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葉鍵ロワイアル!#6

1 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 16:28
#5が容量オーバーで消えたため、新スレです。

基本ルール 、設定等は前スレ熟読のこと。


・書き手のマナー
 キャラの死を扱う際は最大限の注意をしましょう。
 誰にでも納得いくものを目指して下さい。
 また過去ログを精読し、NGを出さないように勤めてください。
 なお、同人作品からの引用はキャラ、ネタにかかわらず
 全面的に禁止します。
・読み手のマナー
 自分の贔屓しているキャラが死んだ場合、
 あまりにもぞんざいな扱いだった場合だけ、理性的に意見してください。
 頻繁にNGを唱えてはいけません。
 また苛烈な書き手叩きは控えましょう。

前スレ:#4
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=990388662

ストーリー編集(書き手必読)
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Spade/1168/index.htm

↑の最終更新から、#5に書かれていたストーリー(書き手必読)
http://www30.tok2.com/home/buki/hakarowa/log.txt

データ編集
http://members.tripod.co.jp/hakagitac/

感想スレ(外部リンク)
http://green.jbbs.net/movie/bbs/read.cgi?BBS=568&KEY=990888426
突っ込んだ議論、NG処理、アナザー没ネタ等にお願いします。
感想はなるべく本スレでお願いします。
そして、絶対にNG議論は本スレで行わないように。

2 :111[前々+前スレ]:2001/05/27(日) 16:31
新スレおめでとう。
心機一転頑張ろう。

3 :水瀬親子マーダー化計画(w作者:2001/05/27(日) 16:32
新スレおめでとうございます。
早速書きこまさせていただきます。

4 :水瀬親子マーダー化計画(w 8:2001/05/27(日) 16:33
「あなたを・・・殺すためなら・・・死んだっていい・・・けどっ・・・私、死ぬ訳にはいかないんです!!」
秋子はもう一度郁未の顔を見直した。
「怪我している友人がいるんです、まだ会っていない友人がいるんです、会って確かめなきゃいけない人がいるんですっ!!」
その顔は未だ醜く歪んでいたけれど、瞳には確かな強い理性の光があった。
「了承。」秋子は低くつぶやいて、体を沈め、郁未の体が前につんのめるように引っ張った。巴なげだ。
「・・・!?」
投げ飛ばされる郁未、けれど手斧は手放すことなく慌てて立ち上がる。
だが、秋子はその間に郁未から距離を取っていた。
「了承しました。確かに私もここで死ぬ訳にはいきません。」
秋子は名雪の方へ視線を走らせる。
息はしている。生きてはいる。
だが、その傷が重傷か軽傷かは分からない。
「だからここは私もひきましょう。」
秋子は吐き出すように言う。もはやその顔から微笑みなどとうの昔に消えている。
「自己紹介をしておきましょう。私は水瀬秋子、この名雪の母親です。」
郁未を睨んだまま秋子はさらに続けた。
「今は、私は私のなすべき事を、あなたはあなたのなすべき事を・・・
私は、これからどんなことをしても生き残ります。そうして、もしもう一度互いが再び出会えたならば、その時」
一度区切ってそして、
「決着をつけましょう。」
そう言う秋子に郁未は軽くうなずいて、
十分な距離を取るまで後ずさり、
自分の荷物をつかんで、木立の中へ消えた。


5 :マナー(゜д゜):2001/05/27(日) 16:34
1000を待たずして新スレ移行を余儀なくされるハカロワの勢いよ。
新スレおめでとう、そしてこれからも期待。

6 :水瀬親子マーダー化計画(w 9:2001/05/27(日) 16:35
繭は木立の中を闇雲に走る。
そのスピードは彼女にしてははやいほうだ。
彼女は泣いていない。でもそれは真琴がくれた勇気のおかげではなく、
絶対的な恐怖、涙すら凍る恐怖、そのせいだ。
あの時繭は、手斧と小太刀のぶつかる音で金縛りがとけて、
荷物を引っつかんで一目散に逃げ出した。
そして、今も走っている。
恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い・・・
後ろから何か追ってきそうで、前に何か待ち伏せしてそうで。
繭は今始めてこの島がどんなところかを理解した。
恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い・・・
繭の小さなからだを占めているのはそんな思いだけで、
そんな繭が、あの時つかんだバックが郁未のものだなんて事に気づくはず、なかった。

【椎名繭 郁未のバック(きのこ等がはいっている)拾得、自分のバックはない】
【天沢郁未 繭のバック(花火セット等が入っている)拾得、自分のバックはない、手斧は回収】
【水瀬秋子、名雪合流。名雪の怪我の度合いは不明。秋子の小太刀破損。】


7 :水瀬親子マーダー化計画(w:2001/05/27(日) 16:39
書きこまさせていただきました。
名雪の怪我が生死にかかわるものなのか、
繭がきのこを食べるのか等は
次の書き手さんに任せます。
あと、未夜子を殺したのは千鶴であることを、秋子さんが知っているか否かはわからなかったので、
その点はぼかして書きました。

8 :111[前々+前スレ]:2001/05/27(日) 16:42
あ、マナーさん復活だぁw
そろそろ少年動かしますよ(謎)

9 :反転(1):2001/05/27(日) 17:05
 緊張感は、長くも続くはずはなく――

「みゅーっ、おなかすいた……」

 林の中で座り込み、繭はぼやいた。
 幼い精神構造をしている繭にとって一時の感情というものは長く続かなかった。
 新たに押し寄せた空腹感、それに、恐怖が負けていた。
「みゅーっ……」
 困り果て、鞄の中を探る。
 中に五つのキノコが入っていた。
「……うー」
 先程までの自分の鞄に、こんなものが入っていたのか?
 そんなことはどうでもよく、キノコをこのまま食べるかどうか、悩んでいた。
「…………」
 しばらく、キノコとにらめっこ。
 やがて、意を決したようにキノコを手にとり――
「ぱく」
 口の中へ放り込んだ。

10 :反転(2):2001/05/27(日) 17:06
「さて……これからどうしようかしら」
 繭はひとりごちた。
 その声に、先程までの幼さは、全くない。
(とりあえず、この馬鹿馬鹿しいゲームから、生きて帰らないと。
 でも、そのために人を殺すなんて……最低ね。
 何人かで集まれば行動のとりようがあるかもしれないけど。
 見ず知らずの人間を信じるほど、甘くもなれないしね。
 浩平さんや瑞佳さん七瀬さん。確か見覚えがある。
 探そう、この人達を。
 それ以外の人には、絶対に見つからないように行動しましょう。
 私には、武器がないのだから――)
 数秒で今後の方向性を決める。
 そんな自分の思考に違和感を感じることは、なかった。
 続いて周囲の木々を見渡し、そのうちの一つに近付いた。
(こっち側だけに苔が生えている……ということは、太陽の当たらない北はこっち……)
 方角を特定し、木々の間から覗く太陽を見た。
(この季節でこの太陽高度。
 時刻は3〜4時ってところかしら)
 ある程度の目安をつける。この間、わずか10秒。
 荷物から地図を取り出し、林の場所と島の位置関係を頭にたたきこむ。
(さ、そろそろ行こうかしら。
 浩平さん達、無事だといいけど)
 現在位置と時刻を特定してから、荷物を持って立ち上がった。

(それにしても……私ってこんなキャラじゃなかったわよね。
 このキノコを食べたから? そうとしか思えないけど、非現実的すぎるわよ。
 とにかく、効果が切れることもあり得るから、大事にとっておかないとね)

【セイカクハンテンダケ 残り4つ】
【繭 性格反転】

11 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 17:07
例え安直だろうが何だろうが、このネタはやらなきゃ嘘だと思う。
これは『反転』じゃねぇだろってツッコミもあるでしょうけど、許して。

12 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 17:13
ゲッツ!良。
クレバーな繭モエー。

13 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 17:14
>>10
俺もこんな感じの浮かんだけど、ここまでしっかり書きこめ無かったよ
悔しいけど賞賛。

14 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 17:18
浩平達と合流した時の反応が楽しみだ
なにげにキノコ残ってるし(ワラ

15 :傀儡は踊る(1):2001/05/27(日) 17:32
(なんて、無様な!)
孤影が駆け抜ける。速い。
少し近づけばそれが、長身の女性だと判る。手には散弾銃。
更に近づけば、冷たい美貌を苦悩のために歪ませているのが判る。

彼女の名は篠塚弥生(047)。
彼女は常に人生を己の力で-----わずかに例外もあるが-----切り開いてきた。
素質もあったろうが、そのための努力は惜しまなかった。
高度な知性も、運動能力も、克己心なくしてここまで鍛え上げられはしなかっただろう。
それが今では、下らぬゲームのために利用されている。猟犬として。
他人はドーベルマンのようだと言うかもしれない。
だが彼女は、狼でありたかったのだ。首輪も、檻も必要ないのだ。

しかし今、彼女はあえて首輪をはめている。
(9人、殺す)
罪を犯すのは怖くない、今までだって日向を歩いてきたわけではない。
自らの夢のために。あえて私は傀儡となった。


16 :傀儡は踊る(2):2001/05/27(日) 17:32
『あ、来た来た、やっと戻ってきたわよあのアホ』
少女の声に足を止める。
木陰に身を隠し声のほうを見ると、そこには二人の少女が立っていた。
手前の1人は本を、奥の1人はタライ(?)を携えて道の奥を見ている。
視線の先、はなれた所に少年。銃を持っているようだ。

目を瞑り、大きく息を吸いシナリオを考える。
今ここで少女たちを始末するのは簡単だ。
しかしそれ以上を狙えば次弾装填の間に、少年に撃たれるだろう。
できればここで、3人殺しておきたい。
ならば少女2人を殴りつけた隙に少年を撃つ。これはどうか。
手前の少女を後から蹴りつけ、奥の少女もろとも転倒させる。
少年にとっては少女達の背後から起こる出来事だから感知されにくいだろう。
少女達は少年のあとで始末すれば済む。

ゆっくりと息を吐き、再び大きく吸い-----息を止める。目を開く。
不確定様子は多いが、迷いはない。
自分を信じて行くのみだ。
(-----よし!)
弥生は飛び出した。一個の殺人機械として。



17 :傀儡は踊る(3):2001/05/27(日) 17:34
(くそう、高槻め!)
泥だらけになりながら獣道を行く黒い影。
ここに来て何度思ったか知れぬ台詞をこころの中で繰り返す。
高槻の放送により槍玉に挙げられ、全員に狙われる獲物として怯え、殺し、
騙し続けて今を生きている。

この憐れな男の名は巳間良祐(093)。
彼は教団に身を投じ、熱心な信徒として、優秀な研究者として貢献した。
過去を捨て、家族を捨て、我が身も捨てて教団のために働いた。
それが今では、ゲームの駒。主催者の、高槻の傀儡。

(高槻、俺の事がそんなに気に食わなかったのか?)
総じて高槻以上のポテンシャルを示しつづけてきた良祐だが、教団の覚えは
さほどめでたくない。高槻ほど世渡りが上手くなかったのだろう。
(それなら、お互い様だよな?)
薄く笑う。自分はこんな笑いをする人間だったか?
いや、晴香と一緒に笑っていた頃は-----どうだったろう?
(もう、忘れたか…)
とにかく、今は生き残る事だ。そのためには殺すことを躊躇わない。
どうせ皆、自分を殺しに来る。殺し殺して、高槻をも殺す。それでいい。


18 :傀儡は踊る(4):2001/05/27(日) 17:36
良祐は様々な可能性を考慮した。
まず危険なのは銃を所持する者だ。自分の銃を見つめながら考える。
これがなければ、今までだって一人も殺せなかっただろう。
それから、能力者。そして訓練を受けた者。これらの者達と正面から戦うのは
不味い。なるべく不意打ちやだまし討ち、もしくは混乱に乗じて殺すように計画
しなければ危うい。

ズドン!!
銃声。大きく、近い。重ねて悲鳴が上がったような気もする。
『ふざけんじゃないわよオバサン!』
ドスの聞いた声が聞こえる。どうやらこのまま進むと林道に出るようだ。
少年が倒れている。離れたところに銃。

これは、チャンスだろうか?上手く立ち回れば多くの危険要素を排除できる。
銃が手に入るのは見逃せない。
(落ち着け、そして間違うなよ、良祐)
自分にそういい聞かせ、握った拳銃を隠しながら良祐は林道へ踊り出た。

