能的に自分が戦いを求めているのだろうと自己完結させる。

しかしそれが現実のものであることを彼らはすぐに知ることになる。

彼らは、二人の死に様を目撃することができた。
なぜなら、惨状はそのままに放置されていたから――。

「これは――」
息を呑む。
だが慌てふためくような愚行はしない。
久しぶりの血の匂いが、ただそこに在るだけ。
二人の傭兵は、全く同じ思想の下にあった。

一つは、床に膝をつくような形で絶命している死体。
目を、いや瞳孔を開いたまま、口は半開きでよだれを垂れ流し、
そして失禁している様子が見て取れる。
居たたまれなくなった傭兵の片割れはそのまぶたを閉じると、
やや乱暴に蹴りつけてその死体を横たえた。

75 :血染めの少年2:2001/06/22(金) 19:28

もう一人のほうはさらに凄惨だった。
その死体は直立不動だった。
もう絶命している……、首を落とされているというのに、
そこに立っている。
かつて頭のあった部分からは、ぴゅっぴゅっと血が断続的に吹き出すだけでなく、
その他に体を伝って地面に流れている。
言うまでも無くその体は、自らの血に紅く染まっていた。
そしてそのすぐ側に転がっている球状の物体。
――首だ。
自分が死んだことにも気付いていないかのようにカッと目を見開いたまま、
自分のものであった肉体を凝視している――ように見える。
凄惨、凄絶にして残酷。
戦場にいるのではない、
これではまるで猟奇殺人の現場に居合わせたかのようだ――。
さすがに”それ”に触れるのは躊躇われた。
よって二人はそれを黙殺せざるを得なかった……。

だがこのときにおける最も重要な事柄も、目の前の二人の死ではなかった。
仲間ではない、強いて言うならば単なる同業者。
そんなものよりも重要なもの――即ち、敵。
それも飛びきり上等な敵の存在を、傭兵の嗅覚は確実に捉えていた。

「……どうする?」
「……より勝算の高い方をとる、それが戦術と言うものだろう?」

二人は頷くと、そのまま背中を合わせてじりじりと後退する。
……すでに二人ともサブマシンガンを構えていた。
単体で二人を殺害したと言うならそれは恐るべき戦力であり、そして速さである。
仮にも傭兵を――戦闘のプロフェッショナルを、声をあげる暇すらなく殺しているのだ。
むしろ、相手も同じような人種であると考えた方がいい――。

周囲の空気には敵対者の匂いを感じられない。
鼻をつく鮮血の香りがそれをかき消したとでも言うのか。
ともかく、今のところは襲われそうな気はしない。

76 :血染めの少年3:2001/06/22(金) 19:35
一歩、……二歩。

油断なく構える二人の傭兵は、着実に歩みを後ろへ進める。
ドッグにまで後退できれば、ほぼ敵の勝ちの見込みは無い。
ここが辛抱時だった。

――ずいぶんと長い一時。
一瞬が、永遠に感じられるような――。

分岐口の手前まで二人が移動してきた時、とうとう動きがあった。
カランッカランカンッ!
「!!」
ダダン! ダダン! ダダダン!!
即時反応し、マシンガンを連打する。

「……どうだ?」
「……確認できん……な」

マシンガンはまだ下ろさずに、二人は音の発生源について話した。
白い煙が立って少し煙たいが、そんなことに文句をいう余裕すらなかった。
死と隣り合わせになっている今、たとえどれほど経験を積んでいようと、
――いやそれだからこそ彼らは常に臆病だった。
彼らにとって生き延びる為の要素は、常にそこから出づるものだった。
そもそも暗闇に等しいそこは視界がひどく悪い。
硝煙が晴れても、あまり彼らに恩恵は無かった。
「……ちくしょう! 何もいないのかよ!?」
悔しそうにその片割れは言った。
「油断するな、どこに潜んでいるか分からんぞ!?」
そういった矢先――。
ガッ!!
岩壁を蹴る音が聞こえた。
反響が小さいせいでどこからの音であったかをはっきり二人は聞き取ることが出来た。
――上だ。

77 :血染めの少年4:2001/06/22(金) 19:36

「くっ!?」
すかさず向き直ってマシンガンを向ける、だがその行動はほんの少しだけ遅かった。
バシィィィッッッ!
「ガッ……」
延髄を強打され、そのまま岩盤で頭部を強打した傭兵の一人はそのまま崩れ落ちた。
「おのれぇっ!」
接近されてマシンガンが思うように放てなくなったもう一人は、
そのままそれを剣として使って殴りつけた。
ゴスッ!
鈍い音がする。
その一撃は後ろから肩に入っていた。
おそらく骨にまで響いていたのではないか?
だが、その動きは止まらない。
そのまま、右手にしていた分厚い書を、遠心力に任せて振り回す。
ガンッ!
見た目どおり、いやそれ以上の重さを持ったそれが、もう一人の傭兵の顔にめり込んだ。
うめくことすら出来ずに、その男もまた崩れ落ちた。

「……はぁ、はぁ、はぁ」
荒い息。
異様に鼓動の早い心臓。
もはや感覚も無い肩の傷。

ドクン。

そして、もう一度大きく刻まれる鼓動。

「……よーし、そこまでだ」
明かりが差し込んでくる方向から、そんな声が響いた。
「これほど派手にやって気付かれんとでも思ったか?
 4人を殺ったその技量は賞賛に値するが、それもここでお終いだ」
傭兵の隊長はそう高らかに言った。
別地点、そして艦の担当になっていた全員、総勢六名が集まって、
一列に、マシンガンを構えている。

78 :血染めの少年5:2001/06/22(金) 19:37

闇に光る金色の目、それはひどく冷たくこちらを見つめている。

「撃て」

マシンガンの第1射と、敵が何かを放り投げたのは、ほぼ同時のことだった。

バッ!

視界をふさぐ”何か”。
一瞬だけ動きが硬直する。
「紙か、小賢しい目くらましだ! それごと撃ち殺してやれ」

ダダダダダダダダ!

だが銃弾はそれを通しきれない。
あらぬ方向へと方向へとずらしそして――それを返してきた。

キィンキィイン!!

来るはずの無い銃弾が、丁度両サイドに並んでいた傭兵に的中する。
一人は脚を、もう一人は頭部に――即死だった――。

「反射兵器だと!?
 くっ、銃撃をやめて一次後退しろ! このままだと同士討ちになる」

満足に体が動く連中はその命令に従って後退する。
だがそれを待ち望んでいたかのように突進してくる敵。
その動きは隊長格の男――指示を出していた――へと向かっていた。

79 :血染めの少年6:2001/06/22(金) 19:38
「何ィッ!」
飛び込んできたそれともつれながら隊長は転がった。
周りの連中も誤射を恐れて発砲することが出来ない。
何度も言うが、これほどの接近戦ではマシンガンは役立たずに過ぎなかった。

――この威圧感、只者ではない。こんな人間が参加者に混じっていようとは……。
ニヤニヤしながら話す、在りし日の高槻の顔が過ぎる。
……そう、黒い悪魔だ……。
――こいつなのか!?

がすっ。

「ぐぁ……」
こめかみを強打され、男の意識は闇に落ちた。
その男の首根っこを掴んだまま、残った傭兵の方に気を向ける。
――あと3人、だが、ずいぶんと離れてしまった。
連中が戦闘の勝者に気付く――マシンガンを向ける。
撃たれれば――当然だが――死ぬ。

ぶん、と男を連中の方へ放り投げる。
それは”盾”となって銃弾の嵐を遮った。
その一瞬にマシンガンを拾う。
そして腰溜めに構えて放つ――。

ダダダダダダダダダダダダダ……!

だが、銃撃の効果も未確認のうちに連中は艦の内部に入り込んだ。

「しゅ、修理はまだかっ!?」
「いま少し時間がっ……」
「早くしろっ、化け物が迫っているんだぞ」
「無茶です! まだ自律修復モードにも入ってないんですよ!?」
「じゃあ早くそれにしろ!!」
負傷したものもいるのか、艦内に血の匂いが漂う。
だが、それを超える恐慌でそこは埋め尽くされていく。

80 :血染めの少年7:2001/06/22(金) 19:39

「んぐっ……、 ぐっっっ……」
「どうした、早くしろぉ!!」


――その時、何かがパッと輝いた。


ぼうっとドッグを見つめる。
そこにはさっきまであったはずの潜水艦の姿がなくなっていた。
一瞬のうちに、消えてしまった――。

「……うっ……がっ……あっ……あああああああ!」

突然胸をかきむしりながらもがく。
その右腕や額からは、破裂した欠血管が血を流している。

どくん!

もう一度大きく鼓動する。
そして、意識が途絶える――。


気が付いてみれば、もう朝日も昇る頃で。
目の前にあった、累々たる死体の数々も消えていて。
でも紅く血にまみれた全身が、それを偽りで無いと言って。

すぐ近くには、いつのまに現われたのか、安らかそうに寝息を立てる郁美がいて。

――僕は笑うしかなかった。

81 :向夏。:2001/06/22(金) 19:50
「鹿沼葉子ぉ」
初音から離れた高槻は、その筆舌にし難い美少女、天使とでも表現するのが適当か?
その少女を睨みながら、ゆらり、と立ち上がった。
「久しぶりだぁ」
上着を破かれかけ、嗚咽を漏らす幼い少女――初音を尻目に、
「ええ、まったく。それにしても、貴方にそんな趣味があるとは思いませんでした」
そう、心底つまらなそうな眼で、葉子は吐き捨てると、高槻に銃口を向けた。

だが、多分、こんな銃で殺せるほど、彼が脆弱な装備をしていない事くらい想像は付く。
防弾チョッキくらいは着ているだろう。だからこそ彼は、あんなに余裕綽々で笑っているのだ。
まだ距離がある――確実に奴の顔面を貫けるかどうかは怪しい。
それに、運動能力に差があると云っても、装備に於いて言えば、こちらは圧倒的に不利だ。
こちらが近付く前に高槻の持つアレを放たれたら、自分は多分、終わりだ。
慎重に間合いを取る必要がある。そして、そのような場合、拳銃があまり用を為さない事は判っている。
銃では殺せないかも知れないが、逆にこのような原始的な兵器ならば――
片手に持った槍をくるくると回す。そして、矛先を、十数メートル離れた高槻に向けた。
慣れない遠距離武器を持っていると考えるから、動きが鈍るのだ。
銃をスカートのポケットに仕舞う。
――十メートルそこそこなど、私にとって、あいつが銃を引くまでの時間に足らない。
「そこの女の子。こいつは私が殺しますから、その男の人を抱えて逃げると良いです」
声を掛けるが、まるで動く様子はない。腰が抜けてしまったのだろうか。――ムリもないが。
だが、じりじりと後ずさりはしている。高槻も、別にそれに注目しようとはしない。
「余裕だなあっ、鹿沼葉子っ」
かちゃり、と銃を向けて、高槻は笑った。
「貴方こそ。その娘を人質にでもすれば、少しは有利だったでしょうに」
言うと、――高槻は、高く高く笑って、

「鹿沼葉子。お前にはオレは殺せないっ!」

82 :向夏。:2001/06/22(金) 19:50
そんな事を言った。
その声に――ある種の確信のようなものがあったから、葉子は不快げにその目を睨む。
「何故? 不可視の力が制限されているとはいえ、貴方一人殺すくらい、訳もないです」
力が制限されていなければ、今の一睨みで、高槻の頭は粉々になっていただろうが、
だが、数瞬後には、結局同じようになるわけだ。この槍で串刺しになっている筈だ。
「もう貴方と話すのも、つまらないです。終わりにしてあげます――!」

言って、葉子が駆けようとした瞬間、

高槻が、何かを懐から出した。

それは、一体、何だったのだろう?
――身体に走るのは、重み。
これは、何だ?
懐かしい重さ。
そう、不可視の力を手に入れる前の、自分の姿。のろまで、力の弱い、ただの女。
「――力がっ」
息を吐く。重い。
高槻の手に持っているのは、
あれは、何だ? 何かの、機械?

完全に制限した。これでお前はただの少女だ。

高槻は、言って――大きく笑った。
そして、今度こそ銃を葉子に向けて、
「グッバイだ、鹿沼葉子ぉぉ!」

――まだっ!
葉子は横に走る。焦点を合わされたら、終いだっ――
のろまな身体。十メートルを走るのにどれくらいの時間がかかる?
少しずつあいつに近付かなくちゃいけない、
槍なんて、今では役に立たないっ――!
拳銃を再び手に取りながら、葉子は息を切らせて走った。

83 :向夏。:2001/06/22(金) 19:54

パララララッ!

足下で音がした。
痛みはない、当たっていない!
「そらそらそらぁ! 早く逃げろぉ、鹿沼葉子ぉ!」
心臓の音。
こんなにも心臓が、重い――

パララララッ!

そして、次の音が聞こえた時、
くぁっ――
痛い、痛い、痛い――っ
足の甲を、貫かれた――
木々のブラインドがあるにも関わらず、高槻は異常に優秀な腕で、葉子を狙ってくる。
――動けない。
これ以上動けない、そんな弱音を吐きそうになる。

――まだ、生きている! 戦わなければ、この殺し合いを終わりにするために。
葉子は、きっ、と、その憎たらしい顔を睨んだ。
「足が止まっているぞぉ」
くそっ! まだ、まだだ! 葉子は痛む足を引きずりながら、それでもまた走り始めた。

――奴を殺すには、何処を狙えばいい?
今の自分は、視力さえもずっと落ちている。拳銃など扱った事も殆どないから、狙いが正確に、とまでは行くまい。
だが、狙うは、当然顔面だ。あそこだけは無防備だ。
だが――
「おっと、窮鼠猫を噛む、と言うしなあ!」
――高槻は、背中に担いだ鞄から、大きなヘルメットを取り出し、被った。
これで、何処を狙えばいいか、も判らなくなった。
――ここまで、か。
足に走る激痛も、もう、自分に囁いている。動かなくて良い、結局殺されるんだから、と。
自分はなんて無力なのだ。こんなところで、死ぬのか。

84 :向夏。:2001/06/22(金) 19:59
郁未にも逢えなかった。――この殺し合いを止める事も、出来なかった。

不可視の力。それがなければ、生き残る事も出来ないほど、自分は弱かったのだ。
だが、それでも――先の女の子と、青年は、逃げられただろう。もうだいぶ、離れたところに来たから。

「ようし、観念したか、鹿沼葉子ぉ!」
高槻は、高く、高く笑った。そして、言った。
「武器を捨てろぉ! そして、服を脱げっ! ストリップだ!」
「ふ、ふざけないでください! そんな事」
そんな事は出来る限りしたくなかった――尊厳を捨てたくはない。
しかし、案外あっさりと、高槻は引き下がった。だが、状況が好転するわけでもない。
「――まあ、良い。どうせお前は無力だ。強引に犯して殺すのも一興だ。さ、武器を捨てろっ」
捨てなければ撃つぞ? ――そう、言った。
どうすれば、良い? 決まってる。武器を捨てて降伏するんだ。
それで、もしかしたら、生き残らせてくれるかもしれないだろう?

一つだけ、閃いた。完全武装かと思われた、その高槻に、一つ、無防備なところがあった。

その為に、どうすれば良いかな?
決まってる――
銃を遠くに放る。それを見て、高槻は、いやらしそうな笑みを浮かべた。
「そうか! やっとオレのモノをしゃぶる気になったか!」

「嫌です。死んでも、貴方に汚されるのだけは嫌です」
くわえたら、噛み切ります。
頑として、言った。槍を強く握りしめて。
――よし、息は戻った。これで、少しは走れる。
「殺せ。私の顔面を打ち抜け」
だが、今の私の運動能力で、使いこなせるか?

85 :向夏。:2001/06/22(金) 20:00
不可視の力を持った、あの少年で、漸く使いこなせたのだろう?

「――ちっ、醒めた、醒めちまったっ!」
もう良いわ、殺すわ、お前。
「まあ、その綺麗な顔は傷つけないで置いてやるよ。ぶっ殺した後で犯してやるから」
死姦でも充分だあ! お前は綺麗だからなあ!
五メートル。――
――そう云って、高槻は銃口を、自分の心臓に向けて、
あっさりと、引き金を引いた。

そして、その数瞬前に――葉子は、腹に入れておいた、――少年から譲られたモノ。
それを心臓の前にかかげた――

これの耐久性がどれ程かは知らぬ。だが、賭けるしかない。
高槻は、それが何だったか判るのだろうか?
引き金を引くのを止められなかった。彼は、小銃を引いてしまった。

それが、反射兵器。常識では考えられないような、兵器だったのだ。

銃弾の衝撃が、その薄っぺらいものに集中する。
そして、それが不思議な音を立てて、何処か別の方向に弾かれていくのも。
限界だ、これは多分もう、使い物にならない!
一発か二発、それを貫通した音が聞こえた。
肩口に銃弾が当たる。だが、それは左肩だ!

86 :向夏。:2001/06/22(金) 20:00

「なっ――!」
数発が、高槻の方に返っていくのが見えた。
跳ね返ったそれが、都合良く当たる、というわけにはいかなかった。
だが、それでも充分だ。
五メートル。槍を強く握り、葉子は駆けた。
これが最後のチャンスだから。
高槻のクローンは他にもいる、だが、こいつだけでも、殺すっ――!

狼狽した高槻は、――銃を取り落とした。
葉子は、その手に握りしめた槍を、――ヘルメットと、防弾チョッキの間。
首元に、差し込んだ。
ここだけが、唯一の急所だ。

肉が弾けるような音がした。
真っ赤なモノが、降りかかる。
「――っ、くそぉぉぉ!」
高槻の咆吼。
あるいはそれは――断末魔か?
空気が漏れるような音。
それは、血の流れる音だ。

多量の噴水を見せてくれた後、その高槻は果てた。

「――はぁっ」

葉子は、息を吐いた。
弱いままの姿でも、私は勝てた。
不可視の力無しで、――予想だにしない武器を使ってとはいえ、勝った。
小銃もある。
なんとかなるかも知れない。
自分がすべき事、ここから帰るという目的は、為されるかも知れない。
不可視の力無しでここまで戦えたのだから。

87 :共生。:2001/06/22(金) 20:03

――そういえば。
倒れた高槻に歩み寄る。
「私の力を制限した、装置は――」

油断しなければ良かった、と心から思う。

ガァンッ!

――腹を貫かれたっ!
「はぁっ――!」
まさか、もう次のクローンがっ――
振り返り、そこに立っていたのは。

「さっきはよくも人の銃奪いやがってっ――」

先程、自分が打ちのめしたクローンらしい。
それとも、これがオリジナルなのか?
右手には銃。そう、先程自分が放った銃だ。しまったなあ。
意識が飛びそうになる。

くそ……

その時だった。

「お姉さんっ!」

少女が、拳銃を持って一人駆けてくるのが見えた。
馬鹿だな、あれだけ逃げろっていったのに。
哀しげな表情を浮かべると、その少女は、一瞬躊躇した顔をした。
高槻は、また、あのいやらしそうな眼で、言った。
「おお、なんて可愛らしい少女だ!」

88 :共生。:2001/06/22(金) 20:04
そして、その汚れた目のまま、拳銃を向けると、
その足下を、ガァン、と撃った。

――それで、その少女は、倒れた。
「わはははは、なんて無謀な」
高槻は葉子から、小銃を奪い取った。
保険、だろうか。どのみち無理だ。わたしはこれ以上戦えない。
早く、殺せ。
――だが、高槻は、葉子の耳元で、こんな事を呟いた。
「鹿沼葉子。お前は後回しだ。あの可愛い子を犯してから、お前犯してやる」

なん、だとっ――
葉子は――目を見開いて、その悪魔を、見た。

――柏木初音は、二人が離れていくのを見て、漸く立ち上がる事が出来た。
今は、あの女の人の好意に甘えるべきだ。
何より、大切な人が、刻一刻と悪い状況に陥っているのだ。
銃も持っていた。だから、きっと、大丈夫だと。

けれど、目に入ってしまった。
明らかに身のこなしが鈍くなったのが。
そして、目に浮かんでしまった。
打ちのめされてしまうだろう姿が。

彰も大切だ。
間違いなく、もう、危険な状態なのだ。
自分には武器だってない、ないじゃないか――

89 :共生。:2001/06/22(金) 20:05

そこで、漸く初音は思い出す。
武器は、持っていたじゃないか。
人づてに自分の所に来た、拳銃が。
撃てるかは判らない、けれど。
彰の事も気にかかったが――だが、初音には、見殺しには出来なかった。

案の定、先の少女は倒れている。――腹から、血を流して。
そして、多分、とどめを刺そうと、近寄っている。
だから、初音は大声を上げた。少しでもこちらに注意を引きつけるため。
彰を背中から降ろす。そして。
「お姉さんっ!」
こちらを見た、傷ついた少女は、――哀しそうな顔をした。

――次の瞬間に、初音の足は、打ち抜かれた。

「あうっ!」
痛いっ――! ――信じられないほどの激痛が、初音の太股を襲った。
それまでに自分の身体を支配していた、目の前の人を死なせたくない、という意志は、一瞬で途切れる。
痛い、痛い、痛い! 死ぬのはこれよりずっと、痛いのか?
怖い、怖い、怖い! 止めておけば良かった、逃げれば、良かったっ――
見ると、高槻は先程の美しい少女に近付いている。
そして、少女の片手に握られていた小銃を奪い取り、
「抵抗できないよう、な」
言って、高槻はまた笑う。
そして、こちらを見た。
「可愛らしい少女だ、まったく、健気だあ!」
――初音は、怯えた表情で、それを見た。
先程、自分がされかかった事を思い出す。
じりじり、と近付いてくる高槻に対して初音が出来る抵抗は、
ただ、悲鳴を上げるだけ。
右手の拳銃を奪われる――初音は、無抵抗の姿になってしまった。

90 :共生。:2001/06/22(金) 20:16
「いやぁぁ! 助けてぇっ――!」

葉子は、悔しそうに、高槻を睨んだ。
ヘルメットを被っていて、今度も、首だけが、無防備だ。
だが、今の自分には、これ以上動く事は出来ない。銃も奪われ、もう、手も足も出ない。
目の前の少女が犯されるのを見なければならない。

目を閉じる。
目の前の少女がさらされる、その悲劇を見たくなかった。
だが、耳は閉じる事が出来ないから。

「いやだよ、助けてよ、助けてよ、いやだ、いやだよっ」

絶望。それは、あまりにも深い。
くそっ――何で、私はっ――!
目を見開いた。
少女を――救わなければ、這ってでも、止めなければ、
と――

そこで、葉子が見たモノは、何だったのだろうか?
何だったか確認する前に、意識は途切れた。

その未発達な身体を嬲り始める。殆どないに等しいような乳房を、服の上から撫でる。
「やめてぇっ!」
強引に服を破り、その薄い胸を露わにする。真っ白な胸が、視界に眩しい。
「わははは、なんて可愛いんだ」
そして、それをいじくり始める。

91 :共生。:2001/06/22(金) 20:17

「嫌だ、嫌だ、やめて、やめてぇ」
下半身にも手を伸ばす。スカートの上からそれをなぞる。
そして、内部に指を侵入させた。柔らかな身体を触る。白い肌を舐め回すように見る。
「嫌だよ、やめてよ、やめてよぉ……」
羞恥で、あるいは絶望で、顔を悲哀の相に充ち満ちさせて、その少女は泣いた。
良い。こういう何も知らない娘を犯すのは、何より楽しい!

もう、高槻は我慢ならなかった。
幼女愛好者と呼ばれようが、穴さえあれば関係がない!
大体、ただでさえここ数日、女と触れあう機会すらなかったわけだからな!
――鹿沼葉子より、この少女を先に犯そうと考えたのは、自分に多少そのケがあるからか?
くすくすと笑いながら、まあ、それでも良いだろう、と、そう呟いた。
既に屹立した自分のそれを、未だ濡れさえしていないそこに、強引に突き立てようとした、

その瞬間。

――自らの首元に、衝撃を感じた。
血の痛み。
何で痛みが走るのだ。
誰も、この周りにはいない筈だ。

振り返ろうとしたその瞬間、
――ヘルメットを強引に脱がされた。

92 :共生。:2001/06/22(金) 20:17
「――死ね」

真っ赤な額。――それは、人のものには見えなかった。
真っ黒な髪が、その顔の半分以上を覆い隠している。
光るのは、あまりに落ちくぼんだ瞳。そして、その奥に見える、漆黒の影。
サブマシンガンの銃口を口の中に突っ込まれる。
「ひゃめろっ――」
――この青年は、自分の下にいた少女に、傷一つ追わせることなく、
自分の首を、あのサブマシンガンで、正確に打ち抜いたのか?

その顔が誰だか判った時、既にすべては遅かった。

ぱらららら。

喉が弾けるような痛み。そもそも、首元からも夥しい血。
死にたくない、と考える前に、きっと、高槻は死んでいる。
――皮膚が弾け飛び、顔が半分消し飛び、そして、遂には、意識も途切れた。

「――彰、お兄ちゃん」

そんな声が、聞こえたような気がしたが、高槻にはそれを聞いても、何の感慨も湧かなかった。

――立ち上がった筈の彰は、だが、すぐに倒れた。
初音が呼ぶ声が聞こえた。助けを呼ぶ声が。
だから、一瞬、目が覚めたのだろうか?

そして彰はまた、深い闇の中に落ちていく。
初音の呼ぶ声が聞こえる。
けれど返事は出来ない。少し寝かせろ。


【高槻 ステアー・ベレッタ 共に死亡。共にロリコン】
【七瀬彰 柏木初音 彰は初音のピンチに起きあがるも、またすぐに気を失う。
             初音は犯されかかるも、足に怪我を負ったのみ。服は破けたが……】
【鹿沼葉子 ステアーを殺すも、腹を打ち抜かれて重傷。気絶。反射兵器は瓦解。】

93 :名無しさんだよもん:2001/06/22(金) 21:10
シリアスな展開を楽しませてもらったよ、彰パートの人。
そして、補足のところでも笑わせてもらった。共にロリコン。

94 :疾駆 - 1:2001/06/22(金) 23:25
「………」
耕一は。
大きなシーツに穴を開け、片膝を付きつつ。
目の前の光景に呆然としていた。
"高槻"が、後頭部から血を噴出して倒れていた。
顔面から地面に叩き付けられ、僅かに跳ね、そして動かなくなる。
七瀬は、撃たれた足すらものともせず、静かに、陽光を浴びて、立っていた。
その姿。何と、恐ろしくも――美しい。
(――おいおい。冗談だろ……)
そこには、確かに戦士が居た。
耕一の出番が無い程、である。


――パァァン……
―――っ!


そこに響く、銃声。
続く悲鳴。
耕一の耳が、森の奥から届いたそれを、確かに捉えた。

95 :疾駆 - 2:2001/06/22(金) 23:26
あの声は、間違いなく――
「――初音ちゃん!?」
まずい。確か、"高槻"は二人居た。
その内の片方が、初音に襲いかかったとするならば。
――くそっ、こんな所でのんびりしてる場合じゃない!
「留美ちゃんっ!」
振り向けば、七瀬は、草むらに落ちたナイフを拾い上げていた。
顔を見合わせる――頷く。
「そいつを頼んだ。俺は――初音ちゃんを」
「……でも、こいつ、どうすんの?」
――見れば、"高槻"が草の中に顔を沈めて、痙攣を起こしていた。
どうしたものか?
「……好きにしてくれ」
それだけ言って、駆けだした。

――後ろで七瀬がどうしたか僅かばかりに気になったが、振り向く暇は無かった。

96 :The Little Sister_1:2001/06/22(金) 23:34
 初音は、一瞬、自分を助けようとしてくれた金髪の女性に目をやったが、それより
も優先すべき事項のために考えを切り替えた。
 地に伏した彰に駆け寄り、その体を抱きかかえるようにして草むらまで動す。
 背負ったときには気が付かなかったが、華奢な見た目からは想像できないほどに、
彰は重かった。しかし、初音にとってはそんなことはどうでも良かった。
 そして、初音は彰の顔を見つめながら叫んだ。
「彰お兄ちゃん、死なないで! お兄ちゃんが死んじゃったら、あたし、もう……。
 お姉ちゃん達はみんな死んじゃった。あたし、ひとりぼっちになっちゃったよ!」
 流れ落ちる初音の涙が、彰の顔を叩いた。
 彰がゆっくりと何回か瞬きをした。
「お兄ちゃん!!」
 初音はうれしさのあまり、彰の顔をぎゅっと強く抱きしめた。
「は、初音ちゃん、苦しいよ……」
 今度は慌てて体を離す初音。
「彰お兄ちゃん……」
 彰が意識を取り戻したことで、初音は一瞬だけ安心した表情になった。
 しかし、それもすぐに曇った。
 姉たちの死を思いだしたのだろう。
 彰はゆっくりと息をしながら初音に言った。
「初音ちゃん……。君はまだ一人じゃない。君の大好きな耕一さんも、生きている
 はずだ。君はひとりぼっちじゃない……」
「でも! もうお姉ちゃん達はみんな死んじゃったんだから。もう、あのころには
 戻れないんだから。千鶴お姉ちゃんにも謝ってなかったのに、梓お姉ちゃんも、
 もう、私の相手をしてくれない。楓お姉ちゃんだって、みんな……。もう、みんな
 死んじゃったよ。私、もう、どうすればいいのか……。どうやったって私……。
 これからうまく生きてなんかいけない。あのころに帰りたいよう……」
 初音ちゃんは声を殺すこともせずに泣き出した。

97 :The Little Sister_2:2001/06/22(金) 23:37
 彰はしゃべるだけでも既に辛くなってきていたが、あえて体を動かし、初音の頭を
撫でるようにしながら言葉を紡いだ。
「こうして初音ちゃんはまだ生きてる。ならばこれからも生きていけるはずなんだ。
 僕の友人達もみんな死んでしまった。僕の大切な人だった美咲さんも死んでしまった。
 だから僕も、僕の日常はもう何処にもなくなってしまったと勘違いしかけていた……」
 初音の頭を撫でる手は止めずに、呼吸を整える彰。
 初音は彰の次の言葉を待っている。
 彰は美汐達に語った自分の言葉を思い出しながら、ゆっくりとそれを口に出す。
「けど、僕は思うんだ。確かに今まで僕らが思い描いてきた日常はもう手に入らない。
 そう、だけどね、初音ちゃん。……日常は、そこを日常なのだと思えば、きっと、
 そこが日常なんだよ。過去を切り捨てろなんて言わない。でも、未来を思って生きて
 いくことはそんなに悪い事じゃないんじゃないだろうか……。繰り返すことになる
 けど、初音ちゃんには耕一さんもいる。彼も初音ちゃんを心配していたよ……。
 まずは彼を安心させてあげるのも、良いかもしれない……。そして、今度彼を見つけたら、
 もう離れてはいけない……。これ以上、喪失の悲しみを味わうことの無いように……」
 彰はどこかで見聞きした覚えのあるフレーズを思い浮かべた。
 『愛し合う二人はいつも一緒、そいつが一番だ』
 そして、自らの思い浮かべたそのフレーズを契機に、彰の思考は別の方向に走りだした。
――嗚呼、僕も美咲さんともっと一緒にいたかった。冬弥と由綺は最後まで一緒だったん
 だろうか。初音ちゃんと、耕一さんはもう一度出会えるんだろうか。祐介と美汐さんは、
 無事生き残ることができるだろうか。僕の代わりに、ゲームに終止符を打ってくれる人は
 いるのだろうか。それから、それから、それから……――
 彰は意識を保っているのが辛くなってきた。
 思考も真っ当に働かなくなって、とりとめが無くなってきている。

98 :The Little Sister_3:2001/06/22(金) 23:38
「ごめん、初音ちゃん……。本当は一緒に耕一さんを探しに行きたいんだけど……。僕は、
 もう……。少しだけ、眠らせてくれないかい……?」
 すうっと、彰は目を閉じた。
 その彰の表情は、人を安心させるあの独特の笑顔にも似ていて、けれども、どこか寂しげ
でもあった。いろいろと心残りがあるせいかもしれなかった。
「お兄ちゃんッ! 彰お兄ちゃーんッ!!」
 初音の絶叫があたりに響き渡った。

【彰の生死はあえて不明とするが眠れば回復するかも
 →防弾チョッキを着ているから今回のが致命傷になることはない。
  しかし、これまでの累積ダメージは結構なモノ】

99 :名無しさんだよもん:2001/06/23(土) 01:34
【注意】

只今、本スレの『揚陸部隊』がNG審議中です。

しばらく『揚陸部隊』の続きを書くのはお控えください。

ご迷惑をおかけして誠に申し訳ございません。

100 :最強タッグ誕生(1/2)By林檎:2001/06/23(土) 03:00
「久しぶりだな」
 御堂の表情に敵意が無いのを確認して、蝉丸はあたりさわりのない挨拶を投げかけた。
「ふん。さっさと起きあがれ。俺がお前を殺す気だったらどうする」
 月代と絡み合ってる見下ろしながら御堂が答えた。御堂の表情はあきれ顔。
「お前の表情を見れば敵意の無いことくらい分かる」
 そこで蝉丸は視線を詠美に移し、
「良い仲間を見つけたようだな」
 御堂と詠美は「へ?」という表情。
 蝉丸はしごく真面目な表情。
 月代は(;´д`)
「な! なにをわけわかんねーこと言ってやがる!!」
「こいつはあたしの下僕よ!!」
「(;´д`)蝉丸た〜ん、ハァハァ」
 蝉丸は立ち上がり、ぱっぱっと土を払う。
まだ御堂と詠美がぎゃぎゃーわめいているが意に介していないようだ。
「まぁなんだ。御堂」
「ああ!?」
 ゼーハーゼーハー…。御堂の息は荒い。
「その様子だと、お前達も主催者側と戦っているんだろう? お前がいれば心強い」
 その言葉と同時に右手を差し出す。

101 :最強タッグ誕生(2/2)By林檎:2001/06/23(土) 03:01
「…。ケッ」
 一瞬躊躇した御堂だったが、それに答えて手を差し出し握った。
 ここにこの島最強のタッグが誕生した。



 そのまま蝉丸は御堂を抱き寄せる。
 頬を赤らめうつむく御堂。蝉丸は彼のあごに手を当て、そっと上を向かせてあげる。
「友情の誓いといこうじゃないか…」
「おい…ちょ…」
 蝉丸が顔を近寄せると、御堂はそのまぶたを閉じた。
 二人の唇の距離が限界まで近寄り…。

「(;´д`)なんて展開も萌、萌えー。でももっと可愛い男としてよ蝉丸た〜ん。ハァハァ…」
『妄想を声に出すな!!』
 御堂、詠美。そして蝉丸までもがつっこみを入れた。

【蝉丸・御堂 共闘を約束】

102 :インターミッション:2001/06/23(土) 03:24
 朝焼けは去り、空気だけは穏やかな雰囲気の中、二人は寄り添って砂浜で海を眺めていた。
 彰が去ってからすでにしばらく経ち、遠くの空でサイレンの音とともに定時放送が流れる。
 祐介はそれを聴くともなしに聞いていた。

 死者と生者を分けるその声の中に、もう上がることすらもない人達がいる。
 薄れていく存在は、みな、彼岸へと去ってしまった。
 声にしないともういないことになってしまう、大切な友達が、何人も何人も。
 祐介は膝を抱えた。
(でも…、悪いけど今だけは、君たちのことを考えてはいられない)
 ぎゅっ、と目を閉じる。
(だから、僕にはこのくらいのことしかできない)
 祐介は、名も知らぬ死者達のために、よく知った死者達のために、祈った。
 その行為は、彼の心を少しは楽にしていた。

 長い黙祷を終え、祐介は眼を開く。
 目を閉じる前よりも強くなった光が、祐介の網膜を心地よく刺激した。
「ああ…」
 知らず、ため息が出る。
「どうかしたんですか?」
 隣で、美汐が訊ねる。
「え…、いや」
 答える祐介の声は、どことなく空々しい。
 何か考えているんじゃないですか? という美汐の問いに、祐介はしぶしぶ答える。
「うん、ちょっとした作り話を考えてた」
「それは、どんな話だったんですか?」
 美汐は、祐介の正面に回り、彼の目を見つめた。
 その顔には、安らぎの表情が見て取れた。
「ここが、ここじゃなければなぁ、って」
「……」
「いや、わかってるよ。彰兄ちゃんの言う通り、ここが現実なんだから、ね」
「祐介、さん…」

 でも、ただ『もしも』の話を考えただけで、こんなにも涙が溢れてくるのはなぜだったのだろう。

103 :インターミッション:2001/06/23(土) 03:25
「もう、いいかげんに泣き止みませんか、祐介さん」
「…泣いてるんじゃなくて、涙が、勝手にさ」
 そう言う祐介の両腕は、とめどない涙でびしょびしょに濡れている。
 もちろん、顔のほうも酷い有様だ。
「ごめ…、ちょっと顔洗ってくる」
「え?」

 祐介がてこてこと向かう先は、海辺。

「ちょ、ちょっと祐介さん、海水なんかで顔洗っちゃ…」

 美汐の懸命の静止にもかかわらず、長瀬祐介(064)は無言の叫び声を上げた。

【長瀬祐介 海水が目に染みて悶絶中】
【天野美汐 そんな祐介を見ながら微笑んでいたり】

104 :Kanon(1/6):2001/06/23(土) 05:28
「なゆ……き?」
声が静かに響いた。止まった時の中で。
誰もが動かなかった、動けなかった。異様な雰囲気に包まれて。

血塗られた赤き女性が、ゆっくりと近づいてくる。

気絶している茜はもちろん、意識のあるものもまた、体の動かし方を忘れてしまったかのように。

「……」
祐一の唇が、かすかに動いた。ただし、それはただ寒さに震えるような弱々しい童子のように。

そして、赤き女性が紡ぐ言葉。

――やっと……会えたね?――

105 :Kanon(2/6):2001/06/23(土) 05:29
「ずっと……好きだったんだよ…?」
無邪気な微笑み。
「………」
それを呆然と眺める晴香となつみ。
血塗られた女性の出現への萎縮、恐怖、驚愕、そういったものも含まれていたかもしれない。
だが、それ以上に――空白だった。

「七年前のあの時から……ずっと、待ってた。祐一のことを」

晴香の目の前を、気にした風もなく通り過ぎる。晴香の目線だけが左から右へと流れた。

「祐一は、あの街が…私達の街が、そして私達が嫌いになったんだって思って…すごく悲しかった。
 だけど…戻って来てくれて本当に嬉しかったんだ」

ゆっくりと3人の前まで歩み寄って、止まった。
動くことができない茜と、
動けなかった祐一と、
もう動かない詩子と。

「祐一は、また、ここに帰ってきてくれたから……」

上から祐一の顔を覗き込む。あの日、駅前で再開したあの時のように。
祐一がいつか見た光景。
降りしきる雪の中の再開、七年ぶりに訪れたあの時の再開のように。

106 :Kanon(3/6):2001/06/23(土) 05:30
「……」
ゆっくりと震える唇が動いた。声は出なかった。
晴香の横を通り過ぎて、座り込んでいる祐一の前まで進みよって来る影。
「七年前のあの時から……ずっと、待ってた。祐一のことを」
どこか遠くに聞こえる言葉。


祐一にとって、この島での出来事はすべて夢のように感じられていた。
ひどく、悲しい夢物語。
それでも、茜の、そしてまだ暖かい詩子の手の温もりが伝えていた。
これが、現実だということを。
詩子と、そして…七年ぶりに訪れた街で出会った、大切な人達との物語は――


もう終わってしまったんだということに。


だから、今、起きていることこそが夢物語。
近づいてきた女性が、祐一の視界を遮った。
「祐一は、また、ここに帰ってきてくれたから……」
微笑んだ。あの日の名雪のように。

(まるで、あの時みたいだな……)
どことなく麻痺した頭の中で祐一は思う。再開の冬の日、雪で湿ったベンチで座ってたあの日の事を。
(結局、2時間も待たされたんだよな)

あの日の言葉が思い出される。
――雪、積もってるよ。
今は積もってなんかいない。
そして暖かい缶コーヒーが渡されることもない。

107 :Kanon(4/6):2001/06/23(土) 05:33
「祐一、ずっと、ずっと好きだったんだよ……」
彼女の口から出る言葉。その想いが、伝わってくる。
いつか聞いたセリフ、それは七年前の冬の日のこと。

     ――…これ…受け取ってもらえるかな…?
     あの日、差し出された雪うさぎ。

     ――春になって、夏が来て…秋が訪れて、またこの街に雪が降りはじめたとき――
     思い出されるそのセピア色の光景。

     ――また、会いに来てくれるかな?――
     あの日の、繰り返し。

     ――わたし……ずっと言えなかったけど……祐一のこと……ずっと……――
     セピア色の思い出がだんだんと現実の色に染まって。


「好きだったよ」
最後の言葉。現実の彼女の言葉と重なる。
現実の彼女は、顔に大粒の涙と血をたたえて。
「………」
祐一が、茜と詩子の手を痛いほど強く握り締める。

108 :Kanon(5/6):2001/06/23(土) 05:34
ようやく、祐一が声をあげる――ゆっくりと、震えないように。
日常の中にいるかのように声の調子をおとす。
「なあ、俺の名前、まだ覚えてるか?」
今、彼女が自分の名前を言っていたのにもかかわらず、そう切り出した。
「うん、私の名前は?」
「…………ああ……」
血と、涙で彩られている顔にはひどく不釣合いな満面の微笑み。
「……ゆういち」
「花子」
「違うよ〜」
ただ滑稽な会話だけが辺りに響く。
「次郎」
「私、女の子……」
気付かないうちに祐一も涙を流していた。
祐一だけが知るそのセリフの意味に。
もう、こんななんでもないような…そしてそれでも幸せだったやりとりが、もう出来ないんだということに。
「もう、やめませんか……?」
祐一の声が震えた。
「わたしの名前……」
「もう、帰っては来ないんですよ……」
悲痛な声。ギュッと閉じた目から、大粒の涙がもう一度だけこぼれる。
「名前……」
食いしばった奥歯から血の味がする。
「もう、やめましょうよっ……」
絶叫、声が不自然に裏返った。
「なまえ……」
どうしたの?というように彼女が祐一に顔を近づけた。
「もうやめよう――」
祐一の口から、彼女の名前が漏れた。

109 :Kanon(6/6):2001/06/23(土) 05:34
祐一と結婚したい。私の想い、お母さんの願い。
ずっと好きだったこの人に、自分の気持ちを伝えるんだ。
その事を考えるだけですごく嬉しくて、だけど、どこかですごく悲しくて。
心が壊れてしまいそうで。

だけど、祐一ならきっと私の心を守ってくれる、私を受け止めてくれる。
弱い、私を。
きっと好きだって、言ってくれる。祐一は応えてくれる。
私が、こんなに愛した貴方だから、私が信じている人だから。


だけど、愛した人の口から漏れた言葉は――
本当に愛していた人の口から漏れたその名前は――




崩れた。

110 :Kanon作者:2001/06/23(土) 05:36
できたら>>109の最後の一行の後、4行ほど空白入れてあげてください。
反映されなかった。

111 :忌避性(1):2001/06/23(土) 09:41
チ・チ・チ。
チュン、チュン。

「……」

…あれから、どれほど経ったのだろう。
既に太陽が顔を出しはじめていた。
差し込む光の眩しさに怯み、帽子をずらしながらも、心の底まで照らしてくれる
かのような健康的な明るさに感謝の意をこめて、かるく拝する。

小脇に抱えたリストを、再び開こうとして考え直す。
社を求めて何度となく繰り返された会話を終わりなく続ける二人が、とっくに興味
を失ったリストを、暗記するほどに精読していた。

普段、何も考えてないように思われがちだが。
来栖川芹香の頭脳は、高速回転していた。
…それを、伝えられないだけで。

二人に若干遅れながらも、景色に目を凝らす。
間違っても風光明媚な景観ではないが、今では間違いなく必要なことに思えた。
そして発見する。静かに白い布切れを拾う。
土のついた包帯。これで、三枚目だ。

「……」

やっぱりそうだ。繰り返されていたのは会話だけではなかった。
間違いなく、これは忌避性結界。
植物などが、その本体や種子を守るため、成分の中に虫が嫌う成分を含めることが
しばしばある。それと同じような忌避性を示す何かがあったのだ。

112 :忌避性(2):2001/06/23(土) 09:42

決意を込めて突入したときは、問題にならなかった。
だから、あまり強いものではない。
結界などと言うものでもないのかもしれない。暗く細い道と明るく太い道、穏やかな坂
と険しい坂、そうした地形的差別を各分岐点へ意図的に配置しただけかもしれない。

恐怖という下地がある今、その効果は覿面だ。
表向き社に向かう決意を示してはいるが、冷静に考えれば採算のつく見通しはなく、
成功するとは思えなかった。
だから、無意識のうちに社へと続く道を見過ごし、別の道を選んでしまう。
それでも社の位置は心の奥底で知っているから、その周りをぐるぐる回ることになる。

たぶん、三人とも気付いているはずだ。
あの結界を拓くには、私たち二人では足りない事を。

四枚目の包帯を拾い、朝露にまみれた羊歯の密集する、陰気な獣道を横目で見ながら
確信する。指摘しようとして考え直す。
…今は、これでいい。

「……」

「? なあに?」
「どうしたの芹香さん?」

「……」

「おなか減ったの?」
「そっか、長いこと食べてないもんね」

「……」

「一回、出直そうか」
「街に下りて、食べ物探そ」

113 :忌避性(3):2001/06/23(土) 09:42

…芹香は一度として、今の会話の流れに沿った発言をしたつもりはない。
単に自分達の欲求と不安が、芹香の意思と言うかたちを受けて発露したに過ぎない。
半ば呆れて、密かに溜息をつく。
それでも、出直すという結論は満足いくものだったから…黙っておくことにした。

「さっき、ニワトリ鳴いてたの聞いた?」
「うんうん、たまごあったら、ホットケーキできるかな?」

…綾香も、浩之も、今はもういない。
傍らに、どちらか一人でも居れば忌避性結界の仕組みを解明したことすら伝わって、
蛮勇を奮い社に突入していたかもしれない。

そうだ。必要なのは、結界に対する力ではない。
芹香さえ引き込むような、太陽の光のような強烈な意志。
それが今では欠けている。
精霊や神が世界を動かすのではない。
人材こそが世界を動かすのだ。

「……」

「あ、芹香さんもハチミツ派?」
「カットしたところに染みた味がたまらないよねー」

…そんなことは、一言もいっていなかった。
芹香は、メイプルシロップ派だ。


【結界組、一時断念】
【芹香だけは、結界に対抗し得る人材の収集を狙っています(通じてないけど)】

114 :名無したちの挽歌:2001/06/23(土) 09:53
微妙なトコなんですけど、結界打破はひとまず断念で。

115 :夜を照らす物1:2001/06/23(土) 12:05
クルスガワ ・ アメリカ。
それがこのゲームのスポンサーであった。
そして、クルスガワ・アメリカ東京支社通信室。
何故かここにゲームの参加者であるはずの人間がいた。
来栖川綾香。来栖川グループ総帥の次女にして高校エクストリームチャンプ。
そして彼女の守役を務めた人物が今のクルスガワ ・ アメリカの社長であった。
そして、セバスチャンが島に降りたのを知った頃、通信を始める。
「…ふう、そろそろね。みんな、島に向かって」
「いいわ。ちょうどこちらも例の本を見つけてる。もうバッチリよ」
そう言うのは栗色の髪をした少女。コリンという名で、長瀬に指令を伝えた代理人
でもある。
「はい〜。大変でした〜」
すかさず言ったのはアレイという少女。おっとりした割にかなりの腕力の持ち主。
そして、たまを始めとする面々が騒ぎ立て、当主であるルミラが叱る。
いかにも、のどかな面々である。
「むこうでは能力が制限されるらしいから、気をつけたほうが良いわよ」
念のため釘をさして、通信を切る。
「…うちの影武者ロボがいなかったら、私死んでた所ね。ホント、向こうは気が
利かないわね。芹香姉さんに何かあったら、二人ともタダじゃ済まさないから」

116 :夜を照らす物2:2001/06/23(土) 12:06
ゲーム開催が決まる前、芹香はコリンを連れてきた。
セバスチャンが芹香お嬢様が消えたと騒いでいたとわめいている時、ふらりと。
彼女には、ふと入った見知らぬ店で会ったという。お調子者な彼女がまさか天使とは
誰も思うまい。現に綾香も信じなかった。二人はなにやら話をしていたが、オカルト
関係と話だと思った綾香は、その時はなにも気に留めてはいなかった。

数日後、、コリンが芹香をたずねてきた。あいにく留守だったので、綾香が話を聞く
ことにした。それによると、翼人なるものの解放のために人を集めるという。そして
主催者は殺し合いでなされると考えているが、コリンは別の方法を探しているらしい。
綾香は、コリンが翼人のことに興味があるらしいとだけ芹香に伝えた。誰が自分が
殺し合いをさせされる内の一人になると思うだろうか。

そのころである、長瀬から島の建設を発注されたのは。
そして、完成寸前、たまたまクルスガワ ・ アメリカは来栖川姉妹も参加すると知る。
ロボを影武者にするよう綾香に持ちかけたのはクルスガワ ・ アメリカの社長である。
元来、金持ちは色々狙われやすい。特に芹香などは誰もが心配するほどである。
セバスチャンが居るので大丈夫だろうが、忙しい時など影武者をおく都合が良いので、
クルスガワ ・ アメリカではHM研究所の成果を利用しつつ、二体の影武者ロボを開発
していた。それがこのゲームで姉妹の代わりを務めるはずだった。
結果…HM研究所にばれないよう芹香に渡した影武者ロボが即座に送り返されてきた。

コリンが再びやってきたとき、綾香はある計画を提案した。というよりコリンが来た
目的も大差が無かった。結局のところ、綾香のする事は島に向かう船の提供と、進入
のタイミングを知らせる事。
コリンは、ルミラ達と共に翼人のことを記したという翼人伝を見つけ、それをもとに
島の神奈を解放する。それだけの事だ。

117 :名無しさんだよもん:2001/06/23(土) 13:04
夜を照らすもの、俺的にはいい感じ!!

118 :名無しさんだよもん:2001/06/23(土) 15:42
夜を照らす物は現在審議中です。
決着がつくまで続きは書かないで下さい。

119 :名無しさんだよもん:2001/06/23(土) 15:47
相撲の物言いみたいだな(w>審議

それよか、セミーと御堂。あんなに簡単に和解するもんなのか?

120 :欺瞞(1):2001/06/23(土) 15:55
「もうやめよう――」
「もうやめよう、秋子さん!!」
「な、なにを言ってるの? 祐一。秋子はお母さんの名前だよ」
「名雪が死んだショックで、今秋子さんは自分を名雪だって思いこんでるだけなんだ。
名雪は死んだんだ! お願いだから、正気に戻ってくれ、秋子さん!!」
祐一は血を吐かんばかりに自分の推測を叫んだ。その叫びが秋子の耳に届いた瞬間、秋子の脳裏に名雪の
最後の情景がよぎった。
「わたし、わたしは……名雪。いえ、名雪はわたしが……」
それと同時に秋子は崩れ落ちてゆく。その秋子を祐一が優しく抱きしめ支える。
「秋子さん、しっかりしてください、秋子さん」
その言葉に応え秋子の眼に光が戻る。
「…………祐一さん……?」
「…………よかった…………正気に…………戻ったんだ…………」
秋子は呆然としたまま、祐一を見つめていた。
 やがて秋子の頭の中に、今までのコトが甦ってきた。自分が名雪になった時、聞こえた歌が
もう一度聞こえてきた。

121 :欺瞞(2):2001/06/23(土) 15:59
Hallelujah!

