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葉鍵ロワイアル!#6

1 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 16:28
#5が容量オーバーで消えたため、新スレです。

基本ルール 、設定等は前スレ熟読のこと。


・書き手のマナー
 キャラの死を扱う際は最大限の注意をしましょう。
 誰にでも納得いくものを目指して下さい。
 また過去ログを精読し、NGを出さないように勤めてください。
 なお、同人作品からの引用はキャラ、ネタにかかわらず
 全面的に禁止します。
・読み手のマナー
 自分の贔屓しているキャラが死んだ場合、
 あまりにもぞんざいな扱いだった場合だけ、理性的に意見してください。
 頻繁にNGを唱えてはいけません。
 また苛烈な書き手叩きは控えましょう。

前スレ:#4
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=990388662

ストーリー編集(書き手必読)
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Spade/1168/index.htm

↑の最終更新から、#5に書かれていたストーリー(書き手必読)
http://www30.tok2.com/home/buki/hakarowa/log.txt

データ編集
http://members.tripod.co.jp/hakagitac/

感想スレ(外部リンク)
http://green.jbbs.net/movie/bbs/read.cgi?BBS=568&KEY=990888426
突っ込んだ議論、NG処理、アナザー没ネタ等にお願いします。
感想はなるべく本スレでお願いします。
そして、絶対にNG議論は本スレで行わないように。

2 :111[前々+前スレ]:2001/05/27(日) 16:31
新スレおめでとう。
心機一転頑張ろう。

3 :水瀬親子マーダー化計画(w作者:2001/05/27(日) 16:32
新スレおめでとうございます。
早速書きこまさせていただきます。

4 :水瀬親子マーダー化計画(w 8:2001/05/27(日) 16:33
「あなたを・・・殺すためなら・・・死んだっていい・・・けどっ・・・私、死ぬ訳にはいかないんです!!」
秋子はもう一度郁未の顔を見直した。
「怪我している友人がいるんです、まだ会っていない友人がいるんです、会って確かめなきゃいけない人がいるんですっ!!」
その顔は未だ醜く歪んでいたけれど、瞳には確かな強い理性の光があった。
「了承。」秋子は低くつぶやいて、体を沈め、郁未の体が前につんのめるように引っ張った。巴なげだ。
「・・・!?」
投げ飛ばされる郁未、けれど手斧は手放すことなく慌てて立ち上がる。
だが、秋子はその間に郁未から距離を取っていた。
「了承しました。確かに私もここで死ぬ訳にはいきません。」
秋子は名雪の方へ視線を走らせる。
息はしている。生きてはいる。
だが、その傷が重傷か軽傷かは分からない。
「だからここは私もひきましょう。」
秋子は吐き出すように言う。もはやその顔から微笑みなどとうの昔に消えている。
「自己紹介をしておきましょう。私は水瀬秋子、この名雪の母親です。」
郁未を睨んだまま秋子はさらに続けた。
「今は、私は私のなすべき事を、あなたはあなたのなすべき事を・・・
私は、これからどんなことをしても生き残ります。そうして、もしもう一度互いが再び出会えたならば、その時」
一度区切ってそして、
「決着をつけましょう。」
そう言う秋子に郁未は軽くうなずいて、
十分な距離を取るまで後ずさり、
自分の荷物をつかんで、木立の中へ消えた。


5 :マナー(゜д゜):2001/05/27(日) 16:34
1000を待たずして新スレ移行を余儀なくされるハカロワの勢いよ。
新スレおめでとう、そしてこれからも期待。

6 :水瀬親子マーダー化計画(w 9:2001/05/27(日) 16:35
繭は木立の中を闇雲に走る。
そのスピードは彼女にしてははやいほうだ。
彼女は泣いていない。でもそれは真琴がくれた勇気のおかげではなく、
絶対的な恐怖、涙すら凍る恐怖、そのせいだ。
あの時繭は、手斧と小太刀のぶつかる音で金縛りがとけて、
荷物を引っつかんで一目散に逃げ出した。
そして、今も走っている。
恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い・・・
後ろから何か追ってきそうで、前に何か待ち伏せしてそうで。
繭は今始めてこの島がどんなところかを理解した。
恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い・・・
繭の小さなからだを占めているのはそんな思いだけで、
そんな繭が、あの時つかんだバックが郁未のものだなんて事に気づくはず、なかった。

【椎名繭 郁未のバック(きのこ等がはいっている)拾得、自分のバックはない】
【天沢郁未 繭のバック(花火セット等が入っている)拾得、自分のバックはない、手斧は回収】
【水瀬秋子、名雪合流。名雪の怪我の度合いは不明。秋子の小太刀破損。】


7 :水瀬親子マーダー化計画(w:2001/05/27(日) 16:39
書きこまさせていただきました。
名雪の怪我が生死にかかわるものなのか、
繭がきのこを食べるのか等は
次の書き手さんに任せます。
あと、未夜子を殺したのは千鶴であることを、秋子さんが知っているか否かはわからなかったので、
その点はぼかして書きました。

8 :111[前々+前スレ]:2001/05/27(日) 16:42
あ、マナーさん復活だぁw
そろそろ少年動かしますよ(謎)

9 :反転(1):2001/05/27(日) 17:05
 緊張感は、長くも続くはずはなく――

「みゅーっ、おなかすいた……」

 林の中で座り込み、繭はぼやいた。
 幼い精神構造をしている繭にとって一時の感情というものは長く続かなかった。
 新たに押し寄せた空腹感、それに、恐怖が負けていた。
「みゅーっ……」
 困り果て、鞄の中を探る。
 中に五つのキノコが入っていた。
「……うー」
 先程までの自分の鞄に、こんなものが入っていたのか?
 そんなことはどうでもよく、キノコをこのまま食べるかどうか、悩んでいた。
「…………」
 しばらく、キノコとにらめっこ。
 やがて、意を決したようにキノコを手にとり――
「ぱく」
 口の中へ放り込んだ。

10 :反転(2):2001/05/27(日) 17:06
「さて……これからどうしようかしら」
 繭はひとりごちた。
 その声に、先程までの幼さは、全くない。
(とりあえず、この馬鹿馬鹿しいゲームから、生きて帰らないと。
 でも、そのために人を殺すなんて……最低ね。
 何人かで集まれば行動のとりようがあるかもしれないけど。
 見ず知らずの人間を信じるほど、甘くもなれないしね。
 浩平さんや瑞佳さん七瀬さん。確か見覚えがある。
 探そう、この人達を。
 それ以外の人には、絶対に見つからないように行動しましょう。
 私には、武器がないのだから――)
 数秒で今後の方向性を決める。
 そんな自分の思考に違和感を感じることは、なかった。
 続いて周囲の木々を見渡し、そのうちの一つに近付いた。
(こっち側だけに苔が生えている……ということは、太陽の当たらない北はこっち……)
 方角を特定し、木々の間から覗く太陽を見た。
(この季節でこの太陽高度。
 時刻は3〜4時ってところかしら)
 ある程度の目安をつける。この間、わずか10秒。
 荷物から地図を取り出し、林の場所と島の位置関係を頭にたたきこむ。
(さ、そろそろ行こうかしら。
 浩平さん達、無事だといいけど)
 現在位置と時刻を特定してから、荷物を持って立ち上がった。

(それにしても……私ってこんなキャラじゃなかったわよね。
 このキノコを食べたから? そうとしか思えないけど、非現実的すぎるわよ。
 とにかく、効果が切れることもあり得るから、大事にとっておかないとね)

【セイカクハンテンダケ 残り4つ】
【繭 性格反転】

11 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 17:07
例え安直だろうが何だろうが、このネタはやらなきゃ嘘だと思う。
これは『反転』じゃねぇだろってツッコミもあるでしょうけど、許して。

12 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 17:13
ゲッツ!良。
クレバーな繭モエー。

13 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 17:14
>>10
俺もこんな感じの浮かんだけど、ここまでしっかり書きこめ無かったよ
悔しいけど賞賛。

14 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 17:18
浩平達と合流した時の反応が楽しみだ
なにげにキノコ残ってるし(ワラ

15 :傀儡は踊る(1):2001/05/27(日) 17:32
(なんて、無様な!)
孤影が駆け抜ける。速い。
少し近づけばそれが、長身の女性だと判る。手には散弾銃。
更に近づけば、冷たい美貌を苦悩のために歪ませているのが判る。

彼女の名は篠塚弥生(047)。
彼女は常に人生を己の力で-----わずかに例外もあるが-----切り開いてきた。
素質もあったろうが、そのための努力は惜しまなかった。
高度な知性も、運動能力も、克己心なくしてここまで鍛え上げられはしなかっただろう。
それが今では、下らぬゲームのために利用されている。猟犬として。
他人はドーベルマンのようだと言うかもしれない。
だが彼女は、狼でありたかったのだ。首輪も、檻も必要ないのだ。

しかし今、彼女はあえて首輪をはめている。
(9人、殺す)
罪を犯すのは怖くない、今までだって日向を歩いてきたわけではない。
自らの夢のために。あえて私は傀儡となった。


16 :傀儡は踊る(2):2001/05/27(日) 17:32
『あ、来た来た、やっと戻ってきたわよあのアホ』
少女の声に足を止める。
木陰に身を隠し声のほうを見ると、そこには二人の少女が立っていた。
手前の1人は本を、奥の1人はタライ(?)を携えて道の奥を見ている。
視線の先、はなれた所に少年。銃を持っているようだ。

目を瞑り、大きく息を吸いシナリオを考える。
今ここで少女たちを始末するのは簡単だ。
しかしそれ以上を狙えば次弾装填の間に、少年に撃たれるだろう。
できればここで、3人殺しておきたい。
ならば少女2人を殴りつけた隙に少年を撃つ。これはどうか。
手前の少女を後から蹴りつけ、奥の少女もろとも転倒させる。
少年にとっては少女達の背後から起こる出来事だから感知されにくいだろう。
少女達は少年のあとで始末すれば済む。

ゆっくりと息を吐き、再び大きく吸い-----息を止める。目を開く。
不確定様子は多いが、迷いはない。
自分を信じて行くのみだ。
(-----よし!)
弥生は飛び出した。一個の殺人機械として。



17 :傀儡は踊る(3):2001/05/27(日) 17:34
(くそう、高槻め!)
泥だらけになりながら獣道を行く黒い影。
ここに来て何度思ったか知れぬ台詞をこころの中で繰り返す。
高槻の放送により槍玉に挙げられ、全員に狙われる獲物として怯え、殺し、
騙し続けて今を生きている。

この憐れな男の名は巳間良祐(093)。
彼は教団に身を投じ、熱心な信徒として、優秀な研究者として貢献した。
過去を捨て、家族を捨て、我が身も捨てて教団のために働いた。
それが今では、ゲームの駒。主催者の、高槻の傀儡。

(高槻、俺の事がそんなに気に食わなかったのか?)
総じて高槻以上のポテンシャルを示しつづけてきた良祐だが、教団の覚えは
さほどめでたくない。高槻ほど世渡りが上手くなかったのだろう。
(それなら、お互い様だよな?)
薄く笑う。自分はこんな笑いをする人間だったか?
いや、晴香と一緒に笑っていた頃は-----どうだったろう?
(もう、忘れたか…)
とにかく、今は生き残る事だ。そのためには殺すことを躊躇わない。
どうせ皆、自分を殺しに来る。殺し殺して、高槻をも殺す。それでいい。


18 :傀儡は踊る(4):2001/05/27(日) 17:36
良祐は様々な可能性を考慮した。
まず危険なのは銃を所持する者だ。自分の銃を見つめながら考える。
これがなければ、今までだって一人も殺せなかっただろう。
それから、能力者。そして訓練を受けた者。これらの者達と正面から戦うのは
不味い。なるべく不意打ちやだまし討ち、もしくは混乱に乗じて殺すように計画
しなければ危うい。

ズドン!!
銃声。大きく、近い。重ねて悲鳴が上がったような気もする。
『ふざけんじゃないわよオバサン!』
ドスの聞いた声が聞こえる。どうやらこのまま進むと林道に出るようだ。
少年が倒れている。離れたところに銃。

これは、チャンスだろうか?上手く立ち回れば多くの危険要素を排除できる。
銃が手に入るのは見逃せない。
(落ち着け、そして間違うなよ、良祐)
自分にそういい聞かせ、握った拳銃を隠しながら良祐は林道へ踊り出た。

運命の悪戯か2人の傀儡は、ほぼ時を同じくして浩平たちに襲いかかったのだ。

19 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜前哨〜1:2001/05/27(日) 17:37
「そう浮かない顔をするものじゃない」
え、と詩子は振り向いた。
気持ちを切り替えた、と自分では思っていた。
でも表情までは上手く切り替わってなかったみたい。
「確かに友達が人を殺した、なんて言われたら落ち込むのも分かる。
 だけど意味が無い生が無ければ、意味がない死もまた無い。
 常に人間は何かを犠牲にして生きているものさ。
 それが今のようにより分かりやすい形になっただけ。
 傷ついているのは君や被害者だけじゃない。
 傷つけた方だってそうなんだ。
 だから君がそんな表情をしていれば、
 その子が戻ってきたとききっと悲しむ。
 その子が傷ついていたのなら、君はそれを癒してあげなきゃいけない」
笑顔で少年は言った。
どうしてこの少年はこうも自分の気持ちを見透かしたように、
心の奥底に響くセリフを言えるんだろう?
「そう……、だよね。相沢君だけじゃない、私だって茜のこと大好きだもの……。
 茜が戦ってるって言うなら、私たちで茜が帰って来れる場所を作ってあげなきゃ」
詩子は笑った。
私には茜の全部が全部分かる訳じゃないし、この少年ほど色んなことを考えているよう
にも思えない。
……当然、人を殺したことだって無い。
でもそんな自分にも出来ることがあるなら。
私は頑張れる、そんな気がする。

相沢祐一と別れてすぐの、二入の会話だった――。


20 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜前哨〜2:2001/05/27(日) 17:38

「ねぇ……、ちょっと気になったんだけどさ」
「なんだい?」
「何であなた鞄二つもあるの?」
歩きながらの詩子の質問に、思わず少年はきょとんとした。
「ああ……、落ちてたのを拾ってきたんだよ。
 誰も使ってないのなら僕が使ってもいいかなぁって」
少年は苦笑して言った。
だが彼はわざと嘘をついた。
それは今の詩子に無駄な負担をかけたくなかったから。
形見なんて重いものを持ってると思わせたくなかったから。
たまたま生き残っていてまだ人を殺めるという咎を犯していない、
素性も名前も不明な上に変な格好をした奴で、
でも側においておくとなんだか安心できるような……、
そんな感じを保ちたかったから。
偽善と言われれば返す言葉も無い、
だけどそれもまた少年の優しさの一つの形だった。
「そうなんだ、もったいないことをする人もいたんだね……」
詩子は素直にそう言った。
「だったらさぁ、二個も鞄持ってる必要ないんじゃないの?」
「え、そうかな?」
「どうせ中身はほとんど一緒なんでしょ。そんなにかさばるわけでもないし、
 だったら、一つの鞄に全部詰め込んじゃおうよ」
詩子の提案は至極もっともなものだった。
でもね。
少年は心の中で苦笑しつつ付け加える。
ボクはまだ、二つとも鞄を開けてないんだよ……、と。
「ねぇ、やっとこうよ。私も手伝ってあげるからさぁ」
詩子はうきうきした様子で鞄に手を伸ばす。
なんだ、君がやりたかったんじゃないか。
心の中のみならず少年は苦笑した。

21 :名無したちの挽歌:2001/05/27(日) 17:39
>>15>>16>>17>>18
 とりあえずここまで。
 続きもだいたい出来てますが、切りのいいところで。

別視点・同時間の別勢力同時戦闘を書いてみたいのです。

22 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜前哨〜3:2001/05/27(日) 17:40
少し汚れていて、少し重い。
そんな鞄を見ていて少年は思った。
……どっちがもともとのボクの鞄だ?
「え〜とこれは水ね。でこれが食料……、ってちょっと、あなた何も口つけてない
 じゃない、一日飲まず食わずで歩いてたの!?」
少年の葛藤など気付きもしない詩子は、手近にあった鞄の中身を出しつつそう言った。
「あ……。いや、水分は補給したよ。水道とか見つけたから」
詩子のセリフに驚嘆……、というよりどうも非難の色が強いように思えた少年は、
とりあえず自分を弁護しておくことにした。
「ダメよ! 浩平君じゃないんだから二日も水だけで生活してたら死んじゃうんだから」浩平君?
知らない名前だった。
……いや、参加者名簿に名前があったか。
どちらにせよ、なかなかひどい扱いを受けているように思えるが。
少年は最近苦笑することが多いな、と思いつつもやはり苦笑していた。
「ん」
「あ……、うん」
詩子が突き出してきたパンを、少年は受け取った。
「食べてる間に、私が片付けておいてあげるから」
にっこり笑って、詩子はまた鞄とのにらめっこを始めた。
そんなにかさばるものは……。
「うわ、何これ!?」
詩子が大きい声をあげた。
……ボクの鞄の方を開けたか。
ちょっと少年は頭を抱えたくなった。
「お、重いよ」
詩子が両手で取り出したもの、それは厚い本のようなものだった。
「……君の力で扱う分にはね」
嘆息して少年は言った。
「これ……、本なの?」
「まあ……、一応ね」
詩子はそれを少年に渡そうとした。
少年はそれを片手で軽く受け取る。
「……かつて教典と言われたものを模した、即ち”偽典”という奴さ」
ぱらぱらと本のページをめくりながら、詩子に向けたにしてはやや小さすぎる声で少年は呟いた。
「な……、なんだかよく分からないんだけど、それって凄いの?」
驚き混じりに詩子が言う。
「……別に内容に価値なんか無い、だけど」
パタン、とページをめくるてを止め、本を閉じた。
「これが、ボクの武器さ」
少し誇らしげに少年は言った。



23 :111[前々+前スレ]:2001/05/27(日) 17:43
……なんだか張ろうとしたときにかぎって重なるもんだな。
まあいいけど。
んで奇しくも私も>>21での名無したちの挽歌氏と
同じようなことを考えてたりしますw
……こ、これで内容まで被ったらどうするんだ俺(汗)

24 :剣風(1):2001/05/27(日) 19:13
「あ、来た来た、やっと戻ってきたわよあのアホ」
辛辣な口ぶりとは裏腹に大きく手を振る七瀬。
「もう、そんなこと言うとまた喧嘩になるよ〜」
苦笑を浮かべ共に浩平を迎える瑞佳。

この劣悪な環境下においても。
3人寄れば心強く、そして平和な日々と変わらず生きていける。
そんな七瀬と瑞佳の前に。否、背後から災いは襲いかかってきたのだ。

「きゃあっ!」
「ぅわっ!」
無防備に立っていたところを、腰に強烈な蹴りをくらい吹き飛ばされる瑞佳。
巻き込まれる七瀬。
ズドン!!
そして銃声。
何が起こったかわからない。しかし、そこにいる人物は危険だ。
七瀬は瑞佳に巻き込まれ倒れながらも、その人物を視認していた。女。
あの大きな銃を撃った!?折原は無事!?

心配する余裕はなかった。
撃つなり女は銃を振り上げ-----叩きつける気だ!
「ふざけんじゃないわよオバサン!」
咄嗟に手にあったタライを投げつけ、混乱と痛みで行動不能に陥っている瑞佳を
どけて転がる。
手近な枝を拾い、素早く立ち上がる。
女は弾を装填している。今、戦わねば全員死んでしまう!


25 :剣風(2):2001/05/27(日) 19:14

間合いは三歩。
そう、今なら「間に合う」。
七瀬は現在の乙女チックな外見に扮する以前は剣道をやっていた。故障がなければ
未だトップクラスだろう。この間合いなら普通の人間に負ける事はない、はずだ。

「せやッ」
鋭く踏み込み顔面にフェイントをかけて脇腹を痛打する。
計算外の反撃に女は顔を歪ませる。
しかし、装填は完了している。引き金を引かせちゃいけない。
休んじゃいけない。休めない。
浩平が来るまで-----浩平が無事なら、だけど-----休まない。
手打ちで構わない、とにかく早く打ち込む。
しかし女は銃身で受け止め、かわし、時折打ち込んでさえくる。
この距離ならば私が優勢。けれど一度離れれば御仕舞い。

私は、この女に勝てるのかしら?
ブランクが七瀬を弱気にする。
「う、ううーん」
背後で瑞佳の声がする。
そうだ、少なくとも瑞佳だけでも逃がさないと。
折原は何をして、いやそもそも無事なの?
ガキン、と音を立てて枝と銃身が交差する。互いにぐぐっと力をこめる。
「瑞佳!折原のところへ走って!」
振り向かずに、視線は女のほうに向けたまま叫ぶ。
「な、七瀬さん!」
「早く!早くあのバカ呼んできて!」
いつもだったら呼ばないでも現れて、おせっかいかますあのバカ。
今、乙女のピンチに現れないで、どうするって言うのよ?

「う、うん!」
瑞佳の走り去る音がする。
-----これって、また貧乏くじ引いてるのかしら?
七瀬は今更のように、そう思った。
でも、構わない。アタシだけ生き残っても、それでどうするっていうのよ?

26 :名無したちの挽歌:2001/05/27(日) 19:19
>>24>>25
 七瀬vs弥生です。
 昔、七瀬が剣道やってたという設定を生かしてみました。

 飛び道具で勝負する話が多いので、たまには高度な接近戦も
 書いてみよう、とか。

27 :さよならは別れの言葉(1):2001/05/27(日) 19:28

林道を小走りに進む折原。
迎える長森と七瀬が手を振っている。

仲間が増えた。しかも強そうだし、先行きの展望もある。
助かる可能性が増えたというものだ。
行く手で2人が手を振っている。
俺はあの2人を守る、そう心に決めてどれほどの時間が経っただろう。
きっと3人揃って、帰れるさ-----そう確信していた。

2人が、倒れるまでは。

突然長森が前のめりに倒れこみ、七瀬を下敷きにする。
後に女が立っていて-----銃口がこちらを向いていた。
(マジか!?)
咄嗟に左へ跳び、銃弾をかわそうとしたが。
バラバラと右手を中心に弾が食い込む。散弾だった。
「ぐあっ!」
鮮血を振り撒き、銃を取り落とし、浩平は倒れた。
(く、くそったれ…!)

打撃音が遠く聞こえる。誰かが戦っているのだろうか?
撃たれ、混乱し、体が上手く動かない。耳がいかれているのか。
だが、今立たねば。そうだ、長森が、七瀬が、危ない!
落とした拳銃に目をやる。こいつがあれば、みんな助かる。
しかし。希望を絶つかのように何者かが拳銃を踏み抑える。
「!?」

28 :さよならは別れの言葉(2):2001/05/27(日) 19:29
黒いコートの男が立っていた。なんだって管理側の人間が邪魔しやがる?
怒りが浩平に力を与えた。一息で立ち上がり無事な左手で胸倉を掴む。
「てめえ、何しやがる!?」
男は意外そうな顔をしたが、余裕を見せて言う。
「ふむ。生きていたのか」
「何だと!?」
興奮する浩平を現実に引き戻すようにカチリ、と金属音が響いた。
コートの下に拳銃。これは、よけられない。
「それじゃあ、これでさよならだ」
額に汗が、右手に血が、つうっと滴り。
顎と、指先から、ぽとりと垂れ落ちた。

そのとき声がした。
「浩平ー!」
コートの男が動揺する。慌てて長森のほうを見る。一瞬の隙。
「こんの野郎!」
被弾した右手で力任せに殴りつける。
コートの男を吹き飛ばし転倒させるが自分も痛みに怯む。
それでもどうにか拳銃を拾う。
「浩平!七瀬さんが、七瀬さんが!」
駆け寄る瑞佳は明らかに混乱していた。
「来るな長森!こいつは銃を持っている!」
浩平は長森を制して叫ぶ。狙いが遅れる。
ドドン!!
倒れたまま男が発砲し、遅れて浩平も発砲する。

この距離ならば。
外れるわけは、ない。

29 :さよならは別れの言葉(3):2001/05/27(日) 19:30
(最悪ね…)
七瀬は徐々に受けに回っていた。
そもそも枝は太く、握りにくいため握力を消費する。
銃撃のプレッシャーに怯えながらの戦いは精神を消耗する。
乙女生活によるブランクはスタミナを奪っていた。
そして何より、古傷が痛み始めていたのだ。

もしここで、間合いを離されたら。
もう、飛び込めない。
般若のような形相で攻め込み始める女の打撃をどうにかそらしながら七瀬は
焦りを隠して応戦する。

ガシン!
何度目かの鍔迫り合い。だが、今までのようには力が入らない。
押し込まれ七瀬は苦痛に顔を歪める。そのとき。
ドドン!
重なる銃声が届く。ついに七瀬の集中が切れた。
「折原!?」
叫ぶ七瀬に女の脚が上がる。左脇に蹴りが入り、女が後に飛ぶ。
ついに、間合いが離れた。
「貴女を評価しなかったのは私の失策でした」
そう言いながら、女は息を整え散弾銃を構える。
「でも、これでお別れです」
負けた-----肩で息をしながら、腕を下ろす。もう、動けない。
「オバサン、なんでアタシを殺すのよ」
今更尋ねても、どうにもならないけれど。なんとなく口にした。
しかし女は意外なほど真剣に考え、答えた。
「大切な人の-----2人の、幸せのために」
ちょっと驚いた。七瀬は諦めの苦笑交じりに呟く。
「なによ、それじゃあアタシと同じじゃない」
今度は女が驚いた。異常なほど、驚いていた。

30 :さよならは別れの言葉(4):2001/05/27(日) 19:31
「七瀬ええええ!」
ドン!ドン!
その虚をつく形で折原の声、そして銃撃。
今だ!動け動け!動け身体!そう念じて踏み込み、小手を打つ!
「せいッ!」
バシン!
電光の速さで右手の甲を叩く。散弾銃が跳ね落ちる。
七瀬は即座に銃を蹴り飛ばし、緊張の過ぎた震える手で構え直す。

「くそおおおお!」
折原が叫び、泣いていた。何故泣くの?その意味は?
女が溜息混じりに言う。
「ほんとうに、失策でした」
今度こそ、これ以上動けない。今でも女のほうが余裕がありそうだ。
頭が回らない。七瀬はただ答えた。
「そう、みたいね」
その言葉の、何が面白かったのか女は小さく笑い身を翻し去っていく。
「さようなら」
「アタシは二度と、遭いたくないわ」
七瀬は、枝を取り落とした。

31 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 19:41
>>303
(4)で終わりっすか?
早く,続きを

32 :名無したちの挽歌:2001/05/27(日) 19:44
>>27>>28>>29>>30
 連カキコでスンマソン
 引き続き七瀬vs弥生と浩平vs良祐です。

 弥生が良祐、七瀬に立場上リンクしている事を書きたかったわけですが
 長くなってしまいました。難しいのう…

 戦闘はココでひとまずおしまいデス。 

33 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 19:48
非常に良いが、オチがないぞ?

34 :その頃綾香は……:2001/05/27(日) 20:17
「………まいったわね……」

――あとで山を降りたところで落ち合いましょう!! 絶対来るのよ!――

自分の言葉を思い出し、それを強く信じる。
だが、いつまでたっても彼女達は来ない。
「今ごろ何やってるのかしら……」
最悪の結果を考えないようにしながら綾香はひとりごちる。

山のふもとのそれほど深くない洞穴……
危険を避けるために、芹香達を探す時外に出る以外はここに隠れ潜んでいた。
「この島にまだこんな所が在ったなんて……まあ、感謝しなきゃならないのかしら?」
綾香の足元に倒れたまま動かない一人の女の子。
仲間と散り散りになった際、綾香はリアンだけを連れてここまでやってきた。
リアンの容態は、正直よくない。
それほど深くないはずの傷だったが、少しずつ傷口の周りが変色すると共に、
生きているのが不思議なくらいの高熱に見舞われていた。
「毒でも――塗られていた……!?」
綾香は残り少ない飲料水を手持ちのハンカチに染み込ませる。
南の手裏剣を思い出す。
今確かめる術はないが、それならば今のリアンの症状も合点がいく。
たっぷりと水を含ませたハンカチでリアンの汗を拭き取り、そのまま額にそれを乗せる。
「そうだとしたらどんな毒なのかしら……」
見よう見まねだが、リアンの腕の傷口から上を、手ごろな布できつく縛る。
――手ごろな布…そんなものが洞穴にあるはずもないので、
綾香のスカートを破りとっただけの代物だ。結構丈夫なのが救いか――
「解毒剤……そんなものが都合よくあるはずもないか……。
私、なんて無力なんだろう…こんなとき格闘技なんてなんの役にも立たないじゃない…
スフィー、舞さん達…そして姉さん、早く来て……!!」
葵は、もういない。綾香の絶望と不安は既に頂点に達していた。

綾香はまだ知らない。舞が、そして佐祐理がもうこの世にいないということを。

35 :最後のことば(1):2001/05/27(日) 20:33
「おおおおおお!」
号泣が、聞こえる。

七瀬は痛む腰を抑え、のろのろと散弾銃を拾った。
このゲームの現実を今になって体感した。
振り向けば。浩平が地を叩いている。
涙を流していた。

号泣が、聞こえる。

その奥に黒いコートの男と、長森瑞佳が…倒れていた。
視界が暗転する。ぎりりと奥歯をかみ締める。
涙が溢れていた。

号泣が、聞こえる。

二人の目が合う。
七瀬は膝の痙攣を無視して大股に浩平に歩み寄り、引き摺り上げる。
そして胸倉を掴み叫んだ。
七瀬は知らないが、ちょうど浩平がコートの男にしたように。
「何やってんのよ、このバカッ!!」

「ななせぇ…ながもりが、長森が…俺を、俺をかばって…!」
「うるさいッ!泣くな!聞きたくない!」
手を離し、浩平をひっぱたく七瀬。
その七瀬も、ぐしゃぐしゃに泣いていた。
「バカッ!バカッ!」
何度も何度も、ひっぱたいた。
やがて浩平は膝をつき、七瀬に抱きついて、泣いた。
七瀬も浩平の顔を抱いて、泣いた。

号泣が、聞こえる。

36 :最後のことば(2):2001/05/27(日) 20:34
「こう、へい…?」
2人はぴたりと泣き止む。
「長森!?」
「瑞佳!?」
微かな希望に駆け寄るが…同時に歩みを止める。

血を吐いていた。目に光がない。
これは助からない、そう思った。

「こう、へい?」
「お、おう」
「いつも、いつも、ありがと…ね
 待っててくれたとき、うれし、かった…よ」」
「なんだよ、それ」
「もう、駄目、みたい、だから…さ」
「何言ってるんだよ、ばか
 お前がいなくなったら、毎日遅刻しちまうじゃねえか」
「だいじょぶ、だよ
 ななせさん、が、いる…もん」

七瀬が息を飲む。
「ね…?だいじょぶ、だよ、ね?」
「瑞佳が大丈夫なら、大丈夫、だよ…」
「そうだぞ、コイツには無理に決まってるだろ、このばか」
「ええ、ずるいよ、そん、なの」

ごぽ、と音を立てて血を吐く。
「長森!」
「瑞佳!」

呼吸が浅くなっていく。
「ね、こうへい?」
「お、おう」

血が、止まらない。
「大好き、だよ?」
「おう、おう」

そして、最後に。
「-----ぎゅって、して…」


37 :名無したちの挽歌:2001/05/27(日) 20:37
>>35>>36
 【093巳間良祐死亡】
 【065長森瑞佳死亡】
 浩平の拳銃は弾切れですが良祐のものに持ち替えるでしょう。
 七瀬は弥生の散弾銃を手に入れますが残段は一発です。

 つーわけで殺しちゃいました。
 良祐君には申し訳ないのですが、長森と同時に死ぬとこういう扱いに
 せざるを得なかったです。
 良祐が逃げられる程度の危機であれば浩平も長森も無事でしょうから。

38 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 20:41
残り51人 かな

しかし、キタねぇ。
うん、いいよ。
farewell words

もう少し描写を書き込めれば、なおいいと思う。

39 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 20:51
>>38
描写をあえて書かないことで(・∀・)イイ!効果がでたような気がするんだけど、
俺だけかな?

40 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜漸行〜1:2001/05/27(日) 20:56
ざわつく……。
木々が、風が、空が。
これは闘いの前奏とも言うべき戦慄だ。
それを、いつの頃からか僕は知っていた。


ふたりはその場に座って、少しの休息とも言える時間を過ごしていた。
「え〜、これが武器なの?」
「そうさ、まあもっとも、これで直接人を傷つけるには……、
 角のところで思いっきりぶん殴るくらいしかないかもしれないけどね」
少年は”本”を持ったまま、さっき手渡されたパンを口に入れた。
「む」
詩子は少年の行動を見て、自分が何をしていたのか思い出したようだ。
いそいそと鞄の整理に戻る。
「じゃあ、こっちの鞄に入れるよ〜」
「あ〜、うん。ありがとう」
詩子はその返事を聞いてから、もう一つの鞄に手を伸ばした。
「こっちの方もなんだか空だね……、あら?」
詩子が鞄の奥底に何か見つけたようだ。
「これは……写真かな、ほら」
詩子は薄い紙切れのようなものを差し出した。
なるほど、確かに表面処理がされてるようで写真には違いない。
少年は手に持っていたパンを全部口に入れて、空いた手でその写真を受け取った。
これは――。


41 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜漸行〜2:2001/05/27(日) 20:57

何か……、建物が写っている。
やけに巨大で、それでいて鋭角的に聳え立っている。
その建物をバックに。数名の人間が集まっている。
さしずめこれは記念写真なのだろうか?
全員見たことの無い顔――いや、一人を除いてか――だった。
真ん中には少し背の高めの青年と、小さな少女――郁美ちゃん――が
寄り添って立っている。
瞳に強い輝きを秘めた、何かを成し遂げた男の目だった。
それを取り囲むように、ポニーテールの女の子が、緑髪でギザギザメガネ、少し危険な
笑みを浮かべた青年の横に、複雑そうな表情で立っている。
その隣では、なにやらゲームか何かの格好をした女の子が、エプロン姿の小さい女の子とメガネにデニムの服を着た女の子と楽しそうに笑い合っている。
そうかと思えば反対の方では、なにやらちょっと豪勢なコートを着た女の子と、
赤い上着にメガネ、なおかつハリセンまで装備した女の子が、おとなしげに佇んでいる
もう一人の女の子をはさんで、激しく言い争っている。
脇ではやたら体格がいい学ランを着た男と、穏やかに微笑んでいるなんだか……
インカムやら一揃えの制服のようなものを着た女性が立っていた。

200X年X月X日 こみっくパーティーにて


42 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜漸行〜3:2001/05/27(日) 20:57
「……何かのイベントの後みたいだね」
横から写真を覗き込んでいた詩子がそう言った。
「そのようだね……」
「へえ、なんだか皆楽しそうだね」
本当にそうだった。
すこし揉みくちゃにされてはいたが、その写真からはなんだか溢れんばかりのパワーを
感じた。
そう。まるでいても立ってもいられないほどに。
この写真の彼らは今を全力で生きていたのがよく分かる。

在りし日の……、姿とでも言うのか。
少年は涙が出そうになる自分を、一生懸命堪えた。
「どうしたの?」
詩子は、今度は少年の顔を覗き込んでいた。
「…………いや」
少年はあさっての方向を向いて言った。
「ちょっと……、まぶしかっただけさ」
「?」
詩子は不思議そうな顔をした。
生きることは……、こんなにも輝いていたんだな。

……、

…………、

……………………。

!?

少年は急に振り返った。

43 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜漸行〜4:2001/05/27(日) 20:58
「え……、何? どうしたの?」
荷物を詰め終わった詩子が言った。
「今……、銃声が聞こえなかったかい……」
詩子のほうを振り向きもせずに少年は言った。
「私にはぜんぜん聞こえなかったけど……、聞こえたの?」
「…………」
少年は応えない。
ごくん。
生唾を飲み込む音。
はたしてそれは少年のものだったか、それとも少女のものだったか。
「……いってくる」
「え?」
少年は本を片手に立ち上がった。
「君は……、ここで待っていろ。もし誰か来たのを感じたらたとえだれが来ても
 すぐに逃げるんだ」
整理された鞄を持って、少年は道の向こうへと行こうとする。
「ま、待ってよ」
詩子もいそいそと立ち上がった。
「ダメだ、来ない方がいい。もし誰かが戦っていたら、それに巻き込まれる」
「で、でも」
「ここなら見通しもいいし、君の足ならたとえ誰が襲ってきても逃げられる。
 だから……」
ドドン!
少年にだけ聞こえた、遠くの銃声。
「……もどってくる、なんて甘いことは考えない方がよさそうだな」
少年は笑顔を崩した。
――ひどく、めずらしいことに思えた。
「君も行くんだ、君には大事な友達がいるんだろう?
 だったらこんなところでグズグズしてちゃいけない」
詩子は、ぼーっとしたようすでその場に立っている。
「ありがとう、君に会えてよかった。縁が合ったらまた会おう」
少年はくるっと振り返り、そのまま走り去っていった。
「そ、そんな……」
詩子には、ただ呆然としていることしか出来なかった。



44 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 20:59
浩平の銃は長森の命を奪った銃でもあるんだよな。
彼の心中は如何に

45 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 21:01
>>39
好みによる。

46 :そら。:2001/05/27(日) 21:24
七瀬が泣くのを、オレに止める術はなかった。
そして、多分、オレは枯れた。

「瑞佳ぁ」
泣く七瀬も、目を閉じたままの瑞佳も、まるで夢の中の物語のようで。
もっというなら、この自分が巻き込まれた戦いも、すべてが幻想のようで。

非日常の中で、それでもなお、自分たちは日常の中にいるような、
そんな錯覚をしていたから。

だから、本当の非日常と出会い、オレ達はやっと、日常から抜け出す事になったのだ。

――護れなかった、な。

何があっても護るって決めていた。
銃だって撃つ、人だって殺す。
実際、オレは殺した。
長森の横で血を流し倒れている、黒いコートの男を。

けれど、それは。

長森を護るために殺したのに。

長森は、もういない。

それどころか、長森を護るどころか。

オレは、長森を――

「折原ぁっ……」
七瀬が、赤い眼でこちらを見た。何かを言いたそうに。
責めて欲しかった。約束を守れなかったオレを。
一番護りたかったお前達を、結局、結局――
「……畜生っ」

ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、
ごめん、長森。
護れなかった。護れなかった。
約束したのに――護ってみせるって。
また、涙が。
枯れるほど流した涙が、また。
――思い出されるのは、長森の笑顔だけ。
だから、一層哀しい。
「折原ぁ……イヤだよ、何で、あたし達……」

――こんなところにいるの?

47 :そら。:2001/05/27(日) 21:24
永遠なんてなかった。
そんな事はずっと昔から知っていた。
けれど、終わりがこんな形で訪れるなんて、想像もしていなかった。

「もう、イヤだ」
七瀬が呟いた。
「どうして? どうしてあたし達は、ねえ、何してるの?」
焦点の合っていない目で。ぶるぶると唇を振るわせて。
「何で、瑞佳、倒れてるの?」
オレを見上げて。
「折原ぁ」

次の瞬間。――
「えへへ、馬鹿げてるよね」
夢みてる。折原と二人きりの夢見てるよ。
あたし、こんな夢見るの初めてだよ。
瑞佳殺しちゃったのは罪悪感でいっぱいだけど、

「何、言ってるんだよ、七瀬」

「あはは、折原が夢の中なのに、折角の二人きりなのに泣いてるよ」
七瀬は、心底愉快そうに笑う。
まったく、焦点の合っていない目で。
「七瀬っ!」
「大声出さないでよ、夢の中でまでさ、折原ってば」
呆然とした顔でオレが見つめるのを、七瀬は楽しげな顔で笑った。
ロマンチックね、これこそ乙女の夢にふさわしいわ。

オレは、確信した。
七瀬は、多分、壊れた。

――永遠がないのなら、

すべて、いつか壊れていくもの。

長森が壊れたのと同じように、七瀬も壊れた。

48 :そら。:2001/05/27(日) 21:24
オレは、七瀬を抱きしめた。
「本当、最高の夢ね。折原が抱きしめてくれるなんて」
馬鹿。
オレは、歯軋りしながら、そう呟いた。
オレは護れなかった。
長森も七瀬も。
何のために一緒に行動してたんだよ――。

意識が虚ろになっていくのを実感する。
失血のためか。――そして実感する。死が、遠くないところに来ている事を。
目を閉じれば、楽になるだろうか。
永遠の世界に、行けるだろうか。

まだ。

まだだ。まだ、目を閉じてはいけない。
オレは右腕の傷口を抉った――走る激痛で、なんとか目は覚めた。

「七瀬。――行こう」
オレは立ち上がった。オレが立たないでいたらどうなると言うんだろう。
右腕に走る激痛、流れる血は、たぶん、どうしようもない。
多分、オレも長くない。
オレの身体も、精神も、いつ壊れるか判らない。
けれど、七瀬だけでも護りたい。

誰か、知り合いに会えば。
七瀬を護れる、知り合いに会えば――
誰でも良い。――オレが倒れる前に。

へたり込んでいる七瀬に、オレは手を伸ばした。


49 :そら。:2001/05/27(日) 21:28
付け忘れ。
【折原浩平 七瀬留美……移動開始】
[所持品 良祐の銃・弥生の散弾銃・長森の武器リスト]

50 :アユー(゜д゜):2001/05/27(日) 21:31
 おにぎりを平らげ、指についたご飯粒を丁寧になめ取ると、あゆは幸せそうに笑って礼を言った。
「ごちそうさまでしたっ! ありがとう、美味しかったよ、梓さん」
「おそまつさま。腹空かしてるのくらい不幸なことってないからね。食べられる時に食べとかないと」
 おにぎりくらいでこんなに嬉しそうな顔をされるのも照れるな、と梓は思った。
 でも、悪くない。梓にとって、料理は食べた相手に喜んでもらってこそのものだ。喜んでもらえれば、純粋に嬉しかった。
 と、つい今まで顔中ニコニコしていたあゆがふっと表情を翳らせた。
「あの、今日って何曜日かな?」
「曜日……? えっと、どうだったかしら?」
「えーっと」
 梓は反射的に腕時計を覗き込む。
「そうだ、時計はイカれてるんだった……確か、ここに連れて来られたのが昨日だから……火曜日、かな?」
「火曜日」
 小さく呟くと、あゆの口元がキュッと引き締まる。瞳にはっきりとした意志の光が宿る。
 そして、すっくと立ち上がった。
「一緒に、行こう」
「え?」
 意外な展開に、千鶴と梓は目を丸くした。あゆは唇を噛み締め、言葉を紡ぐ。
「聞いたよね、さっきの放送……あの人、死んじゃったんだよ……」
 名前も、姿も知らない少女。現状に警鐘を鳴らし、自分たちに進むべき道を与え、そして死んだ。
 あゆの言葉に、否が応にも耳に先ほどの爆発音が蘇る。あの音とともに、少女は死んだ。
「千鶴さん。あなたは、もう誰かを手にかけちゃったんだよね……仕方ないで済むことじゃないし、許されることでもないと思う。
 でも、それで長らえた命を無駄にするのは一番いけないことだよ。私たちがあの子の言葉を聞いたのは絶対に偶然じゃないもん。
 だから、一緒にこのゲームを終わらせようよ。一刻も早く、一人でも死んじゃう人が少なくなるように。
 そしたら――傲慢かもしれないけど、千鶴さんが命を奪った人たちも、きっと……このままでいるよりは、救われると思うんだ」
「…………」
 千鶴は視線を落とし、黙って自分の両の掌を見つめた。
 血で汚れた手。もう、同じく血を浴びた武器しか握れないと思っていた。
 この手で、ゲームの終わりを掴もうとすることは、許されるのだろうか。
「梓さん」
 あゆはさらに続ける。

51 :アユー(゜д゜):2001/05/27(日) 21:31
「おにぎり、すっごく美味しかった。あんな美味しいんだもん、私たちだけで食べるなんてもったいないよ。
 だから……みんなにも食べさせてあげようよ。この島から出て、よかったね、って言ってる時にみんなで食べたら、きっともっと美味しいよ」
 私も手伝うからね、とあゆは照れくさそうに言った。
 梓は、知らず知らずのうちに耕一や妹たちのこと、そして今までにこの島で出会った人々のことを思い出していた。
 佳乃に襲い掛かっていた女医。その佳乃も、自分の首を締め、そのままどこかへ消えてしまった。
 今さらのように、このゲームの哀しさが痛いくらいに感じられた。この島にいるのは、今まで普通の生活を営んでいた一般人ばかりなのだ。
 それがどうして、お互い殺しあわなければならないのか。幾度となく自問自答した最も基本的な疑問に、またここでぶち当たる。
「時間が経てば、もっともっとたくさんの人が死んじゃう。だから、急いでこのゲームを終わらせなきゃいけないんだよ。
 一緒に……終わらせよう?」
 あゆが、二人に向かって手を差し伸べた。
 小さな、白い、綺麗な手。千鶴はチクリと心に突き刺さるものを感じた。
 梓に視線を送る。梓は、優しく――そう、普段はあまり見せることのない、とても優しい表情で――微笑んだ。
 そして、梓があゆの手を握る。
「千鶴さん」
 あゆが笑う。千鶴の手が、ゆっくりと重なった二人の手に近づいていく。
「えいっ!」
「きゃっ!?」
 あゆがいきなり手を伸ばし、千鶴の手を掴んだ。ギュッと、握り締める。
「うんっ! じゃ、行こうよ!」
「……ええ」
「わかった」
 三人は、足並みを揃え、歩き出す。
(殺めた命は、戻って来ない……なら、私は、私にできることを全て、やる。それが、せめてもの償い――)
 それぞれの想いを胸に秘めて。
(耕一……楓……初音……あんたたちをこのままにはしておかないから……だから、絶対に死なないで……)
 遠く霞むゴールに向け、歩き出す。
(うぐぅ、明日までに帰らないとシスプリのアニメ見逃しちゃうよぉっ! は、早く終わらせちゃわないと!)
 三人の想うところは少しずつ異なってはいたが、それでも心は一つだった。

52 :報告:2001/05/27(日) 22:00
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Spade/1168/index.htm

ここの「黒船」「一歩前へ」が、内容的に被ってしまいました。
妥協案として「黒船」から北川、レミィの描写を削って「一歩前へ」に繋げて下さい。
描写不足になりますが、書き手の皆様は脳内で補って下さい。

53 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜落ちる日〜1:2001/05/27(日) 22:49
銃声は……現時点まで3発。
もしかしたら、既に誰か死んだかもしれない。
それだけの危惧を持たせるのに十分な効果を、銃声という奴は持っていた。
走る……。
どこだ? どこで交戦してるんだ?
少年はただ音がした、と自分が感じた方向に走った。
だが……なにも見えてこない。
「く……そう……」
走りながら吐く文句。
募る苛立ち。
だが……、容赦なく状況は進み――。

ドン! ドン!

「!」

大分……近くなったか。
だけどまだ分からない。
どこだ? どこなんだ!?

そんなことを呟いても、誰も応えてくれない。

銃声が消えたそこら一帯は、ずいぶんと静かに感じた。
もうこれで5発だ。
事態は、明らかにまずい方向に流れている。
少年は立ち止まっていた足を再び走らせる。
なるべく物音を立てないように繊細に……、しかし全力で。

54 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜落ちる日〜2:2001/05/27(日) 22:50


ザ……ザ……ザ……。


何かを引きずるような音が、聞こえる。
いや、これは足音、か?

少年は再び立ち止まる。
そしてあたりに気を配る。

「誰か……、いるのか?」
あたりに通る声でそう言った。
あえてそういうことで、逆に奇襲される危険性を少なくしようとしたのだ。

…………。

だが、辺りからそれに”誰か”が応じる様子は無く。

「…………くっ」
少年は――柄にも無く痺れを切らしたのか――その場を走り去った。……そうして、七瀬に手ひどく痛めつけられた弥生は、何とか少年と対峙することなく
その場を離れることに成功した。


55 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜落ちる日〜3:2001/05/27(日) 22:51


硝煙の匂いを辿る。
流れてくる方角は、もうはっきり分かる。
目的地は……近い。

そして、少年はとうとう”その場所”へ抜け出た。

「これ……は……」

人が並んでいる。
ならんで倒れている。
既に、事切れて。

片方は女の子だ。
ぼくは見たことが無い子だ。
優しそうな子に見える。
胸から血を流して……、恐らく、銃でやられたのだろう。
なのに、その死に際は、とても安らかに見えて。

そしてもう一人は、ぼくも知っている男だった。

「……巳……間」
黒いコートをを着て、なにやらずいぶんと変わり果てた男が……そこにいた。
まさかお前がやったのか……。
そんな疑念がよぎる。
だが、死者を疑うことになんの意味も無いことを少年は知っていた。

お前は、誰よりも自由を欲していたもんな……。

そんな良祐の無念を、少年は汲んでやりたいと思った。
――生きるために、良祐がやってきた非道も知らずに。

56 :111[前々+前スレ]@形而下の闘い〜落ちる日〜4:2001/05/27(日) 22:51
少年は良祐の死体に近寄ると、その胸元をがさがさと漁り始めた。
「……あった」
彼の首にペンダント上にかけられたもの……鍵。
「せめて、これだけでも持って行かせてもらう」
少年は今度はそれを自分の首にかけた。


少年は、そのあと少しの時間を費やして大きな穴を二つ、地面にあけた。
一つは名も知らない少女のために、もう一つは巳間のために。

二人をその穴の中に仰向けに安置し、胸の前で両手を組ませた。

この島に来てから、なんだか弔ってばかりだ――。

少年はふと思い立ったように、片手に持っていた本を開いた。

「――かつて悩めた人よ、かつて憂いた人よ。
   我らは常しえにあなたのことを敬い続ける。
   我らはけして涙を零すことなく。
   我らはけして笑みを絶やすことなく。
   ただあなたの生きた証を辿り続けるだろう――」

偽典の中の一節。それを二人の死者に捧げた。
こんなところでこんなものが役に立つなんて……ね。

少年は……笑っていたのだろうか?

使い終えた本を仕舞い、少年は今度こそ二人を埋葬した。

命が燃え尽きたところ……、
その痕跡は、あまりにも静かで切なかった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
少年:戦闘のあった場所に居座り 持ち物:整理された鞄、鍵、本。
詩子:おいてけぼり 持ち物:CD、自分の鞄、空の鞄。
弥生:戦闘地点より移動中


57 :荒門:2001/05/27(日) 23:15
この状況で再び彼女達がめぐりあったのは、単純に運が良かっただけなのかもしれない。
なんにせよ社の攻防からいくらか経って、リアン・綾香組とスフィー・芹香組(こちらは途中で
結花も合流した)はなんとか落ち合う事が出来た。

「―――ってことがあったの…」
うつむき加減でスフィーはリアンや綾香に事の次第を話した。
普段の元気を知っているリアンにとっては、そんな姉の姿が痛々しかった。
「…姉さ……っ!!」
スフィーに呼びかけようとしたリアンが、いきなりうずくまる。
「リアン!? 大丈夫?」
隣にいた綾香がリアンに駆け寄って背中をさする。
「…また、ちょっと具合が悪くなって……少し休めば大丈夫だと思います」
「そんな、リアンさっきより悪くなってるじゃない。 こんな所じゃなくてもっときちんとした所で休まないと…
舞さんや佐祐理さんには悪いけど、このままじゃリアンがもたないわ」
「でも、この島ってそういう施設ってあるの?」
スフィーの疑問に、結花や来栖川姉妹は頭をひねる。
「………」
「え? なに姉さん? …学校? 学校行って何するのよ。 …保健室? あぁ、保健室ね!」
「確かに保健室ならどこの学校にもあるわよね。 でも肝心の学校があるかどうか…」
結花の当然の疑問に、スフィーは人差し指をびしぃっ! っと立てた。
「だいじょーぶ! それっぽい建物、あたし見たよ。 グラウンドがあって4階建てぐらいの建物でしょ?」
「嘘っ? それで場所は?」
「あっちのほうかな? いろんなところ逃げてきたからよくわからなくなっちゃったけど、方向は
合ってると思う」
「よしっ、それじゃあそっちの方角に向かって出発しましょう!」
「……あの…」
立ち上がって今にも歩き出そうとしている結花に向かって、リアンが不安げに言う。
「どしたの? リアン。 もう少し休んでく?」
「…あの、そうじゃなくて。 私、足手まといになっちゃうっていうか…」
「何いってるのよ。 そんなこと思ってるわけないじゃない」
「結花さんの言うとおりよ。 ここまでいっしょに行動してて、足手まといだなんて言わせないわよ」
「……綾香さん…」
「姉さんだってそう思うでしょ?」
「……こくり」
「だってさ」

58 :荒門:2001/05/27(日) 23:16
悪戯っぽい笑みを浮かべ、綾香は言った。
「ほ〜らっ、可愛い妹をこんなところに放っておけるような姉じゃないの。 皆こう言ってくれてる
のに、これで行かないほうが悪いってものよ」
「姉さん…」
「リアン? 立てる?」
結花の問いに頷いて、よろよろしてはいるもののなんとか立ち上がった。
「歩けないならおぶっていこうか?」
「…っ…大丈夫だと思います」
「無理しないでね。 リアンはHoneybeeの看板娘なんだから」
「…ありがとうございます。 結花さん」
リアンの目の端には、少しだけ涙が溜まってきらきらと反射していた。
「よぉっし! それじゃしゅっぱつしんこーー!!」
「おーっ!!」
「………ぉー…」

もしこのとき、チームの中の誰かが他の治療施設を知っていたら、もしかすると運命は変わっていたのかも
知れない。
しかしそのことを知るものは誰もいなくて。
蜘蛛の糸は確実に彼女達に絡み付いていた。

もう、逃げられない―――。

59 :荒門:2001/05/27(日) 23:17
――――きぃぃぃんっ――――
まるで音叉を叩いたようなその音を聞き、なつみは目を覚ました。
獲物がかかったことを知らせる合図。
精神を研ぎ澄まし、数の確認をする。
「……4・5人かな? 十分にマナが無いからよくわからないけど」
だが、まぁまぁの人数だ。
かき集められるだけかき集めたマナ。
一人二人に使うのは惜しすぎる。
そしてなつみは学校全体に張り巡らした結界を教室のみに集中させ、少しだけマナを消費して
来訪者たちをこの教室に導くよう細工した。
「あくまで無意識下でこの教室を注目させるだけだけど…」
耳を澄ませば、もはや音としてこの学校に侵入したのがわかる。
なつみは昂ぶる神経を、ココロを抑え、かすかに呟いた。
「いらっしゃい…歓迎するわよ、お客さん」


「意外と近くにあったものねぇ」
「早く見つかって悪い事はないんだから、いいじゃないの」
スフィー達一行は校門をくぐり、グラウンドを抜け、今正に昇降口の手前までやってきていた。
「さて、それじゃ中に入りましょうか」
綾香が皆を促す。
考えてみれば保健室は一階にあるのだから、礼儀正しく昇降口から入る必要はない。
しかし現役の学生である綾香や芹香はそのことについて考えもしなかった。
行儀のいいリアンも特にどうとは思わなかった。
ただ一人スフィーが『窓から入ったほうが近いのになぁ』と考えもしたが、こっちの世界の
学校を見てみたいという気持ちがあってか、そのことは口に出さなかった。
「私とした事が…不覚だわ」
「……」
見れば来栖川姉妹はあるはずの無い上履きを履くために靴を脱ぎ、手に持っていた。

場の空気がすこしだけ緩んだ。

「……ん? あの教室…なんかあるのかな?」
スフィーがそういって指差したのは『1−A』というプレートのかかった教室だった。
そして全員が特にどうとも思うことなく、ごくごく自然に教室に吸い込まれていった。


60 :荒門:2001/05/27(日) 23:18

がらがら、という音とともに一行は教室へ足を踏み入れた。
辺りに漂う奇妙な感覚。
それをはじめに感じ取ったのは芹香だった。
「………」
「え? 何? 姉さん。 この教室、なんかヘンだって?」
しかし周りを見回してもただの教室。
何の変哲も無い。
「特に変わったところもなければ、何があるってわけでもないわね。 早く保健室に…」
言いながら綾香はドアに手をかけ―――
「!!」
「…どうかしましたか? 綾香さん?」
尋ねるリアンの声も、綾香には左から右へ素通りするだけだった。
「…夢でも見てるのかしら」
視界の先には、今自分達が入ってきた教室が全く同じように広がっていた。
「ふふっ、どうしたの? そんなに慌てちゃって」
前方から声。
全員がその方角を向くとそこには、教壇の上に足を組んで座っているなつみの姿があった。
「なつみっ!!」
「なつみさんっ!!」
「なつみちゃんっ!!」
スフィーとリアン、結花がほぼ同時に歓喜の声をあげる。
「何? あなた達、あの娘と知り合いなの?」
「うん、牧部なつみっていって、私達の友達だよ」
「あら、そうなの? だったら一緒に行きましょうよ」
綾香が提案する。
「うん。 ねぇ、なつみちゃん。 私達といっしょに行動しな――」
結花がそう言い終えるか終わらないか。
「っ!? ……かはっ…ご…っあはっ…」
たらたら、と。
結花の口もとからは鮮血が溢れ出していた。
そして腹部からもじわりとした朱がにじみだしている。
「…な…に……なんな…の…?」
なつみはその様子を見てくすくすと笑っている。
心のそこから可笑しいというように。
「なつみっ!! なにがおかしいのっ!」
怒気の含まれたスフィーの叫びをなつみはあしらうと、
「―だって、わたしがやったんだもん―」

61 :荒門:2001/05/27(日) 23:20
にやにやと唇に笑みを絶やさず、なつみは告げる。
「そんな!だってなんにも――」
「スフィー、ちょっといいかしら」
「え?」
ずいっと綾香がスフィーを押しのけて一歩前へ出る。
手には拳銃。
銃をスライドさせて弾丸を送り込む。
そしてなつみの方向へかまえた。
「えーっと、なつみさん…年は同じくらいだからなつみってよぶわね。 ねぇなつみ、あなたの言った
ことって本当なの? 言っとくけど冗談抜きでよ。 こんな状況で冗談言われても困るから。 正直に
答えて。 私も手加減できないから」
なつみはやれやれ、という意味のジェスチャーをして綾香に向かって言う。
「ええ、そう、本当よ」
あいかわらずなつみはにやにやと笑みをたたえ、くすくすと笑っていた。
「……迷ってる暇はないの。 皆を守らなくちゃいけないから。 最期にもう一度だけ聞くけど、
本当にあなたなのね」
「何度も言わせないで。 わたしが、牧部なつみが、結花さんを、やったのよ。 OK?」
綾香は後ろを向き、
「…目、つぶってて」
静かにそう言い放つと、色々な感情を捻じ曲げ、抑えつつ引き金を引いた。
ぱぱん。
なつみの体が反り返る。
ぱん。
がたんと派手な音を立てて教卓から床に転落する。
綾香の放った弾丸は誰の目から見てもあきらかなほど、なつみを捕らえていた。
冷静を保とうとすると余計に心臓が破裂しそうなほどばくばくして、マラソンの後のように息ができない。
「ごめんね、スフィー、リアン、結花さん。 大事な友達撃っちゃって。」
綾香は後ろを向かずに淡々と告げた。
「…なつみ」
スフィーは呟いた。
何かが引っかかる。
何かがおかしい――
そして教卓まで近づく。

62 :荒門:2001/05/27(日) 23:20
「……あぁ、痛かった」
「!!?」
少しも痛くなさそうな声。
気づけば、なつみはさっきと同じ状態で座っている。
「ふふ、どうしたの? もうこれでおしまい?」
あせりつつも再び銃をかまえる綾香。
それを手で制してスフィーがなつみに話しかける。
「なつみ…いや、ココロ。 大体仕掛けがわかってきた。 この教室は『夢』ね。
範囲は教室の中だけで、夢の支配者はココロってとこね。 つまりなつみが現実にいて、
ココロは私達を閉じ込めておく役割。 そのあいだ無抵抗の私達をなつみが襲うっていう事ね。
……随分好き勝手やってくれるじゃない」
「さすがはグエンディーナの皇女サマ。 そこまで言い当てられるなんて驚きだわ」
「ねぇ…なんでこんなことするわけ?」
その言葉を聞いて、一瞬にやついていたなつみの顔が暗くなる。
「だって、店長さんは…もういないじゃない」
なつみの言葉はスフィーやリアンや結花にぐさりと刺さった。
自分達の好きだった、大好きだったひとはもういない。
「健太郎が死んじゃって悲しいのはなつみだけじゃないよ。
私だってリアンだって結花だってみどりさんだって、皆そうなんだよ!」
「…ふふっ、確かにそうね。 でも、でもねスフィー。 私にはもう居場所が無いのよ。
私がいてもいいところ、いるべき場所はもう無いの。 わかる? 空っぽになっちゃったの。
あなた達にはまだ残ってるけど、私にはもうそれが無いのよ。」
「…そんな…だからって人を殺していいわけ……」
「あるの。 だって店長さんも苦しくて痛くてもうどうしようもなかったはずなのに、
なんでのうのうと生きてられるの? みんな共犯! そんなの悪いから。
店長さんと同じ苦しみがなきゃ悪いに決まってる!!」
「だからって…健太郎はそんなの望んじゃいないよ!!」
「…ねぇスフィー、店長さんはもう死んじゃったの。 望む望まないさえも決められない。
殺す殺さないの選択権までないの。 何も無いの。 店長さんをそんなふうにした人間を、
私は許しておけないだけなの。 そしてその人間がこの島にいる全員っていうだけなの」
「なつみっ!!」
「もう話すことは無いから。 スフィー達も、ここで死んでよ」
「なつみぃいっ!!!」

63 :荒門:2001/05/27(日) 23:21
時間はほんの少しさかのぼる。
ここは現実の教室。
ドアのあたりに五人が倒れている。
「どうやらココロはうまくやっているみたいね」
無防備な五人。
それもそのはず。
ここに倒れているのはただの肉体だけなのだから。
なつみの採った作戦は、ココロの『夢』のなかに獲物を閉じ込め、その間になつみが
その肉体を殺すというものだった。
多量のマナを消費するため、二度とはできない戦法だったが、誰一人として殺せないうちに終わるよりか
遥かにましな事に思えた。
短刀を抜き、近づく。
どうせ全員殺すのだからと、一番手前にいた結花の胸に刃を振り下ろす。
彼女とも色々な事があった。
でもそれは今では霞がかってよくわからないにせものの記憶のようだった。
くさり。
短刀が刺すと、弾力のある豆腐に粘土を混ぜたものを突いたような感触を手に感じた。
刺した部分からは血が服にしみこんでにじみ、口の端からだらだらと血が流れ出てきた。
なつみは一刺しではまだ足りなさそうだったので、もう一回短刀を突き刺した。
でもやはりそれは豆腐と粘土のミックスにすぎなかった。
しばらくその光景を眺めていたなつみだったが、時間があまり無いという事を思い出し
短刀を引き抜くと、次の相手を隣りに横たわる黒髪の少女に定めた。

64 :荒門:2001/05/27(日) 23:26
すこし長くなってしまったので、残りはもうすこしあとに。
本当、もうすいませんとかいいようのない内容ですいません。
はぁ…

65 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 23:31
そもそも能力で人殺せないように結界なんて設定持ち出したんでしょ?
前提壊してるじゃん、これ。

別にNGだなんて騒ぎ立てるつもりはないけど、何のための結界か次から考えて欲しい。
あの設定は、ゲームの演出以前に大きな規制なんだよ。

66 :名無しさんだよもん:2001/05/27(日) 23:46
お客様のお呼び出しを申し上げます。
荒門さま、荒門さま。
至急「葉鍵キャラロワ感想スレ#2」までお越し下さい。

http://green.jbbs.net/movie/bbs/read.cgi?BBS=568&KEY=990556094


67 :いつも笑顔で 1/2:2001/05/28(月) 00:24
水瀬秋子は痛めた右手にシップを張ると、少しくるくると手首を回してみた。
「…特に問題はなさそうね。」
捻挫というほどではない。もう少し時間がたてば気にもならなくなるだろう。
郁未と一戦交えた後、秋子は気絶した名雪の治療と武器の調達ののために森沿いの一軒家に忍び込んでいた。
名雪の治療はすでに完了している。
怪我はそれほどたいしたものではなかった。
頭部への強い打撃は後になって症状が見られることもあるが、少なくとも今は問題のないように見える。
現に名雪はもう目を覚ましている。
目を覚まして、ずっとしゃべりつづけていた。
「聞いて聞いてみんなひどいんだよ、みんなみんな私のこと傷つけるんだよ、
 私祐一守ったのに真琴から祐一守ったのに祐一私を守ってくれなくて、
 だから自分で自分の事守ろうと思って、
 琴音ちゃんも私のこと傷つけるつもりだったから私琴音ちゃん刺したんだ、えらいでしょお母さん、
 繭ちゃんだってそう、私がんばったよ、がんばったのに頭痛い頭痛い、
 祐一だよ祐一のせいだよ祐一が逃げるからいけないんだよ、
 何で逃げるの祐一、あゆちゃんだねあゆちゃんのせいだね、あんな子のどこがいいの、
 許せないよあゆちゃん許せないよお仕置きしてよ、
 もういや、みんなみんな大嫌い、みんなにお仕置きしてよ、ねぇ、お母さん…」
ずっとしゃべっていた。
そんな様子を見て秋子は理解しなくてはならなかった。
自分の娘が壊れてしまったということに。


68 :いつも笑顔で 2/2:2001/05/28(月) 00:26
しゃべりつづける名雪の顔は醜くて、先ほどの郁未のように醜くて、
にっこりと笑う名雪の笑顔が秋子の密かな自慢だったのに。
(あなたのお子さんもきれいな子でしたね、未夜子さん。)
未夜子と、先ほど自分が殺した人と、自分の娘のことで会話に花を咲かせたらどんなにいいだろうと、秋子は不意に思った。
こんな時、こんな所じゃなくて、そう大安売りのスーパーで並んでカートを転がしながら、
「まぁ、奥さんのお子さんも陸上部なんですか?」
「あら、じゃああなたのお子さんも?」
「ええ、名雪も一応部長なんですけど、あんなお寝坊さんで勤まっているのかしら…」
「まぁ、立派じゃないですか。うちの郁未も成績はいいようだけど、もう少し愛想ってものがないとねぇ。」
「うちのは少しのんびりしすぎてますわ。あれでも陸上選手なんて信じられませんよ。」
なんて、そんな会話ができたらどんなにいいだろう。
そうして、秋子はこっそりと思うのだ。
でも、どんなお子さんでも名雪の笑顔には敵わないわ、と。
(たいした親ばかね)秋子は胸中で自虐的に呟くと、なおもしゃべりつづける名雪のほうを向いた。
「名雪、もっとかわいくしなくちゃ祐一さんに嫌われてしまうわよ?
 ほら、笑って、ね?」
名雪は一瞬ぽかん、と顔をして、そうしてにっこりと笑った。
「うん、そうだね、お母さん。」
その顔が、とてもきれいだと、秋子は思った。
名雪には、いつもこんな顔を、してほしかった。
だから、秋子はこういった。
「名雪、一つだけ約束して。いつもそうやって笑顔でいて。
 名雪がいつでも笑っているなら、お母さん名雪のためになんでもするから。」
「ほんと!」名雪は弾んだ声を出す。「ほんとだね、お母さん!」
「ええ、約束よ。」
「うん、約束だね。」
(母親というのは本当に馬鹿な生き物ね)
それもいいでしょうと、秋子は思った。
秋子だって、名雪を見捨てた祐一が、名雪を傷つけた郁未が、名雪を壊したこの島の人達が憎かった。
でも、そんなことも、もうどうだってよく。
このまま名雪と共に壊れていくのもいいだろうと、
「えへへへ、じゃあまずあゆちゃんをね…」
嬉しそうにしゃべる名雪を見ながら、秋子はそう思った。

【水瀬秋子、名雪 怪我の治療、民家から武器(次の書き手に委任)を獲得】


69 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 00:29
未夜子殺したのは千鶴さん。

70 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 00:37
>>66
そのURL、感想スレ1だね
ってことで2のURL。
http://green.jbbs.net/movie/bbs/read.cgi?BBS=568&KEY=990888426

71 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 00:39
#5が読めない・・・
昼になったら読める?

