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葉鍵ロワイアル!#7

1 :名無しさんだよもん:2001/06/03(日) 23:58
6が容量オーバーで消える前に、新スレたてます。

基本ルール 、設定等は前スレ熟読のこと。

・書き手のマナー
 キャラの死を扱う際は最大限の注意をしましょう。
 誰にでも納得いくものを目指して下さい。
 また過去ログを精読し、NGを出さないように勤めてください。
 なお、同人作品からの引用はキャラ、ネタにかかわらず
 全面的に禁止します。
・読み手のマナー
 自分の贔屓しているキャラが死んだ場合、
 あまりにもぞんざいな扱いだった場合だけ、理性的に意見してください。
 頻繁にNGを唱えてはいけません。
 また苛烈な書き手叩きは控えましょう。

前スレ
葉鍵ロワイアル!#6
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=990948487
その他のリンクは>>2
突っ込んだ議論、NG処理、アナザー没ネタ等にお願いします。
感想はなるべく本スレでお願いします。
そして、絶対にNG議論は本スレで行わないように。

443 :喪失の黒(5):2001/06/20(水) 07:23


だめだ。
撃たせるな。
だめだ。
撃たせては、だめだ!

最後の一言を発した時、必ずこの娘は撃つ。
例えあたしが憎まれても。
これ以上、仲間を殺させていいはずがない。
あかりや、由依の顔が目に浮かぶ。
撃たせては、だめだ!

事情はさっぱり解らなかったけれど。
間違いなくそこにある悲劇を前に、震える身体を無理矢理引き絞りながら
彼女の言葉を聞いていた。

『…私は、あなたの事…』

愛の告白のような、その言葉を聞きながら。
あたしは弾丸のように飛び出した。

『…嫌い、です』

閃光のように長椅子の背もたれを駆け抜けて。
驚く白鳩達を砂煙のように巻き上げて。
七色の光の尾を引き、抜刀した。

虹のように弧を描いて。
喪失の黒き闇を断ち切るべく。


あたしは、振り下ろした。

444 :名無したちの挽歌:2001/06/20(水) 07:25
「喪失の黒」です。
異論反論あるでしょうが、全員可哀想な話になってしまったわけです。

445 :111:2001/06/20(水) 17:32
>喪失の黒
直接的な繋がりこそ無いが、この展開に”剣風”の匂いを感じるよ。

それはそうと、そろそろ本スレも限界に近づいてきたと思うがどうだろう?
現在容量は430K強。
感想スレも移行したことだし、500前に移行する用意をいたしましょう。

446 :儚き魂の円舞 - 1:2001/06/20(水) 17:37
――それを止めたのは何だったのだろう?

「―――」
「―――」
空白。
全てが止まった瞬間。
晴香の刃は茜の腕の上に。
茜の銃は、その矛先を祐一の顔へ。
だが、それ以上動く事は無い。
「どうして……」
ようやっと、静寂を破ったのは茜の声。
震えた声。微かで、消え入りそうな。
「どうして……貴方は、笑ってるんですかっ……!」
そう。
祐一は、目の前に立った死神に笑いかけていた。
その腕に、かつての友人の亡骸を抱えて。
――晴香がその刃を止めたのは、無感情だった彼女の顔に、はっきりとした驚愕の表情が現れたからだった。
あと一歩遅かったら、その腕が飛んでいた事だろう。
「……何て言ったらいいんだろうな?」
祐一が返す。
朧気な笑顔で。
だけど、今にも泣きそうな顔で。
「なんか、酷く、お前が可哀想だと思ったんだ。哀れだって……」
「………」
「そしたらな。何かもう、どうしようもないって感じになったんだ――諦めちまったのかな。詩子と約束したのに――」
祐一は、ゆっくりと詩子を床に下ろした。
血が教会の床を深紅に染める。祐一は、詩子の髪を、そっと撫でた。
――もう、長くない。

447 :儚き魂の円舞 - 2:2001/06/20(水) 17:38
「いいぜ」
立ち上がるや否や、祐一は呟いた。
「俺の命、お前にやるよ」
「……!」
再び、驚愕。
思いも寄らぬ言葉。
それは晴香も同じだった。
「あんた、何言ってんの!?」
「俺は、俺のやる事は、茜を"救う"事だ。詩子と約束したんだ――でも、それも、出来なかった。
 なら、俺の居る意味は無い筈だ。そうだろ?」
「だからって……!」
晴香の刀が、刃を返す。
それは明らかに茜の首を捉えていた――茜は、それでも動かない。
目の前に立つ人しか、見えていなかった。
「邪魔、しないでくれ」
ようやっと放たれた、はっきりと、明確な意志の込められた台詞。
しかしそれは、明らかな拒絶。
無言、しかし、痛々しい表情で晴香は、刀を納めた。

448 :儚き魂の円舞 - 3:2001/06/20(水) 17:39
再び祐一の顔が茜を見た。
「――そうだ、最後に一つ言っておきたいんだ」
「………」
茜の返事は無い。
しかし、銃弾が放たれる事が無いと言うことは、まだ幾ばくかの猶予を与えるということか。
祐一は、そう思う事にした。思いたかった。
「お前が俺を嫌いでもいい――俺は、お前の事が。好きだったよ」
茜の眼から光が消えた。
しかし、銃口は微かに震えるばかりであった。
答えは無い。当たり前か、と祐一は僅かに残念に思った。
――結局、最後の最後も振られちまったなぁ……
「――さぁ」
目を閉じる。
もう、未練は無い。
「やってくれ」

そして。

449 :彗夜:2001/06/20(水) 17:43
てなわけで儚き魂の円舞を書いてみました。
初めて書くのですが、どうも最初のヤツ、下げ忘れてたみたいです。
申し訳無いです。
しかし前と続けて同じグループの話を書くのは御法度だったかな

450 :名無しさんだよもん:2001/06/20(水) 18:34
>>449
問題ないかと。特に今回の場合は話の続きですし。

451 ::2001/06/20(水) 19:11
とことこと走る影。教会に向けて。
ピコッ…ピコッ……人物探知機の一点が強く輝く。
映し出された番号が一つに集まり、強い光を放つ。
その一点の中の番号、『001』――相沢祐一。
(祐一が…待ってるよ、みんなが…待ってるよ)
祝福の鐘が、またすぐ耳元で聞こえた気がした。

(ずっと待ってたんだから…
 ずっと…祐一を…あの日から………――?……あれっ?)