  For the Lord God Omnipotent reigneth

   The Kingdom of this world is become the Kingdom of our Lord and of His Christ,

    and He shall reign for ever and ever,

  King of Kings, and Lord of Lords,

   Hallelujah!

思い出しましたか?

どこかで、自分と同じ声色の主が囁いた。

あなたの大切な名雪は死んでしまったのよ。

嘘よ。――それは嘘よ
名雪は7年ぶりにやっと祐一さんに再会できたのよ。名雪に笑顔が、幸せが戻ってきたのよ。
なのに、なんでそんなコトを言うんです?

 わかるはずですよ?
 だって、あなたが殺してしまったんだから。

「な…ゆき…」
秋子は、震える手を鉈から離す。
それでも鉈は落ちなかった。

鉈は。
鉈は、壁に突き立っていた。
鉈は、名雪の笑顔を。
鉈は、名雪の笑顔を真一文字に叩き割り、壁に貼り付けていた。

122 :欺瞞(3):2001/06/23(土) 16:03
可哀想に。大好きなあなたに殺されるなんて。

違います。わたしは名雪を殺していません。

じゃあ誰が名雪を殺したんですか?
殺したのは事実。
現実を素直に受け止めなさい。

認めません。それだけはわたしは認めません。それを認めてしまったらわたしはもう・・・・・・
そんな事実なんかありません。
死んだのはわたしです。わたし、秋子は今日死にました。今生きているのはわたしの娘の名雪です。
いえ、わたしが名雪です。

123 :欺瞞(4):2001/06/23(土) 16:05
死んだのはお母さん。
お母さんを殺したのはわたし、名雪。
お母さんを殺しちゃったのは悲しいけど、でも祐一さえいればいい。そうだよね、わたし。

秋子に現実が戻ってきたとき、自分が床に横たわっていることに気づいた。そしてそばに祐一が
いて何かを繰り返し言っていることを。
「秋子さん、しっかりしてください。秋子さん」
秋子はその声を理解するなり上半身を起こし、祐一を女とは思えぬ力で突き飛ばした。祐一は
予期せぬ出来事に何の対応もできず頭を床に打ち付ける。一瞬意識が飛んだ。
それを横目に秋子はそばにあった鉈をつかみ悠然と立ち上がる。

「あ、秋子さん、何を・・・・・・」
「あなた、誰?」
「な、何をいってるんですか、秋子さん」
「わたしの祐一はわたしとお母さんを間違えたりしないよ。なのに、この祐一はわたしを
お母さんの名前で呼ぶ。祐一の偽物だよ」

唐突に祐一は理解した。事態は最悪の方向に転がったのだと。祐一の顔に絶望が浮かぶ。

「偽物の祐一がいるから、わたしを名雪として愛してくれる本物の祐一がいないんだね。
偽物がいなくなれば本物の祐一に会えるね。さようなら、偽物の祐一」

あたかも子供が友達にさようならを言うかのような無邪気な口調で、秋子は狂気の論理を口にする。

そして秋子は鉈を振り上げた。

124 :欺瞞作者:2001/06/23(土) 16:08
とりあえずここまでです。

名剣らっちーさん、収録するとき(3)と(4)の間に4行空白お願いします。

125 :ぬくもり。:2001/06/23(土) 16:19
――嫌だ。
失いたくない。
目の前で、二人の人間が、傷ついて、傷ついて――。
涙が溢れる。だが、その涙の価値は、何処だ?
涙を拭く。今は、そんな事より、行動しなければ、――初音は、彰を背中に背負う。
足に激痛が走るが、果たして今の自分に、どれほど、これが邪魔をするというのだろう?
青いを通り越して、既に白くなってきている顔色。
唇を噛み、初音は呟く。
「絶対、死なせないっ――!」
ちらり、と少女――鹿沼葉子を見る。
今の自分の体力で、二人の人間を運べるのだろうか?
正直、厳しいだろうとは――思う。
けれど、彼女は、――自分を助けるために傷ついたのだ。
だから、初音は決意をした。
右肩には彰を、そして、左肩には、その少女を。
なんて、重いのだろう? これが、命の価値か?
殆ど一歩も動けないほど、それは重かった――。
だが、それでも、初音は。
じりじりと、歩き始めた。
何か薬が、休息設備があるだろう、街に向けて。

そこで、初音は――また、気配を感じた。
何かが走り寄る音。それは、まさか。まだ、いたと言うのか?
敵が――
「嫌だっ!」
二人を抱えて速度は出ない、けれど、逃げるしか――
「待てっ! 初音ちゃんっ」

――はぁ、と息を漏らして、そこに現れたのは、――柏木耕一、だった。

126 :ぬくもり。:2001/06/23(土) 16:20
泣きながら走り寄る初音を抱きしめようとして、躊躇われたのは――
その口から漏れた言葉が、けして自分に会えた事に喜ぶものではなかったから、だった。
「助けて! 彰お兄ちゃんが、お姉さんが、死んじゃう――」
泣く。――死ぬほどに、泣いている。
自分の顔を見た瞬間に、だった。それ程、不安だったのだろう。
見ると、二人――特に少年、七瀬彰の方は深刻な顔色だ。
傷つきすぎているほど、傷つきすぎたその様子。
先に会った時にも相当傷ついていたが、あの時とまるで表情が違う。
額から流れるものは、いつから流れ始めた。
その流れた血を拭おうともしなかったのだろう、
白くなった顔にこびり付いた、鉄の匂いのする赤いモノは、

あまりにも禍々しい。そう感じた。

ともかく、腹から血を流している少女の様子も含めて、あまりに危険すぎる、と思った。
初音は、きっと一人でこの二人を運ぼうと、そう考えてさえいたのだろう。
「ああ、判った、判ったよ。大丈夫だ、街はすぐ傍だ」
云って、耕一は、哀しくなった。
「うん、行こう!」
ここにきて、姉を皆失った事を知って、それでも尚――彼女は、強かった。
すごく、強くなったと思う。
――自分も、大切な人を三人失ったのと、同じ事を意味する。
守れなかった口惜しさ。逢えなかった苦しみ。だが。
だが、今はまだ、泣くわけにはいかないだろう? ――千鶴さん。梓、楓ちゃん。
もう少しだけ待ってくれ。もう少ししたらいっぱい泣くよ。
君たちの、可愛い妹は、まだ――
涙を拭って、前を向いているんだからさ。

127 :陽のさす場所。:2001/06/23(土) 16:20
「こいつ、どうしてやろうかしら」
まだ、これ以上、どうにかするつもりなのか。
高槻は――死の間際で、まだ痛めつけられるのか、という恐怖に怯えていた。
頭蓋骨は陥没し、死んでいてもおかしくないだろう、というか、死んでいて当然、という様相でありながら、
未だ身体は呼吸をやめない。いっそ、死んでしまっていたらどれだけ楽だったのか。
――多分、自分たちは失敗したのだ、と思う。
自分の他の二人も、自分と出来がそれほど変わるわけでもない。
柏木耕一との遭遇が最大の難関か、とも思っていたが、それすら甘かった。
「力を完璧に制限する」機械を、自分たち三人は皆、持っていた。
柏木耕一の力も、封じさえすればなんとかなる――そう、思っていたのに。
一般人である七瀬に、それを使う事も出来ない。
馬鹿な! これが一般人か! 10kg以上はあるはずの鉄パイプを片手で振り回す女子高生がいるかっ!
高槻三人がかりでさえ、この少女を殺せたかわからん。なんて恐ろしい。悪魔。
「悪魔って何よっ!」
声に出していたらしい。
実はまだ、自分は動けるらしい――声が出せるわけだし。
まあ、どのみち長くはないだろうが。達観して云う自分が、少しおかしかった。
「何笑ってるのよ、あんた」
耳元で少女が囁く声。――少女は止めよう、表現的におかしい。
「おかしくないわっ!」
また口に出していたらしい。

「――まあ、これでこの殺し合いはしまいだわな」
高槻は、掠れる声で云った。怪訝な眼で七瀬はそれを見た。
「多分、オレの片割れ達も、皆殺されただろう」
というか、生きていても殺されるだろう。この鬼畜米英に。
「鬼畜じゃないわっ!」
――また口に出したらしい。オレはバカなのか。
「ともかく、やる気になってたオレらが全員死んだって云うのは、まあ、本気での殺人者がいなくなった、って事だあな」
まだ舌が回る。奇跡だ。

128 :陽のさす場所。:2001/06/23(土) 16:24
「里村茜や篠塚弥生なんかがまだ殺人続けるかも知れないが――それはまあ、止められるだろ」
あんたのその腕力なら。高槻は今度こそ心の中で呟いたのだった。
結局、長瀬に対して復讐する事は出来なかった。
「もうどうせオレは死ぬよ。ああ、死ぬのは億劫だが、まあ、もう、どうでも良いわ」
そう云う高槻の顔を、やけに、哀しそうな眼で見て、七瀬は呟いた。
「――人を殺した報いよ。友達死んだんだよ。――たくさん、たくさん」
唇を噛みながら云う七瀬を見て、やっと、――後悔の念が生まれた。
「――そうだな。は、――どうもおかしくなっていたようだな、オレは」
本当に、なんでこんな事をしてしまったんだろうな?
にしても、オレはいつからおかしくなっていたんだが。

生まれた時はまだおかしくなかった筈さ。
大人になって、FARGOに入る事を決めた頃から、おかしくなっていたんだろうか?
嫌な人間になりたかったわけでもない。ただ、嫌な人間を演じている方がずっと楽だった。
嫌われていた方がずっと楽だった。
たくさんの女を犯したし、たくさんの人間を殺した。
――違うな、あの頃に狂ったんじゃない。
もっと昔だ。
けれど、思い出せない。
そして、やっと気付いた。
――思い出したくないから、オレは、嫌な人間になろうとしたんだな。
確かにあった筈の、数々の思い出。
けれど、それが、自分には眩しすぎたから、
狂ってしまおうと、したんだ。
オレは、結局、弱い人間だったわけだ。

――そう、それに、――判った。その忌避すべき思い出とは、何なのか。
参加者の中にいた、あの女の顔。
あれが、オレが思い出したくなかった、思い出だ。

129 :陽のさす場所。:2001/06/23(土) 16:24
ずっと好きだった女の子。まだ、ぼくが、まだ無邪気な笑みを作れた頃。
十年以上前に、離ればなれに、――別れてしまった女の子。
ぼくが、傷つけてしまった、女の子。

――何故、今になって思い出したのだろう。
いや、名前は、もう、忘れてしまっていた。顔だって忘れていた。
数年前の、この殺し合いにも参加していたという。
その時には、思い出しもしなかったのに。
最初にあのホールに集められた時、あの女が発言した時も、それでも思い出せなかった。
この間際に来て――漸く、オレは思い出したわけだ。
秋子。
――たぶん、間違いはない筈だ。あの時の少女に。
秋子はまだ、生きている筈だった。
どうか、生き残って欲しい。
――自嘲気味に、笑う。今更オレは、何を云っているんだろうな?
あいつもオレを覚えているわけがなかろうに。
きっと、また、嫌らしい、最悪の笑みだ。
だが、
「――なんだ、あんた、そんな笑顔も出来るんじゃない」
そう云って、七瀬は――笑った。
その面差しは――良く似ている。昔、髪が短かった頃の、秋子に。
「馬鹿に、すんなよ、女」

「潜水艦が、何処かにある筈だから、それを、捜せばいい、それで逃げられる、だろ」
云って――漸く、意識が途切れる。
だが、最後に、途切れる前に、最後に、呼びたかった。
手を、高く、高く、空にのばして。

「あきこ」

自分は、ただの複製品だった。きっと、本当は、一番出来の悪い。
だが、それでも、記憶の片隅にこびり付いて思い出せなかった女の名前を、
きっと、元の自分もずっと思い出せなかった名前を、最後に思い出す事が出来て――
オレという最低の人間にとって、

それは、少しだけ幸せだったと思う。

130 :追想。:2001/06/23(土) 16:29
七瀬は目を閉じて、――少し哀しそうな顔をした。
けれど、これ以上立ち止まっているわけにはいかなかった。
潜水艦が本当にあるかどうかなど知れぬ。
けれど、――最後に、この男が見せた微笑みを、なんとなく信じたくなった。
耕一の後を追う事にする。足に多少の痛みは走るが、まあ、走れないほどではない。
高槻が持っていた銃を、手に取った。――もうあまり使う事はないだろうが、
何故か、持っていきたいと、願った。
「あきこ、か」
何処にでもある名前だ。
けれど、きっと――高槻という、この男にとって、すごく大切な人の名前なのだと、そう思ったから。
正直、最低だった、この男もまた、――生きていたのだから。

――初音が葉子を、耕一が彰を背負いながら、森の中を走る。
足を痛めている初音は、それでも必死に走る。それを横目に、耕一も走る。
森を抜け、街が見渡せるところについた時、後ろから声が聞こえた。
「耕一さーん、初音ちゃーん」
息を切らせて駆けてきたのは、鉄パイプと拳銃を持った、七瀬留美、だった。
「お姉ちゃん!」
「うん、久しぶりね、初音ちゃん」
――初音の様子を見て、少し安心した。
別れた時に見た、あの脆弱な様子は、今の様子からはまるで見えない。
切羽詰まってはいるが、あの時より、ずっと強い眼だ。
姉が――死んだというのに、それでも、ずっと、強い。
そこで、初音が背中に背負った少女の顔を見て、七瀬は叫んだ。
「葉子さんじゃないっ」
どうも、この少女が、件の鹿沼葉子、だったらしい。
苦しそうに顔を歪める葉子と彰に、七瀬は不安を抱かざるを得なかったが、

――ともかく、五人は、街にたどり着いた。

【七瀬留美 柏木耕一 七瀬彰 柏木初音 鹿沼葉子 街に到着
 彰も葉子も割と瀕死。耕一は未だ無傷、七瀬と初音は共に足に怪我】
【高槻 長瀬打倒の目的を果たす事もなく、全滅】

131 :名無しさんだよもん:2001/06/23(土) 16:49
(・∀・)イイッ!!

132 :戦士 - 1:2001/06/23(土) 17:02
ドガッ!

――強烈な衝撃。
掴んだ鉈こそ離さなかったものの、その身体は倒れた祐一を飛び越え教会の床を転がった。
倒れない。素早く身を起こす。
この動きが狂人のものか――
鞘を放り捨てつつ、体当たりを食らわした当本人、晴香はいささか驚いた顔を見せた。
「――さっさと逃げなさい」
辛うじて立ち上がった祐一に、晴香が言い放つ。
祐一は――近くに転がっていた濃硫酸銃を素早く掴むと、晴香に向き直った。
「……俺だけ逃げろって言うのか?」
「違うわ」
ぎり、と刀を握り直す音。
「その女を守る……そう決めたんでしょ。だったら、ここで死ぬべきじゃない。
 ――その女を連れて、さっさとどっか行きなさいっつってんのよ」
「――っ」
口を開く――しかし、何と言えばいい。
茜は、未だ気絶したまま。秋子がどう来るにせよ、もし、万が一その矛先が茜に向いたなら。
守りきれるとは限らない。
――言われるまま、か……これじゃ、結局、ヘタレじゃないか。くそっ!
すまない。そう返した。
茜を抱き抱える。軽い。しかし、血の流れた左肩が、ぐしゃりと音を立て、祐一の服を紅く染めた。
その様子に、秋子は眼を細める。
「ゆういち――ううん、ニセモノさんには、その人がいるんだね。
 ――逃がさないよ。捕まえてあげる。
 それで――目の前で――"わたし"と、同じように――ばらばらにするのォォ」
ふふふふふふふふ。
小さい、しかし背筋を冷やすような笑い声が響く。
おぞましい。こんな笑い方をする人だったか――?
背を向け、駆ける。それに、凄まじい速度で近付く影。
それが放つ、殺気が、近付く影の姿を祐一の背中に伝える。
速い――!

133 :戦士 - 2:2001/06/23(土) 17:03
ギィッ!

金属音。鉄と鉄の擦れる音。それは祐一のすぐ後ろで。
振り向く事は無い。祐一は、駆ける。
――後ろでは、晴香の刀が秋子の鉈を止めていた。
「じゃまするのは――よくないよ、ね?」
ぎぎ……
鉄が軋む。奇怪な腕力。晴香は、両手で刀を持っているというのに!
――だからこそ、胴ががら空きであった。
「あぐっ!」
急な衝撃。それと共に、晴香の身体が跳んだ。
脇腹に痛み――咄嗟に引いていなくば、どうなっていたことか。
崩れた体制を、空中で立て直す。胸が痛い。
ちっ、という舌打ちの音。ひょっとしたら、肋がイッている。
――背後で、扉の開く音。そして閉まる音。
ヘタレ男は、脱出したらしい。こんな状況だと言うのに、晴香は内心安堵した。
だが――狂った瞳は、それを見逃さない。一瞬の緩みを。
影の如く、近付く。見えない死角から伸びた手が、晴香の首を掴んだ。
鉈であったなら、死んでいた――だが、どっちにしろ、同じだ。
チェックメイト。
「ぐっ……!」
動かない。強烈な握力に、血が止まる。景色が白く染まっていく――
「ふふふふ」
秋子が、笑顔を浮かべる。
その娘に、似た顔で。
そして、それが、一瞬の下に。
一瞬だけ。
"秋子"に戻った。
「……死になさい」
一閃。

134 :戦士 - 3:2001/06/23(土) 17:04




それは、晴香の髪を少し切り裂いたに過ぎなかった。
上に跳ね上がった腕――その先にある鉈に、晴香の長い髪が絡んでいる。
それを、秋子は、やはり狂気の眼で見ていた。
状況は、狂った頭にもよく分かった。"なにか"がうでをたたいた――と。
首が放される。咄嗟に身を引くと、先程まで秋子の身のあった空間を何かが貫いた。
鞘。晴香の、刀の鞘。
荒い息と共に見上げる晴香の目に、それを握った一人の少女の姿が映った。
なつみ。
「――別に、助けたつもりは無いわよ」
そう、ぽつりと呟いた。
秋子は、新たな敵の出現に、その手に握る鉈を握り直す。
晴香は返す。
「……じゃあ、礼は言わないでおくわ」
「――ご自由に」
その返事に、晴香は、にやりと笑みを浮かべた。

静まりかえった教会の内。
三人の女が、対峙する。

135 :彗夜:2001/06/23(土) 17:06
教会編の続き、書いておきました。
いい加減なつみもへたり込んでばっかじゃつまらんでしょうに。

136 :再会を誓って〜命の重さ〜(1/4):2001/06/23(土) 18:01
朝焼けの中、手と手を取り合う二人。
生まれた友情…もともと、蝉丸と御堂は惹かれあっていたのかもしれない。
長い長い、時の狭間の中で……

「坂神ぃ…今まで……すまなかったな……」
「御堂、お前とは思えないセリフだな」
「気付いたんだよ、俺ぁただ、お前に嫉妬していただけだったってことに」
「……」
御堂はただ、バツが悪そうに頭を掻いた。
悪戯をした子供のように。
「許してくれ…なんて言わねぇ…だが…分かってほしい」
「御堂……」
「俺は、お前がうらやましかっただけなんだよ…」
少し顔を赤くして。
「こういうのって…なんて言えばいいんだか分からねぇがよ…」

「御堂……」
「……」
ただ何も言わず、蝉丸は御堂を抱きしめる。
陳腐な言葉なんていらない。無言のその行為はただ、美しかった。

どれくらいそうしていただろうか…
「坂神…俺は…たぶんお前を……」
やがて御堂がそう切り出した。
「……」
御堂を見つめる瞳。それは一点の迷いもない。
「御堂、よく、聞け……。
 お前がいま感じている感情は精神的疾患の一種だ。
 しずめる方法は俺が知っている。俺に任せろ」
蝉丸の言葉。それは甘く、切なく。
二人の少女が見ているのにもかかわらず近くの茂みへと倒れこんでいった。

137 :再会を誓って〜命の重さ〜(2/4):2001/06/23(土) 18:01
「(;´д`)そして二人はっ……!!蝉丸た〜ん、御堂た〜ん、萌えっ!…私も仲間に入れてぇ〜ハアハア……」
彼女の物語はついにクライマックスを迎えた。
(そ、それ……いいわね…ネタに使えるかもっ……!!)
感化されている少女も一人。
「〜〜〜〜っ!!いいかげんにしやがれっ!このメスガキッ!!」
バキャッ!!
「(;´д`)グピィッ!!」
頭に、強い衝撃。
「(゚д゚)バタンのQ…だゴルァ(゚д゚)」
バッタリッ。
奇妙な遺言を残して月代が倒れた。

「なっ……いきなり何をする、御堂っ!?」
「にゃっ?」「ぴこぴこっ!?」
蝉丸のげんなりしていた顔に、驚愕の表情が宿る。
動物達の間を駆け抜けて、蝉丸が御堂につかみかからんばかりの勢いで。
無論、御堂が手加減していることは見て取れたが、それでもその衝撃は計り知れないはずだ。
現に、仮面の表情が変わってしまったかのように歪んでいる。
「……」
御堂もまた、疲れたような表情をしてはいたが…すぐに蝉丸を睨み返した。
「坂神…俺がてめぇを憎む気持ちはいささかもかわりないんだぜぇ…やるというならいつでも受けてたってやるぜ。だが」
気絶している月代を抱え起こすと、物のように蝉丸へと渡す。
「すべては島を出てからだ…これが終わったら、すぐにだ。決着(ケリ)つけてやるぜ」
「……」
蝉丸も、また御堂の瞳を正面から見据えた。

138 :涙1:2001/06/23(土) 18:02
「なんで……」
ぼそりと――。
「何で邪魔するの……」
駄々をこねる赤ん坊のように――。
「私、ずっと待ってたのに。とうとう来たと思ったのに」
静かに、だが狂気を灯して――。
「何でみんな邪魔ばっかりするのよぉおお!!」

秋子は絶叫して駆け出した。


――瞳から溢れ出す、涙。


「くぅっ!?」

鉈が、強い勢いで叩きつけられる。
晴香はそれをかろうじて受ける。

「誰も……」

あまりにも重い一撃を、
何とか受け流しそして切りつけた。

「誰も邪魔なんてしてないわよ!!」

139 :再会を誓って〜命の重さ〜(3/4):2001/06/23(土) 18:02
「で…だ。島を出る前に…まだ…やることがある…」
森の奥、その向こうにあるであろう建物の姿を目に捕らえる。
「やること…」
詠美もまた、思い出したかのように顔をあげた。
「行くんだろ?」
「う、うんっ…!!」
コクコクッ…と詠美が上下にかぶりを振る。いささか大げさではあるが肯定の証。




「というわけだ…悪ぃが、少々面倒事に巻き込まれている」
首をすくめた。
「御堂……」
「別れて行動した方が効率いいだろ?俺と、おめぇが本当に組むのは…最後の決戦の時だ」
口に出してこそ言わないが御堂も蝉丸の実力という点では認めている。
「ならば俺もいた方がいいのではないか?」
「てめぇはともかく…そっちの女はただの足手まといだ。
 これ以上、足手まといが増えるのはごめんだからな」
「足手まといってなによ!?したぼくのクセにっ!!」
「言葉通りだろ……」
「ああ、分かった…」
「ちょ、ちょっと…!?」
蝉丸もそれを二つ返事で承諾した。
強化兵である御堂、蝉丸。力が発揮できないとはいえ、二人が一緒に行動すれば確かに恐いものなしだろう。
だが、別々に行動した方が、他の島の攻撃的ではない参加者を保護できる…という点では確率があがるという考えもあってのことだ。
それに、下手に反論して、御堂を再び敵に回すことだけは避けたかった。
「時がきたら…また、ここでだな」

もし今、教会での出来事を知っていたなら、蝉丸は頭を縦には振らなかっただろう。
御堂も、蝉丸も、その『名雪』と名乗る女性の向かう先が血塗られている場所とは知らないのだから。

140 :再会を誓って〜命の重さ〜(4/4):2001/06/23(土) 18:03
「じゃあ、俺らは行くぜ…」
詠美と、動物達を伴って。

「また、後で……だな」
「(゚д゚)……」
気を失った月代を腕に抱いて。

「坂神よぉ…」
去り際、御堂の言葉。
「こんな島、確かに胸クソが悪ぃ」
「……」
「だが、俺やお前や岩切の奴だけは…こんな島がお似合いなのかもしれねえな」

命を奪ってきた数だけ、二人の命の価値は、重い。

「俺らは血で濡れた戦士だ。
 俺らには、決して消えることのねえ――罪だからな」


【大庭詠美・御堂 教会へ】
【坂神蝉丸・三井寺月代 再び移動開始、月代気絶中(;´д`)→(゚д゚)】

141 :聖潔1:2001/06/23(土) 18:03
「やだよぅ、祐一! 捨てちゃ、ヤダぁ!!」
 教会全体にその声は響く。
 悲しい、咆哮。


 全ては一瞬だった。
 そう言うのが正しいのか、嘘にあたるのかわからない。

 ただ言えるのは事態は都合が良いように動いていたことだった。
 繭が思ったよりも早く目を覚ましたこと。
 晴香と秋子の斬撃の音に気がついたこと。
 繭が反転した性格を持っていたこと。
 そのアイテムを持っていたこと。
 そして教会の裏に回った方がいいと判断したこと。

 晴香となつみは秋子と対峙していた。
 秋子にとってみれば晴香はホンモノの祐一を助けるべく、殺さなければならないニセモノの前に立ちふさがる障害だった。
 そしてなつみが晴香の危機を救い、共に立ちふさがったことで障害が増え、より一層に慎重にならざるをえなかった。

 逆に晴香は秋子に圧されている自分に焦燥を覚えざるを得なかった。
 このまま戦い続けても勝てる見こみがないように感じてしまっていた。
 諦めたわけではない。
 だが、自分を客観視してみると、ただ生き残ることさえも困難に思われた。
 それでも抵抗を止めるつもりはない。
 祐一を救うためでも、彼女を倒すためでもない。
 理由はない。
 でも、自分の為にもこうすることが今は一番正しいと胸をはって言えると思う。
 考えるのは終わった後でいい。

142 :聖潔2:2001/06/23(土) 18:04
 加勢に入ったなつみはもっと怯えていた。
 晴香がピンチに陥らなければきっと震えたまま最後まで見ていただけだったかもしれない。
 それだけ秋子の底知れない力とその不気味な状態に恐れ続けていた。
 それでも強がりを武器にして、彼女は対峙していた。
 さいは投げられたのだ。
 開き直るぐらいの覚悟はできている。

 そんな三人がそれぞれを意識して、動けなくなっていたのは僅かな時間だった。
 だが、その僅かな時間を無駄にするような少女ではなかった。
 椎名繭という存在は。

「やあっ!!」
 掛け声と呼ぶにはあまりに無様な声をあげながら、繭は無防備だった秋子の背中に飛びかかり、はりついていた。
 その背中に刃を突き刺す為ではない。
「は、はなしなさっ!! …んっ、ぐっ!?」
 秋子は背中の繭を振りほどこうと必死に身体を揺らす。
 が、繭は両足を腰に回して挟みこんでそれを耐える。
 そしてその開け放った口にハンテンダケを放りこみ、確実に飲ませるために指で喉の届く範囲まで押し込んだ。
「………んぐっ!!」
「いたっ!」
 直後、繭の人差し指と中指は秋子に強く噛まれた。
 噛みきれたかもしれない。
「はぁっ、うあっ!!」
「きゃっ!!」
 そして勢い良く繭は秋子の背中から振り落とされた。
「げほっ、ゲホゲホッ!!」

 四つん這いになって激しく咳きこむ秋子。手で口元を抑えて嘔吐に耐えているようだった。
 指を抑えてうずくまる繭。
 晴香となつみはそこでようやく、慌てて二人の元に駆け寄った。
 なつみは繭を気遣うように彼女の元に屈む。
 晴香は秋子の手から離れていた鉈を取り上げ、思いきり遠くへ放り投げた。


 教会のステンドグラスが、激しく割れた。

143 :涙1:2001/06/23(土) 18:04
鈍い感触がする。
こんな時なのに、私も甘チャンね。
――その斬撃は峰打ちだった。
そして後ろからはなつみが、
少し扱いにくそうな長い鞘で切りかかる。

「あなたが勝手に、そう思い込んでるだけ」

肩の辺りに、強い衝撃が走る。
痛烈な攻撃が、二発も体に刻まれる。
秋子は、喋らない。
それは痛みゆえのものか――。


     ・


「うそばっかり」


     ・ 


「ぎああああああああああ!」

鉈が、走った。
それは、なつみの太ももの辺りを切り裂いていた。

「もう、私騙されないよ」
少し胸を張って。
「だってもうたくさん騙されてきたんだもん」
血に染まった鉈を振り上げる。
「ぐ、何……で」
苦しそうに呟くなつみ。

144 :涙3:2001/06/23(土) 18:05
「ぐぅっ!」
晴香は再び秋子を止めようとする。
だが……。
「あぐぅっ!?」
切りかかろうとして開いた胸元を、
思い切り肘で打たれた。
思ったより強い衝撃。
呼吸が――出来ない。

「祐一、いじわるだからすぐ私のこと騙すんだよ」
にこにこと言う。
血まみれの笑顔、
なのにひどく幼げな笑顔。
なつみは、恐怖が心に芽生え始めたことに、既に気付いていて。

「香里とかも、一緒になってそう言うことするんだよ」
ひどく体が傷ついてるはずなのに。
もう、倒れていてもおかしくないはずなのに。

「でもね」
動けない。
なつみは動けない。

「私だって、ずっと騙されっぱなしじゃないよ」
にっこりと、笑う。
「……いやぁ」
震える。
体が震える。
どこからきたのか、分からない震えがなつみを揺らす。

145 :涙4:2001/06/23(土) 18:06

「いっぱい、我慢してきたんだよ」
もう、その目はなつみを見ていない。
晴香も見ていない。
見ているのは、もう遠い――。

「たくさん、待ってきたんだよ」
やめ……。
がふがふっ。
激しく咳き込む晴香。
放っておいたら、あの子がやられる。
もう、人が死ぬのはうんざりな筈なのに――。

「だからもういいよね? 我慢しなくて」
にっこりと、笑う。

――それなのに、止まらない涙。

「だから――」

「いやぁ、いや、いやぁぁぁぁあああ」
なつみが喚く。
瞳には涙をにじませて。


        ・


「もう、イチゴサンデーじゃ許してあげない」


        ・


そして、鉈が、再び、振り下ろされた。

146 :名無しさんだよもん:2001/06/23(土) 18:08
>>143
涙2です。

……どうしよう、被りまくってしまった。

147 :聖潔:2001/06/23(土) 18:09
「これで……もう、……だいじょうぶのはず、……です」
 繭はダラダラと脂汗を流し、指を押えながら息も絶え絶えになつみに言う。
 その指からは血がドクドクと流れ続けていた。
「一体、何をしたの?」
 晴香は未だに激しく咳きこんでいる秋子の方を警戒するように見ながら、繭に尋ねる。
「キノコを、食べさせました」
「そのキノコって……」
 晴香となつみは繭を見て、キノコの効果が切れた本来の彼女のことを思い出す。
 そして、咳きが収まり、激しい呼吸をしている秋子の方を見た。

「……いちぃ…だぁ……」
 秋子の声。
 顔はうずくまっていてよく見えない。
 その身体は、震えていた。

「やだ、やだ、やだ……ゆういちぃ……いやだよぉ………」
 見詰める三人に声はない。
 静寂の中、聞えるのは彼女の声だけだった。

 泣きじゃくる、彼女の声だけが教会に響く。

「わたしのどこがわるいの!? どこがいけないのっ!!
 待ってたのに! ずっとずっと待ってたのに!!
 はじめて会った時からずっと…… ずっと…… ずっと好きだったのに!!

 祐一! 答えてよっ!!
 ひどいよっ!! いつもいつもいつも逃げてばっかりで!
 ごまかしてばっかりでっ!! わたしの気持ちなんか全然知らないでっ!!
 いつもいつもいつも!! わたしのこと振りまわしてばかりでっ!!
 ひどいよっ!!

 ずっと見てたのにっ!! ずっと見つめ続けていたのにっ!!
 答えてっ! 答えてよ祐一っ!!」

148 :聖潔:2001/06/23(土) 18:10
 その声は教会に響く。
 その隅々まで届きそうなほどの悲痛な思いがにじむ。
 一番聞いて欲しい人には届いているのだろうか。

 ずっと好きだった……
 誰よりも どんな人よりも
 わたしは………わたしは好きだったっ!!
 あの人よりもずっと、ずっと!!
 誰よりもあなたを愛していた。
 あゆちゃんよりも!
 真琴よりも!
 栞ちゃん達よりも!」

 意味がわからない。
 晴香も、繭も、なつみも何もわからなかった。
 彼女が何を咆えて、何を泣いているのか。
 何を訴えているのか。
 だけれども、その言葉は全て真実だと思った。
 その言葉を祐一はどう聞くのだろう。どう思うのだろう。

「名雪よりも……ずっと ずっと好きだったのっ!!
 だから答えてっ!!

 答えて頂戴、祐一さんっ!!」

149 :聖潔ラス:2001/06/23(土) 18:12
  バンッ!

 その言葉と同時に、祐一がいなくなってから閉じたままだった扉が勢い良く開く。
 慌てて晴香達はそっちの方を向いた。

    主よ、終わりまで 仕えまつらん、
      みそばはなれず おらせたまえ、

        世の戦いは 激しくとも、
         御旗のもとに おらせたまえ。

「祐一……わたしを、捨てないで…… すてないで………
 す、捨てないでよぅ……わたしを捨てないでよぅ……」

 顔を床につけて泣き続ける秋子以外は。

150 :伏魔1:2001/06/23(土) 18:41
はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……。
息切れの音が聞こえる。
追ってきている……確実に追ってきている。
走りながら空のマガジンに銃弾を補充する。
カシャ、カシャ。
これでいい。
後はこれで撃ち殺すだけだ。

ダァン!

……外れたか。

遠い。
おまけに森だ。
視界も動きも制限される。
早くこんな面倒なことは終わらせてしまいたいのだが……。

……そうだ、罠を張ってやろう。
老の得意な格闘戦に持ち込んでやれば、
アドバンテージがあると思って隙をさらけ出すに違いない。
今の私になら……それが出来る。

男――源二郎――は立ち止まる。
そして高らかに言った。

「老、あなたは格闘がお好きだそうですなあ!」

少し離れたところに源四郎も止まった。
何を白々しい……と言わんばかりの表情がそこには浮かんでいる。

151 :伏魔2:2001/06/23(土) 18:42
「冥土の土産に、私がお相手して差し上げましょう!」
「貴様……ごときが……はぁはぁ……相手になるか……」

苦い顔で源四郎は言う。
――ずいぶんと息が切れている。
反対に源二郎は全く息を乱していない。

「そうですかね――」
いつのまにか拳銃をどこかにしまって、源二郎が殴りかかる。
「……ふん!」
が、所詮、程度は知られたようなもの。
源四郎は軽くそれを一蹴した。
だが源二郎はすぐさま立ち上がり、また攻撃する。
その動きはだんだんと俊敏になっていくも、全て源四郎には跳ね返されていった。

そしてそんな応酬を数度繰り返す。
そのうちに源四郎の頭に疑念が過ぎった。
(どういうことだ……これは)
なにやらその動きは源四郎や蝉丸に匹敵するほどの鋭さを見せ始め、
何度も殴り倒されているはずなのに、そこに疲れや痛みを感じられない。
ギラギラと異常な光を灯す目。
そういえば奴の血管も異常に肥大している――まさか。

「――ドラッグ、か」

源二郎は怪しく笑う。
その通りであった。
多重の薬物投与を行うことで、彼の体は異常発達していた。
限界まで引き上げられた運動能力。
超鋭敏なセンサーと化した感覚器官。
……そしてそれに付随する形での、痛覚の麻痺。

152 :伏魔3:2001/06/23(土) 18:43

なぜ、そこまで……。
拳を握る。
心に沸いた、些末な哀れみなど掻き捨てて。
いや、なればこそ、次の一撃で決める。
ただ破滅に向かうだけの、この男を。


源四郎は大きく振りかぶり、拳を振るった。


この瞬間を待っていた!
見える。
今ならば見える。
鉄壁の防御に空いた隙間。
老の広い懐、絶対の隙が全く晒し出されている!
源二郎は神速の反射で拳銃を取り出す。
無論、源四郎に向かって駆け寄りながら。
この動きは、源四郎の目には入っていない!

「うおおおおおおおおお!」

源四郎の正拳が、源二郎の胸に突き刺さる。
凄まじい拳勢、さすがに今回のはまずいかも知れん……が。

銃弾を阻むものも、何も無い。

同時に、源四郎はトリガーを引いた。

153 :伏魔4:2001/06/23(土) 18:49
……。

…………。

……………………。

森を支配する静寂。
見るものが見れば、それはひどく白々しい――。

しばらくして一つ、影が立ち上がる。
それは地面に横たわるもう一人を何か調べると、
そのまま幾分もしないうちにそこを立ち去った。

右手に、白くけぶる拳銃を携えて。

154 :伏魔〜影〜:2001/06/23(土) 18:50


そもそも、何故長瀬がこんなところで潰し合いを演じなければならないのか?

結局その答えを知るものなど誰もいない。

余の存在など、かくのごとく希薄。

たとえ、どのような陰惨な結果に終わったとしても、

それ以上に手をかけることなど出来ない。

始めだけ。

結局は始めだけ。

人の心、最後まで操るなど敵わぬこと。

そんなこと、とうの昔から分かっていたはずなのに。

下界で、操り人形のごとく動く人々。


――所詮、余は籠の中の小鳥。

155 :名無しさんだよもん:2001/06/23(土) 18:51
【源四郎、源二郎のどちらが生き残ったかは次の書き手に任せる】

156 :名無しさんだよもん:2001/06/23(土) 18:55
>>152
修正します。
最後の行は源四郎→源二郎です。
申し訳ありません。

157 :男は蘇る - 1:2001/06/23(土) 19:07
ザッザッザッザッ……
――草を踏む音。遠くから、しかし徐々に近付いて聞こえてくる、それ。
規則的に、身体の揺れる感覚。
膝の裏と、背中の辺りに、何かが当たっているという感覚。
祐一の、腕。
――抱き抱えられてる?
それは、まさしくその通りであった。
祐一は。
その腕に茜の身体を抱え、命を賭け、駆けた。
そしてそれは――奇跡的に、成功した。
教会を脱出し、今は森を駆ける。森に入った時点で、もはや駆ける必要は無かった。
だが。
祐一は、少しでも遠ざけたかった。
茜を、あの教会から――あの戦場から、遠ざけたかった。
彼女は。
もはや、ただの少女。
冷たくも、それでもどこか優しかった――あの、里村茜なのだから。
「祐一……」
すぐ、目の前にあった顔に向かって呟く。その、小さな声に、祐一の足が止まった。
「……茜。起きたのか?」
「起きてなきゃ話せません」
相変わらず。
冷えた視線は、祐一を見ている。
「……まぁ、そりゃそうだな」
それでも、祐一は感じた。
それが、かつて、百貨店の売り場で会った時の目とは違う事を。
そして、教会で再び出会った時と――違うことを。
ゆっくりと――茜の身体を下ろす。
立てるか。祐一はそう訊いたが、何事もなかったかのように、茜は立ち上がった。自らの足で。
そして、沈黙。
お互いに、相手の顔を見ていた。
しかし、二人の口が言葉を紡ぐ事は無い。
風が流れる――僅かな血臭を感じた、ような気がした。

158 :男は蘇る - 2:2001/06/23(土) 19:08
随分と間を持って、茜が口を開いた。
「――詩子は」
ぽつりと。
「――詩子は、どうしたんですか?」
「………」
放たれた言葉は、冷たく。
そしてそれが思い起こさせる、結末は、重く。
出来れば口にしたくない、聞かせたくない。だが、祐一は口を開いた。
迷うこと無く。
もう、逃げない。そう決めた。
「――詩子は、死んだよ」
――そうですか、と茜。分かっていたかのように。
「笑ってた。最期まで――。あいつは、お前を憎んでなかった。これだけは本当だ」
茜はそれを聞いていた。
無反応。だが、その言葉は、確かに耳を打って――。
「最期に――。最期に。お前に……お前が、大好きだって、言って……」
「………」
祐一の言葉は、そこまでだった。

159 :男は蘇る - 3:2001/06/23(土) 19:09
お互いに、無言。
空白。
静寂。
時が止まったかのような中、祐一も、茜も、その目から、涙を零すことは無い。
祐一は、耐えていた。
強くあらねば、と思っていたから。
今は、今だけは、泣いていていい場合ではない、と。
――そして、茜は。
「……泣きません」
空白に放たれた呟き。
じわり、と広がったそれが、確実に、時を進める。
「今は、泣きません――貴方が、耐えているなら」
「――そう、か」
強い、と。祐一は、素直に思った。
だが、当たり前だ、とも思う。
始まって間もなく、独りで生き残るが為に、全てを捨てた少女だ。
弱い筈がなかった。
鳥の声。
風の音。
足を止め、向かい合う二人を包むが如く、森は唄っていた。

160 :男は蘇る - 4:2001/06/23(土) 19:09
―――。

祐一が、それを聞いた。
声。
絶叫。
きっとそうだ。
そしてそれで思い出す。
――自分が、逃げてきたことに。
そう。
戻らなくてはならない。
男として。
「茜――」
「はい」
「隠れててくれ。俺は、教会に、戻らなくちゃならない」
水鉄砲を、固く、握る。タンクの中の、濃硫酸が、たぷんと揺れた。
「あいつらが、助けてくれたんだ。だから、俺達は此処にいる。
 俺は――このまま、逃げていたら、本当に駄目になっちまうと思う。
 ……だから」
息を吸い込む。
吐き出す。
吐き出された息が、震えているのを、祐一は自分で感じていた――それを無理矢理抑え付けた。
「あいつらを助ける。
 ――多分、それが、今俺がしなくちゃいけない事だと思うから」
固い決意。
茜は、それに何か言うわけでなく――腰に下げた、短刀を抜き、祐一に手渡した。
祐一を見る、その目は。
今度ばかりは冷たくなかった。
それを見て、祐一はまた新たに決意する。
――必ず、帰ると。

背を向け、駆けた。
振り向きはしなかった。

161 :男は蘇る - 5:2001/06/23(土) 19:10


走る。
走る。
木を抜け、草を蹴り。
右手には水鉄砲。
そして短刀。
だが、祐一は今、己の武器以上のものを手に入れていた。


【元ヘタレ男、教会へ向け奔走中】

162 :彗夜:2001/06/23(土) 19:11
なんかエラー食らってばっかだ……。
中途半端に短いのが多くて申し訳ない。

163 :彗夜:2001/06/23(土) 19:14
嗚呼、訂正。
>>158の「お前が大好きだって」は「お前が大好きだったって」
にして下さい……。

164 :空の青(1/2):2001/06/23(土) 19:37
――いやぁ、いや、いやぁぁぁぁあああ――

魂が震え、搾り出される声に導かれて、意識が現実へと引き戻される。
「わた…し…?」
まだ鈍く痛む後頭部をさすりながら、ゆっくりと繭は起き上がる。
自分の、置かれた立場が理解できずにゆっくりとあたりを見渡した。
「そっか…私は……」

なつみの一撃を後頭部に受け、昏倒していた。
それはどの位の時間だったのだろう。

(でも…それほど時間は経ってないっ…!)
痛みを振り払うように、頭を左右に激しく振った。
倒れたときの空の明るさは、今とほとんど変わらない。
今、繭達が置かれている状況には、まぶしすぎるくらいの空の青。

自分が何をしていたのか、何をしたかったのか。
気を失う前の出来事がゆっくりと思い出される。
まるで白黒のフィルムに色がついていくかのように。
何か大切な者を、大切なことを失ってしまうことの予感と共に。

165 :空の青(2/2):2001/06/23(土) 19:38
(祐一、詩子さん、なつみさん…)
駆けた。張り裂けそうな心の痛みに耐え切れずに。
何故、なつみが繭を殴ったか、そんな疑念はその痛みの前に吹き飛んでいた。

――長森さん…
既に失ってしまった大事なお姉さんの名前を、顔を思い浮かべる。
もう、決して失いたくない。

(嫌だよ…そんなのっ!!)
後から後から湧き上がってくる予感が、膨れ上がって繭を覆い尽くす。
だから全速力で走った。息が苦しくなっても、横腹がひどく痛んでも。
心の痛みに比べれば、何でもなかった。
手で、心を覆い尽くす闇を振り払うようにしながら。

駆けた後に残ったのは、振り払った心の闇ではなく、きらきらと光る涙の軌跡だった。


【椎名繭 教会へ】

※繭は放送を聞き逃しているので浩平の死は知りません。
※冒頭の叫び声は、なつみです

166 :紅い雫1:2001/06/23(土) 19:49
誰の助けも無い。

このまま、死ぬの? 私?

鉈が振り下ろされる瞬間は、とても長い一瞬に感じられて。


私は、目をつぶった。


「あああああああああああああっっっっ!!!」

教会に響く紅い叫び。
だがそれを発したのは――。

「……え?」
なつみは、違和を感じて目をあけた。
斬られたのは、私じゃ、無い。

よく見れば、目の前にいたはずの秋子がいない。
これは……どういうことなの。

「うっ……うっ……」
呻き声が聞こえる。
これは――。

死角になった客席の影から、一人、立ち上がる。

「あなたっ……」

気絶していたはずの、繭。
いつのまに――。

167 :紅い雫2:2001/06/23(土) 19:50
斬られてるんじゃない。大丈夫なの!?」
「かすり……傷ね」

肩を抑えながら、眉は少し足を引きずってそこから離れる。
傷は……それなりに深い。
だが、命に関わるほどでもない。
「大……丈……夫」

「早く……そこから離れなさい」
いつのまにか起き上がった晴香は、静かに言った。

「――まだ、終わってないんだから」

その言葉に反応したように、
むくりと、彼女は立ち上がった。

ボロボロの風体でなおも立ち上がる秋子。
口からこぼれる笑い声。
そして、それを見た三人は絶句する――。

168 :紅い雫3:2001/06/23(土) 19:54

       ・

「どうして、祐一さんはいないんでしょうね?」

「祐一のことだから、きっと夜更かししてまだ寝てるんだよ」

「あら、そうなのかしら」

「うん、祐一もおねぼうさんだね」

「まあ、名雪はずっと祐一さんに起こしてもらってたって言うのに?」

「うーっ、いつもじゃないよお母さん」

「ふふ。でも、それってとても幸せなことじゃないかしら」

「……うん。わたし、今とっても幸せ」


「幸せだよ――」


両の瞳から滴る雫。
それは、まるで彼女自身を象徴したように、紅い――。

        ・

169 :紅い雫4:2001/06/23(土) 19:55
「あああああああああ!」
晴香は斬りかかった。
もう、中途半端な真似はしない。
刃を、向ける。
そうしなければ止まらない。
その紅い涙は止まらない――。

秋子は鉈を振り回す。
――よく見ると、肘が変な方向に曲がっている。
大きな音を立てて、それが風を斬る。

晴香はそれを避ける。
両手で握った日本刀の重みが、
なぜだかいつもよりはっきりしている。
秋子の目は――もう、こちらを向いていない。

振るう。
その刀を振るう。
すると簡単に秋子の方に刺さった。
握られていた鉈が、落ちる。
いやな感触が、手のひらに広がる――。

バチィィィン!

秋子は、反対の腕で晴香のことを殴った。
その勢いで、晴香は客席に叩きつけられた。
考えられない強さだった。
そしてその帰り手で、
肩に刺さった日本刀を引き抜いて捨てた。

刀はカランと音を立てた。
少しまごついた。
なぜなら、
秋子の細くて綺麗だった指は、
もうどれもひしゃげて、使い物になっていなかったから。

170 :紅い雫4:2001/06/23(土) 19:58
秋子は、そのまま晴香の方に迫る。
ずりずりと足を引きずりながら、少しずつ迫る。
晴香は、動くことが出来なかった。
恐かった。
乱暴な口調でごまかしていたことが、
どうにもならないところまで来ていた。

血に染まった赤い瞳は、あまりにもさびしそう過ぎて。
晴香には、
そこから逃げることも、
目を背けることも出来なかった。

「……ああ、あああああ……」
声も、出ない。

虚ろに、もう、嘆きも届かないほどに虚ろに、
秋子は迫った。


ぶすっ。


鈍い音がする。
何の音だろう、これは?

晴香は、目の前に迫りつつあった秋子の、
――その腹の辺りから、何か突き出ているのを見た。

捨てたはずの日本刀だった。

それを拾い上げた繭が、
秋子を刺した――。

171 :紅い雫5:2001/06/23(土) 19:59
荒い息が聞こえる。
それは繭のものだ。
だが、刺された秋子からは、何の声も発せられない。

ただ、そのまま止まっていた。


ばぁん!


再度、扉を叩く音が響く。
息を切らし、そこに一人の少年が立っていた。

      ・

「……最後まで………………遅刻だよ…………」

      ・

天井のステンドグラスから、七色の光が差し込む。

教会の真ん中で、
艶やかな笑みを浮かべて、
その少女は言った――。

     ・

「祐一」

     ・

172 :名無しさんだよもん:2001/06/23(土) 20:05
ここまでで一つです。

173 :名無しさんだよもん:2001/06/23(土) 20:07
>>167
3行目  眉→繭です。誤変換でした。すみません。

174 :一歩1:2001/06/23(土) 20:21
いつか……どこかでは踏ん張らなきゃいけなかったんだ。

俺は、ゲームに振り回されて、そう思ってずっと流されていた。
結局、逃げていたんだ。
あの女の言うとおりだった。
どうしようもなく、甘ちゃんだった。

誰かが殺し合いをやってるだとか、
武器を持たされたとか、
そんなことは些末だった。

皆同じなんだ。

たくさん人が死んで、
たくさん、もしかしたら殺して、

でも、それでもその人たちはきっと、
”自分”に誇りを持って、
一つ、成し遂げようとしていたに違いない。

俺の出会った人は皆そうだった。

結局俺は、誰一人守れてない。
誰一人救えてない。

ずっと後ろ向き。

175 :一歩2:2001/06/23(土) 20:21

でも、
もう、
甘えは、許されない。


目を背けては、いけない。


さあ、いくぞ。祐一。

お前は、これからやらなきゃいけないことがある。

一歩を……踏み出すんだ!

176 :蒼は神の下に散る - 1:2001/06/23(土) 20:31
――あああああああああああああっっっっ!!!――
悲鳴。
続く悲鳴。
森の中に響き、消えて行く。
それが、祐一にはまるで少女達の命が消えて行くかのように聞こえて、ぞっとした。
「頼む――頼む、頼む、頼む!無事でいてくれっ――!」
祈るように、叫んだ。
それは誰に。
――即ち、神に。
だが、それは、教会まで届いたのだろうか。
絶望感。
もう既に全ては遅かったのではないかという思い。
だが。
諦めるのは、まだ早い。
そう思って、彼は駆けた。


しばらくして、森が切れた。
つい、先程通り過ぎた壁。教会の壁。
見つけた。
脇を駆け抜ける。もはや、荒れる息すらも気に止めず、彼は走った。
そして。
その扉を開ける。

177 :蒼は神の下に散る - 2:2001/06/23(土) 20:32
――ばぁん!!