72 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 00:40
むり。

73 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 00:40
#5は、もう読めないんじゃないかな。

74 :名無したちの挽歌:2001/05/28(月) 00:43
>>71
 纏めてくれてるHPを見るしかないと思われ。

75 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 00:44
>>71
かちゅーしゃ使え。.

76 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 00:50
>>75
いまさら,むりなんじゃん?

77 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 00:52
大丈夫。今確かめた。

78 :遭遇(1/5):2001/05/28(月) 01:07
島の真上をさんさんと照らしていた太陽も傾き始め、
夕闇の気配がゆっくりと擦り寄ってきていた。
この島の大部分を占める森の。
その、更に奥深くに、彼は居た。
(何処だ……茜……)
ふと、ゲームが始まってから自分は一睡もしていないということに気づく。
自分にとってどれだけ「茜」と言う存在が大きかったか、改めて思い知る。
気がつけば、体中が悲鳴を上げている。
心も、体も、とっくに限界を超えていた。

それでも、止まらない。
止まれない理由があった。

『茜は、変わってなかったよね?』
『あぁ、そうだな』
『……変えてあげてね?』

『あぁ』

彼の、そして茜の親友の言葉が、彼の足を前へと進ませる。
そして何より、彼自身の強い想いが、立ち止まる事を許さなかった。

が。

祐一が巡り合った相手は。

79 :遭遇(2/5):2001/05/28(月) 01:08
「ねえ」
不意に背後から掛かってきた声に驚き、振り帰る。
立っていたのは、一人の小さな少女。
外見とその落ち着いた声とのギャップに唖然とする浩平に、
少女ははぁっ、と溜息をひとつついて言った。
「あなた、そんな隙だらけの背中で何やってるの?
 私がもし殺人鬼だったらどうするつもり?」
「なッ……」
浩平は混乱した。
突然現れた少女。
それが、声を掛けてきた。
そこまではいい。
なんで俺が、こんなガキに説教されてるんだ?
少女の言っている事は正論なのだが、
年下に説教されると言う事が、彼の癪に障った。
なので、口をついて出るのは、反抗的な台詞。
「うるせーな。なんでお前みたいなガキに説教されなくちゃいけないんだ?」
少女は、その言葉を聞き、顔を歪ませる。
……嘲笑に。
「お笑いね。年齢を問わず正しい意見は取り入れるものよ。
 私が子供だって言うなら、つまらない意地で自分を正当化するあなたのほうが余程子供よ」
「て……てンめぇ……」
祐一は怒りに身を震わせる。
この場合年上として正しい対応は目の前の生意気な少女を論理的に説き伏せる事なのだが、
無念にも祐一の頭では反論出来る言葉が見つからなかった。
なので、年上と、そして男女の基礎体力の違いという二つの利点を持って、
「どりゃぁーっ!」
祐一は力ずくで生意気な少女を黙らせようとした。
無論、それは男として最低とも言える行為だ。
よって、祐一はすぐに天罰を受ける事になる。

80 :遭遇(3/5):2001/05/28(月) 01:09
祐一が少女めがけて飛びかかる(こうして書くと誤解を招きそうだが)。
少女はすっ、と姿勢を低く落とす。
そして、祐一が少女に覆い被さろうとしたその時。
「がッ…………」
祐一の動きが、止まった。
少女のアッパーカットが、祐一の股間を的確に捕らえていたのだ。
もう文章では表現しきれない程の痛みに、祐一は地面をのた打ち回る。
少女はそんな祐一を見下して笑った。
「無様ね」
気を抜くと本当に気絶しかねない中、祐一が絶え絶えに言葉を発する。
「こっ、こういう時は…蹴りって相場が決まってるんじゃ……」
「あら、だって蹴りだと狙いがつけにくいでしょ」
そっけなく、少女は答えた。
成る程、もっともだ……
祐一は答えを聞き終えると、満足げな表情で気絶――
「気絶してんじゃないの」
「あうっ」
それは、少女が許してくれなかった。

傾きかけた太陽は未だ沈んではいなかったが、
森の中には光は僅かしか届かない。
すでに、辺りは薄暗くなりつつあった。
「…で、一体何の用だよ。殺せるチャンスをわざわざ逃してまで聞きたい事、あるんだろ?」
水を口に含みつつも、浩平は少女−どうやら、椎名繭と言うらしいが、に問うた。
「まあ、殺せる武器も無かった、っていう方が正しいかもね」
「なんだ、結構お前も考え無しじゃねえか」
そう言って祐一は二へッと笑う。水を口に含んだままなので、水飛沫がとても汚らしい。
「…早く飲み込みなさいよ」
「まあそう言うな。汚い所走りまわって結構ノドが痛んでるんだ」
祐一がそう言うが、その度にまた水飛沫が飛ぶ。
繭は沸きあがる殺意を理性で押さえ込み、話を進めた。
これもセイカクハンテンダケの成せる技だとも言える。
「――人を、探してるのよ。折原浩平、って人」
へぇ、じゃあ俺と一緒じゃないか、と祐一は口に出そうとする。
その前に、繭が続けた。
今の祐一にとって、一番聞きたくない名前を。
「…それと、沢渡真琴、って人」

81 :遭遇(4/5):2001/05/28(月) 01:09
ぶっ、と思わず祐一はすでに生暖かくなっていた水を吹き出す。
明らかに取り乱した祐一の様子を見て、繭が目を見開き、祐一を問い詰める。
「知ってるの!?教えてよ、真琴さんの行方」
これまでの理性的で嫌味ったらしい態度は影を潜め、感情を露にして迫る繭。
祐一は一瞬本当の事を言うかどうか躊躇する。
だが、その悩みはすぐに打ち消される。
ここまで必死に真琴の行方を探してくれた人。
どんな理由があれ、ここで本当のことを話さないのは卑怯だと思ったのだ。
「……知ってるさ。だって真琴は……」
ゆっくりと、口を開く。
「俺の目の前で、死んだんだから」
繭の頬から、一筋の涙が零れ落ちた。

「しかし、やっぱ真琴は嘘を吐いてたのか」
先程から繭は俯いたまま、何も話そうとはしない。
辛うじて、一時期自分が真琴と行動を共にしていたと言う事を喋っただけだ。
「変だと思ったんだよな、真琴が『お姉ちゃん』なんて」
「そんな事ありません」
「…っと」
間髪入れずに入った繭の声に、思わず祐一は態勢を崩しかける。
「真琴さんは、すぐに泣き出したり、我が侭を言ったりする私の面倒を優しく見てくれました。
 殺人鬼のような男に追われたときも、私を安全な場所に隠れさせて、ひとりで立ち向かって行ったんですよ」
祐一は穏やかな口調で話す繭を見て、
「…そうか」
と、自身もまた穏やかな表情で言った。
「真琴は、確かに『お姉ちゃん』だったんだな?」
もう一度、繭に問う。
繭は、揺るぐ事の無い表情で、
「ええ」
と、笑顔で答えた。


82 :アユー(゜д゜):2001/05/28(月) 01:09
感想スレで突っ込みが入ったので…
>>50-51のあゆ、一人称が全部(3ヶ所)「私」になってました(´Д`;)
ログ編集の方、すいませんが「ボク」に訂正して頂けると幸いです。
……イッテキマス。

83 :遭遇(5/5):2001/05/28(月) 01:10
「……それにしても」
空になった水筒の底を叩き、何とか最後の1滴まで飲み干そうとしながらも祐一が繭に語り掛ける。
とても、間抜けな光景だ。
もうそんなのには慣れたのか、
「…何」
と、繭は素っ気無く訊き返す。
「なんでお前みたいな生意気なぐらいにしっかりしたヤツ相手に、真琴がお姉さん気取りできたんだろうなぁ」
繭は、「失礼ですね」と頬を膨らませたが、
すぐに顔を落とし、言った。
「…私が、子供だった、というだけです。
 もし私があの時、もっと理性的な行動を取れていたら、真琴さんも…んぐっ!?」
繭の台詞は、そこで途切れた。
祐一が繭の口を手で塞いだのだ。
「…そこから先は言うなよ」
繭が見上げた祐一の顔は、これまでになく真剣で、辛そうで。
繭は、出しかけた文句を、飲み込んだ。
「真琴はあれで臆病なんだ。その点、お前がいた事で辛うじて真琴は理性を保ててたって言える。
 真琴があんなに頑張れたのも、お前のお陰だ。…だから、そこから先は言うな」
泣きそうで、苦しそうで。
そんな祐一の表情を見て、繭は軽はずみな事を言った自分を恥じた。
……でも。
ぎゅうっ、と祐一の手の甲をきつく抓る。
「ぎぇぇっ!」
「いつまで口塞いでるのよ」
それとこれとは、別だった。

84 :遭遇(6/5):2001/05/28(月) 01:11
「さぁて、そんじゃまぁ、俺はそろそろ行くかね」
祐一がゆっくりと身を起こす。
「……何処に」
座ったままの繭が、祐一を見上げて言う。
「俺も、探してる人が居るんだ」
「ふ〜ん」
自分から訊いておいて、繭はその言葉を聞き流し、服の埃、土汚れを払う。
そして、祐一の方へと向き直ると、
「じゃあ、行きましょうか」
と、平然と言ってのけた。
「おう、じゃあ……ってええ?」
お約束の反応をした祐一も、繭の方へと振り帰る。
「だって私、武器無いし。ここは武器を持っている人と行動したほうが安全だわ」
「…俺が寝首かいたりするとは思わねぇのかよ」
祐一が吐き捨てる様に言った言葉に、繭は不敵に笑って見せて、言った。
「あら、あんな隙だらけの背中を見せているような奴にそんな事が出来るかしら?」
「ぐっ……」
出来そうに無かった。
「決まりね、行きましょ」
そう言って一人で歩き出す繭に、その後ろから祐一が言葉を投げかける。
「絶対にお前の事守ってやる、なんて口が裂けても言わねえぞ」
その言葉に繭は振り向くと、
「あら、結構よ。私が勝手にあなたの後ろに移動するから」
と、笑い飛ばして見せた。
祐一はチェッ、と舌打ちすると、
「わーったよ、行くぞ」
と吐き捨て、繭を追い越して歩き出した。
そして祐一は内心、自分は繭に頭が上がらなくなるんじゃないかと、先行きに不安を抱く事となった。

【相沢祐一・椎名繭 コンビ結成】

――――――――――――――――――――――――――――――――
スミマセン、行数エラーで1個分長くなっちまいました。

85 :遭遇(おまけ):2001/05/28(月) 01:12
妙なコンビは歩く。
「……それで、お前はその…」
「キノコ」
「そうそう、そのキノコを食べたから、こんな性格になっちまったと?」
水を口に含みながら、祐一が喋る。
ちなみに、水は余りにも「水、水〜」と見苦しい祐一に対し、繭が投げ捨てたも同然に与えたものである。
「そう。あと4つあるけど、食べる?」
そう言って繭は、ごそごそとバッグの中からキノコを取り出す。
いかにもって感じの色がヤバげだ。
「遠慮しとく」
見てるだけで吐き気を催しかねなかった。
「……それで、そのキノコを食べると性格が反転してしまう、と」
「そうみたいね」
……祐一は考えた。
「これを高槻に食べさせれば……いかん萎える、止めよう」
「………?」
この妙なコンビの行きつく先は、何処か。

86 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 01:29
凛とした空気の中、鳥の声だけが森中に響き渡っていた。

深山雪見の死を看取りながら、往人は考えていた。

(俺はここまでできるのか。親友の敵を取るためだけに、ここまで…。)


「俺はこのままでいいのか…?」

誰に問うこともなくつぶやいてみる。
自分の信念を貫くあまり、犠牲にしたものが大きすぎた。
みちるも、遠野も守れなかった。
聖も死んでしまった。
何も考えたくなかった。それなのに…『浜辺にいこっ』
『どうして』
『遊びたいから』
『遊びって何をするんだ』
『だから浜辺で遊ぶの、かけっこしたり、水の掛けあいしたり』
『そして最後に。』
『また明日、ってお別れするんです。』


「観鈴…!」『わたしと往人さん、友達。にははっ』「観鈴…」
もう一度繰り返してみる。

しかし…

俺に観鈴を守る権利はあるのだろうか。
すでに4人も殺めてしまったこの俺に…。

果てしなく続くかと思われた自問自答。
終わりは突然にやってきた。


がさっ


突然現れた黒い影に、目を奪われ現実に引き戻された。

「なんだおまえ…」

目と目が合う。
そこはかとなく不条理な空気があたりを包んでいた。


87 :「遭遇」作者:2001/05/28(月) 01:31
>>ログ編集者さん
すみません、遭遇(2)の一部で、「祐一」が「浩平」になっているのでログ保存時に直しておいてください。
お手数でしょうが宜しくお願いします。あぁ鬱だ…


88 :遭遇(1.5/6):2001/05/28(月) 02:08
普段の彼女を知っている人ならば、誰もが驚くであろう。
何故なら、普段の彼女は、けしてこんな顔をしないからだ。
口元は引き締まり、目は堅い決意に彩られた、その顔。
彼女が目指す先は、この島で唯一頼れる、優しい人たち。
どこに居るかは、まだ分からない。
だから、走る。音も立てずに。

ふと、彼女の足が止まる。

人の気配だ。
殺し合いなど本来真っ平な上に、今の彼女には武器と呼べるものが何一つ在りはしなかった。
見つかったら、殺される可能性だってある…いや、その可能性はとても高いと、言えた。
気配を殺し、去ってゆく人の後姿を見遣る。
その、隙だらけの後ろ姿に。
彼女の知っている、「優しい人」の姿が重なった。
間違い無い、見紛う物か、と、絶対の自信を持って、少女は草陰から一歩踏み出した。

が。

少女が声をかけた相手は。

89 :「遭遇」作者:2001/05/28(月) 02:09
>>ログ編集者さん
本当に度々スミマセン…
この遭遇(1.5)を、遭遇(1)と(2)の間に挿入してやってください。
本当にお手数かけさせて申し訳無いです……

90 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 02:24
なんでこんな所にいるんだろう。
いつも笑いかけてくれる少女はもういない。
目の前にいるのは、黒い変な恰好をした男だけ。
ひどく落ち込んでるようだが、どことなく他人じゃ無いような気がするのは気のせいだろうか。

「なんだおまえ…」
ナンダオマエ
僕に向かって言ってるんだろうか?
お前とは失礼な。
むかついたので、蹴りを入れてやることにした。

バサバサ、どすっ

「くっ…、ゴホッゴホッ」

ふ、見たか。電光石火のみぞおち蹴り!
「……カラスの分際で人間様にたてつくとは、見上げた度胸だな」

じゃき

………
黒い筒状のものを僕に向けてきた。
よくわからないが、直感で危ないモノと判断。
愛想をふりまく作戦に出よう。

バサバサ

「うお、肩に乗るなっ!」

なぜか振り落とそうと、僕の体をつかんで引き剥がそうとする。
いつもの少女は、これで喜んでいるのに、この男は嫌そうな顔をする。なぜだ。
とにかくこっちも振り落とされまいと必死になる。

バッサバッサ

「いてっ!爪を食い込ませるのをやめろ!」

バッサバッサバッサ

「だあ!わかった!乗せてやるから爪を立てるな!」

バサバサ

ようやく落ち着いた。男はとても嬉しそうだ。

「こんな姿、他人に見られたらいい笑い者だ…」

よほど嬉しいらしい。
肩を振るわせ目を伏せている。

「まあいい、お前のおかげで踏ん切りがついた。」

?この男は何を言っているのだろう。

「待ってろよ。観鈴」
そう言いながら、手元の小さい箱状のものに視線を落とす男。

ミスズ、その響きは、僕に何かすごく懐かしいことを思い出させる。
あの少女の名前、だったか?無償に興奮してきた。

バッサバッサ

「痛え!爪を立てるな!」

男の声が森に響き渡っていた―――。



91 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 04:54
age

92 :おもいで(1/2):2001/05/28(月) 05:47
「これで……人をコロセル……」
誰もいない住宅街。
人のいなくなった喫茶店。
「あなたは……私を裏切らないわよね……」
小銃とナイフを見つめながら夢心地で横へ言葉を投げかける。
白蛇。
みちるが――あの愛らしい少女が消える直前に残した友達。
「人はもう、信じられません。
やっぱり…信じられませんでした。」
虚ろな瞳、もう流れることも忘れてしまった涙。
「秋子さんも…私を…見捨てたんですね…」

――……琴音ちゃん?
――……は、はいっ!?
――名雪を、連れ戻してきてくれる?
――ありがとう。それじゃ、お願いね。

秋子との言葉が思い浮かんだ。
あの時から、少しだけささくれのように涌き出た疑念。
琴音は言葉どおりに名雪を探した。だけど…
(どうして…私だけ…一人で探しに行かされたのですか?)

――大丈夫よ琴音ちゃん。私を裏切っても、名雪を裏切らない限り、あなたは 私が守るから。
  そのかわり――名雪を手に掛けたときは、本当の恐怖を教えてあげます――

(秋子さんは…守ってはくれなかった…それどころか…)
琴音は、白蛇のポチを握りしめる。
(名雪さんに……裏切られたんですから……)
ビチビチッ!!
苦しそうに、ポチが左右に体を揺らす。
「あっ…ごめん……ごめんね…ポチ。」
琴音がポチを抱きしめる。今度は、軽く。
「やっぱり…動物だけは裏切らないもの…藤田さんが…あかりさんが、特別だっただけ。」
唯一信じるに値する少年少女の顔を思い浮かべる。
「ポチ……私と…いっしょに行こうね。ずっと、いっしょに。
みちるちゃんとの…約束だもんね。」

93 :おもいで(2/2):2001/05/28(月) 05:49
琴音には、みちるがどうして消えたのかは分からない。
だけど、みちるの名前が放送で呼ばれていた……
それは――死。

「みちるちゃんもね…私をもう裏切らないもの。
ポチ、人はね…みんな裏切るの。でもね、死んだらね、もう裏切らないの。
みちるちゃんは…私とお友達だから…裏切らなくなったのよ。」
ポチの頭をを優しく愛でる。
「だからね、みんな死ねばいいの。そうすれば裏切られない。
みんな、みんな、お友達になれるのよ?」
一語一句、言い聞かせるようにささやきかける。
「そして、藤田さんに…あかりさんに…ほめてもらいたいな。
私はまた、人間不信に陥っちゃったけど…自分の力で元に戻りましたって。
私は弱いから、だけどね…強くなりたいんだ。」
決意を新たにして、琴音が立ちあがる。
「この喫茶店ともお別れ――。少しの間でしたが…楽しかった。」
まだ聞こえてくるようなあの楽しかった笑い声。

――にょわ〜っ、動いた動いたっ!
――動物だから、もちろん動くと思います。
――琴音ちゃん、動物好きなの?私もなんだよ!ねこさんとか。
――名雪は、ねこアレルギーですけどね。
――う〜、お母さん!ひどい〜ひどい〜!!

「さよなら……行こう、ポチ。」
白蛇を首に巻いて、喫茶店の入り口に立つ。
「あれ……なんか変だな……」
枯れたはずの涙が溢れて――
「こんな…はずじゃなかったのにな……どうしてこうなっちゃったんだろう…
藤田さん、藤田さんに会いたい……」
少女の嗚咽は、楽しかったはずの喫茶店の中にずっと響いていた……。

94 :汗と涙と男と女(1/6):2001/05/28(月) 17:15
「かーずきっ!」
詠美が和樹に甘えるようになってからどのくらいの時間がたったのだろう。
「待たせたな!詠美!」
詠美が建物の陰から姿を現す。
「どうだった?」
「いや……なにもなかったよ。」
和樹がそう言って、詠美の頭を優しく撫でる。
「そっか……うん、次はどうするの?」
「とりあえずここから離れよう。ここには逃げ場が無い。話はそれからだ。」

表情とは裏腹に、和樹の心は晴れない。
南の豹変――確かにそれもある。
だが、今の建物……おそらくはスタート地点の一つだろう。
その中にいくつもの死体が転がっていた。
全部で8人。全員同じような野戦服を着た男たちが倒れている。
恐らくそれは主催者側の人間であろう。
武器はすべて奪われていた。
(俺達と同じように…主催者側と対立してる奴がいるのか…?)
だが、もしも違ったら…そう、すでに理性を失い、見境いの無い殺戮者だとしたら……?
(南さんですら……)
和樹は果てしなく疑心暗鬼に陥っていた。
(たとえ、彩ちゃんやモモちゃん…いや、あさひちゃんであっても…もしかしたら…)
そして、正常であったとしても和樹のように人を疑ってかかる者だっているかもしれない。
(ちっ、やめようぜ…答えなんか…でないよ。楓ちゃんなら…どうする?)

別にここだけじゃない。
とりあえず心当たりのある場所に手がかりはなく、冷たくなった躯だけしかなかった。

95 :汗と涙と男と女(2/6):2001/05/28(月) 17:16
――何かあったら、またこの場所で――

途方に暮れかけた時、彼女の言葉が脳裏に浮かぶ。
もしかしたら、彼女の単独行動は、何か心当たりがあってのことかもしれない。
「一度戻るか……これ以上闇雲に動いたって道は見えない。」
和樹が歩きながらそう呟いた。
「も、戻るの…?」
不安そうな詠美の声。無理もない、
それは血の匂いのする思い出の場所だから。
たとえ、大切な友人の墓場であってもだ。
――もちろん和樹達は玲子を簡易的にではあるが弔っている。――
「安心しろ、俺がついてる。」
詠美を落ち着かせるようにそっと頬に口付ける。
「うん……」
(やっぱ調子狂うよな……)
いつも生意気で悪態をついてばかりだった彼女、
ここに来るまで、鼻で人を笑うような態度で本当の自分を隠してきた彼女。
だけど、それでも――
(いつも顔を合わせるたび……だったからな…)
苦笑した。

ザッ……ザッ……

そして瞬間、人の気配。

96 :汗と涙と男と女(3/6):2001/05/28(月) 17:17
「それでね……」
由綺の声はいつも透き通るように綺麗で。
ブラウン管の向こうの世界が遠く感じられてたあの頃。
だけど……
いつの間にか心よりも、遠くで聞こえる由綺の声。
それはここに来てから。

だから、由綺の手をつかんだ。
理奈ちゃんでなく、マナちゃんでもなく、英二さんでもない。
ブラウン管の向こうよりも遠い世界に行ってしまわないように、強く。

「弥生さんがね…ふふっ、おかしいの…」
由綺がいつものように笑う、そこは日常だったから。
だけどその現実は…由綺が本当に望んだ日常ではなくて。
『おかしい』……そうかもしれない。
俺達は…いや、俺だけが狂っている。
俺は由綺の為に…すべてから逃げたんだ。
理奈ちゃんから、マナちゃんから、英二さんから、見知らぬ少年から。
そして、由綺を傘にして罪の意識から逃れようとしている。
(俺は…卑怯だよな…)

由綺にとってここは、より日常だったんだ。
ブラウン管の向こうで歌っていた――あの頃よりも。
(由綺は……俺が追いつめたんだ……)
本当に日常だった頃から、由綺の本当の心の拠り所になりきれなかったんだ。

97 :汗と涙と男と女(4/6):2001/05/28(月) 17:18
「……誰っ!!」
突然由綺が声を張り上げる。
(誰かいるのか……)
来ないでほしい。由綺がまた遠くに感じられてしまうから。
俺はまた、由綺のせいにして罪を犯してしまうから。
近づいたら、由綺が、俺がまた――
「お、おい、ちょっといいか……?」
ドン!ドン!
男の声と共に銃声…とは少し音色の違うニードルガンの音。
い、いきなり撃つか!?俺の恋人よ……

射程距離が離れすぎてたのか、男の脇を、ゆっくりと放物線を描き――地面に落ちる。
話し合いの余地も無い。
男は一瞬呆けた表情、だけどすぐそれは険しい表情に変わって……
物陰に潜むように身を隠れさす。
そしてそこから見えるのは……銃口――。
俺の背筋に…何かはしるものがあった……

「行くぞ!由綺!!」
再度狙いをつけて戦おうとしている由綺の手を引いて、そこから離れる――。
同時に、途切れることのない銃声。
「と、冬弥君!?」
先程まで俺達が存在していた空間に、熱線のような光がいくつも雨のように降り注いだ。
――死ぬ――
強い意識が俺を包んで、怖くて。
だから、無我夢中で走った。後ろを決して見ないようにして。
横で走る由綺の手だけは、絶対に離さないように――。
緊迫した状況の中だけど、右手に感じた由綺の暖かさだけが妙にはっきりと感じられて――。
場に不釣り合いな思い。
(俺、こんなときでも由綺だけは……)
少しだけ自分を誇らしげに思えた。

98 :汗と涙と男と女(5/6):2001/05/28(月) 17:19
「な、なあ、由綺……」
「はあ、はあ………な、何?冬弥君。」
1,2キロは走ったかもしれない。
後ろから追ってくる気配はなく、ようやく走るのを止める。
由綺と俺は流れ出る汗を拭いてようやく一息つく。
「いきなり…撃つのはやめないか?」
「どうして?」
きょとんとした顔で由綺。
「だってさ…今、危なかったじゃない。危険だよ。」
「そうだけど…」
「だからさ…いつでも撃てるようにだけしておいて…撃つときは撃つみたいな…
なんて言ったらいいのかな……」
「だけど……」
「俺が死んじゃってもいいのか?」
俺はイヤだ。由綺が死ぬことも、俺が死んで、由綺が悲しむことも。
もちろん俺だって死にたくない。
「嫌っ……」
由綺が背中から俺を抱きしめる。
「うん、分かった、私、冬弥君死んだら嫌だもん…
いきなり…撃つのはやめるね。」
「ああ……」
いきなり撃つのは…俺だけでいい。
もっとも、飛び道具なんて持ってないけど。
「ふふっ、でも、冬弥君が危なくなったらどんなことしても守るからね…」
「ありがとう、由綺……」
だけど、どうしようもなく哀しくなって、喪失感が胸に込み上げて…
「ど、どうしたの?冬弥君…泣いて…るの?」
由綺の日常の中で、俺は、泣いた。

99 :汗と涙と男と女(6/6):2001/05/28(月) 17:24
「ふう…まさか…いきなり襲われるなんてな…」
機関銃の熱を冷ましながら、和樹は溜息を吐き出す。
もう、敵の姿はない。
和樹達と同じように、カップルであったが故に生んだ油断だった。
もちろん深追いする気はない。
和樹には殺人の衝動なんてないのだから。
(自分達の身に危険が及んだその時は…その時だけどな。)
いざ脱出するときは、そうはいかないかもしれないが。

「かずき……みんな…狂っちゃったんだね…」
詠美の顔はまだ晴れない。
(この島にいる限り、心から笑ってくれることはないんだろうか。)
武器の残弾、状態をチェックする。
(大丈夫みたいだな。)
「平気だろ…今みたいのはごく稀なケース。俺も…詠美も…ほら、楓ちゃんだって正常だったじゃないか。」
「うん…」
本当にそうなのだろうか。和樹の言葉は自分に強く言い聞かせる意味合いの方が強い。
「あそこに戻るぞ。結構経ったからな。…楓ちゃんももう戻ってるかもしれない。」
「うん…」
「別ルートから戻ったほうがよさそうだけどな。」
別ルート。8人の死体があった建物を通りぬける。
「……きゃっ、ちょっと…何すんのよ…」
和樹はいきなり詠美の膝の後ろと背中にに手を忍ばせると、そのまま勢いよく抱えあげる。
いわゆる漫画や映画でありがちな『お姫さまだっこ』というやつだ。
「俺を信じろ……俺がいいって言うまで絶対に目を開けるなよ。」
「うん、わかった…しんじる…」
(詠美がわざわざ建物の中の惨劇を見る必要はないからな。)
詠美の持ち物…武器も実は和樹は知らない。
(詠美が戦う必要なんてないからな。)

手を汚すのは、俺だけでいい。

100 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 17:37
往人は飢えと緊張と戦いながら森を歩いていた。
手には、携帯電話をもっている。
―――090 水瀬 秋子
―――033 国崎往人
「さっきの女、名前だけでも聞いておくんだった。」
意図して声を出しているのか、自分で気づかないうちに出してしまっているのか。
「そもそも機械は苦手なんだ。」
呟きながら、順に番号を入力していく。

001,002,003,004,005,006…

しばらく続いた後、入力していた往人の手が止まった。
(017…、近づいてくる。)
まだそんなに近くない。考える時間は充分にある。
男か女か、いやそれ以前にやる気があるのか無いのか。
名前さえわかれば、観鈴の場所を知る手がかりになるだろう。
いや、それよりも
観鈴かもしれない―――
俺が033、017が神尾の可能性だって充分にある。

「様子を見るか。」

木陰に身を寄せながらつぶやく。
ここにいれば当分は見つかることは無いだろう。
それよりも問題なのは―――。


101 :夢一時(1/4):2001/05/28(月) 17:44
「あはは、夢みたい。あたしこうして折原と手をつないで歩きたかったのよ」
「ううん、これは夢よね。だって瑞佳死んじゃったもの。現実にそんなこと
ないものね。えへへ、明日瑞佳に会ったらどんな顔したらいいのかな。」

 七瀬は左手に持った散弾銃をぶんぶん振り回しながら心底愉快そうに言った。

 「ああ、そうだな。七瀬おまえの言うとおりこれは夢だよ」
 (でもこの夢はな、永遠にさめないんだよ)

 浩平の右腕からは依然として出血が続いていた。血と一緒に浩平の命も流れ落ちてゆく。

 (早く誰か知り合いに会わないと。もう俺も長くはない。
 うん?そういえば俺は長森が死ぬ前に誰かとどこかで合流しようとしていなかったか?
 くそ、血が足りない。もうろくに頭もまわらなくなってるな。
 ああ、長森、もうすぐおまえに会えそうだよ。こんどこそいつまでも一緒にいような)

 「折原、どうしたの?そんな暗い顔して黙りこくって。わかった、瑞佳の
事考えてたのね。そんなこと気にせずにあたしとのデート楽しみましょうよ。
夢が覚めればあたしは折原とデートできないんだから。心配しなくても
デートしたことは瑞佳には言わないから、ね」

 しかし今の浩平にその七瀬の声は届いていなかった。


102 :夢一時(2/4):2001/05/28(月) 17:48
(思い出せ、思い出すんだ俺。誰とどこで会うつもりだったのかを。
 ――目の前が暗いな。)
「なあ七瀬、今日は日が暮れるのがやけに早いな。」
「折原、なに面白くない冗談言ってるのよ。まだまだ日は高いわよ。
瑞佳の所に帰りたいのは解るけど、でも駄目。帰らせてあげない」

その七瀬の言葉通り太陽は中天高く輝いていた。

(目の前が暗い、もう駄目なんだな。ああ、なんだか喉が乾く。血液が
足りないからだろうな。そうだ、川だ、川に行こう。そうすればなんとか
なるような気がする)

 もう浩平にはろくに前も見えず、右手の痛みも感じなかった。感じるのは
ただ左手の七瀬の温もりのみであった。それを力一杯握りしめる。まるで
残された生への執念であるかのように。そして水の流れる音と記憶を頼りに
川に向かって歩き出す。

「ちょっと折原、いたいわよ。でもそんなにあたしを想ってくれるなんて
うれしいな、えへへ」

川へ。その執念だけが浩平の体を支え、前に進ませた。だから川辺に
たどり着いたとき、もう浩平の体を支える物はなかった。

(長森、もう一度、もう一度おまえに会いたいよ)

それを最後に浩平を意識を失った。

103 :夢一時(3/4):2001/05/28(月) 17:50
霧が立ちこめていた。
霧はゆっくりと流れているようで、足下すら見えないほど濃く立ちこめたか
とおもうと、ふととぎれ、色とりどりの花が咲きみだれる岸辺や川面がすかし見える。
それが浩平が目覚めたときの光景であった。

(どうして俺はこんな場所にいるんだろう?そうか、これは夢でそのうち
長森が、『ほら〜、起きなさいよ〜』と起こしに来て夢が――――)
(そうか、そうだ長森はもういないんだ。俺の目の前で死んだんだ)

その時声が聞こえた。それは浩平が今一番聞きたい声であった。

『浩平どうしてこんなところにいるの?早く帰って』
「長森生きてたのか、よかった。おまえが死んだなんて嘘だよな
ただの悪い夢だよな」
『ううん、違うよ浩平。それよりも浩平、早く七瀬さんのところに戻って』
「いやだ、俺はもう戻らない。長森と一緒にここにいる!!」
『――浩平』
「俺はもう嫌なんだ。突然あんな狂ったゲームに放り込まれて、本当はずっと
怖かったんだ。でもおまえ達の、いや長森おまえのために怖いのを我慢して
精一杯気を張ってきたんだ。こんなの幻想だって。夢の中の物語だって。
いつもと変わらない日常なんだって、そう錯覚するほど自分自身をごまかして」
「俺がくじけたらみんな死んでしまう。そう思って必死に頑張ってきたんだ」
「でももう駄目なんだ、おまえがいないと、もう俺は頑張れないんだ――――」

104 :夢一時(4/4):2001/05/28(月) 17:51
『――わかったよ、浩平』
「――」
『浩平がそんなに苦しい思いしていたこと解ってあげられなくてごめんね』
「――」
『本当はね、わたしも浩平と一緒にいたいんだよ。傷つき疲れ果てた浩平
を抱きしめてあげたいんだよ。』
『浩平はたくさんがんばったからもういいよね。休んでもいいよね。
こっちに来て、浩平。わたしといつまでも一緒にいよう』

 浩平が声のした方向に歩き出すと、川があった。川の中に一歩足を踏み
入れたとき、また声がした。

『その川を渡ったら本当に戻れないよ、それでいいの――』

 その声が聞こえなかったかのように浩平は前に進もうとした。しかしそこで
彼の歩みは止まった。

(この川を、この川を渡りさえすればあんな狂ったゲームなんかやらなくて
いいんだ。ずっと長森と一緒に暮らせるんだ、でも――――)
(でも七瀬はどうなる?あの壊れてしまった七瀬は。繭もどうなる。どこかで
一人でみゅーみゅー泣いているだろう繭。その二人を置いてゆくのか?でも
俺は――俺は――)
『どうしたの浩平?』

それからかなりの時間が過ぎ去った。その間流れる川の音以外なんの物音も
しなかった。

「――駄目だ、長森。やっぱり俺はそっちにいけない。七瀬達を置いてゆけない、
それにおまえに助けてもらった命を無駄に捨てるなんてできない。
――帰るよ、俺」
『よくいってくれたね、浩平。それでこそわたしの大好きな浩平だよ』
「長森、最後にひとつ教えてくれ、俺達はまた会えるか?」
『うん、また必ず会えるよ。浩平が大人になって、恋をして誰かと
結ばれて、子供を育てて、その子供が誰かと結ばれて、そしていつか浩平が
天寿を全うする日が来たら、その時はきっとまた会えるよ。だからその時
まで、ちょっとの間だけ、さようなら浩平』

それを最後に浩平は目覚めた

(全部ただの夢だったのか、それとも――――。いや、どっちでもいい、長森の声を
もう一度聞けたから。そうだ、七瀬、七瀬はどうした?)

「あっ、おにいちゃん、折原さんが気がついたよ」

【折原浩平・柏木耕一・柏木初音合流】
浩平が起きた時間、七瀬がどういう状況かは次の書き手におまかせします。

105 :汗と涙と男と女(1/6)訂正:2001/05/28(月) 17:58
×だが、今の建物……おそらくはスタート地点の一つだろう。
○だが、今の建物――火事があったのかしっかりと判別はできないが、おそらくはスタート地点の一つだろう。

その他、細かい所の矛盾もややありますが、その辺は脳内補完でお願いします…鬱。
全焼はしなかったってことで。

106 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 18:00
名倉妹も一緒にいるんじゃないか?
耕一達と。

107 :101-104作者:2001/05/28(月) 18:14
じゃあ
【折原浩平・柏木耕一・柏木初音・名倉由依合流】に
修正ということで。

108 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 18:36
また忘れられてたのか。不幸なキャラだ

109 :名無したちの挽歌:2001/05/28(月) 19:42
そういうキャラこそ、書いてやりたいのだがw
ワシャ浩平&七瀬はもう書きすぎたしな…

110 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 20:06
浩平は死線から復帰したみたいだな。

111 :111[#3]:2001/05/28(月) 20:07
今度は111をもらっておこうw

112 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 20:58
>>111
おめでとう(w

113 :111:2001/05/28(月) 22:15
>>112
ありがとうw
では記念に話を一つあげようw

114 :111@形而下の闘い〜間奏〜:2001/05/28(月) 22:17
「……はあ」

詩子はぽつんと一人で佇んでいた。
空っぽの鞄を置いて、少年は行ってしまった。
少年に置いて行かれて、もう結構な時間が経った。

追いかけていきたかった。でもそうしたらきっと彼に迷惑が掛かる。
もしも彼が戦っていて、そこに私が出くわして、
それで気が散って殺されちゃったりしたら……。

うう、そんなの嫌だよ……。

でも、もしかしたら少年が戻ってくるかもしれない。
だったらむやみに動かない方がきっといい。
でも、まだ彼は戻ってこない……。

そんなことを考えていたら、逃げることも進むことも出来ず、
結局ここでボーっとしてるはめになった。

目の前には森があった。
出口は……見えない。そう易々とは入れるほど浅い森じゃない。
どうしよう……、どうしよう……。
入っていきたいようなそうでないような……、ううー。

詩子の密やかな葛藤は続く。


115 :111@形而下の闘い〜背走〜:2001/05/28(月) 22:21


体が重い……。
本当に油断だった。
ただの女の子だと思ってかかった私の失策だった。

――篠塚弥生は、傷ついた体を引きずって、森の奥へと逃げ込んでいた。

食料も尽きかけ、武器も無くし、あまつさえ余計な手傷を負った。
「こんなところで、立ち止まっている暇は、無いというのに……」
だが、私はまだ生きている。ほぼ、五体満足に動くことは出来る。
今の環境でその状態を保持できたことは、正に千金に値するだろう。

「なによ、それじゃあアタシと同じじゃない」

リフレインする言葉。あの少女――確か、七瀬とか呼ばれていたか――の
言った言葉だ。
同じ……。そう、確かに同じだ。
誰かを守るために闘う。守るために傷つける。守るために――殺す。
そんな人間は、私ぐらいのものだと思っていた。
だが……。

「アタシは二度と、遭いたくないわ」

――同じ目的で戦う人間がいるのなら、私はそれを打ち砕かなくてはならない。
それが、私の戦いなのだから。

ザ……ザ……ザ……ザ……。
どうしても音が立ってしまう。
この体では足音を絶つのも楽ではない。
そのおかげで、危うくいらない苦労を負うところだった。
黒い少年――。
丁度すれ違う瞬間だった。
無造作に歩いていた私の足音に彼は”気付いた”。
あの場を凌ぐことができたというのは本当に運が良かった、としか言いようが無い。
あの少年に見つかるな、
あの少年にかかわるな。
狩る側に回ってからすっかり鋭敏になった本能が、心の中で高らかに
警報の鐘を鳴らした。
何故そこまで彼を恐れたのか? そんなことも分からなかったけれど……。
恐らく傷ついた体が、余計な戦いをするのを拒んだのだろう。


116 :111@形而下の闘い〜背走2〜:2001/05/28(月) 22:22

一歩ずつではあったが、着実に刻まれる歩み。
森の終わりは、すぐそこにまで来ていた。

「!?」
誰かいる!
弥生が見たもの、それは、何かを焦がれている様子でうろついている詩子の姿だった。
これは、チャンスなの……?
弥生は自問した。
あの女の子の付近になにやら鞄がある。もしかしたらあの中には食料が……、
あわよくば武器が眠っているかもしれない。
あれを奪うことが出来れば、ずいぶんこの先の行動が楽になりそうね……。
だけど……、さっきも女の子だと見くびってかかってこのような目にあった。
同じ徹など踏んでいられない。
だから……どうすれば……いいの?
一瞬の迷い。
そしてその後艶やかな笑みを浮かべる。

何を偽善的なことを考えているの?
狩る側に回った分際で?
あなたは今、見くびってかかった彼女にしてやられてことを認めた。
でもそれは本気でかかればいつでも殺せる、ということの裏返しじゃないの?
十人殺さなければならないのに。
まだあと九人も残っているのに。
由綺さんを、藤井さんを守らなければならないのに。

――だったらもうやることは決まっているでしょう、弥生?

ずいぶんと長い一瞬を経て、弥生は再び動き出した。

117 :111形而下の闘い〜折れたヒール〜:2001/05/28(月) 22:24

詩子はまだ知らない。
一人の修羅が、目的を果たさんとする”彼女”が今、正に襲いかかろうとしていることに。

ザッザッザッザッ……!
「!?」
今考えれば、靴のヒールが折れていたのね……。
走りながら弥生は思った。
だがそれももはや隠す必要は無い。
大きな足音を立てて、弥生が詩子に接近する!
「な……!?」
詩子は一瞬立ちすくんだ。そこへ一気に接近する弥生。

「はああああああああああああああ!」

ヴン!

大きく振りかぶり、横凪に詩子を殴りつける!

「きゃっ!」
詩子はとっさにしゃがみ、幸運にもそれを避けた。
(はずした!?)
直撃させることが出来なかった右の拳、しかし弥生の攻撃はそれで終わらない。
「フン!」

ばすっ!

追い討ちをかけるように放たれた弥生の膝蹴り、それが詩子のことを吹き飛ばす。


118 :111@形而下の闘い〜折れたヒール2〜:2001/05/28(月) 22:25
「あぐっっ!」
体勢が不完全だったせいでこれも直撃はしなかった。
だがその蹴りは詩子の腹に浅く入っていた。

やや間合いが開く。
詩子は、少し痛む腹を尻目に弥生をにらんだ。
「……なんなのよ、あなた!」
弥生は返事をする代わりに、間髪いれずに接近しようとする。
(このままだと……殺される!?)
詩子は手近にあったもう一つの鞄――中身の入った――を掴んだ。
そして近づいてくる弥生に対抗してそれを振り回す。

「うわあああああああああああああ!」
絶叫して詩子は弥生に立ち向かった。

ガン!

振り回された鞄が弥生の左肩を捕らえる!

「くっ……」
どこかの傷に響いたのか、顔をしかめる弥生。
だがそれを無視して詩子に掴みかかる。

だん!

弥生が無理矢理詩子のことを押し倒した。
「放して……、放して……よ」
のしかかられた詩子は、苦しそうにそう訴える。
だが弥生は容赦なく詩子の首に手を伸ばす。

「死んで……頂戴!」

119 :111@形而下の闘い〜折れたヒール3〜:2001/05/28(月) 22:28

ぎゅうぅぅっ。

急激に詩子の首が締められる。
「うっ……ぐっ……」
呼吸が出来ない。
それほどまでに弥生は強く首を締める。
その表情は、まるで何かに取り付かれたようで……。

詩子の両手が宙をもがく。
弥生は首を狙うことに夢中で、そのことを失念していた。

ギャリッッ!

「ぎあああああああっ!?」

突然、弥生が詩子から飛び離れた。
……何故か、右目を抑えて。

「か……がはっ……げほっ……!」
拘束から解き離れた詩子はその場で激しく咳き込んだ。
首を締められたことで、一時的な呼吸困難に陥ったのだ。

「おのれ……」
弥生は呪いの言葉を吐いた。
右目を抑えている手の隙間から、血が一筋流れる。

詩子は混乱しつつも、自分の状態を確かめる。
――左手に血が付着していた。

(逃げ……なきゃ)
詩子は鞄を掴むと、一目散に森へと逃げ出した。
少年が賞賛した俊足、傷ついた弥生には到底追えるものではなかった。

「大……失敗の……ようね」
弥生が呟く。
後に残されたのは、弥生と空っぽの鞄だけだった。

―――――――――――――――――――――――――――――
詩子:森の中へ逃亡。呼吸器官に損傷の疑い。
持ち物:中身入りの鞄
弥生:右目を損傷。
持ち物:空の鞄。 

120 :名無しさんだよもん:2001/05/28(月) 23:56
>>99
機関銃担ぎながら詠美をお姫様抱っこて・・・
和樹すごい体力だ

121 :食卓(1/5):2001/05/29(火) 00:04
さて。
空はますますその赤みを増し、まもなく一番星でも見えようかという、その頃。
住宅街を歩く、二つの影があった。
「……ねぇ」
女が、先を往く男に話しかける。
男は応えない。
「……ねえったら」
先程よりやや上ずった声で、再び女が話しかける。
それでも、男は応えない。
「…………」
なので。
女は、実力を行使する事にした。
「人の話を聞きなさいよ!」
「ぎひぃ!」
女の蹴りが股間を直撃し、情けない悲鳴を上げながら男は倒れた。
「……不能に……なる…」
と言う、遺言を残して。
「勝手に死ぬな」
「ぐわっ」


122 :食卓(2/5):2001/05/29(火) 00:04
薄暗い路地裏。
「……まあ、これを見てくれ」
と言って、祐一が自分のバッグをひょいと持ち上げ、繭に渡す。
そのバッグの軽さに少し驚くきつつも、繭はバッグのファスナーを引っ張った。
その瞬間、繭の目が見開かれる。
「こ、これは……」
深刻な表情で、額に汗さえ浮かべつつ、祐一はこくり、と頷いた。
繭はしげしげとバッグの中を覗きこんでいたが、やがて一言。
「……空じゃない」
祐一は、また頷いた。
「ああ、その通りだ」
まだ結構な重さのある自分のバッグを祐一の頭上に振り上げ、繭がひきつった表情で訊いた。
「……つまり、どういう事よ」
と。
その言葉に、祐一は胸を張って答える。
「水も無い食料も無い、腹減った」
繭のバッグが投下され、祐一が今日幾度めかの悲鳴を上げるのはその直後であった。


123 :食卓(3/5):2001/05/29(火) 00:04
「……それはそれとして、確かに食料は深刻な問題よね」
繭の(実は郁未の)バッグには未だ結構な量の食料があったが、
それでもそう長く持つとは思えない。
参加者がまだ半分以上残っている現状では、早期的な終結も望めそうに無い。
勿論それは、最後の一人になるまで殺しあった場合、であるが。
「そうだろそうだろ」
鼻高々に祐一が語る。
「あんたは考え無しに食べただけでしょうが」
それはキノコを食べる前の繭本人にも言える事だったが、繭は当然その事は口にしなかった。
間違えてバッグを持ってきてしまった事に、多少の後ろめたさを感じつつ。
「…それで、つまりはこの住宅地になにか食料は無いか、と立ち寄ったわけね?」
繭がこほん、と小さく咳払いをして、仕切りなおす。
「まあ、そういう事だ」
祐一はそれに同意する。
繭は、ふぅん、と言うと自分のバッグから何かを取り出して、言った。
「……キノコ、食べる?」
「絶対に嫌だ」
間髪入れずに、祐一はそれを断った。

124 :食卓(4/5):2001/05/29(火) 00:05
そしてまた、二人は当ても無く住宅街をさ迷う。
「うが〜、腹減った〜」
「五月蝿いわね…誰かに見つかったらどうするのよ」
繭が咎めるが、食べ物の事で一杯の祐一の頭に、その言葉は届かない。
と、突然祐一の動きが止まる。
繭はそれに反応しきれず、祐一の背中に顔を埋める事となった。
「な、何よ」
祐一は虚空を見て、うわ言の様に呟いた。
「メシの匂いがする……」
「はぁ?」
何言ってるの、とでも言いたげな表情で、繭が祐一の表情を見遣ろうとしたその時。
「あっちだ……」
ふらふらと、祐一は行ってしまった。
呆気に取られる繭だったが、
「……ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
すぐに意識を取り戻すと、慌てて後を追った。

「ここか……」
民家の前。
こんな状況下で灯りがついている、と言う時点ですでに怪しさ大爆発なのだが、
空腹で判断力が低下している祐一に、そんな事を気にする余裕は無かった。
堂々と門をくぐり、侵入しようとする。
「ちょっと待ちなさいよ!絶対罠よこれ!」
ようやく追いついてきた繭が、息も絶え絶えに祐一を引き止めようとするが、
流石に本気を出した男の馬鹿力の前には敵うはずも無く、
祐一の服の端を掴んだままずるずると引きずられる羽目になった。

125 :食卓(5/5):2001/05/29(火) 00:05
ドアの前に立つ。
もう後戻りは、出来そうに無い。
繭が息を飲む。
ちゃっかり祐一を盾に出来る様、真後ろに隠れたままで。
そして、祐一がドアノブを掴み、

「メシ食わせろぉぉ〜ッ!」

勢い良く、開けた。
(あ〜あ、こりゃ死んだかもね)
そう覚悟し、繭が目を瞑ったその時。
「よぅ、相沢じゃないか」
呑気な声が、聞こえた。
祐一の影から、ちょいと顔を出す。
目の前には、金髪に限りなく近い茶髪の男と、グラマーな金髪の女が立っていて、
「このヒト、ジュンの知り合い?」
「おう!俺と相沢は、かつて幾多の死線を共に潜り抜けた…」
「いいからメシ食わせてくれ…飢え死ぬ…」
3人が3人、これまた呑気な話をしていた。

繭は、頭が痛くなった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【相沢祐一・椎名繭と北川潤・宮内レミィ、遭遇。一緒に行動するかどうかは次の方次第で】

126 :名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 00:22
>形而下の闘い
野暮な突っ込みなんですけど、
弥生さんって月島兄から奪った44マグナム持ってませんでしたか?


127 :111:2001/05/29(火) 00:33
>>126
不備」が多くて自分が嫌になってくるな……。
とりあえず剣風では具体的にマグナムと散弾銃を持ち替えた描写が
(今見てきた限りでは)無かったようなので、
戦闘場所で落としたと脳内補完してください。
弥生さんは逃げるのと戦闘に夢中で気が付かなかったんでしょう(汗
続きの話で矛盾を消せれば消します。

とりあえず状態に以下を追加。
弥生
持ち物:マグナムを紛失。

128 :111:2001/05/29(火) 00:38
>折れたヒ〜ル
あ、そうそう。感想スレで出たんで一応こっちでも補足。
詩子は空いた手の”爪”で弥生の目を引っかいたのです。
うきゃ〜〜〜、痛そう……。

129 :名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 00:58

お腹が空いた。

バッサバッサ

「……おいカラス、少しの間でいいからおとなしくしてろ」
大して怖くも無いが、妙な威圧感のある声で僕を促す。
さっきからじっとして、何をやっているんだろう。
左手に持った『小さい箱』をじっと見つめたままだ。
動くな、と言われた手前、体を動かさないように首だけ男の持っている箱のほうに向け覗き込んでみた。

ピッピッピッ

赤い点が、中心の青い点に向かって近づいていく。
男はそれから目を離さない。
息を潜め、右手には例の『危ないモノ』を構え、左手には『小さい箱』
人間のやることはよくわからない。心の底からそう思ってみた。
ピッピッピッ
静まり返った森の中、その音だけが響き渡る。
よくわからないけど、僕まで緊張してきた。
だんだん、赤い点が近づいてくる。
男は動かない、僕も動かない。

ピッピッピッピッピッピッピ……

突如、音が途切れた。

ぐう〜…

「………」

さっきとは打って変わって、これ以上無いくらい、情けない顔をして男は呟いた。
「……なにもこんな時に」

なんだ、どうやら男はお腹が空いていたらしい
こいつ人間のくせに、動かなくてもお腹は空くことを知らないのだろうか。
……いや、もしかして
とてつもなく嫌なビジョンが頭の中に浮かんできた。

130 :名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 00:59
―――僕の首を握り締め、形容しがたい邪悪な顔をしながら男は問う。
『カラス、どうやって食われたい?』
ぶんぶん、首を左右に振り。必死になって拒絶の意を示す。
『ここは、オーソドックスに焼き鳥か、それとも鍋に放り込んで茹で上がったところをポン酢で食うか」
……どっちも嫌過ぎる。
『この、カラステイマー国崎往人の体の一部になるんだ。光栄に思ってくれてもいい』
殺す気でいるのに、なんてえらそうな態度なんだ。バッサバッサ羽を動かしてみる。
『まあいい、とりあえず邪魔な羽を毟らせてもらうぞ』
きゅぴーんと音がしそうなほど輝いた目をこっちに向けて、男の手が伸びてきた。
こんな奴に食われてたまるか!