だが、彼女の思考がそこで停止する。
7年前のあの冬からずっと――その名雪の思いが、それが分からないでいた。
(どうしてだろう…思い出せない…とっても大事なことだったのに……
 私と、祐一の大切な思い出…)
祐一のこと、祐一との思い出のこと。
その部分が、ナイフで綺麗に切り取られたかのように。
それは名雪だけが知っていた心の真実。

疑問に思いながらも、彼女は強く思い描いた。これからの幸せな日々を。
(はやく祐一に会いたいな…そして美しい教会で結婚式を挙げるんだ。
 それでお母さんや子供達と一緒にあの家でずっと幸せに暮らすんだ。
 それが私と…祐一と…お母さんの願いだから)
走った。もうひと頑張りだから。
(でも、どうして悲しいんだろう…幸せなはずなのに…
 これから祐一と一緒に幸せの欠片を探していけるはずなのに)

頬を伝うのは、輝く汗、たった今溢れ出た涙。
そして、額から、後頭部から流れてきた血。
頭から、背中から、べったりとこびりついている血。
先程まで背負っていた、知らない人の血。
(どうして悲しいんだろう…泣いちゃだめだよ…祐一に笑われちゃうよっ!
 祐一の前ではずっと笑っていたいのに!)
だけど、涙がとまることはなかった。

452 :魂の導き手 - 1:2001/06/20(水) 22:55
――初めて出会った時。
それからどれくらい経ったんだろう?
まさかこんな形で出会うとは思いも寄らなかったけどな。
………。
もし。
もしも、こんな状況じゃなくて。
普通の生活の中で、全くの偶然で、再会出来たなら……
いや、再会出来たとして。
想いは伝わっただろうか?
――多分、無理だろうな。
ああ。
悔しいよな。
でも、もう、どうしようもない話だ――。

笑い出したい衝動に駆られた。
目は瞑ったままだったが、もしかしたら笑みを浮かべたかもしれない。
どっちだっていい。
どうせ、次の瞬間にはミンチだろうしな。

さぁ。
早く撃ってくれよ、茜。
いい加減立ってるのも疲れたからさ。
引き金を引くんだ――。

―――。

不意に、予感めいたモノ。
がしゃっ、という何かが落ちる音。
――ゆっくりと、目を開いた。

453 :魂の導き手 - 2:2001/06/20(水) 22:57
――あの人は、目を閉じています。
隣に居た人は、刀を引いてくれました。
――でも、撃ったら、多分私は死ぬんでしょうね。
隣の人に、切り裂かれて。
………。
あの人は。
目の前で、私が引き金を引くのを待っています。
だから、私は、狙いを定めて――。
その人の眉間に銃口を向けて――。

ああ……。
指が、動きません。
どうして。
私は、詩子を撃ちました。
そうすれば、甘えを棄てられると思ったから。
出来なければ――あそこには帰れない。
だから、撃ちました。
だから。
祐一も、撃てると思ったんです。
……お願い。
動いて下さい。
動いて下さい!
動いてッ!

454 :魂の導き手 - 3:2001/06/20(水) 22:59

――茜の指は、引き金を引く直前で止まっていた。
内心の葛藤とは裏腹に、その指は震えも、何も無かった。
本能が、無意識の内に――その行為を、完全に、拒否していたとも言えよう。


……ああ。
もう、ダメですね、私……。
ふふ。
自分の不甲斐なさに、笑えてしまいます。
そんなに、この人が大事だったんでしょうか?
……よく分かりませんが、そうなんでしょうね。


そうして。
茜の手の中にあった銃が、落ちた。

哀しき殺人鬼が、今、少女に戻る。

455 :zoo director(1/2):2001/06/20(水) 23:04
 するすると樹の上から下りてくる御堂を見ながら、詠美はなんとなくサルを思い浮かべた。
「おかえり、したぼく。どう、あった?」
 驚くべき身のこなしで殆ど音を立てずに地面に下り立つと、御堂は「まぁな」とぶっきらぼうに言った。
「この方向だな。そんなに離れてはいねぇ」
「こっちって言うと……あの人が走って行った方角とちょっとずれてるね」
 御堂の指差した方と、秋子が去った方を見比べて詠美は言った。
「教会なんてシロモノがあるかどうか眉唾だったんだがよ。本当にあるとはな」
「あるとわかった以上、もう行くしかないよね」

『教会を探す』という、詠美の提案は彼女にしてはなかなかまともなものだった。
秋子が走り去ってから随分時間が経ったし、彼女の後を追って探すよりは
彼女の目的地を探す方が、遭遇する確率が高い。
――まぁ、再会してからどうするかは、詠美は考えてなかったのだが。

「まぁ、あんな目立つ場所に行くのは危険なんだがよ」
「でもでも、あの人が気になるでしょ。それにこれも、渡さないといけないと思うし」
「まぁな」
「あたしが決めていいって言ったんだから、文句を言わないの」
 名雪の学生手帳をひらひらさせながら詠美が言う。御堂の提案で、
この生徒手帳を遺品として持って来ることにしたのだ。彼女と再会する目的として。
「しかし、上から目的地を探すたぁ、お前にしては上出来な考えじゃないか。褒めてやるぜ」
 詠美のアイディアに感心する御堂のその言葉に、詠美はふふん、と胸をぐっと反らす。
「あったりまえでしょ。この同人界の女帝、クイーン詠美ちゃんさまには、
まだまだすっごいアイディアがたくさんあるんだからっ!」
「……そこまで大した考えでもねぇんだけどよ」

456 :zoo director(2/2):2001/06/20(水) 23:07
「それで、だ」
 そこで御堂が話を打ち切る。
「そこの死にそうな毛糸玉はどうした?」
「知らないわよ。さっき、そこの林から……」
 と、身動きの取れないポテトの横を指差して、
「その白い蛇が飛び出してきて、なんか睨み合ってたんだけど」
「蛇が毛糸玉に襲い掛かってやられちまったと」
「うん」
 やれやれ、と御堂は白蛇をポテトから引き剥がす。自由になったポテトは
ぴこぴこと呻くと、ふらふらと地面に倒れこんだ。それを見ていたぴろがにゃあ、と鳴いた。