勢い良く、扉は開いた。
その瞬間目に飛び込んだのは――。
血に塗れた、蒼。
長椅子の間で、手を後ろに付け、怯えた子供のように後ずさる晴香。
血に塗れた手を、我が物でないかのように呆然と見る繭。
そして――呆然とへたり込んだ、なつみ。
それは、誰よりも早く反応した。
まるで、祐一が来るのが分かっていたかのように。
その指を有らぬ方向へとねじ曲げ。
その腕を折り曲げられ。
そして、その身を刀で貫かれ。
それでも、彼女は立っていた。
「――最後まで―――――遅刻だよ――――」
薄暗い教会の中。
七色の光が、ステンドグラスから差し込まれる。
それはまるで、神が舞い降りたように、綺麗で。
「――祐一」
重い、重い足取り。
生きる死霊の如く、重い足取り。
虚ろな瞳。
それは、この世のどの闇よりも、深く。
哀しかった。
「――行こう――よ――――祐一」
ぽつり、ぽつりと。
こぼれ落ちるように、呟く秋子。
――いや、それはもはや"秋子"ではなかった。
認める他、無い。
それはまさしく――水瀬名雪。
「――学校に――遅れ―――ちゃう、よ?」
一歩、一歩。
その足は、血に塗れて。
もはや歩けぬ筈なのに。
その足は、確実に祐一へと。
既に亡き娘の心を、愛しき人へと。

178 :蒼は神の下に散る - 3:2001/06/23(土) 20:33
「―――ねぇ――祐一―――」
祐一は。
一瞬だけ、目を閉じた。
目の前の現実を、受け入れる為に。
己の為すべき事を、為し遂げるが為に。
目を開く。水鉄砲を小脇に置いた。
一歩。近付いて行く。
全ては、静止していた。
呆けたように。傍観者達は、見ていた。
その悲劇の、終幕を。


どん


小さく、重い音。
ずしりとした重さ。
確かな重さ。
人の命の重さ。
「―――え?」
祐一は。
祐一の右手には。
短刀。
それは、今、彼女の胸に。
「――いい加減、目を覚ませよ」
どしゃっ。
血を弾き、彼女は床に倒れる。
その側に近寄って。
言った。
「――なぁ、名雪?」

179 :蒼は神の下に散る - 4:2001/06/23(土) 20:34


――祐一。

――そうだね、もう、学校に行かなくちゃいけないよね。

――うん、行くよ。

――目覚まし止めて。

――朝ご飯食べて。

――学校に、行くよ……。



「……祐一さん」
ぽつりと。
か細い声。
「……はい」
祐一は、目の前の人の顔を見た。
それは、先程よりもずっと落ち着いた顔で。
酷く哀しげな顔で。
確かな、いつか見た母親の顔で。
「――名雪を、よろしくお願いしますね?」
その目が、光を失って行く。
消えて行く、命の灯火。
それは、紛れもなく――水瀬秋子のもの。
「――待って―――ますよ―――」

そして、光は消えた。

180 :蒼は神の下に散る - 5:2001/06/23(土) 20:36

鳥の声。
風の音。
その中で。
その中に建つ建物の中で。
祐一は。
既にこの世の人でない人に――言葉を返した。
上を見上げて。
ステンドグラスの向こう側に。
届くように、と。
「――悪いけど、俺は――俺には――もう、大切な人が、いますから」
光は淡く差し込んで。
祐一を包んだ。
神が見ているかのように。
「――さよなら、秋子さん――」


【090 水瀬秋子 死亡】

181 :彗夜:2001/06/23(土) 20:55
書きました。

182 :今、一度の門出1:2001/06/23(土) 21:36
「悪い……」
祐一は上を向きながら言った。
ずいぶんと不自然な姿勢だった。
でも、誰もそれを咎めようとはしなかった。

「遅くなった」
「何で、……戻ってきたのよ」

晴香は座り込んだままで聞いた。

「……あの子を放って置いていいの?
 けっきょくヘタレね……あんたって」

毒舌は変わらない。
……なのに、その言い回しからは不思議と刺は感じられず。

「……ああ、そうだな」

祐一は上を向くのを止めて、
――その拍子に水滴が僅かに跳んで――、
倒れた秋子を一瞥する。

「結局、俺はヘタレさ――」

選ぶことが出来なかった選択肢、
見送ってしまった選択肢、
もう、正しいかどうかも分からない、過去の選択肢。

戻れるものなら戻りたい。
運命を変えられたかも知れない、その瞬間に。

183 :今、一度の門出2:2001/06/23(土) 21:37
だが、そんなことが出来るはずが無い。
俺は受けたんだ、報いを。

そして、これからも――。

すっと立ち上がる晴香。
その様子は、もうずいぶんと落ち着いている。
ゆっくりと歩いて、繭に近づく。
繭は……何かに疲れたように、ぼうっと固まっている。

「気にすることは無いわ。
 ……よく、頑張ったわね」

ポン、と繭の頭の上に手を置いた。
晴香のそのねぎらいの言葉は、
――ひどく重く感じられて。

「そっちの方もまだ生きてるわね。
 悪いけど手当ては出来ない、自分でどうにかして頂戴」

脚を切り裂かれながらも、
なつみもまた、そこで生き長らえていた。

晴香はさらに教会の奥へ向かう。

「そこのヘタレ男、来なさい」
「……なんだ?」
「……放っておくわけにはいかないでしょう?
 つくづくヘタレね、あんた」

「……ああ」

彼女の視線の先には、寝かされた詩子の遺体があった。

「埋葬しないと遺体が傷むわ。
 女の子をそんな風にするわけには行かないでしょ」

184 :今、一度の門出3:2001/06/23(土) 21:38


そして、詩子と秋子、両方の遺体を運び出して埋めた。
繭は手伝いたそうだったが、
傷に響くといけないので断った。

途中、置いてきぼりにした茜のことが気になったが、
彼女がいまさら何かするとも思えなかったので、
そのまま埋葬に集中した。
そこまで彼女は愚かではないし、
埋葬は茜もきっと望むところだと思ったから。

185 :今、一度の門出4:2001/06/23(土) 21:41
「――私はそろそろ行くわ」
「……そうか」
「馴れ合いは嫌いなのよ、
 由依が居ない今、群れる必要もなくなったし」
「……」
「あとは復讐を達成するだけ、よ」

晴香は、回収した鞘と刀を、元の通り納めた。

「まだ、殺すのか……?」
「簡単にいわないで頂戴。
 私は何人もの思いを背負ってここに居るのよ。
 そんな単純なことをやってるんじゃないの」
「…………」

祐一は、何も言い返すことが出来なかった。

「――もう、ヘタレは卒業しなさい。
 そうしないと、今度こそ本当に守りたい、と思ったものも、
 守れなくなるわよ」

ポン、と晴香は祐一の頭を叩いた。
――そう、先ほど繭にそうしたように。

「次に会う時までに、もう少しかっこよくなっておくことね」

そう言い残し、晴香は教会を去っていった――。

186 :名無しさんだよもん:2001/06/23(土) 21:46
ここで一区切りになります。

187 :望まぬ遭遇 - 1:2001/06/23(土) 22:59
森は、深く、深く、何処までも続いている。
その中で、草を踏み締め、歩く音。
三人の足音。
鋭い目を持った、黒ずくめの男、国崎住人。
その後ろを、幸いにしてまだ生き長らえる事の出来た二人の親子が付いてきていた。
神尾親子だ。
晴子は、三人の一番最後尾に居た。
その手に、シグ・ザウエルショート9mmを構え、滑るようにして付いてきていた。
一般人の手には馴染まぬ筈のその銃は、何故か、滑稽なまでに自然に見えた。
そして、三人の間には、恐る恐る進む少女、観鈴の姿。
その手には、これまたしっかりとナイフが握られていたが――
恐らく、これが使われる事はあるまい。
観鈴は、殺す事の出来ぬ子であった。

――早い朝食を摂ってから、どれだけ経ったろう?
結局のところ、あれから誰にも会う事は無い。
念のため、ということで用心はしていたものの――
襲撃どころか、誰一人として接触も叶わず、ただふらふらと前へ進み続けるばかりだ。
朝日は、既に昇り始めていた。定時放送も近い。
――誰が死んだのだろう。
願わくば。
その中に、知った者の名前が無い事を願って。
住人は、前へと歩き続けた。

彼は。
彼らは。
まだ、佳乃の死を知らない――。

188 :望まぬ遭遇 - 2:2001/06/23(土) 23:00

住人の足が止まったのは、それからもう少ししての事だったろうか。
続いて、観鈴が素早く足を止めた――
ちょうど横を見ていたところであった晴子が、歩く勢いもそのままに、観鈴の背中に体当たりした。
土の上に転ぶ二人。
「つぅーっ……」
「が、がお……」
ぽくっ。
森の中に、割と小気味の良い音が鳴る。
「その口癖止めえって、前から言うとるやろ」
「が……」
もう一度出そうになったものの、辛うじて押し留まった。
「何やってんだお前ら」
住人の軽い突っ込みが入った――が、その声は冷ややか。
至って、冷静に。突っ込むのに適した声ではない。
それを感じ取った晴子の目が、すっ、と細まった。
「――なんや。おるんか?」
「……いや、分からん。だが、恐らくは、何かが居る事ってところだな――」
「………」

189 :望まぬ遭遇 - 3:2001/06/23(土) 23:01
じゃきっ。
鉄の音。
一変して緊迫したムードに包まれた観鈴が、一歩身を引いた。
正解だ。万が一戦闘に巻き込まれたとして、観鈴が戦う術を持っているわけではない。
言うなれば――言い方が悪いかもしれないが――足手まといであるのだから。
万が一、あったとしても、投げナイフ。使いこなせと言う方が酷だ。
それでも、その右手に握られたナイフは離さなかったが。
住人は。
冷静な表情の割に、突然の遭遇に焦りを覚えていた。
手に握る、やたらと重い銃。残り一発のデザートイーグル。
――これだけで、戦えるのか?
牽制には使えない。当てるつもりで使うのなら、一撃必殺を狙う他、無い。
仕方がない――ハッタリを、使う。
「――そこにいる奴。悪いが、出てこないのなら勝手に撃たせてもらうぞ」
がさ、と草が揺れた。
これで、予感は確信へと変わった――すぐ側に、誰かが居る。
晴子の顔にも、より緊張が漲っていく。
――沈黙。
返事は、無い。
「――蜂の巣になりたいのか?」
脅す。
これで、姿を現してくれれば――

「出たところで、撃たれない確証はありません」

190 :望まぬ遭遇 - 4:2001/06/23(土) 23:01
――返ってきたのは、いつか聞いた声。
少女の声。
自分の記憶が正しいのなら――
「――お前、まさか住宅街の時の」
「茜、です」
静かな声。
それは森の中から。
上から聞こえる気もすれば、すぐ側の草むらから聞こえる気もする――
森の作る闇が、住人の感覚を狂わせていた。
何処だ。
何処にいる。
「――名前なんてどうでもいい――攻撃する意志が無いのなら、こっちも撃つつもりはない」
「何故です?」
疑問を投げ掛ける返事。
心なしか、後ろから聞こえてくるような気すらしてきた。
「貴方は、私を殺すつもりだった筈です」
「それは、お前が俺を殺すつもりだったらの話だ――やる気の無い奴に銃を向ける程、落ちぶれてはいない」
そう。
それは住人の予想。
この少女に、自分達を攻撃する意志は無い、という。
無論、それはあくまで予測に過ぎない。
何処か、近くから三人の命を狙うべく時期を見計らっているだけに過ぎないのかもしれない。
――だが、それなら何故。最初の一瞬で、撃たなかったのか、と。
その事実が、住人の勘を呼び起こす。
「――確かに、やる気はありませんね」
ふぅ、というため息の音――それが聞こえるという事は、それほど遠くはないということか。
「むしろ、やる気を削がれた、といった感じです――何処かのヘタレ男さんに」
「………」
茜の独白が森の中に溶けていくのを待って――住人は、銃を下ろした。
無論、右手には握られたままだ。いざとなれば、即座に構える事も可能である。
だが、しかし。
――晴子は、住人の行動に従った。四方八方に巡らせていた殺気を静めると、銃口を下げた。
「出て、いいのなら出ますけど」
「――そう、だな。後ろから刺されかねないというのも厄介だ――姿を見せろ」
「―――」

191 :望まぬ遭遇 - 5:2001/06/23(土) 23:03
がさり。
音は、上から聞こえてきた――
住人が、上を見上げると同時に、近くにあった木の上から亜麻色の髪の少女が姿を現した。
とさ、と地に着く音。軽い。
しかし、先程の草むらの音はフェイクだったのか。
つくづく、油断のならない女だ――と、住人は何と無しに思う。
「お久しぶりですね」
「会いたくはなかったがな」
「――まったく、です」
ふぅ、と目を閉じて溜息。
観鈴は、目の前に立った彼らの様子を、そして現れた少女の姿を呆然と見つめていた。

192 :彗夜:2001/06/23(土) 23:05
また書きました。
なんか住人出番失せたし、森を歩いているとすれば……なので。

193 :彗夜:2001/06/23(土) 23:15
>>188
またしてもミス。
「何かがいる事ってところだな」→「何かがいるってところだな」
申し訳ない。

194 :彗夜:2001/06/23(土) 23:33
すいません。時間軸が間違ってると指摘されました。

>>187

朝日は、既に昇り始めていた。定時放送も近い。
――誰が死んだのだろう。
願わくば。
その中に、知った者の名前が無い事を願って。
住人は、前へと歩き続けた。

彼は。
彼らは。
まだ、佳乃の死を知らない――。



太陽が、既に木々の上から姿を現そうとしていた。
もう、随分も経つ。
放送も、流れた。
――その中で。
彼らは。
佳乃の死を、知った。

それから、無言が続いている。
互いに、何も言わず。何も触れず。
だが、決して"それ"から逃れようとしているわけではなかった。
だからこそ。
何も言わなかった。

に変更をお願いします。

195 :彗夜:2001/06/24(日) 01:30
再、再、再訂正。
住人→往人です。

196 :名無したちの挽歌:2001/06/24(日) 01:32
>>666
はじめはもっと殺すようなこと言ってなかったか?あれだけ長い文章で何話も
続いた挙句に一人だけ。茜が好きなのは良く分かった自分に酔うのは止めろ

197 :名無しさんだよもん:2001/06/24(日) 01:42
?

198 :名無しさんだよもん:2001/06/24(日) 01:50
ていうかどの板でも遅かれ早かれコテハンってのは叩かれる
傾向が強いのはみんな重々知ってるよね?
当たり前の事だろうけどコテハンってのは名無しさんと違って
微妙な言葉使いでも個人が特定されてるだけに叩かれやすいの。
だから作者の人達がコテハンを持つとマズイの。
何がマズイって作者自身にとって。
まず特定のコテハンにファンができれば必ず「〜さんがいい」って声が出てくる。
そうなると当然「比べられる側」の作者には遅かれ早かれ批判が出始める。
名無しで書き込んでる分には何も言われないけどコテハンを名乗ってる限り
「名指し」で批判が出始める。
批判の傾向は当然単なる指摘に留まらず「罵倒」「中傷」等も出始める(今までのレスを見てのとおり)
そうなればあとは説明するまでも無いんです。
コテハン作者は一人一人確実に潰されてゆき、それをROMしてる人間もビビって
書き込めなくなる。
支持され潰されてないコテハン作者一人二人で進めますか?
ですが残ったコテハンとしては叩かれる可能性が高い状態では書き込む気も失せるでしょうね。

結果:廃れる

つまりコテハン罵倒関係の荒らし防止と本人の意欲喪失防止には
コテハンで書かないのが一番手っとり早いんです。
第一ムキになってコテハンで書き込む理由もメリットも無いワケですし。

199 :教会にて〜Last Episode〜(1/5):2001/06/24(日) 02:17
「これから…どうする?」
どちらへ…と言うでもなく祐一が呟いた。

晴香が去った後、祐一と、そして満身創痍のなつみ、繭だけが残った。
「どうするって…どうするの?」
そしてどうしたいの?と繭が付け加えた。

いろいろなことがありすぎて、これからのことなんて何一つ考えられなかった。
だけど……
「俺は、茜を守る」
それだけは、絶対に、言えた。

いろいろな人を失ってなお…いや、だからこそ。
「茜だけは、守りたい」

悲しみの傷が癒えることはなかったが、
鮮やかな空のbrueは、それでも優しく祐一達を包んでくれた。

泣きたいくらいに澄み渡ったクリスタルブルーの空。
いっそ、雨が降ってすべての悲しみを洗い流してくれたらいいのに、とさえ思っていたのに。
祐一たちの心は、穏やかだった。

200 :教会にて〜Last Episode〜(2/5):2001/06/24(日) 02:18
「うん…」
いいと思うよ、と繭が呟く。
傷は痛むだろうが、それでもつらい顔など微塵も見せずに。
それはなつみも同様だった。
だから余計に言い出せずにいた。

「私達は、いいよ」
繭が呟く。
「えっ…?」
祐一が言い出せずにいた言葉。


これからは茜を守っていきたい。生きて帰る為に。
その為にはこれから危険を冒していくことになるかもしれない。
それでも、茜となら乗り越えていける、と思った。

だけど…
(繭やなつみちゃんまで巻き込んでしまっていいのか?)
祐一は思う。

俺は弱い。
繭やなつみを守りきれる自信なんて、まったくなかった。
ましてや怪我人だ。危険を冒さないで済むのなら、その方がいい。

だが、置いていけるのか?
ただでさえ、怪我人なのに、そして殺人ゲームが行われている島なのに。
祐一や、繭達、そして茜も含めて、
いつかは、生きて帰るために殺し合いをしなければいけないかもしれないのに。
――もちろんそんな選択をする気はないが。
(置いて行ける訳、ないじゃないか――)

「私達は、ここでお別れです」
だから、なつみが、繭が、そのセリフを口にしたときには驚いた。
「足手まといですし、それに……」
「野暮な存在にはなりたくないしね、祐一」

201 :教会にて〜Last Episode〜(3/5):2001/06/24(日) 02:19
(俺は、バカだ)
ただただ、自分の浅はかさを呪った。
もう、この二人は、ずっと前から決めていたんだ。
俺の、為に。
「俺なんかより、ずっと、強いよ」
二人の頭を、交互に撫でる。
「今頃気付いたのね」
繭の呆れ顔。
「さ、行って、祐一」
繭が、そっと祐一を押した。

「俺が、バカだったんだよ」
だけど、歩き出さずに。
「祐一……」
「俺が、全部悪かったんだよ。一番大切な女性に目を奪われていて…
 他の…本当に大事なものが見えなくなっていたんだ」
栞も、香里も。
真琴も、名雪も。
そして秋子さんも。
「俺が選択をあやまらなければ、死ななくて済んだのかもしれないのに…
 俺が、違う道を行けば、みんな生きていられたかもしれないのに…!!」
「そうかもね」
「……ああ」
「ちょっと、椎名さんっ!?」
「いいのよ」
繭が、抗議の声を上げるなつみを手で制した。

202 :教会にて〜Last Episode〜(4/5):2001/06/24(日) 02:20
「祐一、人は強くて、弱いのよ。だから、自分ひとりでできることなんて限られてると思う。
 私もそうだから。
 人生なんて後悔の繰り返し。
 それでも、前を向いて生きていけることが強さだと思う。
 だからこそ、誰もが現在(いま)を、輝いて生きてる」
繭もまた、真琴のことを思い出す。
「繭……」
「自分一人で背負い込まないでよね…
 他の選択肢もあったかもしれない。
 他の生き方も、他の人生もあったかもしれない。
 だけど……それでも前を向いて歩けば、強くなれると思うから」
一旦言葉を区切り、深呼吸する。
「自分だけは――自分のとった行動に、信念があったのなら――
 自分だけは自分を信じなきゃ駄目よ。
 せめて自分だけは…自分の行動に、誇りをもたないと」
たとえ、その先に後悔が待ち受けていたとしても。
「先を恐れて行動しないほうが、ずっと、ずっと…つらいと思うから」
「繭……」
繭の言葉の意味をひとつひとつ噛みしめるように、目を閉じる。
「やっぱお前、きのこ食べると大人っぽいな」
「どういう意味よ?」
そのあと、ひとしきり、笑った。

203 :教会にて〜Last Episode〜(5/5):2001/06/24(日) 02:21
「さ、行こうぜ。ゆっくりな。……歩けるか?」
えっ?…っと、二人が顔を見合わせる。
「一緒に行こうぜ。俺は確かに頼りないし、駄目な奴かもしれないけれど…」
すっと、差し出された手。
「俺も、信じた道を行くことにしたよ。後悔しないように」
始めからこうすれば良かったんだ、と祐一。
「出来る限り守るぜ、俺は」
みんなをな。
「せいぜい、私達に守られないよう気をつけなさいよ」
繭が、そしてなつみが、祐一の手を、しっかりと握った。

204 :名無しさんだよもん:2001/06/24(日) 05:31
新しい感想スレを張り付け
マターリとよろしく

http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=993323973

205 :書を捨て街に出よう:2001/06/24(日) 06:30
「……というわけなんだ」

 北川潤(男子・029番)は、苦しい言い訳に追い立てられていた。

「……………。」

 宮内レミィ(女子・094番)は、もはやウンともスンとも言わなくなったノートPCを前にして呆然とするほか無かった。

「よって、このパソコンがなおるまで、”おかあさんといっしょ”は見られなくなっちまったってことなんだ」

「……………。」

「嗚呼、思えば不幸な事故だった。仕方なかったんだ、まったくなぁ…。まったくだなぁ…。こればっかりはなぁ…」

 本当は、どう見ても日本語を喋れそうにない小学生ぐらいのスッポンポンな女の子たちが、いろんなことに大チャレンジしてる画像を期待しつつ実行したファイルのせいでマシンがハングったのだが、正直に伝えたところで北川に利はないし、返ってメリケン側の心証を悪くするだけだろう。結局北川は、目頭を摘んでもっともらしく嘆く事で米側の追求を免れようと計った。

「………ジャジャマル」

 ぼそり、と聞き取れるかそうでないか位の声でレミィが呟いた。

「…は?」

「ピッコロも、ポロリも」

「うむ、残念ながら当面は見ることは不可能だ。前に言ったとおり、相変わらずぽろりはおいなりさんとお宝をチャックからはみ出したままで、ぴっころは見境無しに口から玉子吐き出し、じゃじゃまるは小豆相場に手を出しっぱのままだ。つまり一生こいつらは救われないままなのさ」

 ついぞ余計なことを言ってしまうのは、北川潤という男のどうしようもなく救われない部分であるのかも知れない。

「……………!」

 それを聞いたレミィは最初目を見開き、次に俯き、そして小刻みに震えだした。北川はしまった、と思った。「そのコリコリとした睾丸を食わせてくれるのは貴様カァ!」とトランスに入ったレミィに胸ぐらを捕まれてそのままマグナムでパンパンされてしまう、半ば確信を伴った予知的ヴィジュアルが北川の脳内で鮮やかに再生される。もはや外交交渉は決定的にご破算であろう。北川は国際連盟を脱退してジュネーブの会議場を後にしたときの松岡洋右の気持ちが分かった気がした。

206 :書を捨て街に出よう:2001/06/24(日) 06:31
 どこか遠くへ旅に出たい気分だった。旅はいい。人を賢くさせる。外に出てみなければわからないことがたくさんある。学校で教えていることは全て本に書いてある。だから、本を読んでいれば学校なんて行かなくてもいい。それよりも旅をすべきだ。幸い、この国には徴兵制がない。兵隊にとられるよりは世界放浪のほうがましだ。イスラエルの若者は兵役に就く前の一年間、世界中を旅している。ユダヤ人にしてみれば放浪は宿命みたいなもんだ。
 北川はユダヤ人が羨ましく思えた。

「見るヨ…」

「は?」

 北川は拍子抜けした。ヤンキーの反応は彼の想像とは異なっていたからだ。そして彼の脳内から虐殺マイセルフなシーンとジュネーブとアラファト議長とバラク首相の顔も霧消した。

「絶対見るよジュン! ワタチCD全部集めてノート直してにこぷん全話みるデセ!」

 大宣言したレミィは、荷物を担ぎあげると北川の手を引いてそのまま立ち上がった。

「そうと決まったら出発するよ! ほーら、行くよジュン! ロンよりショーコ、善は急げ、あわてるコジキは貰いが少ないデース!」

 やはり男にとって永久に女はかなわない存在なのだ、とレミィに手を引かれながら北川は強く思った。
 だが、それ以前にもしCDを全部集めたとき、中に入っているのがにこぷんで無い事をメリケンにばれたら、いったいどうすればいいのだろうか、とも北川は悩むのだった。

「ジュン」

 レミィの呼びかけに、北川の思考は中断された。

「なんです」

「火遊びはホドホドに、ネ! あんまり興味本位だけでいじくりまわしちゃうからヤケドしちゃうんダヨ!」

 やはり女は怖い。そういえば創世記の頃から女は強かった。イヴにそそのかされたアダムの時代から男は女には逆らえなかった。足利義政は日野富子の言いなりだったし、玄宗皇帝は楊貴妃の為にわざわざ数千里も離れた所からライチをもってこさせた。そしてそんな彼らより力もなにも無い北川は「もしかしてばれてますか?」とは恐ろしくて聞くことができなかった。

「アハハッ、シュッパーツ!」

 ガラガラとシャッターが開いて、外の日差しが二人を眩しいくらいに照らし出した。

207 :楽園追放(1):2001/06/24(日) 08:30
 朝日がもうすでに朝日ではなくなった頃
 一組のカップルが墓場の近くを通り過ぎようとしていた。

「う〜ん」
 海水のおかげで多少目がひりひりしている。
「大丈夫ですか?」
 美汐が心配そうに顔を覗き込む。
「あ、うん。ちょっとしみるけどね」
「意外とドジなんですね」
「あはは…、そうかな?」
「そうですよ」
 二人同時に笑みがこぼれる。
 この二人がいる場所だけはこのすさんだ島の中で唯一の楽園のようであった。

「ところでこれからどうするんですか?」
「うん、それなんだけど僕達は逃げる手段を探そうと思うんだ。
 もし、彰兄ちゃんがこのゲームを終らせてもこの島を出る手段が無ければ意味が無い。
 泳いでいくというのはかなり無理があると思うんだ…
 だから、僕達はこのゲームが終ってみんなで帰るための手段を探そう!」
 僕は、柄にも無く熱弁を振るってみた。
「そうですね。そして日常を…新しい日常を取り戻しましょう」
 美汐ちゃんは何も言わず賛成してくれた。

208 :楽園追放(2):2001/06/24(日) 08:31
「でも、どうやって探しましょうか?」
 美汐ちゃんが当然の疑問を投げかける。
 僕は近くにあった墓石寄りかかりながら答えようとした。
「それなんだよね。何にもてがかりが無いんだよ。
 そういえば、ゲームの元管理者だった高槻とかいう人は何か知ってたりしないのかな?
 見つけて教えてもらったりはできないだろ……って、ととと……うわっ!」
『ドシンッ!』
 寄りかかった墓石は見事に倒れ、僕は尻餅をついてしまった。

「くすっ、やっぱりドジですね。墓石に寄りかかったりするから罰が当たったんですよ」
 美汐ちゃんがからかいながらも僕に手を伸ばし起こしてくれようとする。
 下から風も吹いてきているので容易に立ち上がれるだろう。
 ………風?
 ………下から?
 僕は美汐ちゃんの手をとり立ち上がり、あたりを見回した。
「ど、どうしたんですか?」
「風が吹いてるんだ!」
「それはさっきからずっと吹いてますけど?」
「そうじゃなくて!下から、地面の方から…」
 僕が倒れた墓石をさらに動かすと、その下にはどこかへと続く地下通路が現れた。

 僕は唾をごくりと飲む。
「この道何処に続いてるんでしょうか?」
「わからない、でも、行ってみようと思う。
 危険だから美汐ちゃんはここに残っていても…」
 僕の唇に人差し指を置き、首を横に振る美汐ちゃん
「そんな事言わないでください」
 僕の眼をじっと見つめる美汐ちゃんの瞳の意志は強かった。
 僕もそれ以上は何も言わずにただ頷くだけだった。

209 :楽園追放(3):2001/06/24(日) 08:33
 中は思ったより綺麗な造りになっていた。
 通路は薄暗かったがそっちの方が人に見つかりにくく、かえって好都合であった。
 手には緊張のせいか汗を掻いている。
 美汐ちゃんも手に汗を掻いているみたいだ。
 …え?美汐ちゃんの手?
 そのとき僕は初めて、美汐ちゃんの手をずっと握り締めていたことにきづいた。
 美汐ちゃんの顔を見ると薄暗くてはっきりわからないが真っ赤になっているようだった。
「あ、ご、ごめん!その、て、手を…」
「い、いえ、べつに…」
「僕、いつから握ってた?」
「え?あ、あの、倒れて助け起こしたときから…」
 僕は顔から火が出そうになくらいあつくなった。
「あの、その、離したほうがいいよね?」
「そんなこと無いです。心細かったんで、すごく安心してました。
 だから、離さないでください」
「うん、わかった。何があっても僕はこの手を離さない」
 そう言って、僕はより強くその愛しい人の手を握り締めた。
 それに習うかのように、彼女も強く握り返してきた。
『絶対に離さない!僕が守り通してみせる』
 僕はそう心に誓いさらに通路を進んでいった。

 進んでいくと今までに無い雰囲気の部屋を見つけた。
 これまでにあった部屋は机や椅子などが並べてあるだけの部屋や、
 ガラクタが放置してあるだけの倉庫しかなく、
 脱出の手がかりになりそうなものは一切無かった。
 だが、今回見つけた部屋にはドアに【Stuff Only】と書かれていた。
「なんか、少し怪しくない?」
「そうですね。今までこんなこと書かれていませんでしたしね。
 でも、誰か中に人がいるんじゃないんでしょうか?」
「大丈夫だと思うよ。人の話し声とか物音とか全然しないし」
 僕はドアに耳を当てながら慎重に中の音を探った。
「よし、じゃあ入ってみるからね」
「はい」

210 :楽園追放(4):2001/06/24(日) 08:41
 僕は中に入ると物陰に隠れながらあたりを見渡す。
 この部屋はかなり広いらしく一番端が見えない。
「これだけ広いのに誰もいないのかな?」
 奥の方に何かがあるみたいのだがここからではよくわからいので、
 もう少し近づいてみようと考えた。
「あっちに何かあるみたいだね。なんだろう?コンピューターかなぁ?
 行ってみようと思うんだけど大丈夫だよね?」
 そう言って、僕は振り返った。
 だが、そこには、僕の左手に繋がれているべきはずの人間はいなかった…
 ただ、雫がぽたりと落ちるだけの綺麗な右手しか残っていなかった。
「美汐ちゃん!!」
 僕はあたりを何度も見渡す。
「美汐ちゃん!美汐ちゃん!美汐ちゃん!」
 周りに敵がいるかもしれないにもかかわらず僕は大声でその愛しい人の名を呼びつづける。

 そして、僕は気付く。
【Stuff Only】の意味に…
 このゲームのスタッフつまりこのゲームの主催者とは…


 ―――そう、長瀬一族であることに………

211 :楽園追放(5):2001/06/24(日) 08:42
 つまり、こういうことなんだろう。
 この部屋は長瀬一族のものしか入れない。
 それ以外の人が決して入れないようにしてあるのだろう。
 だから、僕と一緒でなかったら美汐ちゃんの手は切断されることは無かった。
 そのことに気付いた僕は………
「うわあぁぁぁあぁぁぁ!!!!!」
 体がよろよろとふらつく。
 まるで自分の体ではないかのように。
 自分の中に抑えきれない電波が増幅していく。
 しかし、封印されてるいるせいでその電波の力が外に向かうことは無い。
 ならばその抑えきれなくなった電波は何処に向かうのか?
 自分の中に暴走した電波がたまっていく。
 臨界を超えたそれは僕の中で爆発する。
 目の前が白い光で満たされる。
「光が、光が満ちていく…」
 そして、僕は倒れた。

 こうして二人の楽園のような日々は終わりを告げた。
 そう、まるで知恵の実を食べ、楽園を追放されたアダムとイブのように…


【005 天野美汐 右手切断】
【064 長瀬祐介 電波の暴走により倒れる】

212 :閑散。:2001/06/24(日) 15:01
――まだ、少し熱がある。
柏木初音は、――まだ青い顔をした七瀬彰の傍で、そう呟いた。
実は、それ程外傷が多いわけではなかった。
当然、外傷が小さいという意味ではなく、後頭部に大きな傷があり、
右足の甲が半分無くなっているのは、まともな行動を取るには、大きすぎるほどの障碍だ。
――先程、確かに彰は腹を銃弾で撃たれたのだが、彼は実は防弾チョッキを着込んでいたらしく、
それに関しては大した傷はなかったようだ。
後頭部からの血も、なんとか止まった。
だが、失血の多さは隠しきれない。顔の青さがそれを証明している。
「――どうだ? 彰くんの様子は」
柏木耕一が部屋に入ってきて、そう呟いた。
「大丈夫だよ。だんだん熱は下がってきてるし」
「そうか。――替わろうか?」
「ううん、大丈夫」
頑として首を振る初音を見て、耕一は溜息を吐いた。

「あのね」
初音が、ふと、耕一に話しかけた。
「彰お兄ちゃんはね、わたしに、新しい日常をくれる、って、云ってくれた」
耕一は、黙って、その哀しい後ろ姿を見る。
「皆、日常が壊された。もう、帰れたとしても、お姉ちゃんは皆、死んじゃった」
「――」
「けど、彰お兄ちゃんは、わたしに、きっと、日常は何処かに、何処にでも、あるんだって、云って」
そして、泣き出した。――さめざめと、静かに、静かに。
「彰お兄ちゃんに死んで欲しくない。何処にも行って欲しくない。――皆で、帰りたい」

「――ああ、判ってる、もう、彰くんは、何処にも行かせはしない」
耕一は、その震える肩に手を置いて、その体温を確かめた。

213 :閑散。:2001/06/24(日) 15:01
ぱちり、と目を開けた鹿沼葉子は、すぐ横に座っていた少女――七瀬留美を見て、微かな息を漏らした。
「あ、起きた、葉子さん」
「――七瀬さん」
殺し合いの初期に出会った、少女だった。
「お久しぶり、葉子さん」
――髪を切ったのだろうか? 或いは、切られた? 長かったお下げがそこには無い。
その視線に気付いたのだろう。七瀬は笑って、
「ああ、これは切ったんだ、動きにくかったから」
はぁ、と葉子は溜息を吐いた。
まあ良い。取り敢えず目が覚めたわけだ。早く目的を、この殺し合いを終わらせに――。
だが、動こうとすると、ずきり、とお腹が痛む。
「あ、まだ動かないで、無理はしちゃ駄目だよ。――包帯も替えなくちゃね」
と、七瀬が傍らに置いてあった包帯に手を伸ばす。
「七瀬、さん」

――聞いてしまったのは、私がげすだからかも知れない。
葉子は、呟いて、後悔した。

きっと、視線で判ったのだろう。七瀬は力無く笑って、
「――うん。二人とも」
「ごめんなさいっ! 私は最低だ、――ごめんなさい」
「気にしないで。――気にしないで」
七瀬は笑っていた。けれど、それは笑っているのだろうか?
なんて弱い顔。泣き出しそうに笑う。
罪悪感が、自分を支配した。放送に気を払っていれば、七瀬の傷を掘り返す事も無かったのに。
折原浩平、そして、長森瑞佳。本当に、良さそうな三人だったから――。
すごく、哀しかった。

214 :閑散。:2001/06/24(日) 15:01

「にしても、ありがとね、葉子さん。葉子さんがいなかったら、初音ちゃんも、彰くんも危なかった」
話題を変える風に、七瀬は今度こそ少し微笑みを浮かべて、そう云った。
「いえ。――私が無力だった所為で、結局あの二人を危機から救う事は出来なかった」
「ううん、皆感謝してる。葉子さんのお陰で、色々なものが救われたから――」
葉子は何も云えない。自分の、不可視の力が封じられた時の無力さを、身体で実感したのだから――
そこで、葉子は、はっ――と、気付いた。
まさか、自分は、まだ――
握り拳を作る。――そして、事態の深刻さに気付く。力が入らない。
不可視の力が、完全に封じられたままだ!
「駄目、まだ動いちゃ」
「そ、それどころじゃありません」
「それどころよっ」
強引にベッドにねじ伏せられる。少女の腕力にも対抗できないほど、自分は弱り果てている。
「寝ておいて。色々しなくちゃならないのは判るけど、今は身体休めて」
――七瀬はこちらから目を離しそうにない。
まあ、取り敢えず、あの機械を取りに行くのは、身体を休めてからでも良いか。
葉子はそう思って、目を閉じた。
あっさりと睡魔が襲ってきて、身体の力が抜けていく。

眠りに落ちた葉子の包帯を替えていると、耕一が背後に立っている事に気付く。
「――まだ、眼醒めない? 葉子さんも」
「ううん、今、醒めた。でも、すぐ寝ちゃったよ」
「そっか」
「うん」
「彰くん、は?」
「全然まだみたいだ」
「そっか」
そっか。七瀬はもう一度呟いた。

215 :閑散。:2001/06/24(日) 15:06
これからどうするんだろうな?
耕一は、ぼそり、と呟いた。
「――潜水艦が、あるらしいんだよ」
「潜水艦?」
「高槻が、死に際にね、そう云った」
――怪訝な顔をした耕一の、大袈裟な溜息が聞こえた。
「信頼できるのか?」
「判らないけど、なんとなく、信じてみたい」
「今まで自分たちを殺し合いさせて来た男だぜ? 俺達を弄んでいるだけかもしれない」
「――きっと、本当は、殺し合いなんて、させたくなかったんだよ」
あの人も。――七瀬は、哀しげな眼で、そう云った。
何故、あの男にそんな言葉をかけるのか、その理由は判らない。
けれど、それは、鉄パイプを振り回していた時の鬼神のような表情とはまるで違う、

優しい、慈悲の女神のような、表情だった。

「葉子さんと彰くんが目覚めたら、だから、捜しに行こう? 潜水艦を」
そう云う七瀬に、耕一は頷いた。
どうにかして、皆で帰りたい。
生き残っている人間すべて、傷つかないで、帰りたい。

――だが、すんなりとそうは行かないようだ。

ふと、耕一が振り向いて窓の外を見たのを訝しんで、七瀬は訊ねた。
「どうしたの?」
「結構――寒くなってきたな、なんか、身体が冷えるわ」
「そうね。割と昨日とかは暖かかったけど」
便所行ってくるわ――と、耕一は立ち上がり、部屋を出ていった。

七瀬は――嫌な予感を覚えながらも、それを止めなかった。

216 :拝火。:2001/06/24(日) 15:08

夢を見ている。
どうしようもない、浅い夢。
駄目だ、眠っちゃいけない。
彰お兄ちゃんの看病をしなければいけないのに。
声が聞こえる。夢なのか、現実なのか、判らない。
きっと、その中間だ。

「彰お兄ちゃん」
うん。ありがとうね、初音ちゃん。初音ちゃんのお陰で、だいぶ救われた。
「わたしの方が救われたよ。ずっと、ずっと」
好きな人を亡くして、壊れかかっていた僕に、意志を与えてくれたのは、君のお陰だ。
「わたしは、何もしてない――」
僕が君に色々、してやりたい、と、思わせてくれたから。だから、君のお陰だ。
だから、君に、新たな日常を与えてあげたかった。
「新しい、日常?」
そう、――この世界は、ほら、

――こんなに綺麗だから。

哀しいだろうし、つらいだろうし、――泣けばいい。死ぬほど泣けばいい。
けれど、僕は、
君に、いつか、どれだけの時間がかかっても良いから、
日常に戻って欲しい。
願わくば、その日常の中に、僕の姿があれば良かったとも思う。
「あるよ! 彰お兄ちゃんとの日常が、きっと――」

ありがとう。

やっぱり、初音ちゃん、すごく好きだよ。
――そして、唇に、何かが触れる感触。

さようなら。

217 :拝火。:2001/06/24(日) 15:08

初音は、夢から舞い戻った。――うたかたの夢。
夢は醒めた。
なのに、どうして?

「彰、お兄ちゃん?」

傍らにあった防弾チョッキも、サブマシンガンも、無かった。

そして、彰の姿も。

――風が、開け放しにされた窓から吹き荒れる。強い風が。
からん、と、音がした。
それは? 目を遣った初音が見たものは、彰の持っていた、小さなフォーク。
また、彰がいなくなってしまったのだと、気付いた。

――高槻は殺した。
後は、自分の親族を殺せば良いだけだ。
何処にいるのだろうか?
熱に浮かされた頭で、彰は懸命に考える。
何処でも良い、そんな事を脳は命じる。
何処かで見つけられるだろう。
何処かで。
足の赴くままに、彰は歩き始める。

少し狂ったようなまなざしで。

あてもない旅。けれど、終わりが何処かで来る旅だ。
止めるものは何もない。初音にも別れは告げた。

――だが、それを止める影がある。

218 :拝火。:2001/06/24(日) 15:14
「――行かせないよ」
声が聞こえる。深い、海の底のような、穏やかな音色。
「――耕一さん」
大柄で、逞しい腕を覗かせながら――耕一は、そこに立っていた。
「と云っても――君は、行くんだろうが。管理者をぶっつぶしに」
右腕には小銃。弾数がそれ程残っていないだろうサブマシンガンよりは、余程有効な武器だ。
「ええ」
肩を竦めて、彰は答える。
「俺が行かせない――そう、云ったら」
「通してください、と、頼みますよ」
云うと、耕一は、くすくすと笑った。
「止めるつもりなんか無い。ただ、ちょっと待って欲しいと思っただけだ」
「どういう――事、ですか」
「君は、自分の怪我の程を判っちゃいないようだ」
「もう治りましたよ」
「――完調じゃあるまい。その身体で、一人で、武装した兵士達と戦うなんて馬鹿げているよ」
「そうですね、馬鹿げている」
彰は自嘲気味に笑うが――耕一の顔は、真剣だった。

「だから、俺も付き合う。馬鹿は多い方が良い」

「――馬鹿げている。他の三人はどうするんです、あんたが守らないで」
「――これ以上、誰が彼女たちを殺しに来ると云うんだ?」
「それは、――そうですが」
もう、殺人者はいないだろう。それに、あの場所は意外に盲点になっていると思うから。
彰は、確かに反論が出来ない。

「初音ちゃんが云っていた」
――君が、新しい日常を、くれるんだ、ってな。耕一は呟く。

219 :拝火。:2001/06/24(日) 15:15

「君が生き残らなければ、それが一番哀しい事だって、判ってるか?」

「――結局、一人も二人も変わらないですよ。あんただって死んでしまうかも知れない」
「構わないよ。大切な人が三人死んだ。俺は、それの仇討ちだ。いなくなって悲しむ人は多くない」
寂しげな眼で空を見る。
それは、終わる物語の先を、覗いているかのように見えた。
「まあ、勿論死ぬつもりはない。――初音ちゃんが悲しむからな」
「ええ」

「脱出手段の捜索はあの三人に任せて、俺達は」
「――ええ」

「――これ以上人死にが増えない内に、全部終わらせよう」

「――ええ。犠牲は、あったとしても、僕達が最後であるように」
耕一は――肩を竦めて、笑った。
彰も、――笑った。

「行きましょうか」
「ああ」

七瀬彰と、柏木耕一は――肩を並べて歩き出した。
強い風が吹いていた。
何処へ続くとも知れぬ、冷たい風が。
何処に向かうかも知れぬ。
ただ、終わる物語を、正しく終わらせるために、
風の辿り着く場所へ向けて、歩き出した。


【柏木耕一 七瀬彰          ――管理者打倒へ向け、タッグ結成】
【鹿沼葉子 七瀬留美 柏木初音 ――市街地の一角で休息中】

220 :迷い(1):2001/06/24(日) 18:18
何度となく駆けた林道を、軽やかに走る人影があった。
差し込む朝日は、木々に遮られて櫛のように、彼女の行く手を照らしている。

木陰と交互に投げかける光を、横目で眩しげに見ながら千鶴は呟く。
(今日も、快晴ね・・・)
朝日は青空を約束するように輝いている。
清々しい一日の兆しが、なんだか白々しく思えて悲しかった。

ほどなく、小屋が見えてくる。
たいして遠くはないから、当然ではあった。順調なら往復三十分とかからない。
むしろ耕一へ謝罪するのに要する時間の方が長いだろう。
少しばかり、しゅんとして戸口に立ったそのとき。

死体が、あった。


(刺殺!?これは・・・浩平くん!?)
血液が逆流する。
僅かな金属音を立てて爪を開くと、素早く姿勢を低くして小屋に張り付き、あたりを窺う。

遠目に死体を観察すると、傍らに長い長い髪が添えられていた。
(あれは…七瀬さん…ね…)
自分もそれなりの長髪だけに、その行為の意味は解らないでもない。
彼女の無念が、身に染みる。
きっと今では楓のような髪形になっているのだろう、そう思って…しんみりとする。

そんな気持ちをよそに、髪はそよそよと風に揺れていた。

221 :迷い(2):2001/06/24(日) 18:19


小さく息をついてから、頭を強く振って気を取り直す。
静かに息を吸い、止めると同時に静かに扉を開いてみる。
反応はない。
音もなく進入し、階段を素早く上がると箪笥でカモフラージュされた戸口の前まで一気に
駆け抜ける。
そこで、千鶴は気抜けした。箪笥はずらされ、ドアは開いたまま。
部屋は、無人だったのだ。

(何者かに襲われ、それに追われて…?)
いや、全ての装備は運ばれている。
浩平くんの死から出発まではさほど慌しいものではなく、恐らくは逃げた襲撃者を追った、
というほうが正しいのだろう。

それは、どういう事かといえば。
30人を切った今でも、順調に殺人は続けられてるということだ。

迷う。
耕一と七瀬。
そして初音。
今、どこにいるのだろうか。
手掛かりは、何もない。

部屋の時計を見ると、時間はまだ、たっぷり一時間半以上残っている。
再びあてもなく、耕一を探しに行くのが正解だろうか?
それともやはり、一回戻って報告するのが筋だろうか?