バッサバッサバッサ―――

「痛え! カラス!おとなしくしろ!」
……男の声が響き渡る。ここは森だった。
妄想に入り込みすぎて、爪を立ててしまったらしい。
これ以上男の機嫌を損ねないように音を立てないように羽をたたんでいく。

男は、言ってから我に返ったのか、『小さい箱』に目を落とす。
続いて僕も首を向ける。
点はまだ中心にきていない。
「聞こえてないか? あと10メートルくらいか…」
安堵の溜息と共に声を漏らし、例の『危ないモノ』を構える。
その顔は、カラステイマーの顔じゃなかった。

131 :救世主(1/1)By林檎:2001/05/29(火) 02:26
「なに寝てんのよ、折原ぁ」
 折原が倒れ伏す。
「夢の中でまで寝るなんて、折原ったら阿呆ねぇ。
 私と折角デートできるのよ?
 現実じゃできないんだから楽しもうよぉ」
 折原を揺さぶる。
 揺さぶる。
 揺さぶる…。
 起きない。
「なんて寝ぼすけ…」
 揺さぶる。
 揺さぶる。
 揺さぶる…。
「ねえ…」
 揺さぶる…。
「ねえ…」
 揺さぶる…。
「ねえ!」

ゴロン

 折原が仰向けになった。
 血が出ている。
 体に力が入っていない。
 呼吸も…。していない?。

 おかしい。
 幸福な夢のはず。
 この血は何?
 認めたくない。
 夢であって欲しい。
 でもあまりにもリアルだ。

「いやぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!!!」
 現実感が戻ってきた。
「折原! 起きてよ! 起きてよ! 息してよ!!」
 必死で揺さぶった。
「折原! 折原! 折原!!!」
 どうしたらいいのかわからない。
 揺さぶるのが正しいのかどうかもわからない。
 こんなことなら保体の授業もっと真面目に聞いておくんだった。
 そんな間抜けなことまで頭をよぎる。

 泣き崩れた。
「折原…。折原……。う…、うぐ…」
 なにもわからない。
 こんなときどうしたら良いのかなど知らない。
 一般人が知る由もない。
「おりはら…」
 涙を流すだけ。

 夢は現実。
 現実は地獄。

 目覚めてみたらそこは地獄。

 でも地獄にも救いはあるのだ。
 救世主はいるのだ。
「浩平君か!?」

 女装マッチョの救世主。

132 : これからを考えて 1:2001/05/29(火) 04:07
天沢郁未(003)は走るスピードを少しずつ緩めて、周りを見回した。
「ハァ、ハァ、ハァ」
息がもう完全に上がっている。
「ハァ、ハァ・・・あの子・・・見失っちゃったか」
水瀬秋子の元から立ち去って、郁未はあの首を締められていた少女を追いかけた。
多少のビハインドあったとはいえ、足の速さには自身がある。追いつけると思ったのだが・・・
「方向を、間違えたのかな・・・それとも、どこかに、隠れたのかも・・・」
あの子の事は心配だった。あんな小さい子まで殺し合いをさせられているなんて吐き気がする。できることならば保護したいと思った。けど、
刹那的な感情で行動するべきじゃない、とあいつは言った。
他人のことに気をとられ過ぎると自分の目的が果たせなくなる、と晴香はいった。
それは正しい。今、この状況では確かに正しい。
お母さんを助けられなかった、あの少女を保護できなかった、水瀬名雪を傷つけた。
もうそれは認めるしかない。どんなに辛くても、もうそれは過去のこと。変えることのできないこと。
だから、いいかげん落ちついて、今からのことを考えないと。
水瀬秋子と対峙したとき、極限の怒りと恐怖の中で、郁未の口をついたのは友人達のことだった。
それが、多分、
郁未の本音、
郁未の核、
郁未の今なすべきことだ。
水瀬秋子のことは今は忘れよう。
もう一度あったときなおも怒りが身を焼くならば、それはきっと刹那的ではない感情。そのときは殺しあえばいい。
とにかく今は、
「一休みね」
ブランクが長いとはいえ、陸上部の元エース。体力は結構自信がある。
だが、もうそれも限界だった。とにかく今は腰をおろして何か口に入れないと。
(正直食欲なんてないんだけどね)
木立の中細々と流れる川の脇に腰を下ろしバックをあけた。
「結構食料は残ってたはずよね」
水のほうもたびたび水場を見つけては補充していた。一人暮らしの長い郁未は、その点結構目端の利くほうだ。
なのに、なかった。
目をこすってみて、もう一度中身をのぞく。
食料も水も、かけらもなかった。
数秒黙り込んだ後、郁未はようやく一つの理解に達する。
「・・・あの・・・ガキ・・・」


133 :これからを考えて 2:2001/05/29(火) 04:09
川で水を飲んで、郁未は一息ついた。多少はらわたが煮えくりかえっているような気もするけれど。
「さて、これからどうするか・・・」
軽いストレッチをしながら、郁未は考える。
まず、由依。怪我をしているのにもかかわらずおいてきてしまった。
けれど・・・彼女は今耕一たちと一緒にいる。
耕一は強い。それに、おそらく合流したであろう折平浩平は銃を持っていた。
今、郁未が由依のそばにいても、それは唯一の戦力ということにはならないだろう。
水瀬秋子という敵を作った今では逆にマイナスという考えもある。
「ごめん・・・由依」
郁未はちくりという心の痛みを無視して、由依のことを頭から締め出した。
次に、晴香。
「晴香だったら、どんな行動をとるだろう? 」
おそらくは二つ。
兄の良祐を探すか、高槻に挑むかだ。
もし彼女が兄を探しているというのならば、彼女に合流するには、何のあてもなう島をさまよう以上のことはできない。
だが、もし高槻に挑むというならば。
晴香の場合なら、何の計画もなくただ突撃するだけ、というのはありえた。
だが、その場合、晴香は失敗して死んでいる。高槻は死んでないのだから。
晴香は死んではいない、少なくとも前回の放送までは。ならばこの可能性も薄いか。
(いや、無理だと断念して晴香が引いた可能性も十分にあるか・・・)
あるいは、晴香にもっとクレバーな仲間ができて、今現在好機を狙っている可能性もある。
それならば、郁未の助力は晴香にとって願ってもないことだろう。
「結局は、高槻を追えということね。」
晴香に合流するつもりならばそれが一番可能性の高い行動だろう。


134 :これからを考えて 3:2001/05/29(火) 04:11
最後は・・・耕一たちのそばから離れることになった原因。葉子だ。
「まさか・・・葉子さんがジョーカーだなんて」
そりゃ確かに葉子さんはFARGO一筋な人で、FARGOに入会したのも消費税導入より前らしいけど・・・
でも、FARGOで分かれたときのあの葉子さんの笑顔が偽者だったなんて信じたくない・・・
郁未は頭を振った。
「だめよ郁未、そんなふうに考えちゃだめ」
今は現実だけを見なくてはならない。今は感情は排さなければならない。甘い観測は捨てるべきだ。
問題提起。葉子さんはジョーカーか?
回答。わからない。
ならば問題を変えよう。自分がジョーカーだったとして、折平浩平達に「高槻を倒す」などと嘘をつくか?私に伝言を頼むか?
回答。否。そんな嘘はつかないだろう。
この椅子取りゲームで殺し合いを加速させたいなら、出場者に人間不信を抱かせ、他人を殺すことでしか生き残れないと思わせるべきだ。
そこで、折平浩平達に高槻が死ぬかもしれないという希望を与えてどうする?天沢郁未という信頼できる人間を教えてどうする?
もし嘘をつくならば、もう既にマーダーがいるとか、ジョーカーがいるとかそういうことをいうべきだろう。
ここで確認。自分は甘い感情から希望的な観測を抱いてないか?
・・・否。今の考察は完全に理屈だけで行ったと断言できる。
OK、では葉子さんはジョーカーではないとして話を進めよう。


135 :これからを考えて 4:2001/05/29(火) 04:14
問題提起。葉子さんは本当に高槻を倒しにいったのか?
回答。YES。葉子さんは高槻を倒しにいった。いくら考えても浩平たちに嘘をつく理由が思いつかない。
問題提起。では、葉子さんはどうしている?なぜ葉子さんの死を告げる放送もなく高槻も死んでいない?
回答。・・・わからない。あまりに情報が少なすぎる。
ただいえることはある。葉子さんは無謀な勝負をする人ではないということだ。
いや、葉子さんとて感情的になることは、多分ある。見たことはないが。
だが、彼女は『約束』していったのだ。葉子さんは大言を吐く人ではない。ならば、
「勝算があったの?それとも今もまだ勝算があるの?」
葉子さんがFARGOにいた経歴を考えれば、自分の知らない情報を葉子さんは持っているかもしれない。
これは、さすがに希望的観測かもしれないな、とは思う。だが、とにかく、
「結局は、これも高槻か。」
ならば、最後の問題。高槻はどこにいる?
もし、島の中にいるというならば高槻は相当な危険を冒している。
出場者だって結構強力な武器を持っているものもいるのだから。
無論胃の爆弾を使えば自分のみは守れるだろうが、それならばこのエリアには近づくな、という指示ぐらい出るんじゃないだろうか?
(ひょっとして・・・高槻はもうこの島には・・・)
いや、やめよう。郁未は思った。
軽薄な推理は窮地を招くだけだ。それが元で耕一たちと別れることになったではないか。
「もう少し情報がいるか・・・スタート地点・・・あっちだったわよね」
郁未は疲れた体をおしてゆっくりと立ち上がった。

【天沢郁未 スタート地点へ向かう】



136 :朋友 1/3:2001/05/29(火) 04:36

「食った食った。やはりレトルトは偉大だな」
「あんた、ほんとによく食うわねぇ…」
「早メシ、早グソ、早ブロは日本人の美徳だからな。俺も生粋の日本人である以上この束縛からは逃れられんのさ」
「なによそれ。初めて聞いたわよ、そんなの」
 相沢祐一(男子・001番)は宮内レミィ(女子・094番)の作ってくれたレトルトのチャーハン4人前を一気に平らげると、至福の表情を浮かべてすっかり満腹となった自分の腹をさすった。一方で椎名繭(女子・046番)はその祐一の底なしの胃袋を目の当たりにしてか、少々食傷気味になったらしく、ちびちびとこれまたレトルトのクラムチャウダーをつついてる。

「まだまだたくさんあるからネ! おかわりたっくさんしていいヨー!」

 キッチンの方からレミィが二人に声をかけた。幸運にも電気系統が生き残っていたおかげで、冷凍庫に納められていたレトルト食品も無事であったし、解凍するレンジも立派に機能を果たしていたのである。
「いや、さすがにこれ以上は食えそうにない。ほんとにごっそうさんでした!」
「ドーイタシマシテー。それじゃお茶いれますネー」
「……………。」
 とたとたと愛らしくキッチンを駆け回るレミィを見て、北川潤(男子・029番)は目を細めた。その北川とテーブルを挟んだ向かいに座る繭は横の祐一を肘で軽く突っつくと小声で彼に尋ねた。
「ね、祐一。あの人達と知り合いなんでしょ? ちょっと紹介してくれない?」
「おお、そうだった。腹減ってて、んなことすっかり忘れてたな」
 繭に促されると、祐一は歯をすすってた楊枝を折って、ガラスの灰皿に捨てた。

137 :朋友 2/3:2001/05/29(火) 04:36
「ヤツは、北川潤。俺と共に幾多の死線を共に潜り抜けた…」
「しってるわ。あんたの戦友の北川さんでしょ」
「ま、そうだ」
 そういうことを聞いてるんじゃないの、といった顔の繭。
「まあまあ、そういう顔をなさりなさんな。俺が転校してきてから最初に仲良くなってそれ以来のつきあいなんだ。言うまでもないが信用できるヤツだ」
 北川も笑顔になって繭に言った。
「そうなんですよ可愛らしいお嬢さん。祐たん・潤ちゃんコンビといえば学園で知らぬ者はいないほどの傍若無人、いや天下無双のコンビだったんですから、いや、ほんとに」
「へぇ…天下無双ねぇ」
 あまり興味なさそう返事をすると、値踏みするかのような目で繭は北川を見た。繭からすれば、どうも”甘っちょろいハンサム”以上でもそれ以下でもなさそうに、北川は映るのであったが…。
 一方で自分の言った「コンビ」という言葉で、住井の存在を思い出し、北川は少し遠い表情になった。このゲームが始まってかなり時間がたつというのに、いまだ彼の消息はまったくつかむことができない。
「そして、俺達にメシを作ってくれた彼女の方は…えー…あー…」
「ああ、彼女の方は相沢も知らなかったよな」
 北川はすぐに表情を戻すと、キッチンの方に顔を向け、ティーカップを並べているレミィをあごで指した。

138 :朋友 3/3:2001/05/29(火) 04:37
「彼女はガルベス。ガルベス宮内だ。オレゴン生まれのトキオ育ちで、普段はワンダーパヒュームをまき散らすナイスガイだが、頭に血が上るとすぐに外角高めの直球を投げるのが玉に瑕だ。ま、今は俺と一緒に行動してるがいずれドミニカに帰って家業の昆布漁を継ぐらしい」
「ほう、よくわかったようなわからないような」
「ガルベス…ね」
 あまり納得が行かないようであったが、とりあえず祐一と繭は頷いた。一方のそのガルベスといえば、気持ちよさそうに鼻歌を歌いながらティーバックの紅茶を丁寧にいれており、彼らの話は聞こえてはいないようである。

「で、相沢。そちらの可愛いお嬢さんだが…」
「うむ、こいつは椎名繭。わけあって予の肉奴隷を…」
 言葉を言い終える前に、ものすごい音がしてかと思うと祐一がテーブルの下に沈んでいた。見れば繭が手に大皿をもって肩を震わせている。
「改めて訂正を求むわ」
「は、はい…。このお方は椎名繭様。逆三顧の礼でこの度私めを奴隷として雇って下さった偉いお方であります、はい」
「よろしい」
 繭はテーブルの上に皿を置くと、何事もなかったのようなすました顔に戻った。
「ふむ、その年で職に手をつけたか。将来設計も万端だな。明るい老後と輝かしい未来か、みなおしたぞ相沢」
「いってくれるな北川。俺にも色々事情があったんだ」
 いつも通りの軽口を叩く祐一の表情が、わずかに翳りを帯びたのを北川は見逃さなかった。


139 :名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 04:53
age

140 :名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 05:06
ガルベス萌えage。

141 :嘘をつくこと、信じること(1/5):2001/05/29(火) 07:35
別の道を辿り、誰にも会わないように願いながら約束の地へと急ぐ。
(笑っちまうよな…早く味方を見つけて…協力したいと思ってるのにな)
心の矛盾。
だが、度重なる出来事で確実に他人との遭遇を恐れるようになっていた。
大志の裏切り、由宇の死、次々と仲間達の死を宣告する放送――。
そして南の豹変。
横で力なく笑う詠美を腕で抱きながら和樹は歩く。
「ここら辺だな……着いたぞ、詠美」
玲子の消えた場所――島の最北の森の中に存在する小さな広場。
便宜上、和樹達はここを『北の広場』と呼んでいた。
そこに、既に一人の影……
「誰だ!?………楓ちゃんか……」
和樹が構えた機関銃を下ろすと同時に楓がこちらへ向かってくる。
「…どうでしたか?」
「いや、収穫なしだ。スタート地点を含めて怪しいとおぼしき場所を見て回ったけど」
「そうですか」
楓の声に落胆は見られない。
「結構冷静だな。こっちは何もなくて結構ゲンナリなんだぜ?」
「いえ…そこを探したことに意味はあります。次は違う処を探せばいいんです。
 そこになにもない…と分かっただけでも収穫はあったと言えませんか?」
「本当に冷静なんだな…」
「ただ前向きなだけです。そう考えた方が後々の為ですし…
 それに元気が出るって思います」
「……」
感心した風に和樹が短く口笛を鳴らす。
同時に楓から何か物を投げつけられ――。
「おっと……」
放物線を描いてゆっくり飛んでくるそれを和樹は片手でキャッチする。
「これは……リンゴ?」
「食料です。向こうの山に少しだけ成ってました。おいしいと思いますよ」
詠美にリンゴを手渡す。遅れて楓からさらにリンゴが飛ぶ。
再びそれをキャッチして今度はそれをそのまま口に運ぶ。
乾いた口内に酸味が広がって――。
「ちょっと酸っぱいけど…おいしいな」
詠美も、和樹が食べたのを確認してからそれにかじり付いた。
「うん…少しすっぱい…」
「良かったです」
楓が遠慮がちに微笑んだ。

142 :嘘をつくこと、信じること(2/5):2001/05/29(火) 07:35
「一応持っといてください」
自分の分を2つ残し、計4つのリンゴを手渡され、和樹はそれを大事に鞄に詰め込む。
「ああ…今、楓ちゃんは食べないのか?」
「私はその場で食べたから大丈夫です」
「そっか……」
少し会話が途切れ、沈黙があたりを包む。
「そう言えば…楓ちゃんはどうだったんだい?なにか手がかりは…」
「……何もありませんでした。どこかに地下へと続く道があると踏んでるんですが」
「……なんでだ?」

楓は、玲子と共に脱出の為の道を探そうと奔走していたこと、
そして、玲子が地下通路があるのではないかと提案したこと、
住宅地のマンホールはすべてコンクリで埋められていたこと等の一部始終を話した。

「…海岸にある祠の中に隠された海底通路があったりしないかな?と思いましたが、
 そんな都合のいいことはありませんでした」
というより祠がない―――少なくとも楓は見つけられなかった。
「マンホールはコンクリで固められてたのか…ダイナマイトでもあれば壊れそうだな」
「そうかもしれません。ですが、すべて想像の域をでない話ですから」
「まあ、そうだけど…でも秘密の通路があるっていう線は捨てがたいな」
「はい……」
そこで、楓の顔が曇る。何か言いづらそうに二人の表情をうかがう。
「……どうした?」
和樹の言葉に、今まで黙って耳を傾けていた詠美も楓を見やる。
「……言わなければいけないことがあります……」
「言わなければ……ならないこと?」
和樹の言葉に少し躊躇して、それでも控えめに頷く。
「南さんのことです……」
「「南さん……の?」」
場に緊張が訪れる――
「私が……殺しました。私が……この手で殺したんです…」
そのとき生暖かい風が吹いた――

143 :嘘をつくこと、信じること(3/5):2001/05/29(火) 07:36
「私が……殺しました。私が……この手で殺したんです…」
ゆっくりと、言葉の意味を噛みしめるように楓。
「う…そ……嘘……だよね……」
詠美の言葉。三人の耳にやけに遠く響く。
「嘘でしょ…嘘だって言ってよ!!」
「南さんの最期の言葉……南さんは最後に…元にもどってくれました」
辛そうに、何かを思うように楓が言葉をしぼりだす。
「だったら……なんで……なんでころしたのよ!!
 どうして…どうして……!?」
詠美が楓の胸倉を掴みあげ、問い詰める。
「言い訳は……しません」
楓が、それだけをようやく口に出す。
「どうして……人を…殺しておいて…どうしてそんなことが言えるのよっ!!!」
詠美が、その白く細い首に手を回し……
「―――っ!!」
締めあげる。
詠美が小さなその体を宙に持ち上げるように全力で力を込めて――
抵抗らしい抵抗もせず、楓の腕が力なく下がって――
「……ば、や……やめるんだ詠美!!」
放心状態だった頭を激しく振って、詠美を後ろから羽交い締めにする。
「殺してやる…殺してやるのぉっ!!」
錯乱状態の詠美を力任せに楓から引き剥がした。

ようやく開放された楓は苦しそうに喉を押さえながら地面にへたり込む。
「うっうっ……みなみさん……みなみさんっ……!」
詠美がその場で激しく泣き崩れ落ちた。
「えいみ……」
目の前の現実――それはあまりにも辛くて……
和樹の瞳から、涙が一滴、地面へと流れた――。

144 :嘘をつくこと、信じること(4/5):2001/05/29(火) 07:38
泣き疲れたのか、詠美はそのまま眠ってしまった。
ただ、無言で時を過ごす和樹と楓。
「なあ…どうしても話してくれないのか?その理由ってやつ…」
やがて、和樹がそう切り出した。南を殺した、その理由を。
「……ごめんなさい……」
楓もようやく落ち着いたのか、いつもの調子でそう答えた。
「みなみさん……」
詠美の錯乱状態が激しすぎたのが原因か、和樹にそのことのショックは少なかった。
むしろ、どうしてそんな悲劇が起こったのか…それが気になって。
「……すまなかったな…詠美も、普段はこんなことする奴じゃないんだ」
「分かってます。それに私は、殺されたって文句は言えません。
 詠美さんの…和樹さんの大事な女性を…奪ったんですから…」
「ほんとうは…理由…あるんだろ?なんとなくだけど、そんな気がする」
「……ないん…です…」
だけど……楓の表情はそうは見えなくて。
「全部一人で背負い込もうとするなよ…な?」
楓の頭に手を乗せ、諭すように和樹。
「だって…だって…」
「楓ちゃん…」
「だって……だってっ……!」
彼女が今まで必死に堪えていた一線。
彼女がずっと、鉄の仮面で隠してきた激情。
それが、崩れた――。
「うああああああ―――かずきさん――わたしっ――わたしっ!!」
和樹の胸の中で、その感情が溢れて――
「……」
泣き疲れて眠るまで、和樹は彼女の頭を撫で続けていた。

145 :嘘をつくこと、信じること(5/5):2001/05/29(火) 07:40
「……漫画書きとして徹夜に慣れておいて正解だったのかな…」
涙の跡を残したまま眠る二人を見守りながらぼやく。
「和樹選手、修羅場モード突入!!……なーんてな」
それに答える者はいない。
「ふう…こんな子供にまで…無理させちゃたよな…」
楓の寝顔を見つめ、一人苦笑する。
(まだ中学生位……だよな?…本当はまだ誰かに甘えたい年頃なのにな)
和樹もまた、心の何処かで楓を頼っていた自分を恥じた。
何も考えず、ただ闇雲に詠美を連れまわして。
そして、楓が陰で傷ついていたことにも気がつかなかった。
(知らず知らずに…俺も、この二人を追い詰めてたんだな…)
「頑張って…島から生きて帰ろうな…」
誰にでもなくそう自然と出る言葉。

楓は結局何も話してはくれなかった、それでも――
(たとえ詠美が…他の誰もが信じなくても…
 俺は楓ちゃんを信じよう――)
心にそう誓った。

もうすぐ太陽がまた沈み、夜がやってくる――。

  【和樹・詠美・楓 合流】
  【三人、それぞれリンゴ2個ずつ入手】
  ※ただの食料ですので反映しなくていいです。武器に使うなら別ですが(w
  ※すでに夕方へと時間軸は移動しました。

146 :名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 09:41
http://green.jbbs.net/movie/bbs/read.cgi?BBS=568&KEY=990888426&LAST=50

葉鍵キャラロワ感想スレ#2 にて ”。」”の使用の是非でもめてます。

以後”。」”を使ったSSを投稿すると、容赦なく叩かれる or NGになるので書き手の方々は留意して投稿して下さい。

147 :名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 11:13
            , -‐- 、
           ,  /   ヽヽ
             i l| iノメノ))) 〉
            ! | i ( | | ||     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
             ルゝゝ~ lフ/リ   < このスレ超ーつまんない
                /` ii'つ_)\    \_______
.              / /'^x^)\_,〉
            / ∧__x_i
             / / /〉-r|
.         `つノレ / i  i !
               / | |l i |
            ヽ__i_,|_|_|
               |_|__|
                l  | |
             l  !! !
              l_!!__|
               |  l  |
            「ー⌒)⌒)

148 :名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 12:23
                            , -‐- 、
                           ,  /   ヽヽ
                             i l| iノメノ))) 〉
                            ! | i ( | | ||     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                             ルゝゝ~ lフ/リ   < このスレ超ーつまんな…
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\           \  \  \_______
|    斬!               │        \ ヽ\ \
\_ ___________/
   V
  Λ_Λ     
⊂(∀’  ) 
  ((千鶴 >  〜〜〜〜〜〜〜〜〜  
  (_\ \  
     (__)                            /` ii'つ_)\  
                                    ./ /'^x^)\_,〉
                                   ./ ∧__x_i
                                 , / / /〉-r|
.                                `つノレ / i  i !
                                   / | |l i |
                                  ヽ__i_,|_|_|
                                     |_|__|
                                     l  | |
                                    .l  !! !
                                    .l_!!__|
                                     |  l  |
                                    「ー⌒)⌒) 

149 :名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 12:42
なんにせよ荒らしまがいだぞ…鬱

150 :名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 12:48
>>149
1つや2つのAAくらいでガタガタ抜かすなや。
肝っ玉の小せえ野郎じゃのう?

151 :名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 13:44
>>148に不覚にも藁タ

152 :111:2001/05/29(火) 17:21
>>146
気にしないで下さい。
誰も文句はつけません。

153 :AA貼り師:2001/05/29(火) 17:53
分かりました。
文句が出ないのならこれからも貼っていきたいと思います(ウソ

154 :名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 21:41
書き手の皆様へ
http://green.jbbs.net/movie/bbs/read.cgi?BBS=568&KEY=990888426&START=744&END=744&NOFIRST=TRUE
第五回放送についてです。
放送関連は慎重に行きたいので、他の書き手様の協力をあおぎます。
今のうちにやりたいネタのある方は、よろしくお願いします。
12時目安に、第五回放送をかけるつもりです。

155 :154:2001/05/29(火) 21:42
訂正、11時目安です。

156 :第五回定時放送:2001/05/29(火) 23:00
「二日目午後六時だ、早速今回も定時放送いくぞー。

 004天沢未夜子 016杜若きよみ(白) 027川澄舞 035倉田佐祐理
 051住井護 065長森瑞佳 070芳賀玲子 071長谷部彩 080牧村南
 093巳間良祐 096深山雪見

 以上11人、残り51人だ。ようやく半分になったなぁ、おい。
 それと、不用意にこのゲームを妨害しようとした奴がいるから、俺が殺しておいた。
 お前達の腹に入れた爆弾は冗談じゃないことが、よくわかったな?
 あまり調子に乗った行動を取らないように、以上だ」


―――――――以下、書き手の皆様へ協力依頼―――――――

第五回放送をかけました。
時間軸調整の関係から、以後の物語は原則的に【放送以降】を想定して下さい。
放送以前のネタがやりたい場合は【放送以前】の注意書きを物語に明記して下さい。
死者を出しても構いませんが、できるなら避ける方向でお願いします。

(注意扱いキャラクタ)
「001相沢祐一 046椎名繭 029北川潤 094宮内レミィ」
「014折原浩平 019柏木耕一 021柏木初音 069七瀬留美 066名倉由依」
「015杜若きよみ(黒) 031霧島佳乃 088観月マナ」

この3パートは、話が続いているか微妙です。
【放送以前】を入れるかは、次の書き手に任せます。

「017柏木梓 020柏木千鶴 033国崎往人 061月宮あゆ」
このパートは確実に【放送以前】だと思います。

「009江藤結花 036来栖川綾香 037来栖川芹香
 050スフィー 079牧部なつみ 100リアン」
このパートは保留。
もし荒門さんの流れでいくなら、【放送以前】です。
荒門さんの流れを無視するなら、放送以降でよいのでしょうか?
すみません、いまいちわかりません。

協力、よろしくお願いします。

157 :星影〜star light〜(1):2001/05/29(火) 23:08
 その放送は、その場にいた四人中三人を凍りつかせるのに、充分だった。
「……」
 無言で祐一は立ち上がり、玄関の方へ歩いて行く。
「……どこへ行くのよ、祐一」
 祐一の方を見ないで、繭は言った。
「……」
 その声にも、祐一は止まらない。
 ただ静かに、玄関のドアを開けようとする。
「祐一!!」
 今度は叫ぶ。
 その声にようやく、祐一は動きを止めた。
「……何か言いなさいよ」
 繭が言う。その声は、震えていた。
 どんな感情がこもっているのかはわからない。
 何も言おうとしない祐一に対する怒りか。
 放送に対する悲しみか。
 その両方か、他の何かか。
 この場にいる人間には、本人すら、わからなかった。
「早く、茜を探す。茜に死なれて、たまるものか……。
 呑気にしてる時間は、俺にはなかったんだ」
 静かに、静かに言った。
 怒りと焦燥が、その声に宿っていた。
「さっきの放送で、誰か知り合いがいたの?」
 繭が問いかける。
「……」
「先輩が二人いたんだよ」
 答えない祐一に代わり、北川が言った。
 その声も、暗い。
「そう。でも、今はやめなさい?
 今はまだ太陽が出てるけど、近いうちに夜になるわ。
 夜動くのは、得策じゃない。
 折角ここには信頼できる人がいるんだから、夜明けまで休みましょう?」
 極めて冷静に、繭は言った。
「……っ、お前なぁっ!!」
 祐一は叫ぶ。
 今にもとびかかりそうな勢いだった。
「こんな中、どんどん人が死んでいくんだ!
 次に名前を呼ばれるのは茜かもしれないんだ!
 そんなことになる前に、俺は会わなきゃいけないんだよ!
 お前にわかるかっ!?」
 悲痛な声が部屋に響く。
 祐一の握りしめた拳は震え、爪が肉に食い込む。
 繭も北川も黙って祐一を見つめ、レミィはおろおろするだけだった。
 しばし沈黙が支配し、次に口を開いたのは繭だった。
「わかるわよ……
 私にもわかるわよ、そんなことっ!
 私だって、あなたと同じなんだから!」
 それが、心の堰が外れる、瞬間だった。

158 :星影〜star light〜(2):2001/05/29(火) 23:10
「さっきの放送に入ってたわ、私の探している人が!
 瑞佳さん、私のお姉ちゃんだった!
 真琴さんとは正反対のような優しさで、私を包んでくれた!」
 涙が流れる、止まらない。
 その雫を、拭おうともしない。
「会いたかったのに……会いたかったのにぃ……瑞佳さぁん……」
 繭は泣き崩れた。
 その姿を目にし、祐一の怒りは既に、消えていた。
「繭……」
「でも、でもね……」
 嗚咽混じりに続ける。
「浩平さんは……七瀬さんは生きている。
 あの人達を信じてる。あの人達は、そう簡単に死んだりしない。
 死なれてたまるものですか。
 私が死んだら、あの人達も悲しむ……きっと悲しむ。
 だから、私も無事でいなくちゃいけない。
 無事に、会わなければいけない……
 あなたも……そうでしょう?」
 祐一は納得できなかった。
 確かに、理屈ではそうかもしれない。
 ここで自分から危険を冒し、死んだりしたら。
 茜も……そして詩子も、きっと悲しむ。
 だがそれでも、早く探さなければいけなかった。
 危険を冒しても、探したかった。
 繭の言い分も、理解できるが、自分には納得できなかった。
 複雑な心境の祐一に、繭の言葉が突き刺さる。

「こんなに冷静に考えたくないよ……。
 こんな理屈に縛られたくないよ……。
 こんな『アタマのよさ』さんて、もういらないよぉ……」

 祐一は、もう、動けなかった。

 やがて、日は沈み、夜になった。
「じゃあ、取りあえず電気はつけないこと。
 ここにいること、誰にも悟られないように。
 寝静まった所に爆弾でも投げ込まれたらおしまいだからね」
 涙が枯れるまで泣き、落ち着きを取り戻した繭の指示が飛ぶ。
 先程までの繭の雰囲気は、微塵もなかった。
「見張りを交代で二人づつ立てましょう。
 交代で寝て、休みをとる。いいわね」
 見張り番を決めて、皆それぞれの行動をとる。
「繭……」
「何よ?」
「さっきは……悪かった」
「……気にすること、ないわよ」
 繭の声は、どこか今までと違っていた。それが何かは、わからない。

 星の光が、彼等を包み込んでいた。
 優しく、優しく、穏やかに。

159 :名無しさんだよもん:2001/05/29(火) 23:12
長さが……。
3パートにわけて、もっと書き込むべきだったかも。
レミィは口調がいまいちわからないため、喋らせてません。
もっと長く書くつもりでしたが、一応ここでやめておきます。
気が向いたら書くかもしれませんが、他の方が続き書いても一向に構いません、当然。

160 :夜の一幕:2001/05/30(水) 00:49
 見張りの順番はこうだ。
 祐一、繭、レミィ、北川という順番に、一時間に一人づつ交代する。
 室内の時計で八時からこのサイクルは始まった。

from 8 to 9 祐一and繭
「……」
「……」
「……なぁ」
「何……?」
「キノコの効果てやつぁ、いつ切れるんだ?」
「そんなこと知らないわよ」
「切れたとこ、見てみたいぞ」
「……恥ずかしいから嫌。その時は、あなたの前から消えるわ」
「残念だ」
「そう、よかったわ」

from 9 to 10 繭andレミィ
「レミィさん?」
「What? どうしたノ?」
「怖くないんですか?」
「んー、怖くないことないヨ。でも、今は自分にできる事を、やるしかないヨ!」
「……そう、強いんですね」
「エヘヘー。サンキュー!」

from 10 to 11 レミィand北川
「……」
「どうしたの、ジュン? 放送から、元気ないヨ?」
「………ず……」
「?」
「もずくが……食いたい……」
「おなか、すいてるの?」
「いや、もずくだ。もずくを、ただ純粋に求めている。
 そう、俺のハートが真っ赤に燃える。
 もずくを探せと、轟き叫ぶぅぅぅ!」

from 11 to 0 北川&祐一
「……」
「どうした、北川。放送の時から、やけにお前らしくないぞ?」
「………ず……」
「?」
「もずくが……食いたい……」
「……」
「俺のハァトが……」
「誤魔化すなよ。ま、無理に言わなくていいけどな」
「そうか、あの子は簡単に流せたのにな」
「レミィか?」
「あぁ、そうだ」
「……」
「……」
「……」
「従兄弟が死んだんだ。住井護、さっきの放送に入っていた」
「何だって?」
「昔からいろいろ悪さしてた。あいつは要領がよかった。
 今の俺がいるのは、あいつのおかげだと言ってもいい」
「はた迷惑な奴だったんだな」
「だが、そのあいつが……」
「おい、流すな」
「そのあいつが、まさかこんな所で死ぬとはな」
「……」
「相沢。これからどうするんだ?」
「茜を探して、その後は知らない」
「お前の女か?」
「馬鹿言うな」
「そうか……俺達、どうなるのかね」
「さぁ、な……」

 夜はふけてゆく――

161 :夜 走る(1):2001/05/30(水) 01:15
「じゃ、お先にな」
 祐一にそれだけ言って、北川は男用寝室に(仮)に入っていった。
 暗い静寂の中、祐一は一人取り残される。
 窓の外は相変わらず星が綺麗で、地上にいる自分達を照らしてくれる。
 いっそのこと、これから歩む道も照らしてくれたらいいのに、と思う。
 そうすれば、こんな所で迷うこともない。
 最後まで、まっすぐに進める。
 その先に何があるかは、別の話だった。
 部屋の隅にある自分の鞄に手をかける。
 中には、僅かな食料と水、カスタムエアーウォーターガン、予備タンク。
 幸運なことに、この武器を使ったことは、まだない。
 ただ一度、名雪を威嚇するのに、口を向けただけ。
 ――名雪――
 名雪はどうしているだろうか?
 錯乱しているかもしれない、自分を助けるために真琴を殺し、そして銃を向けられ。
 今思うと、軽率な行動だと思った。
 だが、後悔してもどうにもならないのだ。
 溜息一つつき、鞄を持ち上げた。
 繭の言葉は、今でも胸から離れない。
 それでも――
「悪いな、繭」
 その場に彼女はいないのに、言う。
 玄関に向かって歩き、

「どこ行くつもり?」

 声を聞いた。

162 :夜 走る(2):2001/05/30(水) 01:16
「なんだ繭、起きてたのか」
「どこ行くつもり?」
「こんな時間に起きたりして、子供は早く寝ろ」
「どこ行くつもり?」
「肌が荒れるぞ?」
「どこ行くつもり?」
 祐一の言葉をひたすら無視し、繭はただそれだけ聞いた。
 バツが悪そうに頭をかく祐一に、軽い侮蔑の視線を送る。
「これだから……男ってやることが卑怯よ」
 ガキが何を言うか――と言いたくなるのを堪え、ただ
「悪い」
 と謝る。
「悪いと思うんだったら、最初からやるんじゃない」
「今度からは気をつける。だから、今は――」
「はいはい。わかったわかった……まったく」
 諦めの視線を送り、そのまま部屋の隅へ。
 キノコが入った自分の鞄を、肩に背負った。
「繭?」
「行くなら行きましょ。見張りいなくなるのは痛いけど、多分大丈夫よ」
 軽口を叩く。
「そうじゃなくて、お前さっき――」
「考えたんだけどさぁ」
 またもや祐一の言葉を遮り、繭は続けた。
「あなたは私の奴隷でしょ? 奴隷は管理する人がいないと。
 勝手な行動とられちゃ、困るのよね」
 言って、笑う。
 その笑みには、他に何の意図もなく。
「いいのか?」
 祐一はそれだけ訊いた。多分答えは――
「しつこい男は嫌われるわよ」
 思った通りだった。
 もう何も言わず、祐一は玄関のノブを回す。
 二人は静かに、それでも力強く、夜の闇へと躍り出た。


「行ったな」
「ジュン、行かせてよかったの?」
「どうせ行くだろうと思ってたしな。
 朝になったら俺も動くよ。このCDを集めてみようかと思う。
 『2』ということは、何かあるはずだ。今の俺には、それしか出来ない」
「そう。応援するヨ!」
「あれ、一緒に来ないの?」
「もちろん行くヨ! 上手くいったらいいネ!」
「そうだな――」

 夜は、さらに深く、強く。
 生きる者を、包みこんでいった。

163 :完璧な部外者。:2001/05/30(水) 01:24
自分がこの殺し合いに巻き込まれる数日前の事を思い出す。
そう――多分、あれが。
無口な叔父が、バイトにやってきた自分を、強く、強く抱きしめた。
店を閉じる、という、小さな一言と共に。
閉店の理由は聞かせてもらえなかった。
というより、叔父はまるで喋らなかったのだ。ただ、強く抱きしめただけ。
ぽろぽろと涙を流したのを見たのも初めてだった。

その理由が、自分を殺し合いに巻き込ませる罪悪感からだったというのは、あまりにも非現実的すぎた。

何故こんな戦いに、自分たちが巻き込まれたのか。
叔父が罪悪感の涙を流しながら、それでも自分たちを戦いの渦に放り込んだ訳は。
それを聞かないまま、命を終えるわけにはいかなかった。
そう――叔父さんは、同情の涙を流してくれたのだから。

スタート地点の近くで茂みに姿を隠しながら、彰は第五回の放送を聞いた。
その中に知り合いの名前はなかった。冬弥の名前も由綺の名前も。
初音ちゃんも無事だ。――それが、せめてもの幸運だった。
そして、――美咲さん、と呟いて、彰は息を吐いた。

数時間、経っていた。彰がそこに辿り着いてから。
マシンガンを構えて立っている兵士に、真っ向からぶつかって勝てる見込みはない。
だが、彰には策があった。
立っているのは一人だけ。他に気配も感じない。
失敗すれば終わりだが、成功の可能性は低くはない。
だが、こんなところで、危険を冒す価値があるのか、と思ってしまうのは、自分に勇気が足りないからではない。
叔父はここにいる、という、その確証がないからだ。
高槻というあの男がいるだけで、他に誰もいないような気がするのだ。
そんな風に思慮に耽る内に、彰は不思議な確信を得始めていた。
――きっと、ここに叔父はいない。長瀬のものは、誰もいない。
そんな直感があった。

164 :完璧な部外者。:2001/05/30(水) 01:25

長瀬家というものがある。
長く、長く続いた名門。その分家筋に当たるのが、七瀬家。自分の家である。
そういえば七瀬という名前の娘がもう一人くらいいた記憶がある。
きっと自分とは無関係だろうが、彼女の名前は未だ呼ばれていない。
まだ無事なのだ、という事実が、不思議な安心を彰に与えた。
――叔父、フランク長瀬。叔父も、長瀬家の末裔である。
そう――思い出してみれば、あの日の喫茶店に、叔父に似た顔の男がいなかったか――
いたのだ。髭こそ生えていなかったものの、似たような眼をした男が。
それを、彰は間違いなく眼にしていた。――無意識下のうちに。
だからこそ彰は、長瀬家が黒幕ではないか、と推測するに至ったのだ。

それにしたって、建物の守備が貧弱すぎるような気がする――
兵士を見ながら、そんな事を思い、――はっと、息を飲んだのは。
初音が修理した中華キャノンを思い出したからだった。
マシンガン……。そんなもの大した武装になろうか?
あの強力なレーザー砲を相手にした時、マシンガンなど鉄アレイ程度の役目しか果たさぬ。
誰か、強力な武器を持った人間が反抗を志せば、簡単に建物内部に侵入できるのだ。
――そこに誰かが(或いは何かが?)いるからこそ、門番は存在しなければならない。
しかし、門番の役目を果たさぬ門番に、何の意味があろうか。
彰は、だからそこで見つける事が出来た――小さな、小さなカメラを。
――体内爆弾。
ぶるり、と身体を震わせた。
もし自分が門番を襲撃したならば、その瞬間、自分は粉微塵になる。
思い止まって良かったと思う。
というより、最初にそこに思慮が回らなかったのは、自分がそれ程に愚かだったと云う事か。
だが、爆弾が体内に仕掛けられているなど、彰にはまるで実感がわかないから、
それは仕方がないと云えば仕方がない事だった。

165 :完璧な部外者。:2001/05/30(水) 01:25
彰は、だがそこで、ある種の疑問を抱いた。

しかし――
それならば、何故、門番を置く?
カメラがあるのならば、わざわざ門番を置く必要がないではないか。

そして、――爆弾について。
どうやって、特定個人を爆発させる?
どうやって、監視している?

そこまでだった。
それ以上を推理する事は現在の彰には不可能だったし、推理できたとしたら彼は天才である。

長瀬家の連中は、ここにいないとしたら何処にいるのだろう。
――島の外ならお手上げだ。
だが、島の中にいるならば。
あるいは、自分の直感とは違うが、この建物の内部にいるのだとしたら、
――そして、先の推論。どうやって企画者達は自分たちを監視している?

――そして、一つの推論に至る。
空を眺める――曇天で、何も見えない。
その裏に何かが存在するような雰囲気もないし、何かが飛ぶ音も聞こえない。
だが、空からなら、或いは自分たちを監視する事も出来るのではないか。
突拍子もない事を思いついたものだ、と彰は苦笑した。
そんなところにいたら、自分はどうしようもないじゃないか。
彰は少し身体を休める事にした。決行するにしろ、もう少し遅くになってからだ。
切り札を抱えながら、スタート地点のすぐ傍の茂みの中で瞼を閉じた。

門番を置く、その理由を、彰は半分ばかり、無自覚の内に理解していた筈なのだ。
自分の中に爆弾が仕掛けられているなど、信じられない。
爆弾を仕掛けられているのは、事実だった。
だが――ジョーカーを除いた参加者の中で、二人だけ、爆弾を仕込まれていない人間がいる。
その二人の為の門番だったのだ。
建物の中には高槻と、兵士が数人程度いるだけだ。
だが、そこには――通信機がある。

七瀬彰、そして、もう一人の長瀬――長瀬祐介。
この二人が、その意味で、この島に於けるイレギュラーだった。

166 :名無しさんだよもん:2001/05/30(水) 01:35
うあ。面白い。

167 :始まりの地点で:2001/05/30(水) 01:42
 ガサガサ。
「うー…まだかなあ…」
 詩子は森の中を歩いていた。
 少年が戻ってくる保証はない。考えたくはないが、最悪の場合もあり得る。
 確かにここは見通しはいいが、それは向こうからも同じと言うことだ。ロクな武器もないこの状況でおかしな奴に見つかったら、一巻の終わりかも知れない。
 それに何より、じっとしていても何も始まらない。
 そう判断した詩子は、結局森の中に入ってみることにしたのだった。
「うーん…おとなしく待ってた方がよかったかなあ…」
 森は思ったより深かった。もうかなり歩いているが、なかなか出口は見つからない。
 いい加減歩き疲れた頃、
「ふう…! あっ!」
 森の切れ目が見えてきた。その向こうには、なにやら建物らしき影。
「はあ…やっと抜けられるよ…」
 森を抜けた詩子の目に飛び込んできたのは。
「…ここって確か…」
 その建物は、最初に集められ、この狂った企画を知らされた、あのホールだった。

168 :始まりの地点で:2001/05/30(水) 01:42
「…誰もいないね」
 ホールは既にもぬけの空となっていた。ゲームの最初にあれだけいた兵は一人もいない。
なにやら細々とあった物も全て撤収されており、そこに残っていた物は、わずか3つだけだった。
 ──1つは、名も知らぬ少女の死体。ゲームの始まる前に突然殺されてしまった少女。すでに死体は腐敗が進んでおり、悪臭が鼻を突く。
 そして、もう2つは、そこからだいぶ離れた、部屋の隅にまとめて置かれていた。
「誰のだろう、これ」
 そこに放置されていたのは、2つの鞄。しかし、まだ新しく、しかも上には埃が積もっている。誰かが手を付けた様子はない。
 そして、部屋に放置された死体。それで、詩子は理解した。
 そうか、これは余った鞄だ。もともとあの子に支給される予定の物が、死んだから余ったんだ。
 でも、何で2つなんだろう。もう一人誰か死んだのかな? それとも単なる数え間違いか、予備品だったんだろうか。そこまではわからない。
 とにかく、今の詩子にこれはありがたかった。あわよくばまともな武器が調達出来るかも知れない。
 早速一つ目の鞄を開けてみる。
 水や食料と共に出てきた物は、何かの機械と、燃料のようなもの。
 説明書によると、火炎放射器らしい。これは、けっこう使えるかも知れない。
 そして、もう一つの鞄の中から出てきた物は。
「…何これ…」
 表には人の肖像、裏には鳥の絵の描かれた紙の束。分厚い札束だった。
 詩子は思わず苦笑いをしてしまう。こんな所でお金が何の役に立つのか。これで人を買収して味方に付けろとでも言うのか?
 まあ、火種くらいにはなるかも知れない。一応持っていってもいいだろう。
 詩子は、部屋の死体に向かって心の中で弔い、ホールを後にした。

「さてと…茜、どこにいるのかな…」

【詩子 火炎放射器・札束入手】

------------------------------------------------------------
鞄が2つ残っているのは、1つはみさきが受け取りを拒否したからです。
鞄が撤収されていないのは、渡されない鞄の中にCDが入っていると困るために、長瀬達が高槻に(理由を教えず)指示したということで。

169 :167-168:2001/05/30(水) 01:47
げっかぶった。キャンセルで。

170 :すれ違う想い(1/5):2001/05/30(水) 03:11
「ふう…だんだん冷えてきたなぁ…」
昼間動き回ってたせいだろうか……体温の低下が激しい。
汗を含んだシャツがまだ冷たく感じられていた。
「ほんとは火を灯したいとこだけどな…」
不用意に危険を招くことはできない。
ただでさえここには守ってやらねばならない女の子が二人いるのだ。
「……そうですね…少し寒いですが、仕方ないです」
久しぶりに和樹の声に反応した少女。
「起きたのか…もういいのか?なんならもう少し寝てても…」
「いえ……もう落ち着きましたから。すみません、取り乱してしまって……」
「そうか」
「もう、日が暮れますね」
「ああ」
「暗いうちはあまり行動しないほうが得策だと思います」
「そうかもな…」
ゆっくりと上半身を起こし、和樹へと寄りかかる。
(すっかりなつかれてる気がする…)
和樹は思わず苦笑した。こういう形で頼られるのもまた、悪くない。
「とりあえず…状況をもう一度整理したいと思うんです」
「そうだな、次の行動もまだ決まってないことだし」
まだ眠る詠美の髪を軽く撫でながら、和樹もそれに従う。
「楓ちゃんはどう考えた?」
楓にばかり精神的な負担をかけないよう…と誓った和樹だったが、
それとこれとは話が別だ。
楓の頭の回転の速さは帰るための大きな武器なのだから。
「そうですね…まず胃の爆弾はあるということは間違いないと思います。
 あの女の人にだけ爆弾が仕掛けられていて、偶然爆発させることができた…と考えるほうが
 あまりにも不自然です……」
「まあ、そうだな」
「あの人…高槻さんは言ってました。『無理に取り出せば爆発する』と。
 ですが、本当の所は…その…」
「まあ、そうだな(あんな奴にさん付けするな)」
楓は恥ずかしいので言いきれなかったが、いわゆる排泄行為やちょっとした吐き気で
外に出るような代物ではないのだろう。人間の生理的な現象で自爆というのは
主催側の本意ではない気がしている。
無論、和樹の考えのひとつに過ぎなかったが。
兎にも角も、無事外の世界に帰れれば爆弾処理はなんとかなるだろう。

171 :すれ違う想い(2/5):2001/05/30(水) 03:16
「次に脱出経路ですが…おそらく脱出できる場所はないって思ってます。
 むしろ『脱出できるなら脱出してみろ』と言われてる気がします。なにせ周りに陸地が見えません」
「………」
それは和樹も疑問に思っていたことだった。
「だけど、主催者もここで骨を埋める気だってんならともかく、生きて帰る気なら
 絶対その手段があるはずなんだ。船とかがな…」
「はい。だから…」
「切り札は向こうにあり……か。みんなが生きてここを出る為には…」
主催側との正面対決は避けられないのかもしれない。
「ですが、船は見当たりません」
「船がないとすると…潜水艦か、無線で連絡をとりあって後、ヘリか飛行機がくるってとこか」
「……」
だが、一番有りそうな飛行機…空を飛ぶ乗り物は人の目に付きやすい。
すでに50人近くの人間が死んでいるのだ。
そんな中でマスコミの目をかいくぐるのは至難の業だろう。
「妥当な線としては潜水艦ですね……そうなれば…」
「やはり地下通路か?さっきも出たよな、その話」
「…決め付けるのは危険ですけど。……仮に無線で飛行機という形だった時は無線室、あるいは無線機を押さえれば助けが呼べます」
「その時は同時、あるいは先に胃爆弾のコンソール室を押さえなきゃな」
「そうなります」
スタート地点には――といっても和樹が知っているのは焼けた公民館だけだが――すでに黒幕の姿はない。
手の届かない…というより手の出せない所に隠れ潜んでいるのかもしれない。
だが主催側の人間(すでに事切れていた)が島にいたことを考えると、そこへつながる道があると考えるのが妥当だろう。
それは恐らく容易には見つけられない場所。


172 :すれ違う想い(3/5):2001/05/30(水) 03:18
「あとは結界……だったっけ?」
「……その辺はよく分かりません」
「まあな…超常現象って言っていいのか分からないけど、苦手なんだよ」
楓の鬼の力…ほとんど発揮できはしない。鬼の威圧感と、常人よりも若干高い運動能力を出すのが精一杯だ。
「とにかく、それだけの事を成すには…」
「はい。仲間が少なすぎるかもしれません」
「映画だったら一人でもどうにかなりそうなのにな…現実は甘くないわ」
「私の知り合い…姉さん達に会えればきっと力になってくれます」
だが、楓の顔は晴れない。
千鶴の所為を思い出してのことか、姉妹の、そして耕一の無事を祈ってのことか、
それは楓にも分からなかった。
「和樹さんも心に留めておいて下さい。今話し合ったことは…」
「ああ、確実性はない推論…だろ?決めつけて行動するとロクなことにならないな」
「はい、それがいいです。正直分からないことだらけですから」

今和樹達にとって確実に分かることは……主催側の戦力が未だ不明瞭なことと、
現時点では同じ志をもった仲間には会えない…ということだ。当然先の出来事の胃爆弾の存在も認めざるを得ない。
そして、一番危険なこと――放送ですぐ名前が挙げられることからも伺えるが――
自分たちの行動が筒抜けな可能性があるということ――そうなったら今の状態ではお手上げだ。
相手に何らかの手段でこちらの手の内を知る立場にあったとしたら…(それはレーダーや隠しカメラ、なんでもいい)
例えば、胃爆弾を止める手段があったとして、それを素直にさせてくれるとは思えない。
むしろ、相手にとって侵入されて不都合な場所は何かしらの対応処置が取られていることだろう。
こちらには、反抗しうるだけの武器が支給されてるのだから、何も無いと考えるほうがおかしい。
それを見極めない限り、反抗しても犬死してしまうだろう。結局、脱出よりも先になすべきことは胃爆弾の爆発を押さえること――
――まったくもって頼りにならない情報量だった。

173 :すれ違う想い(4/5):2001/05/30(水) 03:19
「…………」
「詠美…目が覚めたか?」
「……起きてた」
「そうか…」
いつから起きてたのかは気がつかなかったが、詠美は無表情のまま起きあがり沈みゆく夕日を眺めていた。
「夜の行動は控えたほうがいいと思う。疲れてるならまだ寝てたほうがいいぞ?
 さっきのことは…俺も楓ちゃんも気にしてないから」
それは詠美を思いやってかけた言葉。だけど……
「かずき……わたしより…その子のほうがいいの?」
「……詠美?」
楓を睨みつける。
「わたしにはっ……もうかずきしかいないのにっ!
 由宇も…南さんもいないのにっ……!!」
「え、詠美さん……」
楓が詠美にゆっくり手を伸ばし――
「さ、さわらないでよぉ!!」
その手は払いのけれれる。
「詠美…落ち着け!」
和樹が詠美の両肩をつかみ、揺さぶる。
「わたしじゃダメなの!?わたしじゃたよりにならない?
 答えて!こたえてよっ!!」
「詠美……」
たしかに楓は可愛い。もう心のどこにも疑念も無いし、
絶対に守ってあげたいとも思っている。
だけど、それは恋人の好きのそれとは違う。
だが、楓の目の前でそれを告げるのはためらわれた。
「このどろぼうねこっ、このひとごろしっ…!わたしのかずきをかえしてっ……!!」

そして――その時最悪のタイミングで5回目の放送が流れた――

174 :すれ違う想い(5/5):2001/05/30(水) 03:20
『二日目午後六時だ、早速今回も定時放送いくぞー……』

不快な声の中に混じる知り合いの名前…芳賀玲子、牧村南、そして…長谷部彩の名前もあった。
「彩ちゃんまで……」
和樹が悔しさに、己の不甲斐なさに、拳を震わせた。
そして詠美は……
「わたしっ、かずきのことしんじてるっ…だけどっ…だけどっ…」
そして、そのまま広場を飛び出した。
「詠美――っ!!」
「詠美さんっ!」
銃と、まとめてあった鞄を2つ――詠美と和樹の分だ――をひっつかむように手に持つと、
その後を追う。
本当はそのまま身軽なまま追いかけるべきだったのかもしれない。
だが、この島で武器を持たないのはあまりに危険……和樹の本能がそう体を反応させた。
楓もそれに続く。
「待てっ!詠美!!」
まさか、ここまで詠美の心は極限状態に追いつめられていたなんて……
(俺は、本当にバカだ――)
ただ、無我夢中で詠美を追った。


「はあ……はあ……」
手ぶらな詠美と、重い荷物を持った二人とでは走る速度が違いすぎた。
楓も常人よりは足が速いとはいえ、詠美のそれには遠く及ばない。
「くそっ!…くそっ…!」
手近な木を力任せに殴りつける。
「どうして…ちくしょう、俺はどうして気づかなかったんだ……
 詠美が、俺を必要としてくれてたのに…
 絶対に離しちゃいけなかったのに……!」
「…和樹さんは悪くない…私が…和樹さんを頼りすぎていたから…
 それに…こんなときでも、千鶴姉さん達の名前がなくて…ホッとした自分がいたんですから…」
「…違う…自分を責めるな…」
本当は和樹にも分かっていた。誰も悪くないってことを。
次々と友達が死にゆく中、感情的になってしまった詠美も、
その悲しみを押し込めて、冷酷に見えるほど冷静に行動しようとしている楓も、
そして、気がついたら他人との触れ合いに恐れを抱くようになっていた和樹も。
「…探しましょう…!まだ遠くへは行ってないはずです。
 今の詠美さんを一人にしておくわけには行きません!」
「ああ…詠美…無事でいてくれっ……!!」
気がついたら日は沈み、夜の帳が下りてきていた。

 大場詠美【初期配布武器(不明)紛失】
 千堂和樹【詠美の武器(不明)回収(リンゴ含む)】

175 :170-174:2001/05/30(水) 03:23
かぶってない…よな?
ほとんど和樹の憶測だし…
たしかスタート地点は4つあったはずだし……

何か不都合があればNGで良いです。

176 :竜虎 1:2001/05/30(水) 03:27
巳間晴香(092)は目の前にあるそれを信じる事は出来なかった。
「嘘でしょ?兄さん・・・」
晴香は思わず兄、巳間良祐に覆い被さる。
「嘘でしょ!嘘だといってよ!兄さん!」
必死に体を揺さぶるが、応答なんてある訳がない。
「目を開けてよ・・・」
晴香は服が血で汚れるのも関わらず、良祐の体を抱きしめた。
その身はまだ暖かいのに、もうそれは何も晴香に応えてくれない。
「・・・あたたかい・・・?」
そう、その体は暖かい。それはつまり・・・
「死んで間もない・・・まだ近くにいるのね?兄さんを殺したやつが!」
晴香は血走った目であたりを見回した。
「どこにいる、どこにいるの!」
晴香はジョーカーとして高槻の元を離れてから、ずっと迷い続けていた。
智子達を助けたい。そのためならなんでもする。それは偽りざる気持ちだった。
だが、誰を殺せばいい?誰がもっとも生きる価値がない?
そんな反吐の出るような選択を自分はしなくてはならないのか?
いっそ自分の前に敵が現れてくれたら・・・そう思ってさまよう晴香の耳に聞こえてきたのが銃声だった。
急いでその場にきてみればこのありさまという訳だ。
「感謝するわ・・・」
晴香は低い声をだしてゆっくりと立ち上がった。
もはや迷う必要はなかった。自分は殺すべき敵を見つけたのだ。
「必ず、見つけ出して、このお礼はさせてもらうから・・・」


177 :竜虎 2:2001/05/30(水) 03:29
「初音ちゃん。あんたもちょっと休んだ方がいい」
折平浩平の声に柏木初音は笑顔で応えた。
「大丈夫だよ、浩平お兄ちゃん。お兄ちゃんこそ横になった方がいいよ?」
「そういうわけにはいかねぇよ・・・」
そういう浩平の声は、だがとても力強いといえたものではなかった。傷がまだいたむのだ。
あの一戦の後、気絶した浩平と七瀬留美をかついでこの湖ぞいのロッジに運んでくれたのは、柏木耕一だった。
だが、その耕一も今は・・・
「耕一お兄ちゃんも大丈夫なの?苦しそうだよ。二階で寝た方がいいよ。」
初音に対し耕一は黙って首を振った。
しゃがみこんだままの彼の息は荒い。額には脂汗が浮いている。
女装姿のマッチョは息を切らしているってのは傍目から見たらかなりヤバイ姿だが、その表情は本当に苦しそうだ。
それは、昨夜力を使いすぎた反動だった。
「へっ、その格好で、息あげてんのは犯罪だぜ。寝てこいよ」
「うるせー。怪我人のあんたこそ寝てろ」


178 :竜虎 3:2001/05/30(水) 03:30
今、寝室のある二階には名倉由依が寝ている。彼女の怪我も命に関わるほどのものではないが、浅いものではなかった。
(まぁ、気持ちは分かるよ、柏木)
本来なら、初音の言うとおり、自分達も二階に行って休息を取るべきだった。
けど、それは一階に初音と七瀬を残す事になる。それは、男としてあまりにみっともなかった。
(全く、ぼろぼろだな、俺達)
浩平と由依は肩を負傷、耕一は力の反動でろくに動けない。そして七瀬。
七瀬は特に体の方は問題無かった。だが、心は。
七瀬は今、部屋の片隅でうずくまっていた。膝の中に頭を埋めてその顔は分からない。
起きてはいるし、食事もとっていたが、終始何もしゃべらず、目もうつろだった。
(守れなかったのか、俺は。長森だけじゃなくて、七瀬も)
だめだ。くそ、このままじゃくじけてしまう。守るって誓ったのに。
いや、まだだ。まだ、七瀬は生きている。生きてるのなら守ってやれる。
「それじゃ、私、由依さん見てくるね。」
そういって、二階に上がる初音を見届けて、浩平は銃を握る手に力を込めた。
「無理するな、お互い」そう声をかけてくる耕一に
「ま、一応男だからな。」浩平が応じた時、
バンッ
という音がして扉が突然蹴り開けられた。
驚いて扉の方を振り向く浩平と耕一。その視線の先には。
「見つけたわよ・・・」
夕日をバックにした、日本刀を構えた女がいた。
「誰だよ、あんた!」
浩平はそう声をあげて銃を構える。
「巳間晴香。あんたらに殺された巳間良祐の妹よ!!」
その声と同時に女は飛び掛ってきた。


179 :竜虎 4:2001/05/30(水) 03:31
銃声、怒声、打僕音。
うるさい、もううるさい、静かにしてよ、お願いだから!
私はずっと、耳をふさいで、目を閉じて、うずくまっていた。
折原や耕一さんやそれと知らない女のどなる声が聞こえる。
もういや、なんなのこんな現実。
こんなの認められない、こんなのは嘘。
何も見たくない、何も聞きたくない、何も感じたくない。
だってこれは嘘の世界、あってはならない世界。
だから、私はすべてを遮断する。こうしてうずくまっている。
こうしていれば、折原が、耕一さんが守ってくれる。
あるべき世界を取り戻してくれる。
だって彼らは救世主だから。
でも、なるべく早くしてほしい。やっぱ怖いもん。
だめだ、もっと深く、もっと沈んで、もっと何も感じないようにしないと。
でも、そこで、会話が、今朝瑞佳と交わした会話が、頭に浮かんできた。


180 :竜虎 5:2001/05/30(水) 03:32
『あいつ遅いわね。何処まで水汲みにいってるのよ』
『でも、浩平立派だよ。昨日ずっと見張りをしてくれたんだもん』
『まぁ…それは感謝してるけど』
『…七瀬さん、起きてたでしょ明け方』
『な、何のこと?』
『いいよ、気を使わなくて。…ごめん七瀬さん。私、七瀬さんがおきてるのきづいてて浩平にあんなこといったの。やな女だよ。私。』
『…折原も気付いてたの?』
『気付いてないと思う。浩平鈍感だもん』
『そ、そう。ま、どうでもいいけど』
『よくないよ!だって、守ってほしいのは七瀬さんだっていっしょなのに!』
『な、なにいってるのよ瑞佳、あんな奴に守ってほしいだなんて思わないって』
『七瀬さん…』
『ま、まぁ、でも少しはうらやましいかな、瑞佳のこと。守ってやる、なんていわれるなんて乙女冥利に尽きるじゃない?』
『…私は、七瀬さんのほうがうらやましいよ…』
『は、私?何で?今朝の私って相当惨めだと思うけど。』
『私、浩平のこと大好きだよ。大好きだから、守ってもらうだけじゃなくて、守ってあげたいと思う。浩平の事、守ってあげたいと思うもん。だから、浩平を守ってあげられる七瀬さんのことがうらやましいよ。』
そのときの瑞佳はとても必死で、真剣で、切なくて、ああ、これが乙女なんだな、って私は思って。
そして、瑞佳は、その後、浩平を守って死んだのだ。
…なによ、なんなのよ、これは!!
そう、こんな現実は認められない。こんな現実は許せない。
私が、この七瀬留美が、こんなときにじっとうずくまってるなんて…!!
こんな現実を許すわけにはいかない。
なめないでよ、ふざけないでよ、
七瀬留美なのよ、私・…!!
私は起き上がると、ありったけの力をこめて、吼えた。飛び出した。


181 :竜虎 6:2001/05/30(水) 03:33
浩平達は苦戦していた。最初の銃の一撃がかわされると、その衝撃は今の浩平には辛く、銃を握る力が緩んだところに、日本刀を投げつけられたのだ。
 銃と刀はあらぬところに飛び、その後は格闘戦だった。
普段の耕一と浩平なら問題はなかっただろう。だが、このとき二人の体調はぜっ不調も極まれり、銃声を聞いた初音が加勢にきても、晴香のほうが圧倒的に有利だった。
だが、その場を一つの怒声が切り裂いた。
「おんどりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
意外な方向からの七瀬の攻撃に晴香は意表が突かれた。
その頬に加速の乗った渾身の拳がめり込む。
「な、なによあんた!!」
体勢を崩す晴香。そこにタックルをしかける七瀬。
二人はごろごろ転がりながら外に飛び出す。
マウントポジションを取ったのは七瀬の方だった。
七瀬は晴香の襟をつかむと、
ごっ、
その顔に頭突きをかます。その筋の専門用語ではパチキとも言う。
「がぁ…!?」思わず悲鳴をあげる晴香。かまわずもう一撃と、七瀬は頭を振り上げる。
だが、そこは晴香もさるもの。それよりはやく肘で七瀬のあごを突き上げた。
「ぐあっ!!」たまらず身を除ける七瀬。その隙をついて晴香は七瀬を蹴り飛ばし間合いを取った。
「いったぁ…よくも乙女の顔を!」
「ど、何処の世界に頭突きかます乙女がいるのよ!!」
「わかってるわよ!!」晴香に怒鳴り返す七瀬。逆ギレともいう。「これが乙女らしないってのはわかってるわよ!!けどね!!」七瀬は息を吸った。
「危なくなったらピーピー泣いて!!助かったらヘラヘラ笑って!!私が憧れる乙女ってのはそんなに底が浅いものじゃない!!」
「な、なんだかよくわかんないけど、上等じゃない…!!」
「手を出さないでよ!!あんた達!!」
『出しません、出せません』
おもわずハモる傍観者3人。
夕日をバックにファイティングポーズをとる二人。
そして、由依は、
「ムニャ、ムニャ…うるさいなぁ…」
まだ、寝ていた。


182 :竜虎 7:2001/05/30(水) 03:34
「へちょい攻撃ね!!」
誰かさんのきめ台詞をパクリながら、晴香は七瀬の拳をいなす。
「いわせておけば…!!」
連続攻撃を仕掛ける七瀬。そこに、晴香の的確なローキックが炸裂する。
「っぐう…!!」そこは古傷のある場所だ。七瀬は顔をゆがめる。
「あんた…そこ…?」
少し動きを止める晴香に七瀬の反撃が繰り出される。
顔面にクリティカルヒット!!晴香の顔もはもう既にかなり腫れている。
無論それは七瀬も同じ事だ。多分、鏡をみたら死にたくなるだろうな、とかチラッとそんなことが頭を掠めた。
「あんたのパンチ、腰が入ってないのよ!!」
「あんたは目に頼りすぎよ!」
根拠のない罵声をかわしながら二人は殴りつづける。
「もうそろそろとめたほうがいいんじゃないかなぁ。耕一お兄ちゃん、浩平お兄ちゃん」
「…情けない兄Sを許してくれ、初音ちゃん」
勝負はここまではまったくの互角。だが、古傷のある七瀬のほうが少しずつおされていた。
そして、
ガッ、という音と共に七瀬のひざが落ちた。
「く…この…」
「ふっ・…格の、違いが、わかったかしら」
晴香の息も既に荒い。最後の一撃を放とうと拳を振り上げる。
だが、そこに、まるで場違いな声が響いた。
「もう…うるさくて…ねむれないですよぉ…」
「あ、由依さんおきたんだ。」
「へ?由依?」
おもわず振り返る晴香。
その隙を突いて、七瀬の渾身の力をこめた右ストレートが放たれた。
「…!?クッ!!」
それに反応する晴香。結果は。
七瀬の頬には晴香の拳が。
晴香の頬には七瀬の拳が。
そして両者は同時に崩れ落ちた。

【七瀬留美 巳間晴香 ダブルノックダウン】


183 :111@形而下の闘い〜邂逅〜1:2001/05/30(水) 07:37
死者の埋葬は骨の折れる作業だ、
と僕は思っている。
ただ穴をあけて埋めてやればいいというものじゃない。
その人物の死に際を偲び、それ相応の敬意をもってその終止を成さなければならないからだ。
誇りを持っていい仕事かもしれない。
何が言いたいかと言うと、まあ……つまり骨が折れるということだ。

「ふぅ……」
少年は一息ついた。
その近くの地面には、二つほど大きなふくらみがある。
墓標らしく見せようとしたのか、一方には木の枝が刺され、もう一方には白い小さな花が捧げられている。

落ちる日は、まるで死者を弔うように、優しい輝きを灯していた。

少年はしばし無言で立ち尽くす、だが――。
「……いるんだろう、出て来て良いよ。殺気が無いのは分かってたから。
 大丈夫、僕も危害を加えるような真似はしない」
どこに向けて言ったのかも分からないが、ともかく彼はそう言った。

「……気付いていらっしゃったのですか」

誰もいないはずの背後から返事が返ってくる。

「まあ、ね」
振り向きもせず少年は答える。
「そんなにおどおどしていては、絶っているつもりの気配にも影響が生じるさ」
「……そうですか」
声の主は、それまで誰もいなかった木々の狭間に姿を見せた。
「さらには、もうずいぶんと懐かしい不可視の波動の残滓まである。
 これを僕が見紛うはずが無い」
その人物は、シスター風の服に白い十字架の形をしたブローチをあしらい、
長く美しい金髪をカチューシャで抑えていた。

184 :111@形而下の闘い〜邂逅〜2:2001/05/30(水) 07:38
「そんなことまでわかるというのですか?」
その人物――女性――は問い掛けた。
「封じられただけだ、無くなった訳じゃない。封じられようとどうであろうと、
 その力自体は、常に自分自身の中に息づいてるのさ」
少年はそういうと、やっと振り返りそして彼女を見た。
「君か、A−12。確か直接の面識は無かったと思うが……」
「はい、そのとおりです。お初にお目にかかります」
A-12、鹿沼葉子は丁寧に頭を下げた。
「ああ、初めまして。あれほど近くにいたのだけどね、僕は君と会わないことになって
 いたのでね」
「存じております。郁未さんの話でうすうす感じておりましたので」
「そうか、君は聡明だな。
 ――ところで敬語はよしてくれないか? 性に合わなくてね」
少年は苦笑してそう言った。
「……ですが、これも私の性ですから」
葉子はにこりともせずにそう言った。
「そうか……。いや、ならいい。むしろ君はFARGOへの信仰に全てをかなぐり捨てている 部分があった気がしたからな。そういう”個”としての性質が生きているのなら、
 それは逆に安心できることさ」
「……もちろん、それだけではありませんが」
葉子は後から付け足した。
「何かあるのかい?」
「あなたが敬うにふさわしい対象であるからです」
葉子の目は真剣そのものだった。
一瞬沈黙する少年。
「…………力かい?」
「はい。この状況下では不可視の力を発揮することは出来ませんが、それでもあなたには ……なんというか余裕を感じられます。それはそれ以外の力に裏付けられたものだと
 私は思っています。
 そして、仮に不可視の力が全て解放されたとしても、あなたに敵うとは思えません」

185 :111@形而下の闘い〜邂逅〜3:2001/05/30(水) 07:40

ザァアアアアアアアア……。
風が木々を揺らす、葉が悲鳴をあげる。

「畏怖、なのか」
「あるいは、それに近しいものだと思います」
「まあ、それならそれでいい。だがクラスAの人間が、そこまで僕を持ち上げることも
 無いだろう。君らが結束すれば、あの月を凌ぐのも容易いだろうに」
「たとえそうだとしても、私があなたに敬語を使うことに変わりはありませんよ?」
少年は目をぱちくりとした。
「あ、ああ。そうかい。いや、そうだね」
少年はまた笑った。――どことなく照れ隠しのように。
感情の起伏が少ないように見える葉子と、常に笑みを絶やさない少年。
二人の関係は丁度正反対のような感じだった。

葉子は先ほど少年が造った墓標に目を向けた。
「また、人が死んだのですね」
「ん……、そうだね」
「墓を作って差し上げるなど、普通の方にはできませんよ」
「それは褒め言葉に受け取っていのかな?」
苦笑する少年。
「もちろんです」
即答する葉子。
「なら、一応礼を言っておくよ」
少年は墓を一瞥した。
「花を捧げた方は女の子さ。見た感じは優しそうな子で、穏やかな死に際だった」
「…………」
「枝を捧げた方は……もしかしたら君も知っているのじゃないか?
 かつてFARGOにその身を尽くしていた男、巳間良祐さ」
「巳間……」
「そう、恐らくご想像の通りだ。郁未の友達にいたな、確か……巳間晴香とか言ったか」
「…………」
「本来なら例え身内といえども感傷に浸っているべきではないんだろうが……、
 まあ、ずいぶん僕も感化されたって言うことだな」

186 :111@形而下の闘い〜邂逅〜4:2001/05/30(水) 07:41
「あなたが駆けつけたときには、もう……」
「ああ、事切れていたよ。残念だが致し方ない。あいつの意志は継ぐよ、と言うより
 もともと同じ目的を追いかけていたと思ったんだが……。全く、どこで寄り道したんだか」
はぁ、と少年はため息をつく。
「まあいいさ。過ぎたことを悔やんでいる暇こそ僕らには無い」
「……句を、捧げておられましたね」
ぼそっと葉子は言った。
「おや、そんなときから君はいたのか? 全くあの時は穴掘りに夢中だったようだな」
「いえ、むしろあの声を聞いたから私はここへやって来たんです。あなたが不可視の力を
 読むと言うなら、私にはあの文句こそ間違いようがありません」
その言葉には、さも当然と言った風なニュアンスが込められていた。
「よほど敬虔な信者だったんだな。まさか教典の文句まで網羅しているとは……」
そういうと少年はごそごそと鞄の中を漁り始めた。
「っと、あった。これのことだな」
少年は本を取り出した。
「生憎だがもう教典は存在しないだろう。いま持っているものはいわゆる偽典だ。
 ――あらゆる意味でね」
少年は懐かしいものでも見るような目でそれを見た。
「原本は既に失われてしまった。FARGOが出来る寸前のことだ。
 そもそも、いくつかの教団がFARGOの母体になったのだから混乱しない方がおかしい。
 そのどさくさで失われてしまったことに変わりはないがね」
葉子のそれを見る眼差しも、あるいは少年に似たものだったのかもしれない。
「すでにこの内容は意味を為さないものになていたが……、そんなものでも役に立つことがあるのだからな」
「なぜ、いまさらそんなものをお持ちになって?」
「おいおい、君までそんなもの扱いか。まあいいか?
 これはただの偽典じゃない。巳間良祐が作り上げた最高傑作さ」
少年はペラペラとページをめくってみせる。
「……そう、これは武器だ。僕のために作られた、ね。
 仕組まれたゲームに対する、ささやかな反抗――と言うか前準備だな」

187 :111@形而下の闘い〜邂逅〜5:2001/05/30(水) 07:41
「武器?」
葉子はいぶかしんだ。その本に武器たり得る要素を見出せなかったからだ。
「まあ、これ自体では意味を為さないものだがね。
 それでも状況さえ見紛わなければ、すばらしい効果を発揮してくれる」
「……そうですか」
葉子の表情は釈然としない。
「そんなに気になるかい? なら、君の事を教えてくれたら僕も秘密を明かしてあげようか」
少年はそう提案した。
「私の……ことですか」
「そうさ、まだ君が敵で無いかどうかはっきりしてないからね。
 なら明らかに致命的なことを喋ってもらえば、どちらにせよ都合がいい」
葉子は少し口ごもる。だが、すぐ口を開いた。
「……私は、高槻のところから来ました」
「ほう?」

「理由は一つ、巳間晴香と行動をともにしていた方々の抹殺です」




188 :名無しさんだよもん:2001/05/30(水) 17:51
感想はこちらで

http://green.jbbs.net/movie/bbs/read.cgi?BBS=568&KEY=990888426&LAST=50



189 :111@形而下の闘い〜走る〜:2001/05/30(水) 18:37

「ぐ……何よ何よなんなのよあの人っ」

詩子は柄にも無く毒づいていた。
まだ喉が痛む。
凄い力で締められた。
あれが女の人にやられたなんて信じられない。
恐らく、くっきりと赤い手形が首についているんだろう。
よく逃げてこれたものね……、ホントに。

死にたくない。
死にたくないよ。

その一心だった。
無我夢中だった。
全速力で走った。

よぎる。
狂気に囚われた、恐ろしい彼女の様相が。

「うっ!」

意識が途切れる。
闇に……沈む。……ありゃ? ここどこだろ。
いつのまにこんなとこに迷い込んだのかな。


190 :111@形而下の闘い〜走る〜2:2001/05/30(水) 18:38
なんだか体が軽ーい。
気持ちいい……。

……ていうか地面無いよ、ここ。
何で私沈んでないの?