「それで、さぁ」
 捕まえた白蛇と睨めっこしている御堂に、詠美が声をかける。
「したぼくの肩でさっきからばっさばっさしてる鳥はどうしたの?」
「知るか。さっき、木の上から教会を探してたら……」
「ばっさばっさとどこかから飛んできたと」
「ああ」
 あんた、動物に好かれる変な匂いでも出してるんじゃないの? と詠美は言うと、
蛇は怖かったので取り敢えず二歩ばかし御堂から離れた。


「毛糸玉、猫、白蛇、烏、そしてガキ。……隠密行動なんてとれやしねぇじゃねぇか」
「ガキってなによ。したぼくのくせに」
 ため息を吐く御堂に、詠美は言い返す。御堂はそれを無視すると、幾分声を低くして言った。
「さて、お前ら。覚悟はいいな」
 ぴこ、みゃー、しゅるしゅる、ばっさばっさ、何よ覚悟って?
「わからねぇならいい。……行くぞ」
 そう言うと、御堂は駆け出す。強化兵の勘が告げた予感。
ふん、上等じゃねぇかと、その予感を振り払うと一路教会を目指す。
 ――そこで待つものを、まだ知らずに。

【011 大場詠美 089 御堂(+ ポテト ぴろ ポチ そら)教会へ】

457 :深遠。:2001/06/20(水) 23:13
――血の色で汚れた従兄の服を見て、祐介はごくりと唾を飲み込んだ。
身体の所々に大きな傷も見える。片足の甲が半分無くなっているし、
額の辺りにも、血こそ止まってはいるが、大きな傷痕がある。
まさか、彰もやる気になっているのだろうか? 他の参加者と戦って――
人を、殺して。
「大丈夫、僕はやる気にはなってないよ」
――祐介の不安をうち消すかのように、彰は笑った。
そして、自分の後ろで、少し怯えた眼をしている美汐を見ると、
ははぁ、と、変に納得した風に笑った。

「うん……折角こんな時間な訳だし、海まで朝日でも観に行こう」
そう云うと、砂浜へ向けて歩き出した。
その後ろを追うように、二人は手を取り合って付いていく。
――残光。
未だ怯えた眼をしていた美汐は、だがしかし、その朝日の眩しさに目を奪われた。
どうしようもない、そんな光。
突き刺す痛みに似た、強い刺激。
これ程に爽やかな光。それは、朝の光。
ずっとこの世界を照らし続ける、太陽の残り火。

「で、君たちは二人で何をしてるんだ?」
唐突に彰は呟いた。
はっ、と祐介はその横顔を見た。今までにない、真剣な眼だった。
「殺し合いをしなくちゃならない。一人しか生き残れないわけだ」
二人は残れないんだぜ? 意地悪く笑う。
「――なんとか、脱出したいと思ってる」
「どうやって? ここから脱出出来るような考えがあっさり浮かぶほど、お前は聡明だったか?」
言葉に詰まる。
爆弾は解除された。確かに脱出出来る可能性はあるのだ。
「もう、爆弾はないんだから――逃げようと思えば、泳いでだって逃げられる筈だ」

458 :深遠。:2001/06/20(水) 23:13
言うと、彰は鼻で嗤った。
「それが本当だという証拠は? あの放送がブラフだという可能性は」
「それは」
「見通しが甘すぎる。こんなところで、極刑覚悟で、叔父さん達はこんな企画を行ってるんだ。
 それがそんな、参加者逃亡、なんていう中途半端な形で終わらせると思うのか?」
「――それは」
「昔からそうだったよな、真面目そうな顔して、その実何も考えていない」
きっ、と、美汐が睨んでいるのが判る。だが、悔しい事に自分はまるで言い返せなかった。

「――悪かったな、別に虐めるつもりはないんだよ」
急に口調を和らげて、彰は笑った。
「ただ、どうもお前が甘すぎる見通しを持っているようだったからさ。大方、この島の、或いはこの島付近の、
 何処かに潜んでいる筈の叔父さん達を捜しに行こう、とでも考えていたんだろ」
図星だった。
「まあ――僕も似たような事はやってるんだけどね」
苦笑して、彰は言った。
「だけど、会えなかった。――もし会えたとして、一体彼らは何を教えてくれるのだろう?
 そして、目的を教えてくれたとして――お前は、それでどうするんだ?」
――僕は、何をするのだろう? 彼らに会えたとして、僕たちが無事に帰れるという保証はあるのだろうか?
叔父さんを説得する? 自分たちを助けてくれ、って? 説得なんて出来るわけがないじゃないか。
叔父さんが、僕を、ここに放り込んだんだから。
「真実を知りたい、と願うのは判る。けれど、それをする事で、君は」

その娘を護れるのか?

「守りたいん、だろ?」
……天野さんの為に。
そうさ、僕は、そう誓ったんじゃないか。

そう、――叔父を倒す事が、企画者を倒す事が、その誓いを守る事にはならない。
彼女を、最後まで。

459 :深遠。:2001/06/20(水) 23:13
「だから」

「今お前に必要なのは、生き残る事。ここから生きて帰る事だけを考えればいい」

祐介は、力強く頷いた。
そう――色々考えていたが、それがすべてだ。
理由を知りたい、なんていうのは僕のエゴだ。
理由なんて知ろうと思えばいつでも知れる。そう、生き残る事さえ出来れば。
「良い眼になった。それでいい」
彰は砂浜に座り込んで、小さく息を吐いた。

「参加者は大幅に減った、そして――高槻が野に放たれた。おそらく、最大の敵は奴らだろう。
 奴らを殺せば、それで、多分。多分、この殺し合いは、終わりさ。やる気になってる人間は、もう少ない」
「けど彰兄ちゃん、逃げるって言っても、僕らの体の中には爆弾があるじゃないか、いざとなったら奴らが爆発させる――」
「心配するな――爆弾はもう作動しない。僕が装置を破壊した」
「え?」
「ともかく、もう決して爆弾は作動しない筈だ。だから、逃げようと思えば、ここから逃げる事は出来る」
泳いでだって、な。彰はまた笑った。
「そろそろ朝日が完全に出るな」
見ると、朧げな光と共に――朝陽は、その全容を現した。