そのとき、千鶴の迷いを断ち切るように屋内に入る人の気配がした。

222 :名無したちの挽歌:2001/06/24(日) 18:21
「迷い」です。
小ネタですが、必須なので。

223 :断罪(前編) (1/4):2001/06/24(日) 18:45
体の中が、熱い。
脳がうねるような感覚。
体が解けてしまうような感覚だ。
僕の新型爆弾。次々と地球へ爆弾を落としていく。
地球上の人々が阿鼻叫喚の悲鳴をあげ続ける。

まるでいつもの妄想の中にいるような感覚だ。
瑞穂ちゃんが、沙織ちゃんが、瑠璃子さんが、月島さんが…
天野さんが…みんなが、
「助けて!」
と口々に叫ぶ。

規模こそ小さいが、この島は、その世界によく似ていた。
あさましい、血で汚れた地獄の世界。
自分だけは助かりたい…と、口々に叫ぶ愚かな人達。


僕は、無慈悲にも最後の爆弾を、書いた。

224 :断罪(前編) (2/4):2001/06/24(日) 18:46
※(スペース3行開けよろしくです)

「………」
ゆっくりと目を開く。
見たことのない部屋、見たことのない場所、知らないベッド。

ゆっくりと朦朧とした頭で、あたりを見回す。
「気がついたのか?祐介」
男が、いる。
部屋の隅に置かれた事務用の机の前に座って。
物音に、椅子ごと回転させてこちらを見やる。
長瀬源一郎。よく知っている人物。
祐介の、叔父だ。
「……」
あれほど会いたかった叔父に出会ったというのに、心はまったくと言っていいほど動揺しなかった。

「ああ、そうか…
 そう硬くなるな。ここには、俺とお前だけしかいない。
 いろいろ話したいこともあるだろうが……とりあえず落ち着いてろよ」
別に動揺などしていない。至極落ち着いている。
寸分違わない自分の心音の音が妙に大きく聞こえる。
規則正しく血液を送り出す音。その振動までが体中を軽く震わせる。
「お前は、ここに来たんだな」
その台詞に祐介は自分の手を眺める。血の赤。
乾いた血の跡が、こびり付いている。
ようやく、祐介はその自分の置かれた状況を思い出した。
だが、心が騒ぐこともなかった。

225 :断罪(前編) (3/4):2001/06/24(日) 18:47
「祐介、ここは、ある選ばれた人間しか入れない場所だ。
 いや、正確には…ある選ばれた人間は入れない場所…とでも言うべきか」
カチッ……
ジッポを取り出し、煙草に火をつける。
紫煙が宙に舞った。いつもの叔父の銘柄の煙草だ。
昔、よく嗅いだ匂いが祐介の鼻をつく。
「胃爆弾…あったよな?」
紫煙をひとしきり吐いてからそう切り出す。
「取り出すと爆発する、遠くへと逃げると爆発する…そういう設定だったな。
 爆発する…という設定は放送で流れた通りだ。解除されている」
源一郎が美味そうに煙を吸った。
「確かに解除されたが…別の機能はいくつか残っている」
源一郎が口にだすことはなかったが、爆弾の現在位置捕獲センサーもそのひとつだ。
「今回のも、それだ。爆弾を体内に入れた者がこの施設に入ることは許されない。
 お前は、そんな所に迷いこんだんだよ」
「……」
源一郎は、『お前達』とはあえて言わなかった。
「……ここは、そんな場所だ。隔離施設、というわけだ」
祐介がここに入れた理由、それは長瀬という名に置いて、爆弾を取り付けられることのなかった
イレギュラーの参加者だからだ。
――他にもロボという理由に置いて取り付けることができなかった来栖川製のメイドロボの参加者が
  約2名いたが、死んだ、いや壊れた今となってはもはやどうでもいい話だ――
「お前は、俺達を、恨んでいるか?」
どのような意味が込められているかは分からないが、そう、聞いた。

226 :断罪(前編) (4/4):2001/06/24(日) 18:51
「汚いかも知れないな、俺の意見も言わないで」
黙っている祐介を見て、源一郎は力無く笑った。
短くなった煙草を銀色に鈍く光る灰皿でもみ消すと、すぐに2本目の煙草に火をつけた。
「煙草が多くなってイカンな……。学校ではガミガミ言われたもんだが、ここでは
 誰も文句は言わないからな」
「……」
「それはまあ、置いといて、だ。
 俺は、このゲーム、あまり好きじゃない」
ピクリと、祐介のこめかみが動いた。
「御老達がどう考えているかは知らないがね。
 少なくとも、俺と、フランクは好ましく思っていないはずだ」
正確には、フランクは寡黙すぎてよく分からんとこもあるがな…と笑った。
「正直、すまなかったな。言葉で言えば、陳腐かも知れないが。一応、言っておきたくてな」
「………」
「お前は、ゲームの参加者だ。だが、今までの話で気付いてると思うが、お前には爆弾が入っていない。
 爆弾は生死判定も兼ねている。お前と…あと彰だな。その二人は死んでも確認されない限り放送されない」
――ちなみに、セリオとマルチは、長瀬源五郎が別の手段で生死判定装置をつけていたので、それで判断している――
「お前と、彰、そしてもう一人の誰かの三人だけが生き残ったら、おそらくはこのゲームは終了だろうな」
判断する手段がないからな、と笑った。
「まあ、つまり、だ。おまえは――ここにいろ」
「……」
「……残念だが……」
かなり言葉を選びながら、ゆっくりと切り出す。
「お前と一緒に行動していた少女は、保護できなかった。
 とりあえず命に別状がない程度には手当てしてはやったが……
 保護は、できない。俺に出来るのは、お前だけだ」
悲痛な顔。祐介は、ただその歪む叔父の顔を眺めていた。本当に『ただ』眺めていた。

227 :命の教え - 1:2001/06/24(日) 19:25
不可思議であった。
少女の肩には縛り付けられた布――往人の銃弾による傷によるものか。
そこから未だに出ている事だろう、血が布を僅かに紅く湿らせていた。
だが。
――血の臭いが、薄い。
血を纏わせ。
機械のように、表情一つ変えず。
問答無用で人殺しを行っていたあのマーダーは何処へ?
無論、完全に"やる気"が失せたわけではあるまい――
その右手に握られた銃がそれを如実に語っている。
銃口が往人の額を捉える事は、まだ、無かったが。
「殺しは、止めたのか?」
疑問。
少女の目が、往人を見た。
冷たい目。
「止める――止められるとは言いません。一度、このゲームに乗った以上は。
 ただ、無駄な殺しは」
「……無駄な?」
「例えば」
すぅ、と右手が挙がる。
コルトガバメントの銃口が往人の額を捉えた――
「ここで引き金を引くような真似の事――です」
「………」
後ろでは。
恐らくは、晴子がその手に握る銃を少女に向けている事であろう。
人を殺そうとする想い――それが、殺気を起こさせる。
背中に伝わる、冷ややかな"何か"。
それが、それだ。
――分かりたくもない。
「人に銃を向けるような真似は関心しない――脅しとも取れる」
「―――」
「とりあえず、下ろしてくれ。後ろのオバサンに一緒に撃ち抜かれたらかなわん」
「居候――撃ち抜かれたいんか?」
失言だった。

228 :命の教え - 2:2001/06/24(日) 19:25

腰を下ろせば、風が強い事が分かった。
張り詰めた精神状態で歩き通せば、そんな事すらも分からないという事か。
無論。
今、目の前に居る者に神経を集中せざるを得ない状況であるというのは、間違いない。
どうやらそれは、晴子にとっても同じらしい――当然だ。
晴子には、観鈴を守る義務がある。
それに。
観鈴が、いつ人質代わりにとられるか分かったものではない。
万が一、そうなったら――
「良い風ですね」
少女――茜と名乗った――が、何と無しに呟く。往人は返さない――
「――血の、臭いがキツくてしゃあない」
代わりに晴子が返した。
返事と共に、少女を睨み付けた――睨み付けたのは、目だけではない。
銃口。
「答え……何人殺った?」
臭い。
殺した者だけがその身に纏う、死臭。
それが分かるというのか――不意に、往人は哀しく感じた。
この親子だけは、血に染まって欲しくないと思うのに。
少女は。
時折、その顔を歪ませる。
それは、頭の中で殺した人の顔が浮かぶ故にだろうか。
知る由も無い。
「――七人」

229 :命の教え - 3:2001/06/24(日) 19:26
じゃきっ。

「――止めろ」
「黙っとき、居候」
「もう一度言う――止めろ」
「――黙っとけ言うんか――こんなけったくそ悪いゲームに乗ったクズ目の前に置いて、黙っとけ言うんか!」
「――観鈴の前で、殺す気か」
横を見る――怯えている。
目の前の少女に?
――否。
隣に立つ――自分の"母親"に。
「くっ……」
「――殺すというのなら、構いません」
「!?」
銃を向けられた少女の声。
その声は、この状況に於いて、尚、冷ややかに。
「ただ、黙って殺されるわけにはいきません――約束ですから」
「――っ!」
気が付けば。
コルトガバメントの銃口は、観鈴を捉えていた。
これでは、撃てない――!
「精一杯、生き残るんです――例え、あなた達を殺してでも」
観鈴は――今度こそ、目の前の少女に怯えていた。
自分に向けられた銃口。
そして、恐るべきことに、全くと言っていいほど、それに殺意が感じられない事に。
「………」
無言。
晴子は銃を下ろした――同時に、茜の銃口も観鈴を放した。
それでも。
睨み付ける視線は、殺意を帯びている――。

230 :彗夜:2001/06/24(日) 19:31
書きました。

231 :指向性(1):2001/06/24(日) 20:05
社を離れるときは、あっという間だった。
坂を下り、林道を抜けて行く。
結花とスフィーは、結界に対する果てしない考察を更に加えていた。

そのうしろで黙々と歩く黒い影。
小脇に抱えた大きな本に、黒マントとトンガリ帽子。
時代を超えて現代によみがえる魔法使いが、そこにいた。

普段、ぼーっとしているようにしか見えないのだが。
来栖川芹香の頭脳は、高速回転していた。

ちょっと前に三人で行った、リストの分析を一人脳内で続けていた。
(…危険人物は、やはり能力者でしょうね)
気になる人物を思い浮かべ、再びリストを開く。

 >御堂。
 【強化兵】:戦闘能力のいくらかは制限されるが、技術的なものに衰えはない。

(…顔が怖い…)

 >国崎往人。
 【法術】:現状まま。

(…目付きが邪悪…)

気になるのは二人だ。
実は、オカルトに詳しい芹香は組織側の新興宗教についても若干聞き知っていた。
そのため、生き残っている不可視の力使いに危険人物はいないと判断した。
鬼の伝承についても知っており、柏木耕一も特に危険とみなさなかった。

232 :指向性(2):2001/06/24(日) 20:05


 「あれー?芹香さん、またそれ見てるのー?」
 「なになに、こんなのが好みだとか?」

 「……(ふるふる)」

…好みかどうかは関係ない。
個人的感情をよそに置くと、国崎往人が気になる。
まず、法術というのは…こういう人物が使うものだったろうか?
こちらを睨みつけるような三白眼がギラリと光っている。
それに…”現状まま”とは、どういうことだろうか?

 「うんうん、人は見かけによらないもんね」
 「そーだね、実際は、どんな人なんだろうねー」

 「……(ふるふる)」

…どんな人かは興味ない。
能力を制限する結界が島内にあるのは、これ以上なく確かなことだ。
そして、制限のかかり方にはムラがあり、纏めてみると指向性がある。

制限は技術や知識には全くかからない。
物理的能力に関しての制限はそこそこ。
精神的能力に関しての制限はかなり強い。

芹香の知っている法術は、間違いなく精神的なものを根幹に発するもの。
それが、現状まま?…現状?
現在の情況と、同じ?

…このリストを編集した際、すでに結界の影響を受けていたと?

233 :指向性(3):2001/06/24(日) 20:08


ピンと来た、という奴である。
そうであれば、この目付きの悪い青年から結界に関する何かが得られるかもしれない。
打つ手のない今となっては、唯一の頼りかもしれない。

 「またまたー照れちゃってー」
 「しょうがないなあ、前言撤回して探してみる?」

 「……」

 「どうせ社も見つからないしねー」
 「こっちには銃もあるし、なんとかなるよ!」

…相変わらず、会話は通じていなかったが。
それでも、国崎往人を探すという結論は満足いくものだったから…黙っておくことにした。


【009江藤結花 037来栖川芹香 050スフィー:033国崎往人捜索へ】

234 :名無したちの挽歌:2001/06/24(日) 20:10
「指向性」です。
細かくバカやってますが、結界関連のネタ整理も兼ねてます。

235 :名無しさんだよもん:2001/06/24(日) 22:42
テレホ前あげ

236 :幽霊さん?(1):2001/06/24(日) 23:09
この島は、悲しみに満ちている。
たくさん、たくさん辛い目にあって、たくさん、たくさん人が死んだ。
死体だって、どれほど見たか覚えてられないほどだ。

観月マナは、目の前の死体に手を合わせ祈っていた。
(死だけは、どうにもならないものね)
多くの医療従事者が諦めとともに漏らす感想を抱いて、開け放してある扉に向かう。
何の装備も持たない死体があるということは、誰かが持って行ったか、どこか別の
ところに-----多分、この小屋に-----放置したままと言う事だ。

鞄を開き、機関銃と拳銃に目をやってから考え直す。
苦笑を浮かべて念のために拳銃だけを鞄の外ポケットにねじこんで室内へ上がる。

ソファーが二つくっつけてある。誰か寝てたらしい。
キッチンへ向かう。食器がたくさん…洗ってある。乾燥棚の底は、まだ水滴が残っていた。
数時間前だね、と分析しつつ思わず、苦笑する。
こんなときでも、普段どおりに炊事してしまう人もいるんだな、と考えて。

箸の数を数え、それなりの人数がここを利用してたと推理する。
食料はあまり残っていない。利用者が持って行ったのだろう。
(国崎さんは…ここにいたかしら?)
求める人物の手掛かりを探して階段を上る。


きらり、と何かが光った気がして。

階段を上りきって曲がろうとした瞬間だったろうか、くるりと視界が回転し床が目前に迫っていた。
脚を掃われ、同時に首根っこをつかまれたまま床に叩きつけられていた。

マナはそのまま、背中に圧倒的な殺気を注がれ恐怖を通り越し硬直していた。
(もう、こんな化け物しか残っていないのかしら?)
そう思うのと同時に、あっさりと殺気は消え首の戒めが開放される。

237 :幽霊さん?(2):2001/06/24(日) 23:09


(解んないひとだわ・・・)
目の前で平謝りして、小さくなっている女性。
これが先ほどの化け物じみた殺気を発していた人物と同じだろうか?
「で…あなた、誰?」
気を取り直して、若干態度大きめに聞いてみる。

「柏木…千鶴、です」
しゅんとして黒髪の女性が答える。
「……はあ?」
柏木千鶴は、先ほどの死亡者放送で聞いた名だ。
生存している柏木は耕一と、初音だったと思う。

「初音さんじゃなくて?」
「はい」
「耕一さんじゃなくて?」
「…はい」
「幽霊さんじゃなくて?」
「……はい」

「じゃあ、なんでよ…」
マナの開いた口は、塞がらなかった。


【088観月マナ 020柏木千鶴を説教中】

238 :名無したちの挽歌:2001/06/24(日) 23:11
「幽霊さん?」です。
普通の人間から見た鬼、そして死亡放送の矛盾による驚愕ですね。
マナちゃんサルベージも兼ねて。

239 :断罪(後編) (1/6):2001/06/24(日) 23:41
「実際は、一部わずかに禁止区域があることを告げなかった俺達が悪かったんだが――」
まあ、それも罪のうちだな、言い訳にはならない。と呟く。
「本当は、な、祐介。俺達に、その少女――天野美汐を助ける権限なんてないんだ。
 たとえ、伝えてなかった禁止区域に触れた少女が、それで瀕死になったとしても、救済措置なんて、ない」
また、煙草をもみ消しながら、3本目の煙草に手を伸ばす。
「血を流したまま気絶していた彼女を助けたのは――俺の、独断だ。俺に出来ることはここまでだった。
 これ以上は、問答無用で消去されてしまう――というか、もし気付かれたら今の行動でも――お前を
 保護したことも含めてだな――俺は用済みとして処理されてしまうだろう。高槻のように――な」
紫煙が舞う。すでに閉めきられた空間は視界がかすむ程の煙に包まれている。
「高槻は、死んだよ。全員な」
最後に、そう付け加える。祐介に、動揺はなかった。
高槻が死んだことにも、『全員』という単語にも、反応はしない。
「止血して、見つからない程度の森の中に移動させるのが精一杯だ。
 それに、残念ながらあの少女も――」
生き残ることはできないだろう、と告げる。
「一応、念の為に、これは取っといたがな」
ポリ袋の中に、大量の氷と、手首。
「特殊なポリ袋だ。中はクーラーボックスになっている。この中の氷が解けることは2、3日はあるまい」
「……」
「このゲーム、日和見でいられる程甘くはないぞ。
 かつて開かれていたゲームでも、同じように反抗した者達がたくさんいた。
 だが、いずれもすべてたった一人になるまでゲームは続けられた」
例外で、前々回の優勝者、水瀬秋子が本当の高槻を惨殺した位のものだ――と、源一郎の言葉。
「だから、お前はここにいろ。ここにいれば、安全だ、少なくとも、お前はな。
 ここだけは、この禁止区域だけは、俺が絶対の存在だ。俺がここにいる限りは」
なにせ、この施設には俺しかいないのだからな。と自嘲気味に笑いながら――
ふう、と、溜息を漏らす。煙も一緒に漏れた。

240 :断罪(後編) (2/6):2001/06/24(日) 23:42
「ゲームが終われば、遅かれ早かれいずれはバレるだろう。
 バレたら、死ぬ。俺がな。だが、お前は大丈夫だ。ここにさえいれば。
 参加者は何をしたってルール無用、バレたところで生き残るために俺を利用したということで受理されるだけだ」
源一郎の、選んだ道だった。
「お前を保護できたのは奇跡に近い。爆弾兼発信機がなかったのだからな。
 もう、死んでいるかもしれない、とも思った。それは、彰もだがな」
運がよければ、彰もここに迷い込むだろう、とも言った。
「俺がこんなことを言うのは憚られるが…命は粗末にするな」
軽く笑いながら、それでも目は真剣だった。
「………………俺が、憎いか?」
「……」
祐介は何も言わない、何も答えない。
「無理にとは言わん。お前にも思うところがあるんだろうからな。
 お前が自ら選んだ道なら、信じて進む道なら、俺に止める権利はない」
反応こそないが、祐介の視線はずっと叔父の顔に注がれていた。
ただし、どこか遠くを見ているように、その瞳には何も映していないようにも感じられる。
それほど、祐介は無表情だった。
「俺にできることは、ここまでだ。あとは、自分で考えて、自分で決めろ」
再び机に向かいなおし、何らかの書類に筆を走らせはじめた。
それを最後に、あたりを沈黙が包みこんだ。

241 :断罪(後編) (3/6):2001/06/24(日) 23:43
(※3行開けです)


僕は、必ず天野さんを守ろうと、決めた。
だけど、手首だけの天野さんが、僕に優しく笑いかける。

   ソレハゲンジツ――

守れなかった。
今、僕はここにいる。こんな場所にいる。
瑠璃子さんが言った。

――長瀬ちゃん、才能あるよ。
僕に、そんな才能はないよ。
――でも、来てくれたじゃない。

   ドコニ?

僕に、電波は感じられないよ。
ここに来たのだって、偶然だったんだ。

   ココッテドコダ?

――偶然でも、来てくれたから、きっと通じてたんだよ。
僕に……そんな力はないよ。
――あるよ、長瀬ちゃんには。とびっきりの強い力が。
瑠璃子さんが、僕に何かを手渡した。
僕の、新型爆弾。体中を電波が駆け巡る。

   ソレガ――ゲンジツ

242 :断罪(後編) (4/6):2001/06/24(日) 23:43
沙織ちゃんが言った。
――本当は、みんな狂っているのかもしれないね。退屈な日常に。
  もう、先が見えちゃってるじゃない?学校行って、卒業して、就職して、働いて…
  みんな、刺激を求めているのかもしれない。
狂っては、癒して、狂っては癒して。その繰り返し、
退屈な現実から、何かの刺激を求めて。

   ソレガ――ゲンジツ

彰兄ちゃんが言った。
――日常は、そこを日常なのだと思えば、きっと、そこが日常なんだ。

この島の現実。みんな、刺激を求めているのかもしれない。
狂わないように、退屈な日常から、逸脱した狂ったゲームを。
天野さんも、彰兄ちゃんも、非日常の中に刺激を求めて、日常に変えた。
魂が、癒される。
体内を駆け巡る、電波で。

たいくつで、つまらなくて、それでも、優しかった日常、
そして、島と心の狂気の狭間で、ボクハユレル。

天野さんが言った。手首のない天野さんが、手首になった天野さんが言った。
――私は長瀬さんを信じます。今度こそ、最後まで……
  ――私は長瀬さんを信じます。今度こそ、最後まで……
    ――私は長瀬さんを信じます。今度こそ、最後まで……

   ソレガ――ゲンジツ。
   それが、現実だ。

243 :断罪(後編) (5/6):2001/06/24(日) 23:46
(※3行開けです)

ゆらりと、祐介の体が揺れた。ゆっくりと立ち上がる。
「………」
「やはり、行くのか。祐介」
源一郎は、机に向かったそのままの姿勢で呟く。
「自分で決めたなら、そうするといい」
どんな表情をしているかは分からない。だが、軽く溜息をつきながら。
「本当は、生きていてほしい。祐介、何かあったらいつでもここに来い。もちろん一人でな。……待っている」
再び、もう何本目か分からない煙草に火をつけた。
「ふぅーー……煙草は、死んでもやめられんな」
祐介が、叔父の真後ろに立つ。

「……それが、お前の答えか?」
源一郎の首に、巻きつけられた細いワイア。斬鋼線とも呼ばれる糸。
「……」
「俺の、罪だからな。いつかは、ケリをつけなきゃならん罪だったからな。
 いつか誰かに裁いてもらわなきゃいけない。
 お前が選んだ道ならそれもいいだろう。
 ただな……」
すっ…と源一郎が息を吸った。煙草の火種が、一際明るく輝く。
グッ…ほぼ同時に、首に糸が食い込む。血が、垂れた。
「お前は、泥をすすってでも生き延びろ。たとえ、つらくても…な。
 身勝手かも知れないが、それが――」
俺の願いだからな。

吐き出された紫煙と共に、鮮血が、舞った。

祐介が、目の前のピンと張られたワイアを見つめている。
それとも、その先のどこか遠くを。
張られた糸の真ん中から、付着した血が小さな玉を作って。

血溜まりに一つの雫が跳ねて落ちた。その音が、ひどく切なく響いた。

244 :断罪(後編) (6/6):2001/06/24(日) 23:50
燃える施設。
地面の墓石の横、地下への入り口から煙が立ち昇る。
その中から一人の少年。
無表情、そのままに。煙たさも見せず、咳き込みもせずに。
手には、銀色のワイアと氷詰めの手首。
「……」
あたりを見渡す。

特に何もない、特に感慨はない。
傍から見れば、そんな表情にもみえた。
あるいは、あまりの悲しみに何も感じられなかったのか。


一度、手の中にある氷漬けの手首を見つめて。
ゆっくりと、歩き出す。どこかに向かって。
地下から、黒煙が立ち上り、やがて消えた。


【長瀬祐介 氷詰めの右手首入手】
【天野美汐 どこかの森の中で気絶中】
【長瀬源一郎 死亡】

※美汐、止血処置はなされているので現状では失血死の心配だけはありません。
※施設、燃えました。
※祐介が何を考えていて、この次何をするかは次の書き手さんにまかせます。

245 :残された者達 - 1:2001/06/25(月) 00:23
――遅い。
男性のトイレがどれだけ長いかなど知る由も無い(知りたくもない)が、
それでもこれだけ遅いのはどういうことか。
30分は経っているかもしれない。
しょうがない。そう呟いて、七瀬留美は外へ続くドアを開けた。

―――。

それから10分。
市街地の中を走り回る姿。
探し求める姿。
だが、探せどもその姿は見つからず。
――そう、耕一は何処かへ行ったのだ。
三人を置いて。
「あのバカ……!」
走りながら、ぼやいた。
どうやら、耕一は「バカ」と認識されたらしい。
しかしそれは、同時に、慣れてきたということか。
そう。
浩平もそうだったのだから――。

246 :残された者達 - 2:2001/06/25(月) 00:23
その後もしばらく探し続けたものの、見つかる事は無かった。
はぁ、と深く溜息を付くと、とりあえず二人の下へ帰る事にした。
ドアを開く。
出迎えたのは――
「お姉ちゃんっ!」
――と、悲痛な声。
初音の声。
その顔を、涙でぐしゃぐしゃにしていた。
「お姉ちゃん、彰お兄ちゃん、見なかった!?」
「彰くん……?今、寝てるところなんじゃ」
「違うの――」
息を吸い込む。時折、しゃくり上げながら。
「居なくなっちゃったの……私が、寝てた間にっ」
「……彰くんも?」
何という事だ。
あの二人は、か弱き乙女を置き去りにして何処かに行ったというのか?
――初音は。
混乱した頭の隅に、辛うじて七瀬の呟いた言葉を引っかけた。
そう。
彰"も"と言ったのだ。
「彰お兄ちゃん、も?」
はっ、とした声。
しまった。失言だった――
ああ、もういい。七瀬は開き直る事にした。
「そうよ。どーもおかしいと思ったら、彰くんと一緒にどっか行ったみたいね、あのバカ」
「………」

247 :残された者達 - 3:2001/06/25(月) 00:23
耕一と、彰。
何の為に出ていったかなど、彰の行動を考えればすぐに分かる。
取り分け、初音はそれなりに頭の回転が速かった。
落ち着いた。少なくとも、「バカはいくらなんでもひどい」と考えられるくらいには。
――耕一は、彰を止めようとした?ならば、何故居ないのだ。
答えは簡単だ。
引き留める事は出来まい。ならば、少しでも負担を少なくしようと。
――耕一お兄ちゃんは、優しいからね。
そんな事を思った。
「探そう」
「へっ?」
初音の呟きに、忌々しげにぼやいていた七瀬が頓狂な声を上げた。
「探そう――ほっといたら、彰お兄ちゃん、死んじゃうよ」
「―――」
七瀬留美は思い出す――自分と同じ名字の男の、怪我の具合を。
見た目の凄さとは裏腹に、怪我自体は比較的大した事は無かった。
取り返しの付かないものも無い。
しかし――失血が酷い。
ここに来てからそう間も経っていない。体力が回復出来るわけがない。
その上で出ていった――
なるほど。死ぬ気に違いない。
ならば尚更、耕一の行動は怨めしい。
何故、止めなかった?
――ったく、バカね。
そんな風に思った。

248 :残された者達 - 4:2001/06/25(月) 00:24
「でも、どうするの?いくらなんでも、葉子さんは動かせないわ」
「――うん」
後ろのドアを見やる。あの奥では、葉子が休息を得ている筈だ。
腹を撃たれた。場合によっては、死に至る危険性もある。
無闇に動かせば、傷が悪化する。
しかし。
目覚めて、一人だったとしたら――どうするだろう。
眠りに落ちる前の行動を思い起こす。
慌てて起き上がろうとした――
起きて再びそれを行わない理由など無い。
どうする。
どうする?
「――葉子さんが起きるまでは、待機ね」
「そんな!」
悲痛な声。何と痛々しげな表情。
悪い事をしたつもりでないのに、悪い事をした気分にされる。
ある意味凶悪だ。
「分かってる――だけど、そんなすぐに死に急ぐとは思えない。
 バ――ああ、いや、耕一さんもいるしね」
「―――」
「……ここは、お兄さんを信じてあげましょ。ね?」
そう、優しく説き伏せる姿は、まさしく乙女。
――あたし、保母さんになろうかしら。
内心はこれであったが。

乙女の道は、遠い。


【七瀬留美 柏木初音 鹿沼葉子が目覚めるまで待機】

249 :彗夜:2001/06/25(月) 00:25
書きました。
耕一哀れなり。

250 :彗夜:2001/06/25(月) 01:55
毎度おなじみの訂正。

>>246
「彰お兄ちゃん、も?」→「耕一お兄ちゃん、も?」

別に台詞回し的にはそう大差無いのですが、分かりにくいので……。

251 :ポケット:2001/06/25(月) 03:38
 久々みた太陽に、心が洗われるような気がした。
 森のざわめきが聞こえた。葉の間から、暖かい太陽が僕らを照らしつづけていた。
 太陽というものはいいもんだ。心を明るくさせる。そして、僕、北川潤の隣には、女の子がいる。
 僕は、パソコンもCDもこんな戦場のコトも、なにもかも忘れしまいそうな気がしていた。
 ある意味これってデートだな。そう思うようにもなっていた。
「ジュン、きもちいーね」
 レミィがとびっきりの笑顔で言った。
「あぁ、そうだな」
 と僕はそっけなく答えた。
 前を歩いていたレミィは僕の顔に顔を近づけてきて、
「もっとちゃんと答えたほうがイイヨ! そのほうが女の子、喜ぶよ!」
 と自分の顔と僕の間に人指し指を立てて、言った。
 そうか、それなら、もっとちゃんと答えてやるかな。今度は。
 それにしても、レミィは俺のことをどう思っているのだろうか。そう思った時にはレミィは僕より10mほど前を歩いていた。
 僕は、気がつかないうちに、少し、立ち止まっていたようだった。

「はやくージュン!」
 こっちをむいて、手招きしてレミィが手招きをしていた。僕が軽く、小走りで追いついたら、レミィは又前へ一歩踏み出した。

 バキっという音が鳴った。
 その瞬間、レミィは地面に伏していた。
 目に入った、パンツの色は白と黄色のストライブだった。
 僕はそれをすかさず脳内メモリに格納していた。

「おまえ、何やってんだ?」
「イタタタタタ、チョットすりむいちゃったヨ!」
「なにもないとこでよく転げられるな」
「すごいでショ〜?」
「あまりすごいとはいえないな」

 そんなやり取りの後、2人で笑った。
 太陽は相変わらず、僕らを照らしつづけていた。

 僕らはこのとき、レミィのポケットの中で起こった重大な事件について、しるよしもなかった。
 今、僕の頭の中では、未だに白と黄色のストライブが何度もリピートされていた。

252 :死神を連れて - 1:2001/06/25(月) 05:33
「―――」
「―――」
沈黙。
国崎往人(033番)は、口を開く事も無く、大きめの石の上に腰掛けていた。
近くに居る三人は、皆、腰を下ろした状態で止まっている。
しかしその間を巡るのは、殺意、畏れ、疑念――
その渦中に立つ少女――里村茜(043番)は、のらりくらりと風を浴びている。
あれからどれくらい経ったことか。
茜の右手には、コルトガバメントが。
晴子の右手には、シグ・ザウエルショート9mmが。
そして、往人の手にはデザートイーグルが握られていた。
もし。
誰かが、己の獲物を持ち上げたなら――
恐らく、放たれる弾丸の数は一つではあるまい。
また、それに奪われる命も――
一つではあるまい。
完全な膠着状態。
複雑に凝り固まったパズルの中に、彼は居た。
二言三言、話をした。
茜の経緯――あれから、何があったか、など。
自分の経緯――神尾親子と出会った時の事、など。
その話の中で、彼女は。
氷上シュン――彼の死を知る。
自分が撃った相手の死。
その反応は。
そうですか――という一言だけ。
それでも。
その顔が、一瞬だけ悲痛に歪むのが解った。
――彼の願いは、叶ったのだろうか?
知る由も無い。

253 :死神を連れて - 2:2001/06/25(月) 05:34
茜は、この状況を楽しんでいるわけではない。
むしろ不快に思う。
出来れば、誰にも会う事無く済ませたかった。
だが、それが叶わぬのも当然の報いだと――天罰だと――そう思っている。
しかし、祐一は遅い。
教会で何があったか、知る由は無い。
「誰」から「誰」を助けるのかも知らない。
それでも。
何も聞かなかった。
必ず帰ってくると思っている。
ヘタレだが、約束は守る男だ。遅くとも。
いや、待て。
そもそも約束なんてしただろうか?
そう言えば、そんな事を口にした覚えは無い。
――しておけば、良かったかもしれません。
何と無しにそんな事を思い――少しだけ、目を閉じた。

254 :死神を連れて - 4:2001/06/25(月) 05:34
すぅ、と目の前の少女が立ち上がる。
晴子は、迷わず銃口を向けた――狙うは頭。
躊躇いは無い。
この子を守る為なら――。
その為に、怯えられようとも――。
「大丈夫です――撃つ気はありませんから」
「――信用出来んわ」
言い放つ。
しかし少女は臆せず、自分の鞄に銃をしまい込んだ。
他に武器は見当たらない。
それでも。
「人を――待ってるんです」
踵を返す。
「ここで、のんびりしてるわけにはいきませんから」
「呑気なもんやな――後ろからブチ抜かれるかもしれへんのにか?」
「――撃てませんよ、貴女には」
冷ややかに、言い放つ。
少しだけ振り向いた顔から見える瞳は、冷たく。
「なっ……」
「守る者があるから、撃つ――それと同時に、守る者があるから、撃てないんです」
隣を見る。
自分の娘が――観鈴が、晴子を見ていた――
僅かに塗れた瞳に映る、自分の顔。
恐ろしい。これが自分の顔か。
「お母さん……」
願うような呟き。
――殺さないで――お願い――
目が、そう語っているようで。
「くっ……」
敢え無く、銃を下ろす。

255 :死神を連れて - 4:2001/06/25(月) 05:39
それを見届け、茜は前を見た。
森へ。
帰ってくるだろう人を、待つために。
「それでは――」
「ちょっと待て」
後ろから、声。
男の声。
振り向けば――デザートイーグルの銃口が、己の額を捉えていた。
――今日はよく銃を向けられる日ですね……。
そんな事を思い、息を吐く。
「勝手に行かれると困る。仲間がいるかもしれないからな」
「――じゃあ、どうするんです」
仲間などいない――そう答えても良かったが、恐らく信用はされまい。
待っている人、というのは嘘と思われている可能性もある。
第一、"人殺し"の言うことなど誰が聞こう?
――往人の出した提案は、極めて単純であった。
「俺達と一緒に行動してもらう」
「……本気ですか?」
「かなり本気だ」
「居候――マジで言うとるんか」
晴子は、半ば呆れた様子だった。
何を言うかと思ったら、それか?――といった感じだろうか。
「こいつが誰かを狙うにしろ、後ろに俺達が居ればそれも出来ないだろ」
「でも、私達の誰かを狙ってきたら――」
観鈴が、若干怯えた様子で呟いた。
銃口を向けられた恐怖は、未だ抜けきっていない。
「その時は――まぁ、穴だらけになるだけだな。
 まさかそんな危なっかしい真似はしないだろう――で、どうする」
問い掛ける。
無論、選択権は無い――向けられたデザートイーグルの銃口が、そう語っていた。
溜息一つ。今度は、酷く長く。
返事の代わりに、再び自分の居た場所に戻った。


【043里村茜 033国崎住人、023神尾晴子、024神尾観鈴と行動決定】
【祐一の到着タイミングは次の書き手に任せます】

256 :彗夜:2001/06/25(月) 05:41
書きました。
膠着状態だったようなので、動けるようにしました。

――で、早速訂正。
言うまでもありませんが、>>254は「死神を連れて - 3」です……。

257 :影の世界へ(1):2001/06/25(月) 11:16
もしも、この大きな木に登ったなら。
二階の窓から、なんだか間の抜けた、滑稽な様子を見ることができる。

ベッドに腰掛けた子供が腕を組んで、成人女性を詰問する姿がそこにある。

「じゃあ、なんでよ…」
ぽかんと口を開けて思考を停止しかけるマナに、千鶴は答える。
監視のこと。発信機のこと。爆弾のこと。死亡放送のこと。
耕一と七瀬、そして初音のこと。

「ふーん…」
マナ自身も、高槻の所在を予測するにあたり、管理体制を考察したことがある。
無線の隠しカメラと、その情報を集めて送る送信施設の存在。そう考えた。

しかし、この部屋ひとつに関しても、死角なくチェックすることはやはり不可能だ。
それに発見されれば壊されてしまうだろうから、どうしているのだろうとは思っていた。
「衛星、ねえ…」
ちょっと話が馬鹿馬鹿しく大きい。このゲーム自体、そうなのだが。
しかし…宇宙スケールとは…。

ひとしきり感心した後、なんとなく立ち上がり、上を向いて考えてみる。
「…ま、関係ないけどね」
結論は実にあっさりとしたものだった。
「あたしは、もう誰かと戦う気もないし。
 高槻を倒そうと思ったこともあるけど…結局追い出されちゃった下っ端でしょ。
 それに今、あたしが吐いたら…不自然だもの」
そうでしょう、と確認するようにマナは言った。

258 :影の世界へ(2):2001/06/25(月) 11:18


なるほどこの娘は頭がいい、千鶴は感心しながら答える。
「…そうですね、せめて相打ちの形をとらないと」
管理の抜け道を通る条件を、二人で確認してみる。

全てを確認した、そう思ったところでマナが鞄を手にする。
「それじゃ、先に行くわ」
「…はい」
そうだ。
自分は、この少女と同行するわけにはいかない。
行けば遠からず衛星に発見されるだろう。
この少女に限らず、全ての生存者と同行することはかなわない。
…少なくとも、日の当たる場所では。

戸口を出ると、マナは振り向かず天を見つめて言う。
「それじゃ、行くから。
 耕一さんと七瀬さん、それに初音さんに会ったら無事を伝えておくわ」
「はい、お願いします」
「だから…あなたも頑張ってね。
 あたしの分も、お願いするわ」
「…はい」
機関銃(これが”あたしの分”らしい)を手に、千鶴は頷いた。

何のために管理システムを欺いたのか。
それは、もちろん管理側と対決するためだ。
他に何の利点があるだろう?

脱出にせよ。
打倒するにせよ。
千鶴達は、三人だけで戦う他に道はない。
光の世界を避けるように、影の世界を行く他に道はない。
…それは覚悟していたことだが、やはり辛いことかもしれない。

帰路を考えても、時間はまだ余裕があった。
それでも、なんとなく寂しくなって、千鶴は駆け足で学校に舞い戻った。

259 :影の世界へ(おまけ編1):2001/06/25(月) 11:31


そのころ、教室の一角には巨大なバリケードが築かれていた。
扉を封鎖するように積まれた机が天井まで達しようとしている。
「梓さん、ボク疲れたよぅ…」
「これで最後だから頑張れって…よっ…と」

これでひと安心だろ、そう言って梓は床に座り込む。
それに習って、あゆもぺたんと座る。
「千鶴姉、遅いなあ」
「そうだね…」
二人で時計を眺める。
そのとき、あゆのお腹がくーと鳴った。
「ははっ、あゆ、ホントに食いしん坊なんだな」
「うぐぅ…」
梓は笑って、恥ずかしそうに小さくなるあゆの頭をくしゃくしゃと撫でた。

「まあ最近、なんだかんだでマトモなもん食ってるしね。
 初音の料理も、なかなか上手いもんなんだよ」
「へぇー…」
それを受けて、あゆは驚くべき一言を発する。

「ボク、千鶴さんの料理も食べてみたいなっ!」

260 :影の世界へ(おまけ編2):2001/06/25(月) 11:33
「 …… 」
「?」
完全な空白が、そこにあった。

「あー…アタシ、ちょっと寝るわ」
「えっ?」
あゆに背を向けて、ごろんと寝転ぶ梓。

「お、おいしいんじゃないのっ?」
「うん、そう思っていればいいよ。じゃあ、おやすみ…くー」
「え、えっ、そう思っていればいいよって、なにっ?」
「くー」
「気になるよう…梓さんっ、梓さんっ…」


その半時後。
扉を開くなり押し寄せる机に、あやうく下敷きにされかけた千鶴が
梓を叩き起こす頃には、あゆは二度と千鶴の料理を食べたいとは
言わないようになっていた。

…あゆは知っていた。
ちゃんと食べれるものを使っても、謎なものになる場合がある事を。


【017柏木梓 020柏木千鶴 061月宮あゆ 再び合流】
【088観月マナ 発信機情報を胸に往人、耕一&七瀬、初音を捜索】
※マナの機関銃は千鶴を経由してあゆの手に?
※耕一&七瀬、初音の捜索を諦めたわけではありません。
ただし発見しても戦闘中など、ここぞという時以外は遠くから会話
する程度に抑えるでしょう。

261 :名無したちの挽歌:2001/06/25(月) 11:35
>>259>>260の間、一行開けでお願い致します。

「影の世界へ」です。
おまけが長いんですがw

262 :名無しさんだよもん:2001/06/25(月) 11:52
ちゃんと食べられるものでできているかも怪しいけどな。オレンジ色の謎のもの。
つーか人のこといえないじゃん、あゆあゆ(藁

263 :才子。:2001/06/25(月) 18:10
――歩き始めてしばらくしてから、耕一は息を吐いた。
高槻を殺し、後は、長瀬一族――彼らを殺せば良いだけ、の筈なのだが、
そもそも、彼らは何処にいる? この島の付近にいる事は間違いないはずだが。
見晴らしのいい場所? それとも、別の場所?
考えながら、耕一は呟く。
「何処、行こうか」
「そうですね……」
彰も答えられない。彷徨い歩く事、効率は良くない事は判っている。
何処か、目星を付けなければ、

――眩暈。

「大丈夫か?」
「――大丈夫です」
二時間か少し眠ったとはいえ、それでも完調に至るわけがない。
血は多く流れている。どうしようもないくらい多く。
「いや、やっぱり休んでいこう」
「大丈夫ですよ」
ムキになる彰を諭すように両手を広げ、耕一は薄く笑った。
「別に君のためじゃない。これから何処に行くかを考えなくちゃいけない、まあ、二人のこれからの問題だな」
彰は小さく息を吐く。明らかに不満げな色を見せる彰に、少し低い声で耕一は云う。
「格好付けるなよ。満身創痍で、無理をして戦って、それで死んだら、それを格好付けてると云うんだよ。
 映画やなんやでは、ハードボイルドっていうのか? 血を流しながら、それでも戦う姿は、確かに格好良いよ。
 けどさ、今、この場合に置ける格好良さって云うのは、少しくらい時間を食ってでも、あまり無理をせず、
 戦って――生き残る事だろうが。まあ、それを云うなら、もう少しあそこで休んでからでも良かったんだが」
――判っている、と、彰は呟く。けど、
「判っているならほら、そこの木陰で休もう」
耕一はそれより先を云わせず、彰の手を牽いた。
彰は息を吐きながらも――耕一の言葉に従う事にした。
自分とは同年代と思えぬ逞しさだ――少し、羨ましい。彰は思った。

264 :才子。:2001/06/25(月) 18:15

「まず――俺達は考える事が必要だ。主催者がこの近くにいるのだ、という事はまず、前提だ」
森の中、昇った太陽が眩しい。巨大な岩の影に座り込むと、耕一は喋りだした。
「近くにいなければ、まあ、どうしようもない」
「――奴らは、必ず、少なくとも数人は、この島の何処かにいるはずだ」
彰は断言した。その強気に不思議な反発を覚える。
「どうして判る? 例えば、非常識だが、上空から衛星を使ってカメラで監視している、っていう可能性だってある。
 脱走者がいれば、爆弾を爆発させてしまえば良い。爆弾を解除した、とは云え、体内に爆弾はあるんだから――」
そこまで云って、――前にあった時、彰が云った言葉を思い出す。
「爆弾は、決して爆発しません。僕が、爆破装置を破壊したから」
彰は少し笑って云った。
「――それは、本当に、本当なのか?」
「まあ、僕は見かけが貧弱だから、信じられないかも知れないですけど」
「いや、信じる、信じる――そうか、それなら」
「そう――喩え監視を、上空からするにしろ、逃げ出したら、上空からではそれを止めるのは難しい。
 ミサイルかなんかでもあれば別ですが、これにも勿論、反論がある。
 上空に、そんな大がかりなものがあると、仮に仮定しても、です。
 こんな殺し合いは、倫理的に見て、当然間違っている。どんな人間だってそう思うし、
 アメリカにしろロシアにしろ、これを止めようとする国は確実にあるでしょう。
 にも関わらず、それが今まで無かった。――これを止めようとする国が。
 この殺し合いのスポンサーがどうであれ、一つの国を超える力、そんなものがあるとは考えにくい。
 圧力を掛けて、殺し合いをするのを許容せよ、と云って、それで許容する程、アメリカは弱くないでしょう。
 じゃあどうして誰も助けに来ないのか? 決まっている、そもそもこの殺し合いがあるのだ、という事実を、
 アメリカやロシアは知らないわけだ、と考えるのが自然だ」
饒舌に喋る彰。熱に浮かされて喋っているにしては、あまりに理路整然としている。彰は続けた。

265 :才子。:2001/06/25(月) 18:16
「つまり、その監視用航空機は――レーダーに映らない、特殊な、僕は詳しくは知らないんですが、
 ステルス? とでも云うんでしょうか、そういう形態をしている、と考えられる訳です。
 だからこそ、ミサイルは撃つ事が出来ない。脱走者に向けてミサイルを放てば――レーザーでも、
 とにかく、上空から人一人を狙って殺せるような形態の武器であれば何でも良いんですが、
 ――明瞭とした自信はありませんが、そう云うものを使うと――きっと、この馬鹿げた殺し合いが、
 ここで行われているのだと、何処かの国は勘付いてしまうでしょう。それでゲームは終わりだ」
「だから――島に、管理者がいる必要があるわけだ。泳ぐなり、筏を作るなりして逃げようとする参加者を、
 この島の何処かから、殺さなければならないから」
「そう云う事です」

そもそも、と彰は続ける。
「――上空から監視、というのは――実は、そこそこに馬鹿げた事だとは思いませんか?
 上空で、確実に安全な場所で、鑑賞ならともかく、監視。それに、確実性があるとは思えない。
 だから、もっと確実な方法がある。発信器を、体内ばくだ――」

――その時、思い出したかのように、彰は呟いた。

「――待てよ? 確か、あの時、僕は――おかしいぞ、どうして、僕は、生きている?」
目を見開いて、彰は――何か、希望のような光を、見た。そんな風に見えた。
「ど、どうした? 何か」
「発信器が、生体センサーが体内爆弾に付いているのだとしたら――そうか、そうだ――!」

「僕は、最初から死んでいたんだ!」

――意味が、判らなかった。熱で頭がおかしくなっていたかも知れないと――そう、思った。
「耕一さん! 僕たちは、僕たちを殺せるんだ!」
「な、――何を」
「そうか、僕がまだ生きている意味が分かった。少なくとも、僕の中には、最初から爆弾がなかったんだ。
 ――そうか――他には――多分、僕と祐介には、最初から無かった筈だ、つまり、僕と祐介が、――そうか!」

266 :才子。:2001/06/25(月) 18:16
「訳が分からない、説明してくれ、彰くん」
興奮した様子の彰は、はっとしてこちらを見ると、まだ興奮さめやらぬ、と云った体だ。

「すいません――今から説明します。ああ、そうか、そうだったんだ。
 ――高槻が、僕たちの身体の中に爆弾を入れていたのは多分、事実です。
 そして、その爆弾には、生体反応センサー、いわゆる――生死を判定する装置、
 そして、現在位置を捕捉するセンサーが、少なくとも備わっている、と考えられます。
 体内に仕込んでおいて、更に、吐いたら爆発する、としたならば、誰がそれを吐こうとするでしょうか?
 それで、僕たちは管理者にすべての情報を吐き出していたわけです。
 そう考えると、色々な事が考えられる。
 僕は爆破を操作する装置を破壊した。結果、吐いても、爆弾は爆発しなくなった。
 どういう意味か、判りますか?」

「――まさか」
「爆弾が体外に出れば、どうなります? そう――その吐いた人間は――」
「――死んだ事になる」
「そして、管理者側に捕捉される事もなくなる、というわけです」
それで、きっと――戦える。おそらく、圧倒的に有利に。何処に敵がいようとも。
彰は、強く、強く言った。
思わず身震いをした。
この、自分とそう変わらぬ年齢の青年は、恐ろしく賢かった。
これ程までに、同年齢で差が出るものなのか?
思わず、溜息を吐いて――目の前の青年に、畏敬の念を払った。

267 :才子。:2001/06/25(月) 18:20
だが、耕一は逡巡する。
今、自分が爆弾を吐けば、初音達は――どう思うのだろうか?
特に、初音は、――これで、親族を全員失ってしまったのだ、
という、そんな苦しみを――体験せねばならないのだ。
一旦戻る、と云う手もあるだろうか? だが――

「そうか――叔父さんは、僕たちに、そう云うつもりで――」
彰は、フランクの顔を思い出す。
高槻と対峙し、確かに奴は、自分の爆弾を爆破させた。
なのに、自分は死ななかった。――つまり、自分の体内には、
最初から爆弾など入っていなかったと云う事なのだ。
爆弾も入っていなかったのなら、――僕は、最初から、死人扱いだったのだ。
それこそ、上空からなり、自分だけが監視されていたのだ。
思えば、あの、爆破装置へ向けての突破も、――爆弾が入っていれば、確実に失敗に終わっていた。
どうしてなのだろう? 何故自分には、爆弾が入らなかったのか?
理由は判らなかった。

――けれど、推量は出来た。

きっと、彼らは、自分に、祐介に――止めて貰いたかったのだ。
この、どうしようもない、くだらない戦いを。

判っているのだ。彼らも、この戦いがくだらないものだと、――判っているのに。


【七瀬彰 柏木耕一 作戦会議。爆弾についての考察完了。序でに少し休憩中】

268 :修正(1):2001/06/25(月) 20:17
「ごめんくださーい、柏木さんですか? 」
その中年男が教室のドアを開けて入ってきたとき千鶴は戦慄した。
(わたしも梓も入ってくるまで気づかなかったなんて、どういうこと? )
とっさに千鶴と梓は立ち上がりあゆを男の視線から隠すような位置に動く。
(ナイス、梓)
(ナイス、千鶴姉)
まさに姉妹であった。
その男は右手に人間の腕ほどの太さで1mほどの木の枝を前方に突き出すように構え、左手の拳銃
を後方に引いて構えていた。

(一気に飛びかかるにはあの枝が邪魔ね)
(一気に飛びかかるにはあの枝が邪魔だな)
千鶴と梓は横目でお互いを見て小さく苦笑する。またも姉妹そろって同じようなことを考えて
いるとわかったからだ。
「あなたは誰です? 何の御用でしょうか?」
千鶴は撃つ気ならもうとっくに撃っているだろう事、またこの男に隙が出来るまで時間稼ぎと
してこの男と会話する事にした。
「申し遅れましたが私長瀬源二郎ともうします。解ると思いますがわたし、管理者の一人です。
いやー、柏木さんは足が速いですねえ。小屋からでてくるところ偶然見かけたんですが、途中で
引き離されて見失っちゃいましてねえ。おかげであなた方を見つけるのに今まで時間がかかって
しまいましたよ。いやすみませんね」
そう言った男の口は笑っていたが眼は冷たい輝きを放っていた。
「だから何の用なんだい? 簡潔に言ってくれよ」
梓がいらただしげな口調でいう。

269 :修正(2):2001/06/25(月) 20:18
「梓!!」
千鶴はたしなめる。
(あせらないの。時間稼ぎなんだから)
(わかったよ、千鶴姉)
アイコンタクトで千鶴と梓は意志を疎通する。
「ああ、やっぱりそちらは柏木梓さんでしたか。とするとこちらは柏木千鶴さん。
ちらっと見えた小学生の女の子は月宮あゆさんで間違いないみたいですねえ。写真
は見ましたけど人違いしたら大事になりますのでね」
千鶴は失言を悟った。
(うぐぅ、ボク小学生じゃないよ)
いつものあゆならばそう口にだして言い返していただろうが、さすがのあゆもこの状況で
口に出さないだけの分別はあった。
「いやねえ、あなたがたもう死んだことになってますよね。なのに生きてる。いわばあなた方
はこの島では幽霊です。そういう居ないはずの人間によって起こるはずの無い出来事、つまり
イレギュラーが起こるのは私たちのような管理者達にとって不都合だと思うんですよ。ま、これは
わたしだけの見解ですがね」
「一つ聞いていいかい?」
梓は源二郎に問いかける。
「あたしたちが生きているって事もうあんた達は知ってるのかい?」
「いいえ知りませんよ、あなたがたイレギュラーを修正するのはわたしの独断ですからね。
幽霊じゃない正規参加者を殺すのは許されないのは解ってますが、あなた方イレギュラーの抹殺も
微妙ですからねえ、報告するわけにはいかないのですよ」
そこまでいったところで源二郎は最後通牒を述べた。
「いけませんね、どうも私は老の時といい、おしゃべりが過ぎるようで。
ではみなさん、死んでください」
ちょっとそこまで散歩に誘うかのような気楽さで源二郎は言った。

270 :修正(3):2001/06/25(月) 20:20
(うぐぅ、このままじゃみんな死んじゃう。ぼくもう親しい人の死なんか見たくないよ)
あゆは次の瞬間、短機関銃をつかみ、衝動的に千鶴と梓の影からでていた。
「おじさん、動かないで! 動くと撃つよ!」
あゆが短機関銃を構え、源二郎を狙っていた。だがその手はぶるぶる震え、銃口は上下
に揺れていた。
(とっさに体が動いちゃったけど、この後どうしよう?)
源二郎はあゆが反応するより速く発砲する。銃弾は偶然あゆの短機関銃の銃口に飛び込み、
銃自体を破裂させる。その衝撃であゆは気絶する。
「おや、話しに聞いたことはありましたが、実際に起こるとは。お嬢さん、運がいいですね。
銃が破裂しなければあなたの頭が破裂してましたよ。おや、もう聞こえてないようですね」
その瞬間源二郎の注意があゆにそれたことに気づき、梓はポケットから手を抜き短く振る。
掌一杯の小銭が源二郎の顔面を襲う。とっさに源二郎は両手で顔面をガードする。人間自分の
顔面に突然何か飛んでくればそう反応する。それと同時に千鶴は源二郎に飛びかかる。遅れて
梓も飛びかかる。それに気がついた源二郎は狙いもそこそこに勘だけで発砲する。先に飛びか
かった千鶴には命中せず、遅れて飛びかかった梓に命中する。
 一番最初に敵に突撃する人間には何故か弾丸が当たらない。2番目に突撃する人間によく当たる。
いまだに解明されぬ戦いの謎の一つであった。

轟音とともに胸に一発。奇しくもそれは梓がここ学校で以前撃たれたのと同じ場所だった。
「かはっ……」
口元から血が滴る。
(また防弾着に助けられたってわけかい・・・・・・)
仰向けに転がって床をすべる。 立ち上がろうと全身に力を込めるが、あばらが折れたのか、
呼吸する度に激痛が走る。歩くのがせいいっぱいだった。

271 :修正(4):2001/06/25(月) 20:22
源二郎は間近に接近した千鶴をみてもう発砲する時間は無いと判断、右手の木の枝を千鶴の頭
めがけて振り下ろす。それを千鶴は左手の鉄の爪で受け止め、間髪をいれず、右手で枝をつかみ
枝を押さえると鉄の爪を源二郎の首筋めがけて振りおろす。源二郎は前蹴りを放つ。千鶴は
カウンターを喰らうと判断し、枝を離してバックステップする。そして源二郎の蹴り足を切り裂こう
とする。源二郎はかわされたと知るやいなや素早く足を引き戻す。鉄の爪は空を切った。
源二郎はがら空きの頭上めがけて枝を振り下ろす。それを千鶴は身をひねってかわし、そのまま
源二郎の懐に踏み込み、心臓めがけて突きを放つ。源二郎は枝を引き戻し、横に払う。そのまま
源二郎の横を通り過ぎる。続く源二郎の横殴りの一閃を身を沈めてかわす。体勢がいれかわり
梓の姿が目に入る。よろめきながらこちらに近づいていた。戦意は失われていなかったが
戦闘は無理なことを千鶴は理解した。
「これが鬼の力ってやつですか。想像以上ですねえ」
不意に攻撃を止め源二郎は軽口をたたいた。千鶴は答えず違うことを言う。
「梓、あゆちゃんを連れてここから逃げなさい!」
梓は激痛をこらえながら、それでもしっかりした口調で叫んだ。
「千鶴姉をおいていけるかよ!!」
「議論している暇はないわ。これは姉としてではなく、柏木家の家長としての命令です。
あゆちゃんを連れていきなさい!!」
「でも!!」
「聞けないならあなたはわたしの妹ではありません。これで最後です。あゆちゃんをつれて
いきなさい!!」
「わかったよ、死ぬなよ、千鶴姉!!」
その声に千鶴は右手の親指を立てて答える。
「ぱちぱちぱち。いやあ、感動だ。姉妹涙の別れってやつですかな。待ったかいもあったもんで
すなあ。だが残念ながら柏木さん達をここで皆殺しにして幕をおろさなければいけないんですよ。
悪の勝利ってやつですな。観客はぶーいんぐを言うかもしれませんが、わたしもこれが仕事なも
のでつらいんですよ」
言い終わるやいなや源二郎は千鶴に向けて発砲する。しかし、その銃口の先に千鶴は居なかった。