えっと……たしか森のり口で待ってて、
それでいつまでも来なくて、
変な女の人に襲われて……。

……ってそうだよ!
私襲われたんじゃない!

思わず首に手を当ててみる。

……ありゃ、痛くない。
すごく苦しかったはずなのに。

……しかもよくよく考えたら私、
全力で逃げてたはずだし……。

ポンっ。

そっか。
これ夢だよきっと夢〜。
な〜んか妙にふわふわしてると思ったのよね……。

……でもいつの間に眠ったの、私。
確か走っていたはずなのに。


ドクン。


喉が、疼く。


私――死んだの?


191 :111@形而下の闘い〜走る〜3:2001/05/30(水) 18:39
「そんなことはないです」

え!?
……誰!?

「あなたはちゃんと生きていますよ、詩子」

茜!?

「ハイ」

良かった……。茜、無事だったんだ。

「ハイ」

相沢君に、会ったんだよね?

「ハイ」

うん……、でもとにかく元気でよかった。

「詩子」

茜が私の手を取る。

「こんなところで倒れていてはダメです」

え……。何……?

「まだすることがあるはずです」

そう……なの?

「頑張って生きてください」
……うん。

「では起きて下さい。そろそろ起きないと遅刻しますよ」「…………あ」

192 :111@形而下の闘い〜走る〜3補正:2001/05/30(水) 18:40
「では起きて下さい。そろそろ起きないと遅刻しますよ」「…………あ」



193 :111@形而下の闘い〜走る〜4:2001/05/30(水) 18:41
むくり、と起き上がる。
いつのまに倒れていたんだろう。

「私……、気を失っていた?」

首をしめられた時に喉を痛めたんだ……。
それなのに全力で走ったりしたから……。
呼吸困難で失神……、かっこ悪い。

右の手のひらにほのかな温かみ。
そういえば、なんだか懐かしい人と会った気が……。

――まさか。

キョロキョロとあたりを見回す。
だが周りには誰もいない。
誰かがいた様子も無い。

「――茜」

パン! パン!

両頬を手のひらで叩く。
鮮烈な痛みが走る。
でも、なんだかすっきりした。
眠気覚まし代わりだ。

さあ、いこう。
まだ、立ち止まっていられない。

「……よし」

そして、私は再び走り出した。
まだ見えない森の終わりと、この闘いの終わりを目指して――。




194 :111:2001/05/30(水) 18:47
泣くぞ……。
なんでなおっとらんねん。
――――――――――――――――――――――――――――――
「では〜ますよ」

(3行空き)

「…………あ」
――――――――――――――――――――――――――――――
が真の補正。
らっちーさんデータ処理の際にはよろしくお願いします。

で、この話なんだけど詩子の>>167−168が没だったら普通に入れる。
通ったらそれの前の話として挿入してくれると嬉しい。

195 :夜の森往く抵抗者(1):2001/05/30(水) 19:48
 ブツッ。

 放送が途切れる。
 もう何度足を踏み入れたかわからない森の中で、茜は五回目の放送を聞いていた。
 残りは51人という言葉が心に残る。
 英二の死を看取りその妹に狙われてから、茜はこれまで、これといった行動を起こしていなかった。
 と言うより、誰とも出会うことがなかっただけなのだが。
 自分の知らない所で、気付けば多くの人間が死んでいた。
(……さっきの放送、長森さんの名前がありました)
 同じクラスの少女、誰にも優しく、おだやかで。
 そんな彼女も、死んだ。
 むしろ、あのような性格だからこそ、こんな状況で生きていけるわけなかったのだと思う。
 さほど親しくなかったクラスメートに、短い黙祷を捧げる。
 その途中だった。
「里村茜だな」
 自分に、声がかけられたのは。

196 :夜の森往く抵抗者(2):2001/05/30(水) 19:50
「……誰?」
 親しくもない人間に呼び掛けられたら、とりあえずそう返すことにしている。
 だが、この顔には一応見覚えがあった。
 たしか、ゲームの管理者、高槻と言ったか。
「おいおい忘れちまったのか? ゲームの管理者、高槻だ」
 どこかの誰かと同じことを言う。
 ひょっとしたらこの男も、根はなかなか面白い奴なのかもしれない。
 歪んではいるが、一体何がこの男に影響を与えたのだろうか。
 茜はふと、そんなことを思った。
「……私に、何か用ですか?」
 怯えもせずに、言う。
 自分でも驚きだった。
 なにしろこの男は、こんな恐ろしいゲームの管理人なのだ。
「あぁ、用があるのさ」
 高槻は口のはしをにやりと歪め、言った。
「お前は今のところ、このゲームの殺人ランキングで2位になっている。
 1位は藤田と言う男なのだが、こいつが随分と丸くなっちまってな。
 殺人者として見込みがなくなっちまった。
 そこで、だ、お前には『ジョーカー』をやってもらいたい」
「……『ジョーカー』ですか?」
「あぁ、そうだ。まだ生き残りが半分もいる。
 どいつもこいつも、仲間意識が強くて、殺しなんぞやりそうにない。
 だからお前には、そういった連中を排除してもらう」
 茜にとって、それはよくわからない提案だった。
「……よくわかりません。
 ……言われなくても、私を殺そうとする人がいれば、私は殺します」
「違うんだよ」
 高槻は茜の言葉を否定した。
「お前には『手駒』になってもらうのさ。俺達がバックにつく。
 定期的にこちらから場所を連絡して、その場にいる人間を一人殺せばいい」
「……私にメリットは?」
 その茜の言葉に、高槻は笑みを深めた。

197 :夜の森往く抵抗者(3):2001/05/30(水) 19:52
「8人殺してもらえればいい、そうしたらお前はゲームから開放してやる。
 武器も良いのを渡してやるし、食料も与える、安全な寝床も用意するぞ?
 この島で、俺達に把握できていないことなんかないからなぁ」
「……そうですね。あなた達がこの島を造ったのですから」
 茜の言葉に、高槻の笑みが凍り付く。
「何故知っている、貴様」
「……簡単なことです。私は百貨店に入りました」
「だから、何故それでわかったんだ」
「……人の生活の気配がありません。この小さな島に百貨店があるのもおかしいです。
 ……それは住宅街も同じ。この森にしたって、動物が少なすぎやしませんか?
 ……家の中には包丁や食料があり、工事現場にも武器になりそうなものがあります。
 ……全部含めて、このゲームの為に用意されたものなのでしょう?」
 何事もなかったように言い放つ。
 茜の言葉に高槻は言葉をなくし、そして笑い出した。
「ハァーッハッハ。気にいった、気にいったぞお前。
 俺達の力は強大だ、もし受けてくれるなら、今後お前の人生全て保障してやってもいい。
 どうだ、やってくれるな?」
 提案は、茜にとって魅力的なものだ。
 所々で補給したとは言え、食料や水も尽きかけている。
 夜になったら、また寝床も探さなければいけない。
 何より、自分は帰りたい。
 だが、何よりも決定的なこと。
(……私は、現実的なだけです)

 高槻が銃身も持ち、グリップを茜に向けた。
「さぁ、銃を取れ」
 茜は右手を動かし――

「……嫌です」

 隠し持っていた銃で、発砲した。

198 :夜の森作者:2001/05/30(水) 19:53
ちょっと用事が入ったので、ここまでです。
まだ、続きます。
とは言っても、先に続きを書かれたら従いますが。

199 :夜の森往く抵抗者(4):2001/05/30(水) 21:08
 弾丸は高槻の両腕を貫き、高槻は銃を取り落とした。
 すかさずその銃を蹴り飛ばし、奪う。
「き……貴様ぁぁぁぁっ!
 何故だっ! 何故乗らないぃっ!!」
 高槻が叫ぶ。その声は怒りで満ちていた。
「……私は現実的なだけです。
 ……利用するだけしておいて、裏切るつもりだったでしょ?」
 冷たく言い放ち、歩き出す。
「貴様、俺を殺さないのか?
 管理室についたら、絶対にぶっ殺してやる!」
 その脅しにも、茜は立ち止まらず言った。
「……あなたには無理です」

「あの女……殺してやる、ぶち殺してやる……」
 森の中を、血だらけになりながら歩く。
 許されることではなかった。自分があんな小娘に遅れをとるなど。
 あってはならないことだった。
 だから――

 ダンッ、ダンッ!

 高槻は、撃たれた。

 森の中から、人影が近付いてくる。
 その人影は高槻の傍らで立ち止まり、死体となったそれを蹴り飛ばした。
 人影は、死体と全く変わらぬ姿形。
 高槻だった。
「05の馬鹿が。先走りすぎなんだよ。
 上――主催と観客は、あくまで仲良しごっこを楽しんでる連中が、最後には醜いさま曝け出して殺しあうのが見たいんだよ。
 『ジョーカー』なんぞ用意して、楽しみ潰しやがって。
 今頃他の『高槻』には厳重注意がいってるよ。
 だがお前はこれでいい。小娘ごときにやられる貴様なぞ、いらん」
 自分と同じ姿をした高槻を蹴りながら、高槻は言った。

200 :夜の森往く抵抗者(5):2001/05/30(水) 21:10
「何故お前のナンバーが『05』なのか教えてやろうか?
 お前は5番……5体の中で一番出来が悪かったんだよ。
 さて……こちら04。05は排除――」
 そこまでだった。
「……な?」
 自分に何が起こったのかわからなかった。
 そのまま口と額から血を流し、05の死体の上に重なるように倒れる。
 全く同じ姿をした二つの死体。
 04を狙撃したのは――立ち去ったはずの茜だった。
「……いろいろわかりました、ありがとうございます。
 ……でも、死ぬ前に悪事を喋るのは、三流のやることです」
 04の死体から銃を奪う。
 05から奪った銃はサイレンサー付きだった。
 そのせいで、04には銃声が聴こえなかったのだ。
「……だから言ったでしょ」
 05を見下ろし、呟く。
「……見てますか?
 ……私は簡単には死にません。
 ……ゲームのルールに従い、生き残ります」
 この様子をどこからか監視している存在に、誓う。
 風の吹く夜の森を、茜は歩き出した。

【高槻04、高槻05死亡 残り高槻4人】
【05からサイレンサー付き銃、04から銃入手 種類は不明】
【主催側から高槻に干渉 高槻はゲーム参加者に手を出すことを制限】

201 :名無しさんだよもん:2001/05/30(水) 21:38
>>200
【高槻04、高槻05死亡 残り高槻4人】 ×
【高槻04、高槻05死亡 残り高槻3人】 ○
じゃない?

202 :名無しさんだよもん:2001/05/30(水) 21:49
>>201
本物も加えて4人、じゃない?

203 :逢魔ヶ時1:2001/05/30(水) 23:11
 暮れなずむ夕日を浴びながら、弥生は痛む右目をつぶったまま武器を作っていた。
 ストッキングを脱ぎ、つま先の方を結び、そしてその中に石や財布から
出した硬貨をつめてゆく。なんどか振ってみてちょうど良い重さに調整する。
 横から力をこめて振ると遠心力を利用できる。側頭部にあたれば敵は一発で
昏倒するに違いない。そう弥生は思った。

 その時風の流れが変わった。そしてその風に乗って人の声が聞こえてきた。

「暗いうちはあまり……いほうが……います」
「そ……な…」

 声がしたところに弥生は接近する。しかしまっすぐ急ぐ事はしない。さきほど音を
立てたばかりに一人殺しそこね、あまつさえ右目を痛めたのだから。太陽を背にして
弥生は物音をたてないように移動する。一歩進むごとに足元に小枝等の音がするものが
ないかチェックする。そのため接近に時間がかかり、目的地に到着する前に放送がかかった。

『二日目午後六時だ、早速今回も定時放送いくぞー……』

人の死を放送するこれも、今の弥生にとってはどうでも良いことである。あの二人の名前が
呼ばれない限り。むしろ今ならば声の主達も放送に気をとられるし、なにより全島に聞こえる
だけの音量である。弥生の接近の物音も隠してくれる。チャンスであった。
 弥生は急いで接近しようとした。が、その前に深呼吸を一回して頭を冷やそうと
努力する。人間は生きるか死ぬかの非常時において大事なことをぽっかり忘れる生き物
であり、冷静沈着なようでいても、実は普段の3分の1も冷静ではないのだと弥生に右目に走る
痛みが教える。だから自分のとるべき行動を何度も何度も繰り返しイメージしチェックする。
もう、先ほどのように44マグナムがあるのに、あるのを忘れて殺して損ねることなどあってはならないからだ。
 チェックが終わると弥生は急いで接近する。放送が終わりかけていることもあるが、それに
もまして弥生にとってもうすぐ絶対有利の瞬間がくるからであった。
 しかしその時間は短い。その時間が終わる前にけりをつける必要があった。

204 :逢魔ヶ時2:2001/05/30(水) 23:13
「詠美――っ!!」
「詠美さんっ!」

 その声と同時に誰かが走り出してゆくのが見える。弥生は発見される危険と逃がしてしまう
危険を天秤にかけ、太陽は自分背後にあり逆光である事、焦っていることから背後には
注意をはらうことは無いと判断し、発見される危険をおかしても森の中からでて追跡することを決断した。
 弥生が二人に追いつくと二人の背後にある木の陰に隠れ、そこから二人を観察する。

「どうして…ちくしょう、俺はどうして気づかなかったんだ……
 詠美が、俺を必要としてくれてたのに…
 絶対に離しちゃいけなかったのに……!」
「…和樹さんは悪くない…私が…和樹さんを頼りすぎていたから…
 それに…こんなときでも、千鶴姉さん達の名前がなくて…ホッとした自分がいたんですから…」
「…違う…自分を責めるな…」
「…探しましょう…!まだ遠くへは行ってないはずです。
 今の詠美さんを一人にしておくわけには行きません!」
「ああ…詠美…無事でいてくれっ……!!」

 

205 :逢魔ヶ時3:2001/05/30(水) 23:15
その場面に弥生の心はなに一つ動かなかった。弥生が理解したことは男の名前が
千堂であること、機関銃を持っていること、詠美とやらを追いかけていたこと、
中学生らしき少女の方に二人以上姉がいること、そのうちの一人が千鶴だということ、そして
右手の鉄の爪が武器であること、そんな散文的な事柄だけであった。そして殺す順番を
考える。どう考えても大の男であり、機関銃を持った千堂から殺すべきだった。

 そして夜の帳が下りる。その瞬間どこに行こうとも人工の明かりがある日本では絶えて
久しい真の闇が訪れる。この瞬間こそ弥生が待ち望んでいた瞬間だった。痛みをこらえて
今までずっとつぶっていた右目を開ける。光が失われてから闇に眼が慣れるまでのわずか
な間、人は何も見えない。弥生のように初めから闇に眼をならしでもしないかぎり。
 弥生の左目には闇しか映らなかったが、右目は二人の姿をはっきりとらえていた。隠れていた
木から飛び出て二人に突進する。左手の44マグナムは使う気は無い。
 散弾銃とは命中率、威力、射程の全てにおいて劣る拳銃、弾丸の浪費を覚悟して何度か
試射してみた結果2メートル先の的ですら外したこともあるくらいだ、それに今は片目し
か見えていない。この状況で命中を期待する事は奇跡を期待する事と変わらなかった。

206 :逢魔ヶ時4:2001/05/30(水) 23:20
千堂と楓は何者かが走ってくる物音に気がつき、背後を振り向く。しかしまだ何も見えず
棒立ちのままであった。普段ならふたりとも違う行動をとったであろう。しかし、普段目が
見える人間が、一時的に盲目になっているところに急に予期せぬ出来事が起こると、人間は
思考回路が狂うのであった。

 弥生は男―千堂に走り寄ると右手のストッキングを力いっぱい外から内に向けて振るい
千堂の頭に叩きつける。予想以上にストッキングが伸び、側頭部ではなく後頭部を強く打った。
千堂はそのまま力を失い、棒のように地面に顔から倒れ込む。続く動作で弥生は地面に倒れた
千堂の喉を力いっぱいかかとで踏みつける。何かがつぶれるような感触が伝わってくる。
弥生を手首を返し、左脇に構えていたストッキングを今度は内から外に向けて振るう。それ
を少女―楓は上体を逸らしてかわす。楓は右手の鉄の爪を弥生の肘を狙って振るう。
弥生はとっさに腕を縮め、かろうじてかわす。誤算であった。弥生の左目はまだ見えない。
こんなに早く闇に順応するとは思わなかったし、それに動きの速度も大の男と変わらない。
 1つ間違えたら死ぬと弥生は恐怖心を抱いた。だが退くわけにはいかない。あの二人が
いつまで無事か解らない、もうこれ以上殺すチャンスを逃すわけにはいかないのだった。
 

207 :逢魔ヶ時5:2001/05/30(水) 23:21
距離が詰まったとき、二度ほど攻勢をかけてみた。だが見事にかわされる。逆に防戦に
追われ立場がひっくり返った。
 突きかけられた。懐を深く構えてどうにかかわす。一転して体のバランスをとっていた
手を狙われる。両手を後方へ。とたんに左足が残り、そこを斬りつけられた。すり足を
使って後退する。先に倒した千堂の体に足に触れた。全身がぐらつく。
 防御ががら空きになった。それを狙っていたかのように全体重をかけた突きが来る。
楓が一気に弥生に接近する。
 弥生は倒れながら右手のストッキングを楓に投げつける。鈍い音がして動きが止まる。
上半身をひねりつつ、足を力一杯横へ払う。強い衝撃が伝わってきた。足首あたりを刈られ
楓はたまらず転倒する。
 弥生は相手の体がどこにあるか見当をつけると躍りかかる。ほとんど正確に補足した。
左手の44マグナムを楓に押しつけ引き金を引き絞る。そこを中心に楓の服がみるみる
夜目に黒く染まってゆく。致命傷であった。

「耕一さん、どうしてわたしたちはめぐりあったとたん別れるんですか? 何度
繰り返せばいい──」

楓の言葉がそこでぷつりととぎれた。口を半開きにしたまま動かなくなっていた。眼が
大きく見開かれているがもう何も見ていなかった。弥生は右手で死体となった楓の眼を
閉じてやった。ただの感傷だとはわかっていたがやらずにはいられなかった。そのまま
少しの間弥生は動かなかった。まるで二人の冥福を祈るかのように。
 しばらくの後、弥生は立ち上がり二人の装備を回収した後再び動き始めた。冬弥と由綺
を救うために。後7人殺すために。

【018柏木楓・053千堂和樹死亡】
残り49人
機関銃・鉄の爪・大庭詠美の装備を弥生回収


208 :分離(1/1):2001/05/31(木) 00:30
『なつみ、なつみ…』
もう一人の私が、私を呼ぶ。
『私、やっぱり待てない。自分で見つけだす事に決めた。犯人を』
「たった一人で? この刃物一本で?」
『自信を持ちなよ。私たち、人とは違うんだから』
「そんなの、無理だよ…」
『意気地なし!』
そう言って、ココロはぷいと後ろを向いて、
『もういいわ。私だけで十分』
そのまま窓から外へ飛び出していく。
「あ、待ってよ!」


【2日目・早朝】
朝日のまぶしさに目が覚める。
でも、結界はもう消えてた。そして、私のココロも消えてた。
あれは夢? それとも…

「ひとりに、なっちゃった」
窓枠に手をかけ、外を眺めながら、なつみはつぶやいていた。
もう一方の手で、支給された刃物をぎゅっと握りしめて。

夢の中で言ってたように、犯人を見つけて仇を取ったら戻ってくるかもしれないし、
もしかしたらずっと戻ってこないかもしれない。
これからは、自分は自分でどう生き抜くか考えないといけないんだ。

# 牧部なつみ(079)のココロ、単独行動を開始。
# という事で、残されたなつみの方は"能力"を喪失しています。


209 :名無しさんだよもん:2001/05/31(木) 01:38
ココロってどんな位置付けなんだ?
実体があるのかとか・・・
無知でスマソ。

210 :名無しさんだよもん:2001/05/31(木) 01:59
なつみの別人格、なつみの(無意識下の)魔力で実体化する。
だったと思う。

211 :余裕と苛立ち:2001/05/31(木) 02:07

茜(043)が通り去って暫くして、高槻04、05の死体が
爆音と共に、跡形も無く消去された。24時間後に修理の目処がついたELPOD司令室にて
本物の高槻は自分に爆弾があるのではという疑念を
自分で仕掛けた爆弾で晴らした安堵と修理の間に誰かが
ここを嗅ぎ付けるのではという苛立ちが交錯しつつも呟く。

「修理の目処がついた矢先にこれか、、
念のためクローンにカプセルを仕掛けておいて正解だったな・・。
04と05、先走りおって、でも043が単独行動だったのは不幸中の幸いだったな
集団行動している連中だったら、致命傷になりかねんかった。


ルールに従い、残るか・・その方がこっちには都合がいいので大歓迎だ。
ただ、俺に害が及ぶ場合は容赦無くやらせてもらうがな。」




212 :余裕と苛立ち2:2001/05/31(木) 02:10

【潜水艦「ELPOD」修理完了まであと24時間】
時間は>>200よりあと放送より少し後。
設定した残り時間は残り人数が20〜一桁になる頃とみてです。

時間軸でつながる>>199-200ですがまだクローンは高槻(本物)しか
存在を知らない物で他の主催者側は知らないのに主催者側からのメッセージが
伝わるのはちとおかしい気がするので、クローン04、05が単独行動したものと
みて書きましたがどうでしょうか?、
それとも主催者とよばれるのが高槻(本物)だけなら納得も出来ますが。



213 :名無しさんだよもん:2001/05/31(木) 02:15
感想スレ、新スレに移行です。
http://green.jbbs.net/movie/bbs/read.cgi?BBS=568&KEY=991237851&LAST=100

214 :111:2001/05/31(木) 02:17
>>212
主催は長瀬一族(+高槻1st)がもっとも自然。
どうも高槻は長瀬に頭が上がらんようだし。

215 :111@形而下の闘い〜対話〜:2001/05/31(木) 02:55
「抹殺ね……、穏やかではないな」
「高槻は巳間晴香をだまし、このゲームに置ける殺人者に仕立て上げました」
「ほう」
「その脅迫の内容は、囚われた仲間の身柄と交換に、10人の人間を殺すこと」
「奴の考えそうなことだな」
「ですが、確保していたと見せかけていたその仲間は、人形を使ったダミーに過ぎないのです」
「へぇ」
「即ち、彼女の仲間はまだ無事だと言うことです。だが、それが高槻には面白くない」
「まあそうだろうな」
少年の返事はまさに面白がっていると言うのが適切だった。
それを見た葉子には、なんだかその様子が不思議に思えた。

「で、基地を下ったきたはいいが不可視の波動を追うわけにも行かず、
 仕方なく放浪していたら、懐かしい教典の一節が聞こえてきたんで近づいてみた、と言うわけかい?」
「……ハイ」
葉子はうなずいた。
「フフ……、分かったよ。で、君自身はそれをするつもりなのか?」
「…………」
葉子は返事をしなかった。

少年は彼女の顔を覗き込むように言った。
「まあ、それにそう易々と返事は出来ないよね。じゃあ質問を変えよう」
葉子は、何ですか、と聞いた。
「君はもし究極の決断を迫られたとき、高槻と信仰、どちらを取る?」
「……どういう意味なのでしょうか?」
「確かに高槻はFARGOの人間で、研究者としての地位も持っている。
 だがそれはあくまでクラスBまでのことだ。
 クラスAであいつが動く必要性は無い。
 そして、奴自身はなんら信仰と言うものが眼中に無い。
 だが――それでも恐らく唯一この島で君の”上”と呼べる立場ではあるだろう」
葉子は黙って聞いている。

216 :111@形而下の闘い〜対話〜2:2001/05/31(木) 02:57
「信仰とは即ち”君”自身のことだ。
 自分を殺してまで敬う信仰も無いと思うが、もはや君はそんな地点を遥かに通り過ぎている。
 本能に刻まれた信仰と、君としての理性が完璧に一致している。
 言うなれば”忘我一体”とでも表そうか?」
葉子は黙って聞いている。

「その前提があって初めて問うことが出来る内容なんだが……。
 少なくとも高槻が信仰の対象になることは無いと僕は思う。
 君には従うべきものが既にあるんだしな。
 それを踏まえて……ね」
葉子は黙って聞いている。

「君は今高槻の命令で動いている、というようなことを喋った。
 だが僕には一概にそうは思えない。
 殺すときには殺す。それもFARGOの忠実な信徒として君はそれが出来る。
 だがそれは高槻の命令と同義たるものではない。
 改めて聞く。
 君は高槻の命令で人を殺すのか?」
葉子は――黙っている。
その表情は少し、曇ったようにも見える。

少年は今一度彼女の顔を覗き込む。
「……いいよ、もう分かった。君が殺したいのは巳間の妹じゃない。
 ……高槻だね?」
コクリ、と葉子はうなずいた。
「敵を欺くにはまず味方から。味方を欺くにはまず自分から。
自分を欺くことが出来たのなら、もうそれを見破れるものなどいない。やはり君は聡明だ」
葉子は黙って聞いている。

「それでどうする気なんだい? 巳間の妹に会って」
「出来るなら……止めたいとは思います」
葉子は再び口を開く。

「今はまだ、時期ではありませんでしたから」
「そうか」

再びの沈黙。
二人の間を風が凪ぐ。

「……君はもう十分喋ったな。なら、僕も件の話をするよ」


 

217 :111:2001/05/31(木) 02:59
対話はここで終わり。

218 :111:2001/05/31(木) 03:12
>>189
やばーここにも改行ミスが。
------------------------------
闇に……沈む。

(3行空き)

ありゃ? ここどこだろ。
いつのまに〜
------------------------------
が正解。

219 :名無しさんだよもん:2001/05/31(木) 03:24
島内の出来事は全て高槻に察知されてるものだと思った。
つまり、会話は高槻の覗けてるんじゃなかろうか、と。

220 :219:2001/05/31(木) 03:25
高槻に覗かれてるんじゃなかろうか、と。 です。

221 :名無しさんだよもん:2001/05/31(木) 03:47
>>214
高槻の電話から考えると頭は上がらないのは確かだけど
陰でなんか良からぬこと考えてるように思ってた。

後半(か?)その辺ネタで書きたいなぁ……

222 :King of Kings(1/1)By林檎:2001/05/31(木) 03:56
「かず…き…?」
 詠美はその場に座り込む。
 期待していたのだ。
 和樹はきっと楓より自分が大事。
 それを証明するために追ってきてくれる。

 それは日常においては可愛い行為だったかもしれない。
 相手の愛を確かめ、自分がより相手を愛するための通過点になったかもしれない。
 和樹も可愛いいたずらと笑ってくれたかもしれない。

 頭の中で描いていたのは追ってくる和樹。
 頭の中で描いていたのは和樹の愛の囁き。
 もう二度と手に入らないものたち。

 目の前で繰り広げられたのは。
 現実感のない悪夢。
 全てが見終わったのにまだ覚めぬ悪夢。

 和樹の手を握る。

ぎゅっ…

 温かい。まだ生きているかのようだ。

ぎゅっ…

(え…?)
 握り返された。
「和樹!?」
 しかし、骸が動くことなどないのだ。
 それは詠美による妄想。

「和樹…。好き…」
 頭は首に支えられていない。
 支えているのは詠美の両手。

「和樹…。愛してるよ…」
 唇を重ねる。
 血の味がした。
 抱きしめる。
 抱きしめる…。
「愛してる…。和樹…」
 もう一度言う。

 俺も愛してるぜ。

 詠美の耳だけに聞こえた返事。
 涙が止まらない。
 その声が聞こえてまた涙が出た。
 和樹の死を実感してしまった。
 雫が頬を伝う。

 だが、勇気が出た。
 和樹の声が勇気をくれた。
「和樹のしたかったこと。楓ちゃんのしたかったこと。私が受け継ぐよ」
 立ちあがる。
「私は同人界のKing of Kings! 詠美ちゃん様なのよ!」
 自分を奮い立たせる。
「このつまんないゲームのストーリーは!」
 瞳に光が戻る。
「この詠美ちゃん様が描き直してやるんだから!!」

(もう大丈夫。だから…。心配しないで見ててね。和樹…)
 詠美の心に決意が宿った。


223 :名無しさんだよもん:2001/05/31(木) 04:07
>>221
実際、クローンのことは長瀬たちには内緒みたいだったしね。

224 :名無しさんだよもん:2001/05/31(木) 04:16
バレてるみたいだけどね。

225 :名無しさんだよもん:2001/05/31(木) 04:25
>>224
あれ? ばれてたっけ?

226 :名無しさんだよもん:2001/05/31(木) 05:32
詠美ちゃん様(King of Kings)「受け継ぐっていってはみたけど、何をしたらいいんだろ? ふみゅ〜ん」

すんません。冗談です。

227 :名無しさんだよもん:2001/05/31(木) 06:49
ちゃん様1人では不安だ。お馬鹿だからなあ。

228 :111:2001/05/31(木) 08:03
>>219
そだね。でもまあそこまでかんがえてないよ〜んw
音声的な監視だったらまあ、決定的な一言(まあ、秘密ばらしまくりだけど)を喋ってはいないから
葉子もいい訳つくかなぁ〜みたいなw
森の中に監視員……ってそれを少年が気付かんわけは無いでしょうw
とすると葉子がなにかそういうものを持ってるかも……(録音機とか)だけど、
葉子が裏切り確定なら……考えにくい……でもありえる。
まあ聞かれていたら聞かれていたでそれも伏線これも伏線(死)


229 :接触(1/3):2001/05/31(木) 08:08
「もう…限界ね……」
それがそこでの最後の言葉。軽く、かすかに響いた声。
目の前の少女――リアン(100)の体はもう限界に近づいていた。
もう、これ以上仲間を待っているわけにもいかなかった。

舞の、佐祐理の死を告げた放送。
そしてそのやり場の無い怒り、憎しみをぶつけるべき相手、南ももういない。
このまますべて忘れてしまえば…狂ってしまえればどんなに楽だっただろう。
だが、目の前の苦しんでいる少女が、それを許してはくれなかった。
(この子も…戦ってるんだ…私が逃げるわけにいかないじゃない!)
自分だけここでこの少女の死を黙って見守っているわけにはいかない。
(ごめんね、姉さん、スフィー、私は…独自の判断で行動するわ)

この島は割となんでも揃っていた。
住宅街や店もあった。
(きっと…この子の症状を押さえる薬とか…あるかもしれないし…)
医学の知識は無い。下手をすれば少女の死を早めてしまう結果だってありうる。
だが、何もしないで隠れていることよりずっとマシだと思えた。
たとえその先に最悪の事態が待ち受けていようとも。

洞穴を飛び出す。
待ち合わせの小屋にスフィーや芹香の姿がないかと淡い希望を抱くもそれは果たされなかった。
(本当にごめん……)
リアンを抱え、凄惨な戦いが行われている世界へと飛び出す。
結界のこと、脱出のこと、本当の敵のこと…
そんなことより目先の少女の命――
リアンを助けるために動くのは今しかないのだから。
来栖川綾香(036)の行動原理は実にシンプルだった。

(毒…蛇に噛まれたときの消毒剤…なんかじゃダメよね…さて、どうすべきかしら?)
考えながら綾香は急ぐ。もちろんリアンの状態、周りの状況に気を配りながら。
気がつくと、どこからか小川のせせらぎ。
その音にまぎれ、騒がしい声が聞こえてきた。

230 :接触(2/3):2001/05/31(木) 08:09
綾香は出来る限り気配を殺しながらその声の主を伺う。
十五b近い崖の下、緩やかな流れの川のほとりにその男はいた。
エクストリームの試合でも滅多にお目にかかれないほどの凄み。
(なんて威圧感…!)
綾香の額から汗が流れ、落ちる。
あの男はやばい――綾香の直感がそう危険信号を発していた。
(ここから離れなきゃ――)
だが、綾香の体はその威圧感で金縛りにあったかのように動いてはくれなかった。

「なんて激流だ…これに巻き込まれたらいかな俺様でも生きて帰れねぇぜ…」
「ぴっこり」
「だが…サバイバルに難関は付きものだ、今晩のメシは魚にするぜぇ…なあ相棒」
「にゃう♪」
その男、低くドスの聞いた声は綾香の体を否が応にも震え上がらせる。
「……分かってんだろ?俺が水が苦手だってこと。だからよ…」
「ぴっこり」
「おめぇ…捕まえてこいや」
「ぴっ、ぴこっ!?」
その男はなにか喋る毛玉を引っつかむと、上流へと放り投げる。
「ぴ、ぴこぴこっ!?ぴこ〜〜〜〜〜〜………」
遥か上流へ消えて行く毛玉を見て騒ぐ猫。
「にゃう♪にゃう♪」
「なに踊ってんだ…おめぇ猫だろ?おめぇもだ……よ!!」
「にゃにゃっ!?にゃ〜〜〜〜う〜〜〜〜………」
(なんて非道な奴……!)
綾香はその男に激しく嫌悪感を覚えた。
「ったくよ…使えねぇ奴等だぜ…これならまだうぐぅうぐぅ言ってたガキの方が…」
そこで男の声が止む。
「今…俺はなんて言った…?あのガキのほうがいいだと!?」
男はその場で崩れ落ちるかのように――
「この残酷無比な俺が…まさか…そんなことあっていいはずがねぇ……!!」
(あの男もまた…この島の被害者なのかもしれないわね……)
凄みをもつ目の前の男も、この異常な島に精神を侵された哀れな犠牲者なのかもしれない。

231 :接触(3/3):2001/05/31(木) 08:10
綾香の気が少しだけ緩んだ…その瞬間だった。
「誰だ!?」
男の声。
(しまった!まさか感づかれるなんてっ!?)
綾香の表情に怯えの色が走る――!
「そこで盗み聞きしてる奴ぁ!」
同時に綾香に対し銃口が向けられる。
(銃――――!?)
戦慄が走り抜ける。
だが、綾香の格闘の経験が無意識の内に体を動かす――!
手近にあったもの…リアンの体に触れたとき同時にたぐりよせた飛び道具になりえるもの――
「でやぁっ!」
それはリアンの持っていたバインダーだった。
「……!」
同時にリアンを抱え、脱兎のごとくその場から離れる綾香。
「ちいっ!」
男が一瞬ひるんだ隙に――まさしく刹那の出来事だった。
「あの女…素人じゃねぇな…気配の殺し方といい…やるじゃねぇか…」
男はその落ちてきたバインダーを拾う。
「なんだ?このカードの女は。
 …まあいい、盾ぐらいにはなるかもしれねぇ、もらっておくか」

「ハアハア……あんな男がいるなんて……やはりこの島は危険すぎるわ…
 早くリアンを助けないと大変なことに――!」
あの男の目は、何人も殺してきた――そんな目をした男だった。


「ようやく戻ってきたか…こら、水をかけるんじゃねぇ!死んだらどうするんだ!?」
「ぴこっ!!(怒)」
「な〜う〜(怒)」
「分かった分かった…おめぇらにも魚やるから水はやめれ…」
「ぴこっ♪」
「にゃうにゃう♪」
「がああ、落ち着いて食え!じゃれてんじゃねぇ、おろすぞ!!」


リアン【桜井あさひトレーティングカード全108種(バインダー付き)紛失】
御堂 【桜井あさひトレーティングカード全108種(バインダー付き)回収】

232 :ここから始める物語:2001/05/31(木) 11:15
また此処へやってきていた。玲子が逝ったこの『北の広場』へ。
彼女がどんなに後悔しても、もう戻らないあの頃に戻るかのように。
「かずき…わたし、またここからはじめるよ」
つまらない嫉妬から楓を罵倒した場所。
身勝手な行動で和樹を困らせた場所。
「わたし…まけないから」
和樹が、楓が遺した脱出への道――。
「ここから、はじめるんだ……」
生きて帰る……それは和樹達の心からの願いだった。
一度は壊れて――そして和樹が彼女の心を癒してくれた。
彼女が取り返しのつかないことをしようとした楓は、彼女を許してくれた。
だから――
「もういちどここから――」

233 :詠美ちゃんの推理(1/2):2001/05/31(木) 11:20
周りに誰もいないことを確認すると、詠美はそこに座り込む。
ちょうど、和樹が座っていた場所に。
「……えっと…たしかかずきは……」
詠美は和樹達の言葉を一生懸命に頭に思い描いた。
こう見えても詠美は短期間の記憶力には自信があった。
その記憶力で何度テストを乗り切ったか分からないほど。
「そう!せんすいかん!!せんすいかんといえば……およぐ!…そんでもって……もぐる?」
だが、応用力はなかった。
「ふみゅ〜ん……」
途方に暮れかけたが…
「まだよ…いちおう会話のないよーは全部暗記してるんだからっ…たぶん。
 えっと……たぶん忘れない」
詠美は必死に頭を働かせ、脳裏に言葉を焼き付ける。
本当は詠美にも分かっていた――心優しい楓と、和樹の、二人の言葉。
絶対に忘れたくなかった。忘れることは、今の詠美を否定することだから。

「なかま…そう、なかまをさがす…そしていっしょに考えてもらえばっ」
しかし、詠美が昼間会ったカップルのようにいきなり襲ってくる者もいるかもしれない。
「どうすれば…」
こんなに頭を使ったのは初めてだったかもしれない。
「そうだ…楓ちゃんに…」

――私の知り合い…姉さん達に会えればきっと力になってくれます――

234 :詠美ちゃんの推理(2/2):2001/05/31(木) 11:22
「えっと…柏木って女の人をさがせば…なんとかなるかな?」
詠美がやっと出した答えはこれだった。
「……そうよ。わたしは同人界の女王なんだから!!」
自分を勇気付けるように、詠美が勢いよく立ち上がる――と同時に何かがポケットから転がり落ちた。
「え…何?……CD?」
それは――もしもの為に楓が詠美の服に忍ばせていたCD――


――楓は、南に対し、強い疑念を抱いていた頃…そして、どうしても南に渡せなかったCD。
  楓は無意識のうちに悟っていたのかもしれない。このCDに何か手がかりが隠されていたこと、
  そして、おそらく自分はその謎の解明を果たすことなく散ることまで――


楓がどう思っていたか…もう詠美には、そして誰にも分からないことだった。


「…何…これ…4/4?…ふみゅ?」
そんないきさつなどまったく知らない詠美がそれを拾い上げまじまじと見つめる。
「なんかの…音楽CD?…まあ、いいか」
詠美はそれをもう一度大事にそれを服にしまう。
それは何気ない仕草は偶然だったのかもしれない。
だが、そのCDが後でどれだけの役割を果たすかは、詠美は知らない。

235 :ここから伝える物語:2001/05/31(木) 11:23
「じゃ、かずき…楓ちゃん、いってくるね」
名残惜しむように、寂しげなその言葉は夜の森へと消える。
「すべてがおわったら…また…ね」
その時は泣こう。涙尽き果てるまで。
まだ消えぬ涙の痕を乱暴に手で拭う。
「かずき達の想い……絶対に伝えるからっ!!」
そして、詠美は歩き出す。
大いなる悲しみを心の扉に仕舞って。
かけがえの無い友達、
そして、短い間だったが確かなぬくもりを確かめあった、あの人の遺志を継いで――。

236 :232-235:2001/05/31(木) 11:26
大場詠美【柏木楓のCD回収】

です。

237 :狩のはじまり 1:2001/05/31(木) 17:57
「ずいぶんとぼろぼろになったな、あんた達」国崎往人(033)の問いかけに、
「ええ、まったくですね」と、水瀬秋子(090)は答えた。
実際、往人の前に現れた水瀬秋子と水瀬名雪(091)の姿は痛々しいものだった。
二人とも服は汚れ、秋子の頬にはバンドエイドが、そして何より名雪の頭には包帯が巻いてある。
だが、二人ともその顔にはいつもの朗らかな笑顔が浮かんでいた。
(たいしたもんだな)それを見て往人はそう思った。
前回の生き残りでそれなりに修羅場を潜り抜けている秋子はともかく、名雪のほうまで笑顔で、
「わ、なに往人さん、そのカラス。お友達?」とか往人にしゃべりかける。
「んなわけあるか。非常食だ」
「わ、ひどいよ往人さん」
「こんな奴、それで十分だ。おいこら、つつくな」
「往人さん、ひどいよー、鬼畜だよー」
往人は「うるせぇよ。」などと返しながらも、久方ぶりに(っていっても一日もたってないな、おい)交わす明るい会話に少し心が和んでいた。
少し表情を緩めて秋子の方を見る。
「てっきり、喫茶店にずっといると思ってたが」
「そうしたかったのですが・・・あの後襲撃を受けてしまいまして」
「襲撃?」往人の目が鋭くなる。「誰にだ?」
「名前のほうはわかりません。ですが姿のほうは見ました。」
秋子は真顔になって答えた。
「長い黒髪で割と長身の、切れ長で多少たれ気味の目をしたきれいな女性です」
秋子はそのほかに武装、服装等の細かい特徴を、往人に告げた。
「この出場者の中にはジョーカー、主催者側に雇われた殺し屋が幾人か紛れ込んでいるようです。往人さんも気をつけてください。」


238 :狩のはじまり 2:2001/05/31(木) 17:58
「ジョーカー、だと」往人は低く呟いた。
最後に彼が殺した女を思い出す。真剣な、どうしようもなく必死な、そんな思いを抱え、それでも人を殺すことしか方法がわからなかった、あの少女のことを。
「・・・許せんな。」
「そうですね…」ため息と共に秋子も同意する。「そのジョーカーに襲撃を受け、琴音さんの行方もわかりません」
「そうか・・・大変だったな」往人は名雪にも何か言葉をかけようとして彼女のほうを向いた。
そこで、往人はかすかな違和感を感じる。名雪がこの会話中もずっと笑顔のままだったので。
確かにいつも笑顔の少女、というイメージは合った。が、こんな張り付いたような笑顔をするような子だったか?
「ところで、往人さん。探し人は見つかりましたか?」
「あ、ああ・・・」だが、秋子の問に、そんな違和感は頭の中に定着する前に消えていってしまう。
「まだだ。このレーダーでは番号しか表示してくれないんでな」
先ほども、017番の表示が出たので、本人に気が付かないようにして確認してみたが、それは長身でやや筋肉質のショートカットの女。彼が探す神尾観鈴には似ても似つかなかった。
もっともこのレーダーのおかげで、慌てて逃げた先、水瀬親子の存在をキャッチできてこうして合流することができなのだが。
「もう少し立てば放送が始まるから、番号も絞れるかもな」
多少の罪悪感を無視して往人はそう吐き出すようにいった。
「・・・その番号なんですが・・・あなたの探し人は神尾、でしたよね。」
秋子は頬に手を当て首をかしげる。
「それならば、おそらく番号は023,024、025のどれかじゃないかしら」
「…なんでそういいきれる?」
「昨日の高槻の放送です。高槻がこの5人を殺せ、といったとき、その中に鹿沼葉子さんという方がいました。その人の番号が確か、022だったはずです。そしてすでに河島はるかさんという、026番の方が放送で呼ばれましたから・・・」
「そうか!」往人は慌ててレーダーを覗き込んだ。神尾は晴子と観鈴がいるから、024は必ずどちらかの神尾であるはず。「いた、おそらくこれだ」
023と024がいっしょの場所にいた。他にもう一人そばにいる。025のほうは海岸のほうにいた。


239 :狩のはじまり 3:2001/05/31(木) 18:00
「多分、023と024のほうが正解だろうな・・・助かったぜ秋子さん」
「よかったわ。ここから近いの?」
「ああ、今きた道を戻ったところだ」それは、先ほど017を見つけた少し先にいったところだった。
「これだったら、すぐ見つけられるな。あんたらはどうする、ついてくるか?」
「いえ・・・」秋子は首を振った。
「私たちは元から知り合いの信頼できる人と合流したいと思います。そこでなんですが・・・」秋子は一度言葉を切る。「あつかましいお願いですが、そのレーダーをお返しできないでしょうか?」
「レーダーを?」
「はい、喫茶店にいるうちは必要もないものだったのですが、こうなってしまった以上、はやく頼れる人と合流したいのです。名雪の怪我のこともありますし。」
「そうか・・・」往人はしばし逡巡した。だが、
(この距離なら、レーダーがなくてもすぐ観鈴達とも合流できるだろ)
もちろんこちら移動している間に、彼女達も移動するかもしれない。だが、探せないということはないだろう。もうすぐ日が暮れるというのは不安要素だったが、あるいは夜のうちは向こうも動かないかもしれないし。
「そうだな・・・もともとあんたらのもんだしな。いいぜ、もってけよ」
「いいんですか?」
「ま、今の礼もあるしな。それじゃ、俺はそろそろ行くぜ。急ぐことになったからな」
「うん、それじゃあね、往人さん」名雪が笑顔で往人に別れの言葉を告げる。
「あばよ」そういって立ち去ろうとした往人の背中に秋子の声が投げかけられた。


240 :狩のはじまり 4:2001/05/31(木) 18:01
「・・・待ってください」
「?何だ?」
「・・・いえ、その」言いよどむ秋子。その姿に往人は多少の驚きを感じる。そんなことをするような人には見えなかったので。
「・・・あなたは・・・私たちと別れた後、敵に会いましたか?」
「ああ」
「殺し、たのですね?」
「ああ」
「そうですか・・・後悔はしませんでしたか?」
「ああ」
往人は秋子の彼女らしくない質問に三度同じ答えを返す。
「その人たちにはその人たちなりの事情があったかもしれないのに?」
「そして、俺には俺の事情がある。俺は、俺の大切なものを守りたいと思う。そのためには、後悔なんて、しない」
「・・・そうですか・・・それならばもう・・・」
秋子の声が徐々に小声になっていく。
「なんだって?」その声を聞き取れなかった往人が聞く。
「いえ、何でもありません。お気をつけて往人さん」
「・・・あんたらもな」
往人は聞き逃していた。
秋子が、それならばもう、あなたは、私達の敵ですね、といったのを。


241 :狩のはじまり 5:2001/05/31(木) 18:03
「何で、あんな嘘ついたの?お母さん」
「ジョーカーのこと?あら、あれはまったくの嘘じゃないわよ」
秋子はカラスを肩に乗せて去っていく往人を見つめながら、名雪に答えた。
「・・・そうね、ちょっとした宝くじかしら」
別にあの嘘に大きな意味はない。話の流れで、「敵」というものを往人に説明しなくてはならなかった。
そこでうかんできたのが、あの人、柏木千鶴だっただけだ。
そう、彼女、柏木千鶴も、もはや秋子の敵だった。
彼女が妹達や従兄弟を守るために殺人を辞さないというのならば、彼女もまた往人と同じように敵なのだ。
そして、その敵同士がつぶれあってくれれば・・・
(本当に宝くじみたいな話ね)秋子は首を振った。
「さ、あゆちゃんと祐一さん、探さなきゃね。」
「うん!まずあゆちゃんね。えーっと、あゆちゃんの番号はね・・・」
名雪は終始笑顔だった。

【水瀬秋子、名雪 往人からレーダーを入手】


242 :名無しさんだよもん:2001/05/31(木) 18:31
どうでもいいが、これって放送後の話でいいのか?

243 :狩のはじまりを書いた人:2001/05/31(木) 18:41
あ、ごめん。
【放送以前】をいれるの忘れてた。
最終回だけ訂正版をアップしたほうがいいかな?

244 :名無しさんだよもん:2001/05/31(木) 18:43
別にいいんじゃない?
ここにこうやって書かれたんだから、わかるでしょう。

245 :小さな手掛かり(1/4:2001/05/31(木) 19:05
もうすぐ夜の帳が降りる。
時が経つにつれ、蝉丸にとっては馴染みのある香りが島を覆っていく。
――死臭。
先刻の放送によれば、あれからさらに増えた。
既におよそ50人程の骸がこの島には転がっている。
中には野ざらしになっているものも少なくあるまい。
その中には、高子や夕霧も混じっているのだろう。見つけてやれれば、
埋葬くらいはしてやれるだろうが……。

この日中の間、蝉丸と月代は島の海岸沿いを歩いていた。
発端となったのは月代の提案だ。

「(・∀・)探す……といっても、あの高槻って人……どこにいるん
 だろう」
「分からん。もしかしたら、この島にはいないのかもしれん」
「(・∀・)でも、最初はいたよね? 船とかは無いって言ってたけど、
 この島から出るための別の手段があるんじゃないかな?」
「そうかもしれん」
「(・∀・)やっぱり、ヘリコプターとかかなぁ」
「ヘリコプター……?」
「(・∀・)知らない? こう、プロペラが上についてて、それがぐるぐ
 る回って飛ぶの」
「……ああ、回転翼機のことか」

確か、独逸や米軍がそのような兵器を開発していたと聞いた覚えがある。
滑走路を要しないのならばこの島の何処かにあっても気付き難いだろう。
だが、飛行機の類はいざとなれば簡単に飛行不能にできる。地上にあると
は考えがたい。それに、そんなものが飛んだのならば蝉丸が気付かないは
ずがない。

246 :小さな手掛かり(2/4):2001/05/31(木) 19:06
「(・∀・)だったら、飛行船で空からみてるとか…」
「そのようなものも、昨日から見ていない」

「(・∀・)地下道が海の下に通ってるとか…」
「海の底に道を造るのには非常に手間がかかるはずだ。ここは、他の陸地と
 は少なくとも数里は離れている。あの仙命樹の洞窟でもそこまで長くはな
 かった」

「(・∀・)そっか。じゃあ後は、潜水艦…とか」
「潜水艦……」
「(・∀・)そうそう。どっかの崖下の海中とかにでっかい秘密基地があっ
 て、そういうところに隠してあるんじゃないかな…って」
「秘密基地、か」

かつて特殊部隊の一員として、大陸で戦った日々が脳裏によぎる。蝉丸達
強化兵に与えられた使命の多くは表沙汰には出来ない性質のものだった。
それこそまるで冒険小説の産物かと思うような「秘密基地」に潜入・破壊
せよ、との命を受けたこともある。中には自分達と同じように強化された
常人ならぬ相手もいた。……そう、あれは確か……黒幽霊団とか……

過去の回想に浸りかけた蝉丸に、すねたような月代の言葉があびせられた。
「(・∀・)……だから、海沿いに歩いて調べてみようっ、て。……蝉丸、
 聞いてる? ねぇっ!」
「……ああ。分かった」

もし、高槻某がこの島にまだ居るとすれば、何らかの脱出手段を有してい
ると考えた方が自然である。様々な非常事態も考えられうるこの状況で、
「仲間に連絡すれば迎えがやってくる」などというような悠長な状態で構
えているとは思い難い。即座に逃げ出せるようにしているはずだ。ならば、
長期間の滞在が可能であり、かつ脱出手段がすぐ側にある何処かに隠れて
いるのだろう。潜水艦ならばそれらの条件は充分に満たしている。

247 :小さな手掛かり(3/4):2001/05/31(木) 19:07
特に手がかりがあるわけではない。ならば、この方法も悪くはあるまい。
こうして、何回かの休息をはさみながら二人は島の周囲を探り歩いた。
途中で黒焦げになった死体や、怪しい機械の残骸を見つけたりしたが、脱
出の手がかりになりそうなものは見つからなかった。

なお。先刻、自動車らしきものの音がしたため向かった先で、固く抱き合
う一組の男女を見かけはしたのだが、それに月代が気付く前に進路を変更
し、敢えて無視した。……先ほどからやけに自分にくっついてくる月代を
見ていると、なぜか、非常に厄介なことになりそうな気がしたので。

そして海沿いの、ある尾根上にたどりついた時。
月代が、竹槍を握りしめて小声で囁いた。
「(・∀・)蝉丸。なんか音が……しない?」
「む?」
月代も微量とはいえ仙命樹を持っている身だ。常人よりその感覚は鋭い。
蝉丸は耳を澄ます。
小さな音が聴こえた。少し向こうからの波音に紛れがちになるが、その音
は足下の地面――そのさらに下から聞こえた。

…カン。カン。カンッ…。
…ピーッ、ピーッ、ピーッ!

金属を叩くような、小さな澄んだ音。
そして、何らかの機械が出すような無機的な音。
(これは…)
そしてさらに気付く。周囲の土が、木々が――新しいものであることに。
岩にも苔がついていない。寺社にある枯山水の置物でもここまで綺麗では
あるまい。そして木も、樹齢の割には海風による影響が殆ど見られない。
これらは、置き替えられたものだ。
この下に「何か」が造られた後に。それは、おそらく――。

248 :小さな手掛かり(4/4):2001/05/31(木) 19:08
蝉丸は月代の耳元に口をよせ、小声で囁いた。
(…月代)
((・∀・)なに、せみまる)
(おそらく、この下に何かがある。だが二人では心許ない。ここはいった
 ん退き、他の者を探す)

腹中の爆薬のことも気になる。二人だけで突入しようとしたところで、き
よみのように爆発させられてはたまらない。せめて、この事を他の誰かに
伝え、策を練る必要がある。
余りここに長居して、こちらの居場所が分かっているらしい高槻某に疑念
を与えるわけにもいかない。こちらが気付いた事に気付かれ、逃げられて
も困る。

相手には今の会話までは聞き取れまい、と蝉丸は考えていた。荷物や服に
ついても調べたが、特に妙なものは見つからなかった。腹中に仕込んだも
のに仮に音を聞き取る機能があったとしても、大したものではないはずだ。
こちらの行動は、おそらく――この島に来て何度か感じた、視線の持ち主
達によって向こうに伝えられているのだろう。殺意のない、だが冷ややか
な同種の視線。蝉丸はこれが「監視者」のものではないかと考えていた。

もっとも、蝉丸は今の時代の技術には疎い。もしかしたら間違っているの
かもしれなかったが、そこまで考慮する余裕はさすがになかった。

(――もしかしたら、この「ぱそこん」が何かの役に立つのかもしれんが、
俺には分からん。誰か、これを扱える者に出会うことができれば…)


【蝉丸・月代 高槻の拠点の一つを発見、立ち去る】
※必ずしも高槻(オリジナル)がここに居る必要はありません。一応、
音は潜水艦の修理音等のつもりですが、ダミーかもしれません。

249 :111:2001/05/31(木) 19:12
わお!
燃える展開だね〜往人!
なんだか先が楽しみさ〜今日はハイテンション!!