「とは言っても、そう簡単に泳いでいけるほどの距離じゃないし、それに、喩え泳いでいけたとしても、
 管理者は近くにいるのだろうし、それをみすみす許してくれる筈もない」
「それじゃあどうするつもりなの、彰兄ちゃん」
「そうだな――」

「僕が、管理者を殺しに行こう」

「――え?」
「何、簡単な仕事だ、たぶん、」
大切なものを守りきって生き残るよりは、ずっと簡単な仕事だ。
「そんな、無茶な――」

460 :深遠。:2001/06/20(水) 23:14

「勿論、僕が高槻を、叔父さん達を殺しきる事なんて出来ないかも知れないし、きっと出来ない可能性の方が大きい」
「それなら」
「それでも、僕はお前に生き残って欲しいと思っている。真相なんて、もう知りたくもなんともない。
 僕は、出来る限り多くの人間に生き残って欲しいんだよ。僕が失敗したらお前が行けばいい。いや、
 お前じゃなくても、誰かが戦えばいい。でも、今は、僕一人で充分だ」

「わざわざ僕がお前に声掛けた理由、判るか?」
ふと、彰はそう訊ねた。
「僕と彰兄ちゃんが、知り合いだったから?」
「それもある。けれど、何よりお前らはすごく良さそうだった」

お前らみたいなカップルが、すごく良さそうに見えたんだ。
そう云う彰の顔は、どうしようもないもので充ち満ちていて。

「きっと、お前なら最後までその娘を守りきれると思ってる」
「――」
「僕には取り敢えず、今は守るべきものが傍にない。だから、お前よりずっと身軽だ」
「そんな」
だが、彰は、少しだけ哀しそうな顔をして、狼狽した祐介を見た。
「――ただ一つ、一つだけお願いがあるんだ。
 柏木初音、っていう、小柄な、長髪の小学生を見かけたら、その子を守ってやって欲しい。
 出来たら、捜してやって欲しい。きっと、一人で震えているだろうから」

「管理者側との戦いは二回目だ。今度も上手くいく可能性は少ないけど。まあ、多分、」
なるようになる、さ。
彰の決心の固さを、自分では多分、どうしようもないのだと、祐介はそう感じていた。
普段気弱だった彰が、どうしても自分がやりたい事をやりたい時、ああいう眼をする事を覚えていたから。

「多分もうすぐ七回目の放送が入るだろう。――六時間後、もし放送が流れなかったならば」
僕は成功したんだと思ってくれ。泳ぐなりして、逃げれば良い。

だが、彰が背中を向けて立ち去ろうとするのを邪魔する人間がいる。
「七瀬、さん」
ずっと黙っていた天野美汐は、真っ直ぐ彰の前に立って、行く手の邪魔をしていた。
「天野さん、だったかな? 何かな?」

461 :深遠。:2001/06/20(水) 23:15

「死ぬ気なのかも知れませんが、」

「――あなたも、生き残ってください」
「ありがとう」
「どうしても、守りたい人が、いるんでしょう?」
彰は、少しだけ微笑んで、頷いた。
「それなら、あなたが生き残らなくちゃ意味はない」
「そうだね。そうだ。うん、僕は必ず帰るよ」

「――どうしても取り戻したいものもあるから」

「日常、ですか?」
「そう」
「君が以前と変わらぬ日常を取り戻せる、そんな事は決してないだろうと思う。きっと、色々なものを失ったんだと思う」
美汐は小さく頷いていた。
「日常なんてもの、もう何処にも無いのかも知れません。帰れたとしても、私は真琴の事を忘れる事は出来ない」
「うん、そうだ。きっと以前在った筈のものは、今はもうない。でもね、」

「日常は、そこを日常なのだと思えば、きっと、そこが日常なんだ」

彰は、優しく微笑んた。
そして、思い出したかのように、腰に挿さっていた拳銃を、祐介に放った。
「お前にやるよ」
これで守ってやれよ。そう云う声が聞こえた。

何やら呟いて、彰は遠く、海の果てを眺めながら言った。
「しばらく朝日でも見てると良い。ここは結構安全だろうし、それに心も和むだろう」
彰は、そうして砂浜から立ち去った。

462 :緋蛾。:2001/06/20(水) 23:18

海を見ながら、二人は、朝日が照らしている自分たちを想った。
どうしようもない美しい空。流れる雲と風の中で、二人は、短い言葉をかわした。
君を守るとか、そういう抽象的な言葉ではなかった。もっと、直接的な、簡潔な言葉。

「――ずっと、言いたかった。言うべきだった」

「君が好きなんだと思う。――天野さん」
「私も、――好きです、祐介さん」

――そうして、朝日の前で、二人は唇を重ねた。
触れるだけの、優しいキスだった。
――どうか、今だけは。
祐介と美汐は、殆ど同時に、そんな事を想った。
陳腐な言葉でも充分だった。生きていくのにはそれで。

――彰が、その一つの決意をしたのは、その二人が手を繋ぎ、歩いているのを見たからだった。
自分は揺れていた。日常とは何だ? 考えていても解らなかった答え。
何処に帰っても、ある筈のないもの。
ならば、何のために自分は戦ったのだろう。いっそ、死んでしまえば楽になれたのかも知れない。

けれど、その認識を改めなければいけない、と思ったのは、彼ら二人を見たからだった。
それぞれに傷を負った二人。けれど、その傷を補い合うかのように連れ添う二人。
だから、彰はそこでやっと判ったのだ。

日常とは、日常とは何かを考える瞬間に現れる幻だ。

そう、この世界のすべては、きっと日常で溢れているんだ。
そう考えて、漸く彰は決心をした。
この戦いで、皆、傷つきすぎた。忘れられないほどの傷を負った。

463 :緋蛾。:2001/06/20(水) 23:19
けれど、死ななければ、生きてさえいれば、きっと帰れるのだ、
何処かにある日常に。だから僕は、戦うのだ。

初音に、もう一度だけ逢いたかった、と思う。
日常を奪われた少女に、新たな日常を与えてやりたかった。
彼らに、初音捜索を託した。出来るなら、自分で捜してやりたいが、
多分、自分の身体は、もう、長くは持たない。
だから、貧乏くじを引いたって、大した問題じゃないんだ。
僕は犠牲になるべき存在だから。彼らの手を汚させる必要はない。