272 :修正(5):2001/06/25(月) 20:25
言い終わるやいなや源二郎は千鶴に向けて発砲する。しかし、その銃口の先に千鶴は居なかった。
一瞬早く、千鶴は源二郎めがけてスライディングを放ったのだ。源二郎はジャンプし千鶴の足を
かわし、空中から枝を振り下ろす。床を転がりながら、千鶴はその枝をたたき斬ることだけを狙っ
て全力をこめて爪を振るう。音を立てて枝の中央から先が斬り飛ばされる。千鶴は
回転を利用して立ち上がり、またも枝を狙う。今度は手元以外残らなかった。まさにおそるべき
力であった。源二郎は薬物強化された自分の体で鉄の爪を受け止めることは不可能だと悟った。
薬物で強化された源二郎にとっても千鶴の斬撃は銀色の線としか見えない。リーチにおいて
遜色ない枝があるならともかく、無い今となってはかわすのが手一杯で反撃など思いもよらなかった。
源二郎は身をひねり、あるいは沈め、千鶴の嵐のような斬撃をかわす。完全にはかわしきれず
源二郎の目前を銀色の線が通過する度、源二郎の服が裂け、髪の毛が斬り飛ばされる。
千鶴は源二郎の左肩から右脇腹にぬける逆袈裟の斬撃を送り込む。源二郎はスウェイバック
でその斬撃を紙一重でかわす。完全にはかわしきれず、源二郎の服が裂け、血がにじむ。
だが皮一枚切れただけのかすり傷である。痛覚が麻痺している源二郎にとってなにほどの
ダメージではなかった。
千鶴は左脇下に位置する自分の左手首を返す。その瞬間千鶴の左腕が一瞬止まる。視界の端に
それをとらえた源二郎は、人体の構造上次の斬撃は横殴りの一閃以外無いと予測し、右手の枝の
残りを千鶴の顔面めがけて投げつけ、千鶴に向かって一気に踏み込む。千鶴は頭を振って枝をかわし
横殴りの斬撃を繰り出す。だがかわすことに注意をとられたため斬撃が一呼吸遅れる。その間に
源二郎は千鶴のふところに飛び込んでいた。源二郎は右腕を上げ、自分の右脇で千鶴の左腕の上
腕部を受け止める。遠心力の乗った先端部は受け止められなくても遠心力が乗らない根本ならば
受け止められる。

273 :修正(6):2001/06/25(月) 20:26
 口で言うのは簡単だったが、勇気と素早い踏み込み、どちらが欠けても出来ない受け止め方だった。
源二郎は上げていた右腕で千鶴の左腕をはさみこみロックする。千鶴は自分の左腕がロック
されたこと、源二郎とあたかもキスする時のよう密着している事に気づくと、とっさに頭突き
を繰り出す。1発、2発。それと共に源二郎の顔面が血に染まり表情がゆがむ。3発目が当たる
前に源二郎は左肘をいれて顔面をガードする。それと同時に源二郎は下も見ずに右足で千鶴の
左足の甲を踏みつけ、そのまま踏み折る。ここは肉も薄く、骨ももろい。簡単に骨が折れる、人体の
急所の一つであった。
足から伝わった激痛に千鶴は獣のような叫びを漏らす。源二郎はそれにかまわず、顔面をガード
していた左腕を自分の顔面の左横に振りかぶり、千鶴のこめかみに左手に持った拳銃のグリップ
をたたき込む。千鶴は意識が飛び、崩れ落ちてゆく。源二郎は千鶴の左腕のロックを外し、拳銃
を両手で保持する。

 千鶴の意識が飛んでいたのは一瞬だった。自分の体が今にも崩れ落ちてゆくのがわかる。
 (わたし、死ぬの?こんなところで。梓やあゆちゃんも守れないで。耕一さん達に無事も伝え
られないで。なにより狩猟者のわたしが獲物ごときに狩られるの?!)
 妹たちへの想い、耕一への想い、そして狩猟者の誇りが今にも再び飛びそうな意識を支える。
死力をふりしぼり、重力にひかれ、たおれてゆく上半身を腹筋の力のみで支え、右足一本で下半身
を支え、左腕を振りかぶる。
 「あなたを、殺します!!」
 そう叫ぶと同時に源二郎の首筋めがけて斬りつける。轟音と共に、千鶴は腹に衝撃を受ける。
だが斬撃は止まらない。もう一度轟音と共に今度は胸に衝撃を受ける。だがやはり斬撃は止まらない。
千鶴の目に源二郎の首筋を薙ごうとしている鉄の爪と、黒い穴が見える。
(やったわ、狩猟者を狩ろうなんて身の程知らずの獲物を狩ったわ)
もう一度轟音が鳴り響く。それが千鶴がこの世で聞いた最後の音だった。

274 :修正(7):2001/06/25(月) 20:28
千鶴の鉄の爪は源二郎の首筋に触れたところで止まっていた。鉄の爪が源二郎の首をかっ切るよりも
コンマ1秒早く、源二郎が千鶴の頭を撃ち抜き致命傷を与えたのだ。千鶴が最後に見た黒い穴とは
銃口であった。銃口が反動で跳ね上がるのを利用し、腹から頭にかけて銃を連射する。ジッパー
ショットと呼ばれる近距離暗殺用射撃術だった。

「ふう、危ない、危ない。鬼の力とは聞いてましたがこれほどまでとはね。この調子では
イレギュラーの修正も容易ではないですねえ」

そうつぶやくと、周りを見回し、自分以外誰も居ないことを確認すると
源二郎は千鶴の装備を回収し、柏木梓と月宮あゆの追跡を開始したのだった。

長瀬源二郎生存
長瀬源四朗死亡
柏木千鶴死亡
マナの短機関銃破裂
長瀬源二郎、柏木千鶴の装備を回収し、柏木梓と月宮あゆの追跡を開始

275 :修正作者いいわけ:2001/06/25(月) 20:30

千鶴さんの死の描写ですが、千鶴さんは死ぬ直前まで自分の勝利を確信していたため、いわゆる
お涙パートは入りませんでした。了承してくれるといいなあ。了承できないなら、どうやって
いれればいいか案だしてくれるとありがたいな。

あゆの武器が短機関銃になったことですが、機関銃て一番軽くて小さいやつでも1mの
8Kgぐらいはあって大男ぞろいのアメリカ兵だって運ぶのを嫌がる代物をマナが軽々運べるとは
思えないし、なによりあゆにはもって構えるなんてできやしないので短機関銃にしました。

あと銃弾が銃口に飛び込むなんてあるわけないと思うでしょうが、実際にあったことです。
起こそうと思って起こる物では無いですけどね。

挽歌氏は騎兵隊みたいに使ってくれと言ってましたが追われる立場にしてみました。

あと一回あげてしまったのは私のミスです。ごめんなさい

276 :夜を照らす物作者:2001/06/25(月) 20:35
絶対NG。以上。

277 :郷愁1:2001/06/25(月) 21:15
「全く……どうしてこう無茶をするのかしらね?」
あきれたように郁未は言った。


――再会の瞬間は、ひどく滑稽だった。


「……凄い格好ね」
「君のほうが凄い格好だよ」
思い出したかのように郁未は体を見回す。
……黒い貞操帯、放っといたままだった。

「い、い、いろいろあったのよ!」
「いや、それにしてもその格好は――」
「し、し、仕方ないじゃないのよ! 人助けよ人助け!」
「どういう人助けなんだか――」
「だって放っておいたらあっちの方が私よりずっと悲惨――」

そこまで言って、郁未はハッ、と思い出した。
ブルマの上からスカートを履いている耕一の無残な姿を。
しかしそんな郁未にも予想出来てはいなかった。

――まさか今ごろ耕一がコスプレさせられる羽目に陥っていようとは――。

「てっきり露出狂の気があるのかと――」
「何であなたがそんなこと知ってるのよ!?」

「――――え?」


――結局、恥ずかしい思いをしたのは郁未だけだった。


紅い顔をしながら、郁未は少年の紙を拭う。

278 :独白:2001/06/25(月) 21:15
あの時。どうしてあんな事を言ってしまったのだろう。
どうして、黙って引き金を引けなかったのだろう。
(優等生的解答。あなたは私と違うから)
本当の事はわかっているから、二重に嘘を仕込む。
待っていよう。二人の帰りを。

もし、帰ってこなかったら? 怪我の様子からすれば、充分にあり得る事だ。
その時は…どこに居場所が残っている?
初音は、居場所を失ったという少女の事を想う。
ああなるしか、無い。
それに混じる嘘。それは、本心だから。

この銃を握る。狙うのは、ここで倒れている少女。
「何をする気?!」
「こうすれば…動かさなくて良い!早く耕一お兄ちゃんと彰お兄…彰さんを助けに行くの!
大切な人は絶対死なせたくない!」
「止めなさい!」
「じゃあ、行かせてくれるの?」
「でも葉子さんを置いては行けないでしょ」
二重の嘘に頼る。出来る限り、緊張を見せないよう。冷静に、冷静に。
「同じ事を言う必要は無いわ。学校で私に向かってきた人は覚えているでしょ」
もし、止めに来たら?その時は誰であっても…撃てないのに。

「なら、一旦昨日のところに戻って医薬品を確保してからにしましょう。急ぐわよ」
急いで往復すれば、葉子がどこかへ行く事とも無い。
ただ、もっとあっさりと医薬品は手に入った。小さな名医と共に。

279 :郷愁2:2001/06/25(月) 21:15
「それで? 結局何がどうなってたのよ」
「……潜水艦が在った」
「はあ?」
「地下の空洞に、潜水艦の停泊場所があった」
「えーっと、それって……」

郁未はちょっと顎に手を当てて考える。

「ちょっと!! それって凄いことなんじゃないの!?」
「まあね」
「やったじゃない! それがあればこの島から簡単に脱出――って、ダメか」
「……ん」
「どうせ敵の人間がいっぱい乗っている、っていうオチなんでしょうね」
「……いや」
「え、乗ってなかったの?」
「……乗っていた」
「じゃ、ダメじゃない」
「……いや」
「?」

280 :郷愁3:2001/06/25(月) 21:17
「……もう、乗っていない……」
「……何で?」
「……」
「……」
「……」
「……まさか」
「……」
「……全員殺したなんて言わないでしょうね」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……ふぅ」

ため息を一つ、そして郁未は言った。

「ほんとに、凄いことするわね――」

そのセリフは、たまらなく優しく響いた――。

281 :七瀬と柏木:2001/06/25(月) 21:17
#かぶった。これは独白の続き。

葉子をマナにまかせ、二人は外に出る。
「…どうせ撃てなかったんでしょ?」
「…ごめんなさい」
「でも、大丈夫。私、七瀬なのよ。あなたの大切な人の代わりに、あなたを守ってあげる」
それにしても…実は、耕一さんたちと行くはずだったのよ。なのに、あのバ…」
「耕一お兄ちゃんはああ見えても自分で背負い込む方なんだよね」
「それにしても、男って分からず屋ばっかよね」
二人は微笑み合い、先に行った二人を追いかけに行く。
【マナ、葉子と合流、更なる手当ても。】
【七瀬留美、柏木初音、七瀬彰と柏木耕一を捜しに出発。】

282 :郷愁書き手:2001/06/25(月) 21:19
>>277
うわ、すみません。
ラストにこれを挿入してください。行間はなしで。

服に染み込んだ血は拭えないが、せめて顔と髪だけでも――。

よろしくお願いします。

283 :狂乱の鼓動1:2001/06/25(月) 21:27
僕の体を蝕むもの。
それが疲弊と反動だとすれば。

僕の精神を蝕むものがある。
それが、殺人衝動とも言うべき、狂気。

叫びが、聞こえる。
それはこの島で無念にも散っていったものたちの、狂おしい叫び。
生への渇望。

「早く殺して下さいよ」

……え?

「私、すっごく痛かったんですよ」

……郁美ちゃん?

「折角、あなたと出会えたのに」

何で、君が……。

「だから絶対許せません。私を殺した人は」

君は……、本当にそんなことを思っているのか?

「早く死んでしまえばいいんです、あんな人は」

……嘘だろう、君がそんなこと言うなんて信じられないよ。

「いいえ、本心ですよ」

そんな……。

284 :狂乱の鼓動2:2001/06/25(月) 21:27
「じゃあ、もしあなたが私だったら、どう思います?」

!?

「……ほら、やっぱり思ってた通りの人だ」

ち、違う! 僕は……。

「だから、頑張って殺してくれているんですよね」

そんなことは無い、僕は――。

「良いんですよ、そんな謙遜しなくて」

違う――。

「一生懸命殺していましたよね。私、全部見てました」

違う――――。

「あなたのやっていることは正しいんですよ」

違う――――――。

「だからこの調子で、私を殺した人も殺してくださいね」

違う――――――――――。

「私、ずっと楽しみに待ってますから――」

違う――――――――――――。


狂気の亡霊が、僕を苛む。

285 :狂乱の鼓動3:2001/06/25(月) 21:29
死者は、二度と口を開くことなど無いのに。
死者は、二度と立ち上がることなど無いのに。
死者は、二度と笑うことなど無いのに。

郁美ちゃんは、けしてあんなことを言う子ではないと思ってたのに。

いくみ?

いくみって誰だっけ……。

ああ、そうだ。

あの子だ。

クラスAに、一番最後に入ってきた子。

僕の……同居人。

懐かしい……匂い。

僕は……あの子のために戦っているんだっけ。


ドクン!


……来た。
また来た。
狂気が、僕を奪おうと侵略してきた。
いつの頃からだ、こうなったのは?
そう、あれは丁度この島に来た時から――。

286 :狂乱の鼓動3:2001/06/25(月) 21:31
(#2行空き)
ドクン!!


ぐ……。
まずい……。
このままではまた衝動で人を殺す……。
使えないはずの不可視の力が暴走する……。
人外の力が……人を傷つけ、僕も傷つける……。
が……。


ドクン!!!


……。
血が、香る。
血が、滴る。
血を、感じる。
体に熱が灯る。
視界に入るのは人間。
洞窟を守るのは手練れ?
程よく肥えた血の予感。
衝動はそこから。
まずは首を寸断する。
すると吹き出す血。
思ったとおりの快い血。
手の中ではかなく散っていく命。
錆びた鉄の匂いは昂揚の潤滑油。
表面だけの良心など瓦解寸前の伽藍。
殺す。
殺す。
殺す。
いくらでも殺す。
どこまでも殺す。
いつまでも殺す。

287 :狂乱の鼓動5:2001/06/25(月) 21:32
(#行間無し)
一瞬の絶命。
痛みも苦しみも嘆きも哀れみも怒りも悲しみも恐怖も絶望も無い。
死の絶対の空虚。
満ちる。
満ちる。
体に満ちる。
空虚が満ちる。
目的の無い殺害。
意味の無い殺害。
所詮全て殺害。
だけどそれは僕が一番嫌っていたこと?
そんなことは知らない。
冷たく動く。
殺すために殺す。
泣き叫ぶヒト。
緩慢な死。
今度はそこで永遠の絶望と恐怖を味わう。
終着点は一緒。
死。
木霊する。
絶叫が木霊する。
騒音は死に似つかわしくない。
だから止まる。
永遠と思わしき静寂。
これでいい。
思う存分殺した後は、そこに何も残らない。
だがそれでいい。
命も残らない。
動きも残らない。
音も残らない。
何も残らない。
だから”僕”も残らない。

288 :狂乱の鼓動6:2001/06/25(月) 21:33
(#二行空き)
………うわああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!


「―――――――よ」

声がする。
僕を連れ戻してくれる声。
彼女の声。


「――ボディチェックよ」

僕の夢想は、ここで途切れる――。

289 :名無しさんだよもん:2001/06/25(月) 21:34
>>286
狂乱〜3じゃなくて4ですね。すみません。

290 :つかの間の平和1:2001/06/25(月) 22:06
「ボディチェックよ」
唐突に郁未はそんな事を言い出した。

「え……」
髪を解かされているときに眠ってしまったのか
驚いた様子の少年、だがそんな彼に郁未は容赦なく――。

「涼しい顔してるけどさ、そんな無茶なことしてたんだったら、
 どこかに傷を負ってそうなものじゃない?」
そう言って、少年の服に手を掛ける。

「い、いや、いいよ僕は……」
いやいやする少年、だがそんな彼に郁未は容赦なく――。

「良くないわよ。
 そう言うこと言う人に限ってなんか深い傷を負っているのを隠してたりするのよね。
 心の中で悲劇のヒロイン演じられても困るだけなのよっ」

「い、いや、僕は男だし……」
座っていながらも後ずさりする少年、だがそんな彼に郁未は容赦なく――。

「逃がさないわよぅ……。
 人が折角ボディチェックしてやるって言ってんだから、
 甘んじて受けるのが礼儀というものでしょ!?」

「い、いや、それは何か言葉の使い方を間違っている気が――」
引きつり笑いしながら突っ込みを入れる少年、
だがそんな彼の言葉に耳を傾ける様子もなく、
心持ち目に怪しい光を灯した郁未は容赦なく――。

291 :つかの間の平和2:2001/06/25(月) 22:07
「問答無用!(きゅぴーん!)」
「きゅぴーん!ってなんだぁぁぁああ!!」
静かな森に、少年の悲鳴が木霊した。


――そんなことばっかりしてるから痴女呼ばわりされるんだ、とは
例え知っていても口が裂けても言えない少年だった……。


「しくしく……もうお嫁に行けない……」
「そんなこと言える茶目っ気があったのね……」
ジト目で睨む郁未。
「あ、いや冗談」
少年はすぐそのセリフを撤回した。

少年の悲痛な叫びも空しく、郁未は見事に上着を引っぺがしていた。
引き締まった肉体は、その幼顔には全く似つかわしくないものであった。
そこには銃撃を受けた傷も見られなければ、刃物で刺された後も無かった。
――気になったところは、2点。

「返り血の割に傷は少ないわね、でもここはちょっと……」
少年の後ろ肩を優しく撫でる。
丁度その部分は、他と比べて赤くはれ上がり、明らかに打撲傷であることが明白だった。
「……ああ、そこか。マシンガンで殴られたところだね」
郁未は少し心配そうに眺めている。
「でも骨には異常は無い……と思う。不幸中の幸いといえばまあ……ね」
ムチウチにはなるかもしれないが、と心の中で少年は付け加えた。

292 :つかの間の平和3:2001/06/25(月) 22:07
「……えいっ」
郁未は、その腫れている部分をグーで殴った。
「あぐっ!」
……当然、少年は痛そうに呻き声をあげる。
「……あのー、郁未さん? 一体何をなさるんでしょうか?」
「やせ我慢チェック」
あっさりと郁未は言った。
「……は?」
「また痛くない振りされても困るしね」
そりゃそんな強さで殴られたら普通は呻き声あげるさ、とは思っていながら
やはり口には出さない少年であった。

「……痛い」
「……ごめん」
郁未は素直に謝った。

「……でも、完璧に運動を阻害されてはいない。
 痛いけど……我慢すれば、普通に動ける」
「……そう」

そして郁未は別な部分に目をやる。
そこは気になった箇所のもう一つ――腕であった。
ところどころ血が吹き出して、それが自然に収まった跡がある。
これは――。

「――どういうこと?」
郁未は尋ねた。
少なくとも、……これは外傷じゃない。
「……ちょっと無理したみたいでね。血管が破裂したのかな?」
事も無げに少年は言う。

「――全く、どうしてこう無茶をするのかしらね?」
あきれたように郁未は言った。

293 :つかの間の平和4:2001/06/25(月) 22:08
「――とりあえずこっちの方は大丈夫そうね。血も止まっているみたいだし……」
少年の腕をさする。
――今度は流石に叩くような真似をしない。
「……急いで処置しなきゃいけなさそうな傷も無さそうだし、
 ここで治療できるものも無さそうだな。
 ――そろそろ服を着ていいかな?」
少年は郁未に尋ねた。
――が、当の本人はそれを聞いていない。
……なにやら……少年の腕をさすり続けている。

「……郁未」

さすりさすり。

「郁未」

さうりさすりさすりさすり。

「郁未〜〜」

さすりさすりさすりさすりさすりさすり。

「おーい」

郁未の顔の前で手を振る。

「―――――――――――――――――ハッ!?」

驚いて、郁未は跳びずさった。
少年の顔を見ると、気まずそうに恥ずかしそうに何かをごまかすように笑った。

294 :つかの間の平和5:2001/06/25(月) 22:09
「――郁未」
「ハ、ハイッ!?」
少年はまっすぐ郁未の目を見つめながら言った。

「――そんなに僕の腕の艶がうらやましいかい?」

スパンッ! と言う音がふさわしい勢いで、郁未は少年に突っ込みを入れた。

「あたた……冗談だよ冗談」
「全くもう……」
顔を紅くして、郁未は自分の手の甲をさすった。

――やっぱり、恥ずかしいのは郁未だけだった。

295 :名無しさんだよもん:2001/06/25(月) 22:10
>>293
さすりが一つさうりになってました。そこもさすりです。

296 :笑顔1:2001/06/25(月) 22:45
「それで、結局どうなったの?」
「その話、さっきしなかったかい?」
「だから続きよ続き! 潜水艦は結局どうなったのよ?」
「ああ……」

少年は、埋もれたまま建物に目を走らせて言った。

「放ってきたよ」
「何で? もう敵の人間はいないんでしょう?」
「だからと言ってどうすることも出来ないよ。
 僕だけ逃げることは出来ない。
 高槻ともまだ出会えていない……」
「高槻……」

二人はまだ、全ての高槻が死んだことを知らず――。

懐かしい人物との再会は、なんとなく饒舌なムードを作り出す。
郁未は、ここに至るまでの出来事や出会った人たちのことを話した。
耕一の話のときは笑いが漏れて、秋子の話のときは少し暗く。
特に、郁未の母親が殺されたことは重い話だった。
少年は「そうか」と言ったきり、黙って彼女の話を聞いていた。

少年の話はそれより少し長引いた。
往人との交差から始まって、郁美と言う郁未と同じ少女との出会いと別れ。
やたら元気だった少女――詩子――の話。そういえば、彼女は元気にしているだろうか?
そしてその先で発見した良祐の死、その後の葉子との邂逅。

297 :笑顔2:2001/06/25(月) 22:45
「葉子さんに会ったの?」
少年は頷いて、元気そうだったよと言った。
それから、彼女も高槻を追っていたことを付け加えた。

それを聞いて郁未がほんの少し嬉しそうにしたのを、少年は見逃さなかった。

最後に、蝉丸との出会いと地下への侵入の話で終わった。
「そういえば、あの人たちには私も会ったのよね」
と、蝉丸たちのことを思い出し、郁未は一人頷いた。

「地下施設への入り口は……そこに埋まっている」
「うわ……これは見つからないわね」
自分の目でそこを見て、いやそうに郁未は言った。
「でも……、少なくともここから潜水艦まで直行できる」
少年は真剣な口調で言った。

298 :笑顔3:2001/06/25(月) 22:46
「生き残った人たちだけでも、あれに乗せて逃がしたいところだけど……。
 郁未、最悪僕が死んだときは君だけでもこれに乗って――」





ちゅっ。





――少年の言葉は、そこで止められた。

「……郁未」
「……バカよね、あなたって。私一人で帰れたって、何の意味も無いじゃない」

郁未は笑った。とても、まぶしく――。

「葉子さんも、晴香も、他の人たちも……あなたも。
 ――みんなで帰ろうよ」


                ・


「――――――――――うん」


                ・

299 :名無しさんだよもん:2001/06/25(月) 22:47
ここまでで一つ。

300 :Sweetless Days1:2001/06/25(月) 23:01
二人は、歩き出した。
足取りが、一人の時とは全然違う。
なにやら道のりが、やけに明るくすがすがしく感じられる。
郁未が背負った鞄の重さは、そう大したものではないけれど。
少年の持った”本”は、それだけでは何も生み出すことは無いけど。
何故か、不安は無い。

「ねぇ」
「ん?」
「高槻を倒したら……どうするの?」
「そうだね……」

少し沈黙して、言った。

「高槻の裏にいる黒幕は潰したいところだね」
笑顔で、いつもどおりの笑顔で言った。

――戻るべき日常など、僕には無い。
――なぜならそれはFARGOそのものだったから。
――ならば僕は、ただ死に場所を求めているだけなんだろうか?
――それとも、本当に、郁未と……。

301 :Sweetless Days2 by111:2001/06/25(月) 23:02
「私は――」
郁未が口を開いた。
「あの人と、決着をつけたい」
「お母さんを……殺した人かい?」
こくっ、と郁未は頷いた。

「――――――――――――――」
「……不服? 私が復讐に走ろうとしていること」
「――――――いや」

不可視の力が封じられた今、君はただの女の子に過ぎないけど――。

「――君がやりたいことをやればいいさ」
「……あなたは?」
「……ん?」
「あなたは……どうなの? その、郁美ちゃんを殺した奴とか」


少年の顔から、笑みが消える。


「――――――――殺すね、必ず」

302 :111:2001/06/25(月) 23:15
潜って書いておりました。
定時連絡と撤退準備を兼ねて――。

532 涙
533 伏魔
534 伏魔〜影〜
537 紅い雫
538 一歩
540 今、一度の門出
(データ未収録)
    郷愁  
狂乱の鼓動
    つかの間の平和
    笑顔
    Sweetless Days

を私の名前に変えて(登録)いただけると嬉しいです。
らっちーさん、よろしくお願いします。

303 :名無しさんだよもん:2001/06/25(月) 23:27
〜修正〜はアナザー審議中です・・・・・・

304 :名無しさんだよもん:2001/06/25(月) 23:37
>111氏
 撤退準備って……。ここ数日の荒れで見限られましたか?
 良質な書き手が失われるのは痛い。もう少し、踏みとどまられては……。

>らっちー氏
 なにげにアナザーが色変えになってたり、ちょこちょことでる要望が反映されて
 たり……。毎度お疲れさまです。

305 :名無しさんだよもん:2001/06/25(月) 23:41
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=993479168&ls=50

新感想スレです

306 :111:2001/06/25(月) 23:50
>>304
いや、それとは関係なく、ですね。
7月から外国へ飛ばされてしまうので(汗
で、突然消えてしまうことになるかもしれないので一応前倒し準備、ということです。
まだいますよ。

この長引きようだとラストに参加できないかもしれないので
それは残念に思うのですが……。

307 :111:2001/06/25(月) 23:57
あと感想スレで問題になってるようですね>源二郎。
これは完璧に僕のミスです。僕が出したかったのは痕の長瀬刑事でしたから。
と言うわけで源二郎=源三郎と読み換えていただくとありがたいです。
申し訳ありませんがらっちーさんもそのようにお願いします

308 :304:2001/06/25(月) 23:57
>>306
それは大変なことに……。
もし、国内で終わらなくても、ほら、インターネットなんだし……。
というのは一読み手の気楽さから来るエゴなんだろうな。
このペースだと、今月中には完結しなさそうですからね。
それまでの間でも、これからも頑張って書いて下さい。

309 :111:2001/06/26(火) 01:23
>>277
ラスト:少年の紙→少年の髪

310 :童話戦隊:2001/06/26(火) 04:23
「ねえ、したぼく。あたしさっきからずっと考えてたことあるの。
聞いてくれる?」

蝉丸達と別れ、教会に向かう途中、詠美は御堂に話しかけた。

「うん、何を考えてた?」
「あんた、今頭の上に動物のっけてるでしょ」
「乗せたくて乗せてるわけじゃねえけどな」
「その光景なんかで見たことあると思ってたんだけど、今やっとわかったのよ。
あんたのその格好ブレーメンの音・・・・・・」

御堂は声を荒げ、詠美の言葉をさえぎった。

「最後まで言うんじゃねえ、俺もなんだかそんな気がしてたんだが、口に出す
と何か失っちまうような気がして言わなかったんだからよ」
「それにしてもおめえ、いつもいったい何考えて生きてんだ?」
「えっとね、・・・・・・」

詠美の言葉を右から左に聞き流しながら、御堂は思う。

(ブレーメンの音楽隊かよ。俺はロバの役ってわけか。そんな役俺は認めねえ。
俺の役はもっとかっこいい役のはずだぜ。そう桃太郎のような。だが桃太郎を
名乗るには猿が――いるじゃねえか、目の前に)

「……桃太郎だ」
「えっ、何?」
「俺様達はブレーメンの音楽隊じゃねえ、桃太郎だっていったんだよ」
「でも犬も鳥もいるけど、猿が――ってその可哀想な人間をみるかのような
哀れみの目はどういう意味?」
「さあな、どういう意味なんだろうな」
「むっかぁ〜〜〜!!したぼくのくせになまいき〜〜〜!!、なまいき〜〜〜!!」

311 :生キル意味ヲ - 1:2001/06/26(火) 06:01
自分の存在意義を考えてみる――。
基本的には「足手まとい」以外の何物でも無いと思っている。
そして、自分自身すらもそれに甘んじていると。
それでいいのだろうか?
――いいわけ、ないよ。
当然だ。


目の前で、もう随分と長く共に行動している鬼の姉妹が、何やら言い争っている。
口喧嘩の絶えない姉妹だ――
もちろん、その内容も多種多彩だ。
よくそれだけ喧嘩出来るものだとも思える。
無論、それだけ仲が良いとも取れるのだが。
不意に、笑みが零れた。
失った家族の温かみ。
それを、そこに感じてしまったから。
――しかし、胸について言うのは禁句だと思ったあゆである。


――ボクには何があるんだろう?
ふと、あゆはそんな事を考えた。
自分は。
自分で考える限りでは、普通の少女であると。
それはもちろん、「うぐぅ」とか連呼する少女が普通とは言えないかもしれぬが。
――祐一君にも散々言われたし、ね。
いや、しかし。
それでも――
自分は、容易く人を殺す事など出来ない。
確認する。
己が、平常であると。
……「まだ」、平常であると。
だけど。
――それでいいのかな……。
そんな事を思ってしまう。

312 :生キル意味ヲ - 2:2001/06/26(火) 06:03
――イキノコルタメニハコロサナクテハナラナイ――

絶対の――この島に於いての――ルール。
それに抗うということは。

即ち、死を意味する。

もちろん、死ぬのはイヤだ。
だけど、殺すのもイヤだ。
それでどうやって生き残る?
結局のところ、自分は同行者に頼りっぱなしなのだ。
そして。
同行者に、戦わせている。
もし、万が一。
自分が狙われて、それで。
自分を守る為に、二人が死んだなら――
それは「殺した」のと変わりはない。
逞しくあらねばならない。
一人で――
自分の命を守りきれるくらいには。
それだけの力が欲しかった。

313 :生キル意味ヲ - 3:2001/06/26(火) 06:04
※二行改行※
目の前の姉妹はとうとう取っ組み合いの喧嘩を始めている。
相変わらずだ。
こんな状況であるのに。
――いや、しかし。
やはり胸の話「だけ」は勘弁してほしい。


この島に来てから、感じていたものがある。
酷く――哀しい気配?
頭の奥底に、ちりちりと、伝わる何か。
酷く、深い、深い、カナシミ。
いや、それとも。
―――。
それの主は何処にいる?
自分だけが分かるそれ。
――ボクだけが分かる――。

即ち。
それは、一つの存在意義として成り立つのではないか?

"それ"が一体何かは分からない。
だけど。
――ひょっとしたら、ボクだけにしか分からないのかもしれないから。
だから。
探さなくてはならない――
"それ"を。
自分が。
自分が此処に在った意味を――
残す為にも。

314 :彗夜:2001/06/26(火) 06:05
書きました。
あゆの心理パートがアナザーにいっちゃったんで、
何か動きでも持たせるかってことで。

315 :罪と罰(1/3):2001/06/26(火) 07:35
たぶん、あれが一番の罪だったのだろう。……私にとっての。



気が付いたら、憂鬱。気分が、晴れない。
どうしたのだろうか。
自分の置かれている状況がよく感じ取れない。
(確か……)

長瀬さんと、一緒で…
海水で顔を洗った、見かけによらずお茶目な彼を笑って。
こんな島だけど、少し自分が幸せに思えて。
こんな状況なのに、悲しんでる人もいるのに。
本当は私も悲しまなければならないのに。
だけど、ささやかだけど、確かにあった幸せだった瞬間。

海岸沿いを歩いて、そして…

「墓石……」
そう、墓石だった。
長瀬さんが寄りかかった墓石がまるで下に滑車が付いているかのように動いて…
「それで……」
中に入った。
(それから……?)
中にある【Stuff Only】の扉…そこに入ってから急速に光が私を包んで、
(そこから先が思い出せない……)
軽く、頭を左右に揺らす。かすかに…といった程度のものだけど。

316 :罪と罰(2/3):2001/06/26(火) 07:36
長瀬さんの……
――うん、わかった。何があっても僕はこの手を離さない――
えっ……
私の…
絶対離さないはずの右手の……

  感覚はなかった

「な……」
何…これ……?

なんで…?

  ――ガサッ……

わたしが…

「い、いやあああああああああああああああっ!!」

長瀬さんが……

「………」

茂みから出てきた影。
「ゆう…す…け…さん?」

手に握られていた、私の、右手。

「い、いやっ……いやあぁ―――――――――――っ!!」

突き飛ばして、駆けた。

317 :罪と罰(3/3):2001/06/26(火) 07:37
「はあ、はあ……」
もう、どの位走ったのか分からない。
「私の…みぎ…て…」
右手を見た。地面が見えた。
「いやっ……わたしっ……」
そのまま、景色が遠のいていって――消えた。


たぶん、あれが一番の罪だったのだろう。……私にとっての。

――絶対に離さない!僕が守り通してみせる!!――

――……長瀬さん…信じていたのに――

――君の手をこれ以上汚す事は無い。僕が自分の手で――自分を殺す、よ――

――私は長瀬さんを信じます。今度こそ、最後まで――



どうして、信じてあげられなかったんだろう…
私は、逃げてしまった。
また、私は長瀬さんから逃げてしまっていた。

私の罪。あそこでもし、逃げなければ――また変わっていたのかもしれない。
未来が。


たぶん、それは、私にとって消えることの無い心の痛みなのだろう。

あの子が光の中に消えてしまった――あの時のように。

318 :罪と罰作者:2001/06/26(火) 07:45
【天野美汐 再び気絶】

※走りすぎたための貧血です。一応大量に血が流れたので。

319 :罪と罰作者:2001/06/26(火) 08:17
後、分かりにくいかな?
茂みから出てきた影はちゃんと祐介です。
源一郎が美汐を安置したところはあの施設からそう離れてはいない場所、ということです。

320 :罪と罰作者:2001/06/26(火) 11:25
ごめん、抜けてるとこあった。
>>317
>――私は長瀬さんを信じます。今度こそ、最後まで――
と、
>どうして、信じてあげられなかったんだろう…
>私は、逃げてしまった。
>また、私は長瀬さんから逃げてしまっていた。
の間に下の文章が入ります。

長瀬さんが、斬った。
長瀬さんが、私の……を持っていた。
錯乱状態の中で、私は、長瀬さんが…恐くて。
そうしなければ、壊れてしまいそうで。
――ダムの小さな亀裂をを塞ぐように…
私は駆けた。

321 :名無しさんだよもん:2001/06/26(火) 17:03
 宮内レミィ(女子・094番)のポケットから、大量のもずくが溢れ出しているのを見て、北川潤(男子・029番)は思った。

 制服のスカートにはポケットがあるんだ、僕はまだまだ女性の事なんてほんの少しも判っていないな、と。

 もう一度、よく見てみると、もずくの中に、きらきらひかる欠片があった。
 それを北川は手に拾い上げ、目で凝視した。
 きらきら光る欠片は、なにかどこかで見た事があるものだった。
 これ、CDなんじゃないか? そう思うまで、時間はかからなかった。

 「おい、レミィ、預けたCD、かばんに入れてなかったのか?」
 「えっと、全部ポケットにいれてたヨ!」

 なんと、宮内レミィはポケットにCDを入れていた!

 「にこにこぷん……」

 レミィはCDが割れた事実に気付き、そう声をあげた。

 「もう、にこにこぷんは見られないの? ジュン!」

 「あぁ、見ることはできない、かもしれない。しかし、ここをうまく抜けられたら、そのときは、ふたりでにこにこぷんを見よう!」
 「抜け出したら、にこにこぷん、見れるの?」
 「あぁ、きっと君に見せてみせるよ。その為にもここを抜け出す方法を考えよう!」
 「そうだね、ジュン。ともかくプラス思考ね!」

 とりあえず相談の結果、僕たち二人はレミィのスカートをキレイに洗浄するために、池を探すことになった。

322 :命を越えて伝えるもの - 1:2001/06/26(火) 17:08
ザッザッザッザッザッ……!
――遠ざかる足音。
……逃げられた。
何故、逃げた?
……当たり前だ。
突然、失った自分の右手を持った人物が現れたら。
例えそれが誰だったとしても。
疑われない筈は無い。
きっと。
彼女の中で。
自分は、彼女の右手を奪った人になってしまったのだろう。
酷く、哀しかった。
だが。
――正直、撃たれなかっただけでも良しとした方がいい。
彼女はデリンジャーを持っていた筈だ。
それが自分の身体を貫かなかっただけでも――
幸運だ。
―――。
或いは?
――僕だから、撃たれなかった、なんて思うのは……自惚れだろうな。

323 :命を越えて伝えるもの - 2:2001/06/26(火) 17:09
―――。
探す?
しかし、いずれにしても同じ結果になると思うのだが。
彼女は自分の姿に怯え。
そして逃げた彼女を追う。
……だが彼女を放っておけるか?
答えは、ノーだ。
この島に。
どんな殺人鬼が潜んでいるかは分からない。
その中で、一人。
放っておける筈が無い。
……手段としては。
彼女から見えない位置で、護る。
つまり、彼女の見える位置にあれば良い。
出来れば、すぐに駆け寄れる場所に。
木の上が最も理想的だが――移動が困難だ。
しかし。
――まるでストーカーみたいだ。
そんな事を思って。
一人、微かな笑みを零す。

324 :命を越えて伝えるもの - 3:2001/06/26(火) 17:10
※二行改行※
思いのほか、すぐ近くにその姿はあった。
草の上に倒れていた。
顔が青い――恐らくは、貧血だろうか。
抱え上げた。
妙に軽く感じる。
近くの木陰で下ろすと、自分もその隣に座った。
右腕の包帯。
その先には――何もない。
顔を顰めた。
自分を、戒める。
――アノトキ、ボクガモットチュウイシテイレバ――
――アノトキ、テヲニギッテナンカイタカラ――
チリッ――
電波の衝動。
悔やめども、悔やみ切れぬ――
その、残酷としか思えぬ事実。
償うには、もはやどうしようもなさ過ぎて。
己を、酷く不甲斐なく思った。
――畜生。
――畜生、畜生、畜生。
――畜生、畜生、畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生――。
チリチリチリチリチリチリチリッ――
流れ。
行き場の失ったそれが、酷く自分を――癒す。
元来、それは「壊す為の物」。
――僕は、壊れてしまったんだろうか?
破壊。
破損。
壊滅。
かつては感じた、甘美な響き。
それはもはや感じられず。
ただ、空しく感じるだけで。

325 :命を越えて伝えるもの - 4:2001/06/26(火) 17:11
※二行改行※
――不意に隣を見れば。
肩を並べた少女が、涙を流しているのが見えて。


決意する。
自分は。
――僕は。
今度こそ――彼女を護る、と。
その為なら。
――タトエ、キミニ、コロサレタトシテモ。

コノイノチ、オシクハナイ。



【005天野美汐 気絶中】
【064長瀬祐介 美汐が起きるまでの間だけ隣に】

326 :彗夜:2001/06/26(火) 17:17
書きました、祐介編(?)。

327 :名無しさんだよもん:2001/06/26(火) 17:48
>>321
このネタは感想スレ上に重複ネタが議論されていますので、

http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=993479168
にて、説明をお願いいたします。また、書き手の皆様は、
感想スレでネタを仮に挙げている場合があるのでチェックしてから書く様にして下さい。

328 :名無しさんだよもん:2001/06/26(火) 18:50
些細な事でしたらすみません。

林檎さんの書かれた「最強タッグ誕生」ですが、
詠美の台詞に「こいつはあたしの下僕よ!!」 というのがありましたが、
後にまた「したぼく」とおっしゃっているので、(笑)
ちょい不自然かと。

329 :名無しさんだよもん:2001/06/26(火) 18:51
>328
スレッドを間違えてしまいました。
大変申し訳ありません。

330 :名無しさんだよもん:2001/06/26(火) 20:26
>感想スレでネタを仮に挙げている場合があるのでチェックしてから書く様にして下さい。
こいつバカ?
それともここのルールなの?

331 :拝啓おふくろ様リターンズ(1/2)By林檎:2001/06/26(火) 20:27
――拝啓おふくろ様
 我慢できずに再び文を送ってしまうバカ息子をどうかお許しください。

 僕は驚愕いたしました。
 当初、かの婦女子はなにもないところで転んだ様に見え、
それはそれはそのまぬけっぷりを腹の底で笑いまくっておりました。
 もちろん可愛い女の子のドジに向けられる微笑のようなものでありますが。
 しかし違ったのです。
 かの婦女子が転んだのは地面から顔を出した根っこにつまづいたからでした。
 そしてその根っこは転んだ際に引き千切られていたのです。
 なんというパワー。なんという突進力でしょう。
「これが力の1号の実力…」
「ジュン?」
 さぞかしタックルでもさせたら強いことでしょう。
 いっそ敵とでも会ったら試してみましょうか? マッハオラ。
 タックルさせるときに「Ready Go!!」とでも叫べば「Lady」と語感がかぶって良い感じです。
「てめぇは俺を怒らせた。
 HA!HA!HA!HA!HA!HA!HA!HA!」
 掛け声と共に次々と拳をたたきこむ金髪ヤンキー。
 うむ。なかなか良い。掛け声が悪役っぽいが。
「ジュン? どうしたノ? 怒っちゃヤダヨ…」
 どうやら妄想のつもりが声に出ていたようです。婦女子はいろんな意味の心配で僕の顔を覗きこみます。
「いや、なんでもない。怒ってなんかないって」
「そう?」
 その時は確かに僕は怒ってなどいませんでした。
 しかし気がついてしまったのです。婦女子のポケットの中で起こった重大な事件に。
 CDは散々たるありさまでした。
 そう。頑丈だと信じていたあれは、転んだときのショックに負けて割れていたのです。

332 :拝啓おふくろ様リターンズ(2/2)By林檎:2001/06/26(火) 20:27
 今思うと、CDを分担して持つことにしたのが失敗だったのかもしれません。
 かの婦女子のスカートには、スカートにしては大変珍しくポケットがついていたのです。
 CDは1人が持ってるといっきに全て失う可能性があります。
とっておきの切り札となりうるそれを分担して持つのはしごく当然といえるでしょう。
 だが、かの婦女子は転んでしまいました。
 おかげで緩衝材として一緒に詰めていた「もずくパック」が割れ、CDは散々たるありさまです。
 硬めのビニールだから頑丈だと信じていたのですが…。
 このもずくのメーカーに対しては怒りを禁じえません。
 あとはあの無記入のCDが、あらゆる外的要因に弱い「ミスったーデータ」様に焼かれたものではないことを祈るばかりです。

追記
 もずくパックが割れてしまったおかげで、レミィ・クリストファー・ヘレン・ミヤウチのスカートは
もずくの汁でぐっしょりです。乾かさないと風邪をめされてしまうかもしれません。
 こういうとき、男はどうしたらよろしいのでしょうおふくろ様 。

追記2
 この島に来てから、僕の周りには事件が絶えません。
 いつになったらこの現実逃避人格はなりを潜めるてくれるのでしょうか。
 このままではどこぞで見た、目覚ましかチップルです。
 それもまた良しとしますか…。

【無記入CD大惨事】

333 :名無しさんだよもん:2001/06/26(火) 22:01
>>331-332
の話の続きが
>>321
です。

334 :彗夜:2001/06/26(火) 22:09
>>321はアナザー行きになったらしいです。

335 :名無しさんだよもん:2001/06/26(火) 22:54
今晩のおかずに
かわいい素人娘の無修正ビデオはいかが

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336 :名無しさんだよもん:2001/06/26(火) 23:18
好きだっただけにちょこっと残念だ<321アナザー行き

337 :調査(1/2):2001/06/27(水) 03:27
プルルルルルッ…ガチャッ
「はいこちら来栖川電工中央研究所プログラム支部…あ、源之助さんですか。
 ……はあ、…源一郎さんが、死んだかもしれない……?
 ちょっと待ってください…えーと、…今しがた、彼のいた施設が破壊されましたね。
 …殺されたかどうかは……ちょっと…こちらでは分からないですね」
モニターを眺めながら、キーボードを叩く。
カタカタカタ……
「ええ、ええ…まあ、そうですね。あそこには参加者は入れないようになってましたから。
 さらにそこに近づいたのは(女子005番)、天野美汐だけですしね…
 ――可能性としては一緒に行動していた長瀬祐介ですかね。
 あとは七瀬彰…は今は(男子019番)柏木耕一らといますね。
 長瀬祐介で確定でしょう。やはりあの祐介と彰、二人の生死確認が厳しいのは否めませんね。
 …えっ?他にもいるだろうって…?あと爆弾機能に気付いた誰か…ですか
 (女子011番)大庭詠美ならさっき電話した通りですよ?」
カタカタ…モニターに大きく女の顔写真が映し出される。
「……ええ、大庭詠美はずっと御堂といますよ。あの位置から考えてあの施設を破壊したのは
 彼女とは思えませんしね…えっ?他にもいる可能性…ですか?
 長瀬祐介以外には考えられませんがね――そんなことで言ってるわけじゃない?
 う〜ん…放っておいてもいい気はしますがね、調べてみます。
 ええ、方法はいくらかありますよ。
 死亡した時の爆弾情報をログで調べればまあ、不審な死に方なんてすぐ目星がつきますよ。
 あとは調べればいいだけの事です。
 ――ええ、まかせておいて下さいよ。
 で、見つけたらどうするおつもりで?…任せる?無責任だなぁ…
 ――私は動くわけにはいかんでしょう。この施設からそう離れられませんよ。
 まあ、とりあえず調べてはおきますわ。
 不審な点が見つかったらその場所へ誰かをよこせばいいんじゃないですか?」
カタカタカタ…モニターに死亡者達の通し番号が映し出される。

338 :調査(2/2):2001/06/27(水) 03:28
「……と、言われてもねぇ…父さんと源三郎さんは結果的に独断で動いちゃってますからねぇ…
 連絡とれませんよ。なにしろ生死確認さえできないんだから。
 向こうからコンタクト取ってくれないことには…
 ――はい?戦闘型HMは駄目ですよ。一応この施設の要ですから。
 なに、分かってるって…?………なんてこと言うんですか。
 一応私達の汗と涙の結晶ですよ。…まったく…」
溜息をつきながらキーボードを叩く。
002…004…次々とコンピューターに死亡者の死亡までの行動ログが高速で映し出されていく。
「…ええ、もう始めてますよ。
 ……分かってるなら邪魔しないで下さいよ…まったく……まあ、いいですけどね。
 何か分かったらまた連絡しますよ……嫌ですよ、それらをどうするかは御老が決めてください。
 そもそも手出ししないと決めたのはあなたじゃないですか…
 とりあえず大庭詠美に関しては私は通しですよ。
 祐介らがもう一人増えた…と思えばいいだけですから。
 私からはそれだけです…はい、では…」
ふうーーっ……
溜息を大きくついた。
「源之助さんもなかなか無茶な注文を出してくれるよまったく……」
一本、煙草を加えて、大きく息を吸った。
「とはいえ、こちらの目の届かないところで動く人間がいるのは好ましくはないんだけどね。
 …まあ、やれることだけはやっときますか」
004…006…再びコンピューターに向かいなおすと、キーボードを軽やかに叩きだした。


【長瀬源五郎 死亡者確認洗い流し調査開始】

※源五郎のいる施設は岩山の施設です。

339 :運命の輪(1):2001/06/27(水) 08:16
市街地を抜け、しばらく草原を横断したところ。
朝の光を浴びながら、柔らかな草の波を掻き分けて、ふたりの少女が
漂流していた。

遠目に後ろから見れば柏木初音と、その姉-----楓、に見えなくもない。
しかし、それは現実にはありえない組み合わせだ。
「七瀬なのよ、あたし」
そう、それは七瀬留美。
初音のボディーガードを自称するという矛盾の乙女だ。

ふたりは、柏木耕一と七瀬彰を追っている。
もともと迷いはあった。
ひとつは、先行した二人を追うこと。
これは初音の希望でもあるし、二人の助けになれば…という思いもある。
もうひとつは、潜水艦がどこかにある、という高槻の言葉。
七瀬は、その疑わしい言葉を信じている。
だから、そうした沿岸部の施設を捜索するべきなのかと思考を巡らせていた。
 

340 :運命の輪(2):2001/06/27(水) 08:17

しかし、その時(小さいから解らなかったのか)忽然とあらわれた、さすらいの
女医(ヤブっぽいけど)観月マナによって迷いは吹き飛んだ。
死んだはずの、柏木家の長女と次女が生きている、そして初音や耕一を探すと
ともにゲームの主催者達と対決する決意を見せていることを。

「…でさ」
頭の後ろで手を組みながら、いくぶん緊張感なさげに七瀬は言う。
「ずんずん進んでるけど…なんかの、目星はついてるの?」
「うん。
 -----マナさんの話にあった、バイクとロボットの話なんだけど…」
「それが、あの二人とどういう関係になるの?」
七瀬にはさっぱり解らない。
年下の少女に教えを請うように、あとを促す。

「うん、そのロボットなんだけど。
 参加者に来栖川製のロボットが二体いたのを除けば、この島では珍しいでしょ?」
「そういや他には見ないね。
 主催者側の手伝いにいるくらい…」
「だよ、ね?」
そうだ。
戦闘用のロボットが出現するようなところは、裏を返せばそれなりの重要施設が
あるということなのだ。

ふたりは丘を登り始める。
-----思った以上に、目指す二人は近かった。

341 :運命の輪(3):2001/06/27(水) 08:18


その殺風景な岩山にくり抜かれた出入り口。
それは、いかにも軍事施設と言い張っているようにしか見えない。
岩場に巧妙に隠され、簡単には発見できないはずのそれを、目立たせる存在があった。

施設への通路守るように、不似合いな人影が仁王立ちしている。
小柄な女性の姿。
しかし、容姿に似合わぬ威圧感が彼女にはあった。
戦闘ヘリに匹敵する機動性と、砲弾の直撃に耐えうる装甲。
そうした性能は、顔付きさえ変えてしまうのだろうか。
人への奉仕のために作られた彼女の姉妹とはかけ離れた、厳しい表情を浮かべて
ひとり、立ち尽くしている。