250 :ふたりだけのせかい〜sacred days〜:2001/05/31(木) 20:16
 そこは二人だけの世界。
 全ての介入が無意味となる世界。
 度々聞こえる銃声も、定時放送も、彼等にとっては意味をなさない。
 彼等が出会い、その世界が生まれた。
 星空の祝福する下、彼等はいた。

「ねぇ、浩之ちゃん」
「どうした? あかり」
「ちょっと、話し疲れちゃったね?」
「あぁ、そうだな」
「でも、まだまだ話し足りないよね?」
「そうだな。俺達の過ごしてきた時間だからな。いくら時間があっても、足りないぜ」
「ふふ、そうだね」
「あぁ。だから、もっと話そうぜ?」
「うん……ねぇ、浩之ちゃん?
 こうして星空を見上げてると、私達、世界に残された最後の二人みたいだね」
「ずいぶんとおかしなことを言うんだな」
「酷いよ浩之ちゃん……」
「はは。あかりらしくて、いーんじゃねぇか?」
「今日で世界が終わっても、私は幸せだよ。浩之ちゃんといるんだから」
「あかり?」
「世界に残された最後の二人って言ったよね。だから、浩之ちゃんがいなかったら生きていけないんだ」
「……俺もだぜ」
「浩之ちゃん、守ってくれるって言たよね。もしも、どっちか先に死んじゃたら……」
「……わかった。約束する。だけど、生きて帰るぞ?
 どっちかが死んだりしたら、それは世界の終わりだな」
「そうだね……。
 聖なる瞬間っていうのかな。
 好きな人と迎える、世界の最後の瞬間っていうのは」

 二人、口づけを。
 この世界がいつまでも続くようにと――

251 :250:2001/05/31(木) 20:21
ってわけで、バカップルです(w

ツッコミ入る前に言うと、これはパクリです、元ネタあります。
わかる人にはわかると思いますが……ハカロワ用に少しアレンジを加えました。
それによってオリジナルの良いとこを削ってる気もしますが……。
この二人見てたらどうしてもこのイメージが浮かんだので、やっちゃいました。
申し訳ありませんでした。某氏。

252 :夜が来る1:2001/05/31(木) 21:48
「と、いうわけで紆余曲折を経て、私達は今も一緒に行動している――」
「誰に説明してるのよ……しかもはしょりすぎ!」
杜若きよみ(黒)、観月マナ、霧島佳乃……
三人は、何故かあのままなし崩し的に一緒に行動することになっていた。
「いわゆる三人寄らば、かしましい…という奴ね」
「あなた…キャラクター変わってない?」
きよみは、先程からとんちんかんな台詞を吐いてはマナを困らせていた。
「あはは、そんな二人には漫才師一号さん、二号さんに任命するよぉ〜」
佳乃は佳乃でこの状況を楽しんでいるかのように振舞うものだから…
「…もう、いいわ…勝手に言ってて…」
マナはただ頭を抱えるばかりだった。

先の放送――きよみの名前が入っていた…
ここにいるきよみではない。
まったく同姓同名の、別のきよみ――。
それを聞かれたくない所為からなのかもしれない。
だから、事の真偽を聞くのはマナにははばかられた。
「そういえばきよみさん、さっき放送で呼び出しがあったよぉ〜」
否、だけになった。
「ん…そうね…私には関係ないのよ」
さらりと言ってのけるきよみ。
その瞳の奥に、寂しげな瞳があることをマナは見逃さなかった。
(とても…そうには見えないわよ!)
まるで目標を見失ってしまったかのような空虚な瞳……
マナはそれ以上その話題を続けることはできなかった。

253 :夜が来る2:2001/05/31(木) 21:49
「で…お姉ちゃんのところ…行くの?」
佳乃が、めずらしく真面目に二人にそう振る。
「そう……ね」
マナにも答えられない。本当に今この時にそこへと行くべきなのだろうか……
「まあ、なるようになるわよ…たとえどんな宿命が待っていても、
 結果は自分で動いて出すものよ。その先に待っているのが不幸だけでもね。
 私はもう、現世にいること自体不幸だから…怖くないけどね」
「そんなことっ……」
言うものじゃない!!と、マナは続けるつもりだったが、結局何も言うことはできなかった。
きよみの、その表情に何も言わせないだけの迫力を感じたから。
「まあ、そう決め付けたものでもないんだけどね。好きにしたら?
 私は暇だし、一人でいるよりは安全ね、行くなら付き合うわよ?」
(………さっきまで私に殺すだの殺されるだの言ってたくせに……なんて勝手な女!)
「何か言った?おチビちゃん」
「………(怒)」
マナの伝家の宝刀…スネ蹴りと、きよみの悪口と共に繰り出される平手打ちは小一時間にも及んだ…
無論、佳乃が止めに入ってようやく収拾がついたことは言うまでもない。

254 :夜が来る3:2001/05/31(木) 21:50
「決めたよ…マナちゃん、お姉ちゃんのところに…私行く」
もちろん精神的ではなく、肉体的に…という意味だ。
決意の瞳。もう涙は溢れていなかった。
「分かったわ……行こう」
マナもまた、強くあるために…そう判断を下した。
(センセイに…笑われたくないもん)
「こっちよ…」
マナが先頭に立って、あたりに気を配りながら歩き出す。
「それと……」
何度もくじけそうになって、それでもマナがマナでいられるのは……
聖だけのおかげじゃない。
「ありがとね…」
ボソリと呟く言葉。かすかな、恥じらいで消えてしまいそうな声。
「ふう、これだからおチビは…」
「……(怒)」
その相手は、知って知らずかただ軽く悪態をつく。
今度は揉めなかった、お互いに。


ふと佳乃は思う。涌き出た疑問、知らない夜の記憶――。
(あれぇ…何か忘れてる…そうだ、お手伝いさん一号さん…どこに行っちゃったんだろう…
 昨日の夜、記憶がなくなったあたりからなんかおかしいなぁ。なんも覚えてないや。
 ……ま、いいか)
思考の混乱の最中、梓はボディーガードメイド1号から格下げされていた……


日は沈み、また夜が来る。
参加者達の心を震えあがらせる真の闇夜が――。

255 :252-254:2001/05/31(木) 21:52
本文、長さが中途半端で3つになってしまった…

256 :残照(1):2001/05/31(木) 23:07
沈みかけた太陽が最後の光を投げかける一室で。
二つの別れがあった。

「ホントに行っちゃうの?」
心配そうに初音が声をかける。
落ち着いたとはいえ由依の怪我は深く未だに血が滲んだままだ。
「うん。-----ありがとうね、また会おうね-----」
由依は涙をにじませて初音の両手を取る。
物騒だけど、と言いながら初音と二人で服からほどいたダイナマイトを
半分渡す。
「きっと、絶対、会おうね!」
二人は笑顔でお別れした。
お互いダイナマイトを持った手を振って。

「さっさと行きなさいよ」
憮然とした表情で七瀬が声をかける。
目覚めたとはいえ二人の頬は盛大に腫れたままだ。
「ふん。-----言われないでも、出て行くわよ。」
晴香は目を怒らせて七瀬を睨む。
喧嘩売ってんの!?と言いながら「しっしっ」とする七瀬の手をはたく。
「次はきっと、絶対、勝つわよ!」
二人は火花を散らして別れた。
鉄パイプと刀をギラリと夕日に輝かせて。




257 :残照(2):2001/05/31(木) 23:08

-----情況を整理しよう。

まず晴香、七瀬が壮絶なダブルKOを演じた後。
二人が目を覚ます前に浩平が高熱を出した。
体調不良のところに大暴れしたためか、純粋に怪我のためなのかは不明。
次に耕一だが、これまた鬼の発動による反動で元気がない。
その後目覚めた二人を加え、由依と初音を司会に(あまり適任ではなかったが)
情報交換することになった。

良祐と、瑞佳の死も語られた。
「良祐のこと、私…全然判らなかったな…」
黒いコートの男。
巳間良祐は遠い昔に晴香と別れ、そのまま逝ってしまった。
多くの人に悲しみを振り撒いて。
もはや、記憶はあまりに遠かった。
自然と涙が流れたが、それほど長い間ではなかった-----と思う。
七瀬だけはその涙を不満そうに見ていたが、それでも何も言わなかった。

くすん、と晴香が鼻を鳴らして。
夕日を背に部屋の隅まで影を流し立ち上がる。
「ごめん」
それは話を中断させたことに対してなのか、それとも七瀬や、ここに居ない
浩平、もしくは瑞佳に対してなのか。
ひょっとしたら良祐に対してなのか。
それは誰にも判らなかったが、そう一言呟いて自らの情況を話しはじめる。


258 :残照(3):2001/05/31(木) 23:09
過去。出会い。放送。そこで耕一が意見を挟んだ。
「君らは、あの高槻から特に恨みを買ってるのか?それとも奴を怯えさせる
 何かがあるのか?」
少し考えて晴香は答える。
「良祐や、由依は…巻き添えなんだと思うけど、他のみんなは、たぶん両方ね」
不可視の力、高槻との因縁、それらの概略を説明する。
続けて管理者達を襲撃した事を、仲間が捕らえられた事を-----殺しの契約に
ついても-----話した。

「なんだか、まるで信用ならないじゃない」
高槻の性格を知り、七瀬は呆れたように言う。
「そうだ、それなら葉子さんとやらを追った郁美と合流して反抗したほうがマシ
 なんじゃないのか?もし二人が合流していれば既に攻め込んでる可能性すら
 出てくるとは思わないか?」
ベッドで寝転がりながら耕一が後を引き継ぐ。
かなりだるいのだろう、動きが緩慢である。
「それに人質作戦を取るなら、最初からそうすればよかったんだ。
 ゲームが開始されてから参加者を捕らえなおして人質にする必要があるか?
 例えば初音ちゃんを人質にして開始すれば、柏木家のみんなは今ごろ必死に
 戦っていると思う。-----何か、変だと思うな」

沈んだ表情で思考をめぐらせている晴香に由依が話しかける。
「郁美さんを、探そう?」
これで決まった。
晴香は由依と共に郁未を追う事に決めたのである。


259 :名無したちの挽歌:2001/05/31(木) 23:11
…説明クセえw
ちょっと晴香がどうにも動かしにくくなってしまったので整頓。
ついでに忘れられがちな由依も待遇改善(?)。

名倉由依、巳間晴香は葉子を探しに行った郁未を追う事に。
七瀬、初音は不調の耕一、浩平と共に居ます。
ダイナマイトは各々五本。
七瀬の鉄パイプは家屋のベッドか何かから調達したものです。

260 :闇色の再開1/3:2001/05/31(木) 23:24
夜がくる。闇が、落ちる。
口元を笑みのカタチに歪め、冷笑じみた表情が篠塚弥生の顔に貼り付いていた。
あと、7人。
それで、あの二人が生き残れるなら…。
森を徘徊しながら、弥生は利き手に掴んだ機関銃のグリップの感触を確かめる。
血にまみれ、震える手で。
人を殺すことは最も恐るべき禁忌だ。
それは、法律で決まったことだからだけではない。
それを、弥生の腕の震えが教えていた。
もう、三人も殺してしまった……。
そう……この、手で。
人を刺し、鈍器で殴り、そして、銃器で撃った。
気が付けば、震えは全身に及んでいた。
血が、あんなにも赤黒く、そして生臭いものとは知らなかった。
少年の頭を捉えた、あの瞬間の腕にくる重力。
靴の踵で致命傷を与えた、あの、感触。
銃器を撃つ反動。そして、胸元に広がる、血。
いくら冷静なキルマシーンを装っても、所詮は人の子……。
じりじりと、恐怖が弥生の腕に、胸に、そしてその脳に伝わる。
これが、禁忌を犯したものの、心理。
誰に責められるでもないというのに、酷い罪悪感が脳漿に居座っている。

261 :闇色の再開2/3:2001/05/31(木) 23:26
こんなことでは…いけない。
いくら理性的に、物を理解しようとしても、頭の中には、自分が殺した少女の、
あの最後の顔がちらつく。
あんなにも悲しげな表情は知らない。見たことがなかった。
名も知らぬ少女の死に際の一言も、胸に刺さったままだ。
あの二人を守るため。
そんなのは言い訳でしかなかった。
理由ではない。人を殺してしまった今、それは意味を成さない。
どんな理由を付けても、それが切実で在れば在るほど、それは言い訳にしかならないのだ。
違う可能性を模索しても意味がないことはわかっていた。
わかっていたが、考えずにはいられなかった。
もし、この奸計に自分が気付いていれば。
もし、一番に二人を見つけられれば。
……今に、もしも、なんて言葉に意味がないことは、弥生自身が一番、理解していた。
もし、私が、人を殺さずにいられたなら。
もし、最初から人を殺すことなく、二人を守ることができたなら。

がさり、と物音がした。
はっと息を呑んで、弥生はとめどない思考を振り払う。
音の距離は、それほど近くも遠くもない。
すっかり帳の降りた闇に、目を凝らす。
右目が、ズキリ、とそれを非難するように痛んだ。
―――また、殺すのか。
そう、問いただすかのように。

262 :闇色の再開3/3:2001/05/31(木) 23:28
人影の数は2つ。
闇に慣れたとは言え、距離がありすぎる。相手の顔は判別がつか
ない。
片目に傷負っていなければ、或いは見えたかもしれない。
舌打ちを堪え、弥生はその2つの影を見極めんと、距離を感づか
れない様に縮める。
「………っ!」
弥生が見た、2つの影は、彼女が必死で守り抜こうと、そう決めた
二人――由綺と冬弥のものだった。
「由綺さん!」
堪らず、声をかけた。森の静寂が、一瞬ビリ、と震え、そして前
以上の静寂が3人を包む。
「弥生さん……!」
少しばかりの沈黙のあと、由綺が笑った。泣きそうな、顔で。
弥生は、手にしていた武器を全てその場に放り、由綺を抱きしめた。
「く、くるしいよ…弥生さん…」
苦笑いを浮かべても尚、嬉しそうに声を上げる。
喜ばしき再開。
ここが、死を与える島でなければ、そうだったのかもしれない。
「お二人とも、よく…無事で」
頬が熱い、そう感じたとき、にようやっと自分が泣いているのだと、弥生は気が付いた。
「弥生さんも…よかった。ね?冬弥くん?」
「ああ……」
冬弥だけがその場にそぐわない、招かれざる客のようにただ、萎縮していた。

263 :羽根。:2001/05/31(木) 23:51
「……何のためにこのゲームを企画したしたかだって?」
長瀬源一郎がそう訊ねると、長瀬源之助は苦笑して答えた。
「儂に意図はないよ」

空。
そこは、遥かな雲の上。
そう――七瀬彰が推測した事情は、半分は当たっていた。
企画者、長瀬一族の内の、長瀬源之助、長瀬源一郎、長瀬源四郎、
そして、フランク長瀬。四人が、上空で「観察者」を演じていた。
一族の残りの二人が何処にいるかは知れぬ。
レーダーに写らない、不思議な構造の浮遊物体の中で、上空数千メートルの高さで、彼らは観察している。
体内爆弾を爆発させるための、観察者として。恐ろしく高性能なカメラが、それを可能としていた。

ゲームが始まる、前日の事。
何故このゲームが企画されたかは、長瀬一族の誰も、実は知らぬ。
そこに働く意図を汲み取れぬまま、流されるままに、殺人教唆を行う事になる、長瀬一族。
彼らに罪悪感が生まれたのかは判らぬ。だが、意図は彼らに確かに組み込まれた。
そこに働くのは、強制力のようなものである。
彼らの心根ではどうであれ、彼らは企画をしないわけにはゆかなかった。
だから、彼らに罪はないと云えるかも知れぬ。
だが、現実、「これ」が無事に(無事に、というのもおかしな表現ではあるが)終わったならば、
彼らは法に裁かれる事になるだろう。それは、不運であったとしか云いようがない。
――だが、一族全員が必ずしも意図をまるごと飲み込んだわけではない。


264 :羽根。:2001/05/31(木) 23:51
彼らの父――セバスチャンこと長瀬源四郎に、長瀬源一郎、フランク長瀬の二人が談判に来たのは、
彼らが「意図」を素直に飲み込めなかったからだろう。
願いは一つ。
自分たちの甥をこの馬鹿げた戦に放り込まないでくれ、というもの。
だが、彼らもまた、この戦いの部分となる事を定められたもの。
だから、その希望は却下された。
だが、彼らとて引き下がるわけにはいかぬ。可愛い甥をみすみす死地に送るような事など出来ぬ。
――だから、妥協案を出したのである。
その甥二人には、参加者全員に埋め込まれるはずの、体内爆弾を例外的に外す、と。
二人は納得したわけではない。
だが、彼らとて理解したのだ。甥二人を死地に遣るのは避けられぬ事と。
ならば、せめて体内爆弾などと云う、危険極まりないものを外せるだけでもまだマシだ、と、
そう考えたのである。
妥協が心に生まれた瞬間、諦めが生まれた瞬間、強制力は二人の心に、可愛い甥を殺す事を強いた。
そして、殺し合いは次の日、始まったのである。
フランクと源一郎が参加者を監視する役についたのは、そういう事情があった。
後の二人も同じ役を請け負っているが、二人とも歳であり、長くは起きていられぬので、
必然的に彼ら二人が主な監視者となる。
――といっても、爆発を巻き起こす権限は彼らにはない。それは、高槻の仕事だ。
フランクたちが得た情報を彼に転送し、高槻の操作によって爆弾は破裂する。

265 :羽根。:2001/05/31(木) 23:52
だが、杜若きよみを死に至らしめたのは、高槻の判断で、であった。
だから、観察者としての仕事を彼らは未だ一度たりとも果たしてはいない。
源一郎たちが情報を転送しようとした時には、既に彼女は爆発していた。
そして、直感している。多分、自分たちの仕事は殆どない。
高槻の報告を、通信機越しに聞く事だけだ。
愚かで卑屈な男であるが、悪知恵が働く男だ、と苦笑せざるを得ない。
自分たち長瀬一族に頭が上がらぬようではあるが、何を考えているかも知れぬ。
クローンの存在にも気付くやも知れぬ。事実、クローン同士での戦いもあった。
だが、誰が本物であるかも彼らは知れぬ。自分が偽物である事を知らぬまま、生きていくだけやも。
長瀬一族は、高槻の所属する集団……FARGOの上位団体であった。
だから高槻は頭が上がらぬ。だが、長瀬一族とて「意図」に反する事は出来ぬのだから、
支配されているという点に於いて、彼らは同じだ。
結局長瀬一族に課せられた仕事もまた、人が死んでいくのを見ながら、甥達が死なぬ事を祈りながら、
――観察を続ける事だけなのだから。

彼らに意図を課したのは誰か?
もう、そなたは気付いているやも知れぬ。

余だ。


266 :闇色の再開 作者:2001/06/01(金) 00:00
最後の注意書きを忘れました。
【由綺&冬弥と弥生合流】
※この先どうするかは他の書き手さんに任せます。

267 :熊殺し(1):2001/06/01(金) 00:02
「さて、これからどうするよ?」
二人が去って、がらんとした民家の居間にどっかりと腰を落ち着けて、
北川潤(029番)はこれまた落ち着いた口調で、行動を共にしている宮内レミィ(094番)に話しかけた。
天から降ってきたこのノートパソコンと、そのドライブに挿入されていたCDはいかにも『これは重要ですよ』と
語り掛けてきているようであったが、実際問題他のCDが存在するとして…これは殆ど確定事項だったが、
あと何枚存在するのか、またどうやって探せばいいのか、
当然二人の平凡…と言うよりかは正直多少劣っている頭では考え付く筈は無かった。
そのまま二人して、う〜ん、と唸るだけの時間が過ぎる。
居間に備え付けられていた壁掛けの時計の秒針が振れる音だけが、静寂の中で響いていた。

それでも沈黙は暫く続いたが、ある瞬間北川が「よし!」と突然膝を叩いたので、
レミィはその顔を上げ、「何か思いツイタの?」と訊いた。
北川は自信たっぷりに、「何も思いつかん!」と清々しいぐらいに答えた。
…また、沈黙が二人を包んだ。


268 :熊殺し(2):2001/06/01(金) 00:03
北川は考えた。

さて、朝になったら動く、とは言ったものの…どうするよ?
動く、と決めた以上ここに居るのは当然却下だ。一度決めた意見を曲げるなんて男がすたらぁ。
だいたい、ここに居たって何の情報も手に入りゃしない…入るのは死者の名前ぐらいだ、胸クソ悪ぃ。
だったらどうする?当てもなく飛び出すか?
やめとけ、こっちはロクな武器……ロクな、はいらねぇな。武器がない。
ノートパソコンで頭をぶっ叩けば相手をよろめかせる事ぐらいはできるかも知れないが、
死にゃあしないだろうし、だいいち今から必死こいて集めようとしているCDを読みこむのにはコイツが必要だぜ?
だとすると、残ったのは知り合いづてに情報を集めていく作戦か?
顔見知り同士なら、いきなり銃向けられてBANG!ってコトは無いだろうからな。
しかし、それにしても問題がある。肝心要の知り合いが減りすぎた。
相沢と椎名サンは情報を持ってなかったし、美坂は…死んじまった。結局告れなかったなぁ…
住井もだ。ったく、昔貸した5000円返せ(利子付)。今更か。
いかんいかん、感傷に浸っている場合じゃないぞ北川潤、今は生き残った者の事を考えるのが先決だ。
さっきの放送までで名前を呼ばれなかった俺の知り合いって言うと……
水瀬さんはまだ、呼ばれてない筈だよな。確かそのママさんも。
………ってオイ、これだけか?
参った。参加者が半分残ってる状態でたった二人(相沢達を入れて四人)かよ。
宝クジほど、とは言わねぇけど、Totoで3等当てるぐらいには難しいんじゃねえのか?
レミィさんの方は何人知り合いがいるかどうか分からないけど、せいぜい5人ぐらいか?
う〜ん、9/50(およそ)か……もう1人欲しいなぁ……
ん?1人ぐらいじゃ変わらないって?そんな事無いですよ、一桁が二桁になっただけで、
安心しちまうぐらい程度の低いモノなんですよ、人サマの脳味噌ってヤツはね。
さぁ、そうと決まれば思い出せ北川潤!誰か居ないかッ?
誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か誰か…………


269 :熊殺し(3):2001/06/01(金) 00:03
「あ゛あ゛ッ!」
また突然北川が大声を張り上げたので、宮内レミィは当然驚いて身体をびくっ、と震わせた。
おそるおそる、レミィが北川に訊いてみる。
「ど……どしたノ、ジュン?」
北川は勢い良く立ちあがり、座ったままのレミィを見下ろす形で喋る。
「……決めた。朝になったら動く」
それはさっきも聞いた、といった表情でレミィが北川の顔を見る。北川は続けた。
「勿論、闇雲に探してもそうそう見つかるワケは無い。
だから、我々の知り合いづてに訊きこんで行こうと思う。他人に見つからない様に移動して、
知り合いの姿を見つけたら声をかける。知らないヤツだったらそこから逃げる。単純な作戦だ。
とりあえず、俺の知り合いはちょっとぽけーっとした感じのある、水瀬さんに、そのマザー。
相沢たちとももう一度会っておきたいな。それと………」
そこで北川は一呼吸置く。レミィも押し黙って北川の次の言葉を待った。
「俺の黄金色の脳も今の今まで忘れていたんだが…そう、熊をも倒せそうな力強さを持った……女のコが居た」


………その頃。
「ぶえっくしょぃ!」
七瀬留美(069番)は盛大なクシャミをして、風邪かしら?と鼻を啜った。
それに折原浩平(014番)が、横になりながらもいつもの悪態を吐く。
「どうした七瀬、風邪か?…にしても乙女らしくないクシャミだな」
例によって、遠慮無しに七瀬の鉄拳が飛ぶのは、その直後であった。
「うるさいわボケェ!」
鈍い音と、それに少し遅れて浩平の絶叫が夜空にこだました。


270 :御堂もビビる!詠美ちゃん様は強いんだぞ!:2001/06/01(金) 01:26
男は森を徘徊していた。
彼―――(089)御堂はこれ以上他の参加者との接触は避けたかった。
坂神蝉丸の他にも注意すべき敵がいることをを知ったためでもある。
あの川で見かけた女…
岩切、安宅を葬った奴…
もう1つ、足手まといを作りたくないという理由もあった。
『あのガキ…あゆとか言っていたな…まだ死んでねぇよな』
しかし、最大の理由はあの放送…坂神の連れの少女の演説であった。
御堂はいかなることがあろうとも他の参加者の命は奪わない―――敵はあくまでも主催者。

しばらく進むと、何者かの気配がした。
『…近いな、この気配…女か?』
御堂はすぐさま身を翻し、木の幹の影に隠れた。
間もなく、その場に現れたのは(011)大庭詠美であった。
彼女は御堂に気付く気配は無く、本来なら彼女はこのまま通り過ぎる…はずだった。
『ちっ、面倒な事になりやがった、何事もなくこのままやり過ごせれば―――』
と突然、彼の頭上の獣達が暴れ出した。
「ぴこっ!ぴこぴこ!」
「にゃにゃ!な〜う〜」
『こっ、こらぁ!暴れるな!痛てっ!』
「誰かいるの!?」
慌てて2匹を取り押さえるが、時既に遅し。詠美に勘付かれてしまった。
「ねぇ?誰かいるの?」
「…」
御堂はこのまま逃げることを考えた。相手に敵意が無ければ、追撃は免れる…そう考えたからである。
「いるんだったら、武器を捨てておとなしくトーコーしなさい!そうすれば命だけは助けてあげるわ!」
『投降…捕虜になれということか…しかし、奴の自信、相当なものだな…一体武器は―――』
「早く出てこないとこの『ムーンライトマジカルステージストライクレーザービームライフル』が
あんたを木ごとふっとばすわよっ!」
『な、何ィ!?』
御堂は驚愕した。それほどまでに強力(そう)な兵器が支給されていたとは…
そして己のクジ運の無さを右腕の中の猫を見ながら絶望した。
『木を盾にしたとしても俺の銃では分が悪すぎる…ちくしょう、こんな時にっ!』

御堂はあっさりと詠美のハッタリを信じ込み、戦意を喪失した。
彼は、腰に差してあったデザートイーグルを女の足元に放り投げ、投降した。

【御堂 捕虜になる】
【デザートイーグル 詠美が回収】

271 :月明かりの下、赤い女神1:2001/06/01(金) 06:29
(問題はあの男よね…まだいるのかしら…)
マナは歩きながらあの聖と対峙した男のことを思う。
藤田浩之(077)。
マナはその名前は知らないが、顔は覚えていた。
聖に近づけば近づくほど、あの男の狂気の表情を思い浮かべ、萎縮する。
「おチビちゃん、夜が怖いの?」
「違うわよっ!!」

時折、聖の事を思い出しているのか、言葉を発さなくなった佳乃を見やる。
先程渡した聖の形見――まだ開けられたことのないバックを胸に抱いて、無表情で歩く。
「佳乃ちゃん…大丈夫?」
「……えっ?も、もちろんだよぉ〜」
ふと我に返り、いつもどおりの人懐っこい笑顔。
先刻からこれの繰り返し。
(強がってるけど…まいってるのかな…無理ないよね…)
「ガキのくせにお姉さんぶるのは似合わないわよ」
「な、なんですってっ……!!」
だが、この夜の雰囲気に、小競り合いをしようという気にはどうしてもならなかった。

272 :月明かりの下、赤い女神2:2001/06/01(金) 06:30
「……で……だ………だよ?」
佳乃の声が響く。
(ねぇ、あの娘、なんか変じゃない?)
マナの耳元できよみの声。
「………」
佳乃は、恍惚とした表情であらぬ方向を向いては独り言を喋るようになっていた。
何を言っているのか分からない。
先程の佳乃とはうってかわって、あきらかに様子がおかしい。
「佳乃さん、どうかしたの?」
「……えっ、な、なにが?」
瞬間、佳乃の瞳に光が宿る。
「疲れてるの?」
「ぜ、全然大丈夫!!」
「そう…ならいいけど…」
きよみが訝しげに、だけど無理矢理納得させて先を急ぐ。
(だ、大丈夫かな…)
マナもまた、先行き不安だった。

「たと……だ………よ…………から」
だんだんとその間隔が短くなっていく――
きよみと、そしてマナは、だんだんと背筋が凍るような思いを感じていた。
それは得体のしれない恐怖――。
「佳乃ちゃん!!」
マナが耐え切れずに声を張り上げたとき……

   ゴッ………!!

何か、鈍器で柔らかいものを叩いた音が響いた。

273 :月明かりの下、赤い女神3:2001/06/01(金) 06:31
「えっ……?」
目の前で何が行われているのか分からない…
ゆっくりと崩れ落ちるきよみさん…闇夜に飛び散る何かの液体…
そして、無表情にこっちを凝視する佳乃ちゃん……
「な……に……?」
土の付着した石からなんか…水がしたたってるよ…
どうしてそんなものもってるの?かのちゃん……
ゆっくりとこっちへ近づいてくる…
どうしたの?きよみさんは?なんで倒れてるの?
もしかして敵の襲撃?霧島センセイを倒したあの男でもいたの?
ゆっくりと佳乃ちゃんが私の目の前で両腕を振り上げて……

「なにしてんのよっ!!」
え?
体が宙に浮かぶ感覚――
きよみ…さん?
佳乃ちゃんの姿が遠ざかる…
ゆっくりと…こっちを見てる。
きよみさん、佳乃ちゃん置いて行っちゃダメだよ…
あっ…良かった、追っかけて来てくれてる…
でも石を持って走ったら危ないよ……


「はあ、はあ……一体なんなのっ!!」
「きよみ…さん?」
何故かきよみさんに抱えられて。
「なにか…出てるよ?」
きよみさんの頭から黒い水が出てる…
「しっかりしなさいよ!!このチビ!」
え?私?
「はあ……はあ…火事場の馬鹿力もここまでかしら?」
開けた場所、森を抜けた場所……
森を抜けて月明かりにきよみさんが照らし出されて…
憎らしいけど、ちょっと綺麗だなって、思った。女神様みたい。
だけど、その女神様は、月明かりで初めてはっきり見えたその女性は――

赤かった。

274 :月明かりの下、赤い女神4:2001/06/01(金) 06:33
「きよ…みさん?きよみさん!!」
「騒ぐなチビ!!…それよりこの状況、絶対絶命よ…」
後ろは崖。ほぼ直角で、とてもじゃないが降りられたものではない。
落ちても死なないかもしれないが、無事ではすまない。
「……佳乃…ちゃん?」
「……ふふ……」
虚ろな目をした佳乃が、ゆっくりと追い詰めてくる。
「……武器貸しなさい…チビちゃん」
「えっ?…ダメだよ!!」
だが、静止の声も振りきってきよみが武器を奪い取る。
奪い取った獲物はオートボウガン。元は聖を殺害した浩之の初期武器だ。
「来たら…撃ち殺す…この距離ではずさないわよ……」
ゆっくりと狙いを定める。目標は佳乃の体の中心より少し左上――心臓。
手が震える。狙いが正確に定まらない。
頭から流れる血が、命のやり取りをする恐怖がきよみの体をそう反応させる。
どくどくと、脈打つように流れでる血の感覚だけが妙にリアルに感じられた。
「……わた…しが……やるの…」
黄色いバンダナの巻かれた手に、血の付着した石。
「そんな…どうして……」
きよみの横で、佳乃の姿を呆然と見つめる。
「……し……んで……」
そして佳乃は躊躇無く歩み寄り…
「こ、こないでっ!」
きよみがマナを体で弾き飛ばし……引き金をひいた!!

ばしゅっ!!

鮮血が舞う……佳乃の左腕に、突き刺さるボウガンの矢。
マナを弾き飛ばした際に、狙いがそれた…その結果だった。
佳乃はそれをものともせずにきよみへと石を打ちつけた。

275 :月明かりの下、赤い女神5:2001/06/01(金) 06:34
ゴッ……!!

再度、鈍い音がする…
「あう……」
きよみさんが、スローモーションのように…崖下へ吸い込まれて行く……
「き…きよみさんっ!!」
ただ、無我夢中だった。
崖を見ていた佳乃ちゃんを弾き飛ばす。
佳乃ちゃんはそのまま木に打ちつけられて倒れる。
センセイの妹、今は構っていられない。

手荷物をもって崖下への道を探す。
センセイの応急処置セットが入ってるから…
すぐに手当てすれば助かる!!
下り坂を見つけてはその方向へ走る。
「きよみさん…きよみさん!」

崖下で、きよみさんがこっちを見ていた……
「…お……ちびちゃん…」
「きよみさん!」
駆け寄る。
傷がひどい…両足が折れて骨が見えてる……
頭からの出血もひどい……
「いまっ、助けるから!」
助かるから!すぐに…だって私霧島センセイの弟子なんだから!!
「もう…いいから…」
「聞こえない!はやく手当てしなきゃっ!!」

ザッ…ザッ…!

「誰?……マナちゃん?」
その時女の人の声。
いつもなら大好きで…すぐにでも駆けよって甘えたいお姉さん。
その横にずいぶんと傷ついた長髪の女の人と、
そこから後ろ、少し離れた場所に、藤井さんがいた……。

276 :月明かりの下、赤い女神6:2001/06/01(金) 06:35
弥生さんは、もう、由綺から離れないだろう…
だから、俺は由綺から離れる。
俺に、誰も近づかないように、
もう、誰も大事な人を傷つけないように。

だけど、俺達はまた出会ってしまった。
非日常の中の1ページで。

「…マナちゃん…よかった、無事だったの?」
「お…姉ちゃん…」
由綺が駆け寄ろうとした時、弥生さんが由綺を止める。
「お知り合い…ですか?」
「うん、あの子、マナちゃん、私の従姉妹なの」
「そうですか…もう一人の方は?」
「知らない」
「そうですか」
あくまで機械的に、事務的にそれだけを済ませる。
本当にこの人には人間の血が流れているのだろうか…?
出会った頃ならそう思っていたんだろう。
でも、本当は誰よりも心に熱い想いを秘めていて…
微かな心の揺らぎが、俺には伝わった。一度だけ、弥生さんの足が震える。
「お姉ちゃん…」
呆然と、マナちゃん。
駆け寄ってあげたい…だけど、俺は弱くて…
「もう一人の方…とどめさしたほうがいいよね?」
「……由綺さんがそう…おっしゃるのならば…」
「お姉ちゃん…!?」
弥生さんが思案に暮れて、やっと出した答え。
その言葉に怯えるマナちゃん。
由綺だけがいつも通りで、それを見ているだけの俺が、どうしようもなく滑稽で……

277 :月明かりの下、赤い女神7:2001/06/01(金) 06:40
「こ、こないで…」
その女の人を抱きしめるようにマナちゃん。
その倒れている女の人はもう助からないのだろう。
この島であれだけの傷を負ってしまえば…
それでもマナちゃんはその人を守るようにして、由綺を、弥生さんを見る。
「どいて…いただけませんか?」
諭すように弥生さん。
「マナちゃん、少しだけどいていて?その後一緒にいきましょ?」
囁きかけるように由綺。
そして、それを見ているだけの俺。
「……」
ただ、呆然とそれを見ているだけの、俺とマナちゃん。
可愛い教え子、今の彼女の心を考えただけで、胸が張り裂ける…
(由綺……あの頃に戻りたいよ……)
「俺が…やるよ」
意を決して警棒を握り締める。
「冬弥君!?」
「……いえ、私ががやります。私がやらなければならないんです」
弥生さんのその静止の言葉も意味も聞かず、俺は二人に歩み寄った。
「ふじ…い…さん…」
絶望の瞳を俺に向ける。胸が痛む――。
ゆっくりと女の人の頭上に移動する。
ちょうど、由綺達から背中を向ける位置に。
「……最低ね」
朱に染まった女が、紡ぎ出した言葉。
「ああ、だから俺は、こんな方法しか取れないんだ……」

278 :月明かりの下、赤い女神8:2001/06/01(金) 06:41
身をかがめる。なるべく不自然でないようにして。
(マナちゃん……逃げろ…その娘も俺も由綺も置いて…早く…)
「ふじい…さん?」
かすれそうな声。また胸が切なく締まる。
横の女も一度面食らったような顔をしたが、不敵な笑顔で…
(それがいいわ、ベストの選択ね…)
死の淵で苦しんでいる女性でさえ…
俺は、自分の弱さを呪った。
「できない……できないよっ!!」
マナちゃんの、絶叫、心の叫び。

「マナちゃん…マナちゃんまで冬弥君をたぶらかすの……?
 冬弥君…どいて…そこをどいて」
由綺の声が遠くで響く。
だけど、足音がゆっくりと近づいてきて……
「……由綺……」
「ね?」
横の弥生さんは沈痛な面持ちでそれを見ていた。
ああ、弥生さんも気づいたろうな…由綺の、今の心に。
「さあ、どいて」
チャキッ!
ニードルガンの音。すぐ後ろで聞こえた。
由綺はまた、俺のせいで手を汚すのか――。

「なんて…情けないチビなの…あなたもあなたよ…」
血と、絶叫が飛び散る。
「早く連れてって!このノロマッ!!」
瀕死だったはずの女性が、手で体を押し上げるように動いて由綺に飛びつく。
「あっ!!」
二人、地面に体を打ちつけて転がる。血が、飛び散る。
「………!!」
その声に背中を強く押されて、気がついたらマナちゃんを抱えて走り出していた。
「き、きよみさ〜ん!!」
腕の中で叫ぶマナちゃんの声より、女――きよみの体に針の刺さる音が生々しく、大きく聞こえた。
その音も少しずつ遠くなって…

そして、マグナムの銃声。
その音の余韻が消える頃には、三人の姿は見えなくなっていた。

279 :そうだ学校へ行こう!(1):2001/06/01(金) 06:41
ごとん。
箪笥を寝室の扉に押し付けてカモフラージュする。
「ちゃんと寝てんのよー喧嘩しちゃダメよー」
「行ってくるねー」

晴香、由依と別れてまもなく耕一、浩平の症状は更に悪化した。
男二人は反対したが寝ていて治るようなものでもないと考えた七瀬と初音は
薬品調達に出かけることを押し切ったのである。
消毒薬、包帯は発見できたのだが内服薬が-----必要なのは解熱剤、可能なら
抗生剤も欲しいのだが-----発見できなかった。
屋内で発見した詳細な地図を見ながら病院、診療所を探すが見当たらない。
なんて不便な島なんだろう、と思いつつ仕方なく遠くを探そうとしたとき。

近場に-----学校を発見した。そうだ保健室が、あるじゃない?

先行者の武器を残し、初音は浩平の銃、七瀬は鉄パイプと散弾銃を持つ。
もはや太陽はほとんど沈もうとしていた。
それが最後に見る太陽になるかもしれないけれど。
それでも、構わない。

そうだ学校へ行こう!




280 :月明かりの下、赤い女神9:2001/06/01(金) 06:42
「どうして……どうして……弥生さん、どうして冬弥君…」
由綺のすすり泣く声を聞きながら、押し当てたマグナムを女から放す。
「由綺さん…藤井さんを探しましょう…話は…それからです」
「うん…だけど…マナちゃんは許せない…許せないよ…」
「…そう…ですか…」
弥生はかすかに涌き出た迷いをかき消し、由綺の頭を撫でる。
今の弥生にとって冬弥と由綺はすべてなのだ。
たとえ、それが間違った行動であったとしても。
奪った命はもう戻らない。
死んだ者達の為にも、弥生達は生きて帰らねばならない。
(それこそ詭弁ね…)
そう自嘲し、倒れている女の体を綺麗に横たえてやる。
もう、後戻りはできないのだから…
そして、朱に染まっていた由綺を優しく抱きしめてやった。


015  杜若きよみ(黒) 死亡
031  霧島佳乃     左腕負傷
047  篠崎弥生     オートボウガン(浩之初期武器)回収

  【残り48人】

※マナのアイテムはすべてマナが持ってます。落としてはいません。
※応急処置セットを除けば、聖の持ち物は佳乃が持っています。

281 :そうだ学校へ行こう!(2):2001/06/01(金) 06:44
真っ赤な空に奇妙なシルエットが三つ。
二人のメイドさんとチビッコが一人。
助さん角さん宜しくメイドさんを両脇に従えたチビッコ-----あゆが叫ぶ。
「はやくはやくっ!」
一人だけ小走りなのだがメイドさんたちは早歩き。

例によって家屋に侵入し今度は晩御飯を頂こうと思った三人。
「たいやきだよっ!」
転がり込むように二人の間に、いや事実転がりながら鉄板を手にした
あゆが雪崩れこむ。たいやき用鉄板。何故こんなものが?
まあ携帯にも便利だし、朝ぐらいまでは保つだろうとアンコを練って
鼻歌交じりに火を起こす梓が表情を曇らせる。
火が、つかない。
妙な事に-----ここいら一帯の家屋はガスが設置されてなかったのだ。
電気すら通っていない。
「? どーいうことかな? この家変じゃない?」
残念そうに卵をお手玉しながら梓が疑問を口にする。
「生活臭、しないものね…」
多分ダミーというか、ゲームのために設置されているので全ての家が
まともに機能してるわけではないのだろう、と相変わらずお手伝いすら
拒否されて小さくなってた千鶴が答える。

うまい具合に食材はある、しかしガスが無ければ熱量が足りない。
たいやきなんて、絶対無理。
「うぐぅ」
あゆがうなだれる。
憐れに思った梓がふと目をやると、電気の付いた教室が視界に入った。
「…教室?」
「あら本当。電気通ってるのね」
「家庭科室か理科室があれば…」

そうだ学校へ行こう!



282 :名無したちの挽歌:2001/06/01(金) 06:46
「そうだ学校へ行こう!」です。
挟んでしまいました…ゴメン(´Д`;

梓はモップあたりを調達して武器にしていてもいいかもしれません。
さて学校で待ち構えるのは…

今度は攻撃者が圧倒的不利なのですが、はてさて。

283 :たいやきだよっ!(1):2001/06/01(金) 07:59
広い調理実習室の片隅で。
「ぱりっとして、ふわっとして、あんこがしっぽまでだよっ!」
梓の周りを興奮したあゆが転がりまわる。
はいはい、と千鶴があゆをあやす。

思った以上の設備が整っていたので、たいやき用の食材のみ持ってきたのを
少し後悔した梓だが、今更戻る気もない。
今あるものを最高に仕上げようと心に決め、たいやきを焼き始める。
しうーーー。
焼き音と共にたいやきの皮の、甘く香ばしいにおいが広がっていく。
暴れまわっていたあゆが、ようやく動きを止める。
「しっぽまでだよっ!」

結局言う事は変わらなかった。校庭にぽつんと立つ一人の少女。
亜麻色の髪をした長い長い三つ編みを赤く染めて、迷いと決意を共に立つ少女。
かるくそよぐ風が、甘い香りを運んでくる…たいやき?
「こんなときまで」
私も、馬鹿ですね…と、苦笑して-----久しぶりに笑った-----校舎を見上げる。
それも、いいかもしれません。

微笑みを浮かべて、茜は歩き始めた。裏門に二人の少女の影。
動物の尾のように長いツインテールのと、双葉のようにぴんと立ったクセ毛が
印象的だ。
「意外と近かったわね」
連続して襲撃を受けたために、少なからず過敏になっていた七瀬が安堵して
初音に話しかける。
「……」
しかし、初音は答えない。
「初音ちゃん?どうしたのよ?」
そう言って初音の顔を覗き込み、同じように鼻をひくつかせる。
いい匂いがする。
「梓…お姉ちゃん?」
二人は目を丸くして、希望の光を浴び運命に感謝した。

少なくとも、この時点では。暗い教室の中で。
一人の少女がかたかたと震えていた。
一体何ができると言うの?
たった一人で、店長さんの仇なんて?
こんな小さな刃物ひとつで、どうしようというの?

物音一つで弾けてしまいそうな緊張の中。
なつみは一人、かたかたと震えていた。
不安定な殺意と、圧倒的な恐怖を抱えて。

かたかたと、震えていた。

284 :たいやきだよっ!(1改):2001/06/01(金) 08:02
広い調理実習室の片隅で。
「ぱりっとして、ふわっとして、あんこがしっぽまでだよっ!」
梓の周りを興奮したあゆが転がりまわる。
はいはい、と千鶴があゆをあやす。

思った以上の設備が整っていたので、たいやき用の食材のみ持ってきたのを
少し後悔した梓だが、今更戻る気もない。
今あるものを最高に仕上げようと心に決め、たいやきを焼き始める。
しうーーー。
焼き音と共にたいやきの皮の、甘く香ばしいにおいが広がっていく。
暴れまわっていたあゆが、ようやく動きを止める。
「しっぽまでだよっ!」

結局言う事は変わらなかった。
.
.
.
校庭にぽつんと立つ一人の少女。
亜麻色の髪をした長い長い三つ編みを赤く染めて、迷いと決意を共に立つ少女。
かるくそよぐ風が、甘い香りを運んでくる…たいやき?
「こんなときまで」
私も、馬鹿ですね…と、苦笑して-----久しぶりに笑った-----校舎を見上げる。
それも、いいかもしれません。

微笑みを浮かべて、茜は歩き始めた。
.
.
.


285 :たいやきだよっ!(2):2001/06/01(金) 08:02
裏門に二人の少女の影。
動物の尾のように長いツインテールのと、双葉のようにぴんと立ったクセ毛が
印象的だ。
「意外と近かったわね」
連続して襲撃を受けたために、少なからず過敏になっていた七瀬が安堵して
初音に話しかける。
「……」
しかし、初音は答えない。
「初音ちゃん?どうしたのよ?」
そう言って初音の顔を覗き込み、同じように鼻をひくつかせる。
いい匂いがする。
「梓…お姉ちゃん?」
二人は目を丸くして、希望の光を浴び運命に感謝した。

少なくとも、この時点では。
.
.
.
暗い教室の中で。
一人の少女がかたかたと震えていた。
一体何ができると言うの?
たった一人で、店長さんの仇なんて?
こんな小さな刃物ひとつで、どうしようというの?

物音一つで弾けてしまいそうな緊張の中。
なつみは一人、かたかたと震えていた。
不安定な殺意と、圧倒的な恐怖を抱えて。

かたかたと、震えていた。

286 :名無したちの挽歌:2001/06/01(金) 08:05
>>283
 何故か改行が無効になっていた部分があったので、>>284-285を採用してください。

どっか失敗しなければならんのか…(´Д`;
仕事行きますので、続きかきたい方はどうぞ。
御堂も絡ませられないことはありませんが、可哀相ななつみに見せ場を与えるには
この組み合わせが一番効果的だと思います…どうでしょう。

287 :そして一つの決断1:2001/06/01(金) 11:29
当夜はマナを抱えて走った。この忌々しいゲームが始まってから、冬弥自身では自覚して
いなかったものの、精神的なバランスがかなり崩れてきていた。
それでもまだ残っていた理性が、マナを殺させる訳にはいかないと告げていた。ただ
ひたすらに走った。
マナを抱えての無茶な逃走であったが、それでもしばらくすると由綺と弥生の姿は見えなく
なっていた。それでもまだ暫く走り続け、適当なスペースを見付マナをおろし、
冬弥自身もマナの隣に腰を下ろした。
「よかった、無事だったんだね、マナちゃん」
「……うん。さっきは助けてくれてありがとう」
マナは助けてくれた事に関して、素直に例を言った。だが、その後冬弥が何か
いろいろと話し掛けても、マナはそれ以降、口を開かなかった。
「どこか怪我でもしたの」
マナの様子がおかしい事に気がついた冬弥は、今度はマナの体の心配を始めた。
そんなことないと言う風に首を横に振ったが、それでもマナは口を開こうとは
しなかった。
次第に冬弥も口を開くことを止め、沈黙が二人の間に流れる。
その長い沈黙を破ったのは、お礼の言葉以来一言も言葉を発していなかった
マナの方であった。

「どうしてなの」
「え…」
全く予想外のマナの言葉に訳もわからず、ただ呆然とする冬弥。
冬弥にはマナが何を言いたいのか全くわかっていなかった。

「どうして、藤井さんは、由綺紀お姉ちゃんを助けてくれなかったの」
マナの口調は決して強いものではなかったが、それでもその言葉で、冬弥はマナが
自分を責めているということを自分なりに認識した。

288 :そして一つの決断2:2001/06/01(金) 11:46
マナの方は、冬弥に対して怒っていると言う訳ではなかった。
ただ、前に一度由綺に襲われたにもかかわらず、それでもマナは心の奥底で冬弥が由綺の事を
助けてくれるのではないかという淡い期待を抱いており、その期待が最悪の形で裏切られた事で、
気力を失いかけていた。
「…仕方なかったんだよ。俺が由綺に逢った時にはもう由綺はあんなになっちゃっていて、俺には
何も仕様がなかったんだよ。だから俺はせめてこれ以上由綺に人を傷付けさせたくなかったから……」
別に言い訳を聞きたかった訳ではなかったマナは、なおも言い訳を続けようとする冬弥を制して
再び口を開いた。
「だから、だから藤井さんが由綺お姉ちゃんの代わりに人を傷付けるというの」
冬弥は続けようとした言葉をマナに先に言われて、そのまま沈黙するが、すぐに言葉を続けた。
「ああ、俺にはそれしか方法が思い付かなかったんだよ。もうこれ以上由綺の手が汚れるのを
見ていたくはなかったんだ。汚れるのは俺だけでいいと思ったんだよ」
その言葉を聞いて、マナは冬弥の由綺に対する愛情、そして優しさに触れる事が出来たような
気がした。そしてそれと同時に―ここに来る以前のマナならば多分わからなかったであろう―
冬弥の心の弱さというものも感じ取ってしまっていた。

289 :インサニティ1(1/4):2001/06/01(金) 11:53
 パン、と乾いた音が月明かりの下で響いた。

「うん。やっぱりそうだよね。そうだよ」
「……何がですか?」

 拍手を打つように両の掌を合わせた由綺が、少し血に染まった衣服を
気にする様子も無く、「やっぱり殺しちゃったほうがいいよね」と嬉し
そうに微笑んだ。
 先程まで泣きじゃくっていた様子は、微塵も感じさせない。

「冬弥くん、わたしがいないと寂しがってないかなぁ。きっと寂しがっ
てるよね。マナちゃんってひどいよね。わたしから冬弥くん奪うんだも
の。殺すくらいじゃ許せないよそうだ捕まえたらね冬弥くんの目の前で
撃っちゃうよわたしそのくらいじゃ駄目かなぁ――」

 弥生は整った顔をほんの少しだけ歪め、う、と顔を左手で覆う。右手
に構えたオートボウガンが、かたかたと震える。

290 :インサニティ2(2/4):2001/06/01(金) 11:54
 こんな筈じゃなかった。
 私は、由綺さんをスターダムにのしあげるため、叶わなかった自分の
夢を、人生を、希望を、その全てを彼女に捧げ――ようとしていた。
 そうでなければ、私の人生は無意味になってしまうから。彼、藤井冬
弥を由綺と添い遂げさせようとしたのも、全て打算だ。由綺の気持ちが
どうとか、藤井の気持ちがどうであるとか、私の知ったことではなかっ
た。
 ただ彼が、由綺にとって不可欠な存在であると知ればこそ、二人の仲
を取り持とうとしただけだ。
 しかし――

「――どこにいったのかなぁ冬弥くんとマナちゃんお姫様だっこされる
なんてうらやましいなぁやっぱりわたしあのときコンサートに行かない
で冬弥くんといっしょにいるほうがよかったんじゃないかなぁ」

 弥生が見つめる由綺の視線が、宙を漂う。それはまるで――

「――ひょっとしたらあのときにでもマナちゃんと会ってたのかなぁそ
うだとしても仕方ないよねわたし仕事選んだんだもの冬弥くん優しいか
らそれに甘えちゃって甘えたかったんだもん!」

 ――狂人のそれだ。


291 :インサニティ3(3/4):2001/06/01(金) 11:54
「由綺……さん!」
「え、弥生さん? どうしたの、怒っちゃいやだよ」

 そこにある由綺の顔は、何時もの表情だった。青い月明かりに照らさ
れて、血に塗れるアイドル。右手に構えたニードルガンの銃口は、こう
している間にでも弥生に向けられている。
 狙っているわけではないのだろうけど、前後の判断がついていないの
は明白だった。
 にこりと微笑む口元、愛らしいアーモンドの瞳。化粧を施すこともな
く、整ったベビーフェイスは、まるで母をみつめる子供のように純粋無
垢な表情を弥生に向けていた。

「そう思わない?」
「ええ、思います」

 由綺に、何も聞かれた覚えはなかった。でも、由綺の考えはわかって
いたから、弥生はただ頷いた。

 壊れてしまったというのなら、私もそうなのかも知れない。
 また一人で呟き出した由綺から視線を逸らすことなく、弥生は言った。

292 :インサニティ4(4/4):2001/06/01(金) 11:58
「観月マナを殺しましょう」
「そうだよ。それがいいよね」

 由綺はまた、柏手を打つように、パン、と掌を打ちあわせ、嬉々とし
た表情で笑う。

 弥生の中にある由綺の姿は、何も変わっていない。何も。
 そう。マナを殺し、冬弥と由綺と共にこの狂った島から出て、私たち
は――私たち?――私は――私は?――私――

 青い月明かりだけが、何者をも拒まぬかのように、ただ静かに闇を照
らし出していた。

----------------------------------------------------------
【森川由綺】(ニードルガン所持)
【篠塚弥生】(オートボウガン所持) 移動。
弥生さんは、マシンガン(SMG?)と44マグ持ったままでしたっけ?

293 :そして一つの決断3:2001/06/01(金) 12:05
「そう。それが藤井さんなりの優しさなんだね。あたしにもやっとわかったような
気がする。
…でもそれだったら何でその現状に甘んじてしまったの。何でその優しさを
由綺お姉ちゃんの壊れた心を治そうとする方向に使ってあげられなかったの。
こんな絶望しか感じられないような場所で、殺し合いをしろと言われていても、
決して人を殺したりせずに、自分を見失わずに、傷つき怪我をした人たちを
必死に手当てし続けていた人もいた。
自分の身の危険を顧みず、マイクを使ってみんなで協力して脱出しようと
訴えかけた人もいたというのに…」
マナの頭の中に、あの衝撃的な放送と、その後の爆破音、そして微かに
笑いを含んだ聖の顔が浮かんだ。
「…なんで藤井さんは諦めてしまったの」
最後の方は涙声になりながらも、マナは必死になって言葉を紡ぎ出した。

「……」
「あたし、こんな気持ちじゃ藤井さんとは一緒にいられないよ。それに
あたし、まだやる事が残っているから。もう行くね。
それと、さっきは助けてくれてありがとう」


尊敬した人の死、優しかった従姉妹の豹変、こんな島の中で憎まれ口を
叩き合いながらも、ほんの少しだけ心を通わせた仲間の死、さまざまな
挫折を経験し、気力を失いかけてはいたが、それでもマナは、医者の助手
としての使命を思い出し、冬弥の元を去り、聖の遺志を継いでこの島で
傷ついた人を助けつづけることを、再び心から誓った。


冬弥はマナが去って行った事にも気付かずに、ただ何かを考えていた
だけであった。
そしてふと何かを思いつくと、再び由紀たちのいる方へと帰っていった。


【藤井冬弥、観月マナ、別行動を取る】




294 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 12:11
ああっ!? マナたんが冬弥と別れてもた! Σ(;▽;)ガーソ

295 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 16:29
良いなあ……WAキャラの扱いが非常に良い。
冬弥由綺里奈弥生マナ、ついでに単独行動の彰、
死んだ美咲さんやはるかにしても出番も扱いも良い。
WAひいきとしては嬉しい。

296 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 18:16
「梓お姉〜ちゃ〜ん」
グラウンドにでた初音が大声で梓に呼びかける。
「あなた…料理している方のお知り合いですか?」
茜がくせっ毛の少女に声をかける。
「たぶん、梓お姉ちゃんだよ。まだちゃんと見てないけど」
「よろしければ、私もタイヤキをいただきたいと思いまして…」
「梓お姉ちゃんならきっと沢山作ってるから大丈夫だと思うよ」
言ってる間に窓から梓が顔を出す。
「初音! 大丈夫だった?」
「うん、でも耕一お兄ちゃんが…」
「何! もしかして…」
「ちょっと寝込んでるだけだよ。でも保健室にいい薬が無いかと思ってきたの。そうそう
タイヤキ食べたいって人がここにいるんだけど…」
三つ編みの少女を指差す。
「OK! たっぷりあるよ」
「うぐぅ、ボク沢山食べたいよぅ」
後ろであゆが呟く。
三人はそうして校舎に入っていった。

297 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 18:27
ヤバイ、ホワルバ組の温度が急上昇!熱すぎる!
諸事情により書く気力が失せてたんだけど、俄然燃えてきた。
土日にでもまた参加させてもらおうかのー。

と言うか、黒ちゃんがカッコよすぎると思うんだ(w
誰彼キャラ、なんだかんだでやっぱり愛されてるねぇ……嬉。

298 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 18:31
青紫に壊された誰彼キャラ、せめてハカロワでは活躍をってことでしょう。

299 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 18:46
…足音がする。
なつみの居る教室の前を三人分の足音。
何やら楽しそうな足音。
なつみにはもう立てられないだろう足音。
悔しくて、暗い教室のドアの陰でナイフを構える。
一番楽しそうな音、先頭を行く一番軽そうな足音。
それが来る瞬間にドアを開けて、飛びかかる。

ガラガラ!
ドアを開けるその音に初音はしゃがみこんだ。
胸を狙ったナイフは外れ、頭の突起を貫く。
七瀬がなつみの右腕をつかむが、そうするまでも無くなつみはナイフを取り落とす。
「どうして…どうしてあなたはそんなに幸せなの?私には…帰るところも無いのに…」
「わたしの両親、交通事故で死んじゃったんだ。でも今のわたしの歳の頃の千鶴
お姉ちゃんは三人の妹を守ろうとしてくれたし、そんなお姉ちゃんに叔父さんも力を
貸してくれたんだ…でも、叔父さんもこの前の夏に自殺しちゃった…
だから、ここで梓お姉ちゃん達に会うのが何より嬉しいの。あなたにも誰か会って
幸せになれる人、いるよね?」


300 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 18:54
>>296 >>299です。
まじアンやってないので、この後のなつみのセリフ部分は書けません。
ここまでは没・過去レスをもとにとりあえず書けたのですが、重要な所は
よく知ってる方に書いてもらいたいのでここで次の方に。
七瀬は七瀬留美です。以前の七瀬彰と混乱しないよう<って言うか俺(笑

301 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 19:36
>頭の突起を貫く!!
まじめなシーンなのにワラた。

302 :命、散って:2001/06/01(金) 20:09
全くなにやってんのかしらね、私は。
この頃の娘達ったら、生意気なばかりで、大事なところでしっかり動けないんだから。
ちゃんと逃げられたのかしら。逃げたわよね? でないと私が虚しすぎる。
しっかり生き延びなさいよ……。

そして、まだ生きているはずの私たちの妹。
あの娘は、無事生き延びられるかしら。
仙命樹の影響が少ないから、身体的な優位は少ないかもしれないけど、
私のように思い悩む必要もない。
そのせいか、まっすぐに育っていた。ちょっと生意気だったけど。
彼女には幸せになって欲しい。
蝉丸さん、任せたわよ?

そして、俊伐さん。
本当は現世で愛されたかったけれど。
あなたの愛したきよみさんのように、みんなに誇れるようなことは何も
できなかったけれど、今そこで失われるかもしれなかった命を長らえさせる
ことはできたと思う。上出来ではなかったけれど、自慢しても良いわよね?
それぐらいのことは、私だってやったんだって。
それにしても、いざ死ぬとなったらあっさりとしたもの。
仙命樹の効果で老いがないことで悩み、自由に死ぬことすらできずに悩んだ
ことがまるで嘘のよう。
私は充分に長く生きた。
最後に人助けができた。それで充分。
先にあの世で待ってるわ、俊伐さん。
俊伐さんがこっちに来るのを、ゆっくりと待つことにするわ……。

……或いは。
俊伐さんは覆製身の私と同じところには来られないのかもしれないわね。
同じ人という生き物ではないんですもの。
そんな身分であなたを愛そうと言うこと自体が間違いだったのかも。
嫌な考え。
けれど、もしそうならば、私と同じところに来られるのは……。

嗚呼、光が……。
広がって……いく……。

303 :命、散ってを書いたヤツ:2001/06/01(金) 20:13
現実時間的にはずいぶん前に死んでしまった黒きよみに捧げるレクイエム。
つか、モノローグは本人ですが。通しなら、本編で本人の死んだ直後あたりに
挿入していただけないですかね?

本編での黒きよみの死には納得なんですけど、もう一花咲かせてみたく。

あと、俊伐ってのは、黒きよみと月代をこの世に生み出した男です。

304 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 20:19
めっさ萌え!! 最高。

305 :111@冷たい風:2001/06/01(金) 20:31
「あ……ア……あ……ア……」

観鈴は喚いた。
ただただ、喚いた。

枯れる。
枯れようとしている。
まだ、枯れるほど涙を流してないのに。

もう、声が途切れそうになる。

耐えがたい苦痛が、凄惨な死が、本当の無常が、
ただ静寂の中に響いている――。

「おか……あ……さん」

母の亡骸に近寄ろうとする。
でも、立って歩けない。
だから四つん這いになって這いずる。
だって、その無残な死はずっと目に映って――。


かちゃり。


滝のような涙を流し、赤くはれた眼が、
膝に当たった”それ”を見つめる。

――シグの短銃。

銃。
武器。
人を傷つけるためにあるもの。
――殺すためにあるもの。

……お母さんみたいに?

「い、いやぁぁああぁああぁああああぁああああぁぁぁぁぁぁ!!」

走った。
逃げ出した。
また、逃げ出した。
既に原型も無くなった、かつて母だったものと、
もう形見となってしまったはずの、その短銃を置き去りにして。


そして、そこにもう一つの影。
爆発音を聞きつけてやってきた、もう一人の人物。
ずいぶんとボロボロになった風体をさらし、緒方理奈は立っていた。

「無くしたんだ……。どうせ皆無くなっちゃうんだから、もう変わりないよね?」

果たしてその言葉は観鈴に言ったのか?
それとも自分へ言ったのか?

理奈は観鈴がいたところへ移動し、そこに落ちていた短銃を拾い上げた。

肌に肉薄する死。
だがそれはずいぶんとリアリティが無かったように理奈には思えた。

「どうでもいいわよ、もう」

そうして、理奈もそこを立ち去った。


――遺ったのは、
母としての自分を貫いた一人の凛々しい女性の、
その亡骸だけだった。

誰もいない空間を風が吹き抜ける。
その風は、どこまでも冷たかった――。

306 :111:2001/06/01(金) 20:35
観鈴:どこかへ走り去る。
理奈:シグ・ザウエルショートを持って再移動中。

つなぎの話。
なんか調子悪いんで短目を書きました。

307 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 20:38
晴子死んだのって……アナザーじゃなかった?

308 :111:2001/06/01(金) 20:46
>>307
へ!? マジ!?
うわ……、やっぱり僕少しおかしくなってるな……。
アナザに話つなげる真似しちゃったよ……。
うう、仕方ないかららっちーさんこの話はアナザー続きにしといてください(T-T)

309 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 20:47
>>307
確かそうだったと思う。
感想スレに書かれていた奴だったから。
これはさすがにNGかな?

310 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 20:49
まぁ、気落とさずに(汗)

311 :111:2001/06/01(金) 20:50
ダメだなぁ、どうしたんだろう……。
ちょっと本気で逝って来ます。それまでになんかマシなもの書いてきます。

312 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 20:52
いい加減長続きしてるので、混乱するのもわかるよ。
マジで気落とすな。あなた、なかなかいい話作るんだから。

313 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 21:05
>111氏
そうそう,気にしない.
穴かもしれないけど,上手く前を生かして作ってると思うよ.

314 :たい焼きは復讐の薫り_1:2001/06/01(金) 21:09
「兄さんの敵を討つために、やっと手に入れた力。重火器の前ではちょっと
不安だけれど、いざとなればスイッチで刃をとばすこともできる……」
 理奈の右手で光っているのはスペツナズナイフだった。
――刃をとばす際には絶対に外すことは許されない。できれば、もう一つ
何か武器を手に入れたい――
 そんな風に思っていた理奈。
 しかし、武器が落ちているなどという幸運はなかなかにあり得なかった。
「待っててね、兄さん。この武器一つでだって、あいつをもう一度見つけて、
そして兄さんの仇を討つから……」
 新しい武器を見つけることができなくても、理奈の決意は鈍らなかった。
 黙々と標的を求めて歩き続ける理奈。
 しかし……。
 更に彷徨うこと数時間。
――最後に食べ物を口にしたのはいつ頃だったろう? ――
 いつしか理奈はひどい空腹に襲われはじめていた。
 しかし、ずっと都会で暮らしてきた理奈に、野山の物を取って食べる勇気は
なかった。腹をこわして、逆に体調を崩しかねない。
 どこからか、食品を手に入れなくてはならなかった。
「腹が減ってなはんとやら、って。昔の人も言ってたし……」
 そうして彷徨っていた理奈は、ついに住宅街のはずれにたどり着いたのだった。
「ここになら、何か食べ物があるかもしれない……」

315 :たい焼きは復讐の薫り_2:2001/06/01(金) 21:12
「これは……たい焼き?」
 たい焼きの臭いは校舎から漏れ出て、住宅街にまで届いていた。
 たい焼きは、あまり強い臭いを発しない食べ物ではあったが、
 空腹の人間は食べ物の臭いに敏感になるものだ。
 街の中を歩き出してまもなく、緒方理奈は『それ』を嗅ぎとった。
――たい焼きだなんて……。あまりに非日常なこの島にありながら、
なんとのどかな薫りなんだろう……――
 自分の置かれた状態がもっとマシでなものであったなら、理奈の頬はゆるんで
いたことだろう。
 この臭いが本物ならばそこに食料がある。それを作り出している人間も。
 他の人間との接触は避けたいところだったが、もしかしたらその人物が、
兄の仇であるかもしれない。そうでなくても、警戒はしなくてはならない。
「もう、どれだけの人が正気なのか分からないんだからね……」
 右手のスペツナズナイフを後ろ手に握り直し、正面から見た分にはすぐ分から
ないようにして理奈は慎重に歩き出した。
 その、たい焼きの臭いに向かって。
「でも、こんな状況でたい焼きを作るような人とならば争いにはならないと、
そう思いたい……。」

 臭いの発生源付近には彼女が兄の敵だと信じている、茜その人がいる。
 そのことを無論、理奈は知らない。

316 :たい焼きは復讐の薫りを書いたヤツ:2001/06/01(金) 21:16
理奈の出番がなかったので書こうと思ってたら……ギリギリで
先行されて超焦ってしまいましたです。

学校には集まりすぎかもしれませんが、理奈が到着するのは結構
遅れたタイミングなので、全てが終わって皆が去ってしまった後、
というのもありです。

理奈ちゃんの『武器』はスペツナズナイフだけですよね?
一応ハンディーカラオケも持ってると思うんですが。

317 :別れの引き金(1):2001/06/01(金) 21:39
 右手には小銃を持って、左手にはナイフを持って。
 琴音はただ、走った。
 目的は一つ、浩之に会うために。あかりに会うために。
 信じられる人だから。
 だから、二人の姿を見つけた瞬間。
「藤田さん! あかりさん!」
 喜びの声を上げて、走り寄った。

「琴音ちゃん! 無事だったか!」
 突然の声に戸惑いつつもそれが琴音だとわかり、浩之の顔から笑みがこぼれた。
 あかりも、その横で驚きながらも手を振っていた。
 二人の前で立ち止まり、一息つく。
「会えてよかったです。怖かった、です……」
 そう言い、泣き出した。
「よしよし。よく頑張ったな」
 浩之はそっと琴音を抱き寄せた。
 あかりも優しく見守っている。
 そのまま時間がすぎ、やがて琴音が口を開く。

「何人にも、裏切られました……。
 私、また人間不信になっちゃいました……。
 でも、私わかったんですよ」

 ――シンジャエバ、ダレモウラギラナイッテ――

 ――ミンナ、トモダチデイラレルッテ――

 ――ワタシ、ツヨクナレタンデスヨ――

 ――ヒロユキサン、アカリサン、ホメテクレマスヨネ――

 声は、どこか遠い、遠い世界から聞こえた気がした。
 それはある意味、間違いではなかった。
 凍り付いた表情のまま、浩之は悟った。
 この子は、今、別の世界にいるのだと。
 何も見えない、何も聴こえない。
 そんな間違った世界に。

318 :317:2001/06/01(金) 21:40
ミスって途中投稿しちゃいました、本当にすいません。
まだ続くので、生温かい目で見守って下さい。

319 :夕餉(1/2):2001/06/01(金) 22:25
江藤結花・来栖川芹香・スフィーの一行は、まだ森の中を歩いていた。
リアンたちとはまだ出会ってない。
以前と比べて、武器が増えた分多少の自信はついた。
だが配給のパン以外何も食べてなかった3人は、空腹で気が滅入りそうだった。

行けども行けども森ばかりだった視界の先が徐々に開けてきたかと思うと、目の前には
何の変哲もない街並みが見えてきた。
「へえ〜、この島って森と川だけじゃないんだ」
スフィーがつぶやく。

とりあえず、目に付いた家の玄関まで行ってみる。
ニュータウンによく建っていそうな小綺麗な一戸建て。
「ごめんくださ〜い。誰もいませんか〜?」
結花が声をかけたが、当然返事はない。
「入りま〜す」
ドアに鍵はかかってなかった。

家の中は、家具や調度品などが置いてある、ごく普通の室内だった。ただどの部屋も
妙に整然として、いわゆる「生活臭」がないのが気になった。
「わ、冷蔵庫の中身までちゃんとある」
結花の声に、他の2人も台所に集まった。
中身といっても、ミネラルウォーターや缶詰といった保存が利く物ばかりで、生ものは入っていない。
「う〜ん、これくらいあればちょっとした物が出来そうね」
「本当?」
空腹で滅入っていたスフィーの顔に笑みが戻る。
「うん。"HONEY BEE"の看板娘、この江藤結花におまかせよ!」


320 :夕餉(2/2):2001/06/01(金) 22:27
それから約30分後、台所のテーブルには黙々と缶詰の中身を食べている3人の姿があった。
「てへっ、ごめんね」
結花がツナ缶を食べながら頭をかく。
「言い訳じゃないけど、火が使えないんじゃお手上げよ」
そう、台所にあったガステーブルが使えなかったのだ。結局、缶詰を開けて食べるだけになってしまった。
「でも、食べ物にありつけただけでも良しとしなきゃ」
「うん」
「………」
そう言うと、3人はまた黙々と食事を再開した。

「…結構いっぱい建物があるんだね」
食事の後、スフィーと結花は2階のベランダから外を眺めていた。
闇夜の街には街灯の明かりだけでなく、いくつかの建物には明かりが点っている。
「この街って、人が住んでるのかな?」
「う〜ん、そんなことはないんじゃない」
「って事は…」
お互い顔を見合わせて、
「敵!?」
声が合った。
「とにかく、他の参加者がいることは間違いないわね」
「この街にリアンたちもいるかなぁ?」
「いるといいね」
二人はしばし静かに町並みを眺めて、
「さ、早いとこ寝ましょ。朝になったらまたリアンたちを探そう」
「うん」

その頃、1階のリビングでは芹香がソファーに横になっていた。
「………」
何か不穏な空気を感じながら。
最も、その不穏な空気がこの場所から少し離れた建物から来ている事は、芹香にもわからなかったのだが。


321 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 23:16
浩之、あかり、琴音、祐介、美汐の話の続きが感想スレで公開されてます。
複数人が死ぬためNG騒ぎが起こる可能性も否定できません。
非難が多数なければ12〜1時目安に本スレにアプされるそうなので、書き手様は先走らないようにお願いします。

322 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 23:22
げ、ここにアップする前にあらかじめ感想スレに書いて、読み手の裁可を仰がないといけないの?