ああ、もう一度、逢いたかった。
なんとなく判ってはいた。もう逢える運命ではないんだと。
ただ最初は、守りたいとだけ思っていただけなのに、何なんだろうな、この感情は。
恋でもしてるって言うんだろうか。馬鹿げてるよな。小学生に。
まあ、何だって良い。恋をしてると錯覚してる間は幸せだ。

――気配を感じたのは、錯覚だろうか?
彰は、目の前に現れた小さな影を見つけて、小さな息を吐いた。
こちらを見て、目を丸くする、その顔まで見えた。

まったく、これから戦おうって言う時に、萎えるような登場、するなよ。
涙が伝っていた。生きていた。本当に良かったよ。
初音ちゃん。

だが、そこで、彰の意識は途切れた。
初音が駆けてくる音も聞こえない。眠い、眠い。

【長瀬祐介 天野美汐 砂浜でほのぼのお楽しみ】
【七瀬彰 柏木初音と再会も、失血でダウン】
【時間帯 放送直前、或いは寸前。】

464 :111@停滞1:2001/06/20(水) 23:41
潜水艦ELPODは、高槻を島内に下ろすために一時的に仮説ドッグへ停泊していた。
海中での自己修復は、それ自体が艦に対して負荷をかけるものであったため、
この機会に修復作業を地上で行うことにした。
よって、今回の停泊時間は普段よりも長いのである。
もっとも、止まるような普段があったかどうかなどは定かでないが。

ELPODの全長は、約30メートル程度。
潜水艦としては小型の部類に入るだろう。
だが、そもそもは高槻が戦況を指揮するためだけに用いられたため、
それほど人員は必要なかった。
また島の中に戻ってくることなく、
全てを艦内で行うことが”可能”な設計にはなっていたため、
結局どこのドッグに戻ってきたとしても行うことにそれほどの差異は生じないのだ。

現在の乗員は16名。
内容は技師6名に”長瀬”直属の傭兵10名。
其の他管理用ロボットが数台である。
通信士はいない、それらも全てロボットが兼ねている。
人間の連中が扱うのは、もっと物理的な仕事ばかりなのだ。

「このジャイロが原因だったのか……」
「自立修復でカバーは仕切れたのか?」
「いや、無理だろう。
 交換とまでは行かないが、これは手作業になるな……」

手早く彼ら技師の面々は作業に入った。
機械任せの作業の完全性など、ここにいる誰もが信じていなかった。

465 :111@停滞2:2001/06/20(水) 23:42
そしてその裏では丁度長瀬の傭兵たちが話し合いを行っていた。
……源之助からの通信を交えて。

「……高槻の処………いて……君……に一……が、その潜水……急に退……しても
 ………い。
 まさ……たちま…………がや………とは思えぬが……」
「まず我々には問題ないと思われます」
隊長らしき男が答えた。
「また、ここが見つかる可能性も低く、奇襲を掛けると言うなら
 こちらもまた同じ方法で逆襲することが可能です」
「……はそれ……もしい発…だ。……願わ…………なら……を……よ……」
「ははっ!」

まもなく通信は切れた。

「聞いたとおりだ。我々はいつもどおりに行う。
 3交代制で見張りに着いてもらう」
「はっ」
「ゲーム終了まであとしばしの時があるが、それまでのお預けだ。
 後に逃亡者、ならびに生存している”ジョーカー”連中の掃討を行う。
 ……少しの間、戦闘は我慢しろ」

にやり、と男は笑った。

高槻の降船は数時間前に完了した。
奴の通った道については爆破しておいたので、
もうここへ戻って来ることは容易では無くなっただろう。
無数に張り巡らされた地下の細道は、それ故に一点へ向かうことを困難にしている。
彼らの仕事はありもしない襲撃者に対しての模擬的な警戒、
そして次の戦いへ向けて休息する程度のことだった。

だが、予想外の来客はやってきた。
彼らの知らない、恐怖を伴って――。

466 :名無しさんだよもん:2001/06/20(水) 23:58
天使の微笑みを持つ者同士の再開!!
彰の命の火よ、まだまだ燃え尽きないでいてくれ!!

467 :111:2001/06/21(木) 00:08
>>464
1段落を3文目まで修正。

潜水艦ELPODは、仮説ドッグへ停泊を今も尚余儀なくされていた。
海中での自己修復は、それ自体が艦に対して負荷をかけるものであったため、
修復作業を地上で行っていたのだが、ようとしてその作業は進んでいなかった。

468 :111@鮮烈の紅1:2001/06/21(木) 00:19
仮説ドッグへの入り口は、大きく分けて三方向に分かれる。
その各部分に担当二名を置き、潜水艦自体の警護は隊長を含めた4人が行っていた。

――そして、異変は始まった。

「……おい」
「どうした?」
「なんか……聞こえねえか?」
「……何も聞こえないが」
ドッグから見て右側の通路に配置された傭兵、
そのうちの一人が何かを聞きつけたようだ。

「そうか……?」
「気のせいだったのではないか?」
それでも、油断無く周りを見回しながら傭兵の片割れは言った。

岩盤がさらされた通路は、その広さからちょっとの声も反響するようになっている。
現に、今の彼らの会話もほんの少し残響を残している。

不和を訴えた男は、その自分の闘いで培ってきた勘のようなものを働かせて、
その聞こえたものの――不安の正体を突き止めようとした。
だが、聞こえてきたはずの”音”が、再び聞こえてくることは無かった。

「おかしいな……」
「空耳だったんだろ」
なんだ、ばかばかしい。
そう言った風にもう一人の男は肩をすくめた。

「なんかカサカサっていうか……、違うな。こう、風を切る音みたいな――」

それが、男の最後の言葉になった。

469 :111@鮮烈の紅2:2001/06/21(木) 00:20

シュンッッッ……。

一瞬の空間の凍結。
その間隙を、何ものかの影がが突き通っていった。
男の言ったとおり、それは正しく”疾風”だった。

「な……」
もう一人の男は絶句する。
さっきまで会話していたはずのその位置に、彼の顔が無かったからだ。

そしてその一瞬の隙に、影はもう一人の男の背後に回りこむと首を締め上げた。

「んぐっ!? ぐっっっ……」
うめき声が漏れる。
だが、それもすぐに止まる。
さしたる抵抗も出来ないうちに、男は絶命した。

がちゃん!