運命の悪戯か2人の傀儡は、ほぼ時を同じくして浩平たちに襲いかかったのだ。

19 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜前哨〜1:2001/05/27(日) 17:37
「そう浮かない顔をするものじゃない」
え、と詩子は振り向いた。
気持ちを切り替えた、と自分では思っていた。
でも表情までは上手く切り替わってなかったみたい。
「確かに友達が人を殺した、なんて言われたら落ち込むのも分かる。
 だけど意味が無い生が無ければ、意味がない死もまた無い。
 常に人間は何かを犠牲にして生きているものさ。
 それが今のようにより分かりやすい形になっただけ。
 傷ついているのは君や被害者だけじゃない。
 傷つけた方だってそうなんだ。
 だから君がそんな表情をしていれば、
 その子が戻ってきたとききっと悲しむ。
 その子が傷ついていたのなら、君はそれを癒してあげなきゃいけない」
笑顔で少年は言った。
どうしてこの少年はこうも自分の気持ちを見透かしたように、
心の奥底に響くセリフを言えるんだろう?
「そう……、だよね。相沢君だけじゃない、私だって茜のこと大好きだもの……。
 茜が戦ってるって言うなら、私たちで茜が帰って来れる場所を作ってあげなきゃ」
詩子は笑った。
私には茜の全部が全部分かる訳じゃないし、この少年ほど色んなことを考えているよう
にも思えない。
……当然、人を殺したことだって無い。
でもそんな自分にも出来ることがあるなら。
私は頑張れる、そんな気がする。

相沢祐一と別れてすぐの、二入の会話だった――。


20 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜前哨〜2:2001/05/27(日) 17:38

「ねぇ……、ちょっと気になったんだけどさ」
「なんだい?」
「何であなた鞄二つもあるの?」
歩きながらの詩子の質問に、思わず少年はきょとんとした。
「ああ……、落ちてたのを拾ってきたんだよ。
 誰も使ってないのなら僕が使ってもいいかなぁって」
少年は苦笑して言った。
だが彼はわざと嘘をついた。
それは今の詩子に無駄な負担をかけたくなかったから。
形見なんて重いものを持ってると思わせたくなかったから。
たまたま生き残っていてまだ人を殺めるという咎を犯していない、
素性も名前も不明な上に変な格好をした奴で、
でも側においておくとなんだか安心できるような……、
そんな感じを保ちたかったから。
偽善と言われれば返す言葉も無い、
だけどそれもまた少年の優しさの一つの形だった。
「そうなんだ、もったいないことをする人もいたんだね……」
詩子は素直にそう言った。
「だったらさぁ、二個も鞄持ってる必要ないんじゃないの?」
「え、そうかな?」
「どうせ中身はほとんど一緒なんでしょ。そんなにかさばるわけでもないし、
 だったら、一つの鞄に全部詰め込んじゃおうよ」
詩子の提案は至極もっともなものだった。
でもね。
少年は心の中で苦笑しつつ付け加える。
ボクはまだ、二つとも鞄を開けてないんだよ……、と。
「ねぇ、やっとこうよ。私も手伝ってあげるからさぁ」
詩子はうきうきした様子で鞄に手を伸ばす。
なんだ、君がやりたかったんじゃないか。
心の中のみならず少年は苦笑した。

21 :名無したちの挽歌:2001/05/27(日) 17:39
>>15>>16>>17>>18
 とりあえずここまで。
 続きもだいたい出来てますが、切りのいいところで。

別視点・同時間の別勢力同時戦闘を書いてみたいのです。

22 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜前哨〜3:2001/05/27(日) 17:40
少し汚れていて、少し重い。
そんな鞄を見ていて少年は思った。
……どっちがもともとのボクの鞄だ?
「え〜とこれは水ね。でこれが食料……、ってちょっと、あなた何も口つけてない
 じゃない、一日飲まず食わずで歩いてたの!?」
少年の葛藤など気付きもしない詩子は、手近にあった鞄の中身を出しつつそう言った。
「あ……。いや、水分は補給したよ。水道とか見つけたから」
詩子のセリフに驚嘆……、というよりどうも非難の色が強いように思えた少年は、
とりあえず自分を弁護しておくことにした。
「ダメよ! 浩平君じゃないんだから二日も水だけで生活してたら死んじゃうんだから」浩平君?
知らない名前だった。
……いや、参加者名簿に名前があったか。
どちらにせよ、なかなかひどい扱いを受けているように思えるが。
少年は最近苦笑することが多いな、と思いつつもやはり苦笑していた。
「ん」
「あ……、うん」
詩子が突き出してきたパンを、少年は受け取った。
「食べてる間に、私が片付けておいてあげるから」
にっこり笑って、詩子はまた鞄とのにらめっこを始めた。
そんなにかさばるものは……。
「うわ、何これ!?」
詩子が大きい声をあげた。
……ボクの鞄の方を開けたか。
ちょっと少年は頭を抱えたくなった。
「お、重いよ」
詩子が両手で取り出したもの、それは厚い本のようなものだった。
「……君の力で扱う分にはね」
嘆息して少年は言った。
「これ……、本なの?」
「まあ……、一応ね」
詩子はそれを少年に渡そうとした。
少年はそれを片手で軽く受け取る。
「……かつて教典と言われたものを模した、即ち”偽典”という奴さ」
ぱらぱらと本のページをめくりながら、詩子に向けたにしてはやや小さすぎる声で少年は呟いた。
「な……、なんだかよく分からないんだけど、それって凄いの?」
驚き混じりに詩子が言う。
「……別に内容に価値なんか無い、だけど」
パタン、とページをめくるてを止め、本を閉じた。
「これが、ボクの武器さ」
少し誇らしげに少年は言った。



23 :111[前々+前スレ]:2001/05/27(日) 17:43
……なんだか張ろうとしたときにかぎって重なるもんだな。
まあいいけど。
んで奇しくも私も>>21での名無したちの挽歌氏と
同じようなことを考えてたりしますw
……こ、これで内容まで被ったらどうするんだ俺(汗)

24 :剣風(1):2001/05/27(日) 19:13
「あ、来た来た、やっと戻ってきたわよあのアホ」
辛辣な口ぶりとは裏腹に大きく手を振る七瀬。
「もう、そんなこと言うとまた喧嘩になるよ〜」
苦笑を浮かべ共に浩平を迎える瑞佳。

この劣悪な環境下においても。
3人寄れば心強く、そして平和な日々と変わらず生きていける。
そんな七瀬と瑞佳の前に。否、背後から災いは襲いかかってきたのだ。

「きゃあっ!」
「ぅわっ!」
無防備に立っていたところを、腰に強烈な蹴りをくらい吹き飛ばされる瑞佳。
巻き込まれる七瀬。
ズドン!!
そして銃声。
何が起こったかわからない。しかし、そこにいる人物は危険だ。
七瀬は瑞佳に巻き込まれ倒れながらも、その人物を視認していた。女。
あの大きな銃を撃った!?折原は無事!?

心配する余裕はなかった。
撃つなり女は銃を振り上げ-----叩きつける気だ!
「ふざけんじゃないわよオバサン!」
咄嗟に手にあったタライを投げつけ、混乱と痛みで行動不能に陥っている瑞佳を
どけて転がる。
手近な枝を拾い、素早く立ち上がる。
女は弾を装填している。今、戦わねば全員死んでしまう!


25 :剣風(2):2001/05/27(日) 19:14

間合いは三歩。
そう、今なら「間に合う」。
七瀬は現在の乙女チックな外見に扮する以前は剣道をやっていた。故障がなければ
未だトップクラスだろう。この間合いなら普通の人間に負ける事はない、はずだ。

「せやッ」
鋭く踏み込み顔面にフェイントをかけて脇腹を痛打する。
計算外の反撃に女は顔を歪ませる。
しかし、装填は完了している。引き金を引かせちゃいけない。
休んじゃいけない。休めない。
浩平が来るまで-----浩平が無事なら、だけど-----休まない。
手打ちで構わない、とにかく早く打ち込む。
しかし女は銃身で受け止め、かわし、時折打ち込んでさえくる。
この距離ならば私が優勢。けれど一度離れれば御仕舞い。

私は、この女に勝てるのかしら?
ブランクが七瀬を弱気にする。
「う、ううーん」
背後で瑞佳の声がする。
そうだ、少なくとも瑞佳だけでも逃がさないと。
折原は何をして、いやそもそも無事なの?
ガキン、と音を立てて枝と銃身が交差する。互いにぐぐっと力をこめる。
「瑞佳!折原のところへ走って!」
振り向かずに、視線は女のほうに向けたまま叫ぶ。
「な、七瀬さん!」
「早く!早くあのバカ呼んできて!」
いつもだったら呼ばないでも現れて、おせっかいかますあのバカ。
今、乙女のピンチに現れないで、どうするって言うのよ?

「う、うん!」
瑞佳の走り去る音がする。
-----これって、また貧乏くじ引いてるのかしら?
七瀬は今更のように、そう思った。
でも、構わない。アタシだけ生き残っても、それでどうするっていうのよ?

26 :名無したちの挽歌:2001/05/27(日) 19:19
>>24>>25
 七瀬vs弥生です。
 昔、七瀬が剣道やってたという設定を生かしてみました。

 飛び道具で勝負する話が多いので、たまには高度な接近戦も
 書いてみよう、とか。

27 :さよならは別れの言葉(1):2001/05/27(日) 19:28

林道を小走りに進む折原。
迎える長森と七瀬が手を振っている。

仲間が増えた。しかも強そうだし、先行きの展望もある。
助かる可能性が増えたというものだ。
行く手で2人が手を振っている。
俺はあの2人を守る、そう心に決めてどれほどの時間が経っただろう。
きっと3人揃って、帰れるさ-----そう確信していた。

2人が、倒れるまでは。

突然長森が前のめりに倒れこみ、七瀬を下敷きにする。
後に女が立っていて-----銃口がこちらを向いていた。
(マジか!?)
咄嗟に左へ跳び、銃弾をかわそうとしたが。
バラバラと右手を中心に弾が食い込む。散弾だった。
「ぐあっ!」
鮮血を振り撒き、銃を取り落とし、浩平は倒れた。
(く、くそったれ…!)

打撃音が遠く聞こえる。誰かが戦っているのだろうか?
撃たれ、混乱し、体が上手く動かない。耳がいかれているのか。
だが、今立たねば。そうだ、長森が、七瀬が、危ない!
落とした拳銃に目をやる。こいつがあれば、みんな助かる。
しかし。希望を絶つかのように何者かが拳銃を踏み抑える。
「!?」

28 :さよならは別れの言葉(2):2001/05/27(日) 19:29
黒いコートの男が立っていた。なんだって管理側の人間が邪魔しやがる?
怒りが浩平に力を与えた。一息で立ち上がり無事な左手で胸倉を掴む。
「てめえ、何しやがる!?」
男は意外そうな顔をしたが、余裕を見せて言う。
「ふむ。生きていたのか」
「何だと!?」
興奮する浩平を現実に引き戻すようにカチリ、と金属音が響いた。
コートの下に拳銃。これは、よけられない。
「それじゃあ、これでさよならだ」
額に汗が、右手に血が、つうっと滴り。
顎と、指先から、ぽとりと垂れ落ちた。

そのとき声がした。
「浩平ー!」
コートの男が動揺する。慌てて長森のほうを見る。一瞬の隙。
「こんの野郎!」
被弾した右手で力任せに殴りつける。
コートの男を吹き飛ばし転倒させるが自分も痛みに怯む。
それでもどうにか拳銃を拾う。
「浩平!七瀬さんが、七瀬さんが!」
駆け寄る瑞佳は明らかに混乱していた。
「来るな長森!こいつは銃を持っている!」
浩平は長森を制して叫ぶ。狙いが遅れる。
ドドン!!
倒れたまま男が発砲し、遅れて浩平も発砲する。

この距離ならば。
外れるわけは、ない。

29 :さよならは別れの言葉(3):2001/05/27(日) 19:30
(最悪ね…)
七瀬は徐々に受けに回っていた。
そもそも枝は太く、握りにくいため握力を消費する。
銃撃のプレッシャーに怯えながらの戦いは精神を消耗する。
乙女生活によるブランクはスタミナを奪っていた。
そして何より、古傷が痛み始めていたのだ。