323 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 23:36
人が一度に複数人死んだりとか、
新しい設定を出したりなど、
下手するとNGになるようなもの以外は直接UPで良いと思われ。

324 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 23:36
そんな馬鹿な。

325 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 23:37
>>322
浩之、あかり、琴音、祐介、美汐の話を書いた人は
過去に何回かNGを出された事があるので慎重になられてる。
だから今回のような手を打ったわけ。>感想スレにUP

自分で書いた作品にルール違反、矛盾等が無かったら
本スレにUPで大丈夫だと思う。


326 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 23:38

何度もNG食らっても食らっても立ち向かう心意気やよし!

だが、「絶対NGといわせない!」くらいのものを直接アップする気概も持ってくれるとなおよし!

327 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 23:46
>>321
リレー小説のルールは「早い者勝ち」だと思ってたけど、
話を予約することができるのか。へえ。

328 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 23:51
>>327
これは「自分が書くから他の人は書くな」という予約じゃなくて
「こんなの書いたけど話としてはどう?」という確認作業
ナーバスになっている書き手の人だから仕方ないんじゃない?

329 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 23:51
>>327
そうだよ。君知らなかったの?

330 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 23:53
論争はあちらで。てか、煽りは無視。漏れはこのレスで打ち止めにしとくよ。

331 :例の書き手:2001/06/01(金) 23:54
人が三人も死ぬ話をいきなりアプしたら感想スレがまた荒れに荒れると思い、最初あっちに書きました。
したら、こんどはこっちの本スレが荒れますか。そうですか。
あの文章に反対も今のとこないようなので、今からアプします。

332 :名無しさんだよもん:2001/06/01(金) 23:55
>>329
予約は出来ないだろ、多分。

>>327への答えは>>328の言う通り。

333 :別れの引き金(2):2001/06/01(金) 23:55
「琴音ちゃん……何を、言ってるの?」
 信じられないものを見たような、そんなぎこちない笑みを浮かべ、あかりは訊いた。
 おそらくあかりも理解しているのだろう。
 だが、理性がそれを認めないだけなのだ。
 この少女は、壊れている。
「何を言ってるんですか? 私、間違ったこと言ってませんよね?」
 琴音は不思議そうな表情であかりを見た。
 その視線は、自らの言葉に含まれた『意味』がどういうものなのか、まるでわかっていないようだった。
 極限の混乱状態の中で、自分の間違った思考が全ての中心だった。
「……琴音ちゃん、それは……違うよ」
 ようやく、浩之が声を絞り出す。
「死んだら……裏切らないんじゃない……裏切れないんだ……。
 それは強さじゃない、弱さだよ。
 こんな状況じゃあ……みんな狂ってしまうけど、それでも信じることが強さなんだ」
 そんな強さの先に何があるのかは知らないけど、と、心の中で言う。
 綺麗事を言っているのはわかっていたが、自分のしてしまった罪と償いを考え。
 そして、たとえ先に何があろうと、綺麗に人間らしく生きたいと。
 それが浩之の出した答えだった。
 もっとも、それより優先されることとして、愛する人を守ることがあったが。
「え……何を言ってるんですか?
 浩之さんまで、何を言ってるんですか!?」
 浩之の言葉は琴音に届かなかった。
 当然だ、考えに考えて出した琴音の結論を、真っ向から否定する言葉だったからだ。
 自分の否定――それは、『裏切り』だった。
 少なくとも、今の琴音にとっては。
 浩之は、裏切ったのだ――

334 :別れの引き金(3):2001/06/01(金) 23:57
 左手のナイフで浩之の腹を刺し、そのまま間をとる。
 浩之の体が崩れ落ちた。
「浩之ちゃん!」
 あかりが叫び、浩之にかけよった。
「信じていたのに……藤田さんまで裏切るんですね?」
 そんな二人に、琴音は銃を向けた。
「もういいです、死んで下さい。死んだら、裏切りませんよね?
 ずっとずっと、友達でいてくれますよね」
 琴音の指が引き金にかかり、
「だめだっ……」
 浩之が小さく、それでもしっかりした声で言った。
 腹にナイフが刺さったまま、傷口から血を流しながら、それでも、はっきりと。
「……引き金を引いちゃだめだ……嫌な、予感がする……」
「浩之ちゃぁん、喋っちゃダメだよ!」
「琴音ちゃん……引き金を引いちゃ、ダメだ……」
 あかりの制止も聞かずに、琴音に言う。
 琴音の指は引き金にかかったまま、止まっていた。
「琴音ちゃん、もう一度……言う。
 琴音ちゃん間違ってる……だけど、俺達は裏切らない。
 引き金を引いちゃだめだ……絶対に、よくないことが起きる……」
「ひろゆきちゃぁん……」
 浩之の声から力が失われていく。
「琴音ちゃん、銃を捨ててよ!
 浩之ちゃんを安心させてあげてよ!
 浩之ちゃんを信じてよ!
 ひろゆきちゃんが……しんじゃうよぉぉ……」
 あかりの悲痛な泣き声が、琴音の心に刺さる。
 それと共に、今までのことが、琴音の中に浮かんだ。
 この二人に、どれだけ勇気づけられ、どれだけ励まされたことだろうか。
(どうすればいいの……。
 浩之さんは……私を裏切って、私を信じて……。
 でも、死んじゃえば、ずっと友達で。
 だけど、撃ったらよくないことが起こるって……。
 浩之さんは私を裏切ったけど、だけど、私を今まで支えてくれて……。
 ウラギッテ、シンジテ……。
 ドウスレバ、イイノ……?
 ヒロユキサン……ドウスレバ)

 限界だった。
 ほんの僅かのきっかけで、琴音の心は崩壊するところだった。
 次の言葉を浩之が言おうとして。

「何をしてるんだ!?」

 そして、きっかけは、全く違うところから訪れた。

335 :別れの引き金(4):2001/06/01(金) 23:58
「――っ!?」
 琴音は即座に声のした方向に向き直り。

 引き金を引いた。
 引いてしまった。

 爆音が夜空に響く。
 爆発した銃は、琴音の右腕を奪い去り。
 極限状態だった琴音の心と重なり、ショック死を引き起こすには充分だった。

 最後に、琴音は思ったのかもしれない。
 自分は、道具にまで裏切られるのかと。
 それは誰にもわからなかった。

 琴音が倒れる。
 浩之も、あかりも、声の方にいる二つの人影も。
 ただ呆然と、それを見ているしかなかった。

336 :ふたりだけのせかい〜would end〜:2001/06/02(土) 00:00
「畜生……」
 浩之が呟いた。
「あかり……約束、守れなくて……わりぃ……」
 浩之があかりに笑いかける。
 その笑みに何がこめられているのか、あかりにはわかったかもしれない。
「そんなことないよぉ……ひろゆきちゃんといれて、幸せだったよぉ」
 浩之を抱き締める。
 涙が、あかりの頬から、浩之の頬へと伝わった。
 誰かの声が聞こえる……ような気がした。
 だけど、関係ない。
 ここはふたりだけのせかいだから。
「……さっきは、あんなこと言ったけど……。
 ……あかり、お前、は……生きて……」
「ダメだよぉ、ひろゆきちゃんがいないと、ダメなんだよぉ!」
 叫ぶ。
 あかりは浩之の腹に刺さっていたナイフを抜き、自分へと突き刺した。
 あかりの口から吐かれた血が、浩之の顔にかかる。
「……これで、ひろゆきちゃんと……一緒だよぉ」
 満面の笑み。これ以上ない、幸せな。
「馬鹿……でも、もう……一緒だな……」
 驚きその光景を見つめていたが、浩之は最後にはそう言った。
「……うん、そうだね。
 ひろゆき、ちゃん?」


 これからも、よろしくね?


 最後のキスを。
 二人笑顔で、手を繋いだまま。
 星空の祝福を全身に受けて。
 ふたりの世界は、閉じられた。


「祐介さん。私達のしたことって……何なんでしょう……」
「わからないよ……わからないよ、畜生……」
 止めようとしただけだった。
 人が死ぬのを見るなんて、御免だった。
 だが結果的に、三人の命が失われた。
「……ちくしょう……」
 力なく、拳を地面に叩き付ける。
 夜の闇が、残された者を、祐介と美汐を、包み込んだ。
 残酷に。
 限り無く、残酷に。

【025神岸あかり 074姫川琴音 077藤田浩之 死亡】
【残り45人】
【武器、所持品全て、後の人に任せます。浩之はCD二枚所持】

337 :名無しさんだよもん:2001/06/02(土) 00:03
以上。願わくば、これからNGなどという人が現れぬよう。

338 :名無しさんだよもん:2001/06/02(土) 00:18
>別れの引き金
哀しい話やね。

339 :名無しさんだよもん:2001/06/02(土) 00:31
別にいいと思う。


340 :336:2001/06/02(土) 02:01
タイトルに致命的なミス発見。
「would」じゃなくて「world」じゃん、バカ。
大馬鹿、真性厨房、激鬱。

341 :名無しさんだよもん:2001/06/02(土) 02:04
>>250
つい今日クリアしたばっかだ・・・(W
あれはよかった。葉鍵板のみんなにもおすすめ

342 :学校の静寂(1/2):2001/06/02(土) 02:05
「ねえ、お母さん」
無邪気に甘える幼子のような声。
それは母である秋子にとって、絶対の命令として脳に響く。
「そうね、きっと…ここにいるわね」
「うん、しかもたいやきの香りがするよ」

手元のレーダーを見ながら、秋子は頷く。
013…017…020…021…043…061…069…079…
少し離れて090…091…
その2つの番号は間違い無く秋子達のもの。
民家から手に入れたナタを振り、前方を見据える。
どこにでもあるような何の変哲も無い4階建ての学校――。

「名雪は、ここで待っててね、私が…あゆちゃん連れてくるから」
「うん♪まだ殺しちゃ嫌だよお母さん」
「はいはい…何があっても…絶対出ないようにね」

番号、若いところで連番にも近い数字。
多分、柏木千鶴も、そしてその姉妹もここにいるのだろう。
何の根拠もない憶測だったが、秋子にはそう感じられた。
もし違ったら…それの方が都合がいい。
間違いなくあの女と戦う時は命をかけねばならないのだから。

343 :学校の静寂(2/2):2001/06/02(土) 02:06
(入り口は…ここだけね)
名雪が隠れている校舎の隅の体育倉庫を一瞥してから、校舎全体、そして出入り口を探す。
「用意周到なこと……」
高槻の差し金だろうか、1、2階の窓にはすべて鉄格子が取り付けられていた。
「この昇降口を除けば…中にいる人は誰も出ることはてきないわね」
しかし、よくもまあこの狭い空間にこれだけの人間が集まったものだ。
秋子は苦笑し、中に入る。
レーダーにはまだ近くに反応は無い。
ガラガラガラ……
ゆっくり、音を立てないように昇降口の扉を閉める。
「………」
カチッ…
そして内側の鍵を閉めて、ナタを大きく振りかぶり…
その鍵穴の部分へと振り下ろす――!!

ガシャァ―――ッ!!

恐らくは学校中に響き渡ったろう。
真の恐怖のゲームの始まりの合図だ。

その音が鳴り止まぬうちに、秋子は既に3階へと移動していた。
(これで誰も…逃げることはできない…)

3階以上の高さから飛び降りて逃げようとする者もいるかもしれない。
それはそれでいい。秋子はその背中を狩ればいいだけだ。
レーダーの番号を見ながら、秋子は薄く笑う。
(待っててね、名雪、もうすぐあゆちゃん連れて帰るからね――)
静寂とたいやきの匂いだけが学校内を支配していた。
その中で秋子は、いずれ混じるであろう濃厚な血の匂いの予感を全身で感じていた。

344 :学校の静寂補足:2001/06/02(土) 02:07
学校内のキャラ
013 緒方理奈
017 柏木梓
020 柏木千鶴
021 柏木初音
043 里村茜
061 月宮あゆ
069 七瀬留美
079 牧部なつみ
090 水瀬秋子

学校外待機
091 水瀬名雪(校庭隅の体育倉庫内)

※水瀬秋子はナタとレーダー持ち。
※かなり無茶やった気がするので、書き手から強い反発が多ければNGのほうがいいかも。
 (例:これ、書けません等)
 何故なら俺にもどうなるかわからないので(w

345 :夜のはじまり(1):2001/06/02(土) 02:57
ああもう、どこから「突然」って言えばいいのかしら?
あいつらがブッ倒れたとこから?
ううん、晴香のアホが因縁つけてきたところからかしら?
元はと言えば、あのオバサンが瑞佳にケリかましたとこからなんだろうけど。

まあ、ここではたいやきの香りを察知したところからはじめるべきかしら?
違う?じゃあ、あのイジケ女が飛び出したところからはじめようかしら。
それでいい?あんまウダウダ言ってると怒るわよ?いいわね?いいって言いなさい?
-----よし。

こんにちは。あ、もうこんばんわなのね。
ご機嫌いかが?乙女の七瀬よ。男の七瀬じゃないから注意してね。
間違ったら殺すわよ。最近余裕無いんだから。

突然。そう、突然私たちを襲ったイジケ女がいたの。
短刀で初音ちゃんの双葉クセ毛を一葉にしちゃうトコだったんだけど、うまくかわして
私がその腕を難なくキャッチ。
あのオバサンと比べればチョロイもんよ。
せいぜい晴香のアホに毛が生えたくらいかしらね?

イジケ女が喚くのを抑えて、初音ちゃんは身の上話を始めたわ。
まあ、あのまま腕をへし折っちゃうとかいうワケにもいかないし、説得するのが妥当
とは思ったんで任せてたんだけど-----

-----やっぱり一筋縄では、いかなかったのよ。



346 :夜のはじまり(2):2001/06/02(土) 02:58


ズドン!

突然の銃声に七瀬たち3人は反射的に身をすくめ、そして弾けるように跳び退る。
「里村さん!?」
「お姉ちゃん!?」
七瀬が、初音が叫ぶ。撃ったのは茜。
普段と変わらぬ知性をたたえた静かな瞳のまま、茜は銃を構えていた。
初音も、なつみも、もちろん七瀬も至らぬ修羅の境地に到達していた茜は、襲撃者
にかける憐憫の情など持ち合わせていなかった、ただそれだけの事だった。
それでも命中しなかった。それは心の奥底にある葛藤のせいなのか。

しかし命中しなかった事が裏目に出た。
七瀬や初音にとっては、誰を狙っての弾丸か判断できないのである。
それほどまでに透明な意識で、茜は引き金を引いていた。
茜は自らにかけられた声に恐怖が混じっているのを感じて後悔したが、もはや
手遅れだった。誤解されても文句は言えまい。

混乱に拍車をかけるように、すう、と廊下が闇に包まれる。
「!?」
七瀬は手近にあった廊下のスイッチを押す。しかし照明はつかなかった。
彼女の知る由も無いのだが、一階に関しては元々配電設備が死んでいたのである。
そのため、夕日の最後の余光も既に届かぬ廊下は、突如として真っ暗になった。

そこに居た全員が。恐怖に背中を押されて駆け出していた。

347 :夜のはじまり(3):2001/06/02(土) 02:59


ズドン!

銃声。それは初音と再会できる感動を吹き消すように校舎に響き渡る、死神の叫び。
たいやきを咥えつつも怯えるあゆを実習台の下に隠して二人のメイドは頷きあう。
千鶴はお馴染みの鉄爪、梓は掃除用具ロッカーから取り出したモップを手に教室を
飛び出した。

ほんの数瞬前まで期待に鳴り響いていたそれを掻き消すように不安の鼓動が大きくなる。
眉をひそめて耳を澄まし千鶴は言った。
「下の階ね-----どっち、かしら?」
梓はほんの少し考え、初音の台詞を思い出す。
「千鶴姉!保健室だ!保健室、行ってみよう!」
階段脇の各階案内図を見て位置を確認するや、二人は頷きあい走り始める。
一段降りるごとに光を失う階段は、地獄への道程のように不吉に口をあけていたが、
どちらも怯むことなく飛ぶように駆け下りていったのである。

彼女らとと入れ替わるように茜は二階に上がってきていた。
階段脇には美術室。反対側の階段脇に明かりのついた大型教室が見える。

(…失敗しました)
かるく溜息をついて、廊下を歩き始める。
あれでは狂人が突然無差別攻撃をはじめたように思われても仕方が無い。
他人の殺意に敏感になりすぎた自分が、まだ狂人でなければの話だが。

私はどこかで日常の輪の中から抜け出してしまったのだろうか?



348 :夜のはじまり(4):2001/06/02(土) 03:00
はあ、はあ、と息も切れ切れになつみは玄関まで移動していた。
(撃たれた!やっぱり本当にみんな、殺し合いをしてるんだ!)

震える手を抑え短刀を抱き下駄箱にもたれかかる。
屋上や保健室の死体を思い出して、ぞくりと身震いする。
恐怖を断ち切ろうと、大きく深呼吸して思考する。
去っていったココロに届けと願いながら。
(ねえココロ?聞いているかしら?
 ひとつだけ。ひとつだけお願いがあるの。
 あの中に店長さんの仇は…居るのかしら?
 私はこの短刀を振るっていいの?)

-----もちろん、答えは無かった。
俯いて苦笑い。私は、今やひとりぼっちなんだ。
寂寥感に苛まれたなつみの耳に微かに聞こえた一言。
『…いるよ。だから、頑張って。悔いの無いように…頑張って』

それきり声は聞こえなかったが、存在を感じていた。
(そっか。ココロ、居てくれたんだね。
 私、頑張るよ。だから、応援してね?)
気持ちを取り直して短刀に意識を集中する。
息を整えて。下駄箱に身を隠し。短刀を構え。
そして、店長の仇をとる-----殺し合いに、参加する。

私たちは、殺し合いを、する。
私たちは、殺し合いを、する。
私たちは、殺し合いを、する。

349 :名無したちの挽歌:2001/06/02(土) 03:03
「夜のはじまり」です。
とりあえず自分が集めたキャラは仕切りなおしになったと思います。

七瀬と初音は銃撃後書いていませんが、やはり保健室に向かうでしょう。

350 :Unexpected(1/2):2001/06/02(土) 03:21

うーっ、つまんないよぉ」
母親と別れてわずか数分で名雪は退屈し始めていた
「何があっても出るなっていっても、つまんないんだよぉ
お母さん早くあゆちゃん連れてこないかな、早くあのときの雪ウサギみたいに
ぐちゃぐちゃにしてやりたいな。簡単に殺したりなんかしないんだ、生きたままたっぷりと泣かせてやるんだ。
そして、とどめは祐一の目の前で刺してやるんだ、そしたら、きっと・・・・・」
名雪の妄想は加速して行く。

「名雪、いままでごめん、俺は悪い夢を見ていたんだ」
「やっとわかってくれたんだね祐一、でももう遅いよ」
「そんな・・・・・俺、名雪の言う事なら何でも聞くから、だから見捨てないでくれよ・・・・」
「うーん、じゃぁこれから1ヶ月間毎日イチゴサンデーおごってくれたら許してあげるよ」
「おごるおごる、これから一生でもイチゴサンデー食べさせてやるよ」

そして妄想はクライマックスを迎えつつあった。

「もうあんな悪い子にだまされちゃダメだよ、私がそばについててあげるから」
「名雪、今のって・・・・もしかしてプロポーズかい?」
「もぅ〜女の子にそんなこと聞くなんて、祐一ってホント、デリカシーないね」
「ごめん・・・・でも、俺の気持ちも同じだから・・・・ずっと俺のそばにいてくれ!名雪」
「うん・・・・・祐一もきっとそう言うって思ってたよ・・・・ねぇキスして」

そして祐一は私に熱いキスをしてくれて、そんでもって結婚式は白い教会で
スイートホームは暖炉のある大きなお家なんだよ、子供は3人くらいほしいなぁ。
えへへへへへ・・・・・・。


351 :Unexpected(2/2):2001/06/02(土) 03:24

妄想も一段落すると、また退屈の虫が騒ぎ出す。
「ちょっとくらいなら・・・・いいよね」
体育倉庫から顔をちょっとだけ覗かせる・・・・とそこには
「あっ、ねこさんだ。ねこーねこー」
偶然にも一匹の野良猫が夜の散歩中であった、これを見逃す水瀬名雪ではない。
名雪の異常な雰囲気におびえてか、野良猫は校舎に向かってまっしぐらに逃げて行く
「ねこーねこー、待ってよぉ」
もはや母親の言いつけも忘れ、一心不乱に猫を追い掛け回す名雪。
しかし、もうすでに日は落ちている。
「あれ・・・・ねこさんいなくなっちゃったんだよ、どこいったのかなぁ?」
「もしかして中かな・・・・・?」
名雪は一階部分の窓の鉄格子を力いっぱい動かしてみる、が外れない
「うーっ、どこか入れる場所はないかなぁ・・・・」
手当たり次第窓の鉄格子を引っ張るがまるで外れない
この頃、校舎内では凄まじいバトルが繰り広げられているが、名雪の耳には入らない。
最後の1箇所、1F男子トイレの窓の鉄格子を引っ張る、工事がそこだけ手抜きだったか簡単に外れた。
と、同時に猫の鳴き声、他にもっと騒がしい音がしているだろうに・・・・しかし名雪にはさっぱり聞こえない。
人間、見たいもの聞きたいものを優先するものである、まして名雪はすでに精神の均衡を欠いている。
「やっぱり中だったんだね、もう逃がさないんだよ」
こうして水瀬名雪は幸か不幸か激闘の渦中へと自ら踏み込んで行くのであった。

【水瀬名雪,校舎内へ】



352 :名無しさんだよもん:2001/06/02(土) 03:27
age

353 :Unexpected(作者):2001/06/02(土) 03:27

あまりにもご都合主義な展開かも、気に障った方ごめんなさい・・・・

354 :どこでもいっしょ:2001/06/02(土) 03:40
「ねぇ、ジュン」

 夜半、毛布にくるまってうつらうつらしていたところを、宮内レミィ(女子・094番)に声をかけられて、北川潤(男子・029番)は重い頭をあげた。

「ん…なんですレミィ・クリストファー・ヘレン・ミヤウチ」

 まっ暗闇の中、彼と同じように毛布に身体を包んでいるレミィが、毛布の中で北川が抱えているノートパソコンをのぞき込んで尋ねた。

「そのCDって何が入ってるの?」

 そのまま北川にのし掛かるようにして、彼の抱きすくめてるノートをまじまじと見つめるレミィ。彼女の思った以上に豊かで艶のある金髪が北川をなでる。それが彼にはくすぐったくてしょうがなかった。
 少し身体をよじると、北川は適当に答える事にした。

「おかあさんといっしょが入ってる」

「なんデスカそれ?」

 目をキラキラさせてレミィが再度尋ねる。

「何だなんだ。おまえ”おかあさんといっしょ”も知らないのか。あの大スペクタル長編連ドラを知らんのか!」

「うん、だって仕方ないよ…ワタシ、daddyのお仕事ありましたカラ…」

 しゅん、としょげかえるレミィ。彼女のリアクションを目の当たりにして、少し後ろめたい気持ちがありながらも、北川の目元はだらしなく緩んだ。

「そいつはいけないな。この年でじゃじゃまる・ぴっころ・ぽろりの80年代御三家キャラをしらんようでは、二十一世紀の世知辛い世の中、とてもじゃないが渡っていけない」

「そんな…ワタシまだ死にたくないデス」

「いーやおそらく死ぬ。それも何となく死ぬ。人知れず死ぬ」

「シヌ…」

「死ぬのです。要するにレミィは”おかあさんといっしょ”を知らないという一事だけで死ぬるのです。嗚呼、無知は罪だね、悲しいね」

「ソンナ…」

 レミイは子どもがやるようにいやいや、と頭を振っておびえるような仕草をする。北川にはそんな彼女の反応がいちいち面白くてしょうがない。


355 :どこでもいっしょ:2001/06/02(土) 03:41
「レミィ」

 北川は急に真摯な表情を作ると彼女に呼びかけた。

「ハイ…」

「知りたいか」

「ウン、知りたい」

「本当に知りたいか」

「ホントに知りたいデス」

「その知りたい気持ちを州にたとえると?」

「ユタ」

 きっぱりとレミィは言った。

「ちょっと弱い」

「インジアナ」

 少し考えこむような素振りを見せると、あらためてレミィは言い直した。

「いまいち」

「サスカチュワン」

 かなり困った顔になった。

「さて、寝るか」

「ミシシッピ」

 レミィの目の端に光るものが浮かび上がった。

「それくそゲー」

「ネ…ネブラスカ」

 涙で顔をぐしゃぐしゃにして、かすれ声でレミイは言った。しまった、やりすぎたか、と内心でものすごく狼狽した北川であるが、レミィの素直すぎる反応を見るにつけ、えも言えぬ気分になるのもまた、確かなのであった。

「よろしい。不肖この北川潤が、眠れる子羊ヘレン宮内の蒙を啓いてさしあげよう」

 こほん、とわざとらしく咳払いをすると、北川はゆっくりと語り始めた。


356 :名無しさんだよもん:2001/06/02(土) 03:51
このスレのすごさは人を萌えさせてしまうことだろう。
ゲームプレイ中はときめかなかった月代、きよみ(黒&白)はこんなに可愛かったのか。
男もそうだ。御堂と蝉丸、浩平と祐介なんか、個人的にかなり(・∀・)イイ。

反転繭。マナ。このスレで愛着が湧いた。
ちゃんさま。真琴。晴子。ますます好きになった。
他のキャラもいい。
死にゆく者、生きる決意をした者の心理描写が胸に来る。

と、前置きが異常に長くなったが要点はズバリこれだ。

「レミィ、萌え。」

かわいい。連れて帰りたい。北川うらやましい。
まさかキャラロワで転ぶとは思わなかった。書き手さんズファイト。

357 :臨戦態勢(1/2):2001/06/02(土) 04:00
「な……に……?今の……」

入り口の方から、何かを壊したような音……
そして、遅れて銃声――
たいやきの匂いに、校舎の中へと誘われていた理奈は、そこで現実に返る。
「……!!」
殺人ゲーム、その言葉が再度脳裏に浮かんだ。
上等なブーツを脱ぎ捨て――もう見る影もなかったが――靴下だけの身軽な格好になると、
長い直線を一気に駆け、手近な教室へとすべり込む。
もちろん、廊下を走る音を消す為の行為だ。
(敵が…いる…)
それが複数なのかどうかは分からない…分からないが…

廊下の様子を再度慎重に覗き込む。
誰もいない…静寂――
(もう…終わったのかしら?)
そう思いながらも、理奈は廊下に備え付けられていた消火器を手に取り、安全ピンを抜く。
(いざとなれば、目くらまし、殴打武器にもなるだろう)
今度はゆっくりと落ち着いて教室内を見回した。
(窓に…鉄格子!?)
入ってきた時は気づかなかったが、とても人間が出入りできるような窓ではなかった。
10センチ間隔で固い鉄棒が備えられている。
グイッ…グイッ…
ためしにそれを揺らしてみるが、びくともしない。
(もし、まだ終わっていないなら…袋のねずみってわけね…)
恐怖心をかき消すようにゆっくりと深呼吸する。
(ゲームに乗った…乗ってしまった奴が…まだこの中にいる!)
それはただの思いこみではあった。
だが、その可能性を信じない愚か者が真っ先に命を落とす――。
そう結論付けた理奈は、手持ちの武器を確かめて、ゆっくりと戦闘態勢に入った。

358 :臨戦態勢(2/2):2001/06/02(土) 04:01
教室の前後の入り口の状態、そして鍵の有無を確認する。
鍵をかける――それは愚かな行為だ。
追い詰められたとき、逃げ場がない。
殺してくれと言っているようなものだ。
あいにく、復讐を誓った理奈に自殺願望はない。

次に、床に耳を押し付ける。
階下から、かすかな足音――それが事実なのか錯覚なのか理奈には判断できない。
これだけの静寂の中、極限状態の理奈があるはずのない音を聞いてしまう可能性。
ないと言いきれるだろうか。
理奈はその行為をあきらめると、次は窓の外を、眼下に広がる世界を覗き込む。
もちろん、外からは見つかりにくいように慎重に。
校庭に一人の少女の姿が見えた。
暗がりの中、かろうじて長い髪の女性だろうと判別する。
校舎の周りを、入り口を探すように調べている。
(まさか…入り口がふさがれているの?)
――何故入ろうとしているかは謎だったが――
鉄格子で窓がすべてふさがれているとすれば…入るのは昇降口しかない。
だが、その少女(だと理奈は判断した)はそこから入ろうとしていない。
(だめね…早急すぎるわ、結果を出すには)
一通り状況確認すると、理奈は扉の外を慎重に伺い、そして……
何かのきっかけがくるのを待った。
それは銃声か、足音か、誰かとの遭遇か、
理奈にもまだ分からなかった。

013 緒方理奈 【消火器入手】現在2F通常教室内

359 :名無しさんだよもん:2001/06/02(土) 04:03
緊迫した状況に北レミが挟まってるのがなんともいえん。

360 :名無したちの挽歌:2001/06/02(土) 04:47
ちょっと学校関連を整理。

まず>>279>>281「そうだ学校へ行こう!」で七瀬&初音、梓&千鶴&あゆが
学校へ向かっている。
次に>>284>>285「たいやきだよっ!」で梓&千鶴&あゆが調理実習室で
たいやき調理開始、校庭から茜がたいやきにつられて接近、裏庭に七瀬&
初音が裏門に到着、1Fの教室でなつみが怯え中。
>>296(無題)初音が裏門から校庭に移動、梓と窓越しに会話し茜と合流。
>>299(無題)でなつみが七瀬&茜&初音に攻撃、失敗し七瀬に捕まる。
初音が身の上話を始める。
>>345>>346>>347>>348(夜の始まり)茜の発砲&夜の到来により解散。
以前書かれてるとおり1Fの電気はつきません。あゆ調理台の下に隠れ中。
梓&千鶴1Fへ。茜は2F、調理室の反対側から歩行中。なつみ玄関で決意。



361 :名無したちの挽歌:2001/06/02(土) 04:47
>>314>>315(たい焼きは復讐の薫り)スペツナズナイフを持った理奈。
住宅街でたい焼きの匂いを感知し学校へ移動開始。
>>342>>343(学校の静寂)秋子&名雪登場。上記全員がレーダーに感知される。
千鶴を警戒しつつ昇降口を封鎖。1&2Fは鉄格子。目的はあゆ捜索&殺戮?
>>357>>358(臨戦態勢)理奈。破壊音(<学校の静寂での封鎖音?)、続いて
銃声を聞く。消火器装備。名雪を感知?
>>350>>351(Unexpected)名雪の妄想。男子トイレの格子を外し校舎内へ。

…たぶん、この順番だと思う。



362 :だおもんだよもん:2001/06/02(土) 05:09
ややこしいなぁ。
書き手さん頑張ってくれ。

363 :保健室の衝撃(1):2001/06/02(土) 06:49
こんばんわ七瀬です。
…って、なんだアンタなの。さっきも挨拶したわよね?

とりあえず、アタシ達がガッコに閉じ込められて苦労する前の話を続けるわよ。
最近すっかり脇役になっちゃって寂しい限りだけど、やっぱり一筋縄では行か
なくって苦労したんだから、心して聞くのよ。


七瀬は暗い廊下を転がるように保健室まで走った。
初音はどうなっただろう、なんで電気つかないの、イジケ女ウザいわね、
そして里村茜は-----何を考えて発砲したんだろう?
(最近折原のバカみたいのとしか話してないから、あーいう頭良さそうな娘の
 考える事はよく解んないわ…)
我ながらバカが伝染ったみたいで情けなくなってくる。
(おっと)
一階の端のほう、階段脇に保健室はあった。
悲嘆に暮れて目的地を見逃しそうになっていた。

「な、な、なな七瀬お姉ちゃん!」
「うっわ!」
初音ちゃんが飛び出してきた。
危うく反射的にハタきそうになるが、鉄パイプでハタくのは洒落にならないので
散弾銃で…じゃなくって!素早く抱きとめる。
「なにが-----」
あったの?と尋ねようとする七瀬を抑えて初音は保険室内を指し示す。
「あ、ああ、あれ!」

そこには、布団を被った血塗れの死体がいらっしゃった。


364 :保健室の衝撃(2):2001/06/02(土) 06:50

ギャーーーーーーーーー!!

悲鳴が木霊する。
あまり、乙女っぽくはなかった。


踊り場で二人のメイドが立ち止まる。
二人の妹、初音の声が聞こえたような気がしたのだが盛大な悲鳴で掻き消されて
しまっていた。
「「?」」
互いに首を傾げ、そして考えても無意味な事を同時に悟り、頷き合い再び駆け
降りる。さすがに息が合っているのか無駄のない素早い行動だった。
1階に降り立ち曲がってすぐ、保健室の扉を開けて踏み込む。

「せいッ!」
「なんの!」
鋭い気合いと共に振り下ろされる鉄パイプを、梓がモップの柄で流し返した柄を
腹部へ突き込む、同時に千鶴が更に内側にステップを踏んで爪で切り裂-----
「お姉ちゃん!」
制止したのは、初音の声だからだったろう。
完全に鉄パイプを振り下ろした状態で頚動脈から1cmのところに鉄の爪。
左脇10cmのところにはモップの柄。
ここまでくると、悲鳴すら出ない。

七瀬は非常に不本意な形で、防弾戦闘メイドさん二体、もとい初音の姉さん二名
に遭遇したのである。

365 :名無したちの挽歌:2001/06/02(土) 06:55
んーと七瀬に言わせている通り、秋子さんが参加する前の話。
「保健室の衝撃」です。

一応>>299の初音の物言いから、千鶴と初音の軋轢は問題なしとしました。
もしくは、この直後に和解があったとしてください。

366 :名無しさんだよもん:2001/06/02(土) 07:03
うわ。あゆ一人か。秋子さんレーダー持ってるし。
かなり大ピンチだなこれは。

367 :あゆ攻防戦(1/6):2001/06/02(土) 09:37
とりあえず私は移動していた。無論、慎重に。

初音と七瀬さん――だったっけな?――の両名と合流後、直ぐにあゆの元へ走った。
当然、あゆの保護の為。
今ごろ千鶴姉達は保健室のすぐ隣――たしか会議室のような机ひとつないホール――にいるはずだ。
当然死体の――仏さんに失礼だな――ある部屋で待つのは気分いいもんじゃない。

本当は千鶴姉も…と言いたいとこだけど、今の状況で多人数で移動するのは得策じゃない。
それに…入り口付近で変な音も聞こえた。何かが壊れるような音。
ゾッとする。ここ…たしか昇降口以外の場所は封鎖されている…いや、されていた。
確かめたわけじゃないけど…千鶴姉ももしかしたら同じことを考えてたかもしれない。
千鶴姉の顔が、いつになく緊張に彩られていたから。

今思えばここに立ち入ったのは軽はずみだったかもな…。
でも…今はそんなこと考えてる場合じゃない。
私は、2Fへと…家庭調理室へと向かう階段を目指した。

368 :あゆ攻防戦(2/6):2001/06/02(土) 09:38
(あそこを曲がれば階段…)
物音を立てないよう、慎重に。
このまま、無事に目的地に辿りつければいい。
梓もまた鬼の力を有してはいたが、今は普通の人間と大差ない。
少なくとも重火器を持った普通の人間相手に正面から戦えるとは思えない。
何故か?それは武器がないからだ。
とりあえず保健室の掃除用具入れから先のないモップ――木の棒ともいう――を獲物にしてはいるが、
ないよりましか…程度のものだ。

――里村茜。七瀬から聞いたその名を思い浮かべ、ぞっとする。
至近距離から躊躇なく発砲したその少女の名を。
その弾が外れたのは、あるいは躊躇したからなのかもしれないが、実際見たわけじゃない梓には分からない。
なんにせよ、正面からぶつかり合うのは避けたかった。
だが、あゆを見殺しにするわけにもいかない。
梓が一人あゆを保護に向かう理由――割と単純だ。
千鶴は、他の者を守る。梓は、あゆを保護し、守る。
どちらのリスクが大きいかはこの際どうでもいい。
とりあえず、この防弾メイド服のおかげで致命傷になる確率は多少は低いのだから、
千鶴が助けに行くのを除けば、梓が一人で移動するのが最も効率的だった。
(2F……!!)
階段を駆け上がり、慎重に前を向く。
(誰にも遭遇しませんように……)
だが…その願いは果たされなかった。

369 :あゆ攻防戦(3/6):2001/06/02(土) 09:38
階段の踊り場から残りの段を一気に駆け上がり、2Fへと身を踊り出す…
それがそもそもの間違いだった。
廊下の向こう側に一人の女の影。
――里村茜――
梓がそれを肉眼で確認したとき…
暗がりの中でコルトガバメントが火を吹いた――!

パンパンパン!!

どっかの情けない音と共に、梓の体が不自然に歪む――
正確に胸に三発。
「かはっ……」
口元から血が滴る。
防弾チョッキを着ていなかったらそれで終わっていただろう。
仰向けに転がって床をすべる――。
態勢を立て直そうと転がる矢先――再び銃声。
先程まで倒れていた場所に弾丸が命中する。そしていくつかの何かがぶつかり合う音。
――それは跳弾であったのだが、梓は知る由もない――
運良くそれをかわし、なんとか物陰に身を潜めようとして――物陰なんてなかった。
近くの扉を開けて中に入ろうとしなかったのは幸運だったのだろう。
何故ならばそこには――

370 :あゆ攻防戦(4/6):2001/06/02(土) 09:42

(防弾服…ですか…!?)
背後に人の気配がないことを確認しながら、
茜が近くの備え付けられていた消火器を力任せに前方に蹴りつける。
それは普段の茜からは想像もつかない野蛮な行動だった。
そして1発、2発!!
ドッ……!!
中に圧縮されていたものが破裂し、あたりに撒き散らされる。
白い煙の中、壁にぶつかる消火器の残骸の音が幾度か響いた。

間髪入れずに、後ろの階段――梓が使用したのとはまた別の――へと後ずさりしながら白い煙の向こうにいるであろう人物に3発ぶち込む。
「うっ!」
短い呻きが微かだが轟音の中聞こえた気がした。
そのまま身を翻すと、階段から3F方向へと姿を消した。

「あうっ……」
白い煙の向こうから飛んできた銃弾の内1発が梓の左肩を貫通していた。
ちょうど防弾服に覆われていないところだ。
(あゆっ……!!)
白い煙の向こうからまた銃弾が飛んできそうな気がして…
恐怖に顔をひきつらせながら梓は元来た階段へと一度離脱しようと床を這った。
その刹那…
近くの扉から何かの影が飛び出した。
何かを振り上げている。
梓にとって幸運だったのは――
鬼の力ほどでなくても常人よりは強い力を持っていたことでも、
それに対して無意識に腕が――傷ついた肩も含めて――動いたことでもない。
恐怖と緊張の中、硬直した手が持っていた獲物を離していなかったことだった。

371 :あゆ攻防戦(5/6):2001/06/02(土) 09:44

ガチッ!!

その降ってきた何かの刃の部分でなく、その柄の部分をモップで防ぐ。
梓の力を持ってしても、押さえるのがやっと…という速度で振り下ろされた刃――
水瀬秋子――梓は彼女を知る由もないが――のナタであった。
梓の眼前までせまったそれは、わずかに梓の額を傷つけ、そこで止まった。
その受け止めた衝撃に、肩の傷が痛み、梓の顔が苦痛に歪む。
「くっ…!!」
暗がりからでた人物――秋子は一度呻くと、そのまま梓の使用した階段の上方へと逃走した。
(すまん、あゆっ…必ず…迎えにいくからっ!!)
梓は痛む肩を押さえながら、その階段から転がり落ちるように階下へと向かった。
その拍子幾本かの切られた前髪が、血と共に宙へと舞って、落ちた。

「いい判断です…」
再び茜は戻ってきていた。白い煙の向こうに。
茜にとって、相手の手の内が知れないというのは恐怖であった。
梓が、そして――もう一人いたことには今気づいたのだが――秋子が持っている武器が分からない以上
深追いは禁物と判断したのだ。
事実、仕留めたはずの梓は防弾チョッキにより一命をとりとめていた。
一度は戦闘から離脱した茜だったが、再び階下で戦闘の音。
もう一度戻り、不意をついて撃つはずだった。
だが、秋子はそのまま向こうへ――茜の銃の届かないところへ――
そして梓もまた階下へと消えたのだ。
(どうやら…閉じ込められてしまったようです…ここにいる人すべて倒して…出ることにします)
茜の腹は決まっていた。入り口は――何者かによって内側から封鎖されていた。
おそらくここにいる者の中に……殺し合いを望む者がいる。
もちろんそれを判断する手段はない。それならば――全員倒せばいい。
そしてゆっくり脱出の手段を探せばいい。
(生きてあの空き地へと帰るんです…)
狙われては敵わない。再び茜は階段から3F、そして4Fへと姿を消した。

372 :あゆ攻防戦(6/6):2001/06/02(土) 09:50
秋子は先程よりも動揺していた。
名雪が――ここに入ってきてしまったのだ。

最初はあゆが単独行動、というか単独で隠れていたのをレーダーで確認し、保護するところだった。
(無論、秋子はあゆを含めいくらかの参加者の番号を探り当てている。死者の番号と照らし合わせて推理すれば簡単なことだ)
もちろん最初はあゆに危害を加える気はなかった。それをするのは名雪なのだから。

だが、名雪の身に危険がせまっている――。
これが名雪でなければ多分放置していたのだろう。
だが……
(本当は一人ずつ消すつもりだったけど…はやく…終わらせないと……)
名雪と、あゆ、そして他の参加者の位置を確認しながら3Fの教室へと入った。多分音楽室だ。
教室の前方にはグランドピアノが鎮座している。

名雪が入ってきた当初、
あゆをすぐに捕まえ、そして名雪を捕まえ、名雪の入ってきた場所から抜け出す予定に変更した。
だが、同じように梓、茜が近づいてきていたのだ、調理室に。

レーダーを持っている分秋子は有利なはずだったが…
調理室を目前にしながら、別の教室で息を潜めることを余儀なくされ…
そして心の焦りが今の結果を生んだ。
奇襲は、失敗したのだ。

茜が戻ってこないうちに一撃離脱し、一度態勢を立て直すことになった。
(どうすれば…先に名雪と合流する…?あゆちゃんはこの際無視する?それとも当初の予定通り全員消す…!?)
レーダーで名雪の、そして他の者の位置を確認しながら秋子は大きく息を吐いた。

秋子はこの島に来て、初めて――取り乱していた。


梓 【再び1Fへ】左肩銃弾貫通 胸に打撲等の疑いあり
茜 【4Fへ】
秋子【3F音楽室へ】

373 :残された人達:2001/06/02(土) 12:44
私達は唐突に合流した。
もちろんいきなり殺されかけた七瀬さんの怒りを押さえるのは大変でしたが。
兎にも角も、私達姉妹は合流できた。
あとは…耕一さんと楓だけ。
話によれば初音は耕一さんの消息を知っているらしい。
すぐにでも聞きたいところだったけど、今は事態が切迫している。
もしかしたら、閉じ込められてしまったのかもしれないのだから。

梓が、今あゆちゃんを迎えに行っている。
本当はついていきたかったけど、そうもいかない。
ここには七瀬さん、そして初音がいる。
二人残していくのは危険過ぎる、かといって四人で行動するぐらいなら梓か、私一人で
あゆちゃんを迎えに行ったほうがまだマシだ。
だから私が行こうとしたんだけど……
――千鶴姉はここで待ってて、あゆを連れてくるから!――
そう言って、私の言葉も聞かないうちに飛び出してしまった。

今、私達は保健室の隣、会議室(…だと思う)にいる。
死体のある場所に三人でいるのは気が重すぎたから。
私は……こういうことに慣れているから大丈夫だけど……
なんていうか、放置されたそれからは嫌な臭いが漂ってきていて、初音達の嗅覚を苦しめている。

梓達が戻ってきたら初音の持つダイナマイトで入り口を爆破して脱出しようと思う。
火はないが、初音の持つ銃で遠距離から誘爆させればなんとかなるはず。
それでもダメなら、調理室から火種を持ってこなくてはならないでしょうが……。
さすがにこの校舎、ダイナマイトで昇降口を爆破したところで崩れ落ちることはないだろう。
唯一不安なのはその行程の途中であの発砲した人や、初音を襲った人に再度襲われないか……

ややあって銃声が…そして爆発音。
私の目の前が、一気に暗くなった――

374 :縁(1):2001/06/02(土) 13:14
銃声。叫び。爆発音。
二階で戦いが始まっていた。

「千鶴おねえちゃん…!」
天井を透視しようとしてるかのように険しい表情で空を睨むようにして、歯を
食いしばる千鶴の手を、初音が軽く握る。
「初音…」
躊躇い。守るものの選択。どちらも捨てられないのならば。
どうすれば、良いというのか?
私はどうして、いつもこんな選択を強いられるのだろうか?
自然と握った手に力が入る。
苦しみに、耐えるように。

ぐっ、と。
初音が握り返す。はっとする。
-----この子はこんなに力強かっただろうか?
「あずさお姉ちゃんを、助けに行ってよ」
「私たちなら、だいじょうぶ」
七瀬と初音が笑顔でいう。
「あなた達…」

三人はいくつかの事柄について打ち合わせをた。
千鶴はダイナマイトを一本だけ貰い受ける。
「わたし、梓とあゆちゃんのところに行ってくるわ」
改めて声にする。
決意が目に光を与え、身体に力が漲る。
「だから、二人もがんばってね」
暗い教室に似合わぬ明るい笑顔をうかべ、初音を軽く抱擁し、七瀬の髪を
すいてやりながら千鶴ははっきりと口にする。。

「それじゃ、7時に」
それは打ち合わせた脱出の時間。
幸い学校だけに時計だけはどこにでもある。離れていても同時行動は可能なのだ。

生きてさえ、いれば。




375 :縁(2):2001/06/02(土) 13:15
カラ、と乾いた音をわずかに立てて、千鶴は暗い廊下に出る。
階段を上がろうとしたとき、視界の隅に人影がひっかかった。
(初音を襲った女の子かしら?)
目を細めて闇に目を凝らす。トイレのほうだ。
その人影には特に身を隠そうとか、そういう配慮が全くない。
気配を殺して様子をみる。

「お母さんどこかな、あゆちゃんどこかな?」
人影は、少女は何度もそう繰り返していた。
どこかおかしい…そして何かが気になる。
千鶴は違和感に記憶を掘り返す。
(-----お母さん?!)
母子で参加しているのは、水瀬秋子と名雪しかいないはずだ。
そうすると、この娘は水瀬名雪ということになる。

(縁が、あれば)
秋子と交わした言葉。

思えば、あの出会いなくして今の自分はない。
方向を見失っていた自分の意志が、今の健全な状態にあるのは秋子のおかげでも
あるのだ。
ならば、放ってはおけない。
この小さな闘技場に、この娘が一人で居る事はあまりに危険すぎるから。

「水瀬、名雪ちゃん?」
「うん…おねえさん、だあれ?」
「あなたのお母さんの-----お友達、よ。
 お母さんを、探してるんでしょう?
 私も妹を探しているの。一緒に、探しましょう?」
にっこり笑って手を差し出す。
年下の女の子と仲良くなるのは得意なほうだ。
「うんっ!」
名雪は元気に、この建物の中では異様なほど明るく答え、手を握った。

千鶴は名雪の手を引いて階段を上る。
名雪の手は冷たかった。
初音の手の暖かさが消えて行くような気がした。
(初音…)
不安が走る。だが後戻りはできない。
(無事で居てね、初音)

こうして千鶴が名雪を保護した。
秋子が-----名雪の母が、梓を襲撃していたことも知らずに。

376 :縁(3):2001/06/02(土) 13:16


(何だってこんな、とんでも無いのが二人も居るんだ!)
銃撃と斬撃をどうにかやりすごした梓は、引き換えにあちこちをぶつけて
階段を転がり落ちていた。
だいたい二人して、あんな澄ました顔してよくもまあ、えげつないと言うか
なんと言うか。
千鶴姉並みだよ、と声にだして言ったとき。
当人と、目が合った。
「呼んだかしら、梓?」
「ち…千鶴姉…!」
張り付いた笑みと引きつった笑みが交差した。
梓にとって先の立ち回りと同じような、短いけど長い長い緊張の瞬間が続いたが。
その娘、隠し子?と名雪を指差すに至って容赦なくハタかれた。

「ふーん、お母さんかあ」
踊り場で3人身を寄せて軽く情況を交換し合う。
名雪はその間、二人のメイド服のフリフリを嬉しそうにいじってみたり、イチゴサンデー
お願いします、とか言ってみたりしていたのだが…
「とりあえず、あゆの所にいこうよ」
…その一言に反応した。先ほどの異様さを再び発揮して。

「あゆちゃん!?あゆちゃんいるの!?」
叫ぶ名雪。
「知り合いなの?!」
梓が驚く。
千鶴は知っていたが、やはりその反応の異様さに無言で驚く。
「お母さんがね、あゆちゃん連れてきてくれるの、それでね、わたしね…」
その後の台詞を心に留めておくのは、あまりに辛かった。

そして、理解した。
-----名雪が、正気を失っている事を。
(これも、縁なのかしら?)
千鶴は誰にともなく問いかける。
答えは期待していなかった。ただ運命が無機質に横たわっているだけだった。

377 :名無したちの挽歌:2001/06/02(土) 13:23
「縁」です。
「残された人達」との矛盾も無いと思いますが…打ち合わせ内容は
ダイナマイト関連の記述とほぼ同様で、詳細を変更したと言う事で。

情況が混沌としているので理奈-茜と千鶴-秋子-梓-あゆ-名雪と
七瀬-初音-なつみに分離できる感じに振ってみた。

378 :111@形而下の闘い〜秘密兵器〜1:2001/06/02(土) 14:37
少年は”本”を翳して見せた。
「何度も言うが、これはこれのみではその真価を発揮し得ない。
 だからこれを武器と呼ぶのは間違っているのかも知れないな」

本のページをペラペラとめくってみせる。
そして、ふと思い立ったようにその一枚を外してみせる。

ピッ、という音がする。
本のページを破いたにしては、やや歯切れ良すぎる、硬質的な音だった。

「……だが、この一枚で、その効果自体は十分発揮される」
そういうと少年は、まるでトランプ投げでもあるかのように鮮やかにそれを投げて見せた。
すると事もあろうに、そのページの切れ端はひどく鋭い動きで飛び、
葉子の足元に”突き刺さった”。

「!? ……これは」

驚愕に葉子は顔を歪めた。
それを見た少年は軽く笑った。

「驚いたかい? 不思議そうな顔してるねぇ。
 どうしてただの紙がこんな動きをして、なおかつ地面に突き刺さったのか?
 ってところかい」

葉子はコクリ、と一回頷きを見せた。

「答えは簡単さ。これは”紙”じゃない」

少年は葉子の足元に突き刺さったそれを拾い上げた。
ペラペラと指と指の間で撓らせてみたりする。
その動きは、確かに紙の織り成すものではなかった。
少年はその表面を指で弾いてみる。
だがそこから返ってくる音は、とても予想外なものだった。

カイィンン……。

あからさまな金属音と呼ぶにふさわしい音が、葉子の耳に、そしてずいぶんと
静かになったそこら一体に響く。

「硬質音……」

葉子は不可解な顔をしている。


379 :111@形而下の闘い〜秘密兵器〜2:2001/06/02(土) 14:38
「ま、紙と似たようなものではあるんだけど……。
 実際に見てもらったほうが早いね」

少年は葉子に何かを放った。
葉子は条件反射でそれを受け取った。
彼女が手にしたものは、鈍く黒光りする物体……、
……拳銃だった。

「……どういうことです?」

「簡単なことさ、それには一発だけ銃弾が入っている。
 それを僕に向けて撃ってもらいたい」

少年が言った言葉も、あまりにも意外すぎる内容だった。

「……何を言ってるんですか?」

葉子は少し不快な表情でそう言った。

「言葉どおりさ。別に自殺願望があるのでもなければ、君を馬鹿にしているわけでもない。
 まあ、気軽に一発撃ってみてはくれないか?」

気軽に……。
なんとも末恐ろしいことを口走る少年だ、と葉子は思った。
そもそもそんなことが出来るはずが無い。
人を殺すためだけに作られたような道具を、事もあろうに気軽に撃てなどと……。

「撃たないの? いや、まさか……」

少年の笑顔が一瞬途切れる。

「撃てないのか?」

少年はそう呟いた。そして次の瞬間、

「…………!?」

葉子の視界から消えた。

「な……」

音も無く、葉子を風がすり抜ける。
驚愕する葉子、そして自分の体の無事を確かめてみた。
――袖口がばっさりと切れている。

「生憎だが、そう悠長にしているわけにもいかなくなったな」

葉子は焦って後ろを振り向いた。
するとさっきまで前にいたはずの少年が、そこに佇んでいた。

「撃たなければ殺す。
 そう言ったら君はどうするの?」

にこっ、と少年は笑った。

380 :111@形而下の闘い〜傷痕〜1:2001/06/02(土) 14:39
――恐怖。
それは人間の本能に根ざした、もっとも原始的な感応の一つ。
たとえどんな状況でも、それはいつどこからでも派生する。

例えば、食事中。
例えば、睡眠中。
安らいでいるときにも、悲しんでいるときにも。
喜びを噛みしめているときにも、怒りで我を忘れていても。

恐怖は、いつでも、どこからでも現れる。
その発生源が、たとえさっきまで笑いを交えて会話していた相手だったとしても、
なんら不思議なことは無いのだ――。


葉子は狼狽していた。
なぜ銃を撃てないことが、いきなり殺すことにまで発展したのか、
その話の飛躍に全くついていけなかった。

「悪いが君が銃を撃てないと言うなら、
 僕はそれを”矯正”してあげなくちゃならない」

矯正?
予想だにしない単語が聞こえてくる。

「撃てないだけの問題ではないんだよ――」

そして再び少年の姿が消える。

シュパン。

今度は、反対側の袖が千切れ飛ぶ。

「くっ」

葉子はうめき声を漏らした。
体が傷つけられたからではない。
脇をすり抜けていったプレッシャーに飲まれたのだ。

381 :111@形而下の闘い〜傷痕〜2:2001/06/02(土) 14:40

「恐らくこの役は僕にしか出来ないだろう。それはFARGOの君を最も知っているのも僕だから」

少年は姿を見せない。しかし、その声だけは聞こえた。

葉子は槍を取り出して、それをつかえるように伸ばして構えた。

「悪いが――」

横から少年の声。葉子は瞬間的にそっちを向く。
少年は動かない。
その表情は以前、笑ったまま。

「そんな武器に頼っているようじゃダメなんだ」

再び少年の姿が視界から消える。
そして、一瞬後には構えていたはずの槍は真っ二つに折れていた。
だが、葉子にはそんなことより何より、少年の表情が目に焼きついて離れなかった。
笑い顔……、確かに笑い顔だった。
しかしその口元はわずかに乾き、瞳の奥に凍った輝きを灯していたのが、
葉子にははっきりと見えていた。

恐ろしかった。
鋭すぎる攻撃や移動速度などにそれを感じたのではない。
そんなことはとうの昔から分かっていた。
この人物は――人と言って差し支えが無いのだろうか――私たちとは違う
次元にいるなんていうことは。
そうではない。
彼のプレッシャーが重かった。
とても、とても重かった。
彼の眼が恐かった。
あまりにも、あまりにも恐かった。
耐えがたかった。
何もかもが分からなくなった。
ほんの数秒前までとの状況の落差が、私を真っ白にさせようとしていた。

左手に掴んだままの銃が重い。

「次で最後にする、撃てないと言うなら君は全てダメなことになる」

382 :111@形而下の闘い〜傷痕〜3:2001/06/02(土) 14:41
撃てない?
どうしてこの人はそんなことを言うのだろう。
撃てば人は死ぬ。
そして私は”力”を使って余計な人たちを排除してきた。
だったら一緒じゃない。
簡単なことよ――。

いつのまにか少年の姿を捕らえていた。
まるで無意識でもあるかのように虚ろに、
葉子は銃を持った左手を振り上げた。

少年は――笑っていない。

トリガーを……引く。

よぎる。
頭によぎる。
赤。
紅。
あかい。
血が、よぎる。
死が、よぎる。

お母さんの血がよぎる。

凍るように冷たく、私を見つめる二対の眼。

「あ、アあアぁあアぁアアァあアア!!」

トリガーが引かれる。

銃弾が飛び出す。

383 :111@形而下の闘い〜傷痕〜4:2001/06/02(土) 14:46
幽体離脱とでも言うのだろうか、
私と少年を、なぜか私は見渡している。

銃弾は、一直線に少年へと向かう。

少年は……、彼の顔が一瞬ふっと笑った気がする。

銃弾が、もうすぐ少年の胸を貫く

少年は例の本のページを本当の私側――銃弾の方向――へ向ける。

銃弾が、それにぶつかる。

それを貫……かない。

少年は、何かの溜めでも造ったように、体を撓らせる。

銃弾は、全く違う方向へと”反射”させられる。

時間にして、一瞬の出来事――。


「!?」

意識が戻った。
鳥瞰的に私は状況を見ていたらしい。
少年は――、何事も無かったようにそこに笑いながら佇んでいる。

「どうかな? これが巳間良祐の最高傑作、”反射兵器”の力さ」

384 :111@形而下の闘い〜答え〜:2001/06/02(土) 14:49
「…………」
葉子は何も言い出せなかった。
ただ、とりあえず少年に、あの屈託の無い笑みが戻ったことを安堵していた。

「すまないね。いろいろな意味で荒療治になってしまった。
 順を追って説明しよう。
 何から聞きたい?」

少年は悪気の無い顔でそう言った。

「……なぜ、私にあんな殺気を向けたんですか?」
一番の疑問だった。
彼の武器とやらも気になるところだったが、
なによりもっとも訳がわからないのがそれにまつわる少年の行動だった。

「そうだね、実を言うと本当はただ銃を試し打ちしてもらうだけでよかったんだ。
 ところが二つの誤算があった。
 まず、君が銃を撃ちあぐねたこと。
 そしてその君がFARGO出身のクラスAだということがね」

「どういうことですか?]

[君は、いや君たちは不可視の力の本質を知らない。
 強い力は人を酔わせる、と言うがあれは人を麻痺させる。
 力を用いて何らかの破壊を行ったとしても、それはあくまで力が破壊を行ったに過ぎない。
 まあ、それでもそれをやったことに関しては根本的な違いは無いんだが、ともかく
 ここで言うことにおいては違うのさ。
 君は本来の意味で人の命を奪ったことが無い。
 肉を通して肉を殺したわけじゃない。
 だから、君は死に敏感なままここまで来てしまった。
 トリガーを引く瞬間に、何か浮かばなかったかい?」

少年の問いに、葉子は素直にうなづいた。


385 :111@形而下の闘い〜答え〜2:2001/06/02(土) 14:50
「だろうな、君はそういう顔をしていたからな。
 もしトリガーが引けないようなら、あの槍を持っていても同じ事だったのさ。
 まあ壊してしまったけれど。
 はっきりいってどちらを使っても人は殺せる。
 しかし、銃をつかったならその可能性は格段に倍増する。
 ほぼ銃弾を食らったなら人は死ぬだろう。
 だから、そもそも銃火器とは死に近い道具と言える。
 よく考えてみなよ。
 槍なら殺そうと思って使わない限りそうそう人は死なない。
 だが銃器はそうでないことを君も、皆も知っている。
 だから恐がる。
 だが、君は不運にも”力”を手にしたことでその認識を狂わされてしまった。
 本当の君は、殺人、そしてそれを促す武器と言うものに根深い不信、いや不安を
 持っていた。
 そして君がクラスAになることになった原因――。
 母の死を直視したと言う事実が、君に何の禍根も残さなかったはずが無いんだ。
 だから君がこのまま進んでいくのを黙ってみているわけには行かなかった。
 ”力”に錯覚した状態で人を殺していれば、
 本来の君がいつかその事実に気付かぬまま壊れていた。
 僕は勘違いをしていたようだ。
 君自身はとても優しい女性だよ。
 とても人を殺すことなんて考えられない。
 まだ不安は残るけど、
 少なくとも、君自身が自分のことを把握するきっかけにはなったんじゃないかな?」

葉子はもう一度うなづく。
自分自身すら忘れていたような亀裂を、少年は教えてくれたのだ――。

「君は今、撃つことが出来た。
 それは君が一つ目の壁を突破したと言うことだ。
 本来、人を殺すまでの順を追ってなど欲しくは無いが、
 生きるために、そして高槻を撃つためにそれは必要になってくるだろう。
 誤解してはいけない。
 まだ君は克服してはいない。
 さっき君を評した言葉ではないが、
 撃つたびに忘我になってもらっては困るな」

少年の忠告だった。

386 :111@形而下の闘い〜答え〜3:2001/06/02(土) 14:51

「高槻は……、いったいどういう技術かは分からないが、
 力を封じる術を手に入れたようだ。
 よしんば君が無事に戻ることが出来たとしても、
 下手をすれば奴がFARGOを牛耳るような真似をしでかすかもしれない。
 その時、君は力にも、何者にも頼らずに生きなければならない。
 だから、もっと自分を見つめなおすんだ」

葉子はうなづく。
――三度目のうなづきだった。


「……ところで、その紙の方ですが」
葉子は彼の武器について聞いてみた。

「おっとそうだった。もともとこっちが本題だったね。
 これが反射兵器という奴さ」
少年はピラピラとそれを揺らして見せた。

「もう分かっただろう? これはほぼ全ての銃弾とビーム兵器を
 跳ね返すことが出来る。
 ……さすがに一枚で使うのは無謀だったかな?
 方向を反対に転換させるのに、妙に全身を使わせなければならなかったよ」

少年はんっ、と伸びをした。

「だが見事成功。あいつの仕事に穴は無い。
 僕だけでなく、4,5枚重ねて使用すれば君のような女性でも
 十分使用に耐えられる」

「それで、これだけでは用を成さない、と言っていたんですね」

「そうさ。まさに秘密兵器なんだがね。能動的な攻撃には使いようの無い
 防御的な、ね。
 しかし……」

少年は”紙”を翳して見せた。

「なんだか妙に切れ味が鋭いな。良祐の奴、妙なところにまでこだわってくれた様だ。
 これじゃ単体としての武器にもなっちゃうな」

屈託無く笑う少年、そして同じように微笑する葉子。

387 :111@形而下の闘い〜答え〜4:2001/06/02(土) 14:52
少年はピッ、とその”紙”を投げてよこした。
紙はふわっとこを描いて、葉子の手に納まった。

「要するにコーティングなのかな? いや、生成段階での材質がすでにそうなのかもしれない……。
 あ、それは記念にあげよう。
 何かに使えるかもしれない。
 胸にでもしこんで置けば、衝撃で内蔵が痛いかもしれないが、
 銃弾は跳ね返せるかもしれない。
 ま、餞別さ。
 無いよりはマシだろう」

「……ありがとうございます」
葉子はお辞儀した。

「無論欠点はある。まずどこまで連続使用できるかとかね。
 恐らく使い捨てるつもりでやった方が良いだろう。
 あとは貫通力によって枚数を増やす必要があるとかね。
 なんというか、使うのにセンスがいるんだよ、それ。
 だから僕専用と銘打っておいたんだけどね」

少年は笑った。
あなたの運動能力なら、まるで問題ないのでしょうね。
と、葉子も笑った。


388 :111@形而下の闘い〜去り際〜:2001/06/02(土) 14:57
「時間をとってしまったようだな、恐らくこうしてる間にも巳間の妹は歩んでいるはずだ。
 もしそれを止められるのなら、ぜひ、そうしてやってくれ」

「はい」

「僕ももう行こう。まだまだすることは多そうだ。
 縁があったらまた遭おう。
 ところで、郁未には逢ったかい?