「彰君…あれ、なんだろう」
林立する岩塊のうしろで、気味悪そうな声を出す青年がいた。
「なんです耕一さん?
 なんか、見つけたんですか」
ふたりでロボットを観察する。

再び岩陰に隠れると、彰は腰をおろして言った。
「来栖川の…メイドロボット…じゃなさそうですね」
「あんな顔のメイド、誰が必要とするもんか」
藪を抜け、岩場に入り道なき道を進んできた彼らは、運良くロボットの死角に出ていた。
もし通路を歩いて正面から遭遇していたらとは…あまり考えたくない。

「それになんで、あの通路にだけ配置されてるんでしょうね」
「どういうことだい?」
耕一にはさっぱり解らない。
年下の少年に教えを請うように、あとを促す。

342 :運命の輪(4):2001/06/27(水) 08:19

「それは-----」
「-----穴熊でもなければ、重要拠点には抜け道を用意する。
 頭のよい兎は、三つの抜け穴を用意するという。
 人間ならば、尚更だ」

何の気配もなく。
降って沸いたように、男が立っていた。
彰と耕一はキツネにでも化かされたかのように、呆然として動けなかった。
「な-----」

「勇気ある青年たちよ。
 …悪いが、尾行させてもらった」
「「!?」」
彰が怪我をしている以上、距離さえおけば二人を尾行することなど簡単だ。
しかし、こういう気配を身に纏える人物に尾行されたという事実は、恐怖に近い。
「何者…だ」
幾分気圧されながらも、耕一が集中力を高める。

それを抑えるかのように、渋みのある微笑を浮かべ男は言う。
「そう身構えるな。
 私は、君らのような同士をこそ、望んでいたのだ-----」
いくぶん悲壮な顔をして、腕に抱えた女性(?)をそっと降ろす。
それに合わせるように、荒涼とした岩場を一陣の旋風が吹き抜ける。

「坂神蝉丸。
 蝉丸と、呼んでくれ-----」

男は。
…月代の気絶により、久々にハードボイルド満喫な蝉丸であった。

343 :運命の輪(5):2001/06/27(水) 08:21

 
鬱蒼とした森を抜けながら、少女はひとり、考えていた。
(あたし、何してるんだろうね?)
失った仲間のことを思うと、これ以上むやみに他人とツルむ気にはなれなかった。
だからと言って主催者側の連中が、ひとりでどうこうできるような、そんな相手ではないと
解っている。

(刀一本道連れに。
 仁侠映画じゃないんだから、いくらなんだって無理だってーの)
無理矢理気を楽にしようとした想像も、やはり不可能の三文字へと到達してしまう。

(仲間、ねえ…)
郁未。葉子さん。少年。
この三人がまず浮かぶ。
しかし、あれほど捜しても会えなかった相手を目的に、再び駆け回るのはどうだろう。

(他には…)
…いない。
誰が好き好んで闘争の場に身を置くだろう。
普通は怯えて、誰かを襲うか、または逆に襲われて、それで手一杯のはずだ。
主催者側の人間と戦う。
それは個人的な怨恨を抜きにして高度な視点で見れば、他の全員に対する奉仕と
言ってもいい。
知らない誰かさえも含めた全員を守るために、戦争屋と戦う。
そんなことに手を貸すような知り合いは、先の三人を除けば全て-----

-----いや、ひとり、いた。

344 :運命の輪(6):2001/06/27(水) 08:24

『さっさと行きなさいよ』
『ふん。-----言われないでも、出て行くわよ』

『『次はきっと、絶対、勝つわよ!』』

…あまり気が進まない気もするが、いた。
あいつなら、きっと。
そう考えが纏まると、なんとなく気が軽くなる。
もともと考えるより行動するほうが好きな性質だ。

巳間晴香は、求める相棒と良く似ている。
本人達は、認めないのだが。

そして駆け出そうとした晴香の前に。
人影がよぎった。
慌てて晴香は見を隠す。
男が、ひとり。
最初のホールに、こんな男はいなかった。
最年長だと思われた、目付きの悪い男よりも年上だ。
(主催者側の…人間か…)

なにやら呟く声が聞こえる。
意味が通っているのだが、何か浮ついたような、そんな不安定な言葉を声の大小絡めて
吐き出していた。
怒っているのか、それとも何かに憑かれているのか。
汗とも涎ともつかぬ水滴をぼたぼたと流しながら、男は丘へと続く道を進んでいった。

345 :運命の輪(7):2001/06/27(水) 08:28

(この先に…主催者側の施設でもあるのかしら?)
小首を傾げて晴香は考える。
仲間を集めるのが先か。
場所の見当をつけるのが先か。

(ま、あとでも…チャンスは一緒だしね…)
晴香はそう決めて、男の後を尾けることにした。

それが、求める人物への道でもあったのだが。


もしも空から眺めたなら。
彼らが大きな輪の上に居るように見えただろう。

大きな
大きな
輪を描いて。

運命の流れは、一転に集中しようとしていた。

346 :名無したちの挽歌:2001/06/27(水) 08:30
また多数戦闘への道を。
最近しばらく晴香も暇そうですし。

347 :二択【1】:2001/06/27(水) 15:11
(…やっぱり、こうなるのですね)
 向けられるデザードイーグルの銃口を見つめながら、里村茜はため息をついた。
 その感情は絶望というよりも、現実の認識といったほうがいい。
 当たり前の話だった。この自分が、7人の命を踏みにじった自分が、慕ってくる後輩を手にかけ、やさしいあの少年を手にかけ、親友をにかけた自分が、許されるはずない。
 その罪を背負い、少しでもその償いができるように、そんな風にして自分が生きていることを喜んでくれる少年の傍ら生きていくことなんて、許されるはずがない。

(いえ、これこそ身に過ぎた果報かもしれませんね)

 本来ならば即座に頭を吹き飛ばされても文句は言えないのだ。
 ならば、早く連れて行ってほしい。これ以上ぐずぐずしていたら祐一たちが来てしまう。
 こんな身から出たさびに、祐一たちを巻き込むわけにはいかないのだ。
「わかりました」だから茜はそういった。「はやく連れて行ってください」
ゆっくりと手を頭の後ろで組む。
「…ほら、お母さんも往人さんも。危ないよ、こんなもの」
その声に呼応して観鈴が一歩、往人と晴子の前に出る。
「私観鈴、よろしく。あなたの名前、聞きたいな」
観鈴がそう笑いかけたのと、
「茜ぇぇぇぇ!!」
祐一の叫び声がこだまするのが、同時だった。
「なんやっ!?」
「仲間か!?」
一瞬、二人の注意が祐一の声のほうに向けられる。
その一瞬に茜は、
        その行動は、理屈というより、
先ほどしまいこんだコルトガバメントを引き抜くと、
        祐一たちが戦いに巻き込まれるなら、
その動作ともに観鈴の腕を引っ張り、
        有利な状況に持ち込むべきだ、という理屈というより、
その身を盾にして、
        相手の隙を見つけたならばそのように行動してしまう、
銃口を首に突きつけて、
        既に染み付いてしまった、
叫んだ。
        殺人者としての性なのかもしれない。
「動かないで、撃ちますよ!」
 祐一が、繭が、なつみが見たのはそんな光景だった。

348 :二択【2】:2001/06/27(水) 15:12
何をしているんだろう。
なつみは思った。
何をしているんだろう、この女は。

『復讐とか何だか知らないけど、折角残った命を大切にしようって気があるの?』
あの人はそういった。
『居場所が無いなら、探せばいいじゃない』
日本刀を手にした、私たちの前で戦った、文句なしにかっこいいあの人はそういった。
あの人、巳間晴香さんには、何度礼を言っても足りないと思う。
だから、里村茜を許そうと思った。
憎しみが消えたわけじゃない。
わだかまりがなくなったわけでもない。
でも、あの人には敬意を払いたい。
『生きる権利なんて、誰にもあるのよ。あんたなりに、生き残りなさい。』
その言葉を大事にしたい。
だから、今は無理でも、この女を許そうと思った。
そばにいることで、ゆっくりと許していこうと思った。
そこを、私の居場所にしたいと思った。

なのに。
何をしているんだろう、この女は。
友人を殺しといて、その涙も乾かぬうちに…
女の子を盾にしているなんて…!
許せなかった。
思いを、決意を、踏みにじられた気がした。
だから、
「あなたはぁぁぁぁっ!!」
怒声を上げて、隣にいた祐一から濃硫酸銃をひったっくって、その銃口を茜のほうへ向ける。

349 :二択【3】:2001/06/27(水) 15:13
だけど、
「っく…!?」
往人たちにしてみれば、それは、茜の援護をしているようにしか見えなくて。
反射的になつみのほうへ向けた往人のデザートイーグルが火を噴く。
バッァン、ビチャァ。
それは銃声、なつみの左腕がはじけとんだ音。
「て、てめぇは!?」
「な、なつみさん!?」
叫ぶ祐一、繭。
だが、なつみは倒れなかった。銃を手放さなかった。そうして引き金を引く。茜に向けて。
「キャァッ!!」
悲鳴をあげる観鈴。だが、硫酸は茜にも観鈴にもかからない。
狙いをつけるだけの余力がもうないのだ。なつみには。
だが、なつみは引き金をさらに二度三度引く。
「なにやってるんだよ!!なつみぃ!!」
そういってウォーターガンを取り返そうとする祐一を無視して。
たまらず茜は、観鈴を晴子のほうへ押し付けると背を向けて茂みの中へ駆け出した。
「またんかいこらぁ!!」
観鈴を抱きかかえる格好になりながら、それでも晴子は茂みの中に消えようとしていた茜の背に狙いをつける。

350 :二択【4】:2001/06/27(水) 15:24
 だが、その引き金を引くよりも、祐一がなつみから奪い返した(なつみの握力などもうなくなっていた、引き金を引いたなんて奇跡だ)ウオーターガンで晴子を撃つ方がはやかった。
 その濃硫酸は服の上から晴子の二の腕にかかる。
 その肌からジュッと耳障りな音がたつ。
「グア…!!」
 たまらず悲鳴をあげる晴子。その手からシグザウェルがおちる。
 祐一はすばやく銃口を往人のほうへ向けた。
 往人も既にデザートイーグルを祐一のほうへ向けている。
「何もんなんだよ、あんたら…!!」
 茂みの中へ消えた茜を追う繭を尻目にみながら祐一は怒鳴りつける。
 その額には汗。即死させるのが難しいこのウオーターガンで拳銃と立ち向かうことができるだろうか?

 だが、動揺というなら往人のほうが深い。先ほどの一発が最後の弾だったのだから。
 晴子のシグザウエルは、観鈴が拾い上げていたが、
(あいつに、人が撃てるか?)
 撃てるとは思えなかったし、撃てると思いたくもなかった。
「晴子!大丈夫なのか!?」
 祐一から目を離さずに往人は問う。
「平気や。こんな…もん」
「ダメ…!すぐに水で洗い流さないと!!」
「チッ」
 往人は舌打ちした。ここまでか。
 だから、往人は強引に晴子を引き寄せ片腕で抱き寄せると、銃口を祐一に向けたまま、
 一度だけ、強く祐一をにらむと、
 観鈴とともに茂みの中へ消えた。

351 :二択【5】:2001/06/27(水) 15:25
 繭が茜の跡を追ったのは、実はそれほど賢い選択ではなかった。
 残って祐一のサポートをすべきだったのかもしれない。
 だが、繭の中にもある種の疑念が渦巻いていた。
 それは、なつみの場合はもはや確信となったものであるが、すなわち

 まだ、里村茜は、殺人者ではないのか?
 
 そういうことだった。
 観鈴に銃口を突きつけている姿はそう思わせるに充分だった。
 そして、茜がまだ殺人者だというならば。
 最も多くの武器を所持している彼女を放置しておくことほど危険なことはないのだ。
 「待ちなさい、里村さん…!!」
 そうやって呼びかけながら、走る茜の背中に、ほとんど体当たりといっていい勢いで組み付いたのは、結局その疑念がさせたことだった。
 『キャアッ…!?』
 茜と繭は同時に悲鳴をあげる。
 全速力でそのように組み付けば、二人とも転倒するのは当然だった。
 そのまま惰性で、ごろごろと二人は組み合ったまま茂みの中を転がる。
 そして、急に視界が開けた。それだけじゃなくて、
「嘘…!」
「なッ…!?」
 下に地面がなかった。
 崖が、茂みのせいで隠されていたのだ。

352 :二択【6/6】:2001/06/27(水) 15:26
 そのままだったら、二人とも組み合ったまま転落していただろう。
 下の地面にたたきつけられていただろう。
 だが、今まさに落下していく二人の腕が引っ張られた。
「祐一…」
「あんた、大丈夫なの!?」
「くッ…待ってろ…今引き上げてやる。」
 ほとんど飛びつくようにして祐一は右手で繭の腕を、左手で茜の腕を引っつかんでいた。
 腹ばいになって、肩より上を乗り出し、虚空にぶら下がる少女二人を必死に引き上げよ うとしている。
 だが、
「く…そ…」
 それは無理だ。とても無理だ。
 繭も茜も、小柄なほうではあるが、それでも二人の人間をこの態勢で引き上げることはできない。

 そう、二人の人間は。

 ズリッ、ズリッと、祐一の体が前に引きずられていく。
 ぱらぱらと落ちる小石。
 おもわず繭は下を見てしまう。
 高い。下に植物があるとはいえ、落ちたらおそらく、
 助からない。
「必ず…必ず…助けて…やる」
 食いしばった歯の間から悲痛なうめきがもれる。けれど、
 …三人はもはや悟っていた。
 このままでは、全員が転落するか、
 繭か茜、どちらかが死ぬしかないということに。

【晴子右腕を負傷】
【往人のデザートイーグル弾切れ】

353 :新たなる目的〜1:2001/06/27(水) 16:22
「お母さん、大丈夫?」
「大丈夫なわけあるかい!硫酸みたいな物をぶっかけられたんやで!」
「そ、そうだよね」
「とにかく腕をを洗わへんとな・・・」
現在、往人、晴子、観鈴の3人は、森を離れ、とにかく晴子の腕にかかった硫酸を洗い流そうと、水のある所を探していた。
幸いにもすぐに池が見つかり、近くに人の気配もなかったので、一行は晴子の治療に専念することにした。
晴子が水辺に腕を近付け、往人が水をかける。
バシャ!
「ぐう・・・メッチャ染みるで・・」
「我慢しろ、洗い流さないと更に酷くなるぞ」
こんな時、聖がいればな、と往人は晴子の腕の処置をしながら唐突に思った。
だが、聖はもういない。
佳乃も、美凪も、みちるも、もうこの世には居ないのだ。




晴子の腕に付いていた硫酸を洗い、観鈴の持っていたハンカチで傷口を縛った。
「よし、一応はこれで大丈夫だと思う。後でちゃんとした治療をしないとな」
「すまへんな、居候」
「気にするな。あの時判断を誤った俺にも責任がある。撃った時点ですぐに逃げればこうはならなかった」
「しかしあの女・・今度会ったらゆるさへん。絶対に殺してやるで」
「ダメだよ、お母さん・・・」
そう言ったのは他でもない.銃を突きつけられた観鈴本人だ。
「何言ってんのや。撃たれてたかもしれない本人が」
「だけど・・・あの人の目、凄く寂しそうだった。きっとあんな事したのも訳が・・」
「美観」
美観が言い終えるのよりも早く、往人がその言葉を遮った。
「どんな事情があろうとも俺はもう、あの女を信用は出来ない.多分晴子もそうだろう。だから――」
そこで往人は息を吸い、
「次にあの女に会ったときは、容赦なく撃つ。その時に、邪魔をするなよ。美観」

354 :新たなる目的〜2:2001/06/27(水) 16:41
「うん・・・」
仕方が無くといった感じで美観は引き下がった。
「ならこの話はもうお終いだ。問題はこれからの行動だな・・」
何かいい考えはあるかと、往人は二人に聞いてみたが、帰ってきたのは何も、と言う答えだけだった。
「それなら・・」
と言って往人は言葉を続けた。
「俺は、仲間を探そうと思う。このゲームの管理者とやらと戦うにも、ここから逃るにしても、人数は多い方がいいからな。
 ただ、さっきのような目に遭うと言うことももちろん考えられる」
往人は一旦息を吐き、言葉を続ける。
「だから信用できる奴のみだ。タイミングよく近づいて、しっかりとこちらの考えを話せばうまくいくはずだ。
 いろいろ考えたが、現状ではこれが一番ベストな考えだと思う。二人とも、いいか?」
「そうやな、さっきみたいな目に遭うのはゴメンやけどこの先ウチらだけじゃどうしようもないもんな。賛成や」
「私も・・往人さんがそういうなら間違いないと思う。私も賛成する」
「分かった。ならすぐに動こう。こうしている間にもまた誰か死んでいるかもしれない」
そうして、動く準備をしている時に、往人は自分の銃にもう弾が入っていないことを思い出した。
(バッグに戻しておくか・・・ん、待てよ・・)
そう言えば、自分はあの時会った――確か氷上シュンといっていた男のバッグに何が入っているか確かめただろうか?
(そういえばずいぶんと重かったな、あのバッグ)

355 :新たなる目的〜3:2001/06/27(水) 16:42
今まで確かめてなかった事に、自分の迂闊さを悔いながら往人はシュンのバッグを開けた。
「本当に迂闊だったな・・・」
バッグに入っていた大きなものの正体はかなりの大きな銃(ベネリM3ショットガン)だった。
「なんや・・そんなもん持ってたんかいな」
自分の銃に弾を込めていた晴子が驚きの目をこちらに向けていた。
「いや・・今分かった。開ける気もなかったんでな。やけに重かったので気にはなってたんだが・・」
「ちゃんとみとけや、アホ」
「気をつける」
そういいながら往人はベネリM3に目をやった。
(氷上とかいったな・・この銃、使わせてもらうぜ・・)  



「よし、行くぞ」
「ええで」
「うん」
そうして三人はまた動き出した。
新たなる目的を持ち。


【国崎往人 神尾美観 神尾晴子 仲間集めの移動開始】
【往人 ベネリM3装備(デザート・イーグルはバッグの中)】

356 :新たなる目的作者:2001/06/27(水) 16:46
新規参加です。以後よろしくお願いします。
何か矛盾点があったらNGで。

早速間違いです
×新たなる目的を持ち
○新たなる目的をもって

357 :名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 16:49
>>356
途中から誰かサンの名前が変わっとるで〜(藁

358 :名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 17:02
みみ…

359 :新たなる目的作者:2001/06/27(水) 17:11
再び修正
×美観
○観鈴
美観って何者だよ!俺のバカ!

360 :名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 17:53
感想スレ移動

葉鍵ロワイヤル感想&討論スレ#5
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=993479275

361 :霞 - 1:2001/06/27(水) 19:22
全てが夢であればいいと思った。

目覚めた時、私は自宅のベッドの上で目を覚まし。
少しおかしな夢を見ていただけだったのだと――

「真琴?」
――ええ、私の友達なんです。

海。
夕暮れ――いや、明け方の海岸。
朝の淡い光の差し込む海岸。
何故か、少女は此処に居た。
隣に立つ――見てはいないが――少年の気配は。
酷く優しげで。
自分を捨てる事で、他の全てを救おうとする――
そんな優しさ。
それを何処かで得た少年。
得る事になってしまった少年。
――でも、何処で?

――随分とわがままで……いつも祐一さんを困らせてるそうです。
「祐一さんっていうのは……確か、天野さんの友達だったっけ?」
――はい。

砂を踏み締める。
じゃり、という微かな音。
確かめる――これは現実だと。
――コレハゲンジツ。
なのに。
どうして、目の前の朝日が眩しくないのか?

362 :霞 - 2:2001/06/27(水) 19:23
――"これ"が終わったら――まず、会いに行こうと思って。
「これ?」
――あれ……。
――これって、何でしたっけ?

困ったような、苦笑するような。
そんな感じの笑みを、隣に立った少年は浮かべた――筈だ。
少年――祐介が、立ち上がる。
ふわりと、肩に手を置いた。
――酷く、冷たい手を。

「――天野さん」
――はい。
「君は――その、真琴って子に会いに行かなきゃいけないんだよね?」
――はい。
「だったら――。
 ゲームに戻った方がいい」

突然、消えた。
先程まで感じていた筈の――そこに在った筈の人の気配が。
振り返る。
――居ない。
いや、いる。
否、"あった"。
右腕だけが――

――ひっ……!
「……さぁ」

酷く冷たい声――。

363 :霞 - 3:2001/06/27(水) 19:24
ざぁっ――

風が巻き起こる。
消える。
消える。
先程まであった筈の景色が。
そこにあった筈の人の気配が。
身体が。
そして広がる――紅。
深紅。
血のような――

ぎっ。
全身が絡め取られるような。
いや、違う。
――ピアノ線?
祐介、さん?

――あ……い……い、あぁ。

もはや声にもならぬ声。
何かが叫ぶ。
誰、これは――私?
それとも――?

364 :霞 - 4:2001/06/27(水) 19:27
――殺――。

――殺サ――デ。

――殺――ナイ――!

――殺さないで。


「……い……いや」

「嫌……嫌ぁぁあぁあああああああああ……っ!!」


ぶつん。
――右腕が飛んだ。





跳ね起きた。
途端、押し寄せる嘔吐感――
構わず、吐いた。
服に掛からない様にしたのは、微かに残った理性が為したものか。
………。
吐いたところで――何も出てくる事は無い。

365 :霞 - 5:2001/06/27(水) 19:28
※二行改行※
木漏れ日。
寝転ぶ少女の顔に掛かるそれは、優しげで。
――残酷な現実を。
夢ではないと確認させるようで。
右腕にも当たる筈の日差しは、その暖かさを伝えない。
――伝えない。
当たり前だ。
――無いのだから。
「………」
ぐるぐると、思考は巡る。
――裏切られた?
いや、違う!
――違う?
そう。
なら、ついさっき、出会った時の顔は何だ?
驚いていたじゃないか。
喜んでいたじゃないか。
――取り逃がした獲物を見つけた喜びかもしれない。
――遭うとは思わなかった敵と出逢ってしまった驚きかもしれない。
違う――。
違う、違う、違う!
私は――
ワタシ、ハ――


彷徨う想いは、まだ――
出口を知らない。



【天野美汐 気絶から回復――混乱状態に陥る】

366 :彗夜:2001/06/27(水) 19:29
書きました。
うーん……祐介の場所は次の書き手に任せます。

367 :いつかの決着(ケリ)(1/6):2001/06/27(水) 21:02
「ぐうっ…」
きしむ腕、悲鳴をあげる筋肉。
恐ろしいほどの血管を浮かび上がらせながら、祐一は呻いた。
ガラッ……砂が、固まった泥が、崖の断面にぶつかり合い、粉となって虚空に消える。
「まっ、繭っ!!どっかに足場…ないのかっ…!!」
「ごめんっ……ないっ!!」
そう言いながら、自分の体に括り付けてあった荷物を捨てる。
舞い降りる土砂と共に、繭の荷物が崖下へと吸い込まれていく。
それを見た祐一の視界がぐらりと揺らいだ。
「里村さんも…荷物捨てて!」
繭の言葉。
「……そうですね」
落ち着いた風に、茜もそれに習う。
ガクン……若干、左腕にかかる重量が一気に軽くなってバランスを崩しかける。
「くぅ……」
だが、祐一も男。そこは持ち直した。
おかげでもう少し持ちそうだったが、時間の問題だ。
(くそっ…こんなときに力があればっ……!!)
脂汗が、祐一の全身を包み、力を奪っていく。

368 :いつかの決着(ケリ)(1/6):2001/06/27(水) 21:03
「……じゃあ、こういうのはどうですか?」
開いたほうの手で、唯一捨てなかったコルト・ガバメントを構える。
カチッ……
「茜っ!?」
「このままじゃ全員死にます。それよりは…いいと思います」
繭に、向けられた銃口。
「里村さんっ……!?」
予期せぬ事態に、繭の下半身が宙に揺れる。
(な、なにしてんだ茜っ!!)
叫びたかったが、叫べなかった。少しでも気を抜くと、自分も含め、三人全員が奈落の底へと落ちてしまうから。
「私は――ためらいませんよ」
繭と、祐一と。
それぞれの顔を交互に目だけで見やりながら茜が呟いた。
――その声はとても冷たく。

369 :いつかの決着(ケリ)(3/6):2001/06/27(水) 21:04
茜が大切な親友達を撃ち殺したその罪。
(私は、一番汚い方法でケリをつけようとしてるのかもしれません)
「……茜っ!!」
祐一の叫びが聞こえる。
(帰ってこなかった幼なじみのあの人。いつまでも待ちつづけた私)
すっ…と、大きく息を吸って。
(帰るために殺しつづけた私)
「これが、私の選んだ道です」
グイッ……
繭の頭に、照準を合わせる。
「さ、里村さんっ!!」
繭の片腕が、それを奪おうと宙をかいたが届かなかった。
繭の体が、振り子のように揺れる。
(もし、撃ってみろ…そのときは…茜、お前も死ぬぞ…もちろん俺も)
声にこそ出せなかったが、その表情と思いは、二人の心に伝わった。
(やめろ…茜…)
極限状態の中で腕を閉じ、出来る限り二人の体の幅を縮める。もちろん繭に茜の銃を奪ってもらう為だ。
体と共に、繭と茜の心が揺れた。

370 :いつかの決着(ケリ)(4/6):2001/06/27(水) 21:07
「祐一、私達を引き上げることはあなたでは無理です」
「里村さんっ…!!そんなこと言わないでっ!!」
既に、祐一の腹までが崖下に乗り出している。
一人ならばいざ知らず、二人相手では絶対に踏ん張りがきかない。
「あ……かねっ……!」
「あなたは…何も変わってませんでした。私がこう言うのは許されないことだけど、少し嬉しかった。
 あなたはきっと…最後まで手を離さないでしょうね」
ただ…それは、ただのバカです…と付け加えて。
「だから、私が決めます。どうせ死ぬのなら、私が撃てば…」
「やめて、里村さんっ!!」
「さようなら」
ドンッ……!!

――銃声が木を大きく揺らした。

371 :いつかの決着(ケリ)(5/6):2001/06/27(水) 21:08
「多分、私は、一番汚い…方法で…決着を……つけようとしてたのかもしれ……」
茜の手から、コルト・ガバメントが落ちた。
「がはっ……ハア…ハア…」
祐一の、背中越しに見えた影。
苦しそうに息を吐きながら、銃を撃った少女、牧部なつみ。
残された右腕に、放り出していたカスタムウォーターガンを携えて。
流れ出る血が、祐一の背中を濡らし、脂汗と交じり合って、地面へと流れた。
「な……」
弾丸は、茜の体を。
酸は、茜の顔を。
それぞれ蹂躙して。
「あかねっ!!」

「かはっ……私…撃ったのね……」
もう、痛みなどなかった。ただ、血の流れ行く感覚だけが…なつみには感じられた。
ただ、撃った。祐一と、繭とを、助けて…そして、非道な里村茜への復讐の為に。
「店長さんの敵……」
取った。復讐は、叶った。
ただ、今、本当にそれを望んでいたのか。
復讐なんて馬鹿らしい。
「本当ね…」
晴香の言葉を思い出しながら。
(なんにも…ならないね)
嬉しくも、なんともなかった。ただ、殺った…というだけの事実。
(なに、してたんだろうね、わた…し)
その思考を最後に、なつみが倒れた。祐一の背に覆い被さるように。
一瞬遅れて、涙の雫がなつみの体に、落ちて流れた。

372 :いつかの決着(ケリ)(6/6):2001/06/27(水) 21:09
――あの瞬間、茜は確かに自分の方向へと銃口を向けた。

祐一の体の上から降り注ぐ酸と、血。
そして、大地を揺るがす銃声。
茜の体が、大きく揺れた。
酸が顔から首を伝い、制服を黒く焦がしていく。
「わた…し…の…罪です。結局…逃げてしまいました」
腹部から、血が垂れた。
「あかねぇっ!!]
制服が、黒と赤とに彩られて。
「ごめんなさい……生きて償っていけなく…て」
澪と、詩子と、そして殺めてきたすべての人に。
そして、あの人と、祐一に。
「ごめんな…さいっ…!!」
口元から血を滴らせながら――茜の言葉。
罪人には、許されないかもしれない――陳腐な言葉。
頬を濡らした涙が、酸を洗い流していく。

  ――結局…あの空き地には…帰れませんでしたね――

最後の力で、祐一の手を振り払って。
茜の姿が吸い込まれていく――下へ、下へと。
「あっ……あかねぇーーーっ!!」
「里村…さんっ!!」
祐一の叫びと共に、繭の体が舞った。
なつみの体を乗り越え、地面にと転がる。
「くそぉっ!!」
祐一が、降りられそうな場所に目星をつけると、崖下へ一気に滑り降りた。


【079 牧部なつみ 死亡】

【残り29人】

※繭の行動はおまかせで。
※繭と茜のすべてのアイテムは崖下です。

373 :永遠は閉ざされて - 1:2001/06/27(水) 22:25

――それは酷く長い一瞬だった。

手を払う。
それは、茜に残された最後の力。
祐一の手は血で滑り――
その手は離れた。

途端に襲い掛かる、無重力感。

上に見えるのは。
手を放した祐一の、酷く、酷く悲壮な顔。
――そんな、哀しい顔をしないで下さい。
――私は、死んで悔やまれるべきではないですから――。
そう、言いたかった。
けれど、声は出なくて。
胸に穿たれた風穴は、確実に己の命を削り。
奪っていく。
底知れぬ闇へと――。

とうとう、祐一の顔も見えなくなった。
後ろには、深い、深い闇が広がっているのだろう。
――振り返る?
いや。
振り返ったところで、顔から落ちるだけ。
――けれど。
この焼け爛れた顔を。
彼の目に晒すよりはいいかもしれない。
いや――"彼ら"、か。
今。
数瞬前に。
最後の最後に――裏切ってしまった、彼。
そして――
もはや還れぬ、あの地で。
待たねばならなかった――あの人。

374 :永遠は閉ざされて - 2:2001/06/27(水) 22:26
不意に。
遠くに見える、木が。
風に揺れて。
その向こうにある空を――覗かせた。
蒼い空は、何処までも深く。
一瞬だけ、ぽっかりと空いた空間に。
蒼く、蒼く広がっていて。
茜は、手を伸ばした――。


もし、この背中に翼があるのなら――
最期に、一つだけ、願いが叶うのなら――
私は。
あの空を越えて。
行きたい――



「永遠」に。



けれど。
再び風は吹いて。
空はその姿を覆い隠された。
それは。
道を閉ざされたようで。

375 :永遠は閉ざされて - 3:2001/06/27(水) 22:27
――ふふ。

何となく、笑えた。





ごぐっ。
――随分と、鈍い音。
それが、彼女が聞いた、最後の音だった。



【043里村茜 死亡】

【残り28人】

376 :彗夜:2001/06/27(水) 22:28
書きました。

心理パート専門になりつつある……。

377 ::2001/06/28(木) 01:09
 あのあと、ガスッ、とまた音がした。
 それは、何の音だったのだろうか。
 もう相沢祐一にはそれが何かを理解することなどできなかった。
 祐一はそのまま、ゴツゴツとした岩の広がる岩場に、腰から砕け落ちた。

 ここは、どこだ?  よくわからない。 目の前には、なにもない。
 音もない、風もない。ただ、真っ黒な世界。
 そこに俺はたった一人で立っていた。
 目の前には、あなたが同じように、立っていた。
 あなたは、これからどうしたいの? そう、あなたは聞いた。
 俺はあなたに、もう疲れた。もう休みたい。と答えた。
 あなたは言った。 そうか、このまま、茜のところにいくのか? と。
 あぁ、そうしたい。と俺は答えた。
 でも、そうはいかない。とあなたは言った。
 なんで、もういやなんだ。もうすべてがいやなんだ。
 俺はここにもう居たくない。存在したくない。
 もうすべて消えてなくなってしまいたい。
 もう何も考える事もしたくないんだ!
 俺はそう叫んだ。
 ならあなたは死ぬのか? とあなたは言った。
 あぁ。と俺は言った。
 無理だよ。あなたは弱いから、死ぬことなんてできないさ、きっと。 とあなたは言った。
 無言の空間が続いた。
 沈黙を破り、口を開いたのはあなただった。

 ほら、お友達が迎えに来た。

 風を感じた。
 俺は、生きていた。
 そう、相沢祐一は思った。だが、それ以外、何も考えることはできなかった。
 「おい、相沢っ!」
 声が聞こえた。体が、びくん、と跳ねたような気がした。
 ふと、目の前が明るくなった。
 目の前には、祐一にとって、久しぶりに見た、見なれた友人と、見たことも無い、黄色の髪をした、女の子がいた。

378 :俺達は……!?:2001/06/28(木) 01:43
「なんで、俺はこんなところにいるんだ?」

 相沢祐一のふたりに向けられての最初の言葉はこうだった。
 相沢祐一は記憶を無くしていた!
 そう宮内レミィ、北川潤のふたりが気づくまで時間はかからなかった。

 ふたりは祐一をとりあえず休憩できそうな、少し高い草の生えている、草むらを探し、そこで話をすることにした。
 祐一は動こうとしなかったのだが、なんとか北川が背負い、この場所までつれてきたのだった。
 そこで、判ったことが、相沢祐一はここに来るまでの記憶をすべて無くしていた。ただそれだけだった。
 少し休憩をしていたうちに、相沢祐一の元気が少し、回復したようなので、北川は質問を行うことにした。そんなに同じ場所にずっと居座るのは危険かもしれない。と思ったからである。少しでも、覚えてあることがあったらそれだけでもいい、教えて欲しかった。
 それに、相沢祐一が倒れていたということは、近くに危険があるかもしれない。ともいうことだった。

「相沢、俺の事はわかるんだよな?」
「あぁ、判る」
「で、こいつのことはどうだ?」
「ゼンゼン知らない。誰なんだ、そいつは?」
 そう祐一がレミィの方を見て、行った。
 レミィは、潤の腕をつかんで、声をあげた。
「ワタシ達は!」
 それに併せて、北川も声をあげる!
「噂のカップル!」
「レミィと!」
「潤だっ!」

 カップル。
 その言葉を聞いた瞬間に、ずきり。と祐一の頭が痛んだ。

「悪い、少し休ませてくれ」

 そろそろ、移動したほうがいいのでは、と北川は思ったのだが、仕方がないので、もうすこし、この場に居座ることにした。

「あぁ、判った。少しだけな」

 相沢祐一は空を仰ぎ、ごろん、と寝転がった。

379 :修正:2001/06/28(木) 01:46
行った→言った。です。
あと、
近くに危険があるかもしれない。ともいうことだった。
近くに危険があるかもしれない。ということかもしれないのであった。

間違って感想スレにあげちゃうし。

ミスばっかで鬱だ。

380 :辿る1:2001/06/28(木) 03:29
西へ、向かった。
どうしてと聞かれれば、なんとなくとしか言いようが無い。
ただ北への道は閉ざされていて、他に行くところがなかったから、
と言えばその通りかもしれない。

……お腹、空いたなぁ。

「……どうかした?」
「えっ!? う、ううん。なんでもないわ」

もの欲しそうな顔をしてたのかなぁ……。
思わず過剰な反応をしてしまった。
朝から、いや昨日のうちから心配していたことだから。
そう、食糧問題は我々の状況を切迫したものに追い込もうとしているのよ!

「そんなにお腹が空いたかい?」
「そんなこと当たり前じゃない! ……って、わぁ〜〜〜〜!?」

しまった、口に出していたようだ……。
くぅっ、ばれちゃったじゃないのよぉ……。

「早く言えばいいのに。僕の分を上げるよ」
「そんな……、悪いわよ」
「いいんだよ。どうせ僕は水だけでいいし」

クスッと、彼は笑った。

「そうだねぇ……、もう結構歩いたのかな?
 休憩し時かも知れないね」
「う〜〜、そうね……」
「丁度いい、あそこの教会で休もう」
「え、教会? どこどこ」

くるくると首を回す私。

381 :辿る2:2001/06/28(木) 03:31
「あそこだよ」

彼は苦笑して指を指した。

――教会。
白い小さな教会。
それが、そこにあった。

「わあ……」

綺麗なところだと思った。
もし、こんなところで結婚式が挙げられたらどんなに幸せだろう?
私はうっとりしてそれを眺めていた。

「……どうしたの?」
「うん……」

不思議そうに尋ねる彼。
私は茫洋とした返事しか返せない。

「…………まあ、いいか」

でも。
少しの間私の顔を覗き見て、
何かに満足したように、彼は納得した。

「……さあ、いこうか」


「え……」

始めは、困惑。
そして、だんだんと分かってくる。
ここで、なにがあったかが。

――白い教会は、血に汚されていた。

382 :辿る3:2001/06/28(木) 03:32
七色の輝きを灯すステンドグラスは、滴った紅を引き立てて。
噎せ返るような、鉄の匂いを振りまいて。
それなのに、そこはとても静かで――。

「誰か……ここにいたようだね」
彼は言った。

「そう……みたいね」
もしかしたら。
そう言う私の唇は、震えていたのかもしれない。

「……行こう。ここにいると、なんだか無性に悲しくなってくる」
「……うん」

そして、私たちはそこを出た。
誰かが、ここで殺しあっていたんだろうか。
……本当に、そうなんだろうか?

白い教会、白い鳩。
白いウェディングドレスに、白いブーケ。
白で満たされたそこは、幸せの満ちたところのはずなのに。
ここは……違う。
血の紅が染み付いたここは、
ただ痛みと、寂しさと、悲しみしか、語らない。

――二人は知らない。
ここで刻まれた悲しみを。
はかなく散っていった少女たちの思いを。
純粋な、願いを。
血塗られた結婚式。
例え穢れていても、成し遂げたかった願い。
二人は知らない。
そして、もう誰も知ることは無い――。


結局、私たちの休憩はおじゃんになった。

383 :111:2001/06/28(木) 03:33
【郁未、少年:西へ移動中】

384 :ロボットということ1:2001/06/28(木) 05:02
カタカタカタ……キーボードの音が鳴り響く。
017…018…019…
「うーん、一番怪しいのはこいつらか?」
モニターを眺めながら源五郎が呟く。
(女子017番)柏木梓。長い間一緒に行動していた人間と共に、生死反応がいきなり途絶えている。
誰か別のグループと遭遇したわけじゃないのにも関わらず…だ。
監視の届かない屋内での出来事というのもまた気になった。
「少し調べてみますか……」
その時、源五郎専用の特殊携帯がけたたましい音を鳴り響かせる。
「…どうした、HM」
向こうからコンタクトをとってくることは滅多にない。
怪訝、あるいは険しいともとれる表情でそれを取る。
「……目標捕捉、施設ヘト近ヅキマシタ」
「ついにきたのか…御堂か?」
「至近距離ニ019…040…083…一体ハ判別不能デス。
 少シ離レテ021…069…
 反対方向ニ092…ソレトマタモウ一体ノ生体反応…コチラモ特定ハデキマセン」
特定不能の生体反応…長瀬祐介か、七瀬彰か、大庭詠美か、長瀬一族のものか…そして、未知の死んだはずの人間か。
そして、特定できた番号。
「……柏木耕一に巳間晴香…そして坂神蝉丸か…」
苦々しく顔を歪める。
「…はあ…よくもまあこれだけ集まったものだ。
 丁重にお帰りしてもらえ。…ああ、なるべく殺さないようにな。
 ただし、施設に危険が及ぶなら――殺しても構わん」
「了解イタシマシタ」
ツ――――――通信が途絶える。
「ふう、さて、どうなることやら…」
もしもの時は受身ではいられなくなるかもしれないな……そう考えながら再び作業へと入った。

385 :ロボットということ2:2001/06/28(木) 05:03
「……というわけだ」
軽く、お互いに状況を確認しあう。本当に、軽く、だ。
敵…と思われるロボットがいる前であまり長居するのも憚られた。
「とりあえずは一度離れよう…話はそれからだ」
「「はい」」
だが、それは叶わなかった。
「……目標捕捉。タダイマヨリ行動ヲ開始イタシマス…」
「……何か言ったか?あのメイドロボ?」
「…何か…言ったね」
耕一と、彰の台詞。
「……!!伏せろっ!!」
突如、蝉丸が叫んだ。
同時に、彰と耕一の頭を押さえつけ、地面すれすれにまで叩きつける。
「ぐぇ…」
ガァン……!!
三人…いや、正確には気絶している月代を含め四人の上を弾丸と思われるものが通過した。
「(゚д゚)……ん?」
よけなくても、当たらない程度の場所を、通り抜ける。

「立チ去ッテクダサイ…ココハ、禁止区域デス…参加者ノ皆々様ハココヘハ立チ寄ラズげーむヲオ楽シミクダサイ」
メイドロボ特有の機械質な音声があたりにこだまする。
「気付かれた…?いかん、思ったよりも攻撃的のようだ…」
まさかいきなり攻撃してくるとは……
「あ、あれはっ…」
木に突き刺さった飛んできたもの…
「矢…だな」
耕一が姿勢を低くしたままでそう呟く。
『ゆっくりと後ろへ下がれ……』
蝉丸が、手で二人にそう合図する。
月代を引っ張りながら、耕一。
「あいつは…なんなんだ?禁止区域だと?」

386 :ロボットということ3:2001/06/28(木) 05:04
こちらへ向けられたHMの右腕の甲に、黒い穴が開いている。
あそこから、恐るべきスピードで飛び出した矢。
「絶対に顔を出すな…」
人が一人、充分に隠れられるほどの木にそれぞれ一人ずつ身を潜める。
(一度、撤退した方がいいな……)
耕一と、彰と、月代を順番に見やり、そう判断する。
一人は気絶、二人は大怪我をしているようだ。
「スグニ立チ去ッテ下サイ…
 アト10秒、立チ去ラナイ場合ハ敵トミナシ排除シマス」
「……」
「蝉丸さん、ここは…」
「ゆっくり下がれ…」
二人を手で制しながら、蝉丸が言った。

もし、わき目もふらず全速力で転進していたとしたら…4人共全員無事に戦闘回避できただろう。
だが、それを耕一達が分かるはずもなく……
「9……8……7…」
(絶対に顔をだすな…)
ささやきながら、蝉丸。
耕一も、彰も、傷を負っている。素直にそれに従った。
それだけではない。蝉丸の声には、二人にそうさせるだけの有無をいわせないだけの雰囲気があった。
――しかも、耕一は月代を背負っている――

387 :ロボットということ4:2001/06/28(木) 05:05
(あれは、ろぼっとなのか?)
(ええ、そうです)
(では、…遠慮はいらぬ…というところか)
蝉丸が、ベレッタを構えながら、戦闘態勢をとる。
「3……2……1……戦闘開始」
ガァン!!
蝉丸の隠れる木のすぐ横を恐るべきスピードで矢が通り抜ける。
ドン!!
合間を縫って、蝉丸が照準をつけてHMを狙い撃った。
「ほんとにいきなり撃ってきたよ…」
彰もまたマシンガンを構え、そうぼやいた。
「(゚д゚)……むにゃむにゃ…騒がしいぞゴルァ(゚д゚)」
耕一もまた背中で聞こえる寝言を聞き流しながら武器を構える。
「いきなりだったけど…戦闘は避けられない…ということか」
目の前で起こる殺し合い。
それに、いいようのないむなしさを感じながら。

ガイーン……!!
「いかん…まったく歯がたたん」
HMに命中した弾丸。
だが、それは奇妙な金属音と共に弾き飛ばされる。
「防弾チョッキ?」
「かもしれん。それよりも奴の武器は刃物全般のようだ。
 君達が防弾チョッキを着ているとはいえ、まともに当たれば致命傷だ」
「……そうですね」
彰が、自分の防弾チョッキを見つめながら、覚悟したように呟く。
「…そ、そうっすね…」
一方、耕一は自分の防弾服を見つめると、赤くなりながら呟く。
「笑えるなら、大丈夫だ。耕一君、君の武器を当てるんだ。
 それは大砲だろう?それならば奴の防弾チョッキはなんの意味も成さない」
「はいっ……」
「それまでは俺が奴を引き受けよう…」
それを最後に、蝉丸が木から飛び出した。
「捕捉…発射!」
HMの腕から、再び矢が射出されるが、蝉丸は再び木の陰へと身を潜める。

388 :ロボットということ5:2001/06/28(木) 05:06
木の陰から木の陰へと体を移しながら、蝉丸は徐々にHMのほうへと近づいていく。
恐るべきスピードの矢とはいえ、捕捉してからでは捕らえられない蝉丸のそのスピード。
(だが…これ以上は危険だ)
すでに、蝉丸が隠れ潜む木からHMの間に障害物などない。
ドン!!
蝉丸の弾丸が、服に覆われていないHMの足にに命中する。
ガイーン……!!再び弾丸が弾かれる。
(そうか…ろぼっとだからな…防弾仕様なのはボディ全体…というわけか…)
ヒュン…!!
すでに、HMは激しく移動を繰り返していた蝉丸だけに矢の照準を合わせている。

銃こそ効きはしなかったが、HMの気をそらせる…ということだけはできた。
HMは、今完全に耕一に対し、横を向いている。
「今だ、耕一君!!」
叫び。同時に蝉丸が飛び出した。
「…捕捉…!!」
蝉丸の体をHMの右腕が捕らえる。

「でりゃあっ…!!」

ガオーーン!!