もしここで、間合いを離されたら。
もう、飛び込めない。
般若のような形相で攻め込み始める女の打撃をどうにかそらしながら七瀬は
焦りを隠して応戦する。

ガシン!
何度目かの鍔迫り合い。だが、今までのようには力が入らない。
押し込まれ七瀬は苦痛に顔を歪める。そのとき。
ドドン!
重なる銃声が届く。ついに七瀬の集中が切れた。
「折原!?」
叫ぶ七瀬に女の脚が上がる。左脇に蹴りが入り、女が後に飛ぶ。
ついに、間合いが離れた。
「貴女を評価しなかったのは私の失策でした」
そう言いながら、女は息を整え散弾銃を構える。
「でも、これでお別れです」
負けた-----肩で息をしながら、腕を下ろす。もう、動けない。
「オバサン、なんでアタシを殺すのよ」
今更尋ねても、どうにもならないけれど。なんとなく口にした。
しかし女は意外なほど真剣に考え、答えた。
「大切な人の-----2人の、幸せのために」
ちょっと驚いた。七瀬は諦めの苦笑交じりに呟く。
「なによ、それじゃあアタシと同じじゃない」
今度は女が驚いた。異常なほど、驚いていた。

30 :さよならは別れの言葉(4):2001/05/27(日) 19:31
「七瀬ええええ!」
ドン!ドン!
その虚をつく形で折原の声、そして銃撃。
今だ!動け動け!動け身体!そう念じて踏み込み、小手を打つ!
「せいッ!」
バシン!
電光の速さで右手の甲を叩く。散弾銃が跳ね落ちる。
七瀬は即座に銃を蹴り飛ばし、緊張の過ぎた震える手で構え直す。

「くそおおおお!」
折原が叫び、泣いていた。何故泣くの?その意味は?
女が溜息混じりに言う。
「ほんとうに、失策でした」
今度こそ、これ以上動けない。今でも女のほうが余裕がありそうだ。
頭が回らない。七瀬はただ答えた。
「そう、みたいね」
その言葉の、何が面白かったのか女は小さく笑い身を翻し去っていく。
「さようなら」
「アタシは二度と、遭いたくないわ」
七瀬は、枝を取り落とした。

31 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 19:41
>>303
(4)で終わりっすか?
早く,続きを

32 :名無したちの挽歌:2001/05/27(日) 19:44
>>27>>28>>29>>30
 連カキコでスンマソン
 引き続き七瀬vs弥生と浩平vs良祐です。

 弥生が良祐、七瀬に立場上リンクしている事を書きたかったわけですが
 長くなってしまいました。難しいのう…

 戦闘はココでひとまずおしまいデス。 

33 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 19:48
非常に良いが、オチがないぞ?

34 :その頃綾香は……:2001/05/27(日) 20:17
「………まいったわね……」

――あとで山を降りたところで落ち合いましょう!! 絶対来るのよ!――

自分の言葉を思い出し、それを強く信じる。
だが、いつまでたっても彼女達は来ない。
「今ごろ何やってるのかしら……」
最悪の結果を考えないようにしながら綾香はひとりごちる。

山のふもとのそれほど深くない洞穴……
危険を避けるために、芹香達を探す時外に出る以外はここに隠れ潜んでいた。
「この島にまだこんな所が在ったなんて……まあ、感謝しなきゃならないのかしら?」
綾香の足元に倒れたまま動かない一人の女の子。
仲間と散り散りになった際、綾香はリアンだけを連れてここまでやってきた。
リアンの容態は、正直よくない。
それほど深くないはずの傷だったが、少しずつ傷口の周りが変色すると共に、
生きているのが不思議なくらいの高熱に見舞われていた。
「毒でも――塗られていた……!?」
綾香は残り少ない飲料水を手持ちのハンカチに染み込ませる。
南の手裏剣を思い出す。
今確かめる術はないが、それならば今のリアンの症状も合点がいく。
たっぷりと水を含ませたハンカチでリアンの汗を拭き取り、そのまま額にそれを乗せる。
「そうだとしたらどんな毒なのかしら……」
見よう見まねだが、リアンの腕の傷口から上を、手ごろな布できつく縛る。
――手ごろな布…そんなものが洞穴にあるはずもないので、
綾香のスカートを破りとっただけの代物だ。結構丈夫なのが救いか――
「解毒剤……そんなものが都合よくあるはずもないか……。
私、なんて無力なんだろう…こんなとき格闘技なんてなんの役にも立たないじゃない…
スフィー、舞さん達…そして姉さん、早く来て……!!」
葵は、もういない。綾香の絶望と不安は既に頂点に達していた。

綾香はまだ知らない。舞が、そして佐祐理がもうこの世にいないということを。

35 :最後のことば(1):2001/05/27(日) 20:33
「おおおおおお!」
号泣が、聞こえる。

七瀬は痛む腰を抑え、のろのろと散弾銃を拾った。
このゲームの現実を今になって体感した。
振り向けば。浩平が地を叩いている。
涙を流していた。

号泣が、聞こえる。

その奥に黒いコートの男と、長森瑞佳が…倒れていた。
視界が暗転する。ぎりりと奥歯をかみ締める。
涙が溢れていた。

号泣が、聞こえる。

二人の目が合う。
七瀬は膝の痙攣を無視して大股に浩平に歩み寄り、引き摺り上げる。
そして胸倉を掴み叫んだ。
七瀬は知らないが、ちょうど浩平がコートの男にしたように。
「何やってんのよ、このバカッ!!」

「ななせぇ…ながもりが、長森が…俺を、俺をかばって…!」
「うるさいッ!泣くな!聞きたくない!」
手を離し、浩平をひっぱたく七瀬。
その七瀬も、ぐしゃぐしゃに泣いていた。
「バカッ!バカッ!」
何度も何度も、ひっぱたいた。
やがて浩平は膝をつき、七瀬に抱きついて、泣いた。
七瀬も浩平の顔を抱いて、泣いた。

号泣が、聞こえる。

36 :最後のことば(2):2001/05/27(日) 20:34
「こう、へい…?」
2人はぴたりと泣き止む。
「長森!?」
「瑞佳!?」
微かな希望に駆け寄るが…同時に歩みを止める。

血を吐いていた。目に光がない。
これは助からない、そう思った。

「こう、へい?」
「お、おう」
「いつも、いつも、ありがと…ね
 待っててくれたとき、うれし、かった…よ」」
「なんだよ、それ」
「もう、駄目、みたい、だから…さ」
「何言ってるんだよ、ばか
 お前がいなくなったら、毎日遅刻しちまうじゃねえか」
「だいじょぶ、だよ
 ななせさん、が、いる…もん」

七瀬が息を飲む。
「ね…?だいじょぶ、だよ、ね?」
「瑞佳が大丈夫なら、大丈夫、だよ…」
「そうだぞ、コイツには無理に決まってるだろ、このばか」
「ええ、ずるいよ、そん、なの」

ごぽ、と音を立てて血を吐く。
「長森!」
「瑞佳!」

呼吸が浅くなっていく。
「ね、こうへい?」
「お、おう」

血が、止まらない。
「大好き、だよ?」
「おう、おう」

そして、最後に。
「-----ぎゅって、して…」


37 :名無したちの挽歌:2001/05/27(日) 20:37
>>35>>36
 【093巳間良祐死亡】
 【065長森瑞佳死亡】
 浩平の拳銃は弾切れですが良祐のものに持ち替えるでしょう。
 七瀬は弥生の散弾銃を手に入れますが残段は一発です。

 つーわけで殺しちゃいました。
 良祐君には申し訳ないのですが、長森と同時に死ぬとこういう扱いに
 せざるを得なかったです。
 良祐が逃げられる程度の危機であれば浩平も長森も無事でしょうから。

38 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 20:41
残り51人 かな

しかし、キタねぇ。
うん、いいよ。
farewell words

もう少し描写を書き込めれば、なおいいと思う。

39 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 20:51
>>38
描写をあえて書かないことで(・∀・)イイ!効果がでたような気がするんだけど、
俺だけかな?

40 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜漸行〜1:2001/05/27(日) 20:56
ざわつく……。
木々が、風が、空が。
これは闘いの前奏とも言うべき戦慄だ。
それを、いつの頃からか僕は知っていた。


ふたりはその場に座って、少しの休息とも言える時間を過ごしていた。
「え〜、これが武器なの?」
「そうさ、まあもっとも、これで直接人を傷つけるには……、
 角のところで思いっきりぶん殴るくらいしかないかもしれないけどね」
少年は”本”を持ったまま、さっき手渡されたパンを口に入れた。
「む」
詩子は少年の行動を見て、自分が何をしていたのか思い出したようだ。
いそいそと鞄の整理に戻る。
「じゃあ、こっちの鞄に入れるよ〜」
「あ〜、うん。ありがとう」
詩子はその返事を聞いてから、もう一つの鞄に手を伸ばした。
「こっちの方もなんだか空だね……、あら?」
詩子が鞄の奥底に何か見つけたようだ。
「これは……写真かな、ほら」
詩子は薄い紙切れのようなものを差し出した。
なるほど、確かに表面処理がされてるようで写真には違いない。
少年は手に持っていたパンを全部口に入れて、空いた手でその写真を受け取った。
これは――。


41 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜漸行〜2:2001/05/27(日) 20:57

何か……、建物が写っている。
やけに巨大で、それでいて鋭角的に聳え立っている。
その建物をバックに。数名の人間が集まっている。
さしずめこれは記念写真なのだろうか?
全員見たことの無い顔――いや、一人を除いてか――だった。
真ん中には少し背の高めの青年と、小さな少女――郁美ちゃん――が
寄り添って立っている。
瞳に強い輝きを秘めた、何かを成し遂げた男の目だった。
それを取り囲むように、ポニーテールの女の子が、緑髪でギザギザメガネ、少し危険な
笑みを浮かべた青年の横に、複雑そうな表情で立っている。
その隣では、なにやらゲームか何かの格好をした女の子が、エプロン姿の小さい女の子とメガネにデニムの服を着た女の子と楽しそうに笑い合っている。
そうかと思えば反対の方では、なにやらちょっと豪勢なコートを着た女の子と、
赤い上着にメガネ、なおかつハリセンまで装備した女の子が、おとなしげに佇んでいる
もう一人の女の子をはさんで、激しく言い争っている。
脇ではやたら体格がいい学ランを着た男と、穏やかに微笑んでいるなんだか……
インカムやら一揃えの制服のようなものを着た女性が立っていた。

200X年X月X日 こみっくパーティーにて


42 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜漸行〜3:2001/05/27(日) 20:57
「……何かのイベントの後みたいだね」
横から写真を覗き込んでいた詩子がそう言った。
「そのようだね……」
「へえ、なんだか皆楽しそうだね」
本当にそうだった。
すこし揉みくちゃにされてはいたが、その写真からはなんだか溢れんばかりのパワーを
感じた。
そう。まるでいても立ってもいられないほどに。
この写真の彼らは今を全力で生きていたのがよく分かる。

在りし日の……、姿とでも言うのか。
少年は涙が出そうになる自分を、一生懸命堪えた。
「どうしたの?」
詩子は、今度は少年の顔を覗き込んでいた。
「…………いや」
少年はあさっての方向を向いて言った。
「ちょっと……、まぶしかっただけさ」
「?」
詩子は不思議そうな顔をした。
生きることは……、こんなにも輝いていたんだな。

……、

…………、

……………………。

!?