「いえ、まだ……」

「そうか。もし逢ったら、僕は高槻を討ちにいくことを伝えておいてくれ」

「……私も同じことを頼もうとしていたのですよ」
少年は目をぱちくりとした。
その表情があまりにも滑稽で、葉子はクスっと笑ってしまった。

「そうかい、ふふ。じゃあ、お互いそうすることにしよう。
 じゃあ、ここでお別れだ。
 無事に再会出来ることを願っているよ」

少年はすっ、と茂みの中へ入っていく。

「……クローンの高槻に気をつけて下さい。
 伏兵は、どこに潜んでいるか分かりません」

去り際の少年に向かって葉子は言った。

後ろを向いたまま、少年は片手を振ってそれに応じた。

そして、直に葉子も立ち去った。


後に残されたのは、二つの墓標だけ。
片方には枝が、片方には花が捧げられている。
何も残らない狂った戦場の片隅で、静かに、とても静かに眠る二人。

埋葬という言葉が、なぜだか今の葉子には、とても暖かく感じられていた。

389 :111:2001/06/02(土) 15:01
葉子:移動 少年から”紙”をもらう。
少年:移動

形而下シリーズ終了。
どういう接点なのかは自分でも謎ですが……。
まあ、どうも書いてくれる人いるみたいなんで安心です。
あとは”鍵”を出しておいたんで有効利用してください。
はぁ。学校の方には参加できそうに無いな…。

    

390 :名無しさんだよもん:2001/06/02(土) 15:14
>>111
銃は葉子さんが持ったまま?
それとも少年に返したのかな?
できれば少年に返して欲しいな。
それで一つネタ考えたから(w

391 :名無しさんだよもん:2001/06/02(土) 15:19
少年、めちゃめちゃ強いな。そういうキャラなの?

392 :名無しさんだよもん:2001/06/02(土) 15:35
葉子はクローンを知っていたっけ?
幾ら高槻といえどトップシークレットをほいほい教えるのはどうかと
そうかといってあっさりわかるのも何だし、
なるべくなら、その部分はない方が面白かったと思うけど

393 :392:2001/06/02(土) 15:39
カンソウスレに出なおして来ます・・。

394 :111:2001/06/02(土) 16:20
>>390
そうだね、
そういえば返し忘れていた。
僕も返しておきたいので以下を>>383を一部変更
――――――――――――――――――――――
少年は――。〜
気付けば、私は銃を取り落としていた。

「どうかな〜

――――――――――――――――――――――
さらに>>384を変更
――――――――――――――――――――――
「すまないね〜
 何から聞きたい?」

少年は私が取り落とした銃を拾うと、悪気の無い顔でそう言った。
――――――――――――――――――――――
これで矛盾は消えます。
らっちーさん毎度すみませんがよろしくお願いしますm(_)m
>>391
基本的にぼこぼこに強いです。
さらに強く書いてる節はありますがw
さらに不可視の力を標準装備してたりします。

>>392
描写してないのであやふやになっていますが、
時間軸的には

葉子が高槻の元に出頭する→晴香たちが突っ込んでくる

と考えるのが自然だと思ったので、
葉子はそれを目撃していたと言う前提で書きました。
ん〜でももしかしたらNGなるかな…。
矛盾と言えば確かに矛盾だし。
あまり変だったらその部分はカットしましょう。
伏兵〜だけでも意味は通じるし……、
てかその方がいいな(汗
>>388の「クローンの高槻に」カットしちゃいましょうw
そうすると葉子のセリフの含みもそのままに、少年への忠告としても成り立ちますね。
いや〜推敲が足りない文章だな〜(汗


395 :脱出のために(1):2001/06/02(土) 16:23
 四階には、まだ戦渦は広がっていないようだった。
 階下のあちこちから争う音が聴こえる。
 この学校内に何人いるのかはわからないが、最終目標は生きて帰ること。
 その為に、茜は自分を狙う者を容赦するつもりはなかった。
 だが――
(……軽率すぎました)
 思い返す。
 最初に襲われた時、あの少女は自分を狙っているわけではなかったのだろう。
 しかし、予感があった。
 あそこで殺しておかないと、後で確実に狙われる、と。
 だから、発砲した。
 銃弾が当たらなかったのは何故だろうか。
 予感で人を殺すことを、やはり無意識のうちにためらったのだろうか。
 澪を殺した時からの自分では、そんなことはしなかっただろう。
 祐一と出会ってからだ。中途半端になってしまったのは。
(……私が死んだら、責任、とって下さいね?)

 自分の持ち物を確かめる。
 ナイフ、ガバメントと予備弾丸、高槻から奪ったベレッタと予備マガジン、サイレンサー銃、メリケンサックに……。
(……忘れてました)
 手榴弾が4つ、転がり出てきた。
 早めに気付いていれば、これを使って壁でも破り、脱出できていたのに。
(……迂闊すぎです。やっぱり、こういうことは向いてませんね)
 既に4人の参加者と2人の高槻を殺しておいて、何を思っているんだろう。
 茜は自分の思考のおかしさに、くすりと笑った。
 クラスの男子生徒が見たら、半数は一目惚れ間違いなしの笑顔だった。

 やることは決まった。
 1階の壁を手榴弾で爆破し、脱出する。
 この混戦状況を乗り切る自信はなかった。
(……手強そうな人が何人かいるみたいです。
 ……それに、また後先考えない行動を取るかもしれません)

396 :脱出のために(2):2001/06/02(土) 16:24

 慎重に気配を探り、三階へ。

 そもそも一番のミスは、二階に突如躍り出た人影にうろたえ発砲したことだった。
 相手の出方を伺ってからでも、あの距離では充分間に合ったはずなのだ。
 人影の動きが妙に「慣れ」ていたのと、茜自信この状況に混乱していたこともあり、発砲してしまった。
 あの人影に味方がいたなら、茜はそれまで敵に回したことになる。
 信頼できる人間は、ここにはもういなかった。
 全てが、敵とみて間違いなかった。
(……早く、脱出しましょう)

 足音を殺し、二階へ。

(……この銃)
 階段を降りる途中、ガバメントを見て気付いた。
(……弾切れです)
 気付いてよかった。
 もしも知らずに戦闘に巻き込まれていたら、ここぞという時に大きなミスをするところだった。
 弾を交換しようとし、ふと思いとどまる。
 ある一計が、茜の中に浮かび上がった。
 いささか、ギャンブルではあるが、試してみる価値はあった。
 相手が乗ってくるかにかかってはいるが。
 ガバメントの弾倉はそのままにし、サイレンサー銃に持ち替えた。

 一階へ。
 踊り場で。
 その少女と出会った。

「兄さんの仇……見つけた」

397 :鬼と羅刹(1):2001/06/02(土) 16:54
点灯する数字。
それは位置座標が同じ-----重なっている事を示す。
017、020、043、061、090、091なんと六つの数字が重なっていた。
少しだけずれた所に021、069。中央少し校庭寄り(昇降口か?)に079。
反対側の階段に移動する013。いや、043も反対側へ向かっている。

もちろん、この部屋には私-----090しかいないはずだ。
それは残る五人、いや四人が上下の部屋に居ると言う事だ。
名雪-----091が、誰かと一緒に居るかもしれない、という事だ。
そこでふと、往人と交わした会話を思い出す。
『それならば、おそらく番号は023,024、025のどれかじゃないかしら』
神尾がその辺りならば。冷や汗が背を伝う。
(柏木が-----20番前後のどれかである可能性はとても、とても高い)

校舎に突入する頃から漠然と抱いていた予感は現実味を増していた。
あの黒髪の鬼と、再びまみえるのだろうか。
017や020、021が姉妹ならば。
私は幾人の鬼を、打倒しなければならないのだろうか。

それでも行かなければならない。
名雪の、ために。




398 :鬼と羅刹(2):2001/06/02(土) 16:54
「うぐうぐぅー、狭かったよぅ、怖かったよぅー!」
両手にたいやきを抱えたあゆちゃんがズリズリと引き出される。
「悪い悪い、今度は一緒に行くから、許してな」
引き摺り出すのに苦労したが、あゆちゃんは無事だった。
梓にうぐうぐ文句を言うがたいやき効果は覿面だったのだろう、それほど
怒ってはいない。しっかりと梓に抱きつきながら話しかけていた。

そんなあゆちゃんの背中を名雪ちゃんがポンポンと叩く。
「ね、ね、ね、あゆ、あゆ、あゆちゃん!」
「あゆあゆじゃな…名雪ちゃん!?」
きゃー、わーい、と両手放しで喜ぶ二人だが、あゆの知らぬ危険が名雪にはある。
梓と共に緊張した面持ちで私は二人を見つめて-----いや、名雪ちゃんを「監視」
していた。

やがて梓の視線が、僅かに揺らぐ。驚きと、理解の光。
楽しげに話すあゆちゃんを、ぐっと抱きしめて名雪ちゃんから引き離す。
その意を汲んで、私は名雪ちゃんの手を引く。冷たい手を、ぐっと引く。

そして私は振り向いた。
そこに立っているであろう女性を迎えるために。

「こんばんわ、秋子さん」




399 :鬼と羅刹(3):2001/06/02(土) 16:55
「こんばんわ-----千鶴さん」
秋子さんが答える。
彼女の強さに陰りは感じなかったが、今は酷くやつれて見えた。
きっとあの時の、わたしもそうだったのだと思う。

(千鶴姉、このひと…)
梓が囁く。解っている。
梓を殴り合いで圧倒できる人間はそうそういない。
「秋子さん。名雪さんを-----お返しします」
とても儚い、小さな冷たい手を放して、名雪ちゃんを送り出した。

「ありがとう。感謝するわ」
秋子さんは慈しむように名雪ちゃんに手を回して、柔らかな笑みを浮かべる。
素敵な、本当に素敵な笑顔。
だけど。なぜ、この母子はこうなってしまったのだろう。
「でも、この娘は」
わたしは梓と共にあゆちゃんの前に移動し肩を並べる。
「渡せません」
梓が構える。
わたしと秋子さんは、そのまま。

戦いは。
いや、殺し合いは、もはや避けられないのだろうか?

400 :続きは後ほど。:2001/06/02(土) 17:02

同じ頃――闇、影、黒い者がすべてを支配する時。
少女達が古びた学校とおぼしき建物の中で、葛藤をしている頃。
七瀬彰は目を覚ました。辺りは闇――充分に、真っ暗だった。
目をこすり、手元の水をごくごくと飲み干した。目は覚めた。
初音は、それに他の皆は無事だろうか?
願わくば、自分が行動を終える前までに、誰も死なないでいる事を。
成功する確率など――すべてをぶち壊しに出来る確率などゼロに等しい。
だが、それでも、自分が死ぬまでは殺し合いをするな。
願いながら、彰は門番を眺めた。マシンガンを小脇に、欠伸をしている。
ゆっくり休んだ自分と違い、彼らは休む事が出来ない。

ふと、長瀬祐介の事を、そして、七瀬留美の事を思った。
従兄弟の祐介。大きくなってからあまり面識はないが、子供の頃は仲も良かった。
自分を慕ってくれた彼もまだ無事だ。
そして、七瀬留美。たぶん自分たちとは関係ないと思うのだが、何故こんなに気にかかるのだろう。
確か彼女は折原浩平という少年と共に行動していたはずで、そして初音はその少年とともにいる筈。
それが、七瀬という少女と初音に、不思議な接点があるかのように思えてならない。
もっというなら、七瀬と云う名と、初音に。
「――考え過ぎか」と、彰は苦笑した。

それにしても、結局自分はこの建物に照準を定めて構わないのだろうか。
高槻がずっとここにいるという確率は限りなく低い。こんな危険な場所にいるわけがない。
――だが、だからといって何処にいられるというのだろう。
他にめぼしい建物などなかった。古い、学校だったと思われる建物はあったが、
あの狡猾な男が、あんな危険な場所に身を置くわけがない。
だが、じゃあ、結局どうすれば良いというのだ。何処にいるというのだ。
行き詰まって、彰は真っ暗な空を眺めた――

確信を覚えたのは、その瞬間だった。

そうだ。

401 :名無したちの挽歌:2001/06/02(土) 17:02
「鬼と羅刹」秋子vs梓&千鶴の戦闘直前です。
せっかく階段二列説を採用しているので、茜と理奈には反対側の階段に
まわって頂きました。

402 :続きは後ほど。:2001/06/02(土) 17:03
――爆弾だ。

爆弾を爆発させる仕事は、多分高槻の仕事だ。
そう、自分たちに殺し合いをさせなければいけない以上、爆弾をむやみに使う事は許されない。
言うまでもなく、高槻以外の、高槻以下の人間が爆弾をみだりに使って良いはずがない。
だから、爆弾を操作するのは高槻の仕事だ。
だが、爆弾を操作するなど、何処だって出来るわけではない。
たぶん、体内爆弾を爆発させるコードを入力しなければならないだろう事は判る。
まず、その装置が必要だ。だが、それは何処にだって置けるだろう。
だが――入力したものを、体内爆弾に転送するのは何だ?
決まっている。――電波だ。
そう、だから高槻はここにいなければならない。
その建物の屋上――大きな、大きな、その装置を見つけて、彰は確信した。
絶対にいるとは確信できない、だが、高い可能性を確信した。
それに高槻がいなくとも、少なくとも、通信機はある。
彰はごくりと唾を飲んだ。
生きて帰れるかは判らない。たぶん死ぬだろう。
だが、これ以上死なせないために。初音ちゃんや冬弥、友人達を護るために。
その為に、自分は行かなければならない。そういう星の下に生まれついたのならば――。
それは、――勇気だった。歯を食いしばれ。それからだ!

そして、一つ思いついた事があった。爆弾が電波によって操作されているのなら――
そして、爆弾というものの特質を考えるならば――


403 :闇(1):2001/06/02(土) 23:09
天野美汐(005番)は、疲労の極値に達していた。肉体的にも、精神的にも。
もしこの島から生きて帰れても、今日と言う日は今後何千回と夢に見るだろう。
幾人もの人達の死体を目撃して。
その中の一人に探しつづけていた真琴が居て。
そして――その死体の中のひとつを作り出したのは、他でもない、この美汐だった。
……さらには、たった今さっきも、3人、目の前で、果てた。
止めるのも訊かず、いや、止めたからこそ、3人は、死んだ。

小さな肩が、小刻みにかたかたと震えていた。
その小さな肩が背負うには、今日と言う日はあまりにも重すぎた。
「……ふ」
と、小さな声が漏れる。
それは嘲笑でもなんでも無く、ただ嗚咽を押し殺しただけの声だった。
美汐のことを気にかけていた長瀬祐介(064番)がそれを聞き逃す筈も無く、
すぐに「どうしたの?」と訊いた。
美汐にとってそれは余計なお世話だった。今はただ放っておいて欲しかった。
人がいっぱい死んだ。わたしも殺した。たった今も3人死ぬのを、ただ見ていることしか出来なかった。
なのに―――
不意に、美汐の頭に疑問がよぎる。

なぜ、この人は、こんなに平気そうにしていられるのだろう?
さっきまで、あんなに悔しそうにしていたと言うのに。
なぜ、もう立ち直っているのだろう?

美汐にとって、祐介のそれは気丈、どころではなく、すでに狂っている、とさえ感じられた。


404 :闇(2):2001/06/02(土) 23:09
……そう、狂っている。
ひとが何人も何人も何人も目の前で死んでいて、
その場でだけ悔しがって見せて、それでいてすぐに立ち直るなんて――
狂っている。

狂っている=人を殺す
無茶苦茶な公式が、その瞬間美汐の頭の中で成立した。
近寄ってくる長瀬さん。
長瀬さんは、狂っている。
長瀬さんに……殺される!
美汐は、手に持ったデリンジャーを素早く、祐介に向けた。

「え?」
祐介は、何が起こっているのか、理解できなかった。
ひどく遅くなった思考速度で分かったことは、美汐が、自分に、銃を向けている、ということだけだった。
それはつまり、どういうことだろう。
天野さんが僕を、殺す、というのだろうか?
信じたくは無かったが、この状況はそうとしか、思えなかった。

美汐が銃を向けたまま。
祐介は押し黙ったまま。
数分の時が、過ぎて行った。


405 :闇(3):2001/06/02(土) 23:09
「……長瀬さん…信じていたのに…」
美汐が言って、表情に影を落とした。
まさか美汐のなかで独自の世界が形成されていて、その中では今まさに祐介が美汐を殺そうとしているところだとは
当の祐介が理解できるわけも無く、彼の回らない頭はまた混乱した。
自分の意識が遠くに飛んで言ってしまったかのようだった。
で、祐介のその飛んで行った意識が戻ってくる前に、また美汐が言った。
「死んで、ください」
それで、上空をふわふわ漂っていた祐介の意識は戻ってきたが、混乱している事に変わりは無かった。
殺す?
僕が守ろうとしている人が、僕を殺す?
まだ祐介の頭はよくは理解してはいなかったが、ともかく、そういうことだとは、分かった。
なので、「どうしてだい?」と、訊かずには居られなかった。
美汐は「とぼけないで下さい」と厳しい口調で言ったが、やがて、ゆっくりと語り出した。

祐介がすでにこのゲームに慣れきって、狂ってしまったのではないかということ。
狂った人は、目に付いた人を見境無く殺していくということ。

無茶苦茶だ、と祐介は心の中で舌打ちした。
だけど、まあ、天野さんが思いのほかゆっくりと語ってくれたので、いくばくか冷静になれたと思う。
……つまりは、今の天野さんは、他人…とりわけ僕を信用できないのだ。


406 :闇(4):2001/06/02(土) 23:10
勿論、祐介が3人が死ぬところを見て辛くないわけがなかった。
というより、祐介が彼女に声をかけたから、琴音が驚いて銃を暴発させて、あの事態が起こったのだ。
祐介はその事に当然苦悩した。声をかけなければ、もしかしたらあの場は平穏に収まっていたかもしれないのだから。
だから、祐介は悔しくて、そして間接的とはいえ人を殺した自分を呪った。
まさしく、それこそ狂ってしまいそうになるほどに。
そんな祐介を現実に、正気の世界に繋ぎとめたのは、自分が守ると固く誓った少女、天野美汐の存在のお陰である。
ともすれば狂気の世界へ行ってしまいそうになる意識を、自分が美汐を守るという目的意識のもとに、必死で抑えつけたのだ。

なのに、そのひとは今、僕に、銃を―――

祐介は悲しくなった。
どんな形であれ、結局僕は天野さんを守りきれなかったんだ、と。
だったら、今僕に出来る事は――

祐介は美汐に背を向けて、歩き出した。
1メートル、2メートルと、二人の間隔が徐々に離れて行く。
「どこへ行くんですか!」と、祐介の背中に向けて美汐が叫びかける。祐介は答えない。
祐介はたっぷり20メートルは離れると、ワイヤーを取り出して、振り向き、言った。
「君の手をこれ以上汚す事は無い。
 僕が自分の手で――自分を殺す、よ」
寂しげな、笑みを浮かべて。

407 :マナー(゜д゜)@朝が来る:2001/06/02(土) 23:24
(私にはもう何もない、ってわけね)
 静かな夜の公園を散歩するかのように、マナは暗い森の中をゆっくりと歩いていた。
(藤井さんにはもう逢えない。お姉ちゃんは私を……殺そうとした)
 聖も、そしてついさっき、きよみまでもがマナを庇って、逝った。
 マナは疲れていた。生きるとか死ぬとかそういう問題ではなく、ただ疲れていた。
 今はもう何も考えたくなかった。何もかも忘れて眠ってしまいたかった。
 眠って、目が覚めたらすべて夢でした。……それを期待するのは間違っていることなのだろうか。
 それでも、マナの足は惰性で前へ、前へと運ばれていた。既に、意志も目的も失われてしまった。
 聖の妹、霧島佳乃。今となってはもう、崖の上で対峙した時の瞳のイメージしか残っていなかった。
(からっぽ、だった)
 光のない、意志の力の感じられない瞳。空虚な瞳。
 あの時持っていた石をマナの頭に叩きつけるのに、何の躊躇もしないだろう――そう思わせる目だった。
(でも)
 ――今の私、きっとあの子と同じ目をしてる。
 私も、もう何も考えていない。ただ、全部を投げ出して眠りたい。
(鏡、持ってなくてよかった)
 やっぱり、こんな時でも自分のひどい顔は見たくないから。
 この場でそんな発想が出てくるのが少し不思議で、マナは無理にでも笑ってみようとしたが、上手くいかなかった。
 その時、何かに足を引っかけ、危うく転びそうなところを慌てて踏みとどまる。
(なによ、もう……)
 何気なく足元に目を落としたマナは、見た。
 木々の隙間から差し込む月明かりに、その顔の部分だけが青白く浮き上がっていた。
「澤倉……先、輩」
 転がっていた死体は、憧れていた先輩その人だった。

408 :マナー(゜д゜)@朝が来る:2001/06/02(土) 23:25
 死体を座るように木にもたせかけ、服についた土埃を落とす。
 肌に飛び散った血を丁寧に拭い取ると、瞳を閉じ、両の手を胸の前で組ませた。
 穴を掘る道具はなかったが、これがマナにできる精一杯の弔いだった。
 実際のところ、そこにあった死体が美咲のものだったから、と言うわけではない。他の誰の死体であっても同じことをしただろう。
 それが、今ここに生きているマナ自身にとっての義務だと思ったから。
 と、そこで、マナはハッと胸を突かれたように感じた。
(私の……義務。生きている私の、義務)
 マナの双肩には、二人の命が背負われている。聖と、そしてきよみとの。
 自暴自棄になることは許されない。誰でもない、マナ自身がそれを許すことができないのだ。
(ホントどうかしてる……こんなんじゃ笑っちゃいますよね、澤倉先輩)
 マナは近くの木を思い切り蹴りつけた。硬い音がして、葉が何枚か落ちてくる。
(いつつつつ……目ェ覚ましなさいよ、観月マナ)
 足に伝わる痛みがマナの思考をクリアな状態に引き戻す。
 今やらなければならないこと。それはこの状況を脱却する方法を考えることだった。
(このゲームを終わらせるには、自分以外の全員を殺せばいい。……そんなのできるわけないし、させてもいけない。
 ならあの高槻とかいう男を叩く? 無理ね。警護の人間もたくさんいるだろうし、それに)
 ――私に人は殺せないから。
 他にも、マナにはどうしても引っかかることがあった。
(この馬鹿げたゲームをあの男は『金持ちの道楽』とか言ってたわね。と言うことは、よ)
 その金持ちたちがこの島にいるとは考えにくい。危険だからだ。恐らくは島の外の別の場所に集まっているのではないだろうか。
 となると、この島からそこまでに何らかの、この島の状況を伝える連絡手段があるはずだ。

409 :マナー(゜д゜)@朝が来る:2001/06/02(土) 23:26
(このゲームの存在意義はそこにあるのね。なら……目を奪う、それしかないわ)
 その連絡手段を断ち切れば、その金持ちたちの目的は果たされなくなる。
 当然高槻のところには何らかの連絡が行くだろう。それを聞いて、高槻が果たしてどうするか。
 自棄を起こして、全員の爆弾を爆発させるだろうか。多分、それはない。
 金持ちの道楽、と言ってもただ殺し合いを見ているだけではあるまい。参加者はギャンブルの対象にされていると見て間違いない。
 この島に参加者を集めるのにも相当の金がかかっているだろう。ならば、高槻が一瞬で全員の命を奪うとは考えにくい。
 それに、島の状況が向こうにわからない状態では、どれだけの人が死のうと何の意味もない。
 なら、どうするか。それはわからないが、焦って何らかのアクションを起こすことはほぼ確実だろう。
(その時ね。……勝負が決まるのは)
 この島の、自分以外の人間が全てゲームに乗っているとは思えない。絶対にこのゲームを終わらせようとしている人間が、いる。
 ――それなら、私はその人たちを助けられればいい。
 管理者側の目を奪うこと。そのためにできることを考える。
(この島の状況を外に伝えるとして、あちこちに管理者側の人間を忍ばせておくか……カメラを設置するか)

410 :マナー(゜д゜)@朝が来る:2001/06/02(土) 23:26
 だが、前者はちょっと考えにくい。武器を持った人間が大勢いる場所に、そのためだけにそんなリスクの大きいことはしないだろう。
 すると要所要所に配置されたカメラの映像を何らかの方法でそこに送っていると考えるのが妥当だろう。
 有線のはずはない。自分たちを観察しているカメラから伸びるコードを参加者が見て、切らないわけがないからだ。
(無線……多分海は越えられないわ。この島のどこかに、きっと中継用のアンテナがある)
 そのアンテナを見つけないことにはどうしようもない。しかし、どこにあるのかは想像がついた。
(この島の全域をカバーするために、カメラは相当数必要なはず……それだけの映像を管理するには相応の機材がいるわ。
 となると、どこかに本部として使われてる場所がある。アンテナも高槻も……そこね)
 恐らく、警備も厳重を極めるのだろう。しかし、ここでむざむざ殺されるのを待っているわけにも行かなかった。
 ――このゲームを、終わらせる。
 強い意志が、マナの瞳に宿る。これ以上悲劇が繰り返されるのはもうたくさんだった。
(澤倉先輩、ありがとうございました。やっぱり私……先輩みたいになりたいです)
 月光に照らし出されて、美咲の顔はひどく穏やかなものに見えた。
 眠っているかのように見える美咲の死体に深々と一礼すると、マナはまた深夜の森の中を歩き出した。その足取りに、もう迷いはない。
 そして――また、朝が来る。

411 :マナー(゜д゜):2001/06/02(土) 23:32
タイトル入れるのが最近の標準っぽいので合わせてみたり。

久しぶりの本文書き込みです。最近ホワルバ組動いてて嬉しい限り。
死体出すのはNGラインが微妙なので結構ドキドキします。なんかあったら言って下さい。

LFTCGで賢さが1でもマナたんはホントは理知的なキャラなのです(ヴォソ

412 :名無したちの挽歌:2001/06/02(土) 23:37
えっと、いくつか指摘・自認があったので修整です。
らっちーさん宜しくお願い致します。

>>374
「事柄について打ち合わせをた」を「事柄について打ち合わせた」へ修整
「はっきりと口にする。。」を「はっきりと口にする。」へ修整

>>375
「母子で参加してるのは〜水瀬名雪という事になる」を
「母子。そしてあの髪。
 あれは、水瀬名雪、なのだろうか?」へ変更

>>398
「…名雪ちゃん!?」を「…名雪さん!?へ」修整


413 :闇、と、光(1):2001/06/03(日) 00:06
天野美汐(005番)は、背中を向けて去ってゆく長瀬祐介(064番)の背中に向けて叫びつつ、
正直な所、多少安堵した。
他人が信じられないとは言え、やはり、心の何処か、潜在的な部分で管理者側以外――、参加者を殺すのは躊躇われたのだ。
これまで行動を共にしてきた祐介なら、尚更。
だから、祐介が背中を向けて離れて行くとき、きっとそのうち走り出して逃げるだろう、と思った。
勿論、もしそうなったとしても、美汐は祐介を撃つ気は無かった。殺したら、自分まで狂ってしまう気がして。
だが―――
美汐の予想を覆す言葉が、祐介の口から出た。
「僕が自分で、死ぬ」と。

祐介も、多少はおかしくなっていたのかもしれない。
美汐の事を思うなら、ここは敢えて(というより、もうそうするしかないか?)美汐と別れ、
他に協力者を見つけ(もしいなかった場合は、無茶かもしれないが1人で)、
それで高槻ら管理者側を倒してしまえばいいのだ。
極端な話、高槻を今この瞬間殺す事が出来たなら、べつに美汐がこの島のどこにいようと、それでゲームは終り、助かるのだ。
だけど、祐介は、今ここで、死を選んだ。そうすることで美汐が正気を取り戻すと信じて。
それはやはり、おかしくなっていた、としか言いようが無かった。

高鳴る心臓の鼓動を聴きながら、美汐はまさか、そんなことをする筈は無い、と思いこんだ。
逃げれるチャンスなのに、わざわざ手間を掛けてまで死ぬなんて。
突然襲いかかってくるというケースも考えられたが、それではこれだけ距離が離れた理由がわからない。
いくらなんでもこれだけ距離があるなら、飛びかかられるまでに弾を撃つ事ぐらい、できる。
だけど、祐介は離れて、それで、振りかえって、ワイヤーを手にした。
と、言う事は、つまり―――
また美汐の心臓が、どくん、と高鳴った。


414 :闇、と、光(2):2001/06/03(日) 00:07
或いは、祐介は自分に酔っているのかもしれなかった。
悲劇の物語の、悲劇の主人公を演じる事に。
そう、洗脳を受けてしまったヒロインは、主人公が自らの命を捧げる事によって目を覚ますのです。
はっきり言って三流のシナリオだったが、まあそれも悪くないかな、と祐介は内心思いつつ、
両手でワイヤーを握り、首の後ろに回す。
そして、ワイヤーを握ったその手を力一杯―――交差させた。

瞬間、血の花が咲いた。
ワイヤーが、祐介の首の肉をぎりぎりと引き裂いてゆく。
その光景を呆然と見ながら、美汐は一瞬の間に、ひどくたくさんの思考をめぐらした。

私を殺そうとしている筈の長瀬さんが、どうして苦しんでいるの?
…それは、ワイヤーで自分の首を締めているから。
どうして私を殺そうとしている筈の長瀬さんが、自分の首を締めなければならないの?
…それは、私が殺そうとした、から?
なら、何故抵抗せずに自らの命を絶とうとするの?
…それは………私を殺そうと、していない…から?
…長瀬さんは、もとの優しい長瀬さんのままだった…から?
狂っているのは、そう……

長瀬さんではなく……私。

一瞬で、それでいて永遠に続くかのような思考が止まり、
美汐が自分の意識を取り戻す前に、既に身体が、祐介のほうへと走っていた。
そして、叫んだ。
「長瀬さん!やめて…やめてください!」
冷静になった時、自分はこんなにも大きな声を出せたのか、と驚くのだろうが、
今の美汐には当然、そんな事を考える余裕は無かった。
そんな美汐を見て、祐介は安心した表情で、にこり、と笑いかけ、

その表情のまま、糸が切れたように、崩れ落ち、倒れた。


415 :闇、と、光(3):2001/06/03(日) 00:07
「長瀬さん……長瀬さん!」
うつ伏せになっている祐介の身体を裏返し、
美汐は必死で祐介に呼びかけた。
顔色は当然悪く、目も虚ろではあったが、意識はあるようだった。
首筋に細く赤い線が一本通っていて、そこから、血が涌き出ていた。
実際にワイヤーで締めていた時間は一瞬だったため、そう深い傷というわけではないが、
このまま放置しておけば、いずれ失血死に至るであろうことは容易に想像できた。
美汐が祐介の手を取る。祐介も、力なく、その手を握り返した。
「ごめんなさい……私…私…」
祐介はふるふると首を振った。それだけでまた、首筋から血が溢れた。
それでも、祐介は穏やかな表情で美汐を見つめ、言った。
「…いいんだ、いいんだよ、どうって……ことはない」
が、どうって事ない筈は無かった。
その事実が、こんな状況でもそんな事を言ってのける祐介の優しさが、
美汐の心をまた、痛ませた。

――どうしよう。
私のせいで、長瀬さんは、こんなことに……
なんとかしなくては、と言う思いが美汐の頭の中をぐるぐると駆け巡ったが、
どうすればいいか、と言う問いには、美汐の頭は答えられなかった。
…ともかく、応急処置をしなくてはいけない、と言う所までは辿りつくのだが、
どうやって応急処置をすればいいのか?包帯のひとつも無いのだ。
結局、美汐は祐介の手を握り、ただ泣く事しか出来なかった。
後悔と、自責の念にかられながら。

その刹那。
ぱきん、と、すぐ後ろで枝を踏む音。
即座に美汐は涙を掃い顔を上げ、右手にデリンジャーを構え、振り向く。

そこには。
呆然と立ち尽くす、観月マナ(088番)が、居た。

416 :刃(1):2001/06/03(日) 00:12
「……あなたですか」
 踊り場から声をかける茜。
 一階には、前に会った少女。
 名前を、茜は知らなかった。
「死んで貰うわ。あの時、私を殺さなかったことを後悔するのね」
「……だから、勘違いです」
「黙りなさい。言い訳なんて見苦しいわよ」
 理奈は相当疲れてはいたものの、瞳だけは獲物を前にした獣のようにギラついていた。
 茜は内心溜息をついた。
(……今日は、私、甘すぎるみたいです)

「行くわよ」
 言うなり、理奈は消火器のホースを茜に向け、発射した。
 たちまち周囲は粉末で埋め尽くされ、視界は真っ白になった。
 このまま出鱈目に銃を撃つべきか。
 それとも、一旦下がるか。
 茜はどちらも選ばなかった。
 消火器から発射されるや否や階段を数段降り、手すりを飛び越え1階に着地した。
 こちらの視界が封じられるということは、相手からも見えないはず。
 そう判断し、一気に裏に回りこもうとしたのだ。
 着地の衝撃で足が痛むが、大したことはない。
 階段の方を見ると……そこに理奈はいなかった。

417 :刃(2):2001/06/03(日) 00:14
 消火器を発射するやすぐに、理奈は右手にナイフを持ち、左脇に消火器を抱えた状態で階段を駆け上がった。
 銃で撃たれる危険性は考えなかった。
 もとより分の悪い勝負だ、このくらいのギャンブルは仕方がなかった。
 死んだら死んだで、運がなかったのだ。
 だが、そこに茜はいなかった。
「!?」
 それを確認した瞬間、反射的に消火器を後ろに放り投げた。
 すぐさま振り向き、階下を見る。

 ガァァン!!

 不意をつかれた茜が、消火器を避けていた。
「なんで当たらないのよっ!」
 悪態をつきながら、ナイフを構え、階段を駆け降りた。

 銃を構えた途端、上から消火器が飛んできた。
「……っ!」
 すんでのところで、飛び退き、かわす。
 理奈は既に、ナイフを持って階段を駆け降りてきている。
 理奈に向かい銃を構え、何度も発砲する。
 そのどれもが当たらなかった。
 考えてみれば、まともに向かってくる人間に向けて銃を撃ったことはあまりない。
 昨日始めて銃を持った人間が、動き、自分を狙う標的を簡単にしとめられるわけはなかった。
 それでも、近くにこればそれだけ当たり易くもなる。
 何度目かの発砲で、ついに、理奈の左肩を捕らえた。

 痛みが走る。そんなものが何だ。
 兄さんの味わった苦しみに比べたら――
 撃たれてもなお理奈は走り、間合いに入った途端にナイフを振るった。
 ギリギリ、かわされる。
 相手も流石に馬鹿ではない、壁側に避けてくれればよかったが、廊下側に移動されてしまった。
 が、懐に入り連続でナイフを振るえば、自分の有利には変わりない。
 反撃の隙を与えず、ただひたすら、ナイフを振り続ける。
 刃を撃つチャンスは一度。
 もし外せば、
(終わりね……)

418 :刃(3):2001/06/03(日) 00:15
(……何か狙っているんですか?)
 右へ左へ、反射だけでナイフを辛うじて避けている。
 こんな状態では、銃で狙えやしない。
 一度無理に撃とうとしたが、その瞬間に右腕を狙われていた。
 腕にわずかに切り傷ができている。
(……毒でも塗ってるわけじゃないようです。
 ……もしそうだったら、この傷だけで致命傷ですから、退いているはずです)
 思考だけは、相変わらず冷静だった。
(……相手の狙いをかわせば、おそらく私の勝ちです。
 ……かわせなければ、負けです)
 必死にかわしながら、相手を観察する。
 汗が浮かぶ、疲れも出てきた。
 それでも冷静に相手を見る。
 武器はナイフ一本、左手は動作に流されている。
 左手で何かを狙っているようには思えない。
 だからといって、ナイフで隙を作るような攻撃もしていない。
(……流れに任せて、チャンスを待っている?
 ……隙ができるのを? 違う、もっと別の何か)
 相手の武器はナイフだけ……ナイフ?
 そういえば、何かで見たことがあった。
 ナイフの中にも、確か――
 次の瞬間、茜がわずかに、ほんの少し大きく後ろに下がった。
 理奈の目が光った気がした。

 ナイフを降り始めて数十秒。
 その瞬間が始めてやってきた。
 相手に悟られてはならなかった。
 だから理奈はあえて自分から狙おうとせず、ただ偶然を待った。
 流れに乗ったナイフが、茜の胸の正面を通り過ぎる瞬間を。
 訪れるチャンスを見逃すはずはなかった。
(当たって!!)
 ナイフのスイッチを、理奈は押した。

 ダンッ!

 茜が大きく後ろにのけぞって――
 そのまま体制を立て直した。
 少し遅れて、刃が床を転がる音。
 寸前で、銃のグリップで飛んできた刃を弾いたのだ。
 狙っても簡単にできることではない。
 最後は結局、偶然だ。
 運命の神様は自分に微笑んでくれた。

 ダンッ。

 発砲。
 今度こそ、理奈を捕らえた。
 腹を押さえて、理奈はゆっくりと、その場に崩れた。

419 :刃、書いて:2001/06/03(日) 00:16
戦闘シーンはムズすぎです。

420 :一つの別れと次の挑戦(1):2001/06/03(日) 00:56
 ゆっくりと、理奈に歩み寄る。
 茜の服の袖はボロボロで、汗も酷くかいていた。
 有り体に言うなら、疲れていた。
「……死ぬかと思いました」
 理奈を見下ろして、言った。
「あっそ、私、には……そうは見えなかったけど。
 余裕の、表情……だった、じゃないの……」
「……気のせいです」
「そう……」
 理奈はふぅと、大きな溜息を一つついた。
「悔しい、なぁ……兄さんの仇、とれなかった……。
 このままほっといて、いい……わよ。
 兄さんも、楽、には……死ねてないんでしょう?」
「……はい。多分」
 その言葉に、理奈は再び茜を睨み付けた。
「やっぱり、あなたが殺したんじゃない」
「……違います。
 ……あなたのお兄さんは、私が見つけた時は既に死にかけてました。大切な人を守れなかったそうです。
 ……あの人は私に『楽にしてくれ』って言いましたが、私は断りました。
 ……大切な人を、約束を守り切れなかった罰です。
 ……結局、見殺しにした形になってしまいましたけど」
 今でも思い出せる。
 あの男の人の表情を。
 悔いを残して逝ったのだろう。
「本当?」
「……嘘はつきません」
「……何よ。私、バカみたいじゃない……」
 気付けば、理奈の瞳から涙がこぼれ落ちていた。

421 :一つの別れと次の挑戦(2):2001/06/03(日) 00:57
 一度流れてしまえば、止まらない。
「勝手に誤解して、罪のないあなたを殺そうとして。
 逆に返り打ちに遭って……馬鹿じゃない……」
 後から後から、雫がこぼれ落ちる。
 暗い廊下を、濡らしていた。
「本当はわかってたのよ、きっと。
 だけど、仕方ないじゃないの……。
 誰かを恨みでもしないと、こんな中で、生きていけないわよ。
 怖かったの。本当の事を知ったら、今の自分を支えてるものがなくなりそうで。
 怖かったのよぉ……」
 理奈の言葉が、妙に引っ掛かる。
 何故だろう。今何か、自分にとって大事なことを言われた気がする。
「でももう、関係ないわね。死ぬんだから。
 誤解であなたを襲って、悪かったわよ……」
 理奈が話し掛けてきた。
 だから茜は、ひとまず考えることを止めた。
「……苦しいなら、楽にすることもできます」
 銃を構える。
「……ほおっといてって言ったでしょう。
 兄さんも、楽には死ねてないんだから……」
「……そうですか」
 あくまで冷たく言って、銃を下ろした。
 暫く無言が続く。
 それを撃ち破ったのは、第三者の声。

422 :一つの別れと次の挑戦(3):2001/06/03(日) 00:58

「あなたが、店長さんを殺したの?」

 廊下の奥を見る。
 暗がりでよく見えないが、校舎に入って最初に、自分達を襲った少女。
 牧部なつみだった。
「……そんなこと言われても」
 店長さんとは誰のことか、わかるわけがない。
 茜は困った声を上げた。
「そこのあなた?
 この女、血も涙もない、凶悪殺人鬼よ?
 ひょっとしたら……この女が犯人かも」
 理奈が呟く。
「……なんてこと言うんですか?」
 非難の眼差しを送る。
 理奈は笑って答えた。
「悔しいじゃないの。やっぱり、あなた嫌いよ。
 私からの、最後の……攻撃……」
 そのまま、目を閉じる。
 もう何も、喋らなかった。

「そう。じゃあ、殺しちゃっていいよね? ココロ」

 予感は当たっていた。
 やはり、あそこで殺しておくべきだった。
(……今日は、やっぱり、甘すぎです)

013緒方理奈 死亡
【残り44人(祐介は表示なかったのでカウントせず)】

423 :刃、一つの作者:2001/06/03(日) 00:59
理奈の口調がわかりません。
脳内変換お願いします、すいません。

424 :111:2001/06/03(日) 01:22
連続カキコすると止まるんで
少しづつ上げます。

425 :111@TheDicidedFuture1:2001/06/03(日) 01:25
「散々やな……」
痛む腕を抑えて、智子はそう呟いた。
「そうですねぇ……」
同じように、疲れた調子でマルチも同意の念を示した。
「まさかガス欠するとは思ってへんかったからなぁ……」
海岸線を離れて、一時間もしたあたりのことだっただろうか……。


プスン、プスン。
「な、なんやこのジープ。突然変な音出し始めたで?」
「ホ、ホントですね」
いきなりの車の変調に、二人とも驚きを隠せない。
「な、なんなんやろ……。
 ジープって変なところ走ってもええように丈夫に出来てるんや無かったの?」
特に軍事関係や自動車に興味があったわけではないが、
それでも一般常識としてそれくらいのことは智子も知っていた。
「は、はわわわわわわわわ〜〜。ど、どうしましょう〜〜!?」
マルチは慌ててばかりでぜんぜん頼りにならない。
――分かりきっていたことではあったが。

「そ、そないなこと言うたかて……」
大体うち免許持っとらんのやで……。
誰にも聞こえないように、智子は心の中で呟いた。
「ああ、智子さん前〜!」
「へ。……のわっ!?」
目の前に森林が、そしてでかい木が迫ってくる!
「ぐっっ……。いややぁ〜〜〜〜!!」
智子は思いっきりハンドルを切った。

ギギギギギギギギィィィィィィィッッッ!!
ズザザザザザザザザザザザザザザンッッ!!

426 :111@TheDicidedFuture2:2001/06/03(日) 01:26
ジープは思い切り横滑り――かっこよく言えばドリフトとでも呼べるのだろうか――し、
森林に横付けするような形で止まった。
「ぐあ……。死ぬかと思たわ……」
「ホントですね、私も死ぬかと……」
あんたは死ぬんちゃうやろ、と智子は心の中で突っ込みを入れた。

「あかんな、もうこれは走られへんやろ」
ジープを降りて、車の周辺のメンテナンスを見よう見まねでやっていた智子は、
あきらめたようにそう言った。
「全く……ガス欠なんてしょぼいわ……」
はぁ、と嘆息した。
「ふむふむ……ここがこうなって……でこの音がしてそうなると……」
マルチはなにやらぶつぶつと独り言を言っているようだが……。
「……分かりました! 智子さーん!」
マルチは喜び勇んで智子の名を呼んだ。
「ん、どうしたんやマルチ?」
さっきからなにやら頭の中で調べものをしていたようで、智子もそれには気付いていた。
「えっとですね、空気が抜けるような音がしてエンジンが空回りし、
 且つ車の速度が遅くなっていった場合、その車はガス欠と呼ばれる症状にかかっている
 可能性が高いそうです!」
「……そ、そか。よく分かったな」
そんなこともう分かっとんねん……。
と言う突っ込みをマルチに入れたかった智子ではあるが、
あまりにも嬉しそうに話すマルチを見て気の毒に思ったのか、
そのセリフを口の中に無理やり押しとどめた。
「一般にこの症状を改善するためには、車にガソリンを補給してやればいいそうです!」
「どこにあんねん」
だが、さすがの智子も、二度目のボケに対する突込みを押しとどめられるほど、
人間が出来ていなかった。
……無論のこと、ガソリンがそのあたりに落ちているわけも無く。
ジープを移動させることが出来ないのだから、当然ガソリンの方を運んでくることになる。
しかし腕が傷付いた智子と、そもそもが非力なマルチではそんなことが出来るわけが無かった。


427 :111@TheDicidedFuture3:2001/06/03(日) 01:27

「仕方あらへんな……。こっからは歩きや、歩き」
智子はマルチを促した。
「大丈夫です。私、歩くの好きなんですよ〜」
マルチは楽しそうにそう答えた。
さよか。
智子はそう答えた。
そして思った。
こんなしんどい状況ではあっても、楽しく歩けるならそれに越したことは無いな。
それにそんなマルチの側にいれば、自分も希望を失うことは無いだろう、と。
そんな、見方によっては儚くも思える期待があった。

晴香ぁ、うちはまだ生きてるでぇ。
心の中で、数時間前に分かれた戦友に思いを馳せる……。
「じゃ、行くか……。
 折角、森が目の前にあるのも何かの縁やろし、ここは森に入って見よか」
「ハイ! 分かりました」
いつも返事は元気なマルチを見て、智子はふっ、と微笑んだ。
状況は、常に彼または彼女に”縁”を与えてきた。
彼女はこれから一つの再会劇を促す。
それはこの血塗られたゲームの下にあっても尚変わることのない絆を証明する。
縁とは、かくも数奇な道を辿り巡ってくるものだろうか……。

――かくして、もう一つの死闘が始まる。


428 :111:2001/06/03(日) 01:29
>>427
いつ空白がダメダメ。
―――――――――――――――
〜ふっと微笑んだ。

(4行空き)

状況は〜
―――――――――――――――
でおねがいします。



429 :名無しさんだよもん:2001/06/03(日) 01:32
理奈の最後、ちょっとジーンときたよ。

430 :名無しさんだよもん:2001/06/03(日) 01:33
>>429
同意。理奈(・∀・)イイ!

431 :名無したちの挽歌:2001/06/03(日) 01:38
そろそろ茜が殺人ランカー最高位?

432 :名無しさんだよもん:2001/06/03(日) 01:47
あと一人で浩之と並びますね、茜。
なつみは茜に殺られるか。

433 :名無しさんだよもん:2001/06/03(日) 01:57
なつみと茜、どっちが勝つのかな!?
なんだかドキドキしてきちゃうよね!

434 :そして一つの決断〜弥生〜1:2001/06/03(日) 01:58
弥生は迷っていた。由綺の姿をこの目に入れたときは、ただ単純に
嬉しかった。もう二度と離れはしないと思った。
すぐに、由綺の心が壊れてしまっているということに気がついても、
その心に一片の変化もなかった。
普段の由綺からは考えられないような提案にも、弥生は黙って従った。
そして今、弥生は由綺と共に、マナを殺す為に歩みを進めている。
由綺と一緒にいられるという事は素直に嬉しかったが、しかしマナを殺すと言う、
人間として一番醜い姿を、例え心が壊れてしまったといえども、由綺には見せたくはなかった。
由綺が目の前で躊躇なく人を殺す姿を見た後でも、弥生はそう思っていた。
ただ、それ以上に、こんな状態の由綺を一人にしておく訳にはいかなかった。

「藤井さんがいてくれたら…」

ほんの少し前、そのマナを連れて逃走した冬弥の顔が頭に浮かぶ。
冬弥さえいてくれたら、弥生は由綺を冬弥に任せて一人でマナを追ったであろう。
あくまでも汚れるのは自分一人で充分だと決めていたから…。
しかしそれは、ないものねだりという物であった。

だがしかし、弥生の希望はすぐに実現することになる。


435 :そして一つの決断〜弥生〜2:2001/06/03(日) 02:00
マナと冬弥が走っていった方に歩みを進める由綺と弥生。
今まで由綺達がいた所へ戻ろうとする冬弥。
この三人が再開するのは必然のことであった。

「あー冬弥君だ」

これから人を殺しに行く人間とは思えない程の明るい声で、由綺は冬弥の名を叫んだ。
弥生は冬弥の姿を確認すると、いつも見せるように軽く頭を下げ、黙って冬弥の元へ
歩み寄ると、おもむろにカバンの中から44マグナムを取り出して手渡した。

「これで由綺さんの事を守ってあげてください」
「……」
「私にはまだやらなければならない事がありますので、少しの間ここを離れます」

あえて、これからマナを殺しに行くと言うことは伏せた。


436 :そして一つの決断〜弥生〜3:2001/06/03(日) 02:02
この何でもない一連の行動の中、弥生は頭の中で、さまざまな考えを廻らせていた。
本来ならば、この再開を心から喜び、弥生はすぐにでも由綺を冬弥に任せてしまい、
一人で由綺の希望を叶えに行きたい所であったが、それと同時に、果たして今の
冬弥が信用できるのかと言う不安が思い浮かんだ。
しかし弥生には、選択の余地はなかった。
最終的に三人でこの島を出る為には、弥生は由綺のマネージャーではなく、
もう一つの顔であるジョーカーとして、あと七人の罪のない人を殺さなければ
ならなかったのだ。

「九(今は七)人の罪のない人達を殺す事」
「その行動を由綺には絶対に見せてはならないという事」

主催者に、二人の安全と引き替えにジョーカーにならないかと誘われ、その誘いを
承諾した時、弥生はこの二つの決まりを自分に課した。
そして、この二つの条件を同時に満たす為には、自分が行動を起こしている間、
由綺を信頼出来る誰かに預けると言うことが絶対条件であった。
この島に来た人達の中で、安心して由綺を預けることの出来る人物を、弥生は
二人しか知らなかった。
その内の一人である緒方英二が既にこの世を去ってしまった今、弥生は自分が
行動を起こしている時に由綺を預けることの出来る人物を、冬弥以外には
思い浮かべる事は出来なかった。


437 :そして一つの決断〜弥生〜4:2001/06/03(日) 02:04
いきなり拳銃を手渡されて呆然としている冬弥を尻目に、弥生は再び由綺のもとへ戻った。

「由綺さんは、藤井さんとさっきいた所で休んでいてください。後は私がやりますから」

冬弥に聞こえないくらいの小さな声で囁いた。

「うん。わかった。それじゃあ私、冬弥君と一緒に待っているから。気をつけてね」

弥生の小さな声とは対称的に、大きな声で由綺は返事した。
由綺の返事を聞いた弥生は、すぐに顔を背けた。
途中冬弥の目の前を通り過ぎる時にだけ、冬弥に向かってさっきしたのと同じような小さなお辞儀をしただけで、それ以降後ろを振り向くことはなかった。
振り向きたくても振り向くことは出来なかった。
その時既に弥生の顔は、芸能人森川由綺のマネージャーの顔から、主催者の用意したジョーカー―殺人者―としての顔に変化していた。


「汚れるのは私だけでいい…」

弥生は誰に言うでもなく、自分に言い聞かせるように呟いた。


【弥生、由綺別れる。 44マグナム・弥生から冬弥へ】


438 :そして一つの決断〜終劇〜1:2001/06/03(日) 02:06
「弥生さん、行っちゃったね」
「そうだね」
「でもいいんだ。私には冬弥君がいればそれだけで良いから。冬弥君はもうどこにも
行ったりしないでよね」

冬弥が戻ってきたことに関してだけ、本当に嬉しそう由綺は答えた。
もう今の由綺には冬弥しか目に入っていないようであった。


冬弥が戻ってきたことに安心したのか、由綺は大きな欠伸をし、眠たそうに目を
こすった。

「由綺、眠くないか」

由綺の欠伸を見た冬弥は、心配そうに由綺の顔を覗き込んだ。

「うんちょっと眠いけど、大丈夫だよ」

由綺は一点の曇りもない笑顔を冬弥に向けた。

「まだ先は長いから、今のうちの寝ておけよ。由綺が寝てる間は、俺が見張ってる
からさ」
「そう、冬弥君こそ寝た方がいいよ。なんだか疲れてるみたいだし」
「いや、俺は由綺の後に寝るよ。代わりばんこで寝よう」
「そう、それじゃ、お言葉に甘えて、先に寝るね」

そう言うと由綺は冬弥の隣で横になって目を閉じる。すぐに冬弥の耳に由綺の
寝息が聞こえてきた。
由綺にとって、ここに来て初めての睡眠であった。


439 :Sivis pacem parabellum(1):2001/06/03(日) 02:08
 坂上蝉丸と三井寺月代は野営を行っていた。
 と言っても残り少ない食料と水を取っていただけに過ぎなかったのだが。
「(・∀・)もう、食べ物無くなっちゃたね」
「ああ、明日からは食料の調達も考えないとな」
 何気ない会話を交わしていると、蝉丸は突然黙り込んだ。
「(・∀・)せみまる?」
「しっ、静かに…」
 人差し指を唇に垂直に当てそう言うと、蝉丸は周りに神経を張りめぐらせ始めた。
 そして、すっと立ち上がってから
「そこにいる奴ゆっくりと出てこい。こちらは危害を加えるつもりは無い。
 ただし、おまえがそうではないと言うのなら、こちらもその限りではないがな」
 と言って刀に手をやった。

 間も無くしてゆっくりと物陰から一人の男が出てきた。
「すいません。あなた達がどんな人達なのかわからなかったので姿を隠していました。
無論、僕もあなた達に危害を加えるつもりはありません」
 そう言ってでてきたのは少年だった。
「何もなければ、このまま通り過ぎようと思ったんですが、
 まさか見つかってしまうとは思ってもいなかったですよ」
「気配の消し方はなかなかだったが、しょせんは素人だな」
「(・∀・)蝉丸は軍人さんなんだよ」
 と言う月代のほうを少年は一瞥してぴたりと止まってしまった。
「(・∀・)ああ、しまった! まだこんなのつけたままだよ!」
 月代はおろおろとうろたえていた。
「な、なんなんですか? それ?」
 少年はなんともいえない表情でそう尋ねた。
「なぜかは知らないが取れないんだよ、これ」
「不憫ですね…」
「(・∀・)ううっ…」
 月代はお面の上から手を当て泣くまねをしていじけていた。

440 :そして一つの決断〜終劇〜2:2001/06/03(日) 02:08
どうしてこんな風になったんだろう。

マナちゃんが言ってたな。俺が由綺のことを諦めてしまったと。
俺は俺なりに由綺のためを思ってきたつもりだった。それが間違っていたと
言うのだろうか。今からでもその間違いを正すことが出来るのだろうか。

「出来るのだろうか。出来るのだろうか……」

…いや。
もう俺達は元に戻ることは出来ないだろう。はるか、美咲さん、緒方さん。
この三人が死んだことを放送で知った時、絶望した。それと同じ様に、俺達が
殺してしまったことで、俺と同じような気持ちを持った人を作り出してしまった。
その罪は一生かかっても償いきれないものであろう。
何よりももう、あの頃の由綺は戻ってきてくれはしない……。

「あの頃に戻りたいな。
由綺とはすれ違ってばかりでなかなか会えくて、俺は勝手に緒方さんに嫉妬したり
していたけれど、それでも由綺のことを愛するすることが出来た。本当に何の
とりえもない平凡な俺だったけど、一生由綺のことを守っていくと心に誓った
あの日々に戻りたい。
これが夢だったらどんなに良かったことか。だけどこれは夢なんかじゃない。
はるかや美咲さんや緒方さんはもうこの世からいなくなってしまった。そして俺達は、
何の罪もない人を殺めてしまった。悪夢のような話だけどこれが現実なんだ」

そして俺は、一つの決断を下した。


441 :Sivis pacem parabellum(2):2001/06/03(日) 02:09
「ところで、君は何処に行こうとしてたんだ? もう、だいぶ暗くなってきているぞ」
「…このくだらないゲームを企てた首謀者である高槻のところです」
 ほんの一瞬だが間をあけてから少年は答えた。
「そうか、なら目的は一緒だなってまさか、仲間になりに行くってわけではないんだろ?」
「ええ」
 少年はくすりと笑ってから、すぐに険しい表情になり
「これまでに、多くの人の死を見てきました。もう、茶番劇は十分です」
「だな…」
 蝉丸がそう答えるとしんっと静まり返った。

「(・∀・)じゃあ、一緒に行こうよ! 私たち、秘密基地見つけたんだよ!」
 その沈黙を破ったのはさっきまでいじけていた月代だった。
「秘密…基地?」
 怪訝そうに少年は答える。
「ああ、なんか地中から機械音がしていたんだ。怪しいと思わないか?」
「確かに…あの用心深い高槻が僕らと同じ島内にいるとは考えにくい。
 だからと言って、飛行機や船で逃げ出しているなら誰かが気付いてもおかしくない。
 その点、地下もしくは海中とかにいるのならば、極めて安全にいられるだろうね」
 少年は納得したようにうなずきながらそう答えていた。
「そうなんだ。だから、中に入ってみようと思っているんだが、この月代と二人では心細い。
 それで、誰か同じ目的を持った人を探し同行してもらおうと考えていたんだ。
 どうかな? 一緒に行ってくれないか?」
「(・∀・)いっしょにいこう!」

442 :そして一つの決断〜終劇〜3:2001/06/03(日) 02:10
冬弥は横を向き、隣で眠っている由綺の顔を除きこむ。何の邪悪さも感じられない
その寝顔を見ると、今起こっている現実の悪夢を忘れ去ることが出来るようであった。
どれくらいの時間が経ったであろうか。実際にはたいして長い時間ではなかった
けれど、冬弥にとっては永遠に等しい時間のように感じられた。
由綺の寝顔を見て何度も挫けかけたが、冬弥は決意を固めた。
その時、ふと冬弥の頭の中に今までの思い出が鮮明に蘇った。

冬弥は目をつぶり、由綺の何一つ穢れのない寝顔と、今までの幸せだった思い出の
残像を振り払うように、何度も頭を振った。
冬弥の両手が由綺の白く細い首に伸びる。
冬弥は由綺の首に手をかけ、力をこめると、そのまま由綺の体に馬乗りになった。

「弥生さん、ごめん。俺、約束守れない…」

冬弥の両頬には一筋の涙が伝っていた。


443 :Sivis pacem parabellum(3):2001/06/03(日) 02:13
「そうですね…」
 少年は少し考えてから、
「わかりました。一緒に高槻のところへ行きましょう。
 でも、それでもまだ人数は少ないと思います。
 え〜っと、虻丸さんでしたっけ?」
「蝉丸だ!」
 ちょっと顔を引きつらせながらそう答える蝉丸の隣で月代が笑いをこらえていた。
「そうそう蝉丸さん。あなたが支給された武器ってなんですか?」
 苦笑いしながら少年がそう尋ねた。
「この『ぱそこん』と言うものと途中で拾った日本刀だ」
「そちらの女性の方は?」
「…ぉ…ん」
 ぼそぼそと月代が呟く
「え? なんですか?」
「だから、このお面だよ…」
「……………」
 少年は絶句し、その後に
「不憫ですね…」
 と、ポツリと呟いた。
 月代はまたお面に手を当ていじけていた。

「どうやら武器には当たり外れがあるらしいな」
「みたいですね」
「で、君の武器は?」
「これです」
 と言って、すっと一冊の本をとりだした。
「(・∀・)何それ? 辞書? 角で殴ったらいたそうだね?」
 さっきまでいじけていた月代が身を乗り出してくる。
「偽典です」
 少年が微笑を浮かべながらそう答えた。
「はずれ…か?」
「そうですね、他の人がもらっても、きっと喜ばないでしょうね」
「(・∀・)君は嬉しいの?」
「ええ、僕の友の形見とでも言うべきものですから…」
 その本を見つめ少年はゆっくり微笑んだ。
「そうか…」
 蝉丸が重く沈んだ声でそう答え、そしてまた、しんっと静まり返った。

444 :そして一つの決断〜終劇〜4:2001/06/03(日) 02:13
由綺は夢を見ていた。あれはもうだいぶ昔のこと。由綺も冬弥も、そしてはるかも
彰もみんな制服を着ていた。

初めて冬弥と顔を合わせたあのころ。
初めて冬弥と話をしたあのころ。
なんとなく冬弥を意識し始めたあのころ。
自分の冬弥に対する気持ちに気付いたあのころ。
冬弥から告白されて付き合い始めたあのころ。
まだ手をつなぐのも気恥ずかしかったあのころ。
はるかにからかわれ、二人して顔をまっ赤にして俯いていたあのころ。
毎日他愛もない話をするという事が、楽しかったあのころ。
二人きりでいるという事だけで、どきどきしていたあのころ。
まだ由綺が芸能界に入る前で、逢いたいと思えばいつでも顔を見ることの出来たあのころ。
逢いたくても逢うことの出来ない辛さなんて考えたこともなかったあのころ。
世界のすべてが私達に味方していると、本気で信じていたあのころ。

大学生になって、幼い頃からの夢だった芸能界に入った。
冬弥との関係は初々しかった高校生の頃よりも、何歩も先へ進むことが出来たが、
あのころの様に自由に逢うことはもう叶わず、由綺にとって冬弥との関係と
言うことだけで考えると、辛いことの方が多かった。
本来、あまり強くなかった由綺ではあったが、自分の好きで始めた仕事に関して
弱音を吐く事はなかった。
だけど由綺はいつも思っていた。あのころに戻りたいと。
しかしそれは叶わぬ夢であった。そのことが分かっていたからこそ、由綺は自分の
夢の中でだけ、あのころの夢を見続け、自分の夢の中でだけ、冬弥を独り占め
していたのだ。
だが自分や冬弥が殺されてしまうかもしれないと言う、あまりにも過酷な現実に直視
したとき、その過酷な現実と、自分の幸せな夢とが乖離し、由綺は壊れてしまった。


445 :Sivisの人:2001/06/03(日) 02:15
うぐぅ…割り込みしまくった…

446 :そして一つの決断〜終劇〜5:2001/06/03(日) 02:16
由綺は息苦しさから目が覚めた。目を開くと、眼前に冬弥の顔が写った。よく見ると
目を瞑り、両頬に涙が伝っているのがわかった。
だが由綺は今、目の前で自分の身に何が起こっているのかを認識出来ないでいた。
由綺は視線を少し下に落とす。
冬弥の両腕が自分の首にかかっているのが見えた。
そこで由綺はやっと自分の身に起きている事のすべて―冬弥が自分を殺そうと
している現実―を理解した。

「やめて」

その叫びは声にならなかった。由綺の意識が薄れだす。

「ごめん、由綺。俺もすぐそっちに行くからな。ごめんな。ごめんな。……」

薄れゆく意識なのかで、由綺は冬弥の最後の声を聞いた。そして由綺は壊れていた
頃のすべて、―自分が人を殺めてしまった事、冬弥が自分の代わりに人を殺めて
しまった事―の記憶を思い出した。

「ここに来てまで冬弥君には、迷惑をかけっぱなしだったね」

由綺は抵抗しなかった。
冬弥の涙が由綺の顔を濡らす。

「冬弥君。ごめんね」

由綺は声に出して言ったつもりであったが、その言葉は声にならなかった。

「もう一度、あのころに戻れたらいいのにね」

最後に由綺の頭の中に制服姿の自分と冬弥の姿が目に浮かんだ。


447 :そして一つの決断〜終劇〜6:2001/06/03(日) 02:18
どうしてこんな風になったんだろう。


息を引き取った由綺を見て、何度となくその言葉が頭をよぎる。
由綺のライバルでもある綺麗だけど可愛い女の子の顔。
由綺のプロデューサーで、厳しさと強さを併せ持った大人の男の顔。
普通の人とは違った形の愛で、由綺を包み込んでくれたマネージャーの顔。
ちょっと頼りないけど、いつも一緒にいてくれた親友の顔。
男女という枠を超越した、一風変わった親友だった女の子の顔。
誰よりも優しく、誰からも慕われていた先輩の顔。
子供だと思っていたけれど、既に自分より強い心を持っていた女の子の顔。
冬弥の頭の中に次々に浮かんでは、消えていった。
最後に由綺の、あの頃の屈託のない笑顔が浮かんで、そして消えた。
冬弥は弥生から預かった44マグナムを自分のこめかみに当てた。迷いは全くなかった。

「由綺、俺も今からおまえの所に行くよ」

その直後、あたりに一発の銃声がこだました。


【076藤井冬弥・097森川由綺死亡・残り42人】


448 :Sivisの人:2001/06/03(日) 02:19
終りました?
なら続きを書き込んでいいですか?