耕一のそれ…中華キャノンが火を吹いたのはほぼ同時だった。
「――?回避不能!?」
蝉丸の体に向けて矢を放つ直前――
HMの体を、巨大エネルギーの濁流が飲み込んで、岩山の一角を激しく破壊した。

389 :ロボットということ6:2001/06/28(木) 05:07
「やったぜ!」
耕一が、痛む体のことも忘れ、ガッツポーズをとる。
「やったね、耕一さん!」
彰が、強張らせていた表情を解いて、笑いかける。
「これなら……」
「待て、耕一君…まだ動くなっ!!」
巻き上がる噴煙へと銃を構えたまま、蝉丸が戻ってくる。
木から、木へと、身を隠しながら。
「油断は、死を招くぞ」
諭すようにしながら、それでもそこから目を離さない。

「……」
爆発の中から、人の影。
「………えっ?」
「お、おい…ウソだろ?まるで無傷じゃないか……」
白いスウェットスーツを露出させ、HMが煙の中から何事もなかったかのように姿を現す。
「……耕一君、彰君…君達は逃げろ」
表情を変えないまま、蝉丸が呟く。
「ちょっ……」
「一度態勢を立て直したほうがいい。まともにぶつかっては勝ち目がない
 …いや、倒せる武器がない…と言ったほうが正解か」
(蝉丸さんは…?)
(心配するな、耕一君。俺は奴を引きつけるだけだ)
安心させるような笑みを浮かべ、蝉丸が呟いた。
(月代を頼むぞ)

390 :ロボットということ7:2001/06/28(木) 05:08
「だけど…あんなとんでもない化け物相手に…――!?そうか……」
耕一が、意を決したように叫ぶ。
「どうした、耕一君……」
「中華キャノン…もっと威力をあげる方法があります
 先程の威力とは、比べ物にならない程強力な力が」
ネットで拾った情報ですが、確かなものです…と付け加えて。
「……聞いたことがあるような…ないような…」
彰も緊張の表情を崩さないままに横目で耕一をみやる。
「中華キャノンの力を増幅させれば…あるいは……倒せます」
耕一の顔を、蝉丸は真剣に見つめた。
「……分かった…君を信じよう…確かにあのような危険なろぼっとをのさばらせておくわけにもいかない。
 それに先程気付いたことがある。奴にも弱点はある…ろぼっとという…な。
 絶対に無理はするな。まかせたぞ」
「ちょ、ちょっと……」
彰が混乱している内に、蝉丸は飛び出した。
施設の入り口へと向かって。
「ソノ施設ニ近付クコトハ許サレマセン!!」
耕一達には目もくれず、施設に向かって走るHM。
施設を守るHMにとって、それは一番の重要事項であるから。
「耕一さん、一体何を……」
「威力増幅だ。彰君、君は足を怪我している。
 蝉丸さんはHMを引きつけてくれている。
 これは、俺にしかできないことだ。…任せてくれ」
メイド服のスカートをたくし上げ、露出したブルマに中華キャノンを括り付ける。
「いくぞっ……」
耕一が、高らかに叫んだ。

391 :ロボットということ8:2001/06/28(木) 05:09
HMの右腕が上がりはじめる。
(機械ならではだ)
フェイント、といったものがまったくない。精密さゆえの正確さ。
(それは、ただの直線的な動きでしかない)
蝉丸は、気を練りながら、HMの真正面に対峙する。
施設の入り口の前に仁王立ちするHM。
さらには、腕が上がってから発射される前に…
「目標捕捉…発射…!!」
その台詞と同時に蝉丸は体を宙に躍らせる。
ヒュン!!
蝉丸の立っていたその空間を矢が通り抜けた。
高らかに宣言して撃たれた矢など、軍人として鍛え上げられた蝉丸には容易い。
(そして、次に発射されるまで約三秒……!!)
心眼で相手を見極めるという流派、影花藤幻流の使い手である蝉丸にとって、
直線的かつ精密なその動きをかわすことは造作もなかった。
しかも、発射直前に宣言してくれるというプレゼントつきだ。
(これが…人間であれば脅威なのであろうな)
そう、あの御堂のように。
(結局、機械では強化兵には遠く及ばない…というところか)
再び矢をかわし、懐へと飛び込む。
「……!!」
今度は、HMの左腕から黒い影。
「む」
シャキン!!
左腕の甲の穴よりは、剣の刀身が生えてきていた。
「排除…シマス…!!」
左腕を蝉丸の眼前に向けて振り下ろす、それは、生えた刀身が蝉丸の頭を捕らえることを意味していた。
「むうん!!」
ガキン!!
気合一閃、蝉丸の頭上で火花が散った。

392 :ロボットということ9:2001/06/28(木) 05:10
「耕一さん…一体何を…」
「いいからっ…あきらくん…きみはその娘を守ってやっててくれ…これは…今、おれにしかできないっ!!」
倒れている仮面の女、月代をちらりと見ながら、苦しそうにうめいた。

結界、その中で発揮された完璧なる鬼への衝動。そして、その反動で痛めつけられた体組織。
耕一の筋肉組織は、少々の運動でも悲鳴をあげていた。
「ぐおおおおっ……!!」
鬼の咆哮をあげながら、耕一は上下運動を続けた。
足が浮き沈みするたびに、キャノンの横に添えられた手が動くたびに、キャノンの低い駆動音が大きくなっていく。
同時に、耕一の歪む顔。
「こ、耕一さんっ…」
「し、信じろ……彰君!!」
ガクガクと足を震わせながら、耕一は中華キャノンのチャージを続けた。

(くそっ…なんて情けないんだ…蝉丸さんが…耕一さんが、こんなに自分を犠牲にしてまでも頑張ってるのに…
 僕は何をしてるんだっ!!)
月代をかばうように立つと、HMにマシンガンをむける…が、結局何もできないまま彰は立ち尽くしていた。
心と、足がジクリと痛んだ。

「ねえ、あれ…耕一さんじゃないの……?」
「ほんとだ…耕一お兄ちゃんと彰お兄ちゃんだ…何してるんだろう…」
ちょうど、蝉丸とHMの死闘からは死角の位置で、二人はその光景を目の当たりにした。
苦しそうに脂汗をかきながら上下運動する耕一と、その横でくやしそうに彰。
――ちなみに月代は寝そべっているので二人には確認できなかった。
「い、行ってみましょう…ただごとじゃないわ…いろんな意味で」
「う、うん!」
あたりに気をつけながら、そっと七瀬達は行動を開始した。

393 :ロボットということ10:2001/06/28(木) 05:11
ガキーン!!
蝉丸の頭上で、刀が交錯する。
非業の死を遂げた参加者から譲り受けた毒刀。
「むうん!!」
ガキン!!
そのまま力任せにHMのそれを弾き返す。
「……!!」
バランスを崩しかけたが、それを持ち直すと、よろよろと後退しながらHMの右腕が上がる。
矢が、発射される。
「はあっ…!!」
「捕捉…発射…!!」
蝉丸の動きはまだ止まらなかった。
弾き返した刀を返し、そのままHMの右腕へと叩きつける。
ゴッ……!!ズシャッ!!
強靭なその右腕は傷一つ付きはしなかったが、叩きつけられた右腕からの矢は地面へと反れ、岩盤を穿った。
「……排除…シマスッ…!」
ガキンッ!
息もつかせぬ連続攻撃、HMが間髪いれずに横に凪いできた左腕の剣ごと、剣を叩きつける。
バキッ…!!骨の折れるような音が響き、HMの剣の破片が飛び散った。
「……!!」
機械にも感情があるかのように、わずかにその瞳に動揺が走ったように見えた。
「はあっ!!」
4連攻撃。最後の一撃は、右手の甲、矢の射出口に向かって突き入れられた。
再び破壊音。射出口に突き入れられた刃が、HMの右腕の内部を深くえぐった。
「右腕損傷……完全ニ沈黙シマシタ…修復デキマセン……!」
機械音が、あたりに響く。
ヒュッ…!!一気に剣を引き抜くと、とどめと言わんばかりにHMの後頭部に蹴りを食らわせた。

394 :ロボットということ11:2001/06/28(木) 05:12
「ぐううっ…あと…すこ…し…」
手はまだなんとか動く。だが、足の方が限界だった。
(最後まで…もつか…?俺の体…)
いや、もたせなくてはならない。自分を信じてくれたみんなのためにも。
ギューーン…!!既に中華キャノンの砲身が青く輝きはじめている。
「がんばれっ、耕一さんっ!!」
もはや、彰には祈ることしかできない。
HMとの闘いは蝉丸がその力で圧倒している。
だが、HMの機能を完全に止めるには…もうこれしか方法はない。
「がんばれっ!!」

「……なにしてんの、あんたら……」
突如、右方向からあきれたような声。
「誰だっ……!!…は、初音ちゃんか…隠れててくれ!」
マシンガンを向けかけた彰が、あわててその照準をはずす。
「彰お兄ちゃん?」
その、二人の切羽詰った言動と行動に戸惑いを隠せない初音。
「あたしは無視かいっ!…って、ああっ…!!」
耕一達を追って現れた七瀬と初音、その二人がようやく目の前の死闘に気付く。
「な…こんなときにあんた達何馬鹿やってんのよっ!!」
七瀬の怒号が天をつく。
「(゚д゚)うるせぇぞゴルァ(゚д゚)…ムニャムニャ…」

「ば、ばかなんてやってないっ…ちょうどいいところに……」
耕一の決意が揺らいだ。
(せっかくだから留美ちゃんか…初音ちゃんに…)
二人のチャージ姿を想像してみる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(できるかっ!バカヤロウ!!…男の俺が投げ出してどうするんだ!!)
少しでも楽になりたい――自分のその一瞬でも沸いた思いを耕一は恥じた。
だが……

395 :ロボットということ(ラスト):2001/06/28(木) 05:13
「危ないっ!!」
その耕一の心を遮るように――彰の言葉。
「なっ……ぐあっ……」
バキューン!!
そして突如、予想もしなかった所から沸き起こった銃声。
七瀬を突き飛ばした彰の体が、吹き飛ばされる。
その一瞬が、まるでスローモーションのように。
「なっ…彰君っ!!」
「あ、彰お兄ちゃんっ!!」
「(゚д゚)……う〜ん…えっ…なっ…ここはどこなんだゴルァ(゚д゚)」
彰と、七瀬の体が、地面を転がった。
「ぐふっ…」
腹を押さえて、うめく。

「ふふふ、役者がそろってるようですね…ひひひ…」
ちょうど、蝉丸とHMとを挟むようにして現れたのは…長瀬源三郎だった。
口元からよだれをしたたらせながら…まるで麻薬中毒者のように。


「なんて事をっ…」
蝉丸が、銃声に気を取られた一瞬――
メリッ…
「がはっ…」
HMの左拳が蝉丸の腹に食い込む。血が薄く舞った。
「……捕捉…」
HMの左拳に残されていた約1センチ程の折られた刃の根元が血を滴らせる。
勢いよく引き抜かれたそれが、空中に赤き川をつくり、地面へと落ちた。

(なんてことだ…よりによってこんな時に…)
腹を押さえながら、蝉丸がうめく。
(最悪の――展開だ――)

396 :ロボットということ作者:2001/06/28(木) 05:14
【HM12戦闘型 右腕破損】
※蝉丸の傷は深さ約1センチほど。
※耕一、中華キャノン充電中
※月代、目が覚めました。
※七瀬は突き飛ばされただけです。
※HMの右腕の矢が射出されることはもうないです。左腕の剣も同様。
 左腕にはまだ約1センチほどの刃が残ってます。
 その他に武器があるかどうかは任せます。

397 :ロボットということ作者:2001/06/28(木) 07:10
修正です。
>>391の12行目
>高らかに宣言して撃たれた矢など
の部分を
高らかに宣言して撃たれた矢をよけることなど

に換えてください。

398 :七瀬。:2001/06/28(木) 18:38
最悪の事態――
HMが、そして、気が狂った長瀬源三郎、が。

「くそっ! ここまでやったのにっ!」
身体を起こした七瀬は、その最悪の事態を、観た。
銀髪の青年が、ロボット――HMと対峙し、そして、腹から――血。苦しげな表情で呻く。
そして、今――長瀬源三郎が、七瀬彰に銃弾を放って。
幸いにも彼の意識はまだ絶たれていないようで、弾き飛ばされるも、
七瀬と殆ど同時に顔を上げて、ぎろりとした眼を見せた。
少し離れたところで、焦りの表情と共に、何やら怪しげな動きをしている耕一。
そして、耕一に向けられた、長瀬源三郎の――銃口。
状況が良く掴めなかったが――つまり、

「大ピンチ、って事ね」

右手には鉄パイプが、左手には拳銃が――あるにはある。
だが――あれらと戦うには、あまりにも、弱すぎる。
今立ち上がって、長瀬源三郎を止めに入れば、――きっと、自分は死ぬ。
HMに、きっと、殺されるだろう。
あのように屈強な青年でさえ、ああまでやられているのだ。乙女である自分が敵うはずがないではないか。
珍しく弱気になる。
それは、死への恐怖だったのだろうか?
今、一人でここから逃げ失せれば――自分だけは、助かるかも知れない。

馬鹿な。
――自分らしくない。

敵う敵わないの問題ではない!
折原も瑞佳も死んだ! それぞれが、大切なものを、誇りを守るために!
あたしが、ここで立たないでどうする!
あたしは七瀬だ!

399 :七瀬。:2001/06/28(木) 18:38

「惜しかった――実に惜しかったです、しかし、残念ながらあなた方もこれで終わりです」
不思議なほど明るい微笑みを見せて、長瀬源三郎は――高らかに、声をあげた。
彰は歯軋りする。
何故、身体が動かない?
今、耕一がやられたら――中華キャノンがいかれたならば、きっと、終わりだ。
脱出、ひいては――生き残るための、最後の希望が、無くなるのだ。
管理者側を打倒する、など、格好いい事を云っておきながら、こんなところで。
眩暈。
血。あふれ出る血が目に入る。
防弾チョッキを着ているから、今流れている血は、腹からではない。
そもそも、腹から流れる血が、視界にはいるわけがない。
口から溢れている。
――内臓を、やられたのだろう。
逆流する。――気持ち悪い。

だが――彰は、霞む視界を睨みながら、
まだ立ち上がろうとする。
足に力が入らない。
流れた血は、既に致死量に至っているのかも知れぬ。
膝立ちで、彰は――もう、残弾も少ないだろう、サブマシンガンを、長瀬源三郎に向けた。

ぱららら、と、もうかなり聞き慣れた音がする。
だが、それも、弾切れだ。カラン、という、音がした。

――最後の攻撃は、一発も、当たらなかった。

400 :七瀬。:2001/06/28(木) 18:39
だが――

ゆっくりと、長瀬源三郎はこちらを振り向いて嗤う。

「おっと……まだ、生きていましたか、七瀬彰」

充分だ。
耕一の、エネルギー充電の時間を稼げればいいのだから。
どうせ自分はもう半死人なわけだ。最後の犠牲は自分だけで済めばいい。
耕一があれを倒せば、初音も、冬弥達も、そして、皆、助かる筈だ。
ならば、もう終わる命だ、有効に使ってやるよ! 出来る事はこれくらいだから!
打算もあった。
一種狂人めいた眼をした源三郎が、今、本当に止めねばならぬ耕一よりも、
武器が無くなり、もうただのヒトに過ぎぬ自分を優先するのではないか――
彰は、そう確信していた。
「彰くんっ!」
青ざめた顔でこちらを見る耕一。
「耕一さん、絶対、絶対、初音ちゃんを、守れよっ!」
彰は――最後の力で、叫び声を上げた。

源三郎は、拳銃を、多分、自分の脳髄に向けた。
「長瀬の末裔として、なかなかの戦いを見せてくれたが――これで終いだよ彰くん」
初音の声は聞こえない。
何か、初音が喚いているようにも見えるが、彰の耳には届かない。
こんな、死の間際に至っても走馬燈など見えない。
ただ、世界がモノクロオムの――風景に染まって見えた。
その場面に至って――彰の身体に、僅かに力が戻ったように、思えた。遅すぎるけれど。
――やっと、初音の声が聞こえた。
「彰お兄ちゃぁんっ!」

そして、もう一つ

――雄叫びが、聞こえた。

401 :七瀬。:2001/06/28(木) 18:42
「でぇぇぇぇぇい!
長瀬源三郎は――横から迫り来る自分、
――七瀬留美を見ても、殆ど動揺することなく、足下に弾丸を放つ。
ガァン、と大きな音を立て、自分の足下で土が弾けた。
怯ませるつもりだろうか? 舐めているのか?

まるで足を止めず走り近付いてきて、鉄パイプをかざした自分を見て――
漸く、源三郎の表情は、少しだけ青ざめた。
「鉄砲が怖くて乙女がやれるかあっ!」
力任せに鉄パイプを振り下ろす。
寸ででその攻撃をかわし、源三郎は軽く舌打ちをすると――また、嗤った。
「面白い娘さんだ。だが、その手に手に手に持った拳銃も銃も銃も使わないで私に勝てるとでも思ったら大間違いだ大間違いだ」
大間違いだ。
繰り返す。
――狂人。あまりにもきちがい染みている。
そして、銃口を向け、今度こそ七瀬の脳天にめがけてそれを放つ。
それが当たれば、きっと一瞬の苦しみと共に楽になれるのだろう。
だが、七瀬のそのカモシカのような脚は、七瀬にそんな甘えを許さない。

足が痛まないわけではない。その痛む足で出来うる限りの早さで、七瀬は走る。
「そんな簡単に殺されてたまるかあっ!」
吐き捨て、七瀬は――ある、意図を込めて、ポケットからナイフを取り出すと――それを、投げた。
「あははははははは、まるで見当違いの方向ですよですよですよ」
放物線を描き、それは地面に突き刺さる。
小さな期待と共に、七瀬はまた走り出し――慣れぬ拳銃を手に取り、
そして――引き金を引く。

だが、まるで見当違いの方向にしか弾は飛んでいかない。
「あはははははははは、拳銃を使うのは初めてですかぁ?」

402 :七瀬。:2001/06/28(木) 18:42
源三郎は嗤いながら、自分は手慣れた風に、引き金を引いて、ピンポイントで狙ってくる。
殆ど偶然に近いような回避で、七瀬はその弾丸を回避し続ける。
時間は充分稼げている。
意図は分からないが、耕一が何かをやろうとしているのは、判る。
こちらを見遣りながら、やはり焦った様子で、
「留美ちゃんっ!」と歯がゆそうな声をあげる。
「気にしないでっ! 耕一さん、何でも良いから早く終わらせて!」
「判ってるっ!」
お喋りしている暇はありませんよっ!
云って、弾丸が今度は、自分の耳元すれすれを通り過ぎる。
腰が抜けてもおかしくないような出来事だが、それでも七瀬はまだ走り続ける。
だんだん拳銃の使い方も判ってきた。
それに、――今、背後で、立ち上がった。
期待はしたが、それでも、駄目かも、という予感はあった。

だが、――期待には応えてくれたようだ。

「あはははははははは、何を嗤っているんです七瀬留美ぃぃぃっ」

「――っ!?」
その時、だった。
すしゃり、と、何かが、背中を通ったような感触。
刃物が背中に入り、そして――血があふれ出るのを感じる。
「だ、誰だっ――」

立っていたのは、七瀬彰。先程までと変わらぬ満身創痍にも関わらず、その眼は、甦った。
手に持つのは、先に七瀬が投げたナイフ。そして、赤くなったそれは、源三郎の血。

403 :七瀬。:2001/06/28(木) 18:43
「ちぃっ――!」
源三郎は振り向き、銃口を彰に向ける。
だが、引き金を引く前に、今度は七瀬留美が、背後から走り寄り鉄パイプを振るう!
「ぐはっ!」
源三郎は頭を強打する! だが、意識はまだ途切れない! 狂性が、源三郎を突き動かす!
「貴様ら――舐めやがっ――!」
だが、源三郎がその言葉を言い切る事は出来ない!
彰の左手の拳が、ガツッ! という、鈍い音と共に、その顔面にたたき込まれる!
捻れるほどに弾けた源三郎の顔。そして、そのまま彰は源三郎の身体を固定する。
「行け! 七瀬さんっ!」
「くぅっ――や、やめ」
動けなくなった源三郎、叫ぶ彰、そして、七瀬がその顔面に向けて、もう一度、拳を叩き込む!

ガシィィ!

身体全部を巻き込んで放たれたそのパンチは、悶絶するに充分な破壊力。彰をも巻き込んで、源三郎は弾けた。
源三郎は苦しそうに倒れるが、しかしなお、泥に顔を汚しながらも顔を起こそうとする。
――だが、七瀬はその脚、踵で、再びその顔面を泥に叩きつける!
ガツンッ、と云う、嫌な音を立て、今度こそ、狂性は、閉じられた。

「はぁ、はぁっ――」
――息を乱し、倒れそうになる彰に、肩を貸す者がいる。
「無理させてごめんなさい」
七瀬は、少し申し訳なさそうな顔で、しかし、少し満足げな顔で、云った。
「いえ。大丈夫、です。それより、早く、蝉丸さんのところに、援護を――」
「ええ、あっちも危ないわ、早くしないと――」
「彰くん、留美ちゃんっ! 蝉丸さんが危ない、もう少しだけ、もう少しだけ時間を稼いでくれっ!」
「判ってる!」「判ってるわ!」

――初めて、二人の七瀬は肩を並べ、戦った。普通の人間でありながら、これまで、
  強い、強い力で、生き残ってきた――二人が。


【七瀬彰 七瀬留美 長瀬源三郎を撃破。蝉丸援護へ。
 この戦いの間の蝉丸とHMの戦いの経過は、次の人にお任せします】

404 :紅と闇 - 1:2001/06/28(木) 19:45
「くっ……」
血が――
血が流れていく。
仙命樹の力が、上手く働いてくれない。
日が照っている故だ――
傷が塞がるのが、遅い。
目の前に立った少女――のような"もの"は、暗い瞳を自分に向けた。
そこに光は無い。
――これが、"ろぼっと"というものか――
其れを見て。
蝉丸は、目の前に立つ"物"の恐ろしさを――
認識する。

からん、という軽い音。
少女の手に残されていた、僅かな刃が落ちた。
武器は失われた――?

ばちっ。

否。
その予想――或いは希望――を踏みにじるかのように、不吉な音が鳴った。
見れば。
少女の左手に、異様な気配を感じた。
右手は、奇怪な音を発しているものの――
不吉な"何か"を感じさせることはない。
――電撃。
察知。
そして、その予想は――当たりだ。

405 :紅と闇 - 2:2001/06/28(木) 19:46
思案も、対処も考える間も無く。
少女の左手が打ち出される。
咄嗟に身を引いた――
血の線が宙に引かれる。
「――標的、捕捉――破壊――」
不吉な言葉を呟きつつ、HMは蝉丸に近付く。
小柄な身体を利用したそのフットワークは、傷付いた蝉丸を遙かに凌駕する。
横に回られた――
――逃げていては、埒があかないようだな。
仕方がない。
地に着く。
それと共に、弾くように、駆ける。
少女の左手が空を切る。
一瞬の隙。
踏み込み――駆けた勢いを止め、左足を軸とする。
振り返り様に、右の脚を放つ――!
がきぃっ!
鉄の音。
銃弾すら跳ね返すそれは、異様な程硬く。
しかし、正確に肘に放たれた蝉丸の一撃は、HMの左腕を高く、高く叩き上げた。
「―――」
その顔は、無表情であったが――
それでも、やはり唖然としたのだろうか?
無防備な腹。
狙うはそこだ。
「ふっ――!」
強烈な踏み込みと共に放たれた拳は。
鉄が歪む音と共に、少女の身体を遠くに吹き飛ばした。
――だが。

406 :紅と闇 - 3:2001/06/28(木) 19:48
「……くっ」
蝉丸の顔には、脂汗が浮いていた。
点々、と――血が落ちる。
既にその服すらも、紅く染められていた。
傷は、未だ治らず。
戦の場において癒す事もままならず。
その傷は――
確実に蝉丸の体力を蝕んでいった。
少女が、立ち上がる。
ぎりぎり、と奇怪な音を発していた。
――戦えるのか?
自問。
暗き眼を向け。
少女は、其れを"破壊"すべく左手に電撃を纏う――
――俺が戦わずして、誰が彼らを護ると言うのだ。
自答。
今為すべき事は、時間稼ぎ。
自分が少し前に立つ少女を倒す事は叶わぬだろう。
だが。
ここで闘う事が、勝利へと繋がるのなら。
多少の傷など、構わない。
自分は、軍人だ。
その為に在る筈。
だが。

407 :紅と闇 - 4:2001/06/28(木) 19:51
「蝉丸さんっ――!」

不意に、呼び掛ける声。
あの声は。
「いかん――来るなっ!」
蝉丸は、駆け寄らんとする、もう一人の戦士に静止の声を掛けた。


それが間違いだった。


ドンッ!
「がはっ……!?」
気付けば、少女の身体が目の前にあった。
いや――それが離れていく?
どういうことだ。
しかし、そこで気付く、全身が痺れるような感覚。
しまった――蝉丸は気付く。
そう。
振り向いてしまったその隙に。
"あれ"を食らったのか。

408 :紅と闇 - 5:2001/06/28(木) 19:52
※改行無し※
――くっ!
空中で、身体を捻る。
全身を使い、衝撃を止め、そのまま駆け出す――
筈だった。
不意に、ぐらりとその身体が揺れた。
当然だ。
電撃を食らって、無事でいられる筈がない。
一瞬で気絶しなかっただけでも、幸運と言えよう。
――くそっ、不甲斐ない……。

己の力不足を悔やみつつ。
――蝉丸の意識は、闇へと落ちた。



【040坂神蝉丸 電撃によりK.O.】
【HM-12 左手に電撃装置セット】

409 :彗夜:2001/06/28(木) 19:54
施設編に便乗。
ちなみに、セミーは気絶しただけです。
HMの次のターゲットは、次の書き手にお任せします。

410 :彗夜:2001/06/28(木) 21:05
付け加え。
らっちーさん、「紅と闇」が1と2の間とかで一行空欄を入れておいて下さい(4と5の間を除いて)
そうした方が流れが不自然にならないので……w

次回からは改行が無い事を考慮に入れて書かせて頂きます。

411 :力の渦(1):2001/06/28(木) 21:45
カタカタカタ……
機械の檻に囲まれ、冷たい光を浴びながら。
地から湧き出る、鬼の泣き声のような稼動音の中。
源五郎は調査を進めている。

(女子061番)月宮あゆ。
これも怪しいな、そう思って画像を閉じずに並べておく。
画面には文字の羅列と、柏木梓、柏木千鶴、そして月宮あゆが並んでいた。
更に調査を進めるべく、データを読みこもうとした時。

ピッピッピ…
携帯が異常音を発しはじめた。
この音は…HM-12の緊急コード、破損警告だ。
それを聞いて、肩の力を抜く。
調査の腰を折られて、気抜けした顔をしてみる。

「まだまだ大丈夫だとは思うが…確認してみるか」
源五郎は早速破損状態をチェックしはじめる。
なんと言っても自分の身体よりもロボットが好きなのだから、仕方がない。
特にHM-12型は源五郎のお気に入りなのだ。

「ふむ…外皮コーティングの融解、右腕射出口破損、左腕短剣損傷…か」
煙草をひょいと咥え、二・三度ぷらぷらと遊ばせる。

なあに、まだまだ。
そんな余裕すら持って、源五郎は煙草に火をつける。
ぷかぷかと煙を吐きながら考える。

「柏木耕一…それとも坂神蝉丸、か…?
 生物とは、やり方次第で、そこまで達するものなのか…」
源五郎は”人間のこころ”というものを信奉する一方で、”生身の身体”の限界を
感じ、失望していた。
全ての機械に依存する人間は、人間のどこかに諦めを感じているのかもしれない。
興味を覚えて、別の端末に移動する。
「ちょっとばかり、片目を借りるよHM-12…」

412 :力の渦(2):2001/06/28(木) 21:47


「がはっ……!?」
全員の期待に応え、未知の性能を持つロボット相手に戦い続けた武人が、遂に
決定の一打を許してしまっていた。
「攻撃……成功…」
冷たく、事務的に。
無感動な事実が述べられる。

くるくると回るように崩れ落ちる蝉丸。
叫ぶ彰を後ろに残し、七瀬が駆け寄って抱きとめる。
「(´Д`)せ…蝉丸っ!」
月代が蝉丸に被さる。

…不覚。
無意識にだろう、そう呟いて蝉丸は力尽きる。
ロボットの刃に絡む血が、鮮やかだ-----動脈をやられているのだろうか。
月代に蝉丸を任せ、七瀬は一人、HM-12に対峙する。

ひどく透明な瞳孔が、高らかに機械であることを主張していた。
(機械のくせに-----)
悔しさをぶつけるように、その眼を注視していた七瀬が、ぎょっとした。

右眼がぐるん、と。
左眼と全く違う方向に動いたのだ。

その眼は後ろにいる彰、もしくは駈け寄っているであろう初音を捕らえた。
そう確信し七瀬は焦りを覚える。
危機感に汗が噴き出す。
ふらつく身体に鞭を打ち、闘争を続けるべく得物を握るその手に、力をこめる。
(機械のくせに-----生意気なのよ!)

413 :力の渦(3):2001/06/28(木) 21:48


「えーと…なんだ?装備充電中か。放電したな?
 成功?坂神蝉丸は倒したのか?
 で…なんだ?この坂神を引きずっているお面(´Д`)は?
 それから…七瀬留美。
 ん?なんだこいつは?何やってるんだ?柏木耕一か?」
ぶつぶつ言いながら右眼のカメラを動かしていく。

「んー…こりゃひどい怪我だな、彰くんか。
 巳間晴香は…こっちには居ないようだな…」
更にカメラを動かす。
そのとき。
源五郎は、その眼の動きを見た七瀬と同様に、ぎょっとする。

「ん?これは?
 と…父さんか!?」
泡を吹きながら、地に伏す父の姿が、そこにあった。

ドガ!
画像が揺れる。
「なんだ?!
 くっ…これ以上は無理か!」
仕方なく統制を再度HM-12に戻す。

「HM-12、方針変更だ。
 やれることをやれ。殺して構わん。
 充電終了次第、獅子吼の使用も認める」
源五郎は方針を改めることにした。
それは、自らもリスクを負わざるを得ない情況に陥ったと、そう覚悟した上での
決断であった。 

414 :力の渦(4):2001/06/28(木) 21:50


ちょうどHM-12の右側から。
初音は無謀にも体当たりしていた。
「初音ちゃん!」
七瀬が間に割って入る。
普通なら許されぬはずの、迂闊な動きにロボットは反応しなかった。

「コマンド変更」
短く、何を意味するか解らない。
だが不吉な予感を漂わせ、ロボットは静かに宣言した。
七瀬と初音の、目の前で。

「…くっ!」
恐怖に屈することなく、七瀬は両足を広げ重心を下げる。
横から振り上げた鉄パイプを振り下ろす。

叩きつけるように打ち降ろされた必殺の一撃。
しかし、それを弾くようにHM-12の腕が唸りをあげて振り回される。
腰から上、360度の回転。
七瀬と初音が煽りをくって転倒する。
明らかに今までと異なる、人外の動きへの変化に七瀬は戸惑いながらも叫ぶ。
「は…初音ちゃん、大丈夫!?」
「う、うんっ!」

お互いの身を案じる二人をよそに、ロボットは蝉丸と月代のほうに正対していた。
「充電終了」
ただそれだけを次げて、HM-12は口を開く。
いや、人間ならば顎を外す、と言った方が正しい。
奇妙なまでに直立しながら、両眼の瞳孔が激しく開閉する。
距離を測っている、七瀬はそう直感した。

415 :力の渦(5):2001/06/28(木) 21:51

開いた口からだろう。
しかし世界全体が鳴り響くような、咆哮が発せられる。

コオオオオオォォォォォ…

地の音。

不気味だった。
噴き出す汗も乾ききり、瞬きすら忘れて走り出す。
(これ以上、死なせて堪るか-----!!)

ひょおおおおぉぉぉぉん!!

風の音。

理由はない。
ただ直感に従い、七瀬は意識のない蝉丸をひっぱり、投げ飛ばす。
「逃げなさい!」
月代に叫ぶ。
そして自らも、横に飛ぶ。
その咆哮に、間違いなく恐怖を感じていた。

…タイミングが、遅れた。
いくつもの不確定な要素の積み重ねの中で、七瀬はそれだけを確信していた。
(間に…合わないっ!?)

イイイイイィィィィィィン!!

切り裂くような無音に近しい高音とともに、七瀬は腕に痺れを感じ、得物を取り落とす。
先ほどまで背負っていた岩は砂と化し、鉄パイプは半ばから塵と化していた。
それでも無事だったのだから…奇跡がおこったように思えた。
(かわした…の?)

416 :葉鍵スト:2001/06/28(木) 21:52
源五郎の父はセバスでは?

417 :力の渦(6):2001/06/28(木) 21:53
ロボットが、転倒している。

見上げる七瀬の視界に。
太陽を背負って女が立っていた。

「良く解んないけど…相変わらず無様なヤツね」

日本刀を閃かせ。
にっこり笑って女は言った。

「助太刀、するわよ」

そこには晴香が、立っていた。
貸しだからね、と余計な一言を付け加えて。


5体のロボットを前に、源五郎は考えていた。
それは、施設を守るHMシリーズの全てだ。
戦闘用の二体を信頼し、あまり警備は置いていなかった。

「見捨てるわけにも、いかないか…」
そう呟いて、彼女達を参戦させる覚悟を決める。
もちろん、戦闘用でもなくロクなプログラムも施されていない彼女達は、それほど強くない。
防御力とて人間と変わらない。
「3体、裏から回れ。脱出口を使って構わん。
 初撃が命だと心得て、戦闘位置をサーチしながら行動しろ」

418 :力の渦(7):2001/06/28(木) 21:56

2体を最後の守備に残し、計略を仕掛ける。
これが当たれば大逆転だ-----そう祈りながら、源五郎は神経質に部屋を歩き回った。

しかし。
源五郎の期待は大いに外れる事になる。


「千鶴姉…これ、なんだろう?」
大きなファンが遠くに見える。
今は止まっているが、動けば相当大きく空気を動かすのだろう。

「トンネルとかで圧力保持に使うファンに似てるけれど…」
小首を傾げて黒髪の女性が答える。

「うぐぅ…みんな、おんなじ顔だよぅ…」
足元には。
三体のロボットが倒れていた。

出会い頭に。
まさしく源五郎が調査中の、怪しい三人組に出会ってしまったのだった。


【七瀬留美、巳間晴香、合流。七瀬の鉄パイプ反滅、蝉丸の刀でも使ってください】
【HM-12は充電のため、しばらく大技なしでも可】
【千鶴、梓、あゆ裏口から施設侵入】

419 :名無したちの挽歌:2001/06/28(木) 22:03
うーんと、弥生さんのマグナム忘れ以来の失敗。
親はセバスなんですな。

というわけで修正でございます。
ああ、みっともない。
>>413
-------------------------------------------------
 「ん?これは?
 と…父さんか!?」
 泡を吹きながら、地に伏す父の姿が、そこにあった。
-------------------------------------------------
以上の文章を置換以下に置換してください。
-------------------------------------------------
 「ん?これは?
  げ…源五郎さんか!?」
 泡を吹きながら、地に伏す源五郎の姿が、そこにあった。
-------------------------------------------------
お寒い修正で申し訳ないです…(´Д`;

420 :名無したちの挽歌:2001/06/28(木) 22:06
超鬱…>>419の源五郎は源三郎ですよね…。

421 :鉄 - 1:2001/06/29(金) 00:11
転倒した少女のロボット。
その頭部が、僅かに歪んでいる。
「案外蹴りでもへこむのね――」
そんなどうでもいい事を呟きつつ。
晴香はHMの右を取る。
それに呼応するが如く。
七瀬留美はHMの左を取った。
「気を付けて。そいつ、左手から電撃放つわよ――」
警告。
晴香は答えはしなかったが――
無言のまま、日本刀を鞘に入れた。
正解だ。
鉄製の武器など、掴まれればそれまで。
銃の効かぬ相手、刀など使ったところで斬れる筈も無し。
だが。
――素手で倒せる相手でもなさそうね。
立ち上がったHMの左手は、未だに不吉な音を立てている。

422 :鉄 - 2:2001/06/29(金) 00:11
一瞬の停滞。
HMは、右を見た。
七瀬を。
「ふっ!」
瞬間、晴香が駆けた。
HMがその姿を確認すると同時に、七瀬が駆ける。
二方向からの攻撃。
流石に、片手では対処は出来まい。
「――破壊」
小さく、ぽつりと。
まるで駆動音の一つのように、その単語は吐き出される。
それで怯む晴香ではない。
繰り出された左手をひらりと避けると、その腹部に蹴りを見舞った。
吹き飛ぶ。その左手から、七瀬は、HMの後頭部を打撃した。
敢え無く、HMは顔面から叩き付けられる。
――それでも、壊れる事は無い。
「しぶといヤツね……!」
忌々しげに、七瀬がぼやく。
倒れたHMが、脚を掴まんと繰り出す左手をひらりと避ける。
その腕を踏み、後ろへと跳んだ。
「殴って壊れる相手じゃなさそうよ」
「……かといって、銃が利くわけでもないわ。どうするつもり?」
こっちが訊きたい。
再び立ち上がるHMは、微かに異質な音を立てつつある。
その身体が、歪み始めているのだ。
だが――致命的なレベルにまでは、至らない。

423 :鉄 - 3:2001/06/29(金) 00:12
――ふと。
晴香の目に停まる物。
それは、誰にでもあるもの。
人であれど、ロボットであれど、それはあった。
だが、今は閉ざされていた。
つい先程までそれは凶悪な兵器であったが――
連続して放って来ない事を見ると――
「……留美。あんた、距離を稼ぎなさい」
立ち上がったHMに駆け寄りつつ。
晴香は、七瀬を名指しで呼んだ。
「距離って――逃げろって言うの?」
「いいから――こいつに"あれ"を使わせるのよっ!」
"あれ"。
HMの遠距離からの攻撃手段と言えば――
ボウガンが失われた今、つい先程使われた「獅子砲」以外に無い。
無論、二人は名前までは知らないが。
だが、何故あれを。
「冗談じゃないわ。あんた、あたしを殺す気っ!?」
「――考えがあるのよ」
脚を払う。
もはや左手しか使ってこないHMの攻撃は単調過ぎた。
少し考えを巡らせれば。
蹴りや右手からのコンビネーションも使えた事だろうが――
生憎、そこまで考えられる程頭は良くないらしい。
HMは、再び地に伏した。
「いいから、さっさと走りなさい!」
「―――」
晴香は。
脚を払うが如く振るわれた左手を、これまた七瀬の如く避けると、叫んだ。
「――死んだら、恨むわよ」
そう言って、七瀬は背を向けた。
望むところよ――と返ってきた、ような気がした。

424 :鉄 - 4:2001/06/29(金) 00:13
駆ける。
全力で。
だが、逃げるだけであれは使われるのか?
そんな事など分からない。
だが、賭けるしかないのだ。
勝つ為には。
その、晴香の「考え」に。
ある程度距離を開いたところで、七瀬は振り向いた――。
丁度。
下腹部に放たれた渾身の踵蹴りが、再びHMの身体を仰向けに転がしたところであった。
振り向く――そして、駆ける。
しかし、それも半ば程で止まる。
七瀬は。
HMと、晴香を挟んだ形で向かい合う事となった。
――使ってくるのか?
脳裏に、微かな不安。
晴香とHMとの距離は、さほど大した物ではない。
遠くもなく、近くもない。
獅子砲を使う事なく、駆けてくる可能性もあった。
だが。
思惑通りであった。

425 :鉄 - 5:2001/06/29(金) 00:14
HMが、顎が外れんがばかりに口を開いた。
何かが、収束していく――頭に響く、きいいぃぃぃん……という音。
獅子砲は――"遠距離に二人以上の人間がいる時に放たれる"。
単調な思考回路。
それを読んだ上での行動であった。
――ここからは、本当の賭けね。
刀の鞘を抜く。
それを右手に握り。
「何があっても、動くんじゃないわよ」
そう言い放った。
「――あんた、まさか」
死ぬ気なんじゃないの……?
その問いに、晴香は僅かに微笑を浮かべ。
応えた。
「あんたより先に死ぬ気は無いわ」

そして、駆けた。

426 :鉄 - 6:2001/06/29(金) 00:14



獅子砲発射まで、あと五秒――

駆ける。
鞘から抜き去った刀が、刃が、ぎらりと禍々しい光を放つ。

獅子砲発射まで、あと四秒――

間に合うかどうかなど分からない。
だが、無駄に戦い続けたところで敗れるのは必至。

獅子砲発射まで、あと三秒――

勝てぬ勝負などする気は無い。
だから、敢えて危険な賭けに出たまでのこと。

獅子砲発射まで、あと二秒――

刀を握る直す。
後少し!

獅子砲発射まで、あと一秒――

―――。

――零。




どんっ。

427 :鉄 - 7:2001/06/29(金) 00:15
「――チェックメイトよ」

呟かれた言葉は――人の物。
HMは。
口を、喉を、刀で貫かれ。
その身を、びくりと震わせた。
そう、何もHMの弱点は目だけではない――彼女達が気付かなかっただけだが。
弱点は、いくらでもあるのだ。
眼も。
口も。
貫けば、人は死ぬのだ――。
しかし、機械に至ってはその限りではないらしい。
貫かれたにも関わらず。
それは、確かに晴香の方を向いた。
左手に走る電撃は、既に、左腕全体を包みつつある。
「しぶといやつね……」
ぽつりと、呟く。
もはや拳以外に頼る物など無い。
晴香が、腰を低く落とした――
その時。

428 :鉄 - 8:2001/06/29(金) 00:17
「避けろぉぉぉおおおおおおおおおっ!!」

――絶叫。
振り向けば、先程から腰を振っていた妙な男の股間が。
青白い光を放っているのが見えて。
――それは、本能的な恐怖。
晴香は。
もはやHMの存在すら忘れたかのように、脱兎の如く、駆け出した。
――そして、それは間違いではない。
HMは。
再び、その身を震わせる。
壊れたかのように。
だから。
もはや、逃れる事など叶う筈も――
無かった。


鋼鉄の少女は。
蒼く輝く、灼熱の光に包まれた。



【HM-12 中華キャノン、直撃】

429 :彗夜:2001/06/29(金) 00:19
ヒィィィィ、長い。
しかも誤字だらけ。

>>426
刀を握る直す ← 握り直すの間違いです……。

6番と7番の間には、4行程改行が入ります。
他のところは全て1行改行です。

430 :彗夜:2001/06/29(金) 00:42
訂正。
獅子砲→獅子吼
です……。

431 :マツリの痕(1/3):2001/06/29(金) 01:04
「ちんたらしてるウチに、全部終わっちまったってワケかい」
「……ふみゅ〜ん」

 教会に辿り着いた二人(と、動物たち)を歓迎するものは誰もいなかった。
 残るのは、てんてんと続いた血痕など、戦闘とおぼしき跡のみだった。
 しばし、途方に暮れる御堂と詠美。

「ち。ここでじっとしてても仕方ねぇ。気が進まんが、坂神の野郎と合流……」
「ねぇ、したぼく」
「あ?」
「あれって……お墓じゃない?」

 詠美の指差す方向。それは教会の隅にあった。見れば、明らかに地面を掘った後がある。
「……」
 無言で、その墓に近づく御堂。詠美は慌ててその腕を捕まえる。
「ちょ、そんな怖い顔してどうする気よ!?」
「誰が埋められたか調べる」
 御堂は淡々と応えながら、歩を進めていく。詠美は引き摺られる格好になりながらも御堂の後をついていく。
「やめなさいよ。あんた、そんなことすると死んだ人に失礼だって」
 御堂が、笑う。
「死人に失礼、か。死人を生み出す強化兵に対して意味の無い言葉だな」

「あそこに埋まっているのが、あの水瀬名雪と名乗った女なら誰かがあの女を殺したってことだ」
「そ、そりゃそうよ。自分で死んで、お墓に入る人なんていないんだから」
「わからねぇのか? 殺しておいて、墓に埋めてるんだぞ。あの女と関わりのある奴の仕業の可能性が高い」
「な、なんでよ?」
「知らない敵に襲われたら、お前、そいつを葬ってやるか?」
 詠美はしばし考えて、ぶんぶんと首を振った。
「ああやって弔うってのは、その死んだ奴に敬意を払ってるんだろ。だとしたら、知り合いか、家族か、恋人か」
 御堂は詠美の方へ向き直ると、吐き出すように呟いた。

「……つまりだ。相沢祐一が水瀬名雪を殺してるかもしれねぇってことだ」

432 :マツリの痕(2/3):2001/06/29(金) 01:05

「相沢祐一って、ゆういちって人の本名? なんでなんで、そんなのわかるのよ?」
「馬鹿か。さっき放送が流れたとき、生存者の一番最初に呼ばれただろうが」
「……ってことは、まだ生きてるってことだね」

 果たして、その墓の中から見つかったのは二人の女性。
 そして、一人は御堂の知る顔であった。

「……どうだった?」
 掘り出した土を元に戻してる御堂に、詠美は近づいて声をかける。
「水瀬名雪が、いた」
「そう」
 少し落ち込んだ様子で、詠美は言った。
「あ? どうした?」
「ん。ちょっと。あの人、祐一って人にホントに殺されたのかなぁ、って」
 ぽんぽん、と土を盛り付け、御堂は立ち上がる。
「さぁな。ひょっとしたら、あの女が死んだ後に相沢祐一がここにやってきて埋葬したのかもしれねぇがな」
「そ、そうだよねっ!」
「なんだ? お前、ちょっと変だぞ?」
「変とはなによ! したぼくのくせにいっ」
 ふん、と御堂は続ける。
「いいか、もう一度言っておく。この島は狂ってる。その気になれば、親だろうが子供だろうが殺す奴だって出てくる」
 詠美は何か反論しようとして、御堂の言葉に遮られる。
「甘い考えは捨てろ。てめぇみたいなガキが殺し合いに慣れてるとは思わねぇが、
必要なときは誰でも殺すぐらいの覚悟が無ければ――死ぬぞ」
「ふみゅ〜……」
 目に見える程に落ち込む詠美。それを見て、ち、と舌打ちをする御堂。
「あー、なんだ。だが、お前はそうならないように頑張ってるんだろうが? こんなことで落ち込んでどうする?」
「ふみゅ……」

433 :マツリの痕(3/3):2001/06/29(金) 01:06

 しかし、である。御堂が墓を暴いたのは、水瀬秋子が眠っているかどうかを確認するためだけではなかった。
 先程の放送で死亡者に名を連ねていた少女。――月宮あゆ。
 その少女が、ひょっとしたら眠っているかもしれない、その確認のためでもあったのである。

 あのガキみたく、発信機を吐き出して「死んだ」ってんなら良いんだがよ……。もし、本当に死んでいたら。
 瞬間。御堂から殺気が膨れ上がり……そしてそれはすぐに収まる。
 冗談じゃねぇ。なんで、俺がそんなことに激怒しないといけない? あいつが死んだって、俺には何ら影響はない。

「ねぇ、したぼく?」
「……あ、なんだ?」
「行こうよ。こんなくだらないゲームのシナリオなんか破って捨ててやるんだ」
「……ふん。大した案も無いくせに、目標だけは一人前ってか」
「うるさいわね。あんたも協力しなさい! 大事な人を守りたいんでしょっ!?」
「ああ? 何言ってやがる?」
 御堂は胡散臭そうな目を詠美に向ける。動揺はなかった……筈だ。
「この詠美ちゃんさまを守らせてあげる、って言ってるのよ。さぁ、存分に守って、守り抜いていいわよ」
「……おめぇ、やっぱ馬鹿だろ?」
 御堂、ため息ひとつ。

「で、結局あの墓にはそれを置いていかなかったのか?」
「あ、うん。……これって、やっぱ祐一って人に渡すほうが良いと思ったから」
「相沢祐一があの女を殺していたとしてもか?」
「……うん」
 詠美が、頷いた。――好きな人の、側にいたいという気持ちは、誰だって同じだと思うから。
 あたしも、和樹のところに何か置いていってあげたら良かったかな。――帰るときが来たら、もう一度だけ行くからね。……和樹。
 そんなことを思いながら学生手帳をしまうと、詠美は御堂に尋ねた。
「あ、そうそう。動物たちは?」
「辺りを偵察させてる」
「あんた、そんなことも出来るの? ホント、動物園の園長みたい」
 そのとき、林の影から毛糸玉が飛び出してきた。
「ぴこぴこ〜っ!」
「っと。噂をすれば、だな。……行くぞ」
「うんっ!」

【大場詠美(011) 御堂(089) 教会から、ポテトたちが見つけた何かへと移動開始】

434 :仰げば尊し(1/3):2001/06/29(金) 01:37
「……」
モニター越しに…青白いい濁流に飲まれていく。
「……」
何も言わずに、ただそれを見ていた。

それが終わったとき、モニターに映るのは、中華キャノンを構えた耕一の姿。
断続的に砂嵐がモニターを覆い尽くす。
プルルル…源五郎の特殊携帯がけたたましく鳴り響いた。
ガチャッ……
「機能、完全破損…戦闘…不能…デス…」
「そうか…分かった」
短く、そう答える。
「もういい。あとで回収してやるからそのまま寝ているといい」
モニターの砂嵐が、増す。
元をただせば、源五郎の失策だった。
近距離戦闘のHM-12、遠距離戦闘のHM-13。
その強さは、2体がそろって無限の力を発揮する。
御堂を追わせ、HM-13が破壊された時から、負けは必然だったのかもしれない。
「誰もお前を責めはせん、もう、休め」
「ソノ命令ハ、聞ケマセン……」
「それ以上動くと…二度と復元できんぞ」
「ソレガ…戦闘型トシテ生マレテキタ私ノ…生キル目的デスカラ」
「………」

435 :仰げば尊し(2/3):2001/06/29(金) 01:38
モニターが、進む。
一歩、二歩と。
耕一に向かって。
「分かった」
HM-12のメイン頭脳に残されたメモリー。
姉である、マルチの残した遠い記憶。
源五郎が残しておいたその本能が、HMにそうさせたのかもしれない。
「ロボットに心は必要か…」
いつかの、青年との会話を思い出す。
「俺は、必要だと思っているよ」
モニターを見ながら、誰へともなくそう言った。
モニターを断続的に包む、その砂嵐の頻度が多くなっていって…

あと、耕一まで、五歩…四歩…三歩…

そこで、モニターが完全に途絶えた。

436 :仰げば尊し(3/3):2001/06/29(金) 01:38
ツ―――――――――
携帯の向こうから響く無機質な音。
そして…
プルルルルッ…
再び、別の携帯が鳴り響く音。
ガチャッ…
「はい…」
「源…五郎か……俺だ…源三郎だ…助けて…くれ…」
「源三郎さん…あなた、自分で勝手に飛び出していったんじゃないですか?」
「そ、それはそうだが…頼む…助けてくれ源五郎っ…!!」
「と、言われましてもねぇ…」
「も、もう戦えねぇよぉ…鼻も折れちまったし…」
「源三郎さん、あなたも長瀬なら、自分で広げた風呂敷ぐらいは自分でたたんでいただけますか?」
「今の戦闘で腕の骨折れましたっ!さらに背中を刺されました…もう再起不能ですっ、動けませんっ」
悲痛な叫び。
「見てたんだろう?ええっ!?源五郎っ!!」
「入り口はすぐそこでしょう?それだけ喋れる元気があるなら大丈夫でしょう…
 勝手に入ってきてください」
「ちょっ…げんご――」
プチッ…
「さて…と」
再びモニターを見つめる。既にそれは砂嵐が映るだけでしかなかった。

437 :愚者達の行く末(1):2001/06/29(金) 02:20
 結局、助かったのは自分だけだった。
 里村さんはわざと自分の命を捨てた。
 祐一はそれを追って、崖下へ飛び下りた。
 この高さだ、落ちたら助からない。
 残されたものは何だろう。
 私は生きている。なつみさんは死んでいる。
 死んでいる、よね。
 祐一の荷物も、傍らにあった。
 私達は、大馬鹿だ。

 祐一を最期まで信じきらずに、自ら命を捨てた里村さん。
 どうして信じてあげないの? あんなに真剣に、里村さんを思っていた祐一を。
 簡単に諦めて、くだらない自己犠牲なんて。
 はい、馬鹿一人目。
 それを追って、崖から飛び下りた祐一。
 もう助からないのはわかってたはずでしょう?
 あなたの思いはわからないでもない。
 でもあなたが死んだら、里村さんの犠牲が無駄になるだけなのに。
 はい、馬鹿二人目。

438 :愚者達の行く末(2):2001/06/29(金) 02:21

 そして、なつみさん。
 撃ったでしょ、里村さんを。
 ねぇ、どうしてそんなに簡単に人を殺そうとするの?
 そんなにボロボロになってまで、何でそんなに殺そうとするの。
 私にはわからないよ。馬鹿だよ、あなたも。

 あ、私もだ。
 私も教会で、人を一人刺したんだ。
 あはは……絶対に殺したりしないって誓ったのに、何やってるんだろう?
 やっぱり私達は、祐一についていくべきじゃなかったんだ。
 教会で別れるべきだった、甘えてはいけなかった。
 そうじゃなきゃ、皆死ななかったのに。
 私達は、大馬鹿だ。

 どうして私だけ生きてるんだろう。
 生きている、生きている以上、私は生きるよ。
 でもちょっと疲れたから、休みたい。
 休みたい――。

「ぴこぴこっ!」

 何か音が聞こえた、そんな気がした。


【椎名繭、また気絶】
【祐一の荷物は崖上】
【繭は祐一は死んだと思っている】
【最後の音は、言うまでもなくぴろ】

439 :名無しさんだよもん:2001/06/29(金) 02:22
>>438
言うまでもなく、ポテト。
鬱。

440 :ゆめのあと(1):2001/06/29(金) 03:42
 夢を、見た。

 みゅーをうめにいって、そこであったひとたち。
 こうへいさん、みずかさん。
 みゅーがいなくなって、さみしくて、こうへいさんの学校へいった。
 みずかさんは、笑ってってあたまをなでてくれた。
 こうへいさんも、あきれ顔だったけど、学校にいくことをゆるしてくれた。
 せいふくももらって、しばらくあの学校へかよった。
 こうへいさんには「おとうさん」のようなきびしさとやさしさがあった。
 みずかさんは「おかあさん」みたいだった。
 ななせさんは、なんだかんだでかまってくれて、「おねえさん」みたいだった。
 たのしかった。
 ハンバーガー、いっぱい食べた。
 じゅぎょうに出た。
 ななせさんのかみのけで、遊んだ。
 かえりみち、いっしょに歩いた。
 もとの学校にもどると決めたときも、笑顔でおくってくれた。
 ぜんぶ、たいせつな、想い出。

 かえりたかった。あのころに。
 もどりたかった。あのばしょに。
 だけど――

441 :ゆめのあと(2):2001/06/29(金) 03:43
 夢から唐突に、瑞佳さんの姿が消える。
 夢の世界が、黒く、染められていく。
 瑞佳さんはもう、いない。
 このわけのわからないゲームとやらのせいで、命を落としたのだ。
 もう、あの頃に帰れない。
 もう、あの場所に戻れない。

 復讐なんて真似はしない。
 そんなことをしても、瑞佳さんが戻ってくるわけじゃないのだ。
 それに、誰かを傷つければ、また悲しみが増える。
 そんなことに意味はないのだ。

 どこまでも冷静に頭が回る。
 感情に任せてしまえば、流されてしまえば、どれだけ楽になれるだろう。
 でもそれは、きっといけないことなのだ。
 今だから、この頭だから、理解できた。
 そう、『理解』できてしまうのだ。

 だが、咄嗟に取ってしまう行動というのも存在するわけで――

442 :ゆめのあと(3):2001/06/29(金) 03:44
 自分の手には、刀が。
 教会で人を刺した、その映像がリアルタイムに再現された。
 私が刺した人。
 その顔が振り向く。
 血にまみれて、笑っていた。

「いやぁぁっ!」

 私は目を開けた。
 夢を、見ていた。
 そして今、最初に映ったのは。
 恐い顔。
 その顔が、言った。

「目、覚めたか?」

「きゃぁぁぁぁっ!」

 私は思わず、その人を殴りとばしてしまった。

443 :夢現(1/4):2001/06/29(金) 06:05
ここは、夢の中…なんだな。

そんな風にも思いながら。

ゆらゆら…ゆらゆら…揺れる俺の体。
ただ、闇の中で漂っていた。
遠くで、北川と、名も知らぬ外人女の声が聞こえる。
多分、そこが現実だ。
すまん、北川、もう少しだけ寝かせてもらうぜ。
…そういや俺って、ここで何してたんだっけ?

確か…悲しいことがあった気がするな…
どんなことだっけ?