少年は急に振り返った。

43 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜漸行〜4:2001/05/27(日) 20:58
「え……、何? どうしたの?」
荷物を詰め終わった詩子が言った。
「今……、銃声が聞こえなかったかい……」
詩子のほうを振り向きもせずに少年は言った。
「私にはぜんぜん聞こえなかったけど……、聞こえたの?」
「…………」
少年は応えない。
ごくん。
生唾を飲み込む音。
はたしてそれは少年のものだったか、それとも少女のものだったか。
「……いってくる」
「え?」
少年は本を片手に立ち上がった。
「君は……、ここで待っていろ。もし誰か来たのを感じたらたとえだれが来ても
 すぐに逃げるんだ」
整理された鞄を持って、少年は道の向こうへと行こうとする。
「ま、待ってよ」
詩子もいそいそと立ち上がった。
「ダメだ、来ない方がいい。もし誰かが戦っていたら、それに巻き込まれる」
「で、でも」
「ここなら見通しもいいし、君の足ならたとえ誰が襲ってきても逃げられる。
 だから……」
ドドン!
少年にだけ聞こえた、遠くの銃声。
「……もどってくる、なんて甘いことは考えない方がよさそうだな」
少年は笑顔を崩した。
――ひどく、めずらしいことに思えた。
「君も行くんだ、君には大事な友達がいるんだろう?
 だったらこんなところでグズグズしてちゃいけない」
詩子は、ぼーっとしたようすでその場に立っている。
「ありがとう、君に会えてよかった。縁が合ったらまた会おう」
少年はくるっと振り返り、そのまま走り去っていった。
「そ、そんな……」
詩子には、ただ呆然としていることしか出来なかった。



44 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 20:59
浩平の銃は長森の命を奪った銃でもあるんだよな。
彼の心中は如何に

45 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 21:01
>>39
好みによる。

46 :そら。:2001/05/27(日) 21:24
七瀬が泣くのを、オレに止める術はなかった。
そして、多分、オレは枯れた。

「瑞佳ぁ」
泣く七瀬も、目を閉じたままの瑞佳も、まるで夢の中の物語のようで。
もっというなら、この自分が巻き込まれた戦いも、すべてが幻想のようで。

非日常の中で、それでもなお、自分たちは日常の中にいるような、
そんな錯覚をしていたから。

だから、本当の非日常と出会い、オレ達はやっと、日常から抜け出す事になったのだ。

――護れなかった、な。

何があっても護るって決めていた。
銃だって撃つ、人だって殺す。
実際、オレは殺した。
長森の横で血を流し倒れている、黒いコートの男を。

けれど、それは。

長森を護るために殺したのに。

長森は、もういない。

それどころか、長森を護るどころか。

オレは、長森を――

「折原ぁっ……」
七瀬が、赤い眼でこちらを見た。何かを言いたそうに。
責めて欲しかった。約束を守れなかったオレを。
一番護りたかったお前達を、結局、結局――
「……畜生っ」

ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、
ごめん、長森。
護れなかった。護れなかった。
約束したのに――護ってみせるって。
また、涙が。
枯れるほど流した涙が、また。
――思い出されるのは、長森の笑顔だけ。
だから、一層哀しい。
「折原ぁ……イヤだよ、何で、あたし達……」

――こんなところにいるの?

47 :そら。:2001/05/27(日) 21:24
永遠なんてなかった。
そんな事はずっと昔から知っていた。
けれど、終わりがこんな形で訪れるなんて、想像もしていなかった。

「もう、イヤだ」
七瀬が呟いた。
「どうして? どうしてあたし達は、ねえ、何してるの?」
焦点の合っていない目で。ぶるぶると唇を振るわせて。
「何で、瑞佳、倒れてるの?」
オレを見上げて。
「折原ぁ」

次の瞬間。――
「えへへ、馬鹿げてるよね」
夢みてる。折原と二人きりの夢見てるよ。
あたし、こんな夢見るの初めてだよ。
瑞佳殺しちゃったのは罪悪感でいっぱいだけど、

「何、言ってるんだよ、七瀬」

「あはは、折原が夢の中なのに、折角の二人きりなのに泣いてるよ」
七瀬は、心底愉快そうに笑う。
まったく、焦点の合っていない目で。
「七瀬っ!」
「大声出さないでよ、夢の中でまでさ、折原ってば」
呆然とした顔でオレが見つめるのを、七瀬は楽しげな顔で笑った。
ロマンチックね、これこそ乙女の夢にふさわしいわ。

オレは、確信した。
七瀬は、多分、壊れた。

――永遠がないのなら、

すべて、いつか壊れていくもの。

長森が壊れたのと同じように、七瀬も壊れた。

48 :そら。:2001/05/27(日) 21:24
オレは、七瀬を抱きしめた。
「本当、最高の夢ね。折原が抱きしめてくれるなんて」
馬鹿。
オレは、歯軋りしながら、そう呟いた。
オレは護れなかった。
長森も七瀬も。
何のために一緒に行動してたんだよ――。

意識が虚ろになっていくのを実感する。
失血のためか。――そして実感する。死が、遠くないところに来ている事を。
目を閉じれば、楽になるだろうか。
永遠の世界に、行けるだろうか。

まだ。

まだだ。まだ、目を閉じてはいけない。
オレは右腕の傷口を抉った――走る激痛で、なんとか目は覚めた。

「七瀬。――行こう」
オレは立ち上がった。オレが立たないでいたらどうなると言うんだろう。
右腕に走る激痛、流れる血は、たぶん、どうしようもない。
多分、オレも長くない。
オレの身体も、精神も、いつ壊れるか判らない。
けれど、七瀬だけでも護りたい。

誰か、知り合いに会えば。
七瀬を護れる、知り合いに会えば――
誰でも良い。――オレが倒れる前に。

へたり込んでいる七瀬に、オレは手を伸ばした。


49 :そら。:2001/05/27(日) 21:28
付け忘れ。
【折原浩平 七瀬留美……移動開始】
[所持品 良祐の銃・弥生の散弾銃・長森の武器リスト]

50 :アユー(゜д゜):2001/05/27(日) 21:31
 おにぎりを平らげ、指についたご飯粒を丁寧になめ取ると、あゆは幸せそうに笑って礼を言った。
「ごちそうさまでしたっ! ありがとう、美味しかったよ、梓さん」
「おそまつさま。腹空かしてるのくらい不幸なことってないからね。食べられる時に食べとかないと」
 おにぎりくらいでこんなに嬉しそうな顔をされるのも照れるな、と梓は思った。
 でも、悪くない。梓にとって、料理は食べた相手に喜んでもらってこそのものだ。喜んでもらえれば、純粋に嬉しかった。
 と、つい今まで顔中ニコニコしていたあゆがふっと表情を翳らせた。
「あの、今日って何曜日かな?」
「曜日……? えっと、どうだったかしら?」
「えーっと」
 梓は反射的に腕時計を覗き込む。
「そうだ、時計はイカれてるんだった……確か、ここに連れて来られたのが昨日だから……火曜日、かな?」
「火曜日」
 小さく呟くと、あゆの口元がキュッと引き締まる。瞳にはっきりとした意志の光が宿る。
 そして、すっくと立ち上がった。
「一緒に、行こう」
「え?」
 意外な展開に、千鶴と梓は目を丸くした。あゆは唇を噛み締め、言葉を紡ぐ。
「聞いたよね、さっきの放送……あの人、死んじゃったんだよ……」
 名前も、姿も知らない少女。現状に警鐘を鳴らし、自分たちに進むべき道を与え、そして死んだ。
 あゆの言葉に、否が応にも耳に先ほどの爆発音が蘇る。あの音とともに、少女は死んだ。
「千鶴さん。あなたは、もう誰かを手にかけちゃったんだよね……仕方ないで済むことじゃないし、許されることでもないと思う。
 でも、それで長らえた命を無駄にするのは一番いけないことだよ。私たちがあの子の言葉を聞いたのは絶対に偶然じゃないもん。
 だから、一緒にこのゲームを終わらせようよ。一刻も早く、一人でも死んじゃう人が少なくなるように。
 そしたら――傲慢かもしれないけど、千鶴さんが命を奪った人たちも、きっと……このままでいるよりは、救われると思うんだ」
「…………」
 千鶴は視線を落とし、黙って自分の両の掌を見つめた。
 血で汚れた手。もう、同じく血を浴びた武器しか握れないと思っていた。
 この手で、ゲームの終わりを掴もうとすることは、許されるのだろうか。
「梓さん」
 あゆはさらに続ける。

51 :アユー(゜д゜):2001/05/27(日) 21:31
「おにぎり、すっごく美味しかった。あんな美味しいんだもん、私たちだけで食べるなんてもったいないよ。
 だから……みんなにも食べさせてあげようよ。この島から出て、よかったね、って言ってる時にみんなで食べたら、きっともっと美味しいよ」
 私も手伝うからね、とあゆは照れくさそうに言った。
 梓は、知らず知らずのうちに耕一や妹たちのこと、そして今までにこの島で出会った人々のことを思い出していた。
 佳乃に襲い掛かっていた女医。その佳乃も、自分の首を締め、そのままどこかへ消えてしまった。
 今さらのように、このゲームの哀しさが痛いくらいに感じられた。この島にいるのは、今まで普通の生活を営んでいた一般人ばかりなのだ。
 それがどうして、お互い殺しあわなければならないのか。幾度となく自問自答した最も基本的な疑問に、またここでぶち当たる。
「時間が経てば、もっともっとたくさんの人が死んじゃう。だから、急いでこのゲームを終わらせなきゃいけないんだよ。
 一緒に……終わらせよう?」
 あゆが、二人に向かって手を差し伸べた。
 小さな、白い、綺麗な手。千鶴はチクリと心に突き刺さるものを感じた。
 梓に視線を送る。梓は、優しく――そう、普段はあまり見せることのない、とても優しい表情で――微笑んだ。
 そして、梓があゆの手を握る。
「千鶴さん」
 あゆが笑う。千鶴の手が、ゆっくりと重なった二人の手に近づいていく。
「えいっ!」
「きゃっ!?」
 あゆがいきなり手を伸ばし、千鶴の手を掴んだ。ギュッと、握り締める。
「うんっ! じゃ、行こうよ!」
「……ええ」
「わかった」
 三人は、足並みを揃え、歩き出す。
(殺めた命は、戻って来ない……なら、私は、私にできることを全て、やる。それが、せめてもの償い――)
 それぞれの想いを胸に秘めて。
(耕一……楓……初音……あんたたちをこのままにはしておかないから……だから、絶対に死なないで……)
 遠く霞むゴールに向け、歩き出す。
(うぐぅ、明日までに帰らないとシスプリのアニメ見逃しちゃうよぉっ! は、早く終わらせちゃわないと!)
 三人の想うところは少しずつ異なってはいたが、それでも心は一つだった。

52 :報告:2001/05/27(日) 22:00
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Spade/1168/index.htm

ここの「黒船」「一歩前へ」が、内容的に被ってしまいました。
妥協案として「黒船」から北川、レミィの描写を削って「一歩前へ」に繋げて下さい。
描写不足になりますが、書き手の皆様は脳内で補って下さい。

53 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜落ちる日〜1:2001/05/27(日) 22:49
銃声は……現時点まで3発。
もしかしたら、既に誰か死んだかもしれない。
それだけの危惧を持たせるのに十分な効果を、銃声という奴は持っていた。
走る……。
どこだ? どこで交戦してるんだ?
少年はただ音がした、と自分が感じた方向に走った。
だが……なにも見えてこない。
「く……そう……」
走りながら吐く文句。
募る苛立ち。
だが……、容赦なく状況は進み――。

ドン! ドン!

「!」

大分……近くなったか。
だけどまだ分からない。
どこだ? どこなんだ!?

そんなことを呟いても、誰も応えてくれない。

銃声が消えたそこら一帯は、ずいぶんと静かに感じた。
もうこれで5発だ。
事態は、明らかにまずい方向に流れている。
少年は立ち止まっていた足を再び走らせる。
なるべく物音を立てないように繊細に……、しかし全力で。

54 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜落ちる日〜2:2001/05/27(日) 22:50


ザ……ザ……ザ……。


何かを引きずるような音が、聞こえる。
いや、これは足音、か?