449 :そして〜の人:2001/06/03(日) 02:21
長々と書きこんでしまいすみませんでした。
それとSivis〜のかた。こちらが長い間書きこみ続けてしまったせいで、
こんな事になってしまって申し訳ありませんでした。

450 :Sivisの人:2001/06/03(日) 02:23
>そしての〜人
いや、自分が1回書き込んだときに気付くべきでした…
すいません。

451 :Sivis pacem parabellum(4):2001/06/03(日) 02:24
「(・∀・)で、どうするの? 仲間を見つけに行くの? それとも3人で攻め込むの?」
 同じように、また月代がその重い沈黙を破壊した。
「そうでしたね。話が逸れてしまいましたね」
「そうだな…」
 蝉丸の声も元の調子を取り戻していた。
「で、その基地のことですが、あなた達は引き続き仲間を探してはもらえませんか?
 武器に関してもまだ不安な要素がありますし…」
「君はどうする気なんだ?」
 少年はちょっと困った表情をして、
「場所を教えてください。偵察に行こうと思います」
 蝉丸は何も言わずにそうか…とだけ呟いた。


 そして場所を簡潔に教えると、少年は今から行ってみると言った。
「性急すぎやしないか?もう、陽は落ちたぞ」
「忍び込むならやっぱり深夜でしょ?」
 確かに少年の言うことは一理あった。隠密行動は基本的に夜に行うものである。
「しかし、俺たちが仲間を見つけて戻ってくるまでにはかなり時間がかかるぞ」
「その分、中の状況をばっちり把握しておきますよ」
「(・∀・)無茶しないでね」
 そのやり取りを今まで黙ってみていた月代が多分(w悲しそうな顔をしていた。
「大丈夫ですよ。あ、そうだ! これを渡しておきます」
 そう言って、かばんの中から一丁の銃を取り出し、蝉丸に渡す。
「ベレッタM92Fか…こんなものまで持っていたのか」
 その銃を蝉丸は見つめていた。
「それは、途中で出会った人が僕に渡してくれたものです。
 こうすれば、無茶しようが無いでしょ?それに、あなた達を守る武器になる」
 少年はくすりと笑って見せた。
「確かに、そうかも知れんが君のほうが危険なんだぞ?」
「いえ、危険なのはあなた達も一緒ですよ。
 もし、仲間にしようと話しかけた人が殺人鬼になってしまっていたら?
 ………蝉丸さん。絶対に月代さんを守れますか?」
「……………」

452 :Sivis pacem parabellum(5):2001/06/03(日) 02:25
 蝉丸は何もいえなかった。絶対に守ると誓った月代だが今の装備では心もとないのは確かであった。
「それに、僕は少しでもヤバイと思ったら逃げればいいだけですから」
 少年はニコニコ微笑んでいた。
「しかし、腹の中の爆弾のこともある…」
「それも多分大丈夫です。主催者は僕たちに死んでほしいんじゃなくて、
 殺し合いをして欲しいんでしょうからね」
 そこまで言われて、蝉丸もようやく納得した。
「本当にくれぐれも無茶をするんじゃないぞ!」
「(・∀・)絶対だよ!」
 月代が念を押した。
「わかってますって」
 そう言って、少年は立ち上がった。

「あ、蝉丸さん」
「なんだ?」
「蝉丸さんならその銃に使われている弾丸の名前わかりますよね?」
「ああ、わかるけど。9mm×19mmの通称パラベラム弾だろ?」
「そのパラベラム弾の由来って知ってます?」
「ああ」

『 Sivis pacem parabellum 』

「そういうことですよ」
 二人で同時にその言葉を言った後、少年は歩いていき、姿を消した。
「(・∀・)蝉丸、今のどういう意味?」
 月代だけが蚊帳の外で多分(w不思議な顔をしていた。
「『平和を欲するなら戦いに備えよ』って言う意味だ」
 そう言って、少年のもう見えない姿をいつまでも見つめていた。 暗闇の中を一人、少年は歩いていた。
「手を汚すのも、傷つくのも僕一人でいい…」
 少年はそう呟き、偽典を握り締めていた。【ベレッタM92F 少年から蝉丸へ】

453 :Sivisの人:2001/06/03(日) 02:27
ぐはっ!
最後改行ミスってる…
2行以上って空けれないのか?

 暗闇の中を一人、少年は歩いていた。
「手を汚すのも、傷つくのも僕一人でいい…」
 少年はそう呟き、偽典を握り締めていた。

【ベレッタM92F 少年から蝉丸へ】

こんな感じでお願いします。

454 :真空(1):2001/06/03(日) 05:37
「…そう」
伏目がちに、ささやかに。
渡せませんか、と呟いて。
秋子さんはわたし達の意志を聞き流す。
ああ、このひとは自分の運命を切り開く事を放棄してしまったのだ、と。
その時、理解した。

-----こころの、隙間から

「ええー、だめだよー。
 お母さんは、あゆちゃんを連れて来るんだよ?」
名雪ちゃんが事も無げに言う。
お菓子をねだる子供よりも、当然のように。
世界の主として、彼女は要求する。
あゆちゃんが、眉をひそめる。

-----拡がった綻び。

じりじりと、時計回りに全員が移動する。
火にかけたままの鉄板を乗せた実習台を挟んで対峙する。
どこからか銃声が聞こえる。
それはきっと、校舎内のどこかで発した音なのだろう。
けれど、遠くに。
ひどく、遠くに聞こえた。



455 :真空(2):2001/06/03(日) 05:38
-----失われた、諸々が

「秋子さん」
今、話さなければ。今、止められなければ。
誰も無事ではいられない。
そう危惧していた。
動き始めてしまったなら。留まれなかったなら。
わたしは、この人を救えない。
そう確信していた。

-----消えゆく、暁には。

「千鶴さん」
わたしの言葉を止めるように秋子さんが首を振る。
「たとえ世界を敵に回しても、名雪のために私は在る。
 前にも、言いましたね」
そうして、ここまで来てしまった。
それでも変わらず、歩みを止めず。
このひとは、ここまで来てしまった。

-----一体何が、残るのだろう。

「問答、無用です」
梓が小さく息を飲む。
あゆちゃんがくすん、と鼻を鳴らす。
わたしと秋子さんが溜息を漏らす。
そして名雪ちゃんは、笑っている。

-----それは

秋子さんがひゅん、と唸りをあげて鉈を構える。
梓が棒を両手に腰を落とす。
最後に、わたしが。
歩幅を広げて、爪を開く。
ぶつかる視線のその間に頼りなく揺れる炎が
ふと小さくなる。
今にも消えてしまいそうな、小さな炎になって。
確かに一瞬、消えていた。

-----「真空」だ。



456 :真空(3):2001/06/03(日) 05:39

だだん、と大きな踏み込み音を鳴らして、秋子さんとわたしは調理台の上に登る。
互いに重心を崩さぬ速い一撃を交わす。
ひゅひゅん、と遅れて風が泣き、わたしは屈んで、秋子さんは後ろに避ける。

-----空気が、割れる。

続けて梓が棒で両足を払うが、側転しながらかわした秋子さんが片腕で身を
支え、鉈でわたしの脚を薙いでくる。
軽く前足を上げてこれを外し、秋子さんの立ち直り際を狙って跳ぶ。
梓が棒を床につき台上に登る。

-----風が、遅れて吹いてくる。

鎖骨を狙って爪を縦に振るが、秋子さんが肘を軸に左手を外に回すことで軽く
はずされる。
重心を流され左半身を晒したわたしに振り上げられる鉈。
梓が大きく踏み込んで肩を並べ、がしんと棒で抑える。
流れを止めず、わたしは時計回りに回転しながら台に手をつき右脚を繰り出し
膝を狙う。
梓は抑えた鉈を中心に棒を反転させて即頭部を狙う。
秋子さんは頭を下げ回転し、同時にわたしの蹴りを外した左脚を振り回して
梓を調理台から吹き飛ばす。


457 :真空(4):2001/06/03(日) 05:39

-----裂けた大気の、泣き声は

その瞬間。
蹴りの命中で僅かに速度を落とした秋子さんに対し、わたしは横になった体軸を
中心に回転する。
うつ伏せから仰向けになりながら右脚で彼女の軸足を蹴り上げた。
秋子さんは大きくバランスを崩し転がって台上から転落、背中を下に落ちる。
しかし休むことなく、そのまま両腕で反動をつけ立ち上がる。同時に手にはガス
ホースを掴んでいた。あゆちゃんが何か叫んでいる。
ぐい、とそれを引き台上から飛び降り追い討つわたしにガス台をぶつける。
意外な攻撃を受け、わたしは無防備に秋子さんの右に墜落した。
「お母さん、早く早くー」
名雪ちゃんの楽しげな声と重なるように。
わたしを襲う鉈の一閃が、横薙ぎに迫っていた。

-----短く鋭い刃物の音。

「千鶴姉!」
最初に調理台から転落していた梓が起き上がりながら棒を振り、完全に重心を
泳がせていたわたしを転倒させる。
そのとき、笑顔が見えた気がした。
名雪ちゃんの笑顔が、見えた気がした。

-----それは

ズドン!
銃声にも負けぬ巨大な衝撃が壁面を震わせる。
教室ごと、いや世界が震えたようにさえ、感じられたが。
にわかに静寂が訪れる。
何も動かず。
誰も話さず。
無音の空間が拡がっていた。

-----「真空」だ。



458 :真空(5):2001/06/03(日) 05:40

ぱたたっ
生暖かい何かがわたしの頭に降り注いだ。
始めは、涙ののように。
やがて、滝のように。
誰も動かなかった。
いや、動けなかったというべきだ。
視界が赤い。
わたしは、かつてこの色で世界を見ていた。
血の、色だ。

のろのろと立ち上がるわたしの目前に。
ひとつの悲劇があった。

「な…ゆき…」
秋子さんが、震える手を鉈から離す。
それでも鉈は落ちなかった。

鉈は。
鉈は、壁に突き立っていた。
鉈は、名雪ちゃんの笑顔を。
鉈は、名雪ちゃんの笑顔を真一文字に叩き割り、壁に貼り付けていた。


459 :真空(6):2001/06/03(日) 05:43

「ああああああああああああ!!」
秋子さんが崩れ落ちる。
もはや何も見えていないのだろう。
何も聞こえていないのだろう。
わたしに背を向けて、壁に祈るように泣いていた。

わたしは爪を振り上げた。
振り上げたけれど。
けれど、振り下ろす事ができなかった。

「千鶴姉…」
梓が呼んでいる。
みんなが、わたしを待っているはずだ。
残酷だけど。
残酷だけど、振り下ろす事ができなかった。

-----それは

二人を残し実習室を去るとき。
あゆちゃんが秋子さんを見つめて、ぽつりと呟いた。
「どう、するの?」
梓が答える。
「どうにも…ならないよ…」
そうだ。
もう、どうにもならない。
秋子さんには、何も残っていないのだから。

-----それは、「真空」。【091水瀬名雪 死亡】

460 :名無したちの挽歌:2001/06/03(日) 05:45
…「真空」、です。

残酷ですが、こういう死亡例も無かったと思いますので。
最後改行ミスったのは…呪いでしょうか(というか無効になったんです(涙)。

461 :赤く、黒く。(1/3):2001/06/03(日) 09:10
 秋子は、千鶴と梓が去ったあとも、ずっとその場に崩れ落ちたままだった。
 血に塗れ、涙に暮れ、鼻筋を境に上下に分たれた娘の亡骸を前に脱力した彼女は、もは
や抜け殻同然だった。

 校舎の中は未だ、多くの喧騒に満ちている。それは断続したり、時折響いたりしていた
が、拳銃の音も何かが壁を穿つ音も、彼女の耳には届いていなかった。見据える視線の先
にあるのは、壁に突き刺さった鉈に貼り付いた、実の娘だったものの”欠片”。
 血に塗れていない眉が緩やかな八の字のカーブを描き、血に塗れた眼球が、まるで眼前
の母に微笑みかけるように細く開かれている。

 部屋の壁が何かの振動で、細く、断続的に揺れる。誰かが、何処かで戦っているのかも
知れない。
 ずず、ずず、と、振動の度に鉈は揺れ、深く突き刺さったそれは少しずつ少しずつ、斜
めにずり落ちていく。
 ぼと、と鈍い音がして、”欠片”は床に落ちた。

「ああ。ああああああああ。ああ」

 秋子はその”欠片”を拾うために立ち上がろうとするが、身体が自由に動かない。手も
足も何もかも、まるで粘土の海を掻き分けて進んでいるかのように、鈍重で、憂鬱で。
 秋子は気がつけば全身で動くかのように、床をのそのそと這って――


462 :赤く、黒く。(2/3):2001/06/03(日) 09:11
 しょうがないわね。名雪ったら、もう。

 ――いや、気付いていないのだろう。もう、何もかも。
 秋子は破片にようやく辿り着くと、いとおしそうに頬にすり寄せた。色の無い脳漿が流
れ落ち、少し赤みがかった灰色のモノが彼女の腕を油で濡らし、もう黒く変色した血に塗
れ、何度も何度も、すり寄せる。
 そのうち、よろよろと立ち上がると、名雪の亡骸に近づいた。おぼつかない足取りで壁
を沿うように、振動に幾度か弾かれながら、彼女は辿り着いた。

 ほら、名雪。何時もの通り笑って。微笑んでちょうだい。お母さん、名雪の笑顔があれ
ば、他に何もいらないのよ。うふふ。

 鉈で千切れた髪を掻き集める。零れた血を、脳を、懸命に掻き集める。亡骸の上に”欠
片”を据え、集めた髪をその上に垂らす。

 ほら。これで何時もどおり。とても可愛いわ。あら?

 血で塗れた顔を拭う。血に塗れた服を脱がせる。洗うように、ごしごしと自分の服で拭
う。その度に、赤黒い色はさらに浸透していく。脱がしても拭っても、その色が落ちるこ
とはない。
 秋子の来ている物が赤黒く染まりきってしまうまで、それは続けられた。

463 :赤く、黒く。(3/3):2001/06/03(日) 09:12
 あら、あら、あら。どうしてかしら。もう、名雪は仕方ないわね。何時まで経っても子
供なんだから。こんなに汚して。そう何時まで経っても子供なのよね。子供で居てね。お
母さんの子供で居てね。

 身繕いをするように、何度も何度も、髪をとかす。とかす度に、ぶちぶちと毛髪が頭皮
ごと削げ落ちる。その破片はぼたぼたと、床を濡らす。

 そうすれば、ずぅっと守ってあげる。何でも望みを叶えてあげる。祐一くんは名雪にあ
げるわ。大丈夫。彼もきっと名雪のことが大好きなはずよ。大丈夫。邪魔する子は殺せば
いいんだもの。何があっても、名雪に嫌な思いはさせないわ。だって、私は名雪が大好き
なんだもの。

 亡骸と毛髪と”欠片”と。秋子はずっと握り締めたまま、一人で喋りつづけていた。

「さあ、何をしましょうかしら。ねぇ、名雪。あなた、はどうしたいのかしら……?」

 秋子はすっかり乳白色になった”欠片”だけを握り締め、ずっと一人で――

「お母さん。わたし、あゆちゃんを殺したいよ。それでね、祐一と一緒になるの。まあ、
それは大変ね。うん。でもね、そうしないと、祐一はわたしのとこに戻ってきてくれな
いの。そうね。殺しましょう。うん! それでね、わたし、祐一と結婚するの。まあ、
それはおめでたいわ。お母さんは反対しないよね。ええ、もちろん了承、よ。えへへ。
ずっと、何時までもお母さんとわたしと祐一の三人で一緒にいるの。いいよね? ええ、
もちろんよ。お母さんはわたしの味方だよね。そうよ。お母さんは名雪の味方だもの。
どんな願いだって叶えてくれるよね? ええ、どんな願いだって叶えてあげるわ」

 ――喋り続けていた。

464 :名無しさんだよもん:2001/06/03(日) 09:14
 秋子さんを、狂ったまま放置するか、マーダー化するかは、おまかせします。

 一応、どちらでも可能なようには、したつもりです。

 一人くらい、壊れたままほったらかしってーのも、面白いかなとか思うんですが。

465 :名無しさんだよもん:2001/06/03(日) 09:28
>>460
アンタ挽歌というより黒ミサの賛美歌だよ・・・

466 :名無しさんだよもん:2001/06/03(日) 10:39
aaaaaaaaaague

467 :あの時から(1/2):2001/06/03(日) 11:40
人が死んでいるのを間近で見てすごくびっくりしたのに……心の奥は割と平静だった。
だって、昔嗅いだ血の匂いを、体が覚えているから。
たぶん私も――狂ってるんだと思う。

楓お姉ちゃんはどうなんだろう?
私と同じ?それとも違うの?
同じように前世を知る者として。

「誰が来るか分からないから気をつけなきゃね……」
七瀬お姉ちゃんが、私を後ろから軽く抱いてくれる。
ダメだよ、汚れた私なんかにそんなことしたら。

千鶴お姉ちゃんは何も言わなかった。昨日の事を。
お姉ちゃんは優しいから。だけど……

――本当は、私の方が偽善者なんだよね…

あの時の声。私の言葉。私の心の中の言葉。
昔の私は自分で手を汚さない非道な狩猟者だった。
大切な人の為と銘うって、大勢の同朋をこの手で死に導いたんだ。
そして、今の私の心の中にも、一匹の獣が住んでいる。

468 :あの時から(2/2):2001/06/03(日) 11:41
――ソシテマタ、ツライ、ヘイワナヒビヲ、ジローエモント、スゴスノ…

私はまた、人を殺すの?
このまま耕一お兄ちゃん達と一緒にいていいの?
もし大切な人が死んでしまったら…私は私でいられるの?

この島の、そして学校に立ちこめる血の匂いが…私の心の隙間を埋めていく気がして…とても怖い。
そして心が満たされた時、私は変わってしまうかもしれない。
すべてを狩る『狩猟者』に。

――千鶴お姉ちゃん、今の私から逃げて!

あれもまた私の本当の心だから。
誰にも言えないけど、昨日、あの時あの場所からずっと私は戦っている。
心の中のもう一人の自分――狩猟者と。
知らない人達を…そして大切な人達を、狩ってしまわないように。

469 :あの時から作者:2001/06/03(日) 11:44
千鶴と初音、割と簡単に合流してしまったので、少しだけ補完。
今学校内の激闘中だからタイミングあんまよくないかも。

時間的には千鶴が飛び出して行ってすぐ位。

470 :月夜の青年。:2001/06/03(日) 13:29
雑音とともに、同僚の声が耳に入る。
「交代の時間だから、あと少ししたら行く」
彼は、やっと休める、と小さな溜息を吐いた。
にしても、誰もやってこない。見張りをする意味なんてあるのだろうか、とも思ってしまう。
そもそもカメラが設置されているのだ、見張りがいなくても、侵入者があってもすぐに判るはずだろう。
それについての説明は、未だ貰っていなかった。
だが、大体の予測は立てていた。侵入者があった時、入り口付近で叩かなければ、色々面倒な事になる。
もし内部に入られたとしても、体内爆弾を爆発させればいい、と思うかも知れない。
だが、それは実は、あまりに危険なのだ。
――爆弾の性質、それは、他者を巻き込む力がある、という事、
そして……
少し頭の働く参加者ならば、ここに外部との通信が可能な装置がある事くらい気付くかとも思ったが、
気付いたからと言ってマシンガンを持った相手に特攻を仕掛けようと言うのも愚かな事ではある。

気になるのは、
――自分たちの持たされた武器よりも、強力な武器が配布されている、という、そんな噂。

暗闇で、数寸先も見えない。参加者が反旗を翻そうと現れたとして、果たして自分はそれに対応できるか。
対して、この建物の明るさを見ればいい。
目立つほど、ではないが、それでも標的にするには充分な暗さだ――
赤外線ゴーグルでも渡されていれば話は別だったのだろうが、何故かそのようなものは配布されなかった。
「遅れた、大森」
という同僚の声が聞こえた。溜息を吐いて振り返った瞬間。


471 :月夜の青年。:2001/06/03(日) 13:29
パァンッ!

それは、拳銃の発砲音に聞こえた。
次の瞬間、カァン、と、建物の壁に何かが当たる音。
間違いない、あれは拳銃の音だ。こちらを狙ってきている。
――敵襲だ!
大森はマシンガンを構え、音が聞こえた方向にぱらららら、と発射する。
手応えはない。この暗闇では、敵との距離がどの程度であるかも判らぬ。
襲ってくるなら夜だとは判っていたが。
この戦いが始まって以来、最初の反逆者が現れた――。
「三沢、俺がちょっと見てくるから、ここ頼む」
そう云って、彼は駆け出した。
「不用意な真似はするなよ、大森っ」

マシンガンの引き金を引きながら、敵との距離を詰めていく。
拳銃ごときでマシンガンに、しかもある程度訓練された兵士に敵うはずもない、
と思うかも知れないが、大森は、襲撃者だけでなく、暗闇とも戦わなければならない。
敵との距離がまるで判らないのだから。
しかも、あの茂みの中に敵はいる。大森といえども苦戦せねばなるまい。
まあ、防弾チョッキは全員に支給されている。多分大丈夫だ。
そう思いながら、三沢は入り口の前でマシンガンを構えていたが、少し不安になってくる。
溜息を吐きながら、自分も大森の援護に行くべきだろうか、と考えた。

にしても――不思議だ。銃声は一発のみ。
襲撃をかけるなら、腹を決めて一気に攻め上がってくるはずだ。
一発だけ撃って、そのまま逃げるというのか? その行動に何の意味がある?


472 :月夜の青年。:2001/06/03(日) 13:30
何かが、横から駆けてきていた音に気付かなかったのは、敵がそちら側にいる筈がない、
という、そんな、思い込みからだった。

気付いた瞬間、三沢が真横からの来訪者に気付き、振り返った瞬間、
前頭部を、ガァン、と、何か重いもので打たれた。
交代した瞬間で、ヘルメットもかぶっていなかった自分にはその衝撃は大きすぎた。
一瞬にして意識を持っていかれる。だが、目を閉じるわけにはいかん――
二撃目が入った瞬間、その義務意識さえも持っていかれた。

「――なんだ?」
大森が座り込み、そこで見つけたものは、――参加者全員に支給された、バックだった。
持ち手の所には紐が括り付けられていた。長い長い紐。
鞄は異様に重い。訝しげに鞄をどけてみると、そこには破裂した紙パックがあった。

――そして、気付いた。
さっきのは銃声でもなんでもない、
膨らませた紙パックを爆発させた音!
紙パックを爆発させた音。それは、軽い音を出す拳銃に良く似た音。
子供の頃良くやった遊びだ。
飲み終わった紙パックの容器に、いっぱいに空気を詰め込み、それを思い切り踏みつける。
すると、不思議なほど大きな音がするのだ。
これは、足の代わりに、このやたら重い鞄を、木の上から落とす事で――
こんな、子供だましで――
三沢は無事か、と
振り返ると、そこには。

473 :月夜の青年。:2001/06/03(日) 13:30
――月夜。そして、月影。

「悪いね」

マシンガンを片手に持った、若い、自分と同じくらいの青年が立っていた。
見上げるとそれは月夜。なんて、強い目をする青年なのだろう。

こちらが銃を構える暇もなく、彼は手に持ったマシンガンの引き金を引いた。
防弾チョッキの上からでも、その衝撃はあまりに大きい。
生まれて初めて感じる感触。
そして、意外とあっさりと意識は途切れた。
防弾チョッキを着ていたから死にはしないが、
その衝撃に耐えられるほど、ヒトの肉体とは強く作られていない。

重い切り札入りの鞄を手に取り、七瀬彰は大きく溜息を吐いた。
マシンガンを一丁片手に、もう一丁を鞄の中に放り込む。
そして、気絶した兵士から防弾チョッキを奪い、それを着込んだ。
彼のヘルメットもかぶり、なんとかまともな戦闘は出来そうな様子になる。
これで、多少は安心の筈だ。

予想以上に上手くいった。
遠隔操作で拳銃の「音」を作りだし、別の場所から攻め上がる。
拳銃の「音」と、投石による壁への「衝撃」を作り、相手を混乱させる。
武器のない自分にはこれが精一杯だった。
頭の中では判っていたが、成功して初めて自分がひどく汗を掻いている事に気付いた。

だが、あとは――戦うだけだ。

ヒトに、引き金をあっさりと引いた自分に、少し身震いしながら。

【七瀬彰 マシンガン2丁、防弾チョッキ、ヘルメット獲得、建物内に侵入】


474 :名無しさんだよもん:2001/06/03(日) 14:20
おお! 彰パートかなりいい感じだよ。それなりにトリッキーだし。

作者さん、ガンバレー!!

475 :詠美ちゃん様VS御堂(1/3):2001/06/03(日) 15:35
(くそっ……忌々しい女だ!)
御堂は心の中で悪態をついた。
大場詠美と名乗る女に捕らえられた御堂は、後ろ手に縛られて座ったまま詠美を睨んだ。
「なによ、その顔は…ゆっとくけどわたしにさからったら
 『ムーンライトマジカルステージストライクレーザービームライフル』…だっけ?
 それが火を吹いちゃうんだから!」
「どこにも持ってねえじゃねえか、そんな武器……」
「げ、げんだいのかがくはすごいのよ!すんごくちいさいの!!」
いずれにせよ、ここで殺される気はない。
ターゲットを主催サイドに絞った御堂だったが、命が危ない状況ならば話は別だ。
場合によってはここでこの女を殺さなくてはならない。
だが、その女の武器は未知の兵器――御堂の背中から冷や汗が流れて、落ちた。

「あー、とにかく、わたしにさからわなければ悪いようにはしないわよ」
勝ち誇ったように御堂の周りをぐるりと歩く。
(くそっ!生き恥だぜ、この俺ともあろうものが……)
いっそ殺されてしまったほうがマシだとさえ思える。
御堂の手を拘束しているベルトは御堂のつけていたもの。
緩々になった麻のズボンはすでにずり落ち、その下から黄色がかったふんどしが露出していた。
「くそっ…」
「何よ…文句あるなら『ムーンライトニングスラッシュレーザービームサーベル』で
 消し炭にちゃうんだから!」
さっきと名前が違うような気がしないでもないが、御堂は外来語が苦手であったし、
もともとその武器の正確な名前すら知らない。
(…時代は変わる……か。未知の近代強力兵器…これほど恐ろしいものはねぇぜ。
 それにこの女の自信…強化兵でない俺には少々ヤバイ相手かもしれねぇ…)
御堂の強化兵として、いや、軍人としての勘がそう告げていた。
こう見えても御堂の勘はちょっとしたものだ。
肉体の強さだけでない。そうして御堂は生き残ってきたのだ。
とりあえずは御堂は女の指示に従うことにした。
「俺を…どうする気だ?」

476 :詠美ちゃん様VS御堂(2/3):2001/06/03(日) 15:36
「もちろん協力してもらうのよ。ここを…でるために」
詠美の表情がいきなり真剣なものに変わる。
「ほお…具体的には?」
「う〜ん、さしあたっては協力者がひつよーね。
 とりあえず柏木って女の人をさがそうとおもうの」
「かしわぎだぁ?」
――御堂は既に柏木家の次女、梓と交戦していた。だが、御堂はその女の名前までは知らない――
「で…どうしようてんだ?」
「……さあ……」
「なめてんのか、このガキ」
御堂から見れば詠美もあゆもただのガキだ。
「ガキって呼ばないでしたぼく!」
(したぼくってなんだ…?)
最近の流行りなのだろうか。どちらにしてもあまりいい気はしない。
「…まあいい。で、俺はどうすればいい」
「そうね…とりあえずしたぼくが三人増えたことだし…前途揚々ね」
「三人ってなんだ……」
「あんたとー…」
御堂を指差す。
「ぴこっ!」
「にゃう!」
二匹が順序良く返事した。
(お、俺がこいつらと同格か?死にたくなってきたぜ…)
「いっしょについてきてもらうわよ!……あとで…全部話すから」
詠美の表情が、今度は悲しみに彩られた。
何かを失ってしまったような、そんな深い悲しみ――
「………ちっ、わかったから手のベルトを解いてくれ…」

477 :詠美ちゃん様VS御堂(3/3):2001/06/03(日) 15:37
ようやく身軽になった御堂は、詠美の前をボディーガードさながらに歩く。
とりあえず柏木という女を捜せ…といってもアテがあるわけはなく、
ただ安全な場所へと移動しているだけなのだが。
いつ敵に出くわすとも限らない。
比較的安全な木陰へと移動する。
「とりあえずよ…武器返せ…別に危害は加えねぇからよ…」
この島での丸腰は危険だ。すでに詠美から殺気を感じられないと判断した御堂は
自分なりに穏やかにそう言った。
「あんた…怖いからイヤ」
「おめぇには『むーんらいだーなんちゃら』って武器があんだろ?」
「そ、そうよ。『ムーンライダーワンダフルグレイトレーザー』があれば無敵だもん!
 か、返せばいいんでしょ…ゆっ、ゆっとくけど、逆らったら『ムーンライダーなんちゃら』が…」
「つーかよ、分かりやすく省略してくれ、その武器名」
「う、うん、ぽ…『ポチ』…かな?」
「ぽちだぁ?」
「な、なによ、わかりやすいでしょ!あたまわるいあんたのためにつけてやったんだから
 かんしゃしてよね!」
(このガキ……)
「ぴっこり」
「にゃうにゃう♪」
まあいい、と御堂は思えた。
(忌々しいが、このガキのもつ『ポチ』とこの銃があれば対等に戦えるかもしれねぇな。
 まあ、その前に胸の爆弾を何とかしなきゃならねぇが……
 少なくともこのガキ…『しすぷり』って娯楽劇の話しかしなかった
 戦闘力皆無のあのガキよりはマシだろう…)

御堂と詠美の二人は、とりあえず脱出へ向けて一歩近づいた……かもしれない。

 御堂 【デザートイーグル再入手 捕虜モード解除】

478 :詠美ちゃん様VS御堂(おまけ):2001/06/03(日) 15:38
「ねえ、あんたってさ…そのバインダー…」
詠美が御堂のバックに入っているバインダーを指差す。
「このバインダーがどうかしたか?」
「桜井あさひ…好きなの?」
桜井あさひ――知らない名前だ。このバインダーや、中のカードに描かれている女のことだろうか。
「…とりあえず役に立ちそうだったからな」
結構丈夫な厚紙だ。しかも分厚いときている。
銃弾に対しては心許ないが、刃物の類相手なら充分な盾になるだろう。
「ふーん…『あさひちゃんマニア』なんだね……」
「?……まあ、戦う時が来たら服の下にでも括り付けておくのが効果的だな」
そうしておけば胸を狙われても致命傷になる確率はグンとさがるハズだ。
「そ、そうなんだ(汗………お、おまもりみたいなもの?」
「…そうとも言えねぇこたあねえがな……」
身を守る――という意味ではお守りともいえないこともない。
まあ、御堂は神頼みなどする気も起こらないが。
「本当はずっと括り付けておきてぇが動きにくくてな…」
「そ、そおなんだ…あはは……が、がんばってね…おーえんしてるからさ(汗」
「???」

479 :名無しさんだよもん:2001/06/03(日) 16:07
御堂には、もう少し賢く振る舞って欲しいと思いつつ、
……まあ面白いからイイや。

あとは、生身のあさひちゃんにあったときが見物かも、とか思ったりして。

480 :名無しさんだよもん:2001/06/03(日) 16:14
蝉丸は半数死んでよーやく動きはじめたが御堂はいつまで遊んでるんだ(w

481 :111:2001/06/03(日) 18:32
チョい実験。


c…¢蜿苺vか



482 :駄レスと思ったら、111氏じゃないか……:2001/06/03(日) 18:55
文字化け実験? だったら駄スレでやればいいのに。無駄は嫌いなんだ。無駄無駄。

483 :111:2001/06/03(日) 19:00
ごめんごめんw
実験(と言うか調査)と言うのはそれじゃなくてね、行間のことなんだよ。
一定の行数あけると改行が無効化されて、せっかく演出のためにあけた空白が
なくなってしまうことが良くあってさ……。
ちなみに文字化けしてたんだ……。
打ったときは普通だったんでどうしようもなかったさ(滝汗
どうしたかちゅ〜しゃ……(涙


484 :名無しさんだよもん:2001/06/03(日) 20:22
どっちにしてもここで試すような事じゃねえよな。
駄スレはあんなに有るのに。

485 :111:2001/06/03(日) 21:10
>>484
うう、ごめん、以後気をつけます。

じゃとりあえず書いてきます。
多分連続カキコで止まると思うので、間に時間挟みますが。

486 :111@偽りの平穏1:2001/06/03(日) 21:15
>>425−427の直接の続きとなります。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
ジープを降りてもう数時間が経つ。
今のところは誰かに会うわけでもなく、
また襲われるわけでもなく。
とりあえず、うたかたの平穏を享受していた。

しかしそれも、今日一日を通して振り返ってみれば、
激しすぎる銃撃戦と硝煙の狭間で燻る、
ほんのわずかな空白でしかないことは明白だった。

陽もすっかり暮れた。
夜は十分に深い。
第五回の放送は流れたが、
とりあえず新たな死人の中に、自分の知り合いの名前を見つけることは無かった。
……それでも、順調に人が死んでいっていることになんら変わりは無かったが。
下卑た笑いを浮かべながら、自分たちを見下している高槻の姿が容易に想像できた。
くそっ。
智子は心の中で毒づいた。
いつか一泡吹かせてやるからなぁ、
そんな闘志が再びみなぎってきていた。

死亡者リストに知り合いの名前が上がらなかったことで、
智子は彼らのことを思い出していた。
「あかりはうまくやってんやろか……」
思わず智子はそう呟いていた。
わずかな心配が、心の中での呟きを口に出させてしまったのだ。
海岸での様子を見るに、もうあの二人が離れ離れになることは無いやろ、と
たかをくくっていた。
というより、あれがあれが本来の姿だということは、
智子はもちろん普段の彼らを知っているものなら誰もが納得するところだった。
おそらく、あの二人が戦場に戻ることはもう無い。
それならば、ゲームの終了時まで穏やかに生き延びて欲しい。
藤田君からあんなセリフ聞くのも、あかりの涙を見るのも懲り懲りやわ……。
智子はそう考えていた。
現時点までの放送で、彼らの名前が上がっていないことに、ほっと安堵した。
この分なら、藤田君があかりのことを守ってくれてるんやろな。
あかりを任せておける男なんて、彼しかいないのだから。
ナイトに守られるお姫様……。
不謹慎かも知れへんけど、あこがれるシチュエーションや……。
と、そのような感じに安心していた。


487 :111@偽りの平穏2:2001/06/03(日) 21:16
だが、智子は知らなかった。
もう既に、二人がこの世にいないことを。
姫川琴音という共通の知り合い、同郷の人物により浩之が殺され、
あかりがその後を追って死んだなどと誰が予想出来ようか?
目を背けたくなるようなその事実に、
無理矢理直面させられるだろう次の放送まで、
もうそんなに時間は無かった。

「きっと大丈夫ですよ」
マルチは智子の独り言に相槌を打った。
「あの方たちほどお似合いのカップルを、私はまだ見たことがありません」
マルチは満面の笑みでそう言った。

智子は一呼吸おいたあと、マルチのほおをぐりぐりした。
「は、はうう……。変な感じです……」
こいつ、ロボットくせに……。
しかしそうする智子の表情は、マルチとなんら変わるところのない笑顔そのものだった。
しかし、そうしてる間にも事態は刻々と進行していた。
一つは智子の腕だ。
銃弾を受けて傷ついたものの、特に動かすのに支障が無かったため、
簡単な処置だけで済ませたまま現在に至っていた。
「あかんわ……。生兵法は怪我の元言うが、治療とかについても同じや……」
「どうかしましたか?」
マルチが智子に視線を向ける。
「ん、なんでもないわ」
しかし、マルチに心配をかけるわけには行かないと、傷が悪化している事実を隠していた。

そしてもう一つ。
智子の腕の傷など歯牙にもかけない巨大な危険性を秘めた”それ”が、
あとほんの少しのところにまで近づいていたことに、
智子も、マルチも、他の誰も気付いてはいなかった。

488 :111@偽りの平穏3:2001/06/03(日) 21:17
「しかしくらいなぁ……、何にもあかりになるようなものがあらへんで……。
 ……ま、当たり前か」
そう、明かりなどつけていたら、敵対者の絶好の的になってしまう。
あくまでもここが戦場であることを智子は再認識した。
「そうですねぇ」
マルチはそのセリフに相槌を打った。
「うちら、ここ数時間飲まず食わずで歩き通しやん。よう考えてみれば……」
と言ってから、智子はそのセリフの間違いに気付いた。
「うちらやない、うちだけや! あんた水分補給せんでええやん!?」
なにげにマルチをにらむ。
マルチは慌てて言った。
「わ、私だってエネルギーを補給しないと倒れちゃいますよ〜」
「……せやな。でもあんたのエネルギーって電気やん。どうやって補給するん?」
「う〜〜……、確かに充電装置は無いです……」
マルチはばつがわるそうに言った。
だが、すぐに持ち直して言った。
「あ、でもなぜかエネルギー残量はまだまだあるんですよ〜」
どのくらいや、と智子は聞いた。
「え……と、あと一日は問題なく動けるかと」
「一日か……。じゃああんたの心配はせんでもええな」
「何でですか?」
マルチは智子に問い掛けた。
それに対し智子は、まあいろいろあるんや、と言葉を濁した。
――まさか、あと一日自分が生きている保証が無いなどと、
この子に言えるわけが無かった。
「はぁ、そうなんですかー」
いろいろ考えていらっしゃるんですね〜、とマルチは手放しに感心していた。
「そうやな」
智子は自嘲気味に笑った。

489 :111@偽りの平穏4:2001/06/03(日) 21:18
「ん?」

智子は突然足を止めた。
「どうしました?」
智子の様子が変なことに気付き、マルチは智子を呼んでみた。
「……今、声がせえへんかったか?」
「……声、ですか」
「せや、声や……」
二人は改めて耳を凝らし、あたりの様子をうかがった。

「…………」

――聞こえた。
確かに、いる。
しかも複数人。
「ど、どうしましょう智子さん!?」
「しっ! 静かにするんや。まだあっちはうちらに気付いてへんみたいやからな。
 ここは様子を見るんや」
智子は、口に人差し指を当ててそう促した。
「わ、分かりました……」
マルチもそれに従うように声を潜めた。
「とりあえず脇に隠れるで。こっちにきそうやからな……。
 静かに……、静かにや……」
そして、二人は茂みに身を潜めた。

――誰か、来る。


490 :111@涙と慕情1:2001/06/03(日) 21:24
「うっ……うっ……うっ……」

まだ、涙が止まっていなかった。
第五回の定時放送は、着実に彼女の精神を脅かしていた。
玲子、彩、そして南までもが死んだ。
一度に三人もの知り合いの死が言い渡された。

痛かった。
苦しかった。
もう自分だけしかいないんじゃないか?
たった一人……独りぼっちになってしまったのではないか?
そんな思いに囚われそうだった。

「……っく、……ひっく」
しゃくりあげる。
まだ、まだ涙は枯れていなかった。
どれだけ人は涙を流すことが出来るのだろう……。

――桜井あさひは、絶望の淵に瀕していた。

「なあ……」
ずっと引きつり泣いていたあさひに、何事か晴子は呼びかけた。

――彼女はいたずらにあさひを慰めるような真似をしなかった。
それは、そんなものが単なる偽善でしかないことを知っていたから。
彼女の気持ちは彼女にしか分からないのだから。
だったら好きなだけ泣かせてやろう。
そして、泣き止んだときにもう一度立って歩けるように、
そのときに手を貸してやろう。
そう心に思っていた。
観鈴も、そんな母の思いに気付いたのか、
あさひをそっとしておいた――。

あさひは、涙目ではあったがその視線を晴子に向けた。

491 :111@涙と慕情2:2001/06/03(日) 21:28
「観鈴な、あの子ずっと友達いてへんかったんや」
……急に何を話し出すんだろう?
あさひはいぶかしんだ。
「同い年ぐらいの子と仲良くなりかけるんやけどな、そこまででな。
 ダメなんや、あの子。
 そーいうんを全部拒否してまうんや。
 その上、自分でもそれをおさえられへん……」

あさひは黙って晴子の話を聞いた。
何か大事な話をしていると言うことは明白だったから。
観鈴は歩いている順番の一番後列だったため、丁度その晴子の話は聞こえていなかった。
「そいでもってうちがこんなんやろ?
 だからあの子、ずっと一人だったんや。
 だけどな。
 あの子、つらければつらいほど笑うんや。
 同じくらい笑うんよ。
 一番さびしくてつらいはずの自分がやで?
 ……なんか、うちな。
 それ、思い出すと胸が痛むねん。
 涙が出そうになるねん。
 なんや、偽善者くそーて、一番嫌いなことのはずやったのに……」

あさひは、我を忘れたように――それでも時々しゃくりあげてはいるが――晴子の話に
聞き入っている。

「分かる……、分かるんよ。
 一人では絶対に無理なんや。何するにしてもな。
 あの子が無理してるのなんてみえみえなんや。
 もう……、それが積もり積もって限界まで来てるはずやったんや。
 でもな、あの子、そういうんが溜まれば溜まるほど、
 つらければつらいほど、明るく振舞ったんや。
 自分なりの”世界”との共存の仕方みたいなもんを模索し始めたんや。
 だけど……、さっき言った通りや。
 一人ではやっぱりダメやった……。

 ――そんなときな、なんや変な旅人が現れたんや」

涙を拭い、呼吸を整え、あさひは再び晴子の話に集中する。

492 :111@涙と慕情3:2001/06/03(日) 21:30
「変な奴やねん。
 それも飛びきり変な奴やった……。
 なんつーか、ほとんど行き倒れと変わりあらへんかったんやけどな。
 ボロい人形持っとってな、それで人形劇やって金稼いで生活しとったんや」

「……人形劇、ですか」

「せや。子供相手に意地汚いっちゅ―か、ヤクザな商売やってるっちゅーか……、
 ま、とにかくそうやった。
 でもな、そいつ一つ凄いことが出来たんや。
 それはな、手ぇも触れずに何も道具も使わずに人形動かすことやった」

「何も……。す、すごいんですね。手品師さんだったんですか」

「ちゃう。
 そいつはほんまにそういう”力”を持ってたんや。
 あるやろ?
 超能力とかいう奴。
 ほとんど眉唾だと思ってたんが、マジもんに出会ってまうとは思っても
 見いひんかったわ」

コロコロと晴子は笑った。

「でもな、そいつそれ以外に能無くてな。
 子供にそないなもん見せてもわけ分からんちゅーの、わかっとらんかったみたいやの。
 ほとんど子供にとってみれば、そういうんも手品も一緒やろ?
 うちらみたいに、ちょう、そういうんが分かる人間に見せないと意味無い言うんが。
 んでな、手ぇ使わんと人形動かしても、内容おもろないねん。
 子供らにぜんぜうけへんかったんや」

クックッと、晴子は笑いをかみ殺した。
それを見たあさひも、なんだかつられて笑いそうだった。

「でな、何の”縁”か、あいつ、うちに居候することになってな。
 何日間か共同生活しとったんよ。
 あいつ、ひときわ変な奴でご近所にも知れわたっとった。
 けどな――」

一呼吸置いて、晴子は言った。

493 :111@涙と慕情4:2001/06/03(日) 21:31
「初めて、観鈴の友達になってくれたんや」

「え……」

あさひは思わずそう漏らしていた。

「観鈴もずいぶん懐いとっておったわ。
 でも例外なくいつものあれが来て――でも、今度はそこで終わらんかった。
 あいつ、側にいてやってくれたんよ、観鈴の。
 たとえ何ができるか分からんとも……」

あさひは、たまらなく晴子の口調が優しくなっていることを感じていた。

「なんや、……何が言いたかったんだかうちもよう分からんようになってきたわ。
 ……ただな、側に誰かいるだけでなんか安心できてまう。
 人間って、そんなもんなんや……」

「……ハイ」

ありきたりの慰めでも、またその同情でもない。
だが心の奥底の部分であさひは、晴子が何を言いたかったのかを理解できたような気がしていた。
――涙は、もう止まっていた。

「あう〜っ、いい話ですぅ〜〜」

「!?」

歩いていた面々――晴子、あさひ、観鈴――は、
いっせいにその声が聞こえてきた方に視線を向けた。



494 :111@カウント・ダウン1:2001/06/03(日) 21:37
ほんの数分前のことだった――。


「あ、智子さん聞いてください。
 わたし、センサーの故障が治ったんですよ〜」
「そらよかったな。で、どういうことやねん?」
「はい! つまりですね、普通の人間の方と比べて4〜10倍の範囲の音声を
 拾い聞くことが出来ます!」
「なんや、センサーって耳のことかいな……。
 でもそれええな、ちょっと今来る連中の会話聞いたれ。
 もし内容から判断してまずい思ったら即逃げるで!」
「分かりました!」


「……ったくもう。この子、余計なところが人間くさいんですわ」
「はー。これがロボット言うんやからなぁ……。
 世の中進歩したもんやな」
「ほんまですわ。
 しかもこの子、人間以上にドンくさくてかないませんわ、
 ロボットだと思って接すると、逆にこっちが痛い目見ますよってに」
「あうぅぅ、わたしなんだか凄くダメなメイドロボじゃないかって思えてきました……」「何やの? まさか、いまさら気が付いたなんていうわけや無いやろな?」
「あうぅぅぅ……」
威勢のいい関西弁の会話に挟まれて、マルチはおろおろしていた。
なにやらその二人――晴子と智子――がいつも異常に活発に見えるのは気のせいだろうか?

「なんかお母さん楽しそう……」
「ホントですね……」
なんとなく会話に入っていけなかった観鈴とあさひは、
その様子を見て一致した見解を述べた。

495 :111@カウント・ダウン2:2001/06/03(日) 21:38

「――でも、敵意ある人間でなくてよかったわ。
 ほんまに」
「……そうですね」
微妙に会話のトーンが下がる。
しかしそれは恐れやカナシミから来るものではなくて――。
「悪かったな、痛い話聞かせてもーて」
晴子はマルチに謝罪した。
「そ、そんなことありません!
 なんていうか……。よく、わからないんですけど、
 モーターがほんのりあつくなってそれで……、
 そ、その、あの、とにかく私は全然痛く無かったです!」
そんなマルチの様子を見て、晴子はふっ、と笑い一言、
「ありがとうな」
といってマルチの頭を撫でてやった。
「あ、はうぅぅぅぅ……」
頭を撫でられること。
――久しく味わっていないその感触に、マルチは幸せそうにうつむいた。

「ほな、自己紹介させてもらいますわ。
 うちは保科智子言います。
 一応、高校生です」

「え、高校生の方なんですか?
 ……ず、ずいぶんと大人びているから、
 わ、わたしてっきりどこかのオフィスレディーかと……」
驚き混じりのあさひのセリフに、智子は
よく言われます、
と軽く笑ってかえした。

496 :111@カウント・ダウン3:2001/06/03(日) 21:39
「っと、私のことは智子でええです。
 そいでこっちが――」
智子がマルチを見ると、マルチもさっきのを見習ってすぐに自己紹介を始めた。
「私、HMX-12型、マルチと申します。
 こんな格好はしていますが、これでもれっきとしたメイドロボなんですよ」
マルチはにっこりと笑ってそう言った。
「え、HMシリーズって……、もしかしてあの”クルスガワ”のメイドロボなんですか?」
心当たりがあったのか、横で話を聞いていたあさひが口を挟んだ。
「ハイ。一応セリオさん――HMX-13型の方です――と並んで、HMシリーズでは
 最新鋭のメイドロボなんですよ……」
いつもなら、えっへん、と胸を張っていそうなものだが、
今のマルチのセリフは全然そんな調子ではなく……、
むしろ憂いさえ帯びていた。
そして、その理由など、智子を除いた面々に分かるはずも無かった。
「す……すごいんですね」
あさひはそのことに気付かなかったのか、素の感想を言った。
なにやら感心しているようだ。
と、すぐに自分が話を脱線させたことに気付き、あさひはばつが悪そうに晴子の方を見た。
「もうええの? ホンならうちの番やね。
 うちの名前は神尾晴子。晴子でええわ。
 んでこっちのがうちの娘で……」
晴子は観鈴に目をやった。
「み、観鈴です。よろしくお願いします」
観鈴は慌てて挨拶をする。
「うん、よろしゅう。……で、そっちの方は?」
「あ、えと、桜井あさひと言います」
「桜井さんやな、分かったわ」
智子はやけにあっさりと納得してしまった。
「あ……ま、待ってください。そ、その……」
「ん、何やの?」
「え、えと、その、あの……」
「……何やの、はっきりせん子やな」
心持ち、むすっとした口調で智子は言った。
――実は智子より年上だなんてことは秘密だ。
「あ、あさひでいいです」
「へ?」
「あさひって呼んで下さい!」
ついついどもりながら喋ってしまう自分への苛立ちからか、大声を出してしまった。

497 :111@カウント・ダウン4:2001/06/03(日) 21:39
「……分かったわ。ほな、あさひって呼ばせてもらうで」
パッとあさひの顔が明るくなったのを智子は見逃していなかった。
「あさひさんって凄いんですよ。何でも大人気声優なんだって」
にははっと笑いながら観鈴が言った。
「そ、そんな、大人気だなんて。えと、その……」
「……声優?」
智子の目が光る。
「なんや、あんた声優なんてやってはったの?」
「ハ、ハイ」
「またエラいマニアックな職業についたもんやな……」
ズキッ!
あさひは何か鋭い矢のようなもので胸を貫かれた気がした。
「けど、その割には話し言葉どもりまくりやん……。素人くさいわ、ほんま」
「うぐっ!」
さらに追い討ちでとどめを食らってしまった。
「わ、私……、ま、マイクを持つと凄いんです……」
「そうか? 信じられへんわ……」
ジト目で智子はあさひを見つめる。
「う、ううっ」
ちょっとあさひは涙目になった。
――元からだったかもしれないが。

プッ。
智子は吹き出した。
「ふふっ。冗談や、冗談」
あさひはぽかんとしている。
「人は見かけのよらんものやからな。きっとホントに凄い声優なんやろ」
「そ、そんな。私なんて、その」
あさひは照れながらそう言った。
「いつかあんたの仕事も見せてもらいたいもんやわ」

498 :111@カウント・ダウン5:2001/06/03(日) 21:44
あさひはそれを聞いて
「カードマスターピーチっていうアニメ、ご存知ですか?」
と聞こうとした。
だが、そのセリフが言い出されることは無かった。


変化は、そのほんの一瞬前に訪れていた。


かちり、という音が、したような気がした。


ドギュウゥゥゥン!


響く。
銃声が、そして叫び声が。
所詮はうたかたの平穏だった。
死は、どこまでも近いところに潜んでいたのだ。



499 :とりあえず、出ませんか?:2001/06/03(日) 21:49
「……その人の名前、何て言うんですか?」
 短刀を持って殺気立っているなつみに、茜は訊ねた。
「宮田健太郎……」
「……宮田……?」
 記憶を掘り起こす。
 最初の死亡放送で、確かそのような名前があった気がした。
 その放送で、男と思われる名前はその一つ。
 そして茜は、放送以前に、一人の男を殺害していた。
(……まさか、本当に私が……?)
 僅かに動揺する。
 普段から感情を表に出すこともなく、今度もバレないだろうと踏んでいたが、
「やっぱり、あなたなのね……店長さんを殺したのは……」
 簡単に見破られていた。
「……そうみたいです」
 シラを切り通すこともできたが、そんなことをしても意味はなさそうだった。
「ようやく見つけたよ、ココロ。
 一緒に、店長さんの仇を討とうね?」
 短刀を撫で、茜に襲い掛かった。
 その腕は、震えていた。

 慌てず騒がず、茜は手榴弾の安全ピンを抜いた。
「……離れて下さい」
 それだけ言い、壁に向かって投げ付ける。
 同時に、廊下の反対方向へ走った。
 できるだけ、出来る限り、速く。
 そして、その場に伏せた。
 ドォォォォン!
 次の瞬間、爆発。衝撃が茜となつみを襲った。

「……ふぅ」
 起き上がり、手榴弾を投げ付けた壁を見る。
 壁は見事に破壊され、外へと大きな大穴を開けていた。
「……あの人は無事ですか?」
 すぐに、廊下の向こうに見つかった。
 短刀を取り落としている。
 それを拾おうと、茜は走った。
 なつみも遅れて手をのばす。
 なつみが一瞬早く短刀を拾い上げ、
 その手を、茜は蹴り飛ばした。
 カランという音を立てて短刀が転がり、今度は茜が拾いなおす。
 短刀の先をなつみに向けて……なつみは床に座り込み、泣いていた。

「終わっちゃったね、ココロ。
 私の居場所を奪った人を。店長さんの仇をとろうとしたのに。
 終わっちゃったね……」
 茜の方を見ようともしなかった。
 ただ俯き、呟く。
 雫が頬を伝って床に落ちた。
 茜は無言でそれを見つめ、短刀をしまった。
 壁に空いた大穴を指し、一言。

「とりあえず、出ませんか?」

500 :今度会うときは……:2001/06/03(日) 22:09
「どうして殺さないの?」
 校庭に出たなつみは、まず最初に訊いた。
 曰くこの女、血も涙もない殺人鬼だそうではないか。
 それに、健太郎を殺してもいるのだ。
 何故自分が殺されないのか、わからなかった。
「……武器は奪いました。あなたはもう戦えません。
 ……だから、殺さなくてもいいんです」
 なつみの先を歩き、言う。
 視線は前を向いており、なつみの方を見ていない。
 それは余裕か、信頼か。
「……それに、疲れました。
 ……たい焼き、食べ損ねましたから」
 笑う。
 その笑顔は、なつみには見えない。
「甘いわね」
「……はい。今日、何度も思いました。
 ……だけど……」
 脳裏に、祐一の顔が、詩子の顔が浮かぶ。
「……これが、私です。
 ……さっきの人も一度殺せなくて、それでまた襲われましたけど。
 ……多分、これでいいんです」
「でも、結局あなたが殺したんでしょ?」
「……だから」
 始めて、茜は振り向いた。
「……今度会うとき、それでもまだ私を狙うなら。
 ……震えもせず、本気で私を狙うなら、容赦はしません」
 瞳に冷たい色が宿る。
 なつみはそれを見た上で、言った。

「今度会うときは……殺すから」

 二人は別々の方向に走り出す。

 何を言われようとも、なつみは茜を許すつもりはなかった。
 この手で殺したいと思い、今度会うときは、遅れをとらないよう――

 私の居場所を奪った人。
 なつみは茜をそう言った。
 茜の脳裏に、一人の女の子の顔が浮かぶ。
(……私の居場所を奪った人。
 ……もう、いない)
 茜の居場所は他にもあった。
 しかし、一番居心地のいいあの瞬間は、もうなかった。
 それでも、諦めきれない。
 誰もあの人のことを覚えていないから。
 言っても信じて貰えないから。
 だから、待ち続ける。
 誰か、この苦しみから開放してくれないだろうか。
 ふと、祐一の顔が浮かび、慌ててその影を消す。
 開放されることは、あの人への裏切りだ。
 それでも――

 今度会うときは、祐一は自分に、何を与えるのだろう――

501 :拒みたい真実(1):2001/06/03(日) 23:36
林の中のけもの道を、男女が歩いている。
「ねぇ、一体どこに向かって歩いてるの?」
詠美が半ば、怒りぎみた声で訊いた。
彼女は先程から御堂が自分の前を偉そうに歩いているのが気に食わないらしい。
彼女は知らない。先程から御堂はトラップや地雷、人の足跡などが無いかを確認しながら歩いている。
「…知るか、とりあえず柏木とかいう女を探すんだろ?死にたくなけりゃ黙って俺について来い」
御堂はぶっきらぼうに答えた。
「むかむかむかぁーーーっ!!なによその態度っ!!したぼくのくせにちょおなまいきっ!!」
「…ったく、うるせぇな。だいたい何なんだよ、その『したぼく』ってのは?何て字で書くんだ?」
御堂は、したぼくの意味は知らないが、どんな字で書かれているかが分かれば意味も何となく分かると考えた。
「え?あんた漢字も知らないの?バカじゃないの?」
「うるせぇ!大きなお世話だっ!」
余談ではあるが御堂は学生時代、喧嘩は強かったが勉強はからっきしであった。
「えっとねぇ、上下の『下』に、僕私の『僕』よ。分かった?」
「…下僕じゃねぇかよ!!このアマふざけやがって!!」
御堂は詠美に怒鳴り散らす、そのまま胸ぐらをつかみそうな勢いだ。
「おっと、忘れたの?あたしには『ぽち』がいるのよ?」
右手をポケットに入れて、何かがあるような素振りをして詠美が言う。
「…いい加減、『ぽち』ってやつをを見せろよ」
「い や よ!!」

502 :拒みたい真実(2):2001/06/03(日) 23:39
しばらくそんなやりとりを交わしているうちに、狭い林道に出た。
林道にはいくつかの足跡…しかも同じ靴跡である。
(1、2、3…4人か…同じ靴の跡、管理側の人間か)
御堂は足跡をたどることにした。そんなことはつゆ知らず詠美の話は続く。
「その子達、あんたにすっごくなついてるわよねぇ」
詠美は御堂の頭上で丸くなって眠りについている2匹の小動物を指差して言った。
「…知るか、勝手について来てるんだよ」
御堂はやや恥ずかしそに言った。
「あんたってひょっとして、ムツゴロウさん?」
「ムツゴロウ?干潟にいるアレか?」
「違うわよ!『いや〜、可愛いですね〜』って言いながら犬とかにキスする人よっ!」
「…莫迦か、そいつは?」
「ひっどーーーい!!ムツゴロウさんはいい人なのよっ!!」
「シッ!静かにしろ…ありゃ、何だ?」
「え?何かあったの?」
詠美は御堂が指を指す方向に視線を移した。
見るとそこにはコンクリートでできた建物があった。
1階建てで大きさから見て内部の広さはざっと学校の教室くらいであろうか。
「何だろ?…何かの施設じゃないの?」
「施設?…どんな施設だ?」
「知らないわよ。無線とか…じゃないの?」
詠美はこの島のどこかに無線施設があるという和樹と楓の会話を思い出した…
「無線か…よし、あそこを制圧する。お前はここで待っていろ。あと、こいつらを頼む」
「にゃにゃ?」
「ぴこ?」
そう言うと、御堂は頭の上の小動物をひょいっと摘み上げ、詠美に預けた。
「せいあつって…ちょっ――――」
詠美が御堂に視線を戻した時には、御堂は既に施設へ向かって疾りだしていた。

503 :拒みたい真実(3):2001/06/03(日) 23:40
金属製のドア…御堂はそこに耳をあてる。
仙命樹の力が弱まっているといっても、部屋の内部に居る人間の会話ならはっきりと聞き取れる。
男の声…数は足跡と同じ、4人。
『ったく、まだ終わらねぇのかよ、ゴキブリ並みにしぶてぇな』
『ホントだぜ、さっさと死ねよ、あいつら』
『だけどよぉ、何か嫌じゃねぇ?人が死ぬって』
『いいじゃねぇか、金さえ貰えりゃあ。だいいち、他人だぜ?』
『そりゃそーだ!』
『ギャハハハハハハハハ!!』
御堂は体全身がカッと熱くなるのを感じた。奥歯を噛み締めギリッと音がする。
(こいつらに、生きる資格は…ねぇな)
『あ、俺小便行ってくらあ』
『気をつけろよ』
『へーきへーき!いざとなったらコレがあるしな』
足音が聞こえる…こちらに向かっているようだ。どうやら一人の兵士が外へ出るようだ。
御堂はすかさずドアが開いた時、死角になる場所へ隠れた。
ギィ…
わずかなきしみを帯び、金属のドアが開いた。
出て来たのは、中肉中背の男…戦闘服を身にまとい、肩にはサブマシンガンを下げている。
ガチャン!
ドアが閉まる。
すかさず御堂は男の背後に回り、兵士の首に左腕をまわし、ぐいっと引き入れる
空いた右腕は、男の後頭部へあてがい、そのまま前方へ一気に力をこめる。
「!!」
男は首を折られ、何も言わぬ肉塊となり、地に伏した。

504 :拒みたい真実(4):2001/06/03(日) 23:41
「この人…死んでる…?」
声の主は詠美だった。胸元に2匹の獣を抱えている。
「…待っていろと言っただろ?」
「だ、だって……」
詠美は黙り込んでしまった。御堂は悟った。一人では不安だったのだろう。
「分かった。5秒で片付ける」
彼にとっては3人の兵を殺すことなど5秒もあれば事足りる任務であった。
あえて銃は使わない。狭い室内での拳銃の使用は耳に響くからだ。
男の腰に差してあった戦闘用ナイフを奪取すると、御堂はドアノブに手をかけた。
ドアのすぐ前に一人…
左手を男の左頬に当て、一気に右側へ押し込み、首を折る。男の顔は右へ向き、そのまま崩れる。
「なっ!?」
3時の方向約5メートルに2人目…
御堂は地を蹴り、2人目の男の首をすれ違い様に先程奪った右手のナイフで斬りつける。
「ぐぁっ!」
ナイフは男の頚動脈を捕らえ、盛大に地飛沫を上げ、石床を紅く彩った。
「くそっ!!」
最後の一人…1番奥のイスに座っている。距離は約10メートル
男は拳銃に手をかけ、迫り来る御堂へ――――
「遅いっ!」
御堂は右手のナイフを投げ放つ。ナイフは空を薙ぎ、男の眉間に深深と突き刺さる。
男の手からするりとニューナンブがこぼれ落ちると同時に、
ガチャン!
御堂が開けたドアが閉まる。
彼の予告通り5秒で制圧されてしまった。

505 :拒みたい真実(5):2001/06/03(日) 23:42
「終わったぞ、入って来い」
御堂はドアに向かって言い放つ。しばらくすると詠美が顔を出す。
「え?…ウソ?」
(あの女、死体を見て驚いてやがる…まぁ、俺の予想通りの反応だな)
「あんた…弱いキャラじゃなかったの?」
「…は?」
御堂の予想とは少し違ったようだ。
「何言ってやがる。俺は元々強ええんだよ」
「ウソウソ!だって3人もいるのよ!?それでナイフ一本で勝てるなんて映画の世界じゃない!」
「しょうがねぇだろ!いちいち文句言うな!」
「みとめない!みとめない!したぼくがこんなに強かっただなんてぜーーーーったいみとめないんだからぁ!」
「あぁ、分かったよ、それじゃあ俺は弱いってことにしといてくれ」
「…やけに素直になったじゃない、さてはあんたしたぼくとしてのじかくが――――」
「お前を相手にしていても、無駄な時間を過ごすだけだ」
御堂はそう言い放つと、施設の内部を調べまわった。
無線施設ではなかった。どうやらここは兵の詰め所らしい。
簡単な水道と照明、寝具、食料、いくつかの武器弾薬。それとバイクがあった。
御堂は保存が利きそうな食料と水、弾薬を布袋に詰め込むと、バイクを調べた。
(二輪車か、これは使えそうだな)
「おい!そろそろ行くぞ!乗れ!」
バイクのエンジンを蒸かしながら御堂が言った。
「待ってよ!イロイロしらべてるんだからぁ!」
詠美は兵士の持ち物を漁っていた。
「ゾンビをやっつけるゲームであるじゃない死体調べるやつ」
「いいから乗れ」
「それに、2人乗りはおまわりさんにつかまるのよ?」
「いいから乗れ!!」
「わ、分かったわわよ!乗ればいいんでしょ!乗れば!!」
詠美は迷彩色のぶかぶかなヘルメットを被り、バイクに乗った。
「しっかりつかまってろ、振り落とされるなよ!」
「え?ちょっ――――――――」
詠美の抗議はエンジン音によってかき消された。

【兵の詰め所の1つを制圧】
【御堂 兵士の死体からナイフ奪取】
【詠美 兵士の死体から『兵士のメモ』を奪取】

506 :名無しさんだよもん:2001/06/03(日) 23:46
久々に御堂らしい(?)動きでGOO!!
でも、サブマシンガンも持っていったらどうかと思ったのは漏れだけか?

さてと……。このスレはこの書き込みぐらいでストップして、
あとは次スレですかねぇ?

507 :名無しさんだよもん:2001/06/04(月) 00:03
新スレです、皆さんお引越しをどうぞ。

葉鍵ロワイアル!#7
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=991580312


508 :名無しさんだよもん:2001/06/04(月) 00:04
次のスレが出来てますね。
それでは移行しましょう。

葉鍵ロワイアル!#7
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi?bbs=leaf&key=991580312&ls=100

509 :508:2001/06/04(月) 00:07
余計なお世話の上蛇足でした。あう〜
すいません。スレ立てた方、ご苦労さまでした。

510 :名無しさんだよもん:2001/06/04(月) 00:15
>>502
ムツゴロウさんネタおもしれ〜

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