頭が痛い…思い出せない。
この頭の、心の痛みは夢か現か。

どこかにピクニックでも来てるんだっけ?
ああ、そうだよな…それなら辻褄が合う。
…ってことは北川と二人でか?…イヤすぎだよそれ…
しかも北川は知らないバイリンガルまでナンパして…
くそ、香里に言いつけてやろうか…

ってゆーか北川と二人でこんなところにピクニックに来ることがそもそもおかしい。
いや、北川には悪いが男おんりぃで山にピクニックなどと…言語道断だ。

…そうだよなぁ……たぶん名雪や香里も一緒に来てると考える方が妥当だ。
北川のことだ。
「おい、香里、相沢や水瀬達と一緒に旅行に行くんだがお前も一緒にどうだ?」
なんて切り出すに違いない。かと言って香里が素直に承諾するとは思えないけどな。

444 :夢現(2/4):2001/06/29(金) 06:06
だが、栞をうまく言いくるめればきっと香里も首を縦に振るに違いない。
その役目は…やっぱり俺か?
それに…そうだとしたら舞や佐祐理さんも誘ってそうだよな、俺。
あゆ、真琴あたりは何も言わずとも
「私も行く!置いていったら殺すからね祐一!」
「うぐぅ、ボクも行くよ!」
とか言ってるよな、絶対…

北川はこういう企画を組ませたら、その行動力は天下一品だ。
穴掘り以外にも得意なことはあったんだな。
うむ、さすがは俺の親友だ。

でも、本当にそうか?…なんかすごく悲しいことがあった気がするけど…駄目だ、思いだせん。
…まあ、いいか。あとで北川から聞けばいいか。……寝よ。
――俺の心を包み込む、大いなる悲しみで胸がつぶれてしまわないように。

445 :夢現(3/4):2001/06/29(金) 06:06
「ジュンーー、重くないデスか!?」
「頑張るベシ、俺!」
「というヨリユーイチと一緒に荷物を運ぶと言うのは無茶ではナイですカ?」
「相沢が起きたら運ばせるから大丈夫だーー!ハアハア…」
さすがに、ギャグで返す気にはなれない。
「ハア…ハア…」
とりあえず、崖から離れて数十分。
「まあ、こいつにもいろいろあったんだろうな」
背に祐一を、手に大量の武器を持って、北川は歩く。
自分達の元々の荷物と、祐一の周りに散乱していた荷物とを。
北川が持ちきれない軽い小物は、すべてレミィが抱えている。
無理に持つ必要はなかったのだが、殺傷力のある武器を放置するのは危険だ…と考えてのことだ。

446 :夢現(4/4):2001/06/29(金) 06:12
一部記憶を失ってしまうほど混乱した祐一と、そのそばに横たわっていた女性の仏さん。
あの場所にはあまり留まっていたくはなかった。
しばらく待ってはみたが、祐一の目が覚める雰囲気はない。
とりあえずというか、しかたなく腰を落ち着けられるような場所を探して移動中だった。
(着々と、進んでいるんだな…クソ食らえなゲームが…)
北川にこみ上げる嘔吐感――先のひどい有様だった女性の仏さんもそうだが――
一番、許せないのはやはり、ゲームの主催者。
(こんな俺にも吐き気のする【悪】は分かる。
 【悪】ってのは自分自身の為に弱者を巻き込む奴のことだ。
 まして女の子まで…奴等がやったのは…それだ)
別に北川とて正義感を振りかざして行動していたわけではない。
ただ、自分の置かれた状況でよかれ…と思っていることをやっているだけだ。
それでも、このゲームを正当化して許してやろう…などと言う気は毛頭ない。

(あのCD…どんな意味が隠されているんだろうな…
 実はただの変哲もないゴミCDでしたー……だったら笑うぜ、俺は)
それこそ道化師だよな…
(やっぱ情報が欲しいや…なんとかしないと…な)
「ハアハア…ジュン?どーしたの?」
「ドキッ…!…いや、なんでもないって」
「……?そーデスか?」

今の一瞬、息を荒げるレミィを少し色っぽいな…などと思ってしまった。
(神様、母さん、こんな潤めをお許しください……)

【相沢祐一 北川潤 宮内レミィ 崖下より移動】

※祐一、茜、繭の武器(じゃないのもあるが)で使えるものはすべて分担して持っています。
 キノコ含む。

447 :名無しさんだよもん:2001/06/29(金) 08:49
祐一の武器……というか荷物は崖上だな。

448 :引越し屋:2001/06/29(金) 16:02
http://cheese.2ch.net/leaf/dat/?S=D
993115533.dat  28-Jun-2001 16:49 383k

現在の当スレッドの容量です。
スレッドの容量が512kを超えると、ブラウザで表示できなくなります。
400k台後半になったら引越しをご考慮願います。

449 :夢現作者:2001/06/29(金) 17:27
祐一、手ぶらだったね、すまん。
北川一行の持ち物は元々のアイテムプラス茜+繭のアイテムということで。

450 :DEAD OR ALIVE(前編)(1/7):2001/06/29(金) 19:41
「こんなとこで…いいか?」
森の中。茂る草木は潮風を浴びてしなびているように感じる。
「わりといい物件だなぁ、ここは」
茂みの中、どっかりと腰を下ろす。
おぶっていた祐一を背中から降ろし、地面に横たえる。
森の入り口、視界の向こうには果てしなく広がる大海原。
「ああ、今の俺達の欲している世界が…あの海の向こうにあるぅっ……!!」
「海の男にでもなりたいのですか、ジュン?」
「いや…そうではなくてだな…」
たまにこの金髪の少女は、未だ自分の置かれている立場を理解できていないのでは…などと邪推してしまう。
「ただ、帰りたいな…と、それだけさ」
ただ、平和だったあの日々が、ひどく懐かしく感じる。
(まだ、3日しか経ってないんだよな…)
「Oh!ジューン……Homesickですか?…元気出してくれないと私も悲しいデス…」
「か、母ちゃ〜ん…って、違う」
(本当に分かってんのか、この娘は……)
ハア…大きく溜息をつく。

まあ、ここなら、周りから見つかりにくく、周りの状況を確認しやすい。
少々の話し声など、潮騒の音に消されてしまう…落ち着くには割と適した場所と言えた。
「お、おい…何してんだっ?」

「ん?何って…膝まくらだヨ」
祐一の頭が、レミィの白いとも健康的ともとれるつややかな太腿の上に乗っかっている。
「……だ、駄目だっ…」
「……?何でデスか?枕もなくこんなトコで寝たら頭痛くしちゃうヨ。
 移動中、私楽してたかラ、このぐらいはしないと…適材適所ネ♪」
「いやっ、待て待て…そんなうらやまし…ゴホンゴホン…もとい、婦女子にそんなことはさせられん…
 これが我が北川家の家訓でな…だから…俺がやろう」
「ワオ、ジュンってばフェミニストね。感激しちゃうヨ!」
まさか、うらやましさからくる嫉妬とは口が裂けても言えない。
祐一の頭の上方にまで移動すると、そっと祐一の頭を自分の膝に乗せた。

451 :DEAD OR ALIVE(前編)(2/7):2001/06/29(金) 19:42
(くっ…俺の膝に男が乗ることになろうとは…この北川潤一生の不覚っ……!!)
「なんか、苦虫を噛み潰したような顔してるデス…」
「えっ?いや、そんなことはないよ?ははは、男にも女にも優しい男、ジェントルマン北川潤と呼んでくれ」
(くそ、よくよく考えてみればなんで俺が相沢にここまでしてやらにゃならんのだ…
 人がヒイヒイ言いながら移動中も背中でグゥグゥ寝くさりやがって…)
「おーい、相沢〜、お・き・ろ〜!」
ペシペシ…頭を、平手で叩く。
「う〜ん…あと三寸だけ寝かせて…」
「単位がオカシイデス…」
「三寸経ったぞ〜」
「じゃあ、あと五寸…」
「経つか!このアホッ!!」
ベキッ…北川の拳が祐一の脳天に突き刺さった。

「痛いじゃないか…。……?……北川…か?」
「他の誰に見える」
「謎の不知的生命体X」
「誰が宇宙人だ、誰がっ!しかも『不』ってなんだ!」
「そのまんまだ…」
「くそっ…まあ、いいか…それだけ軽口が叩けるなら安心したよ。
 …結構心配したんだぜ?…これでもな。とりあえず膝から降りてくれ」
「うおおっ、何故俺が北川の膝の中で愛を語らってるんだっ?」
「語り合ってないっ!」

452 :DEAD OR ALIVE(前編)(3/7):2001/06/29(金) 19:43
「で、何故俺はここにいる?」
祐一の言葉。
「ん…まあ…いろいろあってな…っていうかお前どれほどのこと忘れてるんだ!?」
「いや……ここ、海の近くの森の中か?」
「島デス」
「島……?どこのだ?…しかも…この女の人…誰だ?」
(いかん…全部…忘れてるのか…?この島であったこと…)
無意識に、北川の顔が曇る。
「じゃあ…水瀬や、香里のこともか?」
レミィに、黙ってろ…というように目配せしながら、ゆっくりと、そう言った。
祐一の向こうで、軽く首を縦に振るレミィ。
「名雪達も来てるのか?そうだよな、俺とお前の二人で旅行なんて寂しいもんな…」
「旅行って、お前っ……!」
北川の顔が、引きつった。たぶん、いろいろな…複雑な意味で。
「……ふう……まあ、仕方ないか…とりあえず、自己紹介はしよう」
いろいろ、言ってやりたいことはあったが、なんとかこらえる。
「この娘はガルベス宮内。通称ガルベスだ」
「ガルベス…か」
「Oh!私ガルベス…」
「まあ、とりあえずレミィって呼んでやってくれ」
「一文字もあってないじゃないか」
「細かいことは気にするな」
「私、大雑把な名前ネ…」

453 :DEAD OR ALIVE(前編)(4/7):2001/06/29(金) 19:47
「で…だ」
北川の顔が、真剣なものに戻る。
「北川?」
というか、祐一がこれほど真剣な北川を見たのは初めてであるかもしれない。
「お前の記憶を呼び戻す…」
「できるのか?」
「さあ…」
口調は、あまり変わらなかった。

「聞きにくいんだが…昨日の夜…お前と一緒にいたあの聡明で可愛らしい少女は…どうしたんだ?」
椎名繭。まだ、放送では呼ばれていない名前。
言いよどみながら…まずは遠まわしにそう切り出した。
「……誰だ、それ?」
「駄目じゃん」
しょっぱなからつまずいた…レミィを覚えてない以上、繭を覚えていなくてもおかしくないのかもしれないが。
「てことはお前…昨日のこと何にも覚えてないのかっ?」
「……いや、なんていうか…イメージがぼやけて……」
「じゃあ、最近の出来事で覚えていることはっ!?」
「朝〜朝だよ〜、朝御飯食べて学校行くよ〜」
「なんだ…それ?」
「目覚ましだな」
「変な目覚ましだな…」
「ああ、名雪じきじきに録音したお手製の目覚ましだ。すこぶるよく眠くなる」
「………」
北川の、手が震えた。
「まあ、学校行く前の一シーンなら覚えてるが――?どうした、北川」
「……」

454 :DEAD OR ALIVE(前編)(5/7):2001/06/29(金) 19:48
無言で、立ち上がる。
「ジュン……?」
北川の気持ちを察してか、不安そうな顔で北川を見上げる。
それを、大丈夫だ…と、無言で手で制する。
「どうした?北川…」
「お前、本気で言ってるか?」
「……?」
「本気で…それ言ってるのかって聞いてるんだ」
低い、声。
「…ああ、俺が覚えてるってのは…その辺だけど…」
北川のその無言の迫力に、頭を一個分後ろへとずらす。
「本当に本気なのか?」
「くどいな…一体どうしたん――」

バキッ……!!

「――――っ!!」
祐一の体が右へと吹っ飛んだ。
「……ジュン!?」
立ち上がりかけたレミィをもう一度手で制する。
「いきなりなにすんだっ!この野郎っ!!」
一瞬の放心。その刹那、両手で反動をつけ勢いよく立ち上がる。
「このっ……!!」
そのまま北川の胸倉を掴みあげ、眼前にまでたぐり寄せ、睨みつける。
「……このやろうっ!!」
「……」
北川も、目をそらさず祐一を睨み返す。
祐一の口元から、血が一筋垂れた。
「言い訳もなしか、この野郎っ!!」
バキャッ!!
祐一が、北川を殴り返す。

455 :DEAD OR ALIVE(前編)(6/7):2001/06/29(金) 19:49
「ぐぅ…」
「なんとか言えよ、北川っ!」
バキッ…
胸倉を掴みあげた手を離すこともないままに、再度、殴りつける。
それでも、北川が祐一から目を逸らすことはなかった。
「……いいかげん目を覚ませ、相沢」
「なんだと?」
目と鼻の先、一センチの距離でのにらみ合いが続く。
男達のぶつかり合いに、レミィはただ何もすることなくそれを見つめている。
「お前は、逃げてるんだよ!」
「なんだと…」
「都合のいいことだけホイホイホイホイ忘れやがって…
 思い出せっ!思い出せよ相沢!」
「いきなり殴られて…はいそうですか…なんて言えるかっ!!」
ベキ…もう一度、北川の左頬を殴りつける。
「……ペッ!」
口に溜まった血を、北川が横へと吐き出す。その時も目を逸らすことはなかった。
「俺達は…逃げちゃいけないんだよ!香里や、水瀬の為にもっ!!」
「……どういう意味だよ…」
「言葉通りだ。ある意味、お前は…すべてを踏みにじってるんだ」
「……」
「本当に忘れちまったのかよ…おい…なんとか言えよ…」
「……」
「なんとか言えよ、相沢っ!」

「……本当に…忘れちまったのかよっ…!」
「きた…がわ…?」
北川の胸倉を掴んでいた手が、下げられる。
(一体…なんのことだ…名雪…?香里…?この島で…何が…あったんだ…?)

456 :名無しさんだよもん:2001/06/29(金) 19:54
 

457 :DEAD OR ALIVE(前編)(7/7):2001/06/29(金) 19:54
恐い…恐い…
誰もいない…真琴はいない相沢さんもいない…
祐介さんもいない…
私は、…私は……
ワタシハ…
海辺の森を彷徨い歩く。
私の、あったはずの右手が、私の、強く祐介さんと結ばれていたはずの右手が…ない…
「どうしたの…?私」
右腕を胸に抱きながら、歩く。
忌まわしい右腕が、私の視界に入らないように。

――……本当に…忘れちまったのかよっ…!

突如、聞こえてきた声。
なんの声だろう…私は…導かれるようにそこへと向かった。

458 :The Long Goodbye_1:2001/06/29(金) 20:03
 戦闘ロボを何とか撃破した僕たち――いや、今回の僕はほとんどがただ、
見守るばかりで大したことは何一つしていなかったが……――は、
気絶した蝉丸さんの意識を呼び戻し、簡単な自己紹介を済ませた。
 そして、このことで頭を悩ませていた。

『このまま通路の奥に進むべきか、否か』

 管理者側の態勢が整う前に、このまま侵入したいというのが全員の気持ちだった。
 けれども無傷か傷が少ないのは七瀬さん――いや、留美さんか――と巳間晴香さん、
そして初音ちゃんの3人だけだった。しかも初音ちゃんに戦闘は期待できない。
 というか、僕はさせたくなかったし、耕一さんも同意見だ。
 それ以外の者も皆、何かしら傷を負っていた。
 耕一さんも僕にあんなことを言っておきながら、実は随分と体調に不備をきたして
いたし、蝉丸さんの傷も思ったより深かった。本人の談では塞いでいれば数時間で
治ると言うことらしいけど。僕も、今回防弾チョッキ上から受けた弾丸だけとは言え、
累積した披露などが抜けきらない。
 ただ、仮面の女の子は蝉丸さんがもう一度眠らせていた。詳しくは話してくれなかった
けど、仮面が何か良くない働きをしていて、起きていると本人の負担になるのだという。
 とにかく、このまま先に進むのには、どう見たって支障がありそうだった。
 とりあえずこの奇妙な共闘団体に必要なのは、一度退いて態勢を整えることだ
ということになった。
「あのね、市街地の方にね、マナさんて言う、女医さんがいるんだよ」
 という初音ちゃんの言葉により、一行は市街地を目指すことになった。
 道中、それぞれの現状確認などが行われた。

459 :The Long Goodbye_2:2001/06/29(金) 20:19

 留美さんが教えてくれた、高槻が死に際に言い残したという言葉。
 高槻は『この島の地下ドックに潜水艦がある』と教えてくれたのだという。
 しかも、あの下衆野郎の言葉を、留美さんはなぜか信じたいのだと言う。
 僕には理解できなかったけど、蝉丸さんが地下から響く音を聞いていて、
もしかしたらそれが地下ドックなのかもしれないと言っていた。その施設には
一人の少年が向かっているらしいことも、蝉丸さんの口から語られた。
 蝉丸さんの言葉が高槻の言葉の真実味を増しているけど、ならば何故、
あの高槻がそんな事実を言い残すのか……。僕には本当に分からなかった。
 それから蝉丸さんの持っていたパソコン。これには何か情報が入っているかも
しれないけれど、二人とも使い方が分からなくて満足にいじっていないらしい。
 休息をとるならば是非中を見てみたい。
 しかし、何よりもあれだけ強力なものに守られていた、例の施設。
 中には脱出の鍵になるようなものもあるのかも知れない。

 様々な意見が飛び出し、僕も何度か意見を求められた。
 その度に僕は、当たり障りのない返事を返すだけだった。
 怪我と疲労で頭が回りにくくなっているのも確かだったけど、自分にはその
原因がはっきりと分かっていた。
 状況確認の最初に行われた、生存者と死者、やる気になっているかも知れない
人間を特定したときのことだ。
 直後は皆、それぞれの抱える想いで無口になっていたが、すぐに次の話題へと
進行を見せた。
 しかし僕はまだ、それを引っ張っていたのだった。

460 :The Long Goodbye_3:2001/06/29(金) 20:32

 何回か放送を聞き逃していた僕にとっては、とても重要なことだった。
 初音ちゃんのお姉さん達が生きていると言うことは、とても嬉しいニュースだった。
 だけど、僕が気にしていたのはそれではなくて。
――弥生さんの名前が、あったな……――
 僕が一番の感慨を覚えたのは弥生さんの死亡確認だった。
 ……篠塚弥生。
 緒方プロのスタッフだったヒトだ。
 由綺のマネージャーをしていた。
 そして、叔父さんが経営し僕がバイトをしていた喫茶店『エコーズ』の、
常連客でもあった女性だ。
 美咲さんとは違った、何か別の魅力の持ち主だった。
 感情表現に乏しい印象で、冬弥とも衝突がちだったようだけど、あの人なりに
由綺のことを思っての行動だったんだろうと思う。
 もちろん僕は、弥生さんと特に親しかったわけではない。
 店員と客とのやりとり以上のことは全くなかった。
 ただ、こう見えても僕は他の人のことを見る目は確かだった。
 こんなこと言ったら『自分のことは何も分からないくせに』なんて、冬弥は
言うだろうな……。ふう。つい、歩きながらつま先を見てしまう。
 とにかくその弥生さんの死によって、このゲームに連れてこられた僕の知り合いは、
全て永久に失われたってわけだった。
 かつての自分の、日常を構成していた人、ひと、ヒト。
 全員がもう、この世にいないなんて……。
 仮に叔父と生きて会うことがあったとしても、二人の関係はもう、修復出来そうに
なかった。僕や祐介君に同情し、このゲームを止めて欲しいと願ったかもしれない叔父。
 でも、みんな死んでしまったのだから。
 あの日々は帰ってこないのだから。

461 :The Long Goodbye_4:2001/06/29(金) 20:40

 けれども、僕はここで絶望するわけにはいかなかった。
 祐介君に、初音ちゃんに話した自分の言葉の、その責任はちゃんととらなければ
ならないから。
『失われた日常にすがり嘆くよりも、これからの日常を自分たちの手で作り上げて
いくんだ。自分たちがそれだと思えば、それこそが 日常なんだから』
 とは、ある意味都合のいいことを吹き込んだかも知れない。
 でも、間違ったことは言ってないはずだった。
 それにあれは、彼らに言うのと同時に自分に言い聞かせた言葉でもあったのだから。
 仮にこの島を生きて出られたときには、そんな風に考えて生きていこうと……。


 美咲さん……。
 由綺、冬弥、はるか。
 そして英二さん、理奈さん、、弥生さん……。
 僕はあなた達のことを引きずらないで生きていこうと思う。
 しかし、生涯忘れることもしない。


 その為にもまず、このくそったれの島から脱出しなければならないし、
それも今や終盤にさしかかっていると思う。
 島からの脱出を為すために、仲間が集まりつつある。
 集団で行動する以上、僕の行動は自分だけの責任では済まなくなってきているんだ。
 だから……。

462 :The Long Goodbye_5_Last:2001/06/29(金) 20:48
 
 だから、彼ら、彼女らとの共通の目的を果たすまで、ほんの少しの間だけ
僕はあなた達を忘れることにする。

 目的に向かって、僕の頭脳が最良の判断を下せるように。
 ……その深い悲しみで判断を誤らぬように。

『ごめんね、美咲さん……』

 さよならは言わない。
 本当のお別れはもう遠の昔に済ませてしまっている。
 それに、これは長い別れではない。
 僕が自分の役割さえ果たすことが出来れば、その後にはまた、みんなを思い出すだろう。
 過去の良き日々に、思いを寄せながら……。
                          『残り ○○人』


──『さようならを言うのは、わずかのあいだ死ぬことだ』
   そんな言葉がある。
   しかしだ。ならば、死者に送る別れの言葉はいかなる意味を持つのだろうか。
   単純に永遠のお別れであるというように考えるのだろうか?
   そんな疑問をかつての彰は持っていた。
   しかし、実際に彰が触れた死とは、『永遠の別れ』であり、また、
   『別れではないもの』であった……──

463 :The Long Goodbye作者:2001/06/29(金) 20:53
 実は今まで、彰が由綺と冬弥の死は聞いたという描写がなかったんですが、
まるで二人が死んだことを知ってるかのように振る舞っている描写が今までに
複数あり、かつ、他の人間から聞くことのできる環境が複数回あったため、
既知という設定にしました。

 マナのことは彰が覚えていないか、知らないという設定です。
 (ゲーム内での二人の接点が、マナシナリオの文化祭で会うか会わないか、
  ぐらいしかないので)

 あと、もう少しの間人口集中に歯止めを掛けておこうかという意図もあって、
施設潜入を一旦あきらめました。施設内は千鶴梓あゆの3人で頑張ることになる?

 文中では詳しく触れてませんが、爆弾のこと(吐いても大丈夫&死亡認識になる)
も伝わっていると思います。
 他にも伝播する情報があれば全部入れたかったけど、それやると文章がもっと長くなる
んで……。カットしました。今までの作品を読み込むなどして脳内整理して下され。
 それでは。
 

464 :悔恨 - 1:2001/06/29(金) 20:54
あれから、少しばかり経った――
祐介は、天野美汐の背後、約15m程離れた位置を、静かに、歩いていた。
怯えた人間は妙に勘が良い。
バレると後が厄介だが、いざという時遠いのも厄介だ。
このくらいが、すぐ駆け寄れるから丁度良いだろうか?
―――。
自分が発見してから1時間程度だろうか。
突然悲鳴をあげて、彼女は目を覚ました。
―――。
それから。
彼女は、寝転んだ場所からふらりと立ち上がり。
歩き始めた。
宛があったのかどうか。
自分を捜す為なのかどうか。
それとも――自分を、殺す為か?
それなら、彼女は自分の武器を握っている筈だろう?
いや、不意打ちということで素早く出して撃つのかも――
――どうでもいいか。
そう。
殺されたとしても、構わない。
その上で、自分は彼女と共に居るのだから。
――出来れば、隣に居たいけど。
それは叶う筈も無く。
ただ、護るのみ。
護るのみ。

465 :悔恨 - 2:2001/06/29(金) 20:55

しばらくすると、潮の香りが漂ってきた。
海が近いのだろう。
――海か。
あの、明け方の海辺を思い出す。
今朝の事だ。
―――。
――ああ、あの頃は、まだ。
時折、思う。
あのまま、あそこに居られたなら、と。
無論、それは逃げだ。
分かっている――否、分からされた。
逃れる事など叶わぬのだと。
自分は。
ただ、ひたすらに。

現実を見ないようにしていたのではないか?

この血生臭いゲームを。
辛く、哀しい戦いを。
何処かで誰かが殺され。
誰かが血を啜り生き残ろうとしている。
そんなゲンジツヲ――
現実を。
見ないようにしていたのではないか。
その代償は、大きかった。
今、持っている「右手」。
それだ。

466 :The Long Goodbye作者:2001/06/29(金) 20:56
 らっちー様、と読者の方へ

 なお、源三郎さんは手近なもので縛って運んできている。

 という表現を1パート目の最後に入れていただけませんか?
 よろしくお願いします。 

467 :悔恨 - 3:2001/06/29(金) 20:56
――嗚呼。
手を失うなら、自分であった筈。
どうして。
彼女は、ただ。
怯えていただけなのに――
―――。
償えるなどとは思わなかった。
だけど。
放っておける筈は無いのだ。
約束した――
「護る」と。
既に護るべきだった人達は失われた。
今は、もう。
彼女だけ。


依然として、彼女はふらふらと歩き続けている。
誰かに出逢ったらどうするつもりなのだろうか。
――ましてや。
それが、マーダーであったなら?
距離は15m――全力で走って何秒だろうか?
―――。
――大丈夫。
護りきれる。
今なら、覚悟があるから。
――そう。
もし、彼女に危害が及ぶなら――

468 :悔恨 - 4:2001/06/29(金) 20:57

――……本当に…忘れちまったのかよっ…!

――聞こえた。
誰かの声。
そして、前を進む彼女もそれを捉えたらしい。
歩く方向を変えた。
進み出す。
そして自分も。
――あの声の主は、誰だ?
心当たりは無い。
少なくとも、彰ではない。
―――。
まぁいい――銃を握る。
汗ばんだ手に、確かな重み。
そうだ。
そうさ。
もし、彼女に危害が及ぶなら――


僕が殺す。



【064長瀬祐介 美汐より15m程後ろにて待機】

469 :名無しさんだよもん:2001/06/29(金) 20:58
>>460
篠塚弥生の死亡放送はまだ流れてないはず。
(前回の放送は>>16

470 :彗夜:2001/06/29(金) 20:59
書きました。
最近祐介達の心理パート書いてばっかだぁー

いつも暗いからウケが悪そうじゃ。

471 :The Long Goodbye作者:2001/06/29(金) 21:15
挟まれてしまった……。申し訳ないです、彗夜氏。

>>469
 おいらも最初放送はマダだと思ってたけど、弥生さんの名前が入ってる……
 あっ! これ生存者の表じゃんか!!  ゲーック!!
 一気に進化しちゃいたいくらいヤッ、ヤヴァ、ッダー!!

 どうしよう……。取りあえず以降の議論は感想審議スレにて。
 

472 :昼日。:2001/06/29(金) 22:58

「――はぁっ」

――勝った。
汗だくになりながら、しかし――何処か、爽やかそうな顔で、にこりと微笑む耕一を見て、
ああ、勝ったのだなあと、そう思った。
この島の、おそらく最大の強敵は、これで潰えた。
「疲れたあ」
ばたりと、僅かに残った芝に倒れ込む耕一を見て、彰も笑った。
そして、彰も横に並ぶ形で寝転ぶ。
「まだ、終わった訳じゃないけど」
自分たちの力で、おそらく、この島最大の脅威を――うち破った。
傷つきながら、それでも、誰も死なないで。
頭がくらくらし、身体の各部が痛むのは事実だが――だが、彰はまだ、生きている。
それは幸運な事だった。
「取り敢えずは――先に進むか、どうするかは考え物ですけどね」
「ああ。皆傷つきすぎているからな。だけど――」

「――長かったよな、彰」
「ええ……きっと、帰れます、――いえ、絶対帰ろう、――耕一」

見合って、二人は微笑った。
二人は拳を高く、天に向けて伸ばした。
そして、その強く握られた互いの拳を合わせ、互いの健闘を称えながら――
微笑った。

空は青い。
どうしようもなく青い。
真っ白に昇る雲、
そして、
さんさんと輝く太陽。
二人の身体を照らす光、それは――人の夢。

473 :昼日。:2001/06/29(金) 22:58
最初に声を発したのは、七瀬の方だった。
膝立ちで見上げる形で、そこに屹然と立つ晴香を見て。
「――久し振り」
少しだけ皮肉を込めて。
「ええ」
晴香も負けてはいない。
腕を組んで、少し不機嫌そうな顔で。
「まだ生き残ってるとは思わなかったわ」
「減らず口を叩くわね、あんたも」
「――あんたに殴られた頬、まだ痛いのよ」
「へえ? あたしはこれでも手加減したつもりだったけど? あたしはもう全然痛くないわっ」
乙女よ、あたし。七瀬は云う。
「あんたの何処が乙女なのよっ!」
「どこからどう見ても乙女じゃないっ!」
七瀬は少し肩を怒らせて、はぁ、と呟く。全然判ってないわ、あんたっ!

少しの間をおいて――
「――冗談よ。互いに生き残っていて、良かった」
晴香は、そう云って笑った。
「――うん。あんたの顔なんて見たくもなかったけど」
七瀬も、笑った。
「それでも、会えて嬉しかったよ」
晴香も頷く。

別れた時に、二人の横には、大切な友達が、それぞれいた。
そして、今はいない。
けれど、二人は――その事を、詮索するつもりはなかった。

そんな言葉は、今は要らないと思ったから。

474 :昼日。:2001/06/29(金) 23:01
「(´Д`)せ、蝉丸〜」
――これは悲しげな表情なのか?
お面をつけたままの――女の子? が、連れの青年――蝉丸と云ったか――の横でおろおろしながら、
悔しげな声を漏らすのを聞きながら――柏木初音も、小さな溜息を吐いた。
「(´Д`)どうしよう、どうしよう、蝉丸ぅ〜」
「――くぁっ」
青年は、腹から多量の血を流しながら、呻き声をあげている。
ナイフで刺された傷は、思った以上に深い。
「(TДT)蝉丸、死ぬな、死ぬなぁ〜」
彼女は、涙を流しながら――って、あれ? お面の形が変わってる? 何で?
と、ともかく、彼の横で狼狽える。
初音は自分と同じくらいの年代の少女を、なんとか宥めようと思い、
「大丈夫だよ、大丈夫! わたし、街からお薬一応持ってきてるし、包帯も持ってきたんだ」
と、鞄の中から、タオルと包帯、傷薬といった、応急用の医療セットを取り出すと、
その真っ白なタオルで、あふれ出る血を拭おうとする――
「ち、近付くな!」
突然、その青年が大声を上げる。
思わず初音は飛び退いて、すぐに疑問の言葉を投げる。
「ど、どうして?」
「と、ともかく――その布を貸してくれ、自分でやれる」
青年は、――心の底から焦ったような顔で、そう呟いた。

血を拭いている内に――意外にも早く血は止まった。
「あ、包帯くらいは巻きます」
と、今度こそ初音は包帯を手に取る。
「(TДT)ありがとぅ〜、あなたすごくいい人〜」
「すまない、少女」
「ううん」
初音は微笑みながら、ガーゼを当て、包帯を巻き付け――

475 :昼日。:2001/06/29(金) 23:02
「よし、これで終わり!」
「(TДT)う、うわああああん、ありがとう〜、ありがとう〜」
泣きわめく――お面? を見ながら、初音はくすり、と笑った。
だが、笑ってばかりもいられない。彰も、七瀬も、皆傷ついている。
自分は戦えなかった、だが、こういう役は、自分の仕事だと思うから。

「(TДT)わたしよりずっと小さい女の子なのにー、わたしよりずっとしっかりしてるー」
「本当だな、すまない、幼い少女」
……初音は、ほんの少しだけ、ムカっとした。
「(TДT)どうしたの?」
どうもしませんっ!

そこへ、耕一の肩を借りて歩いてくる彰と、二人の誇り高い少女が、焼け野が原から現れた。
「初音ちゃん、大丈夫だった?」
――初音は笑って、頷いた。
自分はとても弱くて。
それでも、空はあまりに美しく。

すべては美しく。
それはとても、晴れた日で。

そして――この戦いを生き残った、七人の戦士達は――相談の末、街に戻る事にした。
これからどうなるかなど判らない。
けれど、いずれにせよ、その物語は――強い人間たちの物語。


【七人が街へ向かう直前の、補完として。……長瀬源三郎をどうしたかは、やはり次の人に……】

476 :The Long Goodbye作者:2001/06/29(金) 23:04
らっちー様、と読者の方へ。
 ……修正終了しました。

このスレの『 460 : The Long Goodbye_3 』 を
感想スレの『 598,599 』に入れ替えた上で、
感想スレ『 597 』を反映して下さい。
更に、このスレの『 466 』の要求は取り下げます。
(源三郎は次の書き手様次第ということになります)

 ご迷惑をおかけしました。
(らっちー様、よろしくおねがいします)

477 :DEAD OR ALIVE(後編)1:2001/06/30(土) 00:27
(なんの…ことだ…?)
頭が――痛む。胸が――締めつけられる。
(俺は――どうしてここにいるんだ…?)
北川が、祐一を睨みつけて。
(俺は――)

――7年前、心を閉ざしたあの、冬の日の赤。

――そして、今、俺は何を……?

『ゆう…いち…』
――まこ…と…?なんで…倒れて…

名雪と、秋子さんの姿がゆっくりと重なって――赤くなって…

そして、亜麻色の髪のおさげの少女――

「えっ…えっ…?」
胸が、痛む。上手く、息ができない。
「どうしても…駄目なんだっ…なんでだ…北川っ!!」
「相沢……」
「思い出したくてもっ…痛い…教えてくれっ…ここは…どこだっ!」
「……」
「俺は…何を探してるんだっ…あゆ?名雪?真琴?栞?舞?それとも――」
「……」

478 :DEAD OR ALIVE(後編)2:2001/06/30(土) 00:28
「教えてくれっ!北川っ!!」
北川の、肩を強く掴んで。
「……」
北川は、そこで初めて祐一から目を逸らす。
「それだけは、駄目だ。お前が、自分で思い出さなきゃ、駄目だ」
「……俺が?」
「俺にはお前が何をしていたか…何でそうなっちまったのかは分からない。だけど…」
北川が、再度、祐一に向かい合う。今度は、睨みつけるではなく、真っ向から、真剣に見つめる。
「それだけは――お前が自分で思い出さなきゃ駄目なんだ!」
「き…たがわ…?」
祐一の、胸が締め上げられる。
「おれは…」


ガサッ……


「なんだっ?」
ここから割と遠くない茂みが、作為的に揺れた。その音が潮騒の音に紛れて響く。
(誰か来るっ!!)
声をひそめ、祐一を半ば無理矢理的に座らせる。
(レミィ、下がれっ!)
運んでいたバッグから、銃――コルト・ガバメントを取り出しながら北川が囁く。
(ラ、ラジャーです!)
レミィもまた、刀を取り出して、揺れる茂みの逆方向へと移動する。
「な、なんだ…どうした北川っ!?」
(しっ…声を立てるなっ…顔もあげるな…じっと伏せてろ…今は黙って従ってくれ…もし敵なら…)
――敵?敵だって?今、北川は敵…と言ったのか?

479 :DEAD OR ALIVE(後編)3:2001/06/30(土) 00:28
(なんだ…一体…それ…銃…!?)
(もう、四の五の言ってる暇はない…一度しか言わないぞ…これは…殺人ゲームだ…死にたくなかったらお前も隠れてろ!)
(えっ?えっ?)
祐一の手に投げ渡される銃――里村茜の持っていたサイレンサー付きの銃だ。最も、今の祐一はそれを知る由もないが――

この三日間、北川が会った人物は三人。
まだ、殺人ゲームだということを認識できなかった頃に、宮内レミィ。
レミィと立て篭もった小屋に詰問してきた、信頼できる親友、相沢祐一とそのお供椎名繭。
いずれも、北川がなんらかの理由で心を許せる相手だけだった。

浩之から始まって…数多くの死体を見てきた。
それは、北川に殺人ゲームだと認識するに充分な現実。
護をはじめ、数多くの知り合いが死んだと告げられた事実。
そして――もう繭を除けば北川にとって、もう生き残りの中に心を許せるような知り合いは――いない。
(今まで誰にも遭遇しないことのほうがおかしいんだよな…)
結論、今、向かってきている人物は、ゲームに乗った敵である可能性が、高い。
そうでなくても、生きる為に殺す――と結論付けた奴だっていてもおかしくない。
最初から下手にフレンドリーに近付いて、いきなり撃たれて殉職――なんてたまったもんじゃない。
(そうでなくても…レミィと、状況を把握できてない相沢がいるんだ…)
慎重に、相手を探る。

ガサガサ…さらに茂みが揺れた。

480 :DEAD OR ALIVE(後編)4:2001/06/30(土) 00:30
(なんだ…今、北川は敵…といったのか?…それに…北川の持つ銃とこの銃…本物じゃないのか!?)
「動くな…誰だっ!!」
祐一の混乱が覚めやらぬ内に、北川は揺れる茂みと対を成す木の陰に移動し、そう呟く。
「……っ!?」
驚いたような声。
その声が、女だということが認識できる。
「こっちに、攻撃意思はない…分かるかっ?」
チラリ……
意を決して、木の陰から片目を出す。
(って、うちの学校の生徒じゃないか…しかも一年?)
一瞬で見て取れた。見慣れた学校の制服。リボンの色は間違いなく一年生のものだ。
それよりも…胸に抱いた右腕が――脳裏に一瞬で焼きついた。

「あまの…天野じゃないか!」
突如、叫びながら祐一が立ち上がり、天野――と呼ばれた女生徒に駆け寄った。
「お、おい、相沢……!」
北川の隠れる木の横を通り過ぎ、前へと踊り出る。
「……あい…沢さん…?」
女生徒の、少し震えたような声が漏れる。
「相沢の…知り合いか…」
初めての敵との遭遇…と思われる事態に、大げさに神経質になりすぎていたのかもしれない。
(少し、軽率だったかもな…)
北川は、頭を掻いた。
「ふう…」
伏せていたレミィにも、安堵の表情が宿る。

481 :DEAD OR ALIVE(後編)5:2001/06/30(土) 00:30
頭が…ひどく痛む。
頭の中におぼろげに浮かぶ戦慄のイメージ。
血に染まった、赤。いつか見た光景。

――ゆ、祐一、大丈夫?この子が悪いんだよ!祐一を殺そうとしてたから…――
――でね、途中で『みゅ〜』て言ってばっかりの女の子に会うの。
  その子はまだ子供だから、まことはその子のお姉さんになってあげたの。
  木の実をあげたり、変な人に襲われたときは真琴が守ってあげたりしたんだから!――

「天野っ……!!」

張り裂けそうな赤――そしてかすれる声。
「天野……まこと…は…?」
気が付いたら、口に、ついていた。その名を。
「いやっ…!!」
「それに…その右手…おい…天野っ…!!」
女生徒の様子が、おかしい。
「おい、相沢…?天野…さん?」
先程、祐一が口についた名を、北川も口に出す。
その女生徒は、明らかに――何かに怯えていた。

482 :DEAD OR ALIVE(後編)6:2001/06/30(土) 00:32
美汐の足が、一歩、二歩、と後ろへ下がる。
「いや……入ってこないで…」
ガクガクと足を震わせながら、美汐が声をしぼりだす。
「天野…まこと…は…?」

――まこと…いやっ…まことはもう…いないの…
――悲しい…つらい記憶…

「それに…その右手…おい…天野っ…!!」

――わたし…の…みぎて…もう…ない…の…?

――わたしの中に入ってこないでっ…!
――これ以上私を壊さないでっ!!

「いやっ…!」
「天野っ!」
祐一が、美汐の肩を掴んで、揺さぶる。
こんな、美汐の取り乱した…錯乱した姿に、祐一もまた取り乱していた。
「おいっ、相沢、落ち着けっ!!」
北川の声が、遠くで聞こえる。
「いやっ!!」
「天野っ…」
祐一の手を振り解いて、その勢い余って背中からその場に倒れる。
「天野…一体…」

ガサッ…

一瞬だった。

483 :DEAD OR ALIVE(後編)7:2001/06/30(土) 00:33
今度は、誰も気付かなかった。
バキィッ………!!
ただただ、祐一と美汐のやりとりに目を奪われていただけだったのか…
それともそうでなくても気付かなかったのか。
それほど…唐突に、祐一が派手に吹き飛んだ。
「ガッ……!!」
北川が、祐一を殴りつけた時よりも、数倍あたりに大きく響き渡る音。
「……相沢っ!?」
倒れた祐一と、その逆に位置する男の影。
「……」
(誰だっ!?)
右手で銃を水平に構え直しながら、北川が呻いた。
背中を向けたまま――美汐と正面に向き合ったまま…と言ったほうが正しいのかもしれない――
ちらりとこちらを見やる男。年の差は北川達とそう相違無い。
「いきなり…なにすんだあんたっ!!」
その男の目は、どこか異常な、何かを感じさせる目で。
(なんだ、こいつは…こいつはゲームに乗った奴なのか!?)
男が手に武器を持っていないことを確かめながら、ぐるりと回りこんで祐一の方へと向かう。
銃は構えたままに。
(それに…なんだあの手はっ…!)
武器こそ手にはしていないが…右腕に携えられている袋のそれは…
(人間の…手!?)
それに気をとられた時、きらりと何かが光った。

484 :DEAD OR ALIVE(後編)8:2001/06/30(土) 00:34
「えっ…?」
「ジュン!!」
レミィの叫び。
(なんだっ……?)
本能的な恐怖…北川の、右腕の周りにまとわりつくそれ。
右手から、超高速で伝染する、圧倒的な恐怖。
「うわあああっ!」
レミィの叫びがあったとはいえ、それを感じ取れたのは北川にとって幸運であったのかもしれない。
ゾリッ……!!
勢いよく手前に引き抜いた右手から、鮮血が迸り、その場を赤く照らした。
「ぐぅっ!?」
ただ、熱い…という感覚と共に、北川が後ろに一歩、二歩とよろける。
カラカラッ…
その感覚で取り落としてしまったたコルト・ガバメントが男の足元にまで滑って止まる。
空中に残るその日の光に輝く糸を、男が手前に引き戻す。
赤く垂れる血と共に、何か長い布みたいなものが巻きつくように付着していた。
「痛ぇ…」
それは、北川の右腕の――皮。

485 :DEAD OR ALIVE(後編)9:2001/06/30(土) 00:35
なに…今の…祐介さんが…右腕を…刈ろうと…
祐介さん…?

狂気が、電波が、伝染する。

私の右手…その男の人の右手…あなたが持っている右手…

私も…刈るの……!?

思考の混乱の最中、祐介が薄く笑った気がして……

「いやあああああっ!!」

その場から…逃げた。
そうしないと、信じていた何かが、壊れてしまいそうだったから。

486 :DEAD OR ALIVE(後編)10:2001/06/30(土) 00:37
「……」
男が足元に転がってきたコルト・ガバメントを拾い上げ、構える。
祐一にでなく、北川にでもなく、宮内レミィに。
「…!!」
北川が、横目でレミィを見やる。
「……」
先程まで持っていた刀ではなく、銃――電動釘打ち機――を両手に、狙いを定めている宮内レミィの姿があった。
「や、やめろっ…」
右腕の痛みをこらえながら、北川が叫ぶ。
その時……

「いやあああっ!!」

沈黙を守っていた美汐が、来た道の方向へと駆け出した。
「………!!」
男が、一瞬そちらに気を取られる。
「フリーズッ!!」
ビシュッ…!
五寸釘が、勢いよく発射される――が、男は瞬時に転がってそれをかわす。
確認してから転がったわけじゃない。まさに刹那の出来事だった。
「……!!」
転がったそのままの勢いで起き上がると、ゆっくりと、こちらに銃を構えながら、後退していく。
「フリーーズッ!!」
レミィの再三の叫びにも止まらずに、男は銃を構えたままに奥へと消えていく。

やがて、その姿が木々の間に見えなくなった頃、全速力で駆け出していった。
美汐の、消えた方向へ――と。

487 :DEAD OR ALIVE(後編)11:2001/06/30(土) 00:39
「ジュン!ユーイチ!大丈夫?」
レミィが、心配そうに二人を眺める。
「あ、ああ、大丈夫だ…心配しないでくれ…」
と言いつつも、右腕の肘から先…手首までの部分が真っ赤に染まっていた。
(皮が…ほぼ全部持っていかれてやがる…いちち…)
ビリビリッ…自分のシャツを左腕で勢いよく破ると、それを右腕に巻きつけ、縛る。
「北川…なんだ…今のは…?」
殴られた頭を激しく振りながら――祐一の戸惑いの声。
「分からん…たぶん…ゲームに乗ってしまった奴なんだと思うが…」
きつく、強く縛りながら北川。
傷こそひどいが、出血はさほどでもないらしい。縛り上げたシャツが真紅に染まるまでには到らなかった。
「ゲームって…なんだよ…」
「……」
右手の具合を、強く握ったり開いたりして確かめながら、黙ってその言葉を耳に通す。
「殺人ゲームって…この銃はなんだっ!真琴は…真琴は…死んだ…のか?」
先の祐一の、頭の中に浮かんだイメージは、それだった。
「……」
ただ、何も言わず、祐一を見つめる。
かけるべき言葉は、見つからなかった。
「ふざけるなっ!殺人ゲームなんて…ふざけるなよっ!!馬鹿野郎!!」

488 :DEAD OR ALIVE(後編)12:2001/06/30(土) 00:40
「相沢…」
「うるさい!俺は…俺はみんなを探す!北川、手伝ってくれ!」
「……」
それにも、答えることができなかった。
「ユーイチ……」
「なんでだ…なんで黙ってるんだ?まさか…みんな――なんて言わないよな!?」
「…相沢…」
「くそっ、俺は…俺だけは…みんなを探す…きっと生きてるっ!当たり前じゃないかっ!
 あゆも、名雪も…真琴も、舞も…栞も…佐祐理さんも…みんなみんなっ…!!」
「おい、相沢っ!!」
突如、祐一が駆け出した。森の向こうへ向かって。

「そして――もっ!!」
降り続く雨の中、空き地で待つあの寂しい瞳の少女も…
だけど、その彼女の名前と、その姿だけは、もやがかかったように思い出せなかった。


「ジュン!」
レミィが、手荷物を片手に叫ぶ。
「分かってる…今のあいつを一人にはできないだろ!」
左手でバッグを下げ…傷ついた右腕で大口径マグナムを構えながら。
北川達もまた祐一の消えた方向へ向かって走り出した。

489 :DEAD OR ALIVE(後編)13(ラスト):2001/06/30(土) 00:41
――僕もまた狂っているのだろうか――

天野さんを守るために…
ためらいもなく他の参加者に手をあげる…

いや、ここに来た頃は最初から手をあげていたじゃないか…
それは、狂っていたとは言えないのか?

あの時は、叔父に会うため、そして生きるため…大切な…漠然とした何かを守るために…

そして、今は、もう近づく資格などない僕が、それでも天野さんを守るために。
大切な、形あるものを守るために。


いいじゃないか。昔から狂っていたとしても。
いいじゃないか、たった今、狂ってしまったとしても。

僕が狂うことで大切な、本当に大切だと言える人を守れるなら、それでいい。
守りきれるなら、狂ってしまってもいい。
僕の、選んだ道だから。

――ああ、電波が心地いい。



【相沢祐一 サイレンサー付きの銃入手】
【長瀬祐介 コルト・ガバメント入手】

※美汐は祐介が追ってます。祐一は北川が追ってます。
※祐一、美汐共にかなり混乱してます。
※お互いに追いつくかどうかはまかせます。

490 :名無しさんだよもん:2001/06/30(土) 00:45
祐介がいきなり手を挙げたのは意外だったけど、いい感じだと思うるれ。

491 :逃亡者:2001/06/30(土) 02:04
嘘だ!嘘だ!嘘だ!
みんな生きてる!そうに決まってる!

俺はただひたすら走った。
後ろから聞こえてくる北川の声が遠くなっていく。

周りの景色が無くなっていく
聞こえるのは自分の息と足音
感じるのは手に持った銃の重み
頭の中はぐちゃぐちゃで
まともなことは何一つ考えられない
浮かび上がってくるイメージ
−−口から血を流す真琴−−
−−血に塗れたナイフを持った名雪−−

違う!違う!違う!
認められない!認めるわけにはいかない!認められるわけがない!

だから俺は走る。
余計なことを考えないために。

不意に視界が戻った。
気がつけば地面に倒れ込んでいた。
体を動かそうとしても指一本動かない。
俺はゆっくりと目を閉じた。
次に目を覚ましたときにいつもの目覚ましの声が聞こえてくることを願って。


「結花〜、この人まだ生きてるよ!」

【相沢祐一 気絶】
【江藤結花 来栖川芹香 スフィー 相沢祐一を発見】
※祐一は銃を持ったまま気絶してます
※祐一を3人がどうするかはお任せします。

492 :名無しさんだよもん:2001/06/30(土) 02:08
そろそろ移行です。このスレの容量限界を超えない内に。

493 :愛の消毒大作戦(1):2001/06/30(土) 02:50
 世界がぐらりと歪んだ。
 足が、パタリと止まった。
 視界からは、相沢祐一の姿が消えていた。
 目の前には、黄色い髪の、女の子。
 心配そうに、俺のほうを覗き込んでいた。

「ダイジョウブ?」

 彼女、宮内レミィはそう言ってるような気がした。

「あぁ、俺は大丈夫だ」

 なんて強がって答えようと思ったけれど……ダメだ。
 息が、苦しい。
 手が痛い。
 腕は、真っ赤、だ。
 握っていた、マグナムが、地面に落ちた。
 どさり、と音がした。
 大丈夫じゃないな、俺。
 心の中でそう呟いた瞬間、北川潤の意識は落ちた――。

494 :愛の消毒大作戦(2):2001/06/30(土) 02:51
 目がさめると、柔らかいものの上に、俺ははいた。
「ジュン!」
 レミィの顔が目の前いっぱいにあった。
「おわっ!」
 少し驚いた。
「ジュンが目を覚ました! ワタシとってもウレシイ! ジュン! もう起きないかとおもったよー!」
 どうやら、俺はレミィの膝枕で眠っていたらしい。
 流石にこのままだと、恥ずかしいので立ちあがろうとした。
「ジュン、ダメだよ! もうちょっと寝ていなきゃ!」
 眉をつりあげ、レミィは言った。
 とりあえず、今は言うコトを聞いていたほうがよさそうだ。
 というか、ホントは動けなかった。
 ケガをしていた右腕を見た。
 腕には葉っぱが茎でまきつけられていた。
 レミィがやってくれたんだろう。
「レミィ、これありがとな」
 腕を指差して、北川は言った。
「エヘヘ……これが限界だった」
 レミィは、少し照れて、笑った。
「十分だ。レミィがやってくれたんだからな」
「一応、化膿しちゃダメだから、消毒しといたヨ……」
 レミィは顔を赤くして、言った。
 と、消毒?
 ここにはオキシドールもヨードチンキも、赤チンもない。
 ってことは……。
 頭の中で考えると同時に、北川の顔も赤くなった。
 「それじゃぁ、ちょっと水くんでくるヨ!」
 そう言ってレミィがさっと立ちあがった。
 ゴスッ
 頭が地面に落ちた。
 物凄く、痛かった。
 腰から上だけ、上体を起こして、俺はレミィが帰ってくるのを待つことにした。

495 :名無しさんだよもん:2001/06/30(土) 03:16
容量の都合により、新スレを立てます。
移行準備に入るため、新たな話はお控え下さい。

496 :名無しさんだよもん:2001/06/30(土) 03:28
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=993838953
移行お願いします。

497 :名無しさんだよもん:2001/07/02(月) 00:24
あああああああああ^〜〜〜〜〜っ!!
マンセーマンセー〜〜〜〜〜!!

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