少年は再び立ち止まる。
そしてあたりに気を配る。

「誰か……、いるのか?」
あたりに通る声でそう言った。
あえてそういうことで、逆に奇襲される危険性を少なくしようとしたのだ。

…………。

だが、辺りからそれに”誰か”が応じる様子は無く。

「…………くっ」
少年は――柄にも無く痺れを切らしたのか――その場を走り去った。……そうして、七瀬に手ひどく痛めつけられた弥生は、何とか少年と対峙することなく
その場を離れることに成功した。


55 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜落ちる日〜3:2001/05/27(日) 22:51


硝煙の匂いを辿る。
流れてくる方角は、もうはっきり分かる。
目的地は……近い。

そして、少年はとうとう”その場所”へ抜け出た。

「これ……は……」

人が並んでいる。
ならんで倒れている。
既に、事切れて。

片方は女の子だ。
ぼくは見たことが無い子だ。
優しそうな子に見える。
胸から血を流して……、恐らく、銃でやられたのだろう。
なのに、その死に際は、とても安らかに見えて。

そしてもう一人は、ぼくも知っている男だった。

「……巳……間」
黒いコートをを着て、なにやらずいぶんと変わり果てた男が……そこにいた。
まさかお前がやったのか……。
そんな疑念がよぎる。
だが、死者を疑うことになんの意味も無いことを少年は知っていた。

お前は、誰よりも自由を欲していたもんな……。

そんな良祐の無念を、少年は汲んでやりたいと思った。
――生きるために、良祐がやってきた非道も知らずに。

56 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜落ちる日〜4:2001/05/27(日) 22:51
少年は良祐の死体に近寄ると、その胸元をがさがさと漁り始めた。
「……あった」
彼の首にペンダント上にかけられたもの……鍵。
「せめて、これだけでも持って行かせてもらう」
少年は今度はそれを自分の首にかけた。


少年は、そのあと少しの時間を費やして大きな穴を二つ、地面にあけた。
一つは名も知らない少女のために、もう一つは巳間のために。

二人をその穴の中に仰向けに安置し、胸の前で両手を組ませた。

この島に来てから、なんだか弔ってばかりだ――。

少年はふと思い立ったように、片手に持っていた本を開いた。

「――かつて悩めた人よ、かつて憂いた人よ。
   我らは常しえにあなたのことを敬い続ける。
   我らはけして涙を零すことなく。
   我らはけして笑みを絶やすことなく。
   ただあなたの生きた証を辿り続けるだろう――」

偽典の中の一節。それを二人の死者に捧げた。
こんなところでこんなものが役に立つなんて……ね。

少年は……笑っていたのだろうか?

使い終えた本を仕舞い、少年は今度こそ二人を埋葬した。

命が燃え尽きたところ……、
その痕跡は、あまりにも静かで切なかった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
少年:戦闘のあった場所に居座り 持ち物:整理された鞄、鍵、本。
詩子:おいてけぼり 持ち物:CD、自分の鞄、空の鞄。
弥生:戦闘地点より移動中


57 :荒門:2001/05/27(日) 23:15
この状況で再び彼女達がめぐりあったのは、単純に運が良かっただけなのかもしれない。
なんにせよ社の攻防からいくらか経って、リアン・綾香組とスフィー・芹香組(こちらは途中で
結花も合流した)はなんとか落ち合う事が出来た。

「―――ってことがあったの…」
うつむき加減でスフィーはリアンや綾香に事の次第を話した。
普段の元気を知っているリアンにとっては、そんな姉の姿が痛々しかった。
「…姉さ……っ!!」
スフィーに呼びかけようとしたリアンが、いきなりうずくまる。
「リアン!? 大丈夫?」
隣にいた綾香がリアンに駆け寄って背中をさする。
「…また、ちょっと具合が悪くなって……少し休めば大丈夫だと思います」
「そんな、リアンさっきより悪くなってるじゃない。 こんな所じゃなくてもっときちんとした所で休まないと…
舞さんや佐祐理さんには悪いけど、このままじゃリアンがもたないわ」
「でも、この島ってそういう施設ってあるの?」
スフィーの疑問に、結花や来栖川姉妹は頭をひねる。
「………」
「え? なに姉さん? …学校? 学校行って何するのよ。 …保健室? あぁ、保健室ね!」
「確かに保健室ならどこの学校にもあるわよね。 でも肝心の学校があるかどうか…」
結花の当然の疑問に、スフィーは人差し指をびしぃっ! っと立てた。
「だいじょーぶ! それっぽい建物、あたし見たよ。 グラウンドがあって4階建てぐらいの建物でしょ?」
「嘘っ? それで場所は?」
「あっちのほうかな? いろんなところ逃げてきたからよくわからなくなっちゃったけど、方向は
合ってると思う」
「よしっ、それじゃあそっちの方角に向かって出発しましょう!」
「……あの…」
立ち上がって今にも歩き出そうとしている結花に向かって、リアンが不安げに言う。
「どしたの? リアン。 もう少し休んでく?」
「…あの、そうじゃなくて。 私、足手まといになっちゃうっていうか…」
「何いってるのよ。 そんなこと思ってるわけないじゃない」
「結花さんの言うとおりよ。 ここまでいっしょに行動してて、足手まといだなんて言わせないわよ」
「……綾香さん…」
「姉さんだってそう思うでしょ?」
「……こくり」
「だってさ」

58 :荒門:2001/05/27(日) 23:16
悪戯っぽい笑みを浮かべ、綾香は言った。
「ほ〜らっ、可愛い妹をこんなところに放っておけるような姉じゃないの。 皆こう言ってくれてる
のに、これで行かないほうが悪いってものよ」
「姉さん…」
「リアン? 立てる?」
結花の問いに頷いて、よろよろしてはいるもののなんとか立ち上がった。
「歩けないならおぶっていこうか?」
「…っ…大丈夫だと思います」
「無理しないでね。 リアンはHoneybeeの看板娘なんだから」
「…ありがとうございます。 結花さん」
リアンの目の端には、少しだけ涙が溜まってきらきらと反射していた。
「よぉっし! それじゃしゅっぱつしんこーー!!」
「おーっ!!」
「………ぉー…」

もしこのとき、チームの中の誰かが他の治療施設を知っていたら、もしかすると運命は変わっていたのかも
知れない。
しかしそのことを知るものは誰もいなくて。
蜘蛛の糸は確実に彼女達に絡み付いていた。

もう、逃げられない―――。

59 :荒門:2001/05/27(日) 23:17
――――きぃぃぃんっ――――
まるで音叉を叩いたようなその音を聞き、なつみは目を覚ました。
獲物がかかったことを知らせる合図。
精神を研ぎ澄まし、数の確認をする。
「……4・5人かな? 十分にマナが無いからよくわからないけど」
だが、まぁまぁの人数だ。
かき集められるだけかき集めたマナ。
一人二人に使うのは惜しすぎる。
そしてなつみは学校全体に張り巡らした結界を教室のみに集中させ、少しだけマナを消費して
来訪者たちをこの教室に導くよう細工した。
「あくまで無意識下でこの教室を注目させるだけだけど…」
耳を澄ませば、もはや音としてこの学校に侵入したのがわかる。
なつみは昂ぶる神経を、ココロを抑え、かすかに呟いた。
「いらっしゃい…歓迎するわよ、お客さん」


「意外と近くにあったものねぇ」
「早く見つかって悪い事はないんだから、いいじゃないの」
スフィー達一行は校門をくぐり、グラウンドを抜け、今正に昇降口の手前までやってきていた。
「さて、それじゃ中に入りましょうか」
綾香が皆を促す。
考えてみれば保健室は一階にあるのだから、礼儀正しく昇降口から入る必要はない。
しかし現役の学生である綾香や芹香はそのことについて考えもしなかった。
行儀のいいリアンも特にどうとは思わなかった。
ただ一人スフィーが『窓から入ったほうが近いのになぁ』と考えもしたが、こっちの世界の
学校を見てみたいという気持ちがあってか、そのことは口に出さなかった。
「私とした事が…不覚だわ」
「……」
見れば来栖川姉妹はあるはずの無い上履きを履くために靴を脱ぎ、手に持っていた。

場の空気がすこしだけ緩んだ。

「……ん? あの教室…なんかあるのかな?」
スフィーがそういって指差したのは『1−A』というプレートのかかった教室だった。
そして全員が特にどうとも思うことなく、ごくごく自然に教室に吸い込まれていった。


60 :荒門:2001/05/27(日) 23:18

がらがら、という音とともに一行は教室へ足を踏み入れた。
辺りに漂う奇妙な感覚。
それをはじめに感じ取ったのは芹香だった。
「………」
「え? 何? 姉さん。 この教室、なんかヘンだって?」
しかし周りを見回してもただの教室。
何の変哲も無い。
「特に変わったところもなければ、何があるってわけでもないわね。 早く保健室に…」
言いながら綾香はドアに手をかけ―――
「!!」
「…どうかしましたか? 綾香さん?」
尋ねるリアンの声も、綾香には左から右へ素通りするだけだった。
「…夢でも見てるのかしら」
視界の先には、今自分達が入ってきた教室が全く同じように広がっていた。
「ふふっ、どうしたの? そんなに慌てちゃって」
前方から声。
全員がその方角を向くとそこには、教壇の上に足を組んで座っているなつみの姿があった。
「なつみっ!!」
「なつみさんっ!!」
「なつみちゃんっ!!」
スフィーとリアン、結花がほぼ同時に歓喜の声をあげる。
「何? あなた達、あの娘と知り合いなの?」
「うん、牧部なつみっていって、私達の友達だよ」
「あら、そうなの? だったら一緒に行きましょうよ」
綾香が提案する。
「うん。 ねぇ、なつみちゃん。 私達といっしょに行動しな――」
結花がそう言い終えるか終わらないか。
「っ!? ……かはっ…ご…っあはっ…」
たらたら、と。
結花の口もとからは鮮血が溢れ出していた。
そして腹部からもじわりとした朱がにじみだしている。
「…な…に……なんな…の…?」
なつみはその様子を見てくすくすと笑っている。
心のそこから可笑しいというように。
「なつみっ!! なにがおかしいのっ!」
怒気の含まれたスフィーの叫びをなつみはあしらうと、
「―だって、わたしがやったんだもん―」

61 :荒門:2001/05/27(日) 23:20
にやにやと唇に笑みを絶やさず、なつみは告げる。
「そんな!だってなんにも――」
「スフィー、ちょっといいかしら」
「え?」
ずいっと綾香がスフィーを押しのけて一歩前へ出る。
手には拳銃。
銃をスライドさせて弾丸を送り込む。
そしてなつみの方向へかまえた。
「えーっと、なつみさん…年は同じくらいだからなつみってよぶわね。 ねぇなつみ、あなたの言った
ことって本当なの? 言っとくけど冗談抜きでよ。 こんな状況で冗談言われても困るから。 正直に
答えて。 私も手加減できないから」
なつみはやれやれ、という意味のジェスチャーをして綾香に向かって言う。
「ええ、そう、本当よ」
あいかわらずなつみはにやにやと笑みをたたえ、くすくすと笑っていた。
「……迷ってる暇はないの。 皆を守らなくちゃいけないから。 最期にもう一度だけ聞くけど、
本当にあなたなのね」
「何度も言わせないで。 わたしが、牧部なつみが、結花さんを、やったのよ。 OK?」
綾香は後ろを向き、
「…目、つぶってて」
静かにそう言い放つと、色々な感情を捻じ曲げ、抑えつつ引き金を引いた。
ぱぱん。
なつみの体が反り返る。
ぱん。
がたんと派手な音を立てて教卓から床に転落する。
綾香の放った弾丸は誰の目から見てもあきらかなほど、なつみを捕らえていた。
冷静を保とうとすると余計に心臓が破裂しそうなほどばくばくして、マラソンの後のように息ができない。
「ごめんね、スフィー、リアン、結花さん。 大事な友達撃っちゃって。」
綾香は後ろを向かずに淡々と告げた。
「…なつみ」
スフィーは呟いた。
何かが引っかかる。
何かがおかしい――
そして教卓まで近づく。

62 :荒門:2001/05/27(日) 23:20
「……あぁ、痛かった」
「!!?」
少しも痛くなさそうな声。
気づけば、なつみはさっきと同じ状態で座っている。
「ふふ、どうしたの? もうこれでおしまい?」
あせりつつも再び銃をかまえる綾香。
それを手で制してスフィーがなつみに話しかける。
「なつみ…いや、ココロ。 大体仕掛けがわかってきた。 この教室は『夢』ね。
範囲は教室の中だけで、夢の支配者はココロってとこね。 つまりなつみが現実にいて、
ココロは私達を閉じ込めておく役割。 そのあいだ無抵抗の私達をなつみが襲うっていう事ね。
……随分好き勝手やってくれるじゃない」
「さすがはグエンディーナの皇女サマ。 そこまで言い当てられるなんて驚きだわ」
「ねぇ…なんでこんなことするわけ?」
その言葉を聞いて、一瞬にやついていたなつみの顔が暗くなる。
「だって、店長さんは…もういないじゃない」
なつみの言葉はスフィーやリアンや結花にぐさりと刺さった。
自分達の好きだった、大好きだったひとはもういない。
「健太郎が死んじゃって悲しいのはなつみだけじゃないよ。
私だってリアンだって結花だってみどりさんだって、皆そうなんだよ!」
「…ふふっ、確かにそうね。 でも、でもねスフィー。 私にはもう居場所が無いのよ。
私がいてもいいところ、いるべき場所はもう無いの。 わかる? 空っぽになっちゃったの。
あなた達にはまだ残ってるけど、私にはもうそれが無いのよ。」
「…そんな…だからって人を殺していいわけ……」
「あるの。 だって店長さんも苦しくて痛くてもうどうしようもなかったはずなのに、
なんでのうのうと生きてられるの? みんな共犯! そんなの悪いから。
店長さんと同じ苦しみがなきゃ悪いに決まってる!!」
「だからって…健太郎はそんなの望んじゃいないよ!!」
「…ねぇスフィー、店長さんはもう死んじゃったの。 望む望まないさえも決められない。
殺す殺さないの選択権までないの。 何も無いの。 店長さんをそんなふうにした人間を、
私は許しておけないだけなの。 そしてその人間がこの島にいる全員っていうだけなの」
「なつみっ!!」
「もう話すことは無いから。 スフィー達も、ここで死んでよ」
「なつみぃいっ!!!」