彼が構えていた銃が地面に落ちる。
その役目を全うすることも出来ず、もはやただ置き捨てられるだけ。

影は男の絶命を確認するとその手から力を抜いた。
銃の後を追うように、その体はばたりと崩れ落ちる。
その死因は窒息死などと言う生易しいものではない。
……首の骨を握りつぶすような、そのようなものだった。

首を飛ばされた男は、自身を統治するはずの脳を失ったにもかかわらず、
バランスを失うことなく立ちすくんでいる。
そこからはとめどなく鮮やかに赤い血が流れ、
放射状に吹き出すそれから身を庇うことも無く、

――黒い少年は、ただそこに在った。

470 :一瞬の出来事(1/2)By林檎:2001/06/21(木) 00:44
ダン!!

 教会の扉付近で大きな音がした。それが一瞬の始まり。
 ようやく収束し始めた混乱の渦。それに向かって駆け出す影がひとつ。手には拳銃。
(亜麻色の…三つ編みの…)
 低い姿勢。疾風のごとく駆けるなつみ。その瞳にうつるのは亜麻色。
「なつみちゃん!?」
 祐一の目が、まだ名しか知らぬ少女を捕らえた。何が起ころうとしているのかもわからず反射的に名前を呼んだ。
 なつみ以外、誰もが状況を把握していない。
 いや、ある意味なつみも状況を把握できていないと言える。茜の心の動きを知れば、行動は別のものになったかもしれない。
「店長さんを殺された怨み! 『居場所』を奪われた怨み!」
 茜の反応が遅れた。祐一とのやりとりで緊張感が消えていたこともあるが、それ以上に『居場所』というセリフに体が硬直した。
 駆けながらの発砲。素人では当たるのは奇跡といえるだろう。
 だが奇跡は起こった。
 哀しき殺人鬼。いや哀しき少女の鮮血が舞った。
 衝撃を受け、茜の体が後方に跳ねる。そして倒れた。
「なつみぃぃ!!」
 祐一が激昂し、硫酸銃を抜く。
 しかしそれより早く。なつみは銃を突きつけた。
 自分のこめかみに。

471 :一瞬の出来事(2/2)By林檎:2001/06/21(木) 00:44
(!?)
 わけがわからなかった。誰一人としてなつみの行動の意味がわからなかった。
「もう私には『居場所』が無いの」
 なつみの声はなんというか。普通だ。日常の声だ。
 表情は泣き笑い。
「もう生きていても仕方ないのよ」

 生きていても仕方ない?
 ふざけないでよ!
 この島には生きていたくても生き続けられなかった人がたくさんいるというのに。
 由依だって生きたかったはずだ。
 水鉄砲を構えている男にしたってそう。
 「――さぁやってくれ」??
 ああ! どいつもこいつも!!
 無駄に死ぬんじゃないわよ!!!!!

 晴香は0.1秒で考えた。多少の混乱もあったが。
「あんたたち!! いいかげんにっっ!!!」
 なつみの指が動いた。

 だが…。銃声は響かなかった。

【茜 派手に血を出して倒れる】

472 :笑うということ(1):2001/06/21(木) 00:48
「あっちのほうだな」
大きなシーツを肩の安全ピンでとめて羽織った、さながら砂漠の旅人のような青年の言葉を
聞いて少女は視線を合わせる。
…シ−ツの中がどんな姿かは、九割の確信をもちながらも想像にお任せする。

少女は再び遠くを見て、青年に尋ねる。
「耕一さんは、どう思う?」
「うーん…留美ちゃんの言うとおりじゃないかな。
 彼女の行く先々で荒事が起きるという意見に、疑問を挟む余地はないと思う」
「じゃあ、こっちはハズレね」
耕一は頷き、朝露を蹴散らして前方を歩き始める。
墓場の朝露は、一段と寒々しかった。

二人はあまり話す事もなく、森に入る。
僅かな風を捉えて、留美-----おそらく、七瀬といった方が通りがいいだろう----の短い髪が
そよそよと流れる。
たぶん他の誰も気が付かない寒気を首筋に感じ、七瀬は小さく震える。
軽さにとまどいを感じながら、頭を左右に振ってみる。
誰もが注目した、あの長い髪はお別れの餞別に置いてきてしまった。
もちろん後悔はしていない。
(ただ、寒いだけ)
そう思って、一人、笑う。

そのとき、前を行く青年が再び立ち止まったことに気が付いて尋ねる。
「どうしたの?」
「いや…ハズレというのは、早とちりみたいだ」
森を抜けたはるか遠く。
そこに見える人影。
あのクセ毛を、見間違う筈はない。

「大当たり、だったみたいだぞ」
頷いて、ふたりで笑った。

笑えるというのは、幸せなことだ。
笑い合えるのは、これ以上なく幸せなことだ。

473 :笑うということ(2):2001/06/21(木) 00:48


《やれやれ、だぜ》
《まさかあそこで自爆とはな》
《追い詰めすぎたのは失敗だったかも知れんな》
この殺戮の王国で交わされる会話としては、特に異常はない三人の会話だが。

まず会話の主たちに問題がある。
同じ顔が、三つ。
そして無線越しの会話だった。
更に、そのどれもが高槻を名乗っていたため、今では武器の社名が通り名だ。
《しかし、あれは判断に迷ったな》
《腐っても鯛だ、下手に追えば斬られるだろう》
《確かに、あの時は焦ったぞ》