63 :荒門:2001/05/27(日) 23:21
時間はほんの少しさかのぼる。
ここは現実の教室。
ドアのあたりに五人が倒れている。
「どうやらココロはうまくやっているみたいね」
無防備な五人。
それもそのはず。
ここに倒れているのはただの肉体だけなのだから。
なつみの採った作戦は、ココロの『夢』のなかに獲物を閉じ込め、その間になつみが
その肉体を殺すというものだった。
多量のマナを消費するため、二度とはできない戦法だったが、誰一人として殺せないうちに終わるよりか
遥かにましな事に思えた。
短刀を抜き、近づく。
どうせ全員殺すのだからと、一番手前にいた結花の胸に刃を振り下ろす。
彼女とも色々な事があった。
でもそれは今では霞がかってよくわからないにせものの記憶のようだった。
くさり。
短刀が刺すと、弾力のある豆腐に粘土を混ぜたものを突いたような感触を手に感じた。
刺した部分からは血が服にしみこんでにじみ、口の端からだらだらと血が流れ出てきた。
なつみは一刺しではまだ足りなさそうだったので、もう一回短刀を突き刺した。
でもやはりそれは豆腐と粘土のミックスにすぎなかった。
しばらくその光景を眺めていたなつみだったが、時間があまり無いという事を思い出し
短刀を引き抜くと、次の相手を隣りに横たわる黒髪の少女に定めた。

64 :荒門:2001/05/27(日) 23:26
すこし長くなってしまったので、残りはもうすこしあとに。
本当、もうすいませんとかいいようのない内容ですいません。
はぁ…

65 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 23:31
そもそも能力で人殺せないように結界なんて設定持ち出したんでしょ?
前提壊してるじゃん、これ。

別にNGだなんて騒ぎ立てるつもりはないけど、何のための結界か次から考えて欲しい。
あの設定は、ゲームの演出以前に大きな規制なんだよ。

66 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 23:46
お客様のお呼び出しを申し上げます。
荒門さま、荒門さま。
至急「葉鍵キャラロワ感想スレ#2」までお越し下さい。

http://green.jbbs.net/movie/bbs/read.cgi?BBS=568&KEY=990556094


67 :いつも笑顔で 1/2:2001/05/28(月) 00:24
水瀬秋子は痛めた右手にシップを張ると、少しくるくると手首を回してみた。
「…特に問題はなさそうね。」
捻挫というほどではない。もう少し時間がたてば気にもならなくなるだろう。
郁未と一戦交えた後、秋子は気絶した名雪の治療と武器の調達ののために森沿いの一軒家に忍び込んでいた。
名雪の治療はすでに完了している。
怪我はそれほどたいしたものではなかった。
頭部への強い打撃は後になって症状が見られることもあるが、少なくとも今は問題のないように見える。
現に名雪はもう目を覚ましている。
目を覚まして、ずっとしゃべりつづけていた。
「聞いて聞いてみんなひどいんだよ、みんなみんな私のこと傷つけるんだよ、
 私祐一守ったのに真琴から祐一守ったのに祐一私を守ってくれなくて、
 だから自分で自分の事守ろうと思って、
 琴音ちゃんも私のこと傷つけるつもりだったから私琴音ちゃん刺したんだ、えらいでしょお母さん、
 繭ちゃんだってそう、私がんばったよ、がんばったのに頭痛い頭痛い、
 祐一だよ祐一のせいだよ祐一が逃げるからいけないんだよ、
 何で逃げるの祐一、あゆちゃんだねあゆちゃんのせいだね、あんな子のどこがいいの、
 許せないよあゆちゃん許せないよお仕置きしてよ、
 もういや、みんなみんな大嫌い、みんなにお仕置きしてよ、ねぇ、お母さん…」
ずっとしゃべっていた。
そんな様子を見て秋子は理解しなくてはならなかった。
自分の娘が壊れてしまったということに。


68 :いつも笑顔で 2/2:2001/05/28(月) 00:26
しゃべりつづける名雪の顔は醜くて、先ほどの郁未のように醜くて、
にっこりと笑う名雪の笑顔が秋子の密かな自慢だったのに。
(あなたのお子さんもきれいな子でしたね、未夜子さん。)
未夜子と、先ほど自分が殺した人と、自分の娘のことで会話に花を咲かせたらどんなにいいだろうと、秋子は不意に思った。
こんな時、こんな所じゃなくて、そう大安売りのスーパーで並んでカートを転がしながら、
「まぁ、奥さんのお子さんも陸上部なんですか?」
「あら、じゃああなたのお子さんも?」
「ええ、名雪も一応部長なんですけど、あんなお寝坊さんで勤まっているのかしら…」
「まぁ、立派じゃないですか。うちの郁未も成績はいいようだけど、もう少し愛想ってものがないとねぇ。」
「うちのは少しのんびりしすぎてますわ。あれでも陸上選手なんて信じられませんよ。」
なんて、そんな会話ができたらどんなにいいだろう。
そうして、秋子はこっそりと思うのだ。
でも、どんなお子さんでも名雪の笑顔には敵わないわ、と。
(たいした親ばかね)秋子は胸中で自虐的に呟くと、なおもしゃべりつづける名雪のほうを向いた。
「名雪、もっとかわいくしなくちゃ祐一さんに嫌われてしまうわよ?
 ほら、笑って、ね?」
名雪は一瞬ぽかん、と顔をして、そうしてにっこりと笑った。
「うん、そうだね、お母さん。」
その顔が、とてもきれいだと、秋子は思った。
名雪には、いつもこんな顔を、してほしかった。
だから、秋子はこういった。
「名雪、一つだけ約束して。いつもそうやって笑顔でいて。
 名雪がいつでも笑っているなら、お母さん名雪のためになんでもするから。」
「ほんと!」名雪は弾んだ声を出す。「ほんとだね、お母さん!」
「ええ、約束よ。」
「うん、約束だね。」
(母親というのは本当に馬鹿な生き物ね)
それもいいでしょうと、秋子は思った。
秋子だって、名雪を見捨てた祐一が、名雪を傷つけた郁未が、名雪を壊したこの島の人達が憎かった。
でも、そんなことも、もうどうだってよく。
このまま名雪と共に壊れていくのもいいだろうと、
「えへへへ、じゃあまずあゆちゃんをね…」
嬉しそうにしゃべる名雪を見ながら、秋子はそう思った。

【水瀬秋子、名雪 怪我の治療、民家から武器(次の書き手に委任)を獲得】


69 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 00:29
未夜子殺したのは千鶴さん。

70 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 00:37
>>66
そのURL、感想スレ1だね
ってことで2のURL。
http://green.jbbs.net/movie/bbs/read.cgi?BBS=568&KEY=990888426

71 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 00:39
#5が読めない・・・
昼になったら読める?

72 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 00:40
むり。

73 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 00:40
#5は、もう読めないんじゃないかな。

74 :名無したちの挽歌:2001/05/28(月) 00:43
>>71
 纏めてくれてるHPを見るしかないと思われ。

75 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 00:44
>>71
かちゅーしゃ使え。.

76 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 00:50
>>75
いまさら,むりなんじゃん?

77 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 00:52
大丈夫。今確かめた。

78 :遭遇(1/5):2001/05/28(月) 01:07
島の真上をさんさんと照らしていた太陽も傾き始め、
夕闇の気配がゆっくりと擦り寄ってきていた。
この島の大部分を占める森の。
その、更に奥深くに、彼は居た。
(何処だ……茜……)
ふと、ゲームが始まってから自分は一睡もしていないということに気づく。
自分にとってどれだけ「茜」と言う存在が大きかったか、改めて思い知る。
気がつけば、体中が悲鳴を上げている。
心も、体も、とっくに限界を超えていた。

それでも、止まらない。
止まれない理由があった。

『茜は、変わってなかったよね?』
『あぁ、そうだな』
『……変えてあげてね?』

『あぁ』

彼の、そして茜の親友の言葉が、彼の足を前へと進ませる。
そして何より、彼自身の強い想いが、立ち止まる事を許さなかった。

が。

祐一が巡り合った相手は。

79 :遭遇(2/5):2001/05/28(月) 01:08
「ねえ」
不意に背後から掛かってきた声に驚き、振り帰る。
立っていたのは、一人の小さな少女。
外見とその落ち着いた声とのギャップに唖然とする浩平に、
少女ははぁっ、と溜息をひとつついて言った。
「あなた、そんな隙だらけの背中で何やってるの?
 私がもし殺人鬼だったらどうするつもり?」
「なッ……」
浩平は混乱した。
突然現れた少女。
それが、声を掛けてきた。
そこまではいい。
なんで俺が、こんなガキに説教されてるんだ?
少女の言っている事は正論なのだが、
年下に説教されると言う事が、彼の癪に障った。
なので、口をついて出るのは、反抗的な台詞。
「うるせーな。なんでお前みたいなガキに説教されなくちゃいけないんだ?」
少女は、その言葉を聞き、顔を歪ませる。
……嘲笑に。
「お笑いね。年齢を問わず正しい意見は取り入れるものよ。
 私が子供だって言うなら、つまらない意地で自分を正当化するあなたのほうが余程子供よ」
「て……てンめぇ……」
祐一は怒りに身を震わせる。
この場合年上として正しい対応は目の前の生意気な少女を論理的に説き伏せる事なのだが、
無念にも祐一の頭では反論出来る言葉が見つからなかった。
なので、年上と、そして男女の基礎体力の違いという二つの利点を持って、
「どりゃぁーっ!」
祐一は力ずくで生意気な少女を黙らせようとした。
無論、それは男として最低とも言える行為だ。
よって、祐一はすぐに天罰を受ける事になる。

80 :遭遇(3/5):2001/05/28(月) 01:09
祐一が少女めがけて飛びかかる(こうして書くと誤解を招きそうだが)。
少女はすっ、と姿勢を低く落とす。
そして、祐一が少女に覆い被さろうとしたその時。
「がッ…………」
祐一の動きが、止まった。
少女のアッパーカットが、祐一の股間を的確に捕らえていたのだ。
もう文章では表現しきれない程の痛みに、祐一は地面をのた打ち回る。
少女はそんな祐一を見下して笑った。
「無様ね」
気を抜くと本当に気絶しかねない中、祐一が絶え絶えに言葉を発する。
「こっ、こういう時は…蹴りって相場が決まってるんじゃ……」
「あら、だって蹴りだと狙いがつけにくいでしょ」
そっけなく、少女は答えた。
成る程、もっともだ……
祐一は答えを聞き終えると、満足げな表情で気絶――
「気絶してんじゃないの」
「あうっ」
それは、少女が許してくれなかった。

傾きかけた太陽は未だ沈んではいなかったが、
森の中には光は僅かしか届かない。
すでに、辺りは薄暗くなりつつあった。
「…で、一体何の用だよ。殺せるチャンスをわざわざ逃してまで聞きたい事、あるんだろ?」
水を口に含みつつも、浩平は少女−どうやら、椎名繭と言うらしいが、に問うた。
「まあ、殺せる武器も無かった、っていう方が正しいかもね」
「なんだ、結構お前も考え無しじゃねえか」
そう言って祐一は二へッと笑う。水を口に含んだままなので、水飛沫がとても汚らしい。
「…早く飲み込みなさいよ」
「まあそう言うな。汚い所走りまわって結構ノドが痛んでるんだ」
祐一がそう言うが、その度にまた水飛沫が飛ぶ。
繭は沸きあがる殺意を理性で押さえ込み、話を進めた。
これもセイカクハンテンダケの成せる技だとも言える。
「――人を、探してるのよ。折原浩平、って人」
へぇ、じゃあ俺と一緒じゃないか、と祐一は口に出そうとする。
その前に、繭が続けた。
今の祐一にとって、一番聞きたくない名前を。
「…それと、沢渡真琴、って人」

81 :遭遇(4/5):2001/05/28(月) 01:09
ぶっ、と思わず祐一はすでに生暖かくなっていた水を吹き出す。
明らかに取り乱した祐一の様子を見て、繭が目を見開き、祐一を問い詰める。
「知ってるの!?教えてよ、真琴さんの行方」
これまでの理性的で嫌味ったらしい態度は影を潜め、感情を露にして迫る繭。
祐一は一瞬本当の事を言うかどうか躊躇する。
だが、その悩みはすぐに打ち消される。
ここまで必死に真琴の行方を探してくれた人。
どんな理由があれ、ここで本当のことを話さないのは卑怯だと思ったのだ。
「……知ってるさ。だって真琴は……」
ゆっくりと、口を開く。
「俺の目の前で、死んだんだから」
繭の頬から、一筋の涙が零れ落ちた。

「しかし、やっぱ真琴は嘘を吐いてたのか」
先程から繭は俯いたまま、何も話そうとはしない。
辛うじて、一時期自分が真琴と行動を共にしていたと言う事を喋っただけだ。
「変だと思ったんだよな、真琴が『お姉ちゃん』なんて」
「そんな事ありません」
「…っと」
間髪入れずに入った繭の声に、思わず祐一は態勢を崩しかける。
「真琴さんは、すぐに泣き出したり、我が侭を言ったりする私の面倒を優しく見てくれました。
 殺人鬼のような男に追われたときも、私を安全な場所に隠れさせて、ひとりで立ち向かって行ったんですよ」
祐一は穏やかな口調で話す繭を見て、
「…そうか」
と、自身もまた穏やかな表情で言った。
「真琴は、確かに『お姉ちゃん』だったんだな?」
もう一度、繭に問う。
繭は、揺るぐ事の無い表情で、
「ええ」
と、笑顔で答えた。


82 :アユー(゜д゜):2001/05/28(月) 01:09
感想スレで突っ込みが入ったので…
>>50-51のあゆ、一人称が全部(3ヶ所)「私」になってました(´Д`;)
ログ編集の方、すいませんが「ボク」に訂正して頂けると幸いです。
……イッテキマス。

83 :遭遇(5/5):2001/05/28(月) 01:10
「……それにしても」
空になった水筒の底を叩き、何とか最後の1滴まで飲み干そうとしながらも祐一が繭に語り掛ける。
とても、間抜けな光景だ。
もうそんなのには慣れたのか、
「…何」
と、繭は素っ気無く訊き返す。
「なんでお前みたいな生意気なぐらいにしっかりしたヤツ相手に、真琴がお姉さん気取りできたんだろうなぁ」
繭は、「失礼ですね」と頬を膨らませたが、
すぐに顔を落とし、言った。
「…私が、子供だった、というだけです。
 もし私があの時、もっと理性的な行動を取れていたら、真琴さんも…んぐっ!?」
繭の台詞は、そこで途切れた。
祐一が繭の口を手で塞いだのだ。
「…そこから先は言うなよ」
繭が見上げた祐一の顔は、これまでになく真剣で、辛そうで。
繭は、出しかけた文句を、飲み込んだ。
「真琴はあれで臆病なんだ。その点、お前がいた事で辛うじて真琴は理性を保ててたって言える。
 真琴があんなに頑張れたのも、お前のお陰だ。…だから、そこから先は言うな」
泣きそうで、苦しそうで。
そんな祐一の表情を見て、繭は軽はずみな事を言った自分を恥じた。
……でも。
ぎゅうっ、と祐一の手の甲をきつく抓る。
「ぎぇぇっ!」
「いつまで口塞いでるのよ」
それとこれとは、別だった。

84 :遭遇(6/5):2001/05/28(月) 01:11
「さぁて、そんじゃまぁ、俺はそろそろ行くかね」
祐一がゆっくりと身を起こす。
「……何処に」
座ったままの繭が、祐一を見上げて言う。
「俺も、探してる人が居るんだ」
「ふ〜ん」
自分から訊いておいて、繭はその言葉を聞き流し、服の埃、土汚れを払う。
そして、祐一の方へと向き直ると、
「じゃあ、行きましょうか」
と、平然と言ってのけた。
「おう、じゃあ……ってええ?」
お約束の反応をした祐一も、繭の方へと振り帰る。
「だって私、武器無いし。ここは武器を持っている人と行動したほうが安全だわ」
「…俺が寝首かいたりするとは思わねぇのかよ」
祐一が吐き捨てる様に言った言葉に、繭は不敵に笑って見せて、言った。
「あら、あんな隙だらけの背中を見せているような奴にそんな事が出来るかしら?」
「ぐっ……」
出来そうに無かった。
「決まりね、行きましょ」
そう言って一人で歩き出す繭に、その後ろから祐一が言葉を投げかける。
「絶対にお前の事守ってやる、なんて口が裂けても言わねえぞ」
その言葉に繭は振り向くと、
「あら、結構よ。私が勝手にあなたの後ろに移動するから」
と、笑い飛ばして見せた。
祐一はチェッ、と舌打ちすると、
「わーったよ、行くぞ」
と吐き捨て、繭を追い越して歩き出した。
そして祐一は内心、自分は繭に頭が上がらなくなるんじゃないかと、先行きに不安を抱く事となった。

【相沢祐一・椎名繭 コンビ結成】

――――――――――――――――――――――――――――――――
スミマセン、行数エラーで1個分長くなっちまいました。

85 :遭遇(おまけ):2001/05/28(月) 01:12
妙なコンビは歩く。
「……それで、お前はその…」
「キノコ」
「そうそう、そのキノコを食べたから、こんな性格になっちまったと?」
水を口に含みながら、祐一が喋る。
ちなみに、水は余りにも「水、水〜」と見苦しい祐一に対し、繭が投げ捨てたも同然に与えたものである。
「そう。あと4つあるけど、食べる?」
そう言って繭は、ごそごそとバッグの中からキノコを取り出す。
いかにもって感じの色がヤバげだ。
「遠慮しとく」
見てるだけで吐き気を催しかねなかった。
「……それで、そのキノコを食べると性格が反転してしまう、と」
「そうみたいね」
……祐一は考えた。
「これを高槻に食べさせれば……いかん萎える、止めよう」
「………?」
この妙なコンビの行きつく先は、何処か。

86 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 01:29
凛とした空気の中、鳥の声だけが森中に響き渡っていた。

深山雪見の死を看取りながら、往人は考えていた。

(俺はここまでできるのか。親友の敵を取るためだけに、ここまで…。)


「俺はこのままでいいのか…?」

誰に問うこともなくつぶやいてみる。
自分の信念を貫くあまり、犠牲にしたものが大きすぎた。
みちるも、遠野も守れなかった。
聖も死んでしまった。
何も考えたくなかった。それなのに…『浜辺にいこっ』
『どうして』
『遊びたいから』
『遊びって何をするんだ』
『だから浜辺で遊ぶの、かけっこしたり、水の掛けあいしたり』
『そして最後に。』
『また明日、ってお別れするんです。』


「観鈴…!」『わたしと往人さん、友達。にははっ』「観鈴…」
もう一度繰り返してみる。

しかし…

俺に観鈴を守る権利はあるのだろうか。
すでに4人も殺めてしまったこの俺に…。

果てしなく続くかと思われた自問自答。
終わりは突然にやってきた。


がさっ


突然現れた黒い影に、目を奪われ現実に引き戻された。

「なんだおまえ…」

目と目が合う。
そこはかとなく不条理な空気があたりを包んでいた。


87 :「遭遇」作者:2001/05/28(月) 01:31
>>ログ編集者さん
すみません、遭遇(2)の一部で、「祐一」が「浩平」になっているのでログ保存時に直しておいてください。
お手数でしょうが宜しくお願いします。あぁ鬱だ…


88 :遭遇(1.5/6):2001/05/28(月) 02:08
普段の彼女を知っている人ならば、誰もが驚くであろう。
何故なら、普段の彼女は、けしてこんな顔をしないからだ。
口元は引き締まり、目は堅い決意に彩られた、その顔。
彼女が目指す先は、この島で唯一頼れる、優しい人たち。
どこに居るかは、まだ分からない。
だから、走る。音も立てずに。

ふと、彼女の足が止まる。

人の気配だ。
殺し合いなど本来真っ平な上に、今の彼女には武器と呼べるものが何一つ在りはしなかった。
見つかったら、殺される可能性だってある…いや、その可能性はとても高いと、言えた。
気配を殺し、去ってゆく人の後姿を見遣る。
その、隙だらけの後ろ姿に。
彼女の知っている、「優しい人」の姿が重なった。
間違い無い、見紛う物か、と、絶対の自信を持って、少女は草陰から一歩踏み出した。

が。

少女が声をかけた相手は。

89 :「遭遇」作者:2001/05/28(月) 02:09
>>ログ編集者さん
本当に度々スミマセン…
この遭遇(1.5)を、遭遇(1)と(2)の間に挿入してやってください。
本当にお手数かけさせて申し訳無いです……

90 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 02:24
なんでこんな所にいるんだろう。
いつも笑いかけてくれる少女はもういない。
目の前にいるのは、黒い変な恰好をした男だけ。
ひどく落ち込んでるようだが、どことなく他人じゃ無いような気がするのは気のせいだろうか。

「なんだおまえ…」
ナンダオマエ
僕に向かって言ってるんだろうか?
お前とは失礼な。
むかついたので、蹴りを入れてやることにした。

バサバサ、どすっ

「くっ…、ゴホッゴホッ」

ふ、見たか。電光石火のみぞおち蹴り!
「……カラスの分際で人間様にたてつくとは、見上げた度胸だな」

じゃき

………
黒い筒状のものを僕に向けてきた。
よくわからないが、直感で危ないモノと判断。
愛想をふりまく作戦に出よう。

バサバサ

「うお、肩に乗るなっ!」

なぜか振り落とそうと、僕の体をつかんで引き剥がそうとする。
いつもの少女は、これで喜んでいるのに、この男は嫌そうな顔をする。なぜだ。
とにかくこっちも振り落とされまいと必死になる。

バッサバッサ

「いてっ!爪を食い込ませるのをやめろ!」

バッサバッサバッサ

「だあ!わかった!乗せてやるから爪を立てるな!」

バサバサ

ようやく落ち着いた。男はとても嬉しそうだ。

「こんな姿、他人に見られたらいい笑い者だ…」

よほど嬉しいらしい。
肩を振るわせ目を伏せている。

「まあいい、お前のおかげで踏ん切りがついた。」

?この男は何を言っているのだろう。

「待ってろよ。観鈴」
そう言いながら、手元の小さい箱状のものに視線を落とす男。

ミスズ、その響きは、僕に何かすごく懐かしいことを思い出させる。
あの少女の名前、だったか?無償に興奮してきた。

バッサバッサ

「痛え!爪を立てるな!」

男の声が森に響き渡っていた―――。



91 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 04:54
age

92 :おもいで(1/2):2001/05/28(月) 05:47
「これで……人をコロセル……」
誰もいない住宅街。
人のいなくなった喫茶店。
「あなたは……私を裏切らないわよね……」
小銃とナイフを見つめながら夢心地で横へ言葉を投げかける。
白蛇。
みちるが――あの愛らしい少女が消える直前に残した友達。
「人はもう、信じられません。
やっぱり…信じられませんでした。」
虚ろな瞳、もう流れることも忘れてしまった涙。
「秋子さんも…私を…見捨てたんですね…」

――……琴音ちゃん?
――……は、はいっ!?
――名雪を、連れ戻してきてくれる?
――ありがとう。それじゃ、お願いね。

秋子との言葉が思い浮かんだ。
あの時から、少しだけささくれのように涌き出た疑念。
琴音は言葉どおりに名雪を探した。だけど…
(どうして…私だけ…一人で探しに行かされたのですか?)