巳間晴香との戦闘。
晴香は高槻が放送を使って、他の参加者に始末するよう煽った相手の一人。
その個人戦闘力は侮れない。
深追いしなかったのは、そういう事だ。

どちらにせよ、彼らは所持したレーダーで相手を先に発見できる。
こまめに索敵すれば、まず間違いなく不意打ちできる立場にあるのだ。

《ちょっと待て…この先に、二人居るぞ》
さっそくレーダーを見ていた高槻-----ステアーと呼ばれる-----が報告する。
《何者だ?》
《021と068の二人…いや、逆からもう一人だ、離れて022…鹿沼葉子だ》
《ステアー、まとめて囲めるか?》
《ベレッタ、もう少し大きく迂回してみろ。それで何とかなると思う》
《じゃあそれで。常に報告を忘れるなよ》


三人は唇の端を上げて、更に大きく散開する。
全ての笑いが幸せに繋がるわけではないと、証明するように彼らは笑っていた。

474 :名無したちの挽歌:2001/06/21(木) 00:50
「笑うということ」です。
再び戦火をここに。

475 :途切れる、糸:2001/06/21(木) 00:54

理性的に。あくまで理性的に、その選択肢を採った。

でなければ保たない。死んでしまう。帰れない。
だから邪魔になる人間も、私を踊らせようとする管理者も、命を狙ってきた者も殺した。
感情に動かされた時がおしまいの時だと知っていたから、相沢祐一を遠ざけた。
それが正しい選択だった。私の世界を守れる道だった。
のに。

澪も浩平も死なせたのに詩子も撃ったのに覚悟を決めたのに。

この期に及んで好きだった、なんて。

馬鹿みたいだ。
貴方の知り合いを血にまみれさせたのも私なんだから、貴方は私を憎めばいい。
大切な日常を奪った女だと逆上すれば。
負の感情をぶつけてくれれば「お互い様です」とばかりに殺せた。
容赦なく、返り討ちに出来た。

貴方なんかあのまま見知らぬ誰かに殺されてしまえば良かった。
そうすれば今まで通り無感動にああ、そうかと受け止められたのに。
二度と掻き乱されずに、冷静に在れたのに。
嫌いだ。貴方なんて嫌い。みんな嫌い。あのひと以外はみんな嫌い。
いなくなってしまえばいい。相沢祐一なんて、知らない。
ふたりでいられれば他は要らない。

いらない。

476 :雨のまぼろし(1/3):2001/06/21(木) 00:55

雨が降っている。白くか細い糸。
暗鬱な気分を誘う湿った空気。
それは帰りを待つ頼りない私の希望に似ている。

けれどいつか雨は上がるから。
雲は晴れて七色の虹がかかる。青空を映す水たまりを飛び越えることだってできる。
ピンクの傘を閉じる日は必ず来る。
そう、やまない雨はないから。

……重たい空気を吸って、視線をあげた。
傘も持たず立ち止まっているのは、見慣れた制服の主。
挨拶くらいはしておくべきだろうか。

「おは」
「おはようございます、なの」

言い終わるより前に、私の時間は止まった。
真っ赤に染まった制服を意に介せぬ微笑みに、凍るしかなかった。
無邪気な笑顔を崩さぬ彼女は、しっかりとした明るい声で、言った。

「もう返り血に慣れたの?」

477 :雨のまぼろし(2/3):2001/06/21(木) 00:56

「あのね」
「あなたは誰も信じてないの」
「親友ともクラスメイトとも一緒に助かろうとは思わなかったの」
「助けようとは思わなかったの」
「ひとり空き地で待つことを選んだの」
「殺して殺して殺して殺して殺して殺して生き残ることを」
「今さらエゴイストだとは責めないの」
「みんなおんなじなの」
「だけどね」
「友人たちをその手に掛けたあなたが」
「誰も信頼できないあなたが」

「……どうやって『あのひと』を呼び戻せるの?」

澪は饒舌だった。
悪意のない、故にどこまでも言葉と不似合いな表情を片時も変えずに声を紡いでいた。
私は一歩も動けない。
空き地から動けない。

478 :雨のまぼろし(3/3):2001/06/21(木) 00:56

「結局は自分の想いに酔いたいだけなの」
「一途なフリをして目を逸らしているだけなの」
「還ってくるはずがないの」
「だってあなたは、もう別のことに心を奪われてるの」

分かっている。
この澪は罪悪感が生み出した私の欠片だ。
もう言わないでと絶叫する私と、どこまでも揺るがない私がいた。
二人に別れてしまった気分だった。いや、もう何人なのか。

……気づけば、握りしめたピンクの傘は銃に変わっていた。
心底彼女を黙らせたいと思った。正体は分かっている。私だ。
さあ最後に私は私を殺さなくてはいけない。
祐一たちに囚われる私を。今まで通りの日常を夢見る弱い私を。

撃つ。

『あのひとの名前、まだ覚えてる?』
「……『居場所』を奪われた怨み!」

その時、二重に声が響いた。

あのひと。
待ち人。
消えてしまったヒト。

……え?

思考が反転する。
それは真っ白な現実。なにもない現実。
色の無かったそれが赤く染まる。

――――撃てない私は、呆気ないほどに弱い。

479 :侵蝕開始 - 1:2001/06/21(木) 01:10
CPUの作動音。聞き慣れた音――消えた。
画面が完全に消えたのを確認すると、北川はノートを鞄に押し込んだ。
バッテリーが切れるのは、何としても避けねばなるまい。
これは、彼の一筋の希望。
何も出来ない、自分の、たった一つの鍵。
――ふざけるのも、ここまでだよな。
ゆらりと、立ち上がる。
「ジュン……?」
レミィの声。怯えたような声だ。
北川の顔に、剣呑な雰囲気は感じられない。
しかし、常にあった、持ち続けていた筈の明るさは、薄い。
その様子に、レミィは多少ながらも"引いている"様子だった。
「そろそろ出よう。ここにずっと居て、もずくパーティー開いてても意味無いだろ」
「ウーン、確かにもずくばっかり食べるのも飽きたネ」
「そうじゃない」
笑いには乗らない。
「俺達には、探さねばならぬ物がある」
「探さなきゃならないモン?」
「うむ、これだ。見たまえ」
そう言って取り出したのは、二枚のCD。
「1/4、2/4……とかって書いてあるだろ?」
「ウン」
「俺の華麗なる推理によれば、だ。こいつは4枚あるんだ。英語の意味からすれば、何かの解除コードとかでも入ってるんだろ」
ウンウン、とレミィが頷く。それを横目に見つつ、
「結局、二枚だけじゃ解析は無理だった――俺の得意分野じゃないしな。だから、今から探しに行こうかと思――」
「ナルホド、強奪ネ!」
「はっ?」
レミィの台詞に、北川が頓狂な顔を見せた。