――大丈夫よ琴音ちゃん。私を裏切っても、名雪を裏切らない限り、あなたは 私が守るから。
  そのかわり――名雪を手に掛けたときは、本当の恐怖を教えてあげます――

(秋子さんは…守ってはくれなかった…それどころか…)
琴音は、白蛇のポチを握りしめる。
(名雪さんに……裏切られたんですから……)
ビチビチッ!!
苦しそうに、ポチが左右に体を揺らす。
「あっ…ごめん……ごめんね…ポチ。」
琴音がポチを抱きしめる。今度は、軽く。
「やっぱり…動物だけは裏切らないもの…藤田さんが…あかりさんが、特別だっただけ。」
唯一信じるに値する少年少女の顔を思い浮かべる。
「ポチ……私と…いっしょに行こうね。ずっと、いっしょに。
みちるちゃんとの…約束だもんね。」

93 :おもいで(2/2):2001/05/28(月) 05:49
琴音には、みちるがどうして消えたのかは分からない。
だけど、みちるの名前が放送で呼ばれていた……
それは――死。

「みちるちゃんもね…私をもう裏切らないもの。
ポチ、人はね…みんな裏切るの。でもね、死んだらね、もう裏切らないの。
みちるちゃんは…私とお友達だから…裏切らなくなったのよ。」
ポチの頭をを優しく愛でる。
「だからね、みんな死ねばいいの。そうすれば裏切られない。
みんな、みんな、お友達になれるのよ?」
一語一句、言い聞かせるようにささやきかける。
「そして、藤田さんに…あかりさんに…ほめてもらいたいな。
私はまた、人間不信に陥っちゃったけど…自分の力で元に戻りましたって。
私は弱いから、だけどね…強くなりたいんだ。」
決意を新たにして、琴音が立ちあがる。
「この喫茶店ともお別れ――。少しの間でしたが…楽しかった。」
まだ聞こえてくるようなあの楽しかった笑い声。

――にょわ〜っ、動いた動いたっ!
――動物だから、もちろん動くと思います。
――琴音ちゃん、動物好きなの?私もなんだよ!ねこさんとか。
――名雪は、ねこアレルギーですけどね。
――う〜、お母さん!ひどい〜ひどい〜!!

「さよなら……行こう、ポチ。」
白蛇を首に巻いて、喫茶店の入り口に立つ。
「あれ……なんか変だな……」
枯れたはずの涙が溢れて――
「こんな…はずじゃなかったのにな……どうしてこうなっちゃったんだろう…
藤田さん、藤田さんに会いたい……」
少女の嗚咽は、楽しかったはずの喫茶店の中にずっと響いていた……。

94 :汗と涙と男と女(1/6):2001/05/28(月) 17:15
「かーずきっ!」
詠美が和樹に甘えるようになってからどのくらいの時間がたったのだろう。
「待たせたな!詠美!」
詠美が建物の陰から姿を現す。
「どうだった?」
「いや……なにもなかったよ。」
和樹がそう言って、詠美の頭を優しく撫でる。
「そっか……うん、次はどうするの?」
「とりあえずここから離れよう。ここには逃げ場が無い。話はそれからだ。」

表情とは裏腹に、和樹の心は晴れない。
南の豹変――確かにそれもある。
だが、今の建物……おそらくはスタート地点の一つだろう。
その中にいくつもの死体が転がっていた。
全部で8人。全員同じような野戦服を着た男たちが倒れている。
恐らくそれは主催者側の人間であろう。
武器はすべて奪われていた。
(俺達と同じように…主催者側と対立してる奴がいるのか…?)
だが、もしも違ったら…そう、すでに理性を失い、見境いの無い殺戮者だとしたら……?
(南さんですら……)
和樹は果てしなく疑心暗鬼に陥っていた。
(たとえ、彩ちゃんやモモちゃん…いや、あさひちゃんであっても…もしかしたら…)
そして、正常であったとしても和樹のように人を疑ってかかる者だっているかもしれない。
(ちっ、やめようぜ…答えなんか…でないよ。楓ちゃんなら…どうする?)

別にここだけじゃない。
とりあえず心当たりのある場所に手がかりはなく、冷たくなった躯だけしかなかった。

95 :汗と涙と男と女(2/6):2001/05/28(月) 17:16
――何かあったら、またこの場所で――

途方に暮れかけた時、彼女の言葉が脳裏に浮かぶ。
もしかしたら、彼女の単独行動は、何か心当たりがあってのことかもしれない。
「一度戻るか……これ以上闇雲に動いたって道は見えない。」
和樹が歩きながらそう呟いた。
「も、戻るの…?」
不安そうな詠美の声。無理もない、
それは血の匂いのする思い出の場所だから。
たとえ、大切な友人の墓場であってもだ。
――もちろん和樹達は玲子を簡易的にではあるが弔っている。――
「安心しろ、俺がついてる。」
詠美を落ち着かせるようにそっと頬に口付ける。
「うん……」
(やっぱ調子狂うよな……)
いつも生意気で悪態をついてばかりだった彼女、
ここに来るまで、鼻で人を笑うような態度で本当の自分を隠してきた彼女。
だけど、それでも――
(いつも顔を合わせるたび……だったからな…)
苦笑した。

ザッ……ザッ……

そして瞬間、人の気配。

96 :汗と涙と男と女(3/6):2001/05/28(月) 17:17
「それでね……」
由綺の声はいつも透き通るように綺麗で。
ブラウン管の向こうの世界が遠く感じられてたあの頃。
だけど……
いつの間にか心よりも、遠くで聞こえる由綺の声。
それはここに来てから。

だから、由綺の手をつかんだ。
理奈ちゃんでなく、マナちゃんでもなく、英二さんでもない。
ブラウン管の向こうよりも遠い世界に行ってしまわないように、強く。

「弥生さんがね…ふふっ、おかしいの…」
由綺がいつものように笑う、そこは日常だったから。
だけどその現実は…由綺が本当に望んだ日常ではなくて。
『おかしい』……そうかもしれない。
俺達は…いや、俺だけが狂っている。
俺は由綺の為に…すべてから逃げたんだ。
理奈ちゃんから、マナちゃんから、英二さんから、見知らぬ少年から。
そして、由綺を傘にして罪の意識から逃れようとしている。
(俺は…卑怯だよな…)

由綺にとってここは、より日常だったんだ。
ブラウン管の向こうで歌っていた――あの頃よりも。
(由綺は……俺が追いつめたんだ……)
本当に日常だった頃から、由綺の本当の心の拠り所になりきれなかったんだ。

97 :汗と涙と男と女(4/6):2001/05/28(月) 17:18
「……誰っ!!」
突然由綺が声を張り上げる。
(誰かいるのか……)
来ないでほしい。由綺がまた遠くに感じられてしまうから。
俺はまた、由綺のせいにして罪を犯してしまうから。
近づいたら、由綺が、俺がまた――
「お、おい、ちょっといいか……?」
ドン!ドン!
男の声と共に銃声…とは少し音色の違うニードルガンの音。
い、いきなり撃つか!?俺の恋人よ……

射程距離が離れすぎてたのか、男の脇を、ゆっくりと放物線を描き――地面に落ちる。
話し合いの余地も無い。
男は一瞬呆けた表情、だけどすぐそれは険しい表情に変わって……
物陰に潜むように身を隠れさす。
そしてそこから見えるのは……銃口――。
俺の背筋に…何かはしるものがあった……

「行くぞ!由綺!!」
再度狙いをつけて戦おうとしている由綺の手を引いて、そこから離れる――。
同時に、途切れることのない銃声。
「と、冬弥君!?」
先程まで俺達が存在していた空間に、熱線のような光がいくつも雨のように降り注いだ。
――死ぬ――
強い意識が俺を包んで、怖くて。
だから、無我夢中で走った。後ろを決して見ないようにして。
横で走る由綺の手だけは、絶対に離さないように――。
緊迫した状況の中だけど、右手に感じた由綺の暖かさだけが妙にはっきりと感じられて――。
場に不釣り合いな思い。
(俺、こんなときでも由綺だけは……)
少しだけ自分を誇らしげに思えた。

98 :汗と涙と男と女(5/6):2001/05/28(月) 17:19
「な、なあ、由綺……」
「はあ、はあ………な、何?冬弥君。」
1,2キロは走ったかもしれない。
後ろから追ってくる気配はなく、ようやく走るのを止める。
由綺と俺は流れ出る汗を拭いてようやく一息つく。
「いきなり…撃つのはやめないか?」
「どうして?」
きょとんとした顔で由綺。
「だってさ…今、危なかったじゃない。危険だよ。」
「そうだけど…」
「だからさ…いつでも撃てるようにだけしておいて…撃つときは撃つみたいな…
なんて言ったらいいのかな……」
「だけど……」
「俺が死んじゃってもいいのか?」
俺はイヤだ。由綺が死ぬことも、俺が死んで、由綺が悲しむことも。
もちろん俺だって死にたくない。
「嫌っ……」
由綺が背中から俺を抱きしめる。
「うん、分かった、私、冬弥君死んだら嫌だもん…
いきなり…撃つのはやめるね。」
「ああ……」
いきなり撃つのは…俺だけでいい。
もっとも、飛び道具なんて持ってないけど。
「ふふっ、でも、冬弥君が危なくなったらどんなことしても守るからね…」
「ありがとう、由綺……」
だけど、どうしようもなく哀しくなって、喪失感が胸に込み上げて…
「ど、どうしたの?冬弥君…泣いて…るの?」
由綺の日常の中で、俺は、泣いた。

99 :汗と涙と男と女(6/6):2001/05/28(月) 17:24
「ふう…まさか…いきなり襲われるなんてな…」
機関銃の熱を冷ましながら、和樹は溜息を吐き出す。
もう、敵の姿はない。
和樹達と同じように、カップルであったが故に生んだ油断だった。
もちろん深追いする気はない。
和樹には殺人の衝動なんてないのだから。
(自分達の身に危険が及んだその時は…その時だけどな。)
いざ脱出するときは、そうはいかないかもしれないが。

「かずき……みんな…狂っちゃったんだね…」
詠美の顔はまだ晴れない。
(この島にいる限り、心から笑ってくれることはないんだろうか。)
武器の残弾、状態をチェックする。
(大丈夫みたいだな。)
「平気だろ…今みたいのはごく稀なケース。俺も…詠美も…ほら、楓ちゃんだって正常だったじゃないか。」
「うん…」
本当にそうなのだろうか。和樹の言葉は自分に強く言い聞かせる意味合いの方が強い。
「あそこに戻るぞ。結構経ったからな。…楓ちゃんももう戻ってるかもしれない。」
「うん…」
「別ルートから戻ったほうがよさそうだけどな。」
別ルート。8人の死体があった建物を通りぬける。
「……きゃっ、ちょっと…何すんのよ…」
和樹はいきなり詠美の膝の後ろと背中にに手を忍ばせると、そのまま勢いよく抱えあげる。
いわゆる漫画や映画でありがちな『お姫さまだっこ』というやつだ。
「俺を信じろ……俺がいいって言うまで絶対に目を開けるなよ。」
「うん、わかった…しんじる…」
(詠美がわざわざ建物の中の惨劇を見る必要はないからな。)
詠美の持ち物…武器も実は和樹は知らない。
(詠美が戦う必要なんてないからな。)

手を汚すのは、俺だけでいい。

100 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 17:37
往人は飢えと緊張と戦いながら森を歩いていた。
手には、携帯電話をもっている。
―――090 水瀬 秋子
―――033 国崎往人
「さっきの女、名前だけでも聞いておくんだった。」
意図して声を出しているのか、自分で気づかないうちに出してしまっているのか。
「そもそも機械は苦手なんだ。」
呟きながら、順に番号を入力していく。

001,002,003,004,005,006…

しばらく続いた後、入力していた往人の手が止まった。
(017…、近づいてくる。)
まだそんなに近くない。考える時間は充分にある。
男か女か、いやそれ以前にやる気があるのか無いのか。
名前さえわかれば、観鈴の場所を知る手がかりになるだろう。
いや、それよりも
観鈴かもしれない―――
俺が033、017が神尾の可能性だって充分にある。

「様子を見るか。」

木陰に身を寄せながらつぶやく。
ここにいれば当分は見つかることは無いだろう。
それよりも問題なのは―――。


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