480 :侵蝕開始 - 2:2001/06/21(木) 01:11
「……だって、その二枚の内の一つもヒロユキが持ってたんでショ?」
ヒロユキ――の辺りで、レミィの表情が一瞬翳る。
だが、それも一瞬。
「だよなぁ――とすりゃ、強奪するしか無いのか?」
――強奪。
だが、北川の必要とするのはCDだけだ。
荷物ごと奪う必要は無い。
だが――

――CDだけ、そう簡単に手に入るわけがない。

481 :侵蝕開始 - 3:2001/06/21(木) 01:12

……恐らくは、相手は怪しむ。いきなりCDをくれと言ったところで、そう簡単に手に入るものか。
それだけではない。もし、持っていた相手が「ゲームに乗っていた」としたら?
……言うまでもない。相手は、自分達を殺しに襲いかかってくる。
殺す。
殺す。
――戦うってのか?この俺が?はは、まさかの冗談だろ……?
「ジュン……?」
「ん?」
気付けば、レミィの顔がすぐ下にあった。心配げな表情。
元々、北川とレミィの背は同程度だ。丁度、下から覗き込むような体制となっていた。
「顔、青いヨ……?大丈夫?」
「―――」
――ああ、そうさ。
大丈夫。
何とかなる。
なにも、みんなゲームに乗ってるわけじゃないだろ?
大丈夫、大丈夫、ダイジョーブ。心配いらない!
「うむ、もずくパワー全開だぜ!」
そう言って、北川は親指を立て、爽やかな笑顔を魅せた。
精一杯の、演技。
何とかして、自分を奮い立たせた。
そうでもしなければ、へたり込んでしまいそうだったから。
――恐い。
恐いんだ。

じわじわと――北川の精神を、恐怖が蝕みつつある。

482 :111@業務連絡w:2001/06/21(木) 01:19

……ところで、そろそろ本当に移行する時期がきました。
本スレで490を踏んだ方はすぐさま(w新スレを立ててください。

なお、これは物語ではありません、悪しからずw

483 :名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 01:22
なにがwかワカランがそういう事らしい。

484 :111:2001/06/21(木) 01:54
ぼちぼちとらっちーさんは更新してくれているようで。
たびたびですが感謝です。

資料集のほうはもう復活しないかな……。
金発つぁ〜ん、カムバァ〜ック(爆)

485 :Abone:2001/06/21(木) 02:28
あぼーん

486 :Blue(1):2001/06/21(木) 18:26
 ガタン、ガタンと、音を立てて走る電車が懐かしいです。
 もうここに来て何日になるのでしょうか。もう時間間隔など、ありません。
 曜日を知る必要もなく、時間を知る必要もない。
 ただ、日が昇って、沈むのを見ているだけ。
 それだけなら、なんら問題はないことなのですが、時々入る提示放送、
それだけが、なんともいえない感情をボクに送り込んでくるのです。

 それはそうと、今、ボクは検索をやっています。
 なぜかというと、アクセサリに入っていたゲームも完全に飽きて(最後にソリティア10連勝! すごい?)、
 やることがなくなったので、HDDの中を検索してます。
 ヤンキーはボクを相手にせず、相変わらず、幸せそうに走り回っています。

ボクが、検索のボックスにはじめに打った単語はmpgでした。
 この前の持ち主が、いいコレクターだったかもしれません。
 期待に胸を躍らせながら、mpgとキーを叩き、検索ボタンをクリック。
 カタカタとHDDが鳴り響き、数件表示されたのですが、ボクのお気に召すムービーはひとつもありませんでした。

 同じように、rmで検索したが同じ結果と終わったので、途方に果てるボクは、ふと、loriと入力してみたのでした。
 先ほどまでと同じように検索ボタンをクリックすると、1件、該当するものがあったようです。

lori.exe

 ボクは期待と興奮で胸がいっぱいになりながらダブルクリック!

 画面が青くなりました。
 ボクの顔も、それは青いものだったと思われます。

 母さん、ボクは一体どうしたらいいのでしょう。

487 :Blue(2):2001/06/21(木) 18:28

 青画面になった、といったらやることはきまっております。
 AltキーとCtrlを押しながら、それに加え、Delキーを押すのです。

 PCを使うものならほぼ100%の人間が知っているコマンドで、ボクは再起動を試みました。

 画面は青から黒に移り、BIOSの画面が表示されました。
 そして、メモリやら、HDDやらを認識していき、Windowのロゴが現れたところで、
マシンから異音がするではないですか。カタン、カタン、カタン、カタン、何度もその音がリフレインされます。
 カタン、カタン、カタン、カタン、画面はWindowsのロゴから黒一色に移り、
見慣れない画面が現れました。
 そこでのたうちまっている、ヤンキーを呼び出し、英語を読ませると、
、「のぉまる」やら、「こまんどぷろんぷとおんりぃ」などの単語が英語でかかれているようです。

 「Nomalといったら普通のことヨ!」

 と、ヤンキーがいったので(そんなことは知ってるっての)、とりあえず普通であるNomalをクリックすることにしました。

 カタン、カタン、カタンと、さっきと同じようにHDDは音を繰り返し、画面に文字が現れました。


 ディスクが読み取れません。

 ボクの顔がまたも青画面になりました。

 母さん、次はやっぱりscandiskなのでしょうか。

 最早CDどころじゃありません。

488 :名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 18:38
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=993115533

少し早いですが、立てました。

489 :111:2001/06/21(木) 18:43
>>488
ご苦労様です。
では書き手の方は移行をお願いいたします。

490 :名無しさんだよもん:2001/06/21(木) 19:09
991580312.dat 21-Jun-2001 02:43 466k

このスレッドは特に容量を食うため、早めに移行しました。
以後は>>488の後継スレへ引っ越しです。

491 :名無しさんだよもん:2001/06/23(土) 21:13
ホムーラン

492 :名無しさんだよもん:2001/06/27(水) 22:05
>>227
断る!